JP5112638B2 - セリウムハロゲン化物のシンチレータ組成物並びに関連する検出器及び検出方法 - Google Patents

セリウムハロゲン化物のシンチレータ組成物並びに関連する検出器及び検出方法 Download PDF

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Description

本発明は、総括的にはシンチレータ組成物、例えば多様な条件下でガンマ線及びX線を検出するのに有用なシンチレータ組成物に関する。
シンチレータ結晶は、例えばガンマ線、X線、宇宙線、及び約1keVよりも大きいエネルギーレベルに特徴がある粒子などの高エネルギー放射線のための検出器において広く使用されている。この結晶は、光検出手段、つまり光検出器と結合される。放射性核種源からの光子が結晶に衝突すると、結晶は光を放出する。光検出器は、受けた光パルスの数及びそれらの強度に比例した電気信号を生成する。シンチレータ結晶は、多くの用途において一般的に使われている。その実例としては、例えば陽電子照射断層撮影(PET)装置などの医用イメージング装置、石油及びガス産業のためのボーリング検層用途並びに様々なデジタルイメージング用途が含まれる。
シンチレータの具体的な組成は、放射線検出装置の性能にとって重要である。シンチレータは、X線及びガンマ線励起に応答しなくてはならない。さらに、シンチレータは、放射線検出を高める多数の特性を有するべきである。例えば、大多数のシンチレータ物質(材料)は、高い光出力、短い減衰時間、少ない残光、高い「阻止能」及び許容可能なエネルギー分解能を有しなくてはならない。(後述するように、シンチレータがどのように使用されるかに応じて、その他の特性もまた非常に重要である可能性がある。)
高性能シンチレータのこれらの特性は、当技術分野においてはよく知られている。要するに、「光出力」は、X線又はガンマ線のパルスによって励起された後にシンチレータによって放出される可視光の量である。高い光出力は、光を電気パルスに変換する放射線検出器の能力を高めるので望ましい。(パルスのサイズは通常、放射線エネルギーの量を示す。)
「減衰時間」という用語は、放射線励起が終わった時点において、シンチレータによって放出される光の強度が該光強度の規定割合まで低下するのに要する時間を意味する。PET装置のような多くの用途では、より短い減衰時間は、ガンマ線の効率的な同時計数を可能にするので好ましい。その結果、スキャン時間が短縮され、装置を一層効率的に使用することができる。
「残光」という用語は、放射線励起が終わった後の規定時間(例えば、100ミリ秒)においてシンチレータによって放出される光強度を意味する。(残光は通常、シンチレータが放射線によって励起されている間に放出される光のパーセンテージとして表される。)少ない残光は、例えば画像アーチファクト(「ゴーストイメージ」)がない画像のような一層鮮明な画像が検出器によって得られるので、有利であることが多い。
「阻止能」というのは、放射線を吸収する物質の能力であり、その物質の「X線吸収力」又は「X線減弱力」と呼ばれることもある。阻止能は、シンチレータ物質の密度に直接関連している。高い阻止能を有するシンチレータ材料は、放射線を殆ど又は全く通過させず、このことは放射線を効率的に捕捉する上で顕著な利点となる。
放射線検出器の「エネルギー分解能」というのは、非常に似通ったエネルギーレベルを有するエネルギー線(例えば、ガンマ線)間を区別するその検出器の能力を意味する。エネルギー分解能は通常、標準放射線放出エネルギーで測定値を得た後における、所定のエネルギー源に対するパーセンテージ値として表される。より低いエネルギー分解能値は、それらが通常はより高品質の放射線検出器をもたらすので非常に望ましい。
これらの特性の殆ど又は全てを有する様々なシンチレータ材料(物質)が、長年にわたり使用されてきた。例えば、タリウム活性化ヨウ化ナトリウム(NaI(Tl))は、何十年もの間シンチレータとして広く使用されてきた。このタイプの結晶は、比較的大きく、またかなり安価である。さらに、NaI(Tl)結晶は、非常に高い光出力に特徴がある。
その他の一般的なシンチレータ物質の実例としては、ゲルマニウム酸ビスマス(BGO)、セリウムドープドオルトケイ酸ガドリニウム(GSO)及びセリウムドープドオルトケイ酸ルテチウム(LSO)が含まれる。これらの物質の各々は、特定の用途に非常に適した幾つかの良好な特性を有する。
シンチレータ技術に精通した者には分かるように、従来型の材料の全ては、それらの属性と共に1つ又はそれ以上の欠点を有する。例えば、タリウム活性化ヨウ化ナトリウムは、非常に軟質の吸湿性物質であり、酸素及び湿気を容易に吸収する。さらに、そのような物質は、大きくかつ持続性の残光を生じ、この残光が強度計数システムの妨げになるおそれがある。さらに、約230ナノ秒というNaI(Tl)の減衰時間は、多くの用途にとって短過ぎる。またタリウム成分は、健康及び環境問題の観点から特殊な取扱い処理を必要とする。
