以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.有機電界発光素子(上面発光型の例)
2.表示装置(有機電界発光素子を備えたアクティブマトリクス型の例)
[1.有機電界発光素子(上面発光型の例)]
図1は、本発明の一実施の形態に係る有機電界発光素子の断面構成を表している。この有機電界発光素子(有機EL素子)は、例えばカラーディスプレイなどの表示装置に用いられるものである。この有機電界発光素子は、例えば、第1基板10上に、第1電極21、第1有機層22、半透過反射膜23、第2有機層24、抵抗層25および第2電極26をこの順で備えている。また、第1有機層22は、第1電極21側から順に、正孔注入層22A、正孔輸送層22B、発光層22Cおよび電子輸送層22Dを積層した構造を有している。ここでは、第1電極21を陽極、第2電極26を陰極とし、発光層22Cから発せられる光(以下、発光光という)が第2電極26側から取り出される上面発光型の有機電界発光素子の場合について説明する。
基板10は、その一面側に、有機電界発光素子がマトリクス状に配列するように形成されるための支持体であり、例えば、以下の基板を含んで構成されている。すなわち、高歪点ガラス基板、ソーダガラス(Na2 O・CaO・SiO2 )基板、硼珪酸ガラス(Na2 O・B2 O3 ・SiO2 )基板、フォルステライト(2MgO・SiO2 )基板、鉛ガラス(Na2 O・PbO・SiO2 )基板あるいはそれらの表面に絶縁膜が形成された基板などのガラス基板や、石英基板あるいはその表面に絶縁膜が形成された基板や、シリコン基板あるいはその表面に絶縁膜が形成された基板や、樹脂製のフィルム状のフレキシブル基板や、金属箔などである。基板10が樹脂製のフレキシブル基板を含む場合には、そのフレキシブル基板の材質としては、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのメタクリル樹脂類や、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)あるいはポリブチレンナフタレート(PBN)などのポリエステル類や、ポリカーボネート樹脂などが挙げられる。ただし、この場合には、フレキシブル基板は、透水性やガス透過性を抑制するように、積層構造を有する、あるいは表面処理が施されていることが好ましい。中でも、基板10は、ガラス基板あるいは石英基板を含んで構成されていることが好ましい。また、基板10は、有機電界発光素子を用いた表示装置の駆動方式がアクティブマトリックス方式である場合には、画素ごとに薄膜トランジスタ(TFT)などの駆動回路が設けられたものなどでもよい。この場合の基板10には、画素ごとに、第1電極21がマトリックス状に設けられており、これによりアクティブマトリックス方式の表示装置では、各画素が独立して駆動する。
第1電極21は、陽極として作用し、可視光の実質的全波長成分を反射できるように形成されている。第1電極21を構成する材料(陽極材料)としては、例えば、アルミニウム(Al)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、セレン(Se)、ロジウム(Rh)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、レニウム(Re)、タンタル(Ta)あるいはニオブ(Nb)、またはこれらのうちの1種あるいは2種以上を含む合金や、それらの酸化物などが挙げられ、その他に、酸化スズ、ITO、酸化亜鉛あるいは酸化チタンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を併せて用いてもよい。中でも、光反射性に優れ、かつ効率よく正孔を注入することが可能であることから、真空準位からの仕事関数が大きいものが好ましい。具体的には、アルミニウム、クロム、モリブデン、タングステン、銅、銀、金、白金またはそれらのうちの1種あるいは2種以上を含む合金などである。この合金としては、銀を主成分として含み、0.3重量%〜1重量%のパラジウムと、0.3重量%〜1重量%の銅とを含むAg−Pd−Cu合金や、アルミニウムを主成分として含む合金などが挙げられる。特に、陽極材料としては、アルミニウムを主成分として含み、かつ副成分としてアルミニウムよりも相対的に仕事関数が低い元素を含む合金(以下、アルミニウム合金という)が好ましい。反射率が高く、比較的安価であるからである。アルミニウム合金の副成分としては、ランタノイド系列元素が好ましい。ランタノイド系列元素の仕事関数は、大きくはないが、この元素を含むことにより、陽極の安定性が向上すると共に十分な正孔注入性が得られるからである。また、アルミニウム合金は、副成分として、このランタノイド系列元素の他に、ケイ素や銅などを含んでいてもよい。アルミニウム合金中における副成分の含有量は、10重量%以下であることが好ましい。良好な反射率が安定的に維持でき、導電性も高く、第1電極21と基板10との密着性も高いからである。また、有機電界発光素子を製造する際に、高い加工精度および化学的安定性が得られるからである。
また、第1電極21は、例えば、複数の層構造を有していてもよい。具体的には、光反射性の優れた材料により構成された層を第1層とし、第1有機層22側に優れた光透過性と共に大きい仕事関数を有する第2層を設けた2層構造が挙げられる。この場合の第1層を構成する材料としては、例えばアルミニウム、あるいは上記のアルミニウム合金などが挙げられ、第2層を構成する材料としては、例えば、以下のものが挙げられる。アルミニウムの酸化物、上記のアルミニウム合金の酸化物、タングステンの酸化物、モリブデンの酸化物、ジルコニウムの酸化物、クロムの酸化物、タンタルの酸化物、バナジウムの酸化物、スズの酸化物、亜鉛の酸化物、ITOあるいはIZOなどである。中でも、アルミニウムあるいはアルミニウム合金の酸化物は、アルミニウムあるいはアルミニウム合金を含む第1層を形成したのちに、超高真空中に保持していなければ、その第1層の表面が酸化されて自然に形成される。このため、真空蒸着法やスパッタ法などの成膜工程を行わなくてもよいことから好ましい。また、アルミニウム合金を含む層を第1層とし、この第1層と基板10との間に、第1電極21と基板10との密着性を向上させるために、導電性を有する第2層を形成してもよい。この導電性を有する第2層を構成する材料としては、例えば、ITOやIZOなどの透明導電性材料などが挙げられる。なお、第1電極21では、上記で説明した2層構造の双方を併せて有していてもよい。すなわち、基板10上に、基板10との密着性を向上させるための導電性を有する層と、その上に設けられた光反射性の優れた材料により構成された層と、その上に設けられた優れた光透過性と共に大きい仕事関数を有する層とを備えた3層構造としてもよい。
第1電極21の形成方法としては、例えば、気相法あるいは液相法などが挙げられる。気相法としては、例えば、電子ビーム蒸着法、熱フィラメント蒸着法、真空蒸着法あるいはレーザアブレーション法などの蒸着法や、スパッタリング法や、化学的気相成長法(CVD法)や、イオンプレーティング法などが挙げられる。液相法としては、例えば、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法あるいはメタルマスク印刷法などの印刷法や、電気めっき法あるいは無電解めっき法などのめっき法や、ゾル・ゲル法などが挙げられる。これらの気相法および液相法のうちの1種あるいは2種以上の方法とエッチング法やリフトオフ法などとを組み合わせて所定の形状を有するように形成してもよい。中でも、印刷法は、直接、所望の形状(パターン)を有する第1電極21を形成可能になるため好ましい。また、第1有機層22上に気相法により第1電極21を形成する場合には、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法が好ましい。この場合の成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法としては、真空蒸着法あるいはCVD法などが挙げられる。
第1有機層22が備えた正孔注入層22Aは、第1電極21において生じた正孔を正孔輸送層22Bに効率よく注入するためのものである。正孔注入層22Aを構成する材料としては、任意の正孔注入材料を用いることができる。正孔注入材料としては、例えば、ヘキサニトリルヘキサアザトリフェニレン、銅フタロシアニン(CuPc)、4,4’,4”−トリス(ナフチルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(TNATA)、あるいは式(2)で表される4,4’,4”−トリス[N−(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
正孔輸送層22Bは、正孔注入層22Aから注入された正孔を発光層22Cへ効率よく輸送するためのものである。正孔輸送層22Bを構成する材料としては、任意の正孔輸送材料を用いることができる。正孔輸送材料としては、例えば、式(3)で表されるN,N’−ビス(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(α−NPD)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ジフェニル−4,4’-ジアミン(TPD)、あるいはN,N’−ジフェニル−N,N’−ビス[N−フェニル−N−(2−ナフチル)−4’−アミノビフェニル−4−イル]−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン(NPTE)などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、正孔輸送材料として正孔注入材料を用いることもできる。
