JP5116373B2 - 選挙投票用紙 - Google Patents
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Description
本発明による選挙投票用紙は、選挙の集計などに用いる計数機での多重送り(2枚以上の紙送り)の検知を容易とし、集計などの作業が容易となる。
この用紙は、選挙民により候補者名が記入欄に書き込まれた後、2つ折りに折り畳まれ、投票箱内に投入される。
選挙投票終了後、投票箱より投票用紙は取り出され、選挙管理委員の立会のもとに折り畳まれた投票用紙を集計人が開き、候補者名毎に投票用紙を振り分け、人手により各候補者毎の票数を数え挙げて集計してきた。
近年、選挙投票用紙として、プラスチックを素材とした合成紙を投票用紙に使用し、さらに機械による投票用紙計数機を使用することで、集計時の省力化を目指すことが可能となり、更には開票時間の短縮に大きく貢献している。(特許文献1、2参照。)
しかし近年、計数機での用紙の搬送途中に、近赤外線光透過センサーを設置して、該光線の光線透過率から、2枚以上重なった選挙用紙を判別し、同時に異常票専用スタッカーへ排出する機構の付いた投票用紙計数機が、例えば(株)ムサシ社製、商品名:テラックEL15R、として発売されており、作業効率は大きく改善されている。
しかしながら、二重送り防止機能が追加された計数機では、選挙投票用紙の近赤外線での透過率を測定することで多重重ね投票用紙を判別するため、近年の複数色に着色された選挙投票用紙においては、選別効率が低いものも見受けられる。
さらに、本発明では塗工層が、(a)水性樹脂バインダー、(b)無機微細粉末、(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマーを含有していることが好ましく、更には(d)着色剤を含有していることが好ましい。
また本発明では二軸延伸フィルムが、熱可塑性樹脂としてポリオレフィン系樹脂を含み、かつフィラーを11〜56重量%含むことが好ましい。
1.二軸延伸フィルム
本発明における二軸延伸フィルムとは、本発明の選挙投票用紙の基紙となるものである。該二軸延伸フィルムの特徴としては、熱可塑性樹脂を含み、好ましくはフィラーを含み、異なる二軸の方向に延伸された延伸フィルムであり、不透明度が90〜98%であって、面積延伸倍率が25〜70倍であることが好ましく、空孔率が15〜60%であることが好ましい。
本発明の二軸延伸フィルムは、複層構造であっても二軸延伸フィルムのみを含むものであってもよい。
また本発明では、熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基紙に用いることで、不透明度や光線透過率に寄与する空孔含有率(空孔率)や空孔のサイズを、フィルムの延伸倍率から従来品に比べて任意に設定しやすいという利点もある。
更に本発明では、熱可塑性樹脂からなる二軸延伸フィルムを基紙に用いることで、好ましくは内部に有する空孔を、フィルムの面方向で円形(全体では円盤状)に近く方向性の少ない形状とすることが可能であり、投票用紙の目方向によって特定波長の光線透過率が変わるなどの不具合は起こりにくい。
本発明の二軸延伸フィルムに用いられる熱可塑性樹脂は、二軸延伸フィルムのマトリクスを形成するものであり、その種類は特に制限されない。例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂、あるいはポリプロピレン等のプロピレン系樹脂、ポリ(4−メチルペンタ−1−エン)、エチレン−環状オレフィン共重合体等のシクロオレフィンコポリマー樹脂、等のオレフィン系樹脂;ナイロン−6、ナイロン−6,6、ナイロン−6,10、ナイロン−6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;アタクティックポリスチレン、シンジオタクティックポリスチレン、スチレン−アクリロニトリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂等のスチレン系樹脂;ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィド等の延伸成形が可能な熱可塑性樹脂が挙げられる。これらは2種以上混合して用いることもできる。
かかるプロピレン系樹脂としては、プロピレン単独重合体が挙げられ、アイソタクティックないしはシンジオタクティックおよび種々の立体規則性を示すポリプロピレンや、プロピレンを主成分とし、これとエチレン、ブテン−1、ヘキセン−1、ヘプテン−1,4−メチルペンテン−1等のα−オレフィンとの共重合体が挙げられる。この共重合体は、2元系でも3元系でも4元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。またプロピレン系樹脂を用いる場合は、延伸性を良好とするためポリエチレン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体等のプロピレン系樹脂よりも融点が低い熱可塑性樹脂を3〜25重量%配合するのがよい。このような熱可塑性樹脂は、二軸延伸フィルム中に、44〜89重量%で使用することがより好ましく、50〜86重量%で使用することがさらに好ましい。