他方、BGOは、非吸湿性である。しかしながら、この物質の光收率(NaI(Tl)の15%)は、多くの用途にとって低過ぎる。この物質はまた、遅い減衰時間を有する。さらに、この物質は、高い屈折率を有しており、これが内部反射による光の損失をもたらす。
GSO結晶は幾つかの用途に適しているが、それらの光收率は、NaI(Tl)によって得られる光收率の約20%に過ぎない。さらに、これらの結晶は、劈開し易い。従って、結晶全体を破壊する危険性を冒さずにこれらの結晶を何らかの特定の形状に切断しかつ研磨することは、非常に困難である。
LSO物質もまた、幾つかの欠点を示す。例えば、結晶のルテチウム元素は、少量の天然の長期崩壊放射性同位元素Lu176を含有する。この同位元素の存在は、高感度検出器用途に非常に妨げになるおそれがあるバックグラウンド計数率をもたらすことになる。さらに、ルテチウムは、非常に高価であり、また比較的高い融点を有しており、このことが、時には処理を困難にする可能性がある。
幾つかの用途における従来型のシンチレータの欠点は、研究者に新しい材料(物質)を開発させる動機を与えてきた。新しい材料の幾つかが、P.Dorenbos他の国際特許出願公告第WO 01/60944 A2号及び第WO 01/60945 A2号に記載されている。これらの参考文献は、セリウム活性化ランタニドハロゲン化物化合物のシンチレータとしての使用に関して記載している。最初に述べた公報は、Ce活性化塩化ランタニド化合物の使用について記載しており、他方、第2に述べた公報は、Ce活性化臭化ランタニド化合物の使用について記載している。ハロゲン化物含有物質は、良好なエネルギー分解能と低い崩壊定数との組合せを同時にもたらすと言われている。このような特性の組合せは、幾つかの用途にとって非常に有利である場合がある。さらに、これらの物質は、許容可能な光出力値を明確に示す。さらに、これらの物質は、ルテチウムを含まず、上述したようなこの元素によって引き起こされることがある問題が全くない。
Dorenbosの公報は、確かにシンチレータ技術における進歩を示していると思われる。しかしながら、このような進歩は、高まり続ける結晶に対する要求の背景とは別の方向でなされている。急速に益々求められるようになってきている最終用途の1つの実例は、上述したボーリング検層である。要するに、シンチレータ結晶(通常はNaI(Tl)系である)は、典型的には管又はケーシング内に封入されて、結晶パッケージを形成する。このパッケージは、関連する光電子倍増管を含み、ボーリング孔内を移動する掘削ツール内に組み込まれる。
シンチレーション素子は、周囲の地層からの放射線を捕捉しかつそのエネルギーを光に変換することによって機能する。生成された光は、光電子倍増管に伝えられる。光インパルスは、電気インパルスに変換される。このインパルスに基づいたデータは、「孔上方に向けて」分析装置に伝送するか又は局所的に格納することができる。このような掘削(ボーリング)時データ、つまり「掘削時測定値」(MWD)を取得しかつ伝送することは、今や普通の実施手法である。
このような目的のために使用するシンチレータ結晶は非常に高い温度において、また激しい衝撃及び振動条件下で機能することができなくてはならないことは、ボーリング検層用途に精通している者には容易に分かる。従って、シンチレータ材料は、上述した多くの特性、例えば高い光出力及びエネルギー分解能並びに速い減衰時間などの最高の組合せをもつべきである。(シンチレータもまた、非常に制約された空間に適したパッケージ内に封入するのに十分なほど小さくなくてはならない。)許容可能な特性の閾値は、掘削がより大きな深さで行われるようになるのにつれて、著しく高められてきた。例えば、高い分解能で強力な光出力を生成する従来型のシンチレータ結晶の能力は、掘削深度が増大するにつれて大いに危うくなってきている。
米国特許第5,213,712号公報 米国特許第5,869,836号公報 米国特許第5,882,547号公報 米国特許第6,302,959号公報 米国特許第6,437,336号公報 米国特許第6,585,913号公報 米国特許第6,624,420号公報 米国特許第6,624,422号公報 国際特許出願公告第01/60944 A2号公報 国際特許出願公告第01/60945 A2号公報 "Scintillation Properties of LaCl3:Ce3+ Crystals: Fast, Efficient, and High-Energy Resolution Scintillators", E.V.D. van Loef et al, IEEE Transactions on Nuclear Science, Vol. 48, No.3, June 2001, pp. 341-345 "High-Energy-Resolution Scintillator: Ce3+ Activated LaCl3", E.V.D. van Loef et al, Applied Physics Letters, Vol.77, No.10, September 