発光層22Cは、第1電極21と第2電極26との間で電界が印加された際に、陽極(第1電極21)側から注入された正孔と、陰極(第2電極26)側から注入された電子とが再結合し、光を発生する領域である。発光層22Cを構成する材料としては、発光機能(正孔と電子との再結合の場を提供し、この再結合を発光につなげる機能)と共に、例えば、電荷の注入機能および電荷の輸送機能を有するものが好ましい。これにより、発光効率が向上する一方で、正孔注入層22A、正孔輸送層22B、および電子輸送層22Dを設けなくとも、発光することが可能となる。ここでいう電荷の注入機能とは、電界印加時において、陽極からの正孔を注入することができると共に、陰極からの電子を注入することができる機能のことである。また、電荷の輸送機能とは、注入された正孔および電子を電界の力で移動させる機能のことである。
発光層22Cを構成する材料は、発光光の色相に応じて任意に選択することができる。例えば、ホストとなる化合物(ホスト材料)に対して、各色(青色、緑色、赤色)の発光色素(発光性ゲスト材料)をドーピングしたものが挙げられる。この発光色素の色調に従って、電界が印加されると各色を発光する。
ホスト材料としては、例えば、ナフタレン誘導体、インデン誘導体、フェナントレン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、トリフェニレン誘導体、アントラセン誘導体、ペリレン誘導体、ピセン誘導体、フルオランテン誘導体、アセフェナントリレン誘導体、ペンタフェン誘導体、ペンタセン誘導体、コロネン誘導体、ブタジエン誘導体、スチルベン誘導体、オキサジアゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピラゾノキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体あるいはビス(ベンゾキノリノラト)ベリリウム錯体などが挙げられる。具体的には、例えば、式(4−1)で表されるルブレンや、式(4−2)で表される9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(ADN)などが挙げられる。
また、発光性ゲスト材料としては、発光効率が高い材料、例えば、低分子蛍光色素、蛍光性の高分子、さらには金属錯体等の有機発光材料が用いられる。以下で各色の発光ゲスト材料について説明する。
赤色発光性ゲスト材料は、約580nm〜700nmの波長範囲に発光ピークを有する化合物であり、例えば、ニールレッドや、DCM1(4−Dicyanmethylene−2−methyl−6(p−dimethylaminostyryl)−4H−pyran)あるいはDCJT(4−(ジシアノメチレン)−2−t− ブチル−6−(ジュロリジルスチリル)−ピラン)などのピラン誘導体や、ペリレン誘導体や、スクアリリウム誘導体や、ポルフィリン誘導体や、クロリン誘導体や、ユーロジリン誘導体などが挙げられる。赤色発光性ゲスト材料としては、これらのうちの1種あるいは2種以上が好ましく用いられる。ペリレン誘導体としては、例えば、式(5−1)で表される化合物(ジベンゾ[f,f’]ジインデノ[1,2,3−cd:1’,2’,3’−lm]ペリレン誘導体)などが挙げられる。
緑色発光性ゲスト材料は、約490nm〜580nmの波長範囲に発光ピークを有する化合物ことであり、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、アミノアントラセン誘導体、ピレン誘導体、ナフタセン誘導体、フルオランテン誘導体、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、キナクリドン誘導体、インデノ[1,2,3−cd]ペリレン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体ピラン系色素などが挙げられる。緑色発光性ゲスト材料としては、これらのうちの1種あるいは2種以上が好ましく用いられる。アミノアントラセン誘導体としては、例えば、式(5−2)で表されるジアミノアントラセンなどが挙げられ、クマリン誘導体としては、例えば、クマリン6などが挙げられる。
青色発光性ゲスト材料は、約400nm〜490nmの波長範囲に発光ピークを有する化合物であり、例えば、ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、ナフタセン誘導体、スチリルアミン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体などである。具体的には、アミノナフタレン誘導体、アミノアントラセン誘導体、アミノクリセン誘導体、アミノピレン誘導体、スチリルアミン誘導体あるいはビス(アジニル)メテンホウ素錯体が挙げられ、これらのうちの1種あるいは2種以上が好ましく用いられる。アミノクリセン誘導体としては、例えば、式(5−3)で表される化合物などが挙げられる。
また、発光層22Cを構成する材料は、以下のものを用いてもよい。具体的には、青色発光層を形成する場合には、オキサジアゾール誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ピラゾノキノリン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体あるいはオリゴチオフェン誘導体などの青色発光材料が挙げられる。緑色発光層を形成する場合には、青色発光材料に対して、上記の緑色発光性ゲスト材料のうちの1種あるいは2種以上をドーピングした緑色発光材料が挙げられる。赤色発光層を形成する場合には、青色発光材料あるいは緑色発光材料に対して、上記の赤色発光性ゲスト材料のうちの1種あるいは2種以上をドーピングした赤色発光材料が挙げられる。
なお、発光層22Cでは、発光光の色相が単色となるようにしてもよいし、各色のうちの1色を発光する層を積層して発光光を白色としてもよい。すなわち、発光層22Cは、例えば、青色発光層、緑色発光層あるいは赤色発光層のうちのいずれかでもよいし、それらを積層して白色発光層としてもよい。さらに、上記では、発光層22Cが赤色、緑色あるいは青色の光を発光する場合の構成の一例を説明しており、その他の色を発光するようにしてもよい。
電子輸送層22Dは、第2電極26から注入された電子を発光層22Cに効率よく輸送するためのものである。電子輸送層22Dを構成する材料としては、任意の電子輸送材料を用いることができる。電子輸送材料としては、例えば、式(6)で表されるAlq3(トリス(8−ヒドロキシキノリン)アルミニウム)などのアルミキノリノール錯体や、OXDあるいはPBDなどのオキサジアゾール誘導体や、TAZなどのトリアゾール誘導体や、バソクプロリンあるいはバソフェナントロリンなどのフェナンスロリン誘導体などが挙げられる。その他に、キノリン、ペリレン、フェナントロリン、ビススチリル、ピラジン、トリアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、フルオレノン、アントラセン、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、ブタジエン、クマリン、アクリジン、スチルベンあるいは1,10−フェナントロリンなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
第1有機層22の各層の形成方法としては、例えば、真空蒸着法あるいはレーザー転写法などのドライプロセスや、塗布法あるいは印刷法などのウェットプロセスが挙げられる。塗布法としては、例えば、スピンコート法、ディッピング法、ドクターブレード法、吐出コート法あるいはスプレーコート法などが挙げられる。印刷法としては、例えば、インクジェット法、オフセット印刷法、凸版印刷法、凹版印刷法、スクリーン印刷法あるいはマイクログラビアコート法などが挙げられる。第1有機層22は、これらのドライプロセスおよびウェットプロセスのうちの1種の方法により形成されていてもよいし、第1有機層22の各層を構成する材料の性質に応じて異なる方法により形成されていてもよい。
電子輸送層22Dと半透過反射膜23との間には、第2電極26側から移動した電子を電子輸送層22Dに効率よく注入するための電子注入層(図示せず)が設けられていてもよい。電子注入層は、光透過性が良好で、かつ仕事関数が小さい材料により構成され、その厚さは1nm未満となっている。電子注入層を構成する材料としては、例えば、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属フッ化物、アルカリ土類金属酸化物、あるいはアルカリ土類金属フッ化物などが挙げられる。具体的には、酸化リチウム(Li2 O)、酸化セシウム(Cs2 O)、フッ化リチウム(LiF)、フッ化セシウム(CsF)あるいはフッ化カルシウム(CaF2 )等である。これらは単独で用いられてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。
半透過反射膜23は、発光層22Cからの発光光およびその発光光が第1電極21によって反射した光の一部を透過し、他の一部を第1電極21側に反射するためのものである。半透過反射膜23は、電荷の輸送機能あるいは電荷の注入機能を有する材料により構成され、その厚さは、3nm以上6nm以下となっている。半透過反射膜23の厚さを、この範囲内にすることにより、半透過反射膜23が導電性の高い、例えば金属材料を含む場合に、駆動電圧をより低く抑えられると共に、素子製造時に異物が第1電極21上に存在していても、有機電界発光素子において短絡による電流のリークを生じにくくなる。詳細には、高い導電性を有する材料を含む半透過反射膜23の厚さが3nm未満の場合には、その厚さが3nm以上の場合よりも駆動電圧が高くなりやすくなる。一方、その厚さが6nm超の場合には、製造時に異物が第1電極21上に存在すると、半透過反射膜23が第1電極21と接して形成されやすくなる。これにより、有機電界発光素子において第1電極21と半透過反射膜23との間の短絡による電流リークが生じやすくなり、発光層22Cが発光しなかったり、点滅したりといった欠陥が生じやすくなる。
