JP5117682B2 - 接着構造および接着方法 - Google Patents

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本発明は、接着構造および接着方法に関し、更に詳細には、解体性接着剤を用いる接着構造および接着方法に関する。
現在、リサイクル等の要求により、解体性の優れた接着剤として解体性接着剤が用いられている(例えば、特許文献1参照)。解体性接着剤は、接着時には十分に接着力を発揮するが、加熱や給水などの外的刺激を加えることによって接着力を失い、分離される接着剤である。
しかし、例えば熱可塑性樹脂のように熱により溶融して解体するホットメルトタイプの解体性接着剤は粘度が高く、また熱や水分に反応して解体するフィラーを内包した解体性接着剤はごわごわして取り扱い性が悪いため、広い面積に塗布し難い。
また、熱硬化性樹脂等の熱硬化タイプの解体性接着剤を用いる場合には、相性の良い樹脂を使用しつつ構造接着剤として強い強度が要求される場合に、使用する解体性接着剤の選択の幅が狭くなり、硬化時間が長くなるとともに長時間の加熱が必要となる場合がある。
特開2003−276403号公報
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、解体性接着剤の適用が容易であり、かつ解体性を有する接着構造および接着方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係る接着構造は、互いに接着される部材間の接合部位、非解体性接着剤よりなる非解体性接着層が形成されるとともに、前記接合部位の端部から中央部に向かって所定の範囲は解体性接着剤よりなる少なくとも解体性接着層が形成され、前記接合部位の端部から前記所定の範囲、前記解体性接着層および前記非解体性接着層が隣接して形成され、若しくは前記非解体性接着層が形成されずに前記解体性接着層が形成され、前記所定の範囲よりも前記接合部位の中央部側の少なくとも一部に、前記解体性接着層が形成されずに前記非解体性接着層が形成されることを特徴とする。
上記目的を達成する本発明に係る接着方法は、互いに接着される部材間の接合部位、非解体性接着剤と、前記接合部位の端部から中央部に向かって所定の範囲に少なくとも適用される解体性接着剤と、を用いて接着し、前記接合部位の端部から前記所定の範囲、前記解体性接着層および前記非解体性接着層を隣接して形成し、若しくは前記非解体性接着層を形成せずに前記解体性接着層を形成し、前記所定の範囲よりも前記接合部位の中央部側の少なくとも一部に、前記解体性接着層を形成せずに前記非解体性接着層を形成することを特徴とする。
上記のように構成した本発明に係る接着構造は、解体性接着層を接合部位の端部から所定の範囲に形成することで塗布面積を小さくすることができ、取り扱い性の悪い解体性接着剤でも容易に適用することができる。また、解体性接着剤が硬化した後に非解体性接着剤により部材同士を接着することもできるため、解体性接着剤が硬化するまで待つ必要がなく、工程の無駄を省くことができる。
本発明の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態に係る接着構造の接着前を示す斜視図、図2は第1実施形態に係る接着構造を示す断面図である。
2つの部材を接着する場合には、図1に示すように、第1部材1または第2部材2の接着面3,4に接着剤を塗布した後に、接着面3,4を重ね合わせて接着する。本実施形態では、第1部材1としての例えば車体部品と、第2部材2としての例えば接合金具とを接着する。第1部材1には、穴部5が形成され、第2部材2には、上述の穴部5に挿入されるピン部6が形成されている。第2部材2の接着面4には、全面に解体性接着剤Aが塗布されており、この解体性接着剤Aは、第1部材1,第2部材2を接合する前に既に硬化している。解体性接着剤とは、接着時には十分に接着力を発揮するが、加熱や給水などの外的刺激を加えることによって接着力を失い、分離される接着剤である。解体性接着剤には、例えば熱可塑性樹脂のように熱により溶融して解体するもの(ホットメルトタイプ)、熱によりガス化する液体を内包したマイクロバルーンや熱膨張性黒鉛などのフィラーが内在されて加熱により膨張して分離するもの等がある。
第2部材2に塗布された解体性接着剤Aが硬化した後、第1部材1または第2部材2(本実施形態では第1部材1)の接着面3に非解体性接着剤Bが塗布され、図2に示すように、第1部材1と第2部材2が接着される。なお、本明細書において、非解体性接着剤とは解体性接着剤ではない接着剤、または本明細書中の解体性接着剤の解体温度において解体性を有さない接着剤を表すものとして定義している。
第1部材1に塗布される非解体性接着剤Bは、常温速硬化型であることが好ましい。
更に、非解体性接着剤Bおよび解体性接着剤Aは、マトリックス樹脂が同一であることが好ましい。マトリックス樹脂を同一とすると、接着剤同士の相性がよいため、非解体性接着剤Bと解体性接着剤Aの間の界面での欠陥の発生を抑制でき、接着強度を向上させることができる。
