JP5119009B2 - 車輌制御装置 - Google Patents

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Description

本発明は、車輌の旋回中に進行方向後側の旋回内輪にのみ制動力を働かせて回転半径の短縮又は維持を図る車輌制御(以下、「旋回制御」という。)の実行が可能な車輌制御装置に関する。
一般に、旋回中の車輌の状態としては、ステアリングホイールの操舵角に適応した回転半径を保ちながら旋回し続けるニュートラルステア状態、このニュートラルステア状態に対して旋回内側に車輌が巻き込まれていくオーバーステア状態、そのニュートラルステア状態に対して旋回外側に車輌が逃げていくアンダーステア状態に大別される。そして、旋回中における車輌の挙動安定性の観点からするとニュートラルステア状態が好ましく、従来においては、オーバーステア状態やアンダーステア状態へと挙動変化してしまう車輌をニュートラルステア状態に制御する車輌制御装置が種々知られている。例えば、その車輌制御装置としては、車速の上昇に伴いアンダーステア状態に移行してしまう可能性のある車輌を上述した旋回制御を行ってニュートラルステア状態に制御する(つまり、回転半径を維持する)ものがある。また、旋回制御には、極低速域(例えば約15km/h以下)でステアリングホイールが操舵限界付近まで操舵された際に実行されるものもある。この際の旋回制御とは、車輌のホイールベース等の諸元値に応じた既定の最小回転半径を強制的に小さくすることができるもの(つまり、小回り性を高めることが可能な小回り制御)である。例えば、この小回り制御については、下記の特許文献1に開示されている。この旋回制御とは、車輌の旋回中に進行方向後側の旋回内輪に制動力を働かせ、これにより車輌にヨーモーメントを発生させることで回転半径の短縮又は維持を図るものである。
特開平11−49020号公報
ところで、この種の車輌制御装置においては、旋回制御を行う為に制動装置が使われる。この場合の制動装置には、夫々の車輪のホイールシリンダへのブレーキ液の圧力(以下、「ブレーキ液圧」という。)を調整することのできるブレーキ液圧調整手段が備えられている。そのブレーキ液圧調整手段は、保持弁と減圧弁からなるブレーキ液圧調圧部を車輪毎に有している。そして、この制動装置の中には、右側前輪と左側後輪の夫々のブレーキ液圧調圧部の上流部に共通の第1ブレーキ液圧が供給されると共に、左側前輪と右側後輪の夫々のブレーキ液圧調圧部の上流部に共通の第2ブレーキ液圧が供給される所謂X配管と呼ばれるブレーキ液圧回路を有する形態のものが存在している。このX配管のブレーキ液圧回路を有する制動装置においては、1つの電動機を駆動源にして作動する加圧ポンプが第1ブレーキ液圧の生成用と第2ブレーキ液圧の生成用とで1つずつ配設されている。
このX配管のブレーキ液圧回路を有する制動装置が搭載された車輌においては、上述した旋回制御を実行する際、制御対象のブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ(進行方向後側の旋回内輪と進行方向前側の旋回外輪用の加圧ポンプ)を作動させ、進行方向後側の旋回内輪のブレーキ液圧調圧部を開放して上流部のブレーキ液圧を当該旋回内輪のホイールシリンダに供給させると共に、この旋回内輪と同系統の進行方向前側の旋回外輪のブレーキ液圧調圧部を遮断して上流部のブレーキ液圧が当該旋回外輪のホイールシリンダに供給されないようにする。また、この際には、非制御対象のブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ(進行方向後側の旋回外輪と進行方向前側の旋回内輪用の加圧ポンプ)を空回りさせ、その進行方向後側の旋回外輪と進行方向前側の旋回内輪用の夫々のブレーキ液圧調圧部の上流部のブレーキ液圧が増圧されないようにする。その際、その各ブレーキ液圧調圧部は、夫々に上流部と進行方向後側の旋回外輪及び進行方向前側の旋回内輪の各ホイールシリンダとが連通するように開放させている。
ここで、ブレーキ液は低温のときに粘度が高く、空回りしている非制御対象のブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプの背圧を大きくしてしまうので、その加圧ポンプよりも下流(吐出側)においては、ブレーキ液圧が増圧されてしまう。これが為、ブレーキ液が低温のときには、そのブレーキ液圧が非制御対象のブレーキ液圧回路系統の車輪(進行方向後側の旋回外輪と進行方向前側の旋回内輪)に対して供給されるので、この車輪に制動力が働いてしまう。その制動力は、例えば雪氷路の如く走行路面の摩擦係数が低い(低μ路)を除けば、多くの場合、進行方向後側の旋回内輪に付与する制動力よりも小さいものとなる。しかしながら、旋回制御中に本来は制動力を働かせない車輪に対して僅かであっても制動力が付与されてしまうと、車輌に働かせるべき適切なヨーモーメントが変化してしまうので、車輌は、適切な旋回制御が阻害されてしまって所望の大きさに回転半径を短縮又は維持することができず、更に挙動を乱してしまう虞がある。また、低μ路のときには、小さな制動力であっても非制御対象のブレーキ液圧回路系統の車輪をロックさせてしまう可能性がある。従って、ブレーキ液が低温のときに低μ路で旋回制御を行う場合には、非制御対象のブレーキ液圧回路系統の車輪(特に後輪)のロックによって、適切な回転半径への制御が更に難しくなり、車輌の挙動が乱れ易くなる可能性もある。特に、両方の後輪がロックしてしまったときには、車輌の挙動を著しく乱してしまう可能性が高い。