半透過反射膜23を構成する材料としては、例えば、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム、ナトリウムあるいはリチウムなどの単体、またはそれらの合金などが挙げられる。もちろん、半透過反射膜を形成可能であるならば、金属以外の材料を用いてもよい。中でも、マグネシウムと銀との合金(Mg−Ag合金)、アルミニウムとリチウムとの合金(Al−Li合金)、アルミニウムあるいは銀が好ましい。
半透過反射膜23の形成方法としては、上記した第1電極21の形成方法と同様の方法が挙げられる。中でも、半透過反射膜23を第1有機層22上に気相法により形成する場合には、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法が好ましい。この場合の成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法としては、真空蒸着法あるいはCVD法などが挙げられる。この場合、特に、カバレッジが低いことから、真空蒸着法が好ましい。
第2有機層24は、半透過反射膜23の酸化を防止して駆動電圧の上昇を抑えるためのものであり、電荷の輸送機能あるいは電荷の注入機能を備えている。これにより、以下の場合においても、駆動電圧の低電圧化を図ることができる。すなわち、第2有機層24を設けないようにすると、後述する抵抗層25を半透過反射膜23上に設けることになる。この際、半透過反射膜23が酸化されやすい金属材料を含み、その上、抵抗層25を、酸素を含む雰囲気下で半透過反射膜23上に形成する場合には、半透過反射膜23の表面が酸化されやすくなる。この半透過反射膜23の酸化により、駆動電圧が上昇するおそれがある。ところが、このような場合でも、酸化されやすい半透過反射膜23上に、酸素を含まない雰囲気下で形成可能であると共に酸化されにくい第2有機層24を設けることにより、半透過反射膜23の酸化による駆動電圧の上昇が抑制される。
第2有機層24を構成する材料は、例えば、平滑で欠陥のない連続膜を形成可能なものであることが好ましい。連続膜を形成しにくい材料であると、上記したように抵抗層25を、酸素を含む雰囲気下で形成した際に、半透過反射膜23が酸化され、駆動電圧が上昇するおそれがあるからである。加えて、第2有機層24を構成する材料は、駆動電圧の上昇を抑えるために、第2有機層24の電気抵抗がなるべく低くなりやすい材料、すなわち電気抵抗の低い材料が好ましい。ただし、電気抵抗の高い材料であっても、形成される第2有機層24の厚さを、例えば5nm〜10nm程度に薄くした場合に、連続膜が形成され、かつ第2有機層24としての電気抵抗を低くすることができれば用いることができる。このような第2有機層24を構成する材料としては、例えば、上記した正孔注入材料、正孔輸送材料、発光層22Cを構成する材料、あるいは電子輸送材料などが挙げられ、その他、一般的な有機電界発光素子の有機層を構成する材料なども挙げられる。中でも、第2有機層24を構成する材料としては、式(1)で表される化合物が好ましい。駆動電圧の上昇を抑制し、平滑な連続膜が形成されやすいからである。
(R1〜R6は各々独立に水素基、ハロゲン基、ヒドロキシル基、シアノ基あるいはニトロ基、またはカルボニル基を有する炭素数20以下の1価の基、カルボニルエステル基を有する炭素数20以下の1価の基、炭素数20以下のアルキル基、炭素数20以下のアルケニル基、炭素数20以下のアルコキシル基、炭素数30以下のシリル基、炭素数30以下のアリール基、炭素数30以下の複素環基、炭素数30以下のアミノ基あるいはそれらの誘導体である。)
式(1)中で説明した「誘導体」とは、置換基中に含まれる水素原子の一部あるいは全部が、他の原子あるいは原子団と置き換わった基のことをいう。他の原子としては、例えば、ハロゲンなどが挙げられる。また、原子団としては、例えば、ヒドロキシル基、シアノ基あるいはニトロ基、またはカルボニル基を有する基、カルボニルエステル基を有する基、アルキル基、アルケニル基、アルコキシル基、シリル基、アリール基、複素環基、あるいはアミノ基などが挙げられる。また、式(1)中で説明したR1〜R6のうちの2つあるいは2つ以上は互いに結合して、環構造を形成してもよい。
式(1)中で説明したアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、フルオレニル基、1−アントリル基、2−アントリル基、9−アントリル基、1−フェナントリル基、2−フェナントリル基、3−フェナントリル基、4−フェナントリル基、9−フェナントリル基、1−ナフタセニル基、2−ナフタセニル基、9−ナフタセニル基、1−ピレニル基、2−ピレニル基、4−ピレニル基、1−クリセニル基、6−クリセニル基、2−フルオランテニル基、3−フルオランテニル基、2−ビフェニルイル基、3−ビフェニルイル基、4−ビフェニルイル基、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基、あるいはp−t−ブチルフェニル基などが挙げられる。
式(1)中で説明した複素環基は、へトロ原子として酸素原子、窒素原子あるいは硫黄原子を含むと共に環の員数が5あるいは6の芳香族複素環基、または炭素数2〜20の縮合多環芳香複素環基が挙げられ、例えば、チエニル基、フリル基、ピロリル基、ピリジル基、キノリル基、キノキサリル基、イミダゾピリジル基、あるいはベンゾチアゾール基などである。具体的には、1−ピロリル基、2−ピロリル基、3−ピロリル基、ピラジニル基、2−ピリジニル基、3−ピリジニル基、4−ピリジニル基、1−インドリル基、2−インドリル基、3−インドリル基、4−インドリル基、5−インドリル基、6−インドリル基、7−インドリル基、1−イソインドリル基、2−イソインドリル基、3−イソインドリル基、4−イソインドリル基、5−イソインドリル基、6−イソインドリル基、7−イソインドリル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ベンゾフラニル基、3−ベンゾフラニル基、4−ベンゾフラニル基、5−ベンゾフラニル基、6−ベンゾフラニル基、7−ベンゾフラニル基、1−イソベンゾフラニル基、3−イソベンゾフラニル基、4−イソベンゾフラニル基、5−イソベンゾフラニル基、6−イソベンゾフラニル基、7−イソベンゾフラニル基、キノリル基、3−キノリル基、4−キノリル基、5−キノリル基、6−キノリル基、7−キノリル基、8−キノリル基、1−イソキノリル基、3−イソキノリル基、4−イソキノリル基、5−イソキノリル基、6−イソキノリル基、7−イソキノリル基、8−イソキノリル基、2−キノキサリニル基、5−キノキサリニル基、6−キノキサリニル基、1−カルバゾリル基、2−カルバゾリル基、3−カルバゾリル基、4−カルバゾリル基、9−カルバゾリル基、1−フェナンスリジニル基、2−フェナンスリジニル基、3−フェナンスリジニル基、4−フェナンスリジニル基、6−フェナンスリジニル基、7−フェナンスリジニル基、8−フェナンスリジニル基、9−フェナンスリジニル基、10−フェナンスリジニル基、1−アクリジニル基、2−アクリジニル基、3−アクリジニル基、4−アクリジニル基、あるいは9−アクリジニル基などが挙げられる。
式(1)中で説明したアミノ基としては、例えば、アルキルアミノ基、アリールアミノ基あるいはアラルキルアミノ基などが挙げられる。また、このアミノ基は、総炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基および1〜4つの芳香族環のうちの少なくとも一方を有することが好ましい。具体的には、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ビスビフェニリルアミノ基あるいはジナフチルアミノ基などである。
式(1)に示した化合物としては、例えば、式(1−1)〜式(1−50)で表される化合物あるいは式(1−1)〜式(1−50)に示した骨格を有する誘導体などが挙げられる。なお、式(1)に示した構造を有していれば、式(1−1)〜式(1−50)に示した化合物あるいはその誘導体に限定されるものではない。
式(1)に示した化合物を構成材料として用いた場合の第2有機層24の厚さは、30nm程度以下であることが好ましい。これにより第2有機層24の抵抗による電圧上昇が十分に抑えられるからである。この場合、特に、5nm以上10nm以下程度であることが好ましい。第2有機層24としての機能が十分に得られ、かつ余計な電圧上昇が抑えられるうえに、材料の使用量が抑えられるからである。
第2有機層24の形成方法としては、例えば、第1有機層22を構成する各層の形成方法と同様の方法が挙げられる。
抵抗層25は、素子製造時において、第1電極21上あるいは第2電極26上に異物が存在しても、第1電極21と第2電極26とが接して形成されないようするためのものである。抵抗層25は、第1電極21および第2電極26よりも高い電気抵抗を有すると共に、電荷の輸送機能あるいは電荷の注入機能を備えている。これにより、第1電極21と第2電極26との間の短絡の発生が抑制され、欠陥が生じにくくなる。