第1部材1と第2部材2が接着されると、図2に示すように、接合部位9に、非解体性接着剤Bからなる非解体性接着層10と、解体性接着剤Aからなる解体性接着層11とが形成される。
このように形成された接合部位9は、解体性接着層11が接着面4の全面に形成されているため、リサイクル時に加熱や給水などの外的刺激を与えることにより解体性接着層11が接着力を失い、第1部材1と第2部材2を容易に分離することができる。
また、熱硬化性樹脂等の熱硬化タイプの解体性接着剤を使用する場合には、相性の良い樹脂を使用しつつ構造接着剤として強い強度が要求される場合に、使用する解体性接着剤の選択の幅が狭くなり、硬化時間が長くなるとともに長時間の加熱が必要となる場合がある。しかし本実施形態では、予め解体性接着剤Aが塗布されて硬化された第2部材2を用いるため、第1部材1と第2部材2を接着する際に解体性接着剤Aの硬化を待つ必要がない。したがって、例えば常温速硬化性を有する非解体性接着剤を使用することにより、第1部材1と第2部材2を加熱することなく常温で迅速に接着可能であり、プロセス性を向上させることができる。
<第2実施形態>
図3は第2実施形態に係る接着構造の接着前を示す斜視図、図4は第2実施形態に係る接着構造を示す断面図、図5は第2実施形態に係る接着構造の変形例を示す断面図である。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する部位については同一の符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
第2実施形態は、図3に示すように、第2部材2の接着面4の端部から塗布長さLの範囲にのみ解体性接着剤Aを塗布して硬化させている点で第1実施形態と異なる。
したがって、第1実施形態と同様に、予め解体性接着剤Aが塗布されて硬化された第2部材2を用いるため、第1部材1と第2部材2を接着する際に解体性接着剤Aの硬化を待つ必要がなく、また常温速硬化性を有する非解体性接着剤Bを使用することにより、第1部材1と第2部材2を常温で迅速に接着可能である。
第1部材1と第2部材2が接着されると、図4に示すように、接合部位13の端部から所定の範囲には非解体性接着層14と解体性接着層15が2重層構造で形成され、中央部には非解体性接着層14のみの層が形成される。
この接着構造の剪断強度の大部分は、非解体性接着層14が担うため、高強度の接着構造を実現できる。
また、解体性接着剤Aが硬化する前に非解体性接着剤Bを塗布してもよい。この際には、非解体性接着剤Bを迅速に硬化させることが可能であるため、解体性接着剤Aが硬化するまでに比較的時間を要する場合であっても、解体性接着剤Aが硬化するまで第1部材1と第2部材2を保持する必要がなく、プロセス性を改善できる。この場合には、接合部位13の端部から所定の範囲は、解体性接着剤Aと非解体性接着剤Bの二重層構造または解体性接着剤Aのみの層構造とすることができる。
また、図5に示すように、接合部位13の端部から所定の範囲に隙間16を設けて第1部材1と第2部材2を非解体性接着剤Bにより接着した後に、この隙間16に解体性接着剤Aを注入してもよい。この場合においても、第1部材1と第2部材2は非解体性接着剤Bにより既に接合されているため、解体性接着剤Aが硬化するまで第1部材1と第2部材2を保持する必要はなく、プロセス性を改善できる。
本実施形態に係る接着構造のリサイクル時には、外的刺激を与えることにより解体性接着剤Aが塗布されている接合部位13の端部から所定の範囲のみが接着力を失う。接合部位13の端部は外力に弱いため小さな力で剥離を生じさせることができ、一端剥離が始まれば、他の非解体性接着層14でも剥離亀裂が進展し、第1部材1と第2部材2を容易に分離することができる。
また、例えば熱可塑性樹脂のように熱により溶融して解体するホットメルトタイプの解体性接着剤は粘度が高く、熱や水分に反応して解体するフィラーを内包した解体性接着剤はごわごわして取り扱い性が悪いため、広い面積に塗布し難い。しかし、本実施形態では解体性接着剤Aを少量塗布するのみでよいため、取扱性の悪い解体性接着剤でも容易に適用することができる。
前述の塗布長さLは、限定するものではないが、端部から1mm以上25mm以下の範囲であることが好ましく、更には、端部から5mm以上10mm以下の範囲であることがより好ましい。塗布長さLが短過ぎると、第1部材1と第2部材2の分離が困難になり、塗布長さLが長過ぎると、非解体性接着層14が剪断強度を担うという本実施形態の特徴が低減される。
<第3実施形態>
図6は第3実施形態に係る接着構造の接着前を示す斜視図、図7は第3実施形態に係る接着構造を示す断面図である。なお、第1の実施形態と同様の機能を有する部位については同一の符号を使用し、重複を避けるため、その説明を省略する。
第3実施形態では、第1実施形態と同様に第2部材2の全面に解体性接着剤Aか塗布されて硬化されているが、図6,7に示すように、第2部材2のピン部6を挟むようにして、解体性接着剤A自体からなる2つの凸部20が形成される。この凸部20は、第1部材1の接着面3の穴部5に設けられる凹部21に対応する形状となっている。凸部20が予め設けられた第2部材2を、非解体性接着剤Bを介して第1部材1と重ねることにより、凸部20が凹部21に嵌合する。これにより、凸部20が、解体性接着剤Aが硬化するまでの間、第1部材1,第2部材2間の回り止めや仮止め機構としての機能を果すことができる。したがって、解体性接着剤Aが硬化するまでに他の仮止め治具が必要なく、仮止め治具を取り付けるための工程を省くことができる。また、解体時には、この凸部20が解体性接着剤Aで形成されているため、外的刺激により形状が崩壊し、容易に解体することができる。
