JP5114673B2 - 処理時間予測装置、方法、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 - Google Patents

処理時間予測装置、方法、プログラム、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体 Download PDF

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Description

本発明は、多種かつ小ロット製品を大量に生産するプロセスを持つ製造業の製造工程において、製品属性や製造仕様の似ている製品同士をグループ化して複数の品種グループにまとめて定義するとともに、品種グループ毎の工程毎の処理時間を予測して、工期の短縮や生産性の向上を図るのに用いて好適な技術である。
例えば、鉄鋼製造業における鉄鋼製品は、その材質を規定した規格や客先での用途に応じたサイズ等の製品属性が極めて多岐に渡るため、その製造仕様、例えば化学的な組成や成形方法、熱処理方法等が極めて多岐に渡るという特徴がある。さらに、顧客での製品使用予定に合わせた納期遵守と納期短縮の要求が強くなっている。
納期を遵守するためには、各製品の納期を起点として該製品の製造フローを逆順に、各製造設備における処理時間及び製造設備間の移送時間だけ遡ることで得られる製造着手要望日を算出するとともに、得られた製造着手要望日で製造着手が可能かどうかを各製造設備の処理能力上限値等に基づいて確認し、処理能力上限値を超える場合には製造着手タイミングを早める等の調整を適宜行うことが必要である。
しかしながら、多品種で複雑な製造フローや製造仕様を持つ製造工程においては、製品毎の各製造設備における処理時間を予測することは難しいのが現状である。
このような状況において、現状の生産現場では製造工程の管理者が、製造工程や製品の製造仕様等に基づいて製品を大まかな品種グループに分類し、品種グループ毎の処理時間の実績平均値を処理時間の予測に用いるという方法がよく用いられる。
また、特許文献1では、多品種少量生産の組み立て加工ラインにおいて、製品の部品構成又は製造ラインに対する要求量が類似する品種群を同一品種のグループとして取り扱い、製造ラインの負荷を適切に平準化する生産指示量平準化装置が提案されている。
特開平10−138102号公報 「よくわかる多変量解析の基本と仕組み」、山口和範他、秀和システム、(2004) 143-168頁
しかしながら、上記の従来の方法では、製造工程や製品の製造仕様に関する知見から大まかな品種のグループに分類しているため、同一の品種のグループであっても製品によって処理時間が異なる等、処理時間を予測する精度は必ずしも十分ではなかった。
また、特許文献1に開示された生産指示量平準化装置では、製品の部品構成又は製造ラインに対する要求量が類似する複数の品種を一つの品種群(品種グループ)として取り扱っているという点で品種グループ作成の条件が明確であるが、多品種かつ小ロット注文を大量に取り扱うとともに複雑な製造フローを持つ製造プロセスでは、多数の製品属性を有する製品について、製造工程全体として適切な規模の種類数の品種グループを作成する際の条件を明確にすることが困難であるという問題があった。
また、処理時間の予測精度を向上させるための方法として、品種グループの定義を見直すことも考えられるが、多様な属性の組合せを大量に試行錯誤的に検討する必要があり、現実的ではないという問題があった。
また、処理時間の予測精度を向上させるための別の方法として、品種グループ数を多くすることも考えられるが、これも前記述べた理由と同様、多様な属性の組合せを大量に試行錯誤的に検討する必要があること、品種グループのメンテナンス負荷が高いこと、等の問題があった。
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、多種多様な製品を複数の製造設備で複雑な製造フローの加工を経て大量に製造する製造工程において、各製造設備の能力制約等の製造上の要件を満たした生産スケジュールを作成する際に必須となる品種グループ毎の各製造設備における処理時間を、迅速かつ高精度に予測する技術を提供することを目的とする。