抵抗層25を構成する材料は、その電気抵抗率が1×106 Ω・m以上1×1010Ω・m以下(1×104 Ω・cm以上1×108 Ω・cm以下)のものが好ましい。上記の範囲内の材料を用いれば、十分に短絡の発生が抑制され、駆動電圧が低く抑えられるからである。特に抵抗層25を構成する材料は、その電気抵抗率が1×108 Ω・m以上1×109 Ω・m以下(1×106 Ω・cm以上1×107 Ω・cm以下)のものが好ましい。より十分に短絡の発生が抑制され、駆動電圧が低く抑えられるからである。このような抵抗層25を構成する材料としては、例えば、酸化物半導体材料が挙げられる。酸化物半導体材料としては、例えば、酸化ニオブ(Nb2 O5 )、酸化チタン(TiO2 )、酸化モリブデン(MoO2 )、酸化タンタル(Ta2 O5 )、酸化ニオブと酸化チタンとの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛(ZnO)との混合物、あるいは酸化ケイ素(SiO2 )と酸化錫(SnO2 )との混合物などが挙げられる。なお、抵抗層25を構成する材料は、その電気抵抗率と、その材料を用いて形成された抵抗層25によって生じる駆動時の電圧降下の値と、を考慮して選択される。抵抗層25によって生じる駆動時の電圧降下の値の目安は、例えば、0.05V〜1.0Vの範囲である。
また、抵抗層25は、例えば、複数の層構造を有していてもよい。この層構造としては、例えば、以下の2つの積層構造が挙げられる。第1の積層構造は、第2有機層24側から、第1抵抗層と、第1抵抗層よりも高い電気抵抗率を有する第2抵抗層とを含んでいる。第1抵抗層の構成材料としては、例えば、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化ニオブと酸化チタンとの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛との混合物、あるいは酸化ケイ素と酸化錫との混合物などが挙げられる。第1抵抗層は、例えば、これらの材料を用いて成膜時の酸素分圧を下げて形成される。第2抵抗層の構成材料としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化モリブデン、酸化タンタル、酸化ニオブと酸化チタンとの混合物、酸化チタンと酸化亜鉛との混合物、あるいは酸化ケイ素と酸化錫の混合物を挙げられる。第2抵抗層は、例えば、これらの材料を用いて、第1抵抗層よりも電気抵抗率が高くなるように形成される。また、第2の積層構造は、第2有機層24側から、第1抵抗層、第2抵抗層および第3抵抗層を有し、かつ第2抵抗層の電気抵抗率が第1抵抗層および第3抵抗層よりも高くなっている。第1抵抗層および第3抵抗層の構成材料としては、例えば、上記第1の積層構造の第1抵抗層の構成材料と同じ材料が挙げられ、第1抵抗層および第3抵抗層は、第1の積層構造の第1抵抗層と同様に形成される。また、第2抵抗層の構成材料は、上記第1の積層構造の第2抵抗層の構成材料と同じ材料が挙げられ、第2抵抗層は、第1の積層構造の第2抵抗層と同様に形成される。この場合の第1抵抗層、第2抵抗層および第3抵抗層の電気抵抗率をそれぞれR1 (Ω・m)、R2 (Ω・m)およびR3 (Ω・m)とすると、R1 、R2 およびR3 は、例えば、1×10-3Ω・m≦R1 /R2 ≦1×10-1Ω・m、かつ1×10-3Ω・m≦R3 /R2 ≦1×10-1Ω・mを満たすことが好ましい。抵抗層25と第2有機層24との間および抵抗層25と第2電極26との間の密着性が向上し、抵抗層25における電圧降下が少なくなる。よって、駆動電圧を低く抑えられる。
抵抗層25の厚さは、0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、0.3μm以上1μm以下であることが好ましい。上記の範囲内であれば、十分に短絡の発生が抑制され、駆動電圧が低く抑えられるからである。
抵抗層25の形成方法としては、カバレッジが良好な方法が好ましい。短絡の発生をより抑制しやすくなるからである。カバレッジが良好な形成方法としては、例えばスパッタリング法や、CVD法や、イオンプレーティング法などが挙げられる。また、抵抗層25の成膜時において、第1電極22上あるいは第2電極26上に異物が存在した場合のカバレッジを良好にするために、成膜時の圧力は、高い方が好ましく、0.1Pa以上10Pa以下とすることがより好ましい。また、酸化物半導体を含む抵抗層25を形成する場合、成膜時の酸素濃度(酸素分圧)によって抵抗層25の電気抵抗率が変化することも生じるが、抵抗層25によって生じる駆動時の電圧降下の値が上記した0.05V〜1.0Vの範囲であればよい。なお、例えば、抵抗層50をNb2 O5 により形成する場合、成膜時の酸素分圧が1×10-4Paから1×10-2Paまで変化しても、その電気抵抗率は1×106 Ω・m〜1×108 Ω・mまでしか変化しない。
第2電極26は、発光層22Cに対して電界を印加するための一方の電極であり、光透過性を有している。これにより、発光層22Cからの発光光およびその発光光が第1電極21において反射した光のうち、半透過反射膜23を透過した光が第2電極26から外側へ取り出されることとなる。第2電極26を構成する材料としては、例えば透明電極材料が挙げられる。透明電極材料としては、例えば、インジウム(In)、亜鉛、スズあるいはこれらのうちの2種以上を含む無機酸化物などが挙げられる。具体的には、ITO(In−Sn−O)、IZO(In−Zn−O)、ZnO、あるいはAZO(Al−Zn−O)などである。
第2電極26の形成方法としては、上記した第1電極21の形成方法と同様の方法が挙げられる。
また、第2電極26には、全体としての低抵抗化を図るために、第2電極21を構成する材料よりも低い抵抗の材料により構成された補助電極(バス電極;図示せず)が設けられていてもよい。
この有機電界発光素子では、第1電極21と半透過反射膜23との間で発光光を共振させて、光を取り出す共振器構造を備えるように構成されることが好ましい。共振器構造を備えることにより、第2電極26を透過して射出される射出光(取り出し光)が共振の中心波長付近になるため、(取り出し光)の色純度が向上すると共に、その光強度も向上する。すなわち、発光効率が高く、低電圧駆動が可能になるため、消費電力が抑えられ、長寿命になる。そのうえ、抵抗層25が半透過反射膜23と第2電極26との間に設けられているため、取り出し光のうち第2電極26の表面から垂直方向の光と斜め方向の光との間での輝度および色度の差が少なくするようにできる。よって、取り出し光の角度依存性が低く抑えられた素子構造を有するようにできる。
共振器構造では、第1有機層22が共振器となり、第1電極21の発光層22C側における発光光の反射表面(第1端部P1)と、半透過反射膜23の発光層22C側における発光光の反射表面(第2端部P2)との間で、発光層22Cからの発光光を共振させる。この場合には、第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離Lは、例えば、数式(1)を満たすように設定されている。なお、光学的距離Lは、第1端部P1と第2端部P2との間の物理的距離L0 と、第1端部P1と第2端部P2との間の層(ここでは、第1有機層22)の屈折率nとから算出され、L=L0 ×nである。
(数1)
(2L)/λ+Φ/(2π)=m・・・・・・(1)
(Lは第1端部P1と第2端部P2との光学的距離であり、Φは第1端部P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と第2端部P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)であり、λは取り出し光のスペクトルのピーク波長である。mは整数を表す。なお、Lおよびλの単位は互いに共通しており、例えばnmである。)
数式(1)中で説明した位相シフト量Φ1 ,Φ2 は、第1電極21および半透過反射膜23を構成する材料の複素屈折率の実数部分と虚数部分との値を、例えばエリプソメータを用いて測定し、これらの値に基づいて算出することができる(例えば、「Principles of Optic」, Max Born and Emil Wolf, 1974(PERGAMON PRESS)参照)。なお、第1有機層22、第2有機層24、抵抗層25あるいは第2電極26、またはその他の層の屈折率もエリプソメータを用いて測定することで求めることができる。
光学的距離Lが数式(1)を満たすようにする場合には、λは任意に設定可能であり、これにより所望の波長の光を取り出し光とすることができる。すなわち、λは、有機電界発光素子より取り出したい光のピーク波長となる。この光学的距離Lは、数式(1)において0または正の最小値となるように設定されことが好ましい。取り出し光の角度依存性が低く抑えられるからである。特に、光学的距離Lは、取り出し光の角度依存性をより低く抑えるためには、数式(1)中においてm=0となるように設定されることがより好ましいが、光学的距離Lは、数式(2)満たしていればよい。十分な発光効率が確保されると共に、取り出し光の角度依存性が十分に低く抑えられるからである。
(数2)
−0.3≦(2L)/λ1 +Φ/(2π)≦0.3・・・・・・(2)
(Lは第1端部P1と第2端部P2との光学的距離であり、Φは第1端部P1で生じる反射光の位相シフトΦ1 と第2端部P2で生じる反射光の位相シフトΦ2 との和(Φ=Φ1 +Φ2 )(rad)であり、λ1 は発光層における発光光のスペクトルのピーク波長である。なお、Lおよびλ1 の単位は互いに共通しており、例えばnmである。)
また、光学的距離Lは、発光層22Cの最大発光位置と第1端部P1との光学的距離L1 が数式(3−1)を満たし、かつ最大発光位置と第2端部P2との間の光学的距離L2 が数式(3−2)を満たすように設定されていてもよい。ここでの最大発光位置とは、発光領域のうちで最も発光強度が大きい位置を言う。例えば、発光層22Cの第1電極21側と第2電極26側との両方の界面で発光する場合には、そのうちの大きい発光強度の界面が最大発光位置となる。
(数3)
0.7{−Φ1/(2π)+m1}≦2L1/λ1≦1.2{−Φ1/(2π)+m1}・・・・・・(3−1)
0.7{−Φ2/(2π)+m2}≦2L2/λ1≦1.2{−Φ2/(2π)+m2}・・・・・・(3−2)