二軸延伸フィルムにおける熱可塑性樹脂の含有量が44重量%未満であれば、基紙としての強度が不足し、また延伸成形時に破断しやすい傾向がある。逆に89重量%を超えては充分な空孔数が得られない傾向がある。
本発明の二軸延伸フィルムには、熱可塑性樹脂とともにフィラーを用いることができ、該フィラーとしては、各種無機フィラーまたは有機フィラーを使用することができる。本発明の選挙投票用紙に所望の不透明度を持たせるために、無機フィラーまたは有機フィラーは、二軸延伸フィルム中に、11〜56重量%の範囲で使用することがより好ましく、14〜50重量%で使用することがさらに好ましい。
無機フィラーとしては、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、酸化マグネシウム、アルミナ、紫外光吸収フィラー等が挙げられ、紫外光吸収フィラーとしては、二酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。
有機フィラーとしては、マトリクス樹脂がポリオレフィン樹脂の場合に、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン−6、ナイロン−6,6、環状オレフィン重合体、環状オレフィンとエチレンとの共重合体等の用いるポリオレフィン樹脂の融点よりは高い融点(例えば、120〜300℃)ないしはガラス転移温度(例えば、120〜280℃)を有するものが使用できる。
二軸延伸フィルムには、上記の無機フィラーまたは有機フィラーの中から1種を選択してこれを単独で使用してもよいし、2種以上を選択して組み合わせて使用してもよい。2種以上を組み合わせて使用する場合には、有機フィラーと無機フィラーを混合して使用してもよい。
これらフィラーの平均粒径または平均分散粒径は、電子顕微鏡により観察された一次粒子または分散粒子10点の粒径を求め、その平均値として求めることができる。
本発明の二軸延伸フィルムには、必要に応じて、蛍光増白剤、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線安定剤(光安定剤)、紫外線吸収剤、染料、顔料、分散剤、滑剤、帯電防止剤、粘着防止剤、ブロッキング防止剤、難燃剤などの各種公知の添加剤を配合してもよい。熱安定剤としては、立体障害フェノール系やリン系、アミン系等の安定剤を0.001〜1重量%、光安定剤としては、立体障害アミン系やベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系などの光安定剤を0.001〜1重量%、無機フィラーの分散剤としては、シランカップリング剤、オレイン酸やステアリン酸等の高級脂肪酸、金属石鹸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸ないしはそれらの塩等を0.01〜4重量%、帯電防止剤としては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリルジエタノールアミン等の低分子型界面活性剤を0.01〜4重量%配合してもよい。
本発明で用いる二軸延伸フィルムは、単層構造でも良いし、2層以上に積層された複層構造でも良い。折り回復力の調整が容易になることから、複層構造であることが好ましい。
積層例として、例えば、ベース層の片面に表面層を積層した2層構造、ベース層の両面に表面層、裏面層をそれぞれ形成した3層構造を例示することができる。
さらには表面層とベース層の間に中間層を積層することで4層以上の多層構造とすることもできる。従って二軸延伸フィルムが、例えば、3層構造の場合は表面層/ベース層/裏面層、5層構造の場合は表面層/中間層/ベース層/中間層/裏面層の積層構造を例示できる。
積層方法に関しては特に限定されず、公知の積層方法、例えば、複数の押出機により溶融した樹脂を、フィードブロックまたはマルチマニホールドにより一台のダイに導きダイ内で積層する方法(共押出)、溶融押出ラミネートにより積層する方法(溶融ラミ)等が挙がられる。
二軸延伸フィルムが、表面層、ベース層、裏面層を含む積層フィルムである場合には、折り回復力を所望の範囲に調整しやすくするために、ベース層のフィラー含有量を15〜60重量%、表面層および裏面層のフィラー含有量を0〜15重量%の範囲に設定することが好ましい。