そこで、本発明は、かかる従来例の有する不都合を改善し、進行方向後側の後輪にのみ制動力を働かせて適切な旋回制御が実行できる車輌制御装置を提供することを、その目的とする。
上記目的を達成する為、請求項1記載の発明では、ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を調圧可能な車輪毎のブレーキ液圧調圧部,ブレーキ液を加圧して加圧後のブレーキ液圧を一対の前輪と後輪のブレーキ液圧調圧部に供給する対毎の加圧部及び当該各加圧部を作動させる1つの電動機を備えたブレーキ液圧調整手段と、このブレーキ液圧調整手段を制御することで車輌の旋回中に進行方向後側の旋回内輪にのみ制動力を働かせて回転半径の短縮又は維持を図る旋回制御を行う車輌制御手段と、を有する車輌制御装置において、ブレーキ液の温度が所定温度よりも低温で且つ旋回制御中の場合に、進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪のホイールシリンダへのブレーキ液の流路を遮断するように車輌制御手段を構成している。
ブレーキ液は温度が低いと粘度が高くなるので、進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の側の加圧部(加圧ポンプ)が電動機の作動に伴い空回りし、この加圧部の背圧が大きくなる。これが為、進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪においては、加圧部の背圧によってブレーキ液圧が増圧されて制動力が働く。従って、このようなときには、進行方向後側の旋回内輪にのみ制動力を働かせることができずにヨーモーメントが変化してしまうので、適切な旋回制御を行うことができなくなる。しかしながら、この請求項1記載の車輌制御装置は、旋回制御中ならば進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪のホイールシリンダに対してブレーキ液圧が供給されないようにしているので、適切な旋回制御が可能になる。
ここで、その所定温度は、請求項2記載の発明の如く、進行方向後側の旋回内輪に制動力を付与すべく電動機を駆動させた際に、その旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪に関わる加圧部の背圧を大きくしない程度にまで粘度が低くなるブレーキ液の最低温度である。
また、請求項3記載の発明の如く、車輪がロックしているのか否かを判定するロック判定手段を備え、後輪が両輪ともロックしていると判定された場合には、車輌制御手段がブレーキ液の流路の遮断を行わずに当該夫々の後輪のホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を減圧させるようにしてもよい。これにより、この請求項3記載の車輌制御装置は、夫々の後輪のロックを解消することができるので、車輌の挙動を安定方向へと導くことができる。
また、請求項4記載の発明の如く、車輪がロックしているのか否かを判定するロック判定手段を備え、進行方向後側の旋回内輪がロックしていると判定された場合、車輌制御手段は、その進行方向後側の旋回内輪のホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を減圧させるように構成してもよい。これにより、この請求項4記載の車輌制御装置は、ブレーキ液の流路の遮断と相俟って夫々の後輪のロックを解消することができるので、車輌の挙動を安定方向へと導くことができる。
本発明に係る車輌制御装置は、旋回制御中に進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪のホイールシリンダへのブレーキ液の流路を遮断することによって、その前輪と後輪に制動力が働かないようにしている。これが為、この車輌制御装置は、進行方向後側の後輪にのみ制動力を働かせることができ、適切な旋回制御の実行が可能になる。
以下に、本発明に係る車輌制御装置の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。尚、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。
本発明に係る車輌制御装置の実施例1を図1から図5に基づいて説明する。
本実施例1の車輌制御装置は、主に、車輌制御(旋回制御)を行う際に作動させる制動装置1と、この制動装置1を作動させることで車輌制御(旋回制御)を実行させる車輌制御手段としての電子制御装置(ECU)2と、によって構成される。
その電子制御装置2は、図示しないCPU(中央演算処理装置),所定の車輌制御プログラム等を予め記憶しているROM(Read Only Memory),そのCPUの演算結果を一時記憶するRAM(Random Access Memory),予め用意された情報等を記憶するバックアップRAM等で構成されている。
一方、本実施例1の制動装置1は、前述した所謂X配管のブレーキ液圧回路を有するものであって、夫々の車輪WFR,WFL,WRR,WRLに対して個別に制動力を発生させることができるよう構成する。