(L1 は第1端部P1と最大発光位置との間の光学的距離であり、L2 は第2端部P2と最大発光位置との間の光学的距離である。Φ1 は第1端部P1で生じる反射光の位相シフト(rad)であり、−2π<Φ1 ≦0を満たす。Φ2 は第2端部P2で生じる反射光の位相シフト(rad)であり、−2π<Φ2 ≦0を満たす。λ1 は発光層における発光光のスペクトルのピーク波長である。m1 およびm2 の値(m1 ,m2 )は(0,0)、(1,0)あるいは(0,1)である。)
また、この有機電界発光素子では、第2電極26の表面から垂直方向に射出される光と、斜め45°の方向に射出される光との間のL* u* v* 表色系における色度差Δu* v* は、0.03以下であることが好ましい。これにより、垂直方向から斜め45°の間で、射出光の色度の角度依存性として視認されにくくなる。その上、この範囲内であれば、表示装置などに用いた場合に、視野角依存性を小さく抑えることができ、十分な視野角が確保されやすくなる。
このような有機電界発光素子は、例えば、以下のように製造することができる。
まず、基板10上に、第1電極21を、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法あるいはスパッタリング法などのドライプロセスにより形成する。こののち、必要に応じてドライエッチング法により所定の形状にする。
次に、第1電極21上に、ドライプロセスおよびウェットプロセスにより、正孔注入層22A、正孔輸送層22B、発光層22Cおよび電子輸送層22Dをこの順で積層し、第1有機層22を形成する。こののち、必要に応じて第1有機層22上に、ドライプロセスによって電子注入層を形成する。
次に、第1有機層22の電子輸送層22Dの上に、半透過反射膜23を、第1有機層22上における厚さが3nm以上6nm以下となるように、例えば、蒸着法などのドライプロセスにより形成する。この場合、下地となる第1有機層22が水分を吸収すると劣化するおそれがあるため、半透過反射膜23を形成する際には、第1有機層22を大気中の水分に曝さないようにすることが好ましい。
続いて、半透過反射膜23の上に、例えば、ドライプロセスあるいはウェットプロセスにより第2有機層24を形成する。この場合、下地となる半透過反射膜23は、その膜厚が薄いものであり、材料によっては酸化されやすいものである。その上、第2有機層24も水分吸収による劣化が生じるおそれがある。このため、第2有機層24は、酸素および水分が少ないあるいはそれらを含まない雰囲気下で形成されることが好ましい。続いて、第2有機層24の上に、例えば成膜時の圧力を0.1Pa以上10Pa以下となるように抵抗層25をドライプロセスにより形成する。最後に、第2電極26を、例えばドライプロセスにより形成する。これにより、図1に示した有機電界発光素子が完成する。
この有機電界発光素子では、第1電極21と第2電極26との間に電界が印加されると、第1電極21から正孔が正孔注入層22Aおよび正孔輸送層22Bを介して発光層22Cに注入される。その一方で、第2電極26から電子が抵抗層25、第2有機層24、半透過反射膜23、電子輸送層22Dを介して発光層22Cに注入される。このように移動してきた正孔と電子とが発光層22Cにおいて再結合し、光を発することとなる。発光層22Cからの発光光のうちの一部は、半透過反射膜23を透過し、その他の一部は、第1電極21と半透過反射膜23との間で反射を繰り返したのち半透過反射膜23を透過する。ここで、共振器構造を有していれば、発光層22Cからの発光光は、第1電極21の第1端部P1と半透過反射膜23の第2端部P2との間で共振し、その光の純度および強度が高められたのちに、半透過反射膜23を透過する。半透過反射膜23を透過した光は、第2有機層24および抵抗層25を介して第2電極26に入射したのち、射出される。この射出された光(射出光)が取り出し光となる。
ここで、従来の有機電界発光素子では、第1電極と、第1電極上に設けられた発光層を含む有機層と、有機層上に設けられた第2電極とを積層した構成を有している。これにより、図11に示したように、例えば、第1電極111上に異物200が存在すると、その異物200の上に有機層112が形成されることになる。ところが、有機層112の厚さが十分ではないと、第1電極111と異物200との間に、有機層112に覆われていない部分(非被覆部分)が生じることになる。この非被覆部分が存在する状態で第2電極113が形成されると第1電極111と第2電極113とが接触するように形成されるため、電極間に短絡が生じることとなる。このような電極間の短絡が生じると、表示装置に用いた場合に、その素子を含んで構成される画素の欠陥となる。
これに対して、本実施の形態の有機電界発光素子では、第1有機層21と第2電極26との間の第1有機層22側に半透過反射膜23、第2電極26側に抵抗層25が設けられている。これにより、第1電極21から上記した順に各層を積層して形成する場合、あるいは第2電極26側から上記の順になるように各層を積層して形成する場合において、第1電極21上あるいは第2電極26上に異物が存在しても、抵抗層25により両電極が接触しないように形成される。
具体的には、本実施の形態では、図2に示したように第1電極21側から順に積層して形成する場合に第1電極21上に異物100が存在すると、その上に形成される第1有機層22によって第1電極21が覆われていない非被覆部分が生じやすくなる。この場合、非被覆部分は、半透過反射膜23の厚さが6nm以下であるため、第1有機層22の上に形成される半透過反射膜23により覆われずに、例えば、続いて形成される第2有機層24あるいは抵抗層25により覆われることとなる。これにより、第1電極21上に第1有機層22等により被覆されない非被覆部分が形成されても両電極の接触が抑制される。ここで非被覆部分が第2有機層24により覆われていても、第2有機層24が式(1)に示した化合物を含んでいれば、両電極間に電界が印加されても、正孔および電子が発光層22Cに移動し、再結合することにより光が発せられることになる。また、非被覆部分が第2有機層24によって覆われずに、抵抗層25により覆われるように形成されても、発光層22Cは同様に光を発することになる。
その一方で、本実施の形態の有機電界発光素子おいて、第2電極26側から順に積層して形成する場合に第2電極26上に異物が存在しても、抵抗層25が、第2電極26上に非被覆部分が形成されないように、異物および第2電極26を覆うように形成される。このため、両電極の接触は抑制される。
また、本実施の形態では、半透過反射膜23の厚さが3nm以上であるため、半透過反射膜23が導電性の高い、例えば金属材料を含む場合に、3nmよりも薄く形成したものと比較して、駆動電圧が低く抑えられる。その上、半透過反射膜23と抵抗層25との間に、第2有機層24が設けられている。これにより、半透過反射膜23を形成したのちに、抵抗層25を、酸素を含む雰囲気下で形成するようにしても、半透過反射膜23が酸化されやすい材料を含む場合の酸化が抑制される。すなわち、半透過反射膜23の酸化による駆動電圧の上昇が抑制される。さらに、第1電極21が光反射性、第2電極26が光透過性であるため、第1電極21と半透過反射膜23との間で発光層22Cから発せられた光を共振させるように共振器構造を設けることができる。共振器構造を有する場合に、所定の厚さの半透過反射膜23および第2有機層24が第1有機層22と抵抗層25との間に設けられているため、駆動電圧を低く抑えた状態で射出光の輝度が確保されると共に射出光の角度依存性が抑制された構成にすることができる。
すなわち、本実施の形態の有機電界発光素子によれば、第1電極21と第2電極26との間に、第1電極21側から順に、第1有機層22と、厚さ3nm以上6nm以下の半透過反射膜23と、第2有機層24と、抵抗層25とを含むようにした。これにより、視野角依存性が抑制された素子構造を有するようにしても、短絡の発生を抑制することができると共に駆動電圧を低電圧化することができる。よって、この有機電界発光素子を表示装置に用いた場合に、低消費電力および広視野角を実現することができる。
なお、本実施の形態では、第1有機層22を正孔注入層22A、正孔輸送層22B、発光層22Cおよび電子輸送層22Dにより構成したが、発光層22Cを備えていればよく、その他の層は、必要に応じて設けるようにしてもよい。また、本実施の形態では、第1有機層22を構成する各層および第2有機層24をそれぞれ単層で形成するようにしたが、各層を複数層で形成するようにしてもよい。この場合においても、同様の作用効果を得ることができる。
さらに、上記した実施の形態では、上面発光型の例について説明したが、第2電極26側が下面になるようにして、下面発光型としてもよい。さらにまた、本実施の形態では、第1電極21を正極、第2電極26を負極としたが、第1電極21を負極、第2電極26を正極としてもよい。その場合、第1有機層22は、例えば、半透過反射膜23から順に、正孔注入層22A、正孔輸送層22B、発光層22Cおよび電子輸送層22Dを積層した構造を有することとなる。いずれの場合においても同様の作用効果を得ることができる。
次に、上記した有機電界発光素子の使用例について説明する。ここで、表示装置を例に挙げると、上記した有機電界発光素子は以下のように用いられる。
[2.表示装置(有機電界発光素子を備えたアクティブマトリクス型の例)]
図3は表示装置の断面構成、図4は表示装置の平面構成をそれぞれ模式的に表している。この表示装置は、駆動回路であるトランジスタTr(薄膜トランジスタ;TFT)、絶縁層16および配線17を備えた基板10の上に絶縁層20および有機電界発光素子1(1R,1G,1B)を有する構成となっている。また、この表示装置では、有機電界発光素子1の上に、それらを覆うように保護層31が形成され、保護層31上に設けられた接着層32により接着された封止用基板40により全面にわたって封止されている。ここで説明する表示装置の駆動方式は、アクティブマトリックス方式である。