本発明で用いる二軸延伸フィルムの延伸成形方法としては、一般的な二軸延伸方法が使用できる。具体例としては、スクリュー型押出機に接続されたTダイやIダイを使用して溶融樹脂をシート状に押し出し成形した後、該シートを、ロール群の周速差を利用した縦延伸とテンターオーブンを利用した横延伸とを組み合わせた逐次二軸延伸にて延伸する方法や、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸にて延伸する方法、円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し、内部の空気圧力で同時二軸延伸するインフレーション成形方法、該シートをカットしパンタグラフ型延伸装置を用いて同時二軸延伸する方法などが挙げられる。
延伸温度は、使用する熱可塑性樹脂の融点より2〜60℃低い温度であり、樹脂がプロピレン単独重合体(融点155〜167℃)の場合は152〜164℃、高密度ポリエチレン(融点121〜134℃)の場合は110〜120℃の範囲であることが好ましい。また、延伸速度は20〜350m/分の範囲であることが好ましい。
二軸延伸フィルム中に発生させる空孔の大きさを調整するために、面積延伸倍率(縦方向延伸倍率と横方向延伸倍率との積)は25〜70倍の範囲とするのが好ましく、28〜60倍の範囲とすることがより好ましい。使用する熱可塑性樹脂がプロピレン系樹脂の場合、面積延伸倍率が25倍未満では、延伸ムラが発生し均一な二軸延伸フィルムが得られにくく、面積延伸倍率が70倍を上回る場合は、延伸時にフィルムが破断しやすいために好ましくない。
例えば、二軸延伸フィルムのカットサンプルを、使用する熱可塑性樹脂の融点(例えば、DSC測定により求めた融点)より2〜5℃低い温度に設定したオイルバス(例えば、シリコーンオイルバス)中に浸漬、静置して、延伸による配向がすべて緩和する様に熱収縮させて延伸前の状態とし、縦・横各方向の熱収縮率より算出することができる。
また、二軸延伸フィルムがフィラーを含有し、延伸により内部に空孔を有するものである場合は、縦・横各方向の断面を電子顕微鏡で観察し、任意の空孔10点のアスペクト比(長径/短径)の平均値を求めて、縦・横各方向での平均値の積を面積延伸倍率としても良い。
フィルムが二軸延伸フィルムであるか否か、またどの方向に延伸軸があるかを定性的に判断する方法としては、熱可塑性樹脂が結晶性ポリマーの場合、延伸により分子鎖の配向と同時に結晶化を伴うため、結晶部のX線回折を利用した解析方法を利用できる。例えば、フィルムを小片に切り出し、X線の入射方向を変えながら数枚の回折パターン写真を撮影して、フィルム中の熱可塑性樹脂の結晶配向度を確認すれば良い。
本発明の二軸延伸フィルムは上記4)の積層方法と、5)の延伸方法を組み合わせた成形方法により製造することができる。
本発明の投票用紙に用いる二軸延伸フィルムは、上記手法により内部に有する空孔の量や大きさを調整し、投票用紙の不透明度と光波長900nmにおける光線透過率とを調整することができる。その空孔の量(空孔率にて規定)および二軸延伸フィルムの厚さの増加に応じて、光線反射する界面数が増加するため、これに入射する光線の反射、散乱の確率が高まり、結果として不透明度は増加する傾向にある。また、二軸延伸フィルムに入射する光線の光波長が、これら空孔の大きさとほぼ等しいとき、該波長光線の反射、散乱の確率がより高まり、結果として該波長の光線透過率は選択的に低下する傾向にある。
従って本発明の投票用紙に用いる二軸延伸フィルムは、用いるフィラーの量やその平均粒径乃至平均分散粒径、フィラーの粒度分布、延伸成形時の面積延伸倍率、延伸成形時の温度などを調整し、その結果、目安として得られる空孔率と、空孔サイズの変更によって、塗工層も含めた選挙投票用紙の不透明度と光波長900nmにおける光線透過率とを所望の範囲に調整することができる。
本発明の二軸延伸フィルムの厚さは、取り扱いやすさの観点から、好ましくは60〜150μm、より好ましくは70〜120μm、特に好ましくは80〜110μmの範囲である。
本発明の二軸延伸フィルムの不透明度は、記入された候補者氏名が透けて見えることを防止するため、90〜98%の範囲である。
この二軸延伸フィルムの表裏の表面は、塗工層との接着性を良好とするためにコロナ放電処理されていてもよいし、更にプライマー処理されていてもよい。
二軸延伸フィルムの表裏面に塗工層を形成するために、塗工される塗工剤は、(a)水性樹脂バインダー、(b)無機微細粉末、(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマーを含有させることが好ましく、さらに塗工剤には(d)着色剤を含有させても良い。
塗工剤は、(a)水性樹脂バインダー中の樹脂固型分100重量部に対し、(b)無機微細粉末は300〜2,000重量部、好ましくは500〜700重量部の割合で、(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマーは0.1〜5重量部の割合で配合したものが好ましく用いられる。