本発明の処理時間予測装置は、複数の種類からなる複数の製品を複数の製造設備を用いて製造する製造工程において、過去の製造実績データに基づいて、前記各製造設備での製品の処理時間を予測する処理時間予測装置であって、前記製造実績データと予め定められた設計パラメータに基づいて、複数の種類の製品を複数の品種グループに分類する、決定木による品種分類ロジックを作成する品種分類ロジック作成手段と、前記製造実績データと前記品種分類ロジックに基づいて、前記各製造設備における前記品種グループ毎の処理時間を予測する処理時間予測モデルを作成する処理時間予測モデル作成手段と、前記処理時間予測モデルを用いて、新たな生産スケジュール作成時に対象となる製品の各製造設備における処理時間を導出する処理時間予測手段とを備え、前記品種分類ロジック作成手段は、前記製造実績データと前記予め定められた設計パラメータに基づいて、前記決定木の説明変数として製品の注文情報及び製造仕様情報に含まれる一つ又は複数の製品属性を用い、目的変数として、各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて離散化した値を、製造設備の数だけ連結したものである処理負荷パターンを用いて品種分類ロジックを作成する機能を有することを特徴とする。
本発明の処理時間予測装置の他の特徴とするところは、前記各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて3段階に離散化した点にある。
本発明の処理時間予測方法は、複数の種類からなる複数の製品を複数の製造設備を用いて製造する製造工程において、過去の製造実績データに基づいて、前記各製造設備での製品の処理時間を予測する処理時間予測方法であって、前記製造実績データと予め定められた設計パラメータに基づいて、複数の種類の製品を複数の品種グループに分類する、決定木による品種分類ロジックを作成する品種分類ロジック作成工程と、前記製造実績データと前記品種分類ロジックに基づいて、前記各製造設備における前記品種グループ毎の処理時間を予測する処理時間予測モデルを作成する処理時間予測モデル作成工程と、前記処理時間予測モデルを用いて、新たな生産スケジュール作成時に対象となる製品の各製造設備における処理時間を導出する処理時間予測工程とを有し、前記品種分類ロジック作成工程は、前記製造実績データと前記予め定められた設計パラメータに基づいて、前記決定木の説明変数として製品の注文情報及び製造仕様情報に含まれる一つ又は複数の製品属性を用い、目的変数として、各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて離散化した値を、製造設備の数だけ連結したものである処理負荷パターンを用いて品種分類ロジックを作成することを特徴とする。
本発明の処理時間予測方法の他の特徴とするところは、前記各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて3段階に離散化した点にある。
本発明のプログラムは、本発明の処理時間予測方法の各工程をコンピュータに実行させる。
本発明のコンピュータ読み取り可能な記憶媒体は、本発明のプログラムを格納したことを特徴とする。
なお、本発明において、処理時間とは、各製造設備、例えば後述のように、転炉であれば吹鎌に要する時間、連続鋳造設備であれば鋳造に要する時間、圧延設備であれば圧延に要する時間というように、各製造設備を用いて、吹鎌、鋳造、圧延等の操作を開始してから終了するまでの時間と定義する。
本発明によれば、個々の製品の製造仕様が同一もしくは一定の範囲内である複数の製品を複数の品種グループとして定義する際に、決定木作成ロジックを適用し、さらに決定木作成の際の目的変数として過去の実績データである処理時間の実績を離散化した値を用いることで、品種区分ロジック決定の際の試行錯誤を大幅に低減するとともに、精度の高い処理時間予測モデルを構築する。そして、得られた処理時間予測モデルを用いて納期や製造能力にマッチした生産スケジュール(生産計画)を立案することで、生産性向上、仕掛削減、工期短縮等の効果を得ることができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