この制動装置1には、運転者によるブレーキペダル10の操作量に応じたブレーキ液圧を発生させるブレーキ液圧発生手段20と、ブレーキ液圧が供給されることで制動力を発生させる各車輪WFR,WFL,WRR,WRL毎のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLと、そのブレーキ液圧発生手段20で発生したブレーキ液圧をそのまま又は各車輪WFR,WFL,WRR,WRL毎に調圧して夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLに供給するブレーキ液圧調整手段40と、が設けられている。
先ず、ブレーキ液圧発生手段20は、ブレーキペダル10に入力された運転者のブレーキ操作に伴う操作圧力(ペダル踏力)を所定の倍力比で倍化させる制動倍力手段(ブレーキブースタ)21と、この制動倍力手段21により倍化されたペダル踏力をブレーキペダル10の操作量に応じたブレーキ液圧(以下、「マスタシリンダ圧」という。)へと変換するマスタシリンダ22と、ブレーキ液を貯留するリザーバタンク23と、を備える。
ここで、そのマスタシリンダ22の内部には図示しない2つの油圧室が設けられており、その夫々の油圧室に上記のマスタシリンダ圧が発生している。その夫々の油圧室で生成されたマスタシリンダ圧は、一方がブレーキ液圧調整手段40の後述する第1ブレーキ液圧回路系統を介して右側前輪WFR及び左側後輪WRLに供給され、他方がブレーキ液圧調整手段40の後述する第2ブレーキ液圧回路系統を介して左側前輪WFL及び右側後輪WRRに供給される。従って、本実施例1の制動装置1には、その夫々の油圧室に一端を各々接続し、他端を第1ブレーキ液圧回路系統と第2ブレーキ液圧回路系統に各々接続した第1及び第2の油圧配管24,25が設けられている。
次に、ブレーキ液圧調整手段40は、上述した第1及び第2の油圧配管24,25内のブレーキ液圧(マスタシリンダ圧)をそのまま又は調圧して夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLに供給する所謂ブレーキアクチュエータである。このブレーキ液圧調整手段40は、電子制御装置2のブレーキ液圧制御手段の制御指令に従って作動する。
本実施例1のブレーキ液圧調整手段40は、右側前輪WFR及び左側後輪WRLに対してブレーキ液圧を伝える第1ブレーキ液圧回路系統と、左側前輪WFL及び右側後輪WRRに対してブレーキ液圧を伝える第2ブレーキ液圧回路系統と、を備えたものとして例示する。つまり、このブレーキ液圧調整手段40は、上述したようにX配管のブレーキ液圧回路を有する構造になっている。ここでは、その第1ブレーキ液圧回路系統を第1油圧配管24に接続させる一方、第2ブレーキ液圧回路系統を第2油圧配管25に接続させる。
このブレーキ液圧調整手段40には、ブレーキ液圧発生手段20から供給されてきたブレーキ液圧(つまり、マスタシリンダ圧)の検出を行うマスタシリンダ圧センサ41が設けられている。このマスタシリンダ圧センサ41は、第1又は第2の油圧配管24,25の内の何れか一方に配備され、その検出信号を電子制御装置2へと送信する。ここでは、そのマスタシリンダ圧センサ41を第1油圧配管24に設けるものとして例示する。
また、このブレーキ液圧調整手段40は、第1及び第2のブレーキ液圧回路系統における夫々のブレーキ液の流量調節手段としてのマスタカット弁42,43を備えている。ここでは、マスタシリンダ圧センサ41の下流にマスタカット弁42を配設する。これら各マスタカット弁42,43は、通常は開弁状態にある所謂常開式の流量調整用電磁弁であって電子制御装置2のブレーキ液圧制御手段による通電に伴って弁開度の制御が実行されるものである。つまり、夫々のマスタカット弁42,43は、通電量に応じて弁開度を制御することで後述する加圧ポンプ69,70から吐出されたブレーキ液の圧力を調節してマスタシリンダ22側へ開放する。尚、この実施例1にて示す下流とは、ペダル操作時のブレーキ液の流動方向(つまり、ホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLへと向かう方向)における下流側のことを表すものとする。
ここで、このブレーキ液圧調整手段40においては、第1油圧配管24がマスタカット弁42を介して連結通路44に接続される一方、第2油圧配管25がマスタカット弁43を介して連結通路45に接続される。そして、第1ブレーキ液圧回路系統の連結通路44には、そこから分岐させるが如く2本の分岐通路46,47を接続し、第2ブレーキ液圧回路系統の連結通路45には、そこから分岐させるが如く2本の分岐通路48,49を接続する。第1ブレーキ液圧回路系統においては、その各々の分岐通路46,47を夫々に右側前輪WFRの油圧配管31FRと左側後輪WRLの油圧配管31RLに接続する。一方、第2ブレーキ液圧回路系統においては、その各々の分岐通路48,49を夫々に右側後輪WRRの油圧配管31RRと左側前輪WFLの油圧配管31FLに接続する。
また、その各分岐通路46,47,48,49上には、夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RL毎のブレーキ液圧を調整可能なブレーキ液圧調圧部が車輪WFR,WFL,WRR,WRL毎に配設されている。その夫々のブレーキ液圧調圧部は、車輪WFR,WFL,WRR,WRL毎に用意された保持弁50,51,52,53とブレーキ液圧排出通路54,55,56,57と減圧弁58,59,60,61とで構成される。ここでは、各分岐通路46,47,48,49上に保持弁50,51,52,53が各々配備されており、更に、これら各保持弁50,51,52,53よりも下流側にブレーキ液圧排出通路54,55,56,57が夫々に分岐通路46,47,48,49から分岐させるが如く接続されている。そして、その各ブレーキ液圧排出通路54,55,56,57上には、夫々に減圧弁58,59,60,61が配備されている。