先ず、(a)水性樹脂バインダーは、有機バインダーとして(b)無機微細粉末や(c)水溶性ポリマーの固着、および塗工層の二軸延伸フィルムへの密着力を付与するものである。本発明で使用し得る(a)水性樹脂バインダーは、基紙である二軸延伸フィルムの素材の熱可塑性樹脂の種類及びその他の条件を考慮して任意に選択すればよいが、例えば、メタクリル酸メチル−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、ポリ塩化ビニリデン系エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体エマルジョン、スチレン−ブタジエン共重合体ゴムラテックス、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体ラテックス、アクリル酸エステル−スチレン共重合体エマルジョン、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、アクリル系樹脂エマルジョン等を単独で、または二種以上を併用して用いることができる。
(b)成分の無機微細粉末としては、炭酸カルシウム、サチンホワイト、シリカ、酸化チタン、アルミナ、亜鉛華、酸化鉄、クレイ及び硫酸アルミニウム等が挙げられるが、特に炭酸カルシウム等の充填材類及び酸化チタン、亜鉛華、酸化鉄等の顔料類が好ましい。また、この無機微細粉末の粒径は15μm以下が好ましく、特に0.1〜10μmが好ましい。用いる無機微細粉末の粒径が15μmを超えては、得られる選挙投票用紙の表面が粗面となり、その平滑性が悪くなるからである。
更に、(c)成分の帯電防止機能を有する水溶性ポリマーとしては、ポリエチレンイミン、ポリ(エチレンイミン−尿素)、ポリアミンポリアミドのエチレンイミン付加物、窒素原子含有水溶性カチオン性ポリマーもしくは両性ポリマー等が挙げられる。これらの窒素原子含有水溶性ポリマーは、窒素原子含有単量体を単独重合するか、これら単量体と他の共重合性単量体を共重合することにより得られる。
この窒素原子含有水溶性ポリマーは、これら四級(両性化)窒素含有単量体(ロ)、(ニ)、(ニ)′、(ヘ)、(ヘ)′、(チ)、(チ)′、(リ)を単独重合して、またはこれら四級窒素含有単量体と他のビニル単量体とを共重合させることにより得られる。あるいは、三級窒素含有単量体(イ)、(ハ)、(ホ)、(ト)を単独重合、もしくは他の単量体と共重合させてからアルキルハライド、ジメチル硫酸、ベンジルハライドモノクロロ酢酸エステル等のカチオン化剤により四級化、又はモノクロル酢酸(塩)、プロパンサルトン、プロピオラクトン等の両性化剤により両性化することによって四級化ないし両性化して得ることができる。
この窒素原子含有水溶性ポリマーは、水溶性であることが好ましいが、塗膜の耐水性の観点から過度に水溶性であることは望ましくない。従ってこの三級ないし四級窒素含有重合体は、疎水性の単量体との共重合体であることが望ましい。疎水性単量体としては、スチレンまたはその核ないし側鎖置換体(メチルスチレン等)、塩化ビニル、長鎖アルキル基等を有するアクリルないしメタクリル酸エステル、ハロゲン化ビニル、その他が挙げられる。
(a)′単量体(イ)〜(ヘ) 20〜40重量%
(b)′
40〜80重量%
(c)′疎水性ビニル単量体 0〜20重量%
然して、上記(b)′成分としては、アクリル酸メチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ステアリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等が挙げられる。
本発明で最も好適なアクリル系ポリマーは、(a)′単量体が前記の単量体(ヘ)であり、X-がCl-であるものである。
これらアクリル系ポリマーは、三菱化学(株)よりサフトマーST1000、ST1100の商品名で販売されている。
塗工剤は、従来公知の溶剤を用いて上記組成物を溶剤の相の中に溶解、分散、乳濁分散、希釈して、流動性があり塗工可能なものを用いる。溶剤としては水を主体とするものを用いることが好ましい。
二軸延伸フィルム上に塗工層を設ける方法としては、コンマ方式、ロール方式、ロッド方式、カーテン方式、グラビア方式、ブレード方式、エアーナイフ方式、サイズプレス方式、ワイヤーバー方式、スライドホッパー方式、リバースグラビア方式等の一般的な塗工方法が用いられる。またこれら一般的な塗工方法を適宜組み合わせて塗工する方法も用いられる。
表面固有抵抗が1×1012Ωを越えると用紙間でブロッキングを生じたり、ほこりが投票用紙に付着しやすい。平滑度は、より平滑である(ベック指数値が高い)程、手で投票用紙をめくる作業が容易となるが、平滑度が余り高くなりすぎるとブロッキングを生じるようになり開票に支障を来たす可能性がある。また鉛筆筆記性も悪化する。