本実施形態では、複数の製造設備で構成された製造工程からなる製造プロセスとして、鉄鋼業における代表的な製品である厚板の製造プロセスを例にして説明する。厚板製造プロセスの製造設備の概略構成の一例を図7に示す。転炉P1では、高温溶融状態の溶鋼を、鉄鋼中間製品の化学的成分である出鋼成分を例えば約300[ton]単位で調整(吹錬)して、取鍋に出鋼する。この転炉P1での製造単位(ロット単位)をチャージと呼ぶ。
連続鋳造設備P2では、転炉P1で製造されたチャージ単位の中間製品を複数チャージ連続して鋳造し、その後規定の長さで切断することで、例えば約20[ton]単位のスラブと呼ばれる板状の中間製品を製造する。この連続鋳造機での一連の連続鋳造の製造単位をキャストと呼ぶ。製造仕様にもよるが概ね8〜12チャージを1キャストとして製造(連続鋳造)する。
圧延設備P3では、スラブを加熱後、所定の厚みや幅まで圧延加工して成形し、複数のプレート(厚板)に剪断した後に、表面品質やサイズ等の検査を行う。精整設備(切断設備)P4では、圧延設備で注文仕様のサイズまで剪断できなかったスラブの切断を、精整設備(矯正設備)P5,P6では品質確保のための矯正を、精整設備(手入設備)P7では品質確保のための手入れを行い、すべての処理を終えた製品は倉庫P8に配置される。
図1に、本実施形態に係る処理時間予測装置の概略構成を示す。また、本発明の処理時間予測方法の実施形態も合わせて説明するために、当該処理時間予測装置における処理時間予測モデルの作成フローを図2に示す。厚板を製造する処理で経た製造過程(各製造設備)や製造日時等の製品の製造実績情報は、製造工程7内の各製造設備から製造工程内のLAN等のネットワークを経由してI/Oボード(通信ポート)で構成するか、又はDVD等のマスストレージ=デバイスで構成した製造実績データ採取部6を通じて収集される。(ステップS1)。
製造実績情報は、製品の組成、サイズ、及び製造工程等の製造仕様、並びに納期や製品量等の注文情報等様々な情報を含んでいる。そこで、製造実績データ採取部6は、処理時間予測に関係する情報のみを抽出するとともに、異常値を除外する等の実績データ前処理を行って、製造実績データを作成して、製造実績データベースD1に格納する(ステップS2)。
次に、キーボードやマウス等の入出力装置を用いて構成された設計パラメータ設定部1によって、複数の製品を分類する品種グループの数等、品種分類ロジックで用いる決定木を作成するのに必要な設計パラメータを設定する(ステップS3)。
ここで、品種分類ロジックを作成するのに用いる決定木について説明する。決定木とはデータの分析手法の一つであって、図5に示すように、データを様々な条件に従って木の枝葉のように分類していく分析手法であり、製造不良要因の特定や市場情報の分類等に使われている(例えば非特許文献1を参照のこと)。
決定木は、データの固まりである複数のノードから構成されており、データ全体を表すルートノード(根ノード)から始まり、末端のノード(リーフノード)に特定の属性を持つデータの割合が多くなるように、つまり偏りのあるデータが含まれるようにノードを次々と分岐させながら作成される。得られたリーフノードへの分岐条件やリーフノードに属する過去のデータ(学習用データ)を用いることで決定木を各種の予測に使うことができる。予測したい属性を「目的変数」、データの分岐条件を記述する属性を「説明変数」と呼ぶ。決定木作成にあたっては、目的変数や説明変数をどのように定義するか、決定木の大きさ(ノードの数や深さ)をどのように決定するか等の設計パラメータの設定が、得られた決定木の予測精度や取扱いの容易さ等に深く関係するため重要である。決定木作成にあたり前記したような必要な設計パラ−メータを設定する。
そして、品種分類ロジック作成部2では、製造実績データベースD1から読み出した実績データ前処理済みの製造実績データと前記設計パラメータに基づいて、決定木で構成する品種分類ロジックを作成し、品種分類ロジックデータベースD2に格納する(ステップS4)。
処理時間予測モデル作成部3では、製造実績データベースD1から抽出した、製品毎の過去予め定めた期間分の製造実績データに含まれている製品属性と、品種分類ロジックデータベースD2に格納されている品種分類ロジックとに基づいて、製造実績データの各製品がどの品種グループに属するかを決定し、製品属性として品種グループ名を製造実績データの製品情報に付与する(ステップS5)。そして、