なお、本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の範囲内で種々改変することができる。例えば、ピン部6は必ずしも設けられなくてもよい。したがって、例えば穴部5およびピン部6が設けられない面同士の接着にも適用でき、第3実施形態においては、凸部20および凹部21が必ずしもピン部6および穴部5に対応して形成されなくてもよい。また、第3実施形態では2つの凸部20が形成されているが、2つに限定されず、また他の形状であってもよい。また、第2実施形態の塗布長さLは、接着面4の周囲に必ずしも同一幅で形成されなくてもよい。また、第1部材1と第2部材2が逆となる形態とすることもできる。
第1実施形態に係る接着構造の接着前を示す斜視図である。 第1実施形態に係る接着構造を示す断面図である。 第2実施形態に係る接着構造の接着前を示す斜視図である。 第2実施形態に係る接着構造を示す断面図である。 第2実施形態に係る接着構造の変形例を示す断面図である。 第3実施形態に係る接着構造の接着前を示す斜視図である。 第3実施形態に係る接着構造を示す断面図である。
符号の説明
1 第1部材、
2 第2部材、
3,4 接着面、
5 穴部、
6 ピン部、
9,13 接合部位、
10,14 非解体性接着層、
11,15 解体性接着層、
16 隙間、
20 凸部、
21 凹部、
A 解体性接着剤、
B 非解体性接着剤、
L 塗布長さ。

Claims (13)

  1. 互いに接着される部材間の接合部位、非解体性接着剤よりなる非解体性接着層が形成されるとともに、前記接合部位の端部から中央部に向かって所定の範囲は解体性接着剤よりなる少なくとも解体性接着層が形成され、
    前記接合部位の端部から前記所定の範囲、前記解体性接着層および前記非解体性接着層が隣接して形成され、若しくは前記非解体性接着層が形成されずに前記解体性接着層が形成され、
    前記所定の範囲よりも前記接合部位の中央部側の少なくとも一部に、前記解体性接着層が形成されずに前記非解体性接着層が形成されることを特徴とする接着構造。
  2. 前記解体性接着層には、前記互いに接着される部材の一方に形成される凹部に対応する形状の凸部が形成されることを特徴とする請求項1に記載の接着構造。
  3. 前記非解体性接着剤は、室温硬化型であることを特徴とする請求項1または2に記載の接着構造。
  4. 前記非解体性接着剤は、速硬化型であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着構造。
  5. 前記非解体性接着剤および解体性接着剤は、マトリックス樹脂が同一であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着構造。
  6. 互いに接着される部材間の接合部位、非解体性接着剤と、前記接合部位の端部から中央部に向かって所定の範囲に少なくとも適用される解体性接着剤と、を用いて接着し、
    前記接合部位の端部から前記所定の範囲、前記解体性接着層および前記非解体性接着層を隣接して形成し、若しくは前記非解体性接着層を形成せずに前記解体性接着層を形成し、
    前記所定の範囲よりも前記接合部位の中央部側の少なくとも一部に、前記解体性接着層を形成せずに前記非解体性接着層を形成することを特徴とする接着方法。
  7. 前記解体性接着剤は、前記互いに接着される一方の部材の接合部位に対応する部位の端部から前記所定の範囲に塗布されることを特徴とする請求項6に記載の接着方法。
  8. 前記互いに接着される部材の一方に解体性接着剤を塗布して硬化させた後に、非解体性接着剤を用いて前記部材同士を接着することを特徴とする請求項6または7に記載の接着方法。
  9. 前記互いに接着される部材の一方に解体性接着剤を塗布した後、解体性接着剤が硬化する前に、非解体性接着剤を用いて前記部材同士を接着することを特徴とする請求項6または7に記載の接着方法。
  10. 前記互いに接着される部材同士が、前記接合部位の端部から所定の範囲に隙間を残して非解体性接着剤により接着された後に、当該隙間に解体性接着剤を注入させることを特徴とする請求項6に記載の接着方法。
  11. 前記非解体性接着剤は、室温硬化型であることを特徴とする請求項6〜10のいずれか1項に記載の接着方法。
  12. 前記非解体性接着剤は、速硬化型であることを特徴とする請求項6〜11のいずれか1項に記載の接着方法。
  13. 前記非解体性接着剤および解体性接着剤は、マトリックス樹脂が同一であることを特徴とする請求項6〜12のいずれか1項に記載の接着方法。
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