その夫々の保持弁50,51,52,53は、所謂常開式の電磁弁であって、非励磁状態の通常時には開弁状態にあり、電子制御装置2のブレーキ液圧制御手段による通電に伴って励磁状態となり閉弁させられるものである。一方、各減圧弁58,59,60,61は、所謂常閉式の電磁弁であって、非励磁状態の通常時には閉弁状態にあり、ブレーキ液圧制御手段による通電に伴って励磁状態となり開弁させられるものである。
また、ここでは、第1ブレーキ液圧回路系統の夫々のブレーキ液圧排出通路54,55を一纏めにするブレーキ液圧排出集合通路62と、第2ブレーキ液圧回路系統の夫々のブレーキ液圧排出通路56,57を一纏めにするブレーキ液圧排出集合通路63と、が用意されており、その夫々のブレーキ液圧排出集合通路62,63が各々補助リザーバ64,65に接続されている。
更に、第1ブレーキ液圧回路系統においては、連結通路44と各分岐通路46,47との分岐点から分岐してブレーキ液圧排出集合通路62に接続されるポンプ通路66を配設する。これと同様に、第2ブレーキ液圧回路系統においては、連結通路45と各分岐通路48,49との分岐点から分岐してブレーキ液圧排出集合通路63に接続されるポンプ通路67を配設する。
その夫々のポンプ通路66,67には、1つの電動機68によって駆動される加圧ポンプ(加圧部)69,70を各々配備している。これら各加圧ポンプ69,70は、夫々にマスタカット弁42,43側の各分岐点に向けてブレーキ液を吐出させるものであり、夫々に分岐通路46,47と分岐通路48,49に対して加圧されたブレーキ液圧を供給する。つまり、第1ブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ69は、右側前輪WFRと左側後輪WRLに発生させる制動力を増大させるべく、夫々のホイールシリンダ30FR,30RLに供給するブレーキ液圧の増圧を行う。一方、第2ブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ70は、左側前輪WFLと右側後輪WRRに発生させる制動力を増大させるべく、夫々のホイールシリンダ30FL,30RRに供給するブレーキ液圧の増圧を行う。尚、電動機68は、図示しないバッテリからの電力供給により駆動する。また、その各ポンプ通路66,67には、加圧ポンプ69,70から吐出された夫々のブレーキ液の脈動を回避するダンパ室71,72が配設されている。
また、このブレーキ液圧調整手段40には、第1及び第2の油圧配管24,25から各々分岐して補助リザーバ64,65に夫々接続される吸入通路73,74が配設されており、更に、その夫々の吸入通路73,74の補助リザーバ64,65側にリザーバカット逆止弁75,76が配設されている。
このように構成した本実施例1の制動装置1は、その動作が上述したように電子制御装置2によって制御される。
具体的に、その電子制御装置2には、図1に示すブレーキペダル操作量検出手段11により検出されたブレーキペダル10の操作量と、マスタシリンダ圧センサ41により検出されたマスタシリンダ圧と、が入力される。つまり、この電子制御装置2には、運転者がブレーキペダル10の操作によって制動要求を行ったときに検出されたブレーキペダル操作量と、その操作に伴い発生したマスタシリンダ圧と、が入力される。ここで、例えば、そのブレーキペダル10の操作量にはブレーキペダル10の踏み込み量やペダル踏力があり、これが為、ブレーキペダル操作量検出手段11としては、ペダルストロークセンサやペダル踏力センサが考えられる。
この電子制御装置2においては、そのブレーキペダル10の操作量に基づいて運転者の要求車輌制動力が演算される。例えば、その要求車輌制動力については、この技術分野において周知の演算手法によって求める。そして、この電子制御装置2のブレーキ液圧制御手段は、全ての車輪WFR,WFL,WRR,WRLの制動力の合計によって要求車輌制動力が車輌に対して働くようにブレーキ液圧調整手段40を制御する。
ここで、加圧ポンプ69,70を駆動させずとも要求車輌制動力を発生させることができるのであれば、換言すればマスタシリンダ圧で要求車輌制動力を発生させることができるならば、ブレーキ液圧制御手段は、電動機68を停止させることで加圧ポンプ69,70を駆動させないようする。そして、このブレーキ液圧制御手段は、そのマスタシリンダ圧とブレーキペダル操作量と車輌の状態(車輪WFR,WFL,WRR,WRLのスリップ率等)とに基づいて、例えば車輌の挙動を安定状態に保ったまま各車輪WFR,WFL,WRR,WRLの制動力の合計によって要求車輌制動力が車輌に対して働くように、マスタカット弁42,43と保持弁50,51,52,53と減圧弁58,59,60,61を制御する。