(ア)品種グループ名を付与した製品毎の過去の製造実績データを品種グループ名に着目して分類し、
(イ)過去一定期間(例えば1年間等)の品種グループ毎の各製造設備での処理時間の平均値を処理時間予測モデルとして作成し、
(ウ)当該品種グループの当該製造設備での処理時間を表すものとして処理時間予測モデルデータベースD3に格納する(ステップS6)。
次に、生産スケジュール作成時における製品毎の各製造設備での処理時間を予測するのに前述の処理時間予測モデルを適用する方法の概略を、図3のフローチャートを参照して説明する。図1に示した処理時間予測部4は、処理時間予測モデルデータベースD3から処理時間予測モデルを読み出すとともに(ステップS7)、品種グループ毎、期間毎の生産予定量等が記された生産スケジュール情報を生産スケジュールデータベースD4より読み出す(ステップS8)。
なお、生産スケジュール情報は、注文の製造状況、設備の稼動状況、納期等を考慮して生産スケジュール立案者によって作成され、生産スケジュールデータベースD4に格納されている。また、生産スケジュール情報はネットワーク等のI/O装置を経由して外部装置から入力しても良い。そして、得られた各製造設備毎の生産スケジュール情報(製品毎・期間毎の生産予定量)に含まれる製品の製造仕様情報(製品毎の製造フロー等)を製造仕様データベースD5から読み出す(ステップS9)。
続いて、対象製品毎の製造フローにおける各製造工程での処理時間を、各製品が属する品種グループの処理時間予測モデルを用いて予測する(ステップS10)。そして、その結果をコンピュータ=ディスプレーで構成される処理時間表示部5へ送り、表示するとともに、生産スケジュール情報を追加もしくは修正する(ステップS11)。生産スケジュール立案者は、その結果を確認し(ステップS12)、必要であれば生産スケジュールの修正等のアクションをとる(ステップS13)。
また、前記生産スケジュールに基づいて生産が行われた後の製造実績データをその予測値とともに処理時間表示部5に表示することにより、予測と実績の対比を行うことができる。この対比により予測が外れた原因を解析し、各種操業改善に繋げると共に、処理時間予測モデルの精度を確認し、必要に応じて品種分類ロジックの再構築もしくは処理時間予測モデルの再構築を行い、予測精度を維持することも可能である。
以下、本発明を適用した、鉄鋼業における厚板の製造プロセスにおける実施例について説明する。品種分類ロジック作成部2は、製造実績データベースD1に格納されている製造実績データのうち、処理時間予測に関係する製品属性情報を製品単位で抽出する(ステップS1)。抽出した情報の一部を表1に示す。
Figure 0005114673
製品毎に付与された製品No.をキーとして、各製品の厚さや幅等のサイズ、材質の規格、特定製造仕様の有無、及び各製造設備での処理時間の実績等の製造実績情報を持つ。例えば製品1は規格が「A1」、製造仕様1は「あり」、製品のサイズは「厚み12[mm]、幅1000[mm]、長さ20,000[mm]」である。製造仕様とは、例えば鋼板冷却有無、熱処理有無等の何れか1種以上を指す。
製品属性には表1に挙げた項目以外にも大量に存在するが、処理時間予測に関係する製品属性はすべて読み出すものとする。読み出す期間は例えば直前の半年間或いは一年間等、予め定めた期間分過去の製造実績データを抽出する。
次に、読み出したデータに対する実績データ前処理を行う(ステップS2)。前記読み込んだデータにはなんらかの不具合により特定の項目の情報が欠落することがあるため、その有無をチェックし、有意なデータのみを抽出する。具体的には、属性情報が空欄であるデータや、製造未着手状態のデータ及び製造着手はしているものの製造完了していないデータ等を除去する。
製品の品種グループ単位の処理時間を予測するためには、製造実績データに基づいて各製造設備における処理時間を精度良く捉えることができるような品種グループを定義する必要がある。処理時間の予測精度を高めるためには、当該品種グループに属する製品であればどのような製品であってもほぼ一定の処理時間となるように品種グループを定義することが極めて重要である。このような品種グループを作成するために、決定木を用いる。