基板10は、基体11と、基体11上に有機電界発光素子1ごとに設けられたトランジスタTrと、トランジスタTrの上に設けられた絶縁膜16と、トランジスタTrあるいは有機電界発光素子1と接続した配線17とを有している。基体11は、ガラス基板や、石英基板や、シリコン基板や、フィルム状のフレキシブル基板などにより構成されている。
トランジスタTrは、有機電界発光素子1を駆動する駆動回路であり、有機電界発光素子1R,1G,1Bごとに設けられている。トランジスタTrは、基体10に設けられたゲート電極12と、ゲート電極12を覆うゲート絶縁膜13と、ゲート絶縁膜13上に設けられたソースドレイン領域14およびチャネル領域15を有する半導体層とを有している。すなわち、このトランジスタTrは、ボトムゲート型である。ゲート電極12は、ゲート線(図示せず)を介してゲートドライバ(走査回路;図示せず)と接続されている。ソースドレイン領域14は、ゲート絶縁膜13の上に、チャネル領域15の両側に並んで設けられており、配線17を介して有機電界発光素子1あるいはソースドライバ(信号発信回路;図示せず)と接続されている。チャネル領域15は、ゲート電極12の上にゲート絶縁膜13を介して設けられている。なお、ここではトランジスタTrとしてボトムゲート型のTFTを備えているが、トップゲート型のTFTを備えていてもよい。
絶縁層16は、トランジスタTrの一部を覆うように設けられた下層絶縁層16Aと、下層絶縁膜16A上に設けられると共に配線17の一部を覆うように設けられた上層絶縁層16Bとにより構成されている。絶縁層16は、いわゆる平坦化絶縁膜であり、この上に各有機電界発光素子1が設けられている。下層絶縁層16Aは、トランジスタTr上に、ソースドレイン領域14と配線17との接続部分(コンタクトプラグ)を除いて形成されている。上層絶縁層16Bは、下層絶縁層16Aおよび配線17の上に、配線17と有機電界発光素子1の第1電極21との接続部分(コンタクトプラグ)を除いて形成されている。絶縁層16(16A,16B)を構成する材料としては、例えば、SiO2 、BPSG、PSG、BSG、AsSG、PbSG、SiON、SOG(スピンオングラス)、低融点ガラスあるいはガラスペーストなどの酸化シリコン系材料や、窒化シリコン系材料や、ポリイミド樹脂などの絶縁性樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。絶縁層16(16A,16B)の形成方法としては、例えば、CVD法、スパッタリング法、塗布法あるいは印刷法などが挙げられる。
配線17は、トランジスタTrと、有機電界発光素子1あるいはソースドライバとを電気的に接続するものであり、例えばアルミニウムなどにより構成されている。
絶縁層20は、有機電界発光素子1R,1G,1Bの第1電極21と第2電極26との絶縁性を確保すると共に発光領域を正確に所望の形状にするためのものである。絶縁層20は、基板10の上において、有機電界発光素子1R,1G,1Bの各第1電極21との間に、各第1電極21の一部を取り囲み、開口部20Aを形成するように設けられている。絶縁層20は、第1有機層22の水分による劣化を防止し、発光輝度を良好に維持するために、吸水率の低い絶縁材料により構成されることが好ましい。吸水率の低い材料としては、例えば、ポリイミドなどの感光性樹脂が挙げられる。
有機電界発光素子1R,1G,1Bは、上記した有機電界発光素子と同様の構成を有している。ここでは有機電界発光素子1R,1G,1Bは、それぞれ赤色発光層、緑色発光層および青色発光層を備え、ここでの有機電界発光素子1R,1G,1Bから取り出される光は、表示装置において、それぞれ赤色、緑色および青色を呈することとする。ここでは半透過反射膜23は、その厚さが6nm以下であるため、絶縁層20の側面において不連続部分23Aが生じやすくなっているが、絶縁層20の上には連続的に設けられていてもよい。また、半透膜反射膜23、第2有機層24、抵抗層25および第2電極26は、絶縁層20の上にも設けられているが、発光光が生じる開口部20Aの上だけに設けられていてもよい。
保護層31は、有機層20に水分などが侵入することを防止するためのものであり、透過水性および吸水性の低い材料により構成されると共に十分な厚みを有している。また、保護層31は、発光層22Cで発生した光に対する透過性が高く、例えば80%以上の透過率を有する材料により構成されている。このような保護層31は、例えば、厚さが2μm〜3μm程度であり、アモルファスな絶縁性材料により構成されている。具体的には、アモルファスシリコン(α−Si)、アモルファス炭化シリコン(α−SiC)、アモルファス窒化シリコン(α−Si1-x Nx )、アモルファス酸化シリコン(α−Si1−y Oy )、アモルファス酸窒化シリコン(α−SiON)あるいはアモルファスカーボン(α−C)が好ましい。これらのアモルファスな絶縁性材料は、グレインを構成しないので透水性が低く、良好な保護層31となる。また、保護層31は、ITOのような透明導電性材料により構成されていてもよい。
接着層32は、例えば、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、ウレタン系接着剤、シリコーン系接着剤あるいはシアノアクリレート系接着剤などの熱硬化型樹脂や、紫外線硬化型樹脂などにより構成されている。
封止用基板40は、有機電界発光素子1R,1G,1Bの第2電極26側に位置しており、接着層32と共に有機電界発光素子1R,1G,1Bを封止するものである。この封止用基板40は、有機電界発光素子1R,1G,1Bで発生した光を透過可能な材料により構成されている。封止用基板40の材料としては、例えば、上記基体11の材料と同様のガラスなどの材料が挙げられる。なお、上記の発光層22Cからの発光光が白色光の場合には、封止用基板40は、有機電界発光素子1ごとに、例えば、赤、緑あるいは青のカラーフィルタが設けられていてもよい。また、このカラーフィルタにより、有機電界発光素子1R,1G,1Bからの射出光を取り出すと共に、有機電界発光素子1R,1G,1Bならびにその間の配線等(図示せず)において反射された外光を吸収し、コントラストを改善するようになっていてもよい。
次に、図5〜図7を参照して、表示装置の製造方法について説明する。図5〜図7は、各工程における断面構成を表している。なお、図5〜図7では、隣り合った2画素分につい示す。この表示装置は、例えば、次のようにして製造することができる。
最初に、基板10を作製する。具体的には、まず、ゲート電極12およびゲート絶縁膜13と共にソースドレイン領域14およびチャネル領域15を有する半導体層を備えたトランジスタTrが設けられた基体11を用意する。続いて、図5(A)に示したように、基体11のトランジスタTrの上に、例えばCVD法により酸化シリコンからなる絶縁膜を形成する。そののち、ドライエッチング法により所定の形状に成形し、トランジスタTrと配線17とのコンタクトプラグとなる開口部16Zを有する下層絶縁層16Aを形成する。
続いて、図5(B)に示したように、下層絶縁層16Aおよびその開口部16Zを覆うように、例えば真空蒸着法により金属膜を形成したのち、ドライエッチング法により所定の形状に成形し配線17を形成する。続いて、配線17を覆うように、例えばCVD法により酸化シリコンからなる絶縁膜を形成したのち、ドライエッチング法を用いてトランジスタTrと有機電界発光素子1とのコンタクトプラグとなる開口部16Yを形成することにより上層絶縁層16Bを形成する。これにより、基板10が作製される。
次に、基板10上に、絶縁層20および有機電界発光素子1を形成する。具体的には、まず、図5(C)に示したように、基板10の上に、例えばスパッタリング法により金属膜を形成したのち、例えばドライエッチング法により所定の形状に成形して、第1電極21を形成する。ここで開口部16Yにおいて第1電極21と配線17とのコンタクトプラグが設けられるようにする。
続いて、図6(A)に示したように、基板10の全面にわたり、第1電極21を覆うように感光性樹脂を塗布し、例えばフォトリソグラフィ法により発光領域に対応して開口部20Aを設け、焼成することにより、絶縁層20を形成する。ここで形成される絶縁層20の側面は、傾斜を有する斜面となりやすくなる。
そののち、図6(B)に示したように、例えば、上記した有機電界発光素子を製造する際の第1有機層22の形成工程と同様の工程を用いて、絶縁層20の開口部20Aの底面に露出した第1電極21の上に第1有機層22を形成する。この際、ドライプロセスを用いて第1有機層22を形成する場合には、例えばメタルマスクなどを用いて開口部20Aにのみ、第1有機層22が形成されるようにする。また、ウェットプロセスにより第1有機層22を形成する場合には、例えば絶縁層20および開口部20Aの全面に塗布法を用いて、第1有機層22の前駆体層を形成したのち、ドライエッチング法により所定の形状に成形する。この場合、印刷法を用いて、開口部20Aにのみ、第1有機層22が形成されるようにしてもよい。
続いて、図7(A)に示したように、絶縁層20および第1有機層22の上に、例えば真空蒸着法などのドライプロセスを用いて第1有機層22上の厚さが所定の厚さとなるように半透過反射膜23を形成する。ここでカバレッジの低い成膜方法を用いると半透過反射膜23の厚さが3nm以上6nm以下であるため、絶縁層20の側面において不連続部分23Aが形成されやすくなる。次いで、半透過反射膜23および不連続部分23Aを覆うように、第2有機層24を形成する。この際、第2有機層24は、半透過反射膜23の酸化を防ぐために、不活性ガス雰囲気下や、真空雰囲気下でカバレッジの良好な方法により形成されることが好ましい。
続いて、図7(B)に示したように、第2有機層24の上の全面を覆うように抵抗層25を形成する。この際、カバレッジの良好な方法を用いて形成することが好ましい。また、抵抗層25は、第2有機層24が設けられているため、酸素を雰囲気下で成膜されてもよい。こののち、抵抗層25の上に、第2電極26を形成する。これにより、有機電界発光素子1が完成する。