その際、例えばブレーキ液圧を増圧させる増圧モードの場合には、マスタカット弁42,43と保持弁50,51,52,53を開弁させる一方、減圧弁58,59,60,61を閉弁させる。これにより、夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLには、車輌の挙動を安定させつつ要求車輌制動力を満足させるまで増圧されたブレーキ液圧(最大でもマスタシリンダ圧)が供給される。また、例えばブレーキペダル操作量が小さくなったときには、マスタシリンダ圧が低下するので、マスタカット弁42,43と保持弁50,51,52,53を閉弁させる一方、減圧弁58,59,60,61を開弁させる減圧モードに切り替えられる。これにより、夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLには、その際の要求車輌制動力を満足させるまで減圧されたブレーキ液圧(最大でも低下後のマスタシリンダ圧)が供給される。また、夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLのブレーキ液圧の増減が済んだ後には、マスタカット弁42,43と保持弁50,51,52,53と減圧弁58,59,60,61を閉弁させてブレーキ液圧を保持させる保持モードへと切り替えられる。尚、夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLには、要求車輌制動力に応じたブレーキ液圧が所定の又は車輌の状態に応じた配分比で配分される。
本実施例1においては、そのようにして加圧ポンプ69,70を駆動させずに発生させた各車輪WFR,WFL,WRR,WRLの制動力の合計について「基準車輌制動力」という。
一方、この制動装置1においては、基準車輌制動力を最大限の大きさで発生させたとしても、その基準車輌制動力が要求車輌制動力に満たない場合がある。即ち、マスタシリンダ圧に基づいた基準車輌制動力のみでは要求車輌制動力を車輌に発生させることができない場合がある。これが為、この場合の電子制御装置2のブレーキ液圧制御手段は、ブレーキペダル操作量とマスタシリンダ圧と車輌の状態に基づいて、マスタカット弁42,43と保持弁50,51,52,53と減圧弁58,59,60,61のみならず電動機68も駆動制御し、車輌の挙動を安定させたまま各車輪WFR,WFL,WRR,WRLの制動力によって車輌に要求車輌制動力が働くようにする。具体的に、そのブレーキ液圧制御手段は、保持弁50,51,52,53を開弁させる一方、マスタカット弁42,43と減圧弁58,59,60,61を閉弁させ、その不足分に相当する車輌制動力(以下、「差圧車輌制動力」という。)が発生するように電動機68と加圧ポンプ69,70を駆動させる。つまり、ここでは、その不足分に応じた加圧量(即ち、吐出量や吐出圧)でブレーキ液が加圧されるようにマスタカット弁42,43と電動機68と加圧ポンプ69,70を駆動して、その加圧量に相当する差圧車輌制動力を所定の又は車輌の状態に応じた配分比で夫々の車輪WFR,WFL,WRR,WRLに働かせる。これにより、車輌には、基準車輌制動力と差圧車輌制動力を合わせた要求車輌制動力が働くようになる。
また、本実施例1の制動装置1においては、夫々のホイールシリンダ30FR,30FL,30RR,30RLの中から制御対象として選択されたものに対して個別にブレーキ液圧を供給することもできる。例えば、前述した旋回制御を行うときがこれに当たる。ここでは、右旋回時の旋回制御を例に挙げて説明する。ここで、旋回制御実行時のブレーキ液圧の制御については、ブレーキ液圧制御手段に実行させてもよいが、以下においては車輌制御手段に実行させるものとして例示する。
右旋回時の旋回制御を行う場合、電子制御装置2の車輌制御手段は、進行方向後側の旋回内輪となる右側後輪WRRにのみ制動力を発生させる。これが為、この場合の車輌制御手段は、マスタカット弁43と電動機68と第2ブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ70を駆動させ、更に、図2に示す如く、右側後輪WRRの保持弁52を非励磁状態(開弁状態)に保つと共に左側前輪WFLの保持弁53を励磁状態(閉弁状態)に切り替える。その際、第2ブレーキ液圧回路系統の減圧弁60,61は、非励磁状態(閉弁状態)に保たれたままにする。これにより、第2ブレーキ液圧回路系統においては、加圧ポンプ70がブレーキ液をマスタシリンダ22から吸入して加圧する。そして、この第2ブレーキ液圧回路系統においては、その加圧されたブレーキ液圧によって右側後輪WRRのホイールシリンダ30RRのみのブレーキ液圧が増圧され(制動力>0)、左側前輪WFLのホイールシリンダ30FLのブレーキ液圧が一定に保持され続ける(制動力=0)。また、このときの第1ブレーキ液圧回路系統においては、加圧ポンプ69を空回りさせてブレーキ液圧を加圧させないようにすると共に、保持弁50,51や減圧弁58,59を非励磁状態に保たせる。これにより、この第1ブレーキ液圧回路系統においては、保持弁50,51が開弁状態を保つと共に減圧弁58,59が閉弁状態を保つが、右側前輪WFRと左側後輪WRLのホイールシリンダ30FR,30RLのブレーキ液圧が一定に保持され続ける(制動力=0)。
ところで、この例示の旋回制御状態における非制御対象の第1ブレーキ液圧回路系統においては、加圧ポンプ69の下流側(吐出側)から右側前輪WFRと左側後輪WRLのホイールシリンダ30FR,30RLまでの間のブレーキ液流路にブレーキ液が充満している。従って、その間のブレーキ液圧の増加は、僅かであっても夫々のホイールシリンダ30FR,30RLのブレーキ液圧の増圧に繋がり、その増圧分に相当する制動力が右側前輪WFRと左側後輪WRLに働くようになる。