次に、決定木を作成するための設計パラメータを設定する(ステップS3)。本実施例では、製造実績データベースD1から読み込んだ製造実績データにおいて付与されている製品属性を決定木の説明変数の候補とする。また、目的変数は、「製造設備の処理時間」とすることが自然であるが、製造設備が複数ある場合には予測すべき値が複数存在するため、単純に「製造設備の処理時間」として、決定木を作成することはできない。
そこで、本実施例では、「各製造設備での処理負荷パターン」を目的変数とした。ここで処理負荷パターンとは、各製造設備における処理時間を離散化した値を製造設備の数だけ連結したものである。具体的にはまず、精整設備である切断、矯正1、矯正2、及び手入の各製造設備における過去の処理時間の実績値を、前記前処理が完了したデータから読み取り、製造設備毎に処理時間分布のヒストグラムを作成する。そして、予め定めたルールに従って、処理時間を離散化する。一例として、手入工程でのヒストグラムと離散化ルール適用例を図4に示す。ここでは、離散化ルールは、「処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合が70%までを軽処理(=1)、70%超〜90%までを中処理(=2)、90%超〜100%までを重処理(=3)」とした。手入工程に前記離散化ルールを適用した結果、処理時間0〜10分が軽処理(=1)、11〜16分が中処理(=2)、17分以降が重処理(=3)となった。
なお、本実施例における離散化ルールは一例であり、他の離散化ルールを用いてもよい。以上のような離散化処理を他の精整設備についても実施し、各精整設備における処理時間を離散化する。具体例を表2に示す。
Figure 0005114673
ただし、実際に生じた処理負荷パターンの全種類を目的変数とすると、稀にしか発生しない処理負荷パターンの場合は実績データ数が少なくなるため、処理時間のデータの信頼性が乏しくなる場合がある。そのような場合には、実際の処理負荷パターン毎のデータ数が多い、つまり主要な処理負荷パターンのみを目的変数とし、その他のデータ数の少ない処理負荷パターンは「その他の工程」として集約した結果を目的変数とすることが好ましい。このようにすることで主要な処理負荷パターンについては精度よくモデル化し、その他の処理負荷パターンについては、製造設備への影響が小さいことを利用し、モデルの精度をあまり落とすことなく、品種グループ数を少なくし、品種グループの管理を容易にすることができる。具体例を表3に示す。
Figure 0005114673
本実施例では、処理負荷パターン毎のデータ数を調査した結果、処理負荷パターン(1111、1112、2111、1131、2212)が全処理負荷パターンの大半を占めていたため、それらを目的変数として設定するとともに、その他の処理負荷パターンは「その他(Other)」という処理負荷パターンとして集約している。このようにすることでモデルの精度に与える影響を最小限にしつつ、目的変数の種類を全9パターンから6パターンまで削減することができる。
その他の設計パラメータとしては、作成する決定木のリーフノードの数や木構造の深さ等決定木の構造に関するパラメータを設定する。本実施例では、一つのリーフノードが保有するデータ数の上限値を与えるものとする。上限値を小さくするとリーフノードの数が増える、つまり決定木が大きく、深くなることとなる。本実施例ではデータ数上限値を100とした。
次に、これまで述べた設計パラメータに基づいて、品種分類ロジックとなる決定木を作成する(ステップS4)。決定木作成にあたっては市販の決定木作成ソフトウェアを活用してもよい。得られた決定木の一例を図5に示す。最初は鋼材厚板の板厚を説明変数として、板厚が32[mm]より厚いか薄いかによって分岐し、薄い場合は板幅が800[mm]より狭いかどうかによって分岐する。このように徐々に分岐を繰り返すことにより末端のリーフノードに辿り着く。末端のリーフノードには代表的な目的変数が付与されている。
次に、作成した決定木にしたがって製品別の製造実績データにある個々の製品に品種グループ名を付与する(ステップS5)。例えば、表1の製品1のサイズや規格属性を元に図5の決定木の分岐条件を辿ると品種グループ「1111」となり、製品1の属性として品種グループ名「1111」が付与される。以下同様に決定木を用いて全製品に品種グループ名を付与する。