続いて、有機電界発光素子1の上に保護層31を形成する。保護膜31の形成方法は、下地に対して影響を及ぼすことのない程度に、成膜粒子のエネルギーが小さい成膜方法、例えば蒸着法またはCVD法が好ましい。また、保護層31は、第2電極26を大気に暴露することなく、第2電極26の形成と連続して行うことが望ましい。大気中の水分や酸素により第1有機層22が劣化してしまうのを抑制することができるからである。さらに、第1有機層22の劣化による輝度の低下を防止するため、保護層31の成膜温度は常温に設定すると共に、保護層31の剥がれを防止するために膜のストレスが最小になる条件で成膜することが望ましい。
最後に、保護層31の上に、接着層32を形成し、この接着層32を介して封止用基板40を貼り合わせる。以上により、図3に示した表示装置が完成する。
このような表示装置では、画像データに基づいて選択された各有機電界発光素子1R,1G,1Bにおいて、第1電極21および第2電極26の間に駆動電圧が印加されると、第1有機層22に電界がかかる。この電界がかかった第1有機層22では、発光層22Cにおいて正孔と電子とが再結合して発光光が生じる。この発光光は、第2電極26から射出し、保護層31、接着層32および封止用基板40を透過して取り出される。
この表示装置によれば、各有機電界発光素子1R,1B,1Gが上記した有機電界発光素子と同様の構成を有しているので、射出光の視野角依存性が低い素子構造を備えるようにしても、短絡の発生を抑制することができ、駆動電圧を低く抑えることができる。これにより、色度および輝度の視野角依存性の少ない表示装置を実現することができ、そのうえ、短絡による画素の欠陥も少なくすることができるため、歩留まりも向上する。しかも、駆動電圧の低電圧化が図れるため、消費電力を低く抑え、寿命特性も向上させることができる。この他の作用効果については、上記した有機電界発光素子と同様である。
この表示装置は、テレビジョン装置、デジタルカメラ、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等の携帯端末装置あるいはビデオカメラなど、外部から入力された映像信号あるいは内部で生成した映像信号を、画像あるいは映像として表示するあらゆる分野の電子機器の表示装置に適用することが可能である。具体的には、例えば、壁掛けテレビなどのフラットパネルディスプレイや、平面発光体などが挙げられる。これらの適用例においても上記と同様の作用効果を得ることができる。
本発明の実施例について詳細に説明する。
(実験例1−1〜1−10)
以下の手順により、図1に示した有機電界発光素子を備えたテスト用発光素子を作製した。この際、第1電極21と半透過反射膜23との間で発光光を共振させて取り出す共振器構造を有するものとした。
まず、ソーダガラスからなる基板10の上に、真空蒸着法により厚さ0.2μmのAl−Nd合金からなる金属膜を形成したのち、ドライエッチング法により所定の形状の第1電極21を形成した。次いで、スパッタリング法およびドライエッチング法により、第1電極21を取り囲む1mm×1mm(1mm2 )開口部を有するように酸化シリコンからなる厚さ1μmの絶縁層を形成した。
続いて、真空蒸着法により、第1有機層22の各層を形成した。この場合、まず、第1電極21の上に、式(2)に示したm−MTDATAからなる正孔注入層22A(厚さ10nm)を形成したのち、その上に、式(3)に示したα−NPDからなる正孔輸送層22B(厚さ20nm)を形成した。続いて、正孔輸送層22Bの上に、式(4−1)に示したルブレンと式(5−1)に示したペリレン誘導体とからなる赤色の発光層22C(厚さ50nm;ピーク波長620nm)を形成した。この場合、発光層22C中におけるペリレン誘導体の含有量が1質量%となるように形成した。そののち、式(6)に示したAlq3からなる電子輸送層22D(厚さ60nm)を形成した。
続いて、電子輸送層22Dの上に、真空蒸着法によりLiFからなる電子注入層(厚さ0.3nm)を形成した。こののち、真空蒸着法によりMg−Ag合金(Mg:Ag(体積比)=10:1)からなる半透過反射膜23を形成した。この場合、半透過反射膜23の厚さを、1nm(実験例1−1)、2nm(実験例1−2)、3nm(実験例1−3)、4nm(実験例1−4)、5nm(実験例1−5)、6nm(実験例1−6)、7nm(実験例1−7)、8nm(実験例1−8)、9nm(実験例1−9)あるいは10nm(実験例1−10)となるようにした。
続いて、真空蒸着法により式(1−20)に示した化合物(式(4−2)に示したADN)からなる第2有機層24(厚さ10nm)を形成した。
続いて、酸素を含む雰囲気下においてスパッタリング法により、酸化ニオブ(Nb2 O5 ;電気抵抗率1.0×104 Ω・cm〜1.0×106 Ω・cm)からなる抵抗層25(厚さ0.5μm)を形成した。こののち、マグネトロンスパッタリング法により、ITO(電気抵抗率3×10-4Ω・cm)からなる第2電極26(厚さ0.1μm)を形成した。これにより、図1に示した有機電界発光素子が完成した。
最後に、第2電極26の上に、プラズマCVD法によりアモルファス窒化シリコン(α−Si1-x Nx )からなる保護層(厚さ5μm)を形成したのち、保護層の上にアクリル系接着剤を用いて接着層を形成し、ソーダガラスからなる封止用基板を貼り合わせた。接着層の厚さは、発光部(絶縁層の開口部)上において約20μmであった。これによりテスト用発光素子が完成した。
ここでテスト用発光素子について、第1電極21、抵抗層25、第2電極26、保護層および接着層それぞれの屈折率と、電子注入層と半透過反射膜23とを併せた層の屈折率とを、波長530nmにおいて測定した。また、第1電極21および第2電極26それぞれの光反射率、電子注入層と半透過反射膜23とを併せた層の光透過率も測定した。これらの屈折率等の測定結果を、実験例1−1〜1−10を代表して実験例1−5について表1に示す。また、実験例1−1〜1−10について、抵抗層25および第2電極26について、それぞれを流れる電流を10mA/cm2 とした場合の電圧降下を算出したところ、表2に示した結果となった。さらに、実験例1−1〜1−10を代表して実験例1−5の共振器構造の構成を表3に示した。
表2に示したように、抵抗層25における電圧降下は、最大でも0.5V程度であると見積もられた。よって、本実験例の有機電界発光素子の駆動において、抵抗層25が特に問題とならないことがわかった。また、表3に示したように、第1有機層22は、数式(2)を満たしていた。よって、実験例1−5では、共振器構造を備え、発光光を第2電極側から良好に取り出せることがわかった。なお、本実施例では示していないが、実験例1−1〜1−4,1−6〜1−10についても数式(2)を満たす共振器構造を有していた。
このような構成を有する実験例1−1〜1−10のテスト用発光素子について、短絡率と駆動電圧とを調べたところ、図8に示した結果が得られた。
短絡率を調べる際には、100個のテスト用発光素子について、第1電極21と第2電極26との間に、10mA/cm2 の電流を印加したときの電流リークした素子数を数え、これを短絡率(%)=(電流リークした素子数)とした。なお、図8では、各実験例の短絡率を「◆」(黒塗りひし形)として表し、それらを系列C11として示した。
また、駆動電圧を調べる際には、短絡率を調べたテスト用素子のうち電流リークしていない素子について、第1電極21と第2電極26との間に、10mA/cm2 の電流を印加したときの電圧を測定し、それらの平均値を駆動電圧とした。なお、図8では、各実験例の駆動電圧を「■」(黒塗り四角)として表し、それらを系列C10として示した。
図8に示したように、厚さ6nm以下の半透過反射膜23を有する実験例1−1〜1−6では、短絡率は0%であったが、その厚さが7nm以上の実験例1−7〜1−10では、短絡が生じ、半透過反射膜の厚さが厚くなるに従いその短絡率は上昇した(系列C11参照)。また、厚さ3nm以上の半透過反射膜23を有する実験例1−3〜1−10では、その厚さが2nm以下の実験例1−1,1−2よりも、駆動電圧が著しく低くなった(系列C10参照)。
この結果は、以下のことを表している。すなわち、金属材料を含む半透過反射膜23は、その厚さが3nm以上であると、電極間の導電性(電荷の移動性)を高め、駆動電圧を低く抑えるように作用する。ところが、半透過反射膜23の厚さが6nmよりも厚くなると、素子作製時に第1電極21上に異物が存在し、第1有機層22に覆われていない非被覆部分が形成された場合、第1有機層22の非被覆部分を覆うように半透過反射膜23が形成されやすくなる。これにより、第1電極11と半透過反射膜23とが短絡して電流がリークし、発光層22Cがほとんど発光しない、あるいは点滅するといった欠陥が生じる。
これらのことから、第1電極21上に、第1有機層22、半透過反射膜23、第2有機層24、抵抗層25および第2電極26をこの順で形成した有機電界発光素子では、半透過反射膜23の厚さを3nm以上6nm以下になるように形成する。これにより、以下のことが確認された。すなわち、素子製造時に、第1電極21上に異物が存在し、第1有機層21により被覆されない非被覆部分が形成されても、その非被覆部分は、半透過反射膜23に覆われずに、第2有機層24あるいは抵抗層25に覆われることになる。よって、第1電極21と、半透過反射膜23あるいは第2電極26との接触が生じにくくなるため、短絡の発生を抑えることができる。その上、所定の半透過反射膜23を設けることにより、駆動電圧を低く抑えることができる。しかも、第2有機層24が式(1)に示した化合物を含むことにより、上記の素子製造時における異物混入により形成された第1有機層22の非被覆部分が第2有機層24によって覆われても、短絡の発生を抑制することができることが示唆された。
(実験例2−1)