ここで、粘度の高いブレーキ液は、加圧ポンプ69,70の背圧を大きくする。これが為、加圧ポンプ69,70が空回りしていたとしてもブレーキ液の粘度が高ければ、その下流側(吐出側)においては、ブレーキ液圧が増圧されてしまう。そのブレーキ液の粘度はブレーキ液の温度が低いほどに高くなるので、加圧ポンプ69,70の下流側におけるブレーキ液圧は、ブレーキ液の温度が低くなるにつれて増圧され易くなる。そして、これにより、上述した例示の旋回制御状態においては、その際のブレーキ液の温度が低ければ、図3に示す如く、加圧ポンプ69の下流側からホイールシリンダ30FR,30RLまでの間のブレーキ液圧が増圧されるので、右側前輪WFRと左側後輪WRLに制動力を働かせてしまう。
このように、旋回制御を行う際にブレーキ液が低温で粘度が高いときには、旋回制御時の非制御対象のブレーキ液圧回路系統(第1ブレーキ液圧回路系統又は第2ブレーキ液圧回路系統)のブレーキ液圧が増圧されてしまうので、本来ならば「制動力=0」となる非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪(右側前輪WFR及び左側後輪WRL又は左側前輪WFL及び右側後輪WRR)に制動力が働いてしまう。そして、その制動力は、車輌に働かせるべき適切なヨーモーメントを変化させてしまうので、所望の旋回制御が行えず、更に車輌の挙動を乱してしまう虞がある。また、そのときの走行路面が低μ路の場合には、その制動力によって非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪がロックしてしまう可能性があるので、これによっても車輌の挙動を乱してしまう可能性がある。
そこで、本実施例1の車輌制御装置は、進行方向後側の後輪にのみ制動力を働かせて適切な旋回制御が実行できるように構成する。
例えば、本実施例1においては、旋回制御中ならば、非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪への制動力の付与を防ぐべく、そのブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ69(又は加圧ポンプ70)の下流側とその車輪のホイールシリンダ30FR,30RL(又はホイールシリンダ30FL,30RR)とを連通させないようにする。具体的に、本実施例1においては、旋回制御中ならば、その非制御対象のブレーキ液圧回路系統の保持弁50,51(又は保持弁52,53)を閉弁させておくように車輌制御手段を構成する。従って、本実施例1の旋回制御時には、非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がるホイールシリンダ30FR,30RL(又はホイールシリンダ30FL,30RR)を加圧してしまうようなブレーキ液の供給が遮断されて、そのホイールシリンダ30FR,30RL(又はホイールシリンダ30FL,30RR)のブレーキ液圧の増圧を防ぐことができるようになる。これが為、このときには、そのブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪における制動力の発生を抑えることができるので、適切な旋回制御が実行されるようになる。
以下、本実施例1の車輌制御装置における旋回制御中の動作の一例を図4のフローチャートに基づいて説明する。
先ず、本実施例1の電子制御装置2は、車輌制御装置の制御システムに故障がないか判断する(ステップST5)。ここで言う制御システムの故障とは、主にブレーキ液圧調整手段40の故障のことであり、具体的に電動機68の不具合や保持弁50,51,52,53の作動不良等を表す。
この電子制御装置2は、その制御システムに故障があれば本動作を終わらせる。一方、制御システムに故障がなければ、電子制御装置2は、例えばブレーキ液圧調整手段40に対する制御指令内容に基づいて旋回制御中であるのか否かを判断する(ステップST10)。
そして、この電子制御装置2の車輌制御手段は、旋回制御中ならば、そのときの非制御対象のブレーキ液圧回路系統(第1ブレーキ液圧回路系統又は第2ブレーキ液圧回路系統)に繋がる車輪のホイールシリンダ(ホイールシリンダ30FR,30RL又はホイールシリンダ30FL,30RR)へのブレーキ液流路を遮断する(ステップST15)。このステップST15においては、その非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪のブレーキ液圧調圧部の上流部とホイールシリンダとの連通を遮断させるように、図5に示す如く、そのブレーキ液圧調圧部の保持弁50,51を励磁状態にして閉弁させる。
これにより、その非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪のホイールシリンダには、ブレーキ液が低温で粘度が高く、その非制御対象のブレーキ液圧回路系統の加圧ポンプ(加圧ポンプ69又は加圧ポンプ70)の背圧によってブレーキ液圧が増圧させられたとしても、その増圧したブレーキ液圧が伝わらなくなる。これが為、旋回制御中には、その制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる進行方向後側の後輪のホイールシリンダのみブレーキ液圧が増圧されるので、その進行方向後側の後輪にのみ制動力を発生させることができる。例えば、右旋回時の旋回制御中には、右側前輪WFRと左側後輪WRLのホイールシリンダ30FR,30RLのブレーキ液圧の増圧を防ぎ、進行方向後側の旋回内輪となる右側後輪WRRにのみ制動力を発生させることが可能になる。従って、本実施例1の車輌制御装置は、旋回制御に必要な大きさ及び方向のヨーモーメントを車輌に働かせることができるので、適切な旋回制御を実行することができる。