塗工層の厚みは表面側、裏面側とも0.05〜10μm程度とする。選挙投票用紙の肉厚は60〜170μmであることが好ましく、70〜140μmであることがより好ましく、80〜130μmであることが特に好ましい。
本発明の選挙投票用紙は、不透明度が90〜98%であり、且つ波長900nmでの光線透過率が14〜20%であることが必要である。
不透明度が90%未満の場合は、記載した人名が裏面側から透過しやすくなり、秘匿性の観点から好ましくない。不透明度が98%を上回る場合は、近赤外光の光線透過性もまた低下し、波長900nmの光線透過率を14〜20%の範囲に調整することが困難となり、所望の多重送り判別機能が低下するために好ましくない。
そして波長900nmでの光線透過率が14%未満の場合には、計数機器における二重送り判別機能が低下するため好ましくない。同じく該光線透過率が20%を上回るように調整すると、不透明度を90〜98%の範囲に調整することが困難となり、記載人名が裏面側から透過しやすくなり好ましくない。被選挙人の記入欄の印刷は、オフセット印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷等の一般的な印刷方法が用いられる。
ただし以下に示す材料、使用量、割合、操作等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適時変更することができる。従って、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。なお、実施例中の配合の%および部は全て重量基準である。
<製造例1>
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)72重量%、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製の商品名:ソフトン1200を更に分級により、0.1μm以下の微粒子分布をカットしたもの)20重量%、二酸化チタン(石原産業(株)社製、商品名:CR−60)8重量%を混合した組成物(A1)を主押出機へ、さらにポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP MA4)98重量%、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製の商品名:ソフトン1200を更に分級により、0.1μm以下の微粒子分布をカットしたもの)2重量%を混合した組成物(A2)を副押出機1および副押出機2へそれぞれ導入し、270℃の温度に設定した副押出機1、主押出機、副押出機2により溶融混練された上記組成物(A1)、(A2)を各押出機が接続するTダイヘッドより三層共押出手法によりシート状に押し出し、冷却装置により冷却して、A2/A1/A2の構成を有する積層無延伸シートとして得た。なお、上記組成物(A1)、(A2)には、配合した熱可塑性樹脂100重量部に対して、酸化防止剤としてフェノール系安定剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)社製、商品名:イルガノックス1010)0.05重量部、リン系安定剤(ジー・イー・プラスチック(株)製、商品名:ウエストン618)0.05重量部、ラジカル補足剤として、ヒンダードアミン系安定剤(三共(株)製、商品名:HA−70G)0.05重量部を配合した。
次いで、得られた積層無延伸シートを150℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向に5倍の延伸を行い、縦延伸後の同シートを再び155℃の温度にまで再加熱し、テンターを用いて横方向に9倍延伸して(面積延伸倍率:45倍)、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットした上、コロナ放電処理を施し、3層構造の厚さ70μm(A2/A1/A2=10μm/50μm/10μm)の積層フィルムで、白色度98%、不透明度94%、空孔率32%、密度0.84g/cm3の二軸延伸フィルムを得た。
製造例1の二軸延伸フィルムの3層構造の厚さを、押出機の吐出量を変更して70μmから100μm(A2/A1/A2=10μm/80μm/10μm)の積層フィルムとする以外は、同一製造法にて、白色度98%、不透明度96%、空孔率30%、密度0.83g/cm3の二軸延伸フィルムを得た。
ポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP EA8W)81重量%、高密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)社製、商品名:ノバテックHD HJ360)3重量%、及び炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1800)16重量%を混合した組成物(A1)を270℃の温度に設定した押出機にて混練させた後、シート状に押し出し、更に冷却装置により冷却して、無延伸シートを得た。次いで、得られたシートを150℃の温度にまで再度加熱した後、縦方向5倍の延伸を行って5倍縦延伸フィルムを得た。
さらにポリプロピレン(日本ポリケム(株)社製、商品名:ノバテックPP FY6H)54重量%と、炭酸カルシウム(備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1800)46重量%とを混合した組成物(A2)を別の押出機にて210℃で混練させた後、これをダイによりシート状に押出し、これを上記工程で得られた5倍縦延伸フィルムの両面に積層し、3層構造の積層フィルムを得た。次いで、この3層構造の積層フィルムを60℃の温度にまで冷却した後、再び約155℃の温度にまで加熱し、テンターを用いて横方向に8倍延伸し(面積延伸倍率 37.5倍)、165℃の温度でアニーリング処理し、60℃の温度にまで冷却し、耳部をスリットして、コロナ放電処理を施し3層構造(一軸延伸/二軸延伸/一軸延伸)の厚さ100μm(A2/A1/A2=25μm/50μm/25μm)の積層フィルムで、白色度98%、不透明度98%、空孔率30%、密度0.79g/cm3の二軸延伸フィルムを得た。
製造例3の二軸延伸フィルムの押出機の吐出量を変更し、またテンター延伸時の温度を155℃から180℃に変更する以外は、同一製造法にて、厚さ100μm(A2/A1/A2=25μm/50μm/25μm)の積層フィルムで、白色度93%、不透明度71%、空孔率10%、密度1.01g/cm3の熱可塑性樹脂延伸フィルムを得た。
前記製造例1で得た厚さ70μmの二軸延伸フィルムの表裏面に、下記の組成と配合量を有する表面用塗工剤と裏面用塗工剤を、それぞれバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥させて、表面塗工層の厚さが8μ、裏面塗工層の厚さが6μの白色の塗工紙を得た。
〔配合1〕
塗工剤組成 表面用塗工剤 裏面用塗工剤
(a)SBRラテックス(固形分50%) 32部 50部
JSR(株)社製、商品名:0695
(a)アクリル酸エステル系樹脂ラテックス(固形分50%)11部 10部
JSR(株)社製、商品名:AE950
(b)平均粒径1.5μmのCaCO3 100部 100部
備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1500
(c)ST−1100水溶液(固形分4%) 12部 12部
三菱化学(株)社製の水溶性アクリル系樹脂帯電防止剤
得られた塗工紙の表面塗工層の上に被選挙人の氏名の記入欄や、注意書事項、選挙管理委員会名を印刷し、本発明の選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表1に示す。
実施例1の二軸延伸フィルムを製造例1のフィルムから製造例2のフィルムに変更した以外は、同一製造法によって選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表1に示す。
前記製造例2で得た厚さ100μmの二軸延伸フィルムの表裏面に、下記組成と配合量を有する表面用塗工剤と裏面用塗工剤を、それぞれバーコーターを用いて塗布し、100℃で乾燥させて、表面塗工層の厚さが8μ、裏面塗工層の厚さが6μの水色(アサギ色)の塗工紙を得た。
〔配合2〕
塗工剤組成 表面用塗工剤 裏面用塗工剤
(a)SBRラテックス(固形分50%) 32部 50部
JSR(株)社製、商品名:0695
(a)アクリル酸エステル系樹脂ラテックス(固形分50%)11部 10部
JSR(株)社製、商品名:AE950
(b)平均粒径1.5μmのCaCO3 100部 100部
備北粉化工業(株)社製、商品名:ソフトン1500
(c)ST−1100水溶液※(固形分4%) 12部 12部
三菱化学(株)社製の水溶性アクリル系樹脂帯電防止剤
(d)ダイレクトブルー53 1部 1部
和光純薬工業(株)社製、試薬
この塗工紙の表面塗工層の上に被選挙人の記入欄や、注意書事項、選挙管理委員会名を印刷し、本発明の選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表1に示す。
実施例1の二軸延伸フィルムを製造例1のフィルムから製造例3のフィルムに変更した以外は、同一製造法にて選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表1に示す。
[比較例2]