真空蒸着法により、赤色の発光層22Cを有する第1有機層22の代わりに、緑色の発光層22Cを有する第1有機層22を設けたことを除き、実験例1−5と同様の手順を経た。緑色の発光層22Cを有する第1有機層22を形成する場合には、まず、第1電極21の上に、式(2)に示したm−MTDATAからなる正孔注入層22A(厚さ10nm)を形成したのち、その上に、式(3)に示したα−NPDからなる正孔輸送層22B(厚さ48nm)を形成した。続いて、正孔輸送層22Bの上に、式(4−2)に示したADNと式(5−2)に示したジアミノアントラセンとからなる緑色の発光層22C(厚さ30nm;ピーク波長530nm)を形成した。この場合、発光層22C中における式(5−2)に示したジアミノアントラセンの含有量が5質量%となるように形成した。そののち、式(6)に示したAlq3からなる電子輸送層22D(厚さ30nm)を形成した。
ここで実験例2−1の共振器構造の構成を表4に示す。表4に示したように、第1有機層22は、数式(2)を満たしていた。よって、実験例2−1では、共振器構造を備え、緑色の発光光を第2電極26側から良好に取り出せることがわかった。
(実験例2−2)
真空蒸着法により、赤色の発光層22Cを有する第1有機層22の代わりに、青色の発光層22Cを有する第1有機層22を設けたことを除き、実験例1−5と同様の手順を経た。青色の発光層22Cを有する第1有機層22を形成する場合には、まず、第1電極21の上に、式(2)に示したm−MTDATAからなる正孔注入層22A(厚さ10nm)を形成したのち、その上に、式(3)に示したα−NPDからなる正孔輸送層22B(厚さ28nm)を形成した。続いて、正孔輸送層22Bの上に、式(4−2)に示したADNと式(5−3)に示したアミノクリセン誘導体とからなる青色の発光層22C(厚さ30nm;ピーク波長460nm)を形成した。この場合、発光層22C中における式(5−3)に示したアミノクリセン誘導体の含有量が5質量%となるように形成した。そののち、式(6)に示したAlq3からなる電子輸送層22D(厚さ20nm)を形成した。
ここで実験例2−2の共振器構造の構成を上記の表4に示す。表4に示したように、第1有機層22は、数式(2)を満たしていた。よって、実験例2−2では、共振器構造を備え、青色の発光光を第2電極26側から良好に取り出せることがわかった。
(実験例2−3〜2−5)
第2有機層24を形成する際に、式(1−20)に示したADNの代わりに、式(1−37)に示した化合物を用いたことを除き、実験例1−5、実験例2−1あるいは実験例2−2と同様の手順を経た。
(実験例2−6〜2−8)
第2有機層24を形成する際に、式(1−20)に示したADNの代わりに、式(1−43)に示した化合物を用いたことを除き、実験例1−5、実験例2−1あるいは実験例2−2と同様の手順を経た。
(実験例2−9)
真空蒸着法により、赤色の発光層22Cを有する第1有機層22の代わりに、緑色の発光層22Cを有する第1有機層22を設けたことを除き、実験例1−10と同様の手順を経た。緑色の発光層22Cを有する第1有機層22は、実験例2−1の第1有機層22と同様にして形成した。
(実験例2−10)
真空蒸着法により、赤色の発光層22Cを有する第1有機層22の代わりに、青色の発光層22Cを有する第1有機層22を設けたことを除き、実験例1−10と同様の手順を経た。青色の発光層22Cを有する第1有機層22は、実験例2−1の第1有機層22と同様にして形成した。
(実験例2−11〜2−13)
第2有機層24、抵抗層25および第2電極26を設けずに、半透過反射膜23を電極として用いたことを除き、実験例1−10、実験例2−9あるいは実験例2−10と同様の手順を経た。
(実験例2−14〜2−16)
第2有機層24を設けなかったことを除き、実験例1−5、実験例2−1あるいは実験例2−2と同様の手順を経た。
(実験例2−17〜2−19)
真空蒸着法によりMg−Ag合金(Mg:Ag(体積比)=10:1)からなる厚さ10nmの第2電極26を形成すると共に、半透過反射膜23を設けなかったことを除き、実験例1−5、実験例2−1あるいは実験例2−2と同様の手順を経た。
これらの実験例2−1〜2−19のテスト用発光素子について、実験例1−1〜1−10と同様にして短絡率および駆動電圧を調べると共に、視野角依存性を調べたところ、表1に示した結果が得られた。なお、表1には、実験例1−5,1−10の結果についても併せて示した。
視野角依存性を調べる際には、封止用基板に対して垂直方向(0°)に射出される光と、斜め45°の方向に射出される光とのL* u* v* 表色系における色度u* v* を測定し、垂直方向の射出光と、斜め45°の方向に射出光との色度差Δu* v* を算出した。本実験例を代表して、実験例1−5,2−1,2−2についてL* u* v* 表色系色度図を図9として示す。また、実験例2−17〜2−19についてのL* u* v* 表色系色度図も図10として示す。なお、図9および図10では、「◇」が垂直方向の色度u* v* を表し、「◆」が斜め45°の方向の色度u* v* を表している。
表5に示したように、厚さ5nmの半透過反射膜23、第2有機層24および抵抗層25を備えた実験例1−5,2−1〜2−8では、短絡率が0%となり、駆動電圧が低く抑えられ、色度差が0.03以下となり良好であった。
ところが、厚さ10nmの半透過反射膜23を備えた実験例1−10,2−9,2−10では、厚さ5nmの半透過反射膜23を備えた実験例1−5等と比較して、駆動電圧は同等であったが、短絡率が著しく高くなり、色度差も著しく大きくなった。特に、発光層22Cが青色の光を発する実験例2−10では、色度差が0.03以上になった。この実験例1−10,2−9,2−10の傾向は、厚さ10nmの半透過反射膜23を第2電極26として用いた実験例2−11〜2−13においても同様であった。また、第2有機層を設けなかった実験例2−14〜2−16では、第2有機層24を備えた実験例1−5等と比較して、短絡率および色度差は同等であったが、駆動電圧が高くなった。さらに、半透過反射膜23を設けなかった実験例2−17〜2−19では、実験例1−5等と比較して、短絡率および駆動電圧は同等であったが、図9,図10に示したように色度差が著しく大きくなり、0.03以上になった。
これらの結果は、以下のことを表している。すなわち、第1有機層22上に、厚さ6nm超の半透過反射膜23あるいは半透過反射性を有する第2電極を形成すると、第1電極21上に異物が存在した場合に、第1電極21と半透過反射膜23等とが接触して形成され、電流のリークが生じやすくなる。その上、厚さ6nm超の半透過反射膜23あるいは半透過反射性を有する第2電極が形成されていると、それらの厚さが6nm以下の場合よりも射出光の色度の角度依存性が大きくなる。また、第2有機層24が形成されていないと、半透過反射膜23が抵抗層25の形成時に酸化されて駆動電圧が上昇する。さらに、半透過反射膜23を設けずに、第1有機層22と第2電極との間に抵抗層25を設けると、共振器構造の第1端部P1と第2端部P2との間の光学的距離Lが長くなり、発光光が強く共振し、射出光の色度の角度依存性が大きくなる。
ここで第2有機層24を構成する材料の種類を比較すると、実験例1−5,2−1,2−2と、実験例2−3〜2−5と,実験例2−6〜2−8との間で、短絡率、駆動電圧および色度差は同程度となった。すなわち、式(1−20)に示したADN、式(1−37)に示した化合物および式(1−43)に示した化合物は、いずれも良好な電荷移動性を有すると共に半透過反射膜23の酸化抑制作用を発揮していた。
これらのことから、第1電極21上に、第1有機層22、半透過反射膜23、第2有機層24、抵抗層25および第2電極26をこの順で形成し、共振器構造を有する有機電界発光素子では、以下のことが確認された。すなわち、厚さが3nm以上6nm以下の半透過反射膜23と抵抗層25とを有することにより、短絡の発生を抑えると共に、駆動電圧を低く抑えることができ、さらに射出光の色度の角度依存性を小さく抑えることができる。加えて、半透過反射膜23の上に、式(1)に示した化合物を含む第2有機層24が形成されているため、より駆動電圧を低く抑えることができる。よって、射出光の角度依存性が少ない共振器構造を有するようにしても、短絡の発生を低く抑えられると共に駆動電圧の低電圧化を図ることができるため、視野角依存性の小さい、かつ消費電力の少ない表示装置を実現することができる。
以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は上記した実施の形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記した実施の形態および実施例では、発光光が赤色、緑色および青色の有機電界発光素子を備えた表示装置について説明したが、発光光が白色のものを用いてもよい。また、例えば、上記した実施の形態では、駆動方式がアクティブマトリクス方式の表示装置について説明したが、パッシブマトリクス方式の表示装置としてもよい。
また、上記した実施の形態では、有機電界発光素子の使用例としてカラーディスプレイなどの表示装置を挙げて説明したが、それに限られるものではない。例えば、複写機、プリンタ、液晶ディスプレイあるいは計器類などの光源や、表示板あるいは標識灯などに用いることもできる。
さらに、上記した実施の形態および実施例では、半透過反射膜の厚さについて、実施例の結果から導き出された数値範囲を適正範囲として説明しているが、その説明は、半透過反射膜の厚さが上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本発明の効果を得る上で特に好ましい範囲であり、本発明の効果が得られるのであれば、半透過反射膜の厚さが上記した範囲から多少外れてもよい。このことは、上記実施の形態および実施例において説明した、有機電界発光素子の第2電極の表面から垂直方向に射出される光と、斜め45°の方向に射出される光との間のL* u* v* 表色系における色度差Δu* v* についても同様である。