尚、上記ステップST10において旋回制御中ではないと判断された場合、電子制御装置2は、本動作を終わらせる。
以上示した如く、本実施例1の車輌制御装置は、進行方向後側の後輪にのみ制動力を働かせる適切な旋回制御を実行することができるので、所望の回転半径への車輌の制御が可能になる。また、この車輌制御装置は、適切な旋回制御によって車輌の挙動の乱れを防ぐこともできる。更に、この車輌制御装置は、低μ路における旋回制御中の非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪に制動力を付与しないので、その車輪のロックを防ぐことができ、この車輪のロックに起因する車輌の挙動の乱れをも抑えることできる。
ここで、上述した本実施例1の車輌制御装置においては、旋回制御中であれば、ブレーキ液の温度の高低に拘わらず、非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪のホイールシリンダへのブレーキ液流路を遮断させている。しかしながら、加圧ポンプの背圧を大きくしない程度にまでブレーキ液の温度が高くなって粘度が低くなった場合には、そのブレーキ液流路を敢えて遮断しなくても適切な旋回制御を実行することができる。これが為、本実施例1の車輌制御装置は、ブレーキ液の温度が所定温度よりも低温になっているときにのみ上述したステップST15におけるブレーキ液流路の遮断制御を実行させるように構成してもよい。その所定温度とは、加圧ポンプの背圧を大きくしない程度にまで粘度が低くなるブレーキ液の最低温度である。
次に、本発明に係る車輌制御装置の実施例2を図1及び図6から図9に基づいて説明する。
一般に、旋回制御中の車輌の挙動は、後輪WRL(又は後輪WRR)、特に両方の後輪WRL,WRRのロックによって乱れ易くなる。そこで、本実施例2の車輌制御装置は、旋回制御中に後輪WRL,WRRがロックしたときの車輌の挙動の乱れを抑えるように構成する。
この本実施例2の車輌制御装置の具体例について図6のフローチャートに基づき説明する。
先ず、本実施例2の電子制御装置2は、前述した実施例1と同様に、車輌制御装置の制御システムの故障の有無(ステップST5)、旋回制御中であるのか否か(ステップST10)の判断を行う。
そして、本実施例2の電子制御装置2は、制御システムに故障がなく且つ旋回制御中の場合、ロック判定手段によって後輪WRL,WRRが両輪ともロックしているのか否かを判定する(ステップST13)。
そのロック判定手段は、電子制御装置2に設けた判定手段であり、夫々の車輪WFR,WFL,WRR,WRL毎にロックしているのか否かを周知の手法により判定することができる。例えば、本実施例2においては、車輪速度の検出が可能な図1に示す車輪速センサ81FR,81FL,81RR,81RLを夫々の車輪WFR,WFL,WRR,WRLに設ける。そして、このロック判定手段は、その車輪速センサ81FR,81FL,81RR,81RLの検出値に基づいて、夫々の車輪WFR,WFL,WRR,WRLがロックしているのか否かを判定する。ステップST13においては、夫々の後輪WRL,WRRの車輪速度が「0」になっているならば「後輪WRL,WRRが両輪ともロックしている」と判定される。
このステップST13において後輪WRL,WRRが両輪ともロックしていないと判定された場合、電子制御装置2の車輌制御手段は、実施例1のステップST15と同様に、そのときの非制御対象のブレーキ液圧回路系統(第1ブレーキ液圧回路系統又は第2ブレーキ液圧回路系統)に繋がる車輪のホイールシリンダ(ホイールシリンダ30FR,30RL又はホイールシリンダ30FL,30RR)へのブレーキ液流路を遮断する(ステップST15)。これにより、この場合には、実施例1と同様の作用効果が得られる。
一方、ステップST13において後輪WRL,WRRが両輪ともロックしていると判定された場合、車輌制御手段は、その後輪WRL,WRRのホイールシリンダ30RL,30RRに供給されているブレーキ液圧を減圧する(ステップST20)。例えば、このステップST20においては、図7に示す如く、その後輪WRL,WRRの夫々のブレーキ液圧調圧部を減圧モード(保持弁51,52を閉弁、減圧弁59,60を開弁)に切り替える。ここでは、その減圧モードに切り替えたままにしておいてもよく、ロックが解消された際に保持モードへと切り替えてもよい。このブレーキ液圧の減圧により、夫々の後輪WRL,WRRにおいては、制動力が低下していってロックが解消される。従って、本実施例2の車輌制御装置は、車輌の挙動を安定方向へと導くことができる。
ここで、本実施例2の車輌制御装置は、次の図8のフローチャートに示すようにして車輌の挙動の安定化を図ってもよい。
ここでは、制御システムに故障がなく(ステップST5で否定判定)且つ旋回制御中(ステップST10で肯定判定)ならば、実施例1と同様に、非制御対象のブレーキ液圧回路系統に繋がる車輪のホイールシリンダへのブレーキ液流路を遮断する(ステップST15)。