次に、製造実績データを品種グループ毎に分類し、品種グループ毎の各製造設備での処理時間の平均値を算出することで品種グループ別の処理時間予測モデルを作成する(ステップS6)。処理時間予測モデルの一例を表4に示す。
Figure 0005114673
品種グループ毎に各製造設備における処理時間[min]を持つ処理時間予測モデルとしている。作成した品種グループ別の処理時間予測モデルは処理時間予測モデルデータベースD3に格納する。
次に、上記のようにして導出した処理時間予測モデルを生産スケジュール立案業務に用いる場合について説明する。ここでは、精整設備P4〜P7での処理に関する生産スケジュール立案業務を例にあげて説明する。
精整設備P4〜P7では、製品1枚毎に処理を行う。各精整設備に仕掛となっている製品の中から、納期や残工程を参考にして日毎に処理する製品を決定する。立案されたスケジュール例を表5に示す。精整設備毎に日別処理枚数を計画する。
Figure 0005114673
スケジュール立案にあたっては、各精製設備の能力や処理予定の製品の処理時間を考慮して、各精整設備の稼動時間内で処理を完了することが可能かどうか等を検証することが重要である。そこで、一旦立案された生産スケジュールに含まれる製品の品種グループ及び処理負荷予測モデルに基づいて各製造設備での処理負荷を予測し、各製造設備の能力や稼動スケジュールと対比することにより生産スケジュールの妥当性を評価し、問題があれば製品の生産タイミングを変更する等のアクションを製造前に取ることができる。
なお、上述したように生産スケジュールの妥当性を評価するために処理時間予測モデルを用いる場合には、その予測精度が重要となる。本実施例における処理時間予測モデルを用いて予測した手入設備P7の処理時間の予測値と実績値との比較を図6に示す。横軸は処理日であり、縦軸は処理時間を表す。精度良く予測できていることが分かる。
このように、処理時間を精度よく予測できる処理時間予測モデルを管理可能な品種グループ数で構築することにより、多種多様な製品を生産する鉄鋼製造業における生産管理業務や操業管理業務の品質を向上させることができる。
なお、本発明の目的は前述した実施の形態の機能を実現するソフトウェアのコンピュータプログラムのコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(CPU若しくはMPU)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読出し実行することによっても、達成されることは言うまでもない。
この場合、記憶媒体から読出されたプログラムコード自体が前述した実施の形態の機能を実現することになり、当該コンピュータプログラム、及びそのプログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えばフレキシブルディスク、ハードディスク、光ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。
また、コンピュータが読出したプログラムコードを実行することにより、前述した実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼働しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
さらに、記憶媒体から読出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した実施の形態の機能が実現される場合も含まれることは言うまでもない。
以上のように、本発明によれば、例えば、鉄鋼業のように多種多様な製品を複数の製造設備での加工を経て大量に製造する製造工程において、高精度の処理時間予測モデルを容易に得られるため、生産スケジュール立案精度の向上や操業状態の変化の検出による操業監視・予測に利用可能である。したがって、本発明は、鉄鋼業のような製造業である産業において大いに有用である。
本発明を適用した実施形態に係る処理時間予測装置の概略構成を示す図である。 本発明を適用した実施形態に係る処理時間予測モデルの作成方法を示すフローチャートである。 処理時間予測モデルを生産スケジュール作成に適用する方法を示すフローチャートである。 実施例における処理時間実績値のヒストグラムの一例を表す図である。 実施例における品種区分のための決定木を表す図である。 実施例における手入設備の処理時間予測精度を表す図である。 厚板製造プロセスの製造設備の概略構成を示す図である。