実施例1の二軸延伸フィルムを製造例1のフィルムから製造例4のフィルムに変更した以外は、同一製造法にて選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表1に示す。
[比較例3]
実施例3の表面および裏面塗工層の配合から、(d)ダイレクトブルー53の配合量をそれぞれ8部に変更した以外は、同一製造法にて選挙投票用紙を作成した。この選挙投票用紙の物性を表1に示す。
1)厚さ
JIS−P−8118−1998に記載の方法に基づき測定した。なお、各層の厚さは二軸延伸フィルムないし塗工紙の断面を電子顕微鏡で観察し、その比率から算出した。
密度
JIS−P−8124−1998に記載の方法に基づき算出した。
2)不透明度
得られた選挙投票用紙の不透明度を、JIS−P−8149−2000に記載の方法に準拠し、標準黒色板を裏当てして測定した視感反射率を、標準白色板を裏当てして測定した固有視感反射率にて除した値を百分率で算出した。結果を表1に示す。
3)空孔率
明細書中に記載の計算式(式(1))に基づき算出した。
4)平滑度(ベック平滑度)
得られた選挙投票用紙の平滑度を、JIS−P−8119−1998に記載の方法に基づき測定した。結果を表1に示す。
得られた選挙投票用紙の表面固有抵抗を、JIS−K−6911−1995に記載の方法に基づき、温度23℃、相対湿度50%の条件下で、絶縁計(東亜電波工業(株)製、商品名:DSM−8103)を用いて測定した。結果を表1に示す。
6)鉛筆筆記性
評価担当者を10名選択し、各自にHBの鉛筆にて、得られた選挙投票用紙の表面側に本人の氏名を記入した。市販コピー用紙並で良好と判断した人数が10名であれば筆記性は良好、9名以下なら筆記性を不良とした。結果を表1に示す。
7)裏面認識性
上記鉛筆筆記性評価で使用したサンプルを蛍光灯下の屋内にて、筆記面を反対側から透かし見て、下記評価基準により判断した。結果を表1に示す。
○ すべてのサンプル(10点)の鉛筆筆記内容が認識不可
× 鉛筆筆記内容が認識可能
得られた選挙投票用紙の光波長900nmにおける光線透過率を、分光光度計(日立製作所(株)社製、商品名:U−3310)を用いて測定した。結果を表1に示す。
9)計数機による二重送り判別性
二重送り防止機能付き投票用紙計数機((株)ムサシ社製、商品名:テラックEL15R)を使用し、2枚重ね送りの判別テストを行った。
すなわち、選挙投票用紙(サイズ:80mm×128mm)の中央部にスティックのり((株)トンボ鉛筆社製、商品名:ビットハイパワー)を軽く付着させ、その上にさらに選挙投票用紙を重ねることで、強制的に2枚重ねの状態とした投票用紙を5組作成した。これら2枚重ね品を含む選挙投票用紙500枚を上記計数機にて計数を行い、異常表専用スタッカーに排紙された数(組数)を測定して、下記評価基準により判断した。結果を表1に示す。
○ すべて判別可能
× 1組以上の判別不可品が通過
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂からなり、表面層、ベース層および裏面層を含有し、ベース層のフィラー含有量が15〜60重量%、表面層および裏面層のフィラー含有量が0〜15重量%である二軸延伸フィルムを基紙とし、この基紙の表面と裏面にそれぞれ塗工層を有し、かつ表面塗工層に被選挙人の記入欄を印刷してなる選挙投票用紙であって、不透明度が90〜98%、かつ光波長900nmにおける光線透過率が14〜20%であることを特徴とする選挙投票用紙。
- 塗工層が、
(a)水性樹脂バインダー、
(b)無機微細粉末、
(c)帯電防止機能を有する水溶性ポリマー、
を含有していることを特徴とする請求項1に記載の投票用紙。 - 塗工層が、更に(d)着色剤を含有していることを特徴とする請求項2に記載の選挙投票用紙。
- 熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン系樹脂を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の選挙投票用紙。
- 二軸延伸フィルムが、フィラーを11〜56重量%含有していることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の選挙投票用紙。
- 二軸延伸フィルムが、面積延伸倍率25〜70倍で延伸されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の選挙投票用紙。
- 二軸延伸フィルムの下記式(1)で算出された空孔率が、15〜60%であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の選挙投票用紙。
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