これにより、進行方向後側の旋回外輪にはブレーキ液圧による如何様な制動力も働かなくなるので、その旋回外輪は、ロックしなくなる。これが為、ここでの電子制御装置2のロック判定手段は、進行方向後側の旋回内輪がロックしているのか否かを判定する(ステップST17)。
そして、その進行方向後側の旋回内輪がロックしていなければ、本動作を一旦終えてステップST5に戻る。この場合には、実施例1と同様の作用効果が得られる。
一方、進行方向後側の旋回内輪がロックしていると判定された場合、車輌制御手段は、その進行方向後側の旋回内輪のホイールシリンダに供給されているブレーキ液圧を減圧する(ステップST22)。例えば右旋回時の旋回制御ならば、この場合には、図9に示す如く、第1ブレーキ液圧回路系統の保持弁50,51が閉弁されると共に、進行方向後側の旋回内輪たる右側後輪WRRのブレーキ液圧調圧部が減圧モードに切り替えられる。このようにしても、この場合には、夫々の後輪WRL,WRRのロックが回避されているので、車輌の挙動を安定方向へと導くことができる。
尚、本実施例2のステップST15は、実施例1と同様に、ブレーキ液の温度が所定温度よりも低いときにのみ実行させるようにしてもよい。
ところで、上述した各実施例1,2においては所謂X配管のブレーキ液圧回路を有する制動装置1を例に挙げて説明したが、これまで説明してきた車輌制御装置は、一対の前輪と後輪の為のものとして夫々にブレーキ液圧回路系統が設定された制動装置であるならば適用することができる。この場合、車輌制御手段には、旋回制御中ならば、進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪のホイールシリンダへのブレーキ液の流路を遮断させる。
以上のように、本発明に係る車輌制御装置は、旋回制御を適切に実行させる技術に有用である。
本発明に係る車輌制御装置の構成を示す図である。 ブレーキ液の温度が適正なときの旋回制御実行時のブレーキ液圧調整手段の状態を示す図である。 ブレーキ液の温度が不適正なときの旋回制御実行時のブレーキ液圧調整手段の状態を示す図である。 実施例1の車輌制御装置における旋回制御中の動作を示すフローチャートである。 実施例1の車輌制御装置における旋回制御中のブレーキ液圧調整手段の状態を示す図である。 実施例2の車輌制御装置における旋回制御中の動作を示すフローチャートである。 実施例2の車輌制御装置における旋回制御中のブレーキ液圧調整手段の状態を示す図である。 実施例2の車輌制御装置における旋回制御中の他の動作を示すフローチャートである。 実施例2の車輌制御装置における旋回制御中の他の動作に伴うブレーキ液圧調整手段の状態を示す図である。
符号の説明
1 制動装置
2 電子制御装置(ECU)
10 ブレーキペダル
11 ブレーキペダル操作量検出手段
20 ブレーキ液圧発生手段
22 マスタシリンダ
30FR,30FL,30RR,30RL ホイールシリンダ
40 ブレーキ液圧調整手段
42,43 マスタカット弁
50,51,52,53 保持弁
58,59,60,61 減圧弁
68 電動機
69,70 加圧ポンプ
81FR,81FL,81RR,81RL 車輪速センサ
FR,WFL,WRR,WRL 車輪

Claims (4)

  1. ホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を調圧可能な車輪毎のブレーキ液圧調圧部,ブレーキ液を加圧して加圧後のブレーキ液圧を一対の前輪と後輪のブレーキ液圧調圧部に供給する対毎の加圧部及び当該各加圧部を作動させる1つの電動機を備えたブレーキ液圧調整手段と、該ブレーキ液圧調整手段を制御することで車輌の旋回中に進行方向後側の旋回内輪にのみ制動力を働かせて回転半径の短縮又は維持を図る旋回制御を行う車輌制御手段と、を有する車輌制御装置において、
    前記車輌制御手段は、ブレーキ液の温度が所定温度よりも低温で且つ旋回制御中の場合に、前記進行方向後側の旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪のホイールシリンダへのブレーキ液の流路を遮断するように構成したことを特徴とする車輌制御装置。
  2. 前記所定温度は、前記進行方向後側の旋回内輪に制動力を付与すべく前記電動機を駆動させた際に、該旋回内輪を含んでいない対の前輪と後輪に関わる前記加圧部の背圧を大きくしない程度にまで粘度が低くなるブレーキ液の最低温度であることを特徴とする請求項1記載の車輌制御装置。
  3. 車輪がロックしているのか否かを判定するロック判定手段を備え、
    後輪が両輪ともロックしていると判定された場合、前記車輌制御手段は、前記ブレーキ液の流路の遮断を行わずに当該夫々の後輪のホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を減圧させるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車輌制御装置。
  4. 車輪がロックしているのか否かを判定するロック判定手段を備え、
    前記進行方向後側の旋回内輪がロックしていると判定された場合、前記車輌制御手段は、該進行方向後側の旋回内輪のホイールシリンダに供給するブレーキ液圧を減圧させるように構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の車輌制御装置。
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