符号の説明
1 設計パラメータ設定部
2 品種分類ロジック作成部
3 処理時間予測モデル作成部
4 処理時間予測部
5 処理時間表示部
6 製造実績データ採取部
7 製造工程
D1 製造実績データベース
D2 品種分類ロジックデータベース
D3 処理時間予測モデルデータベース
D4 生産スケジュールデータベース
D5 製造仕様データベース
P1 転炉
P2 連続鋳造設備
P3 圧延設備
P4 切断設備
P5 矯正設備1
P6 矯正設備2
P7 手入設備
P8 倉庫

Claims (6)

  1. 複数の種類からなる複数の製品を複数の製造設備を用いて製造する製造工程において、過去の製造実績データに基づいて、前記各製造設備での製品の処理時間を予測する処理時間予測装置であって、
    前記製造実績データと予め定められた設計パラメータに基づいて、複数の種類の製品を複数の品種グループに分類する、決定木による品種分類ロジックを作成する品種分類ロジック作成手段と、
    前記製造実績データと前記品種分類ロジックに基づいて、前記各製造設備における前記品種グループ毎の処理時間を予測する処理時間予測モデルを作成する処理時間予測モデル作成手段と、
    前記処理時間予測モデルを用いて、新たな生産スケジュール作成時に対象となる製品の各製造設備における処理時間を導出する処理時間予測手段とを備え
    前記品種分類ロジック作成手段は、前記製造実績データと前記予め定められた設計パラメータに基づいて、前記決定木の説明変数として製品の注文情報及び製造仕様情報に含まれる一つ又は複数の製品属性を用い、目的変数として、各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて離散化した値を、製造設備の数だけ連結したものである処理負荷パターンを用いて品種分類ロジックを作成する機能を有することを特徴とする処理時間予測装置。
  2. 前記各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて3段階に離散化したことを特徴とする請求項1に記載の処理時間予測装置。
  3. 複数の種類からなる複数の製品を複数の製造設備を用いて製造する製造工程において、過去の製造実績データに基づいて、前記各製造設備での製品の処理時間を予測する処理時間予測方法であって、
    前記製造実績データと予め定められた設計パラメータに基づいて、複数の種類の製品を複数の品種グループに分類する、決定木による品種分類ロジックを作成する品種分類ロジック作成工程と、
    前記製造実績データと前記品種分類ロジックに基づいて、前記各製造設備における前記品種グループ毎の処理時間を予測する処理時間予測モデルを作成する処理時間予測モデル作成工程と、
    前記処理時間予測モデルを用いて、新たな生産スケジュール作成時に対象となる製品の各製造設備における処理時間を導出する処理時間予測工程とを有し
    前記品種分類ロジック作成工程は、前記製造実績データと前記予め定められた設計パラメータに基づいて、前記決定木の説明変数として製品の注文情報及び製造仕様情報に含まれる一つ又は複数の製品属性を用い、目的変数として、各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて離散化した値を、製造設備の数だけ連結したものである処理負荷パターンを用いて品種分類ロジックを作成することを特徴とする処理時間予測方法。
  4. 前記各製造設備での処理時間の実績値を、処理時間の短い方からの全データ数に対する累積割合に基づいて3段階に離散化したことを特徴とする請求項3に記載の処理時間予測方法。
  5. 請求項3又は4に記載の処理時間予測方法の各工程をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  6. 請求項5に記載のプログラムを格納したことを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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