2000, pp. 1467-1468 "High-Energy-Resolution Scintillator: Ce3+ Activated LaBr3", E.V.D. van Loef et al, Applied Physics Letters, Vol.79, No.10, September 2001, pp. 1573-1575 "Influence of the Anion on the Spectroscopy and Scintillation Mechanism in Pure and Ce3+-doped K2LaX5 and LaX3 (X = Cl, Br, I), E.V.D. van Loef et al, Physical Review B 68, 045108 (2003), pp. 045108-1 to 045108-9 "Luminescent Materials", by G. Blasse et al, Springer-Verlag (1994) "Crystal Growth Processes", by J.C. Brice, Black & Son Ltd (1986) "Encyclopedia America", Volume 8, Grolier Incorporated (1981), pages 286-293
以上の説明を考慮すると、新規なシンチレータ材料は、もしそれら材料が高まり続ける商業的及び産業的使用のための要求を満たすことができるならば、当技術分野で非常に歓迎されることになることは明らかであろう。これらの材料は、優れた光出力及び比較的速い減衰時間を示すべきである。これらの材料はまた、特にガンマ線の場合に良好なエネルギー分解特性を有するべきである。さらに、新規なシンチレータは、単結晶物質又はその他の透明な固体に容易に転換可能であるべきである。さらに、それらシンチレータは、妥当なコスト及び許容可能な結晶サイズで効率的に製造することができるべきである。シンチレータはまた、多様な高エネルギー放射線検出器と適合可能であるべきである。
本発明の1つの実施形態は、少なくとも2つのセリウムハロゲン化物の固溶体を含むシンチレータ組成物に関する。
別の実施形態は、高エネルギー放射線を検出するための放射線検出器に関する。本検出器は、(a) それ自体が少なくとも2つのセリウムハロゲン化物の固溶体と該セリウムハロゲン化物の何らかの反応生成物とを含む結晶シンチレータと、(b)シンチレータによって生成された光パルスの放出に応答して電気信号を生成することができるように、該シンチレータに光学的に結合された光検出器と、を含む。
シンチレーション検出器で高エネルギー放射線を検出する方法は、本発明の付加的な実施形態を構成する。本方法は、(A)少なくとも2つのセリウムハロゲン化物の固溶体を含む組成物で形成されたセリウムハロゲン化物系シンチレータ結晶によって放射線を受けて、該放射線に特有の光子を生成する工程と、(B)シンチレータ結晶に結合された光子検出器で光子を検出する工程とを含む。
シンチレータ組成物は、少なくとも2つのセリウムハロゲン化物の固溶体を含む。これらのハロゲン化物は、臭素、塩素又はヨウ素のいずれかである。本明細書で使用する場合、「固溶体」という用語は、単相又は多相を含むことができる固体結晶質形態のハロゲン化物の混合物を意味する。(相転移は、結晶の形成後、例えば焼結又は高密度化のような後続する処理工程後に結晶内で起こることになることは、当業者には分かる。)
幾つかの実施形態では、固溶体は、塩化セリウムと臭化セリウムとを含む。これら化合物の両方とも、商業的に入手可能であり、また公知の方法によって作ることもできる。例えば、塩化セリウム(「cerous chloride」と呼ぶこともある)は、塩酸と炭酸セリウム又は水酸化セリウムとの反応によって調製することができる。臭化セリウムは、同様な方法、例えば炭酸セリウム、酸化セリウム(ceric oxide)又は水酸化セリウムと臭化水素酸との反応によって調製することができる。
臭化セリウムに対する塩化セリウムの割合は、大きく変えることができる。例えば、約1:99〜約99:1の範囲のモル比が可能である。臭化セリウムに対する塩化セリウムのモル比は、非常に多くの場合には約10:90〜約90:10の範囲内にある。
2つの化合物の具体的な比率は、上記の所望の特性、例えば光出力及びエネルギー分解能のような様々な因子に応じて決まることになる。幾つかの実施形態では、このモル比は、約30:70〜約70:30の範囲内にある。しかしながら、一部の用途では、塩化セリウムがより良好な発光特性を示すので、固溶体は、臭化セリウムと比べてより大量の塩化セリウムを含むべきである。従って、例えば固溶体は、塩化セリウム及び臭化セリウムの合計モルに基づいて約55モル%〜約95モル%の塩化セリウムを含むことができる。幾つかの実施形態では、選択した最終用途において、固溶体は、約75モル%〜約95モル%の塩化セリウムを含む。
セリウムハロゲン化物の固溶体はさらに、ヨウ化セリウムを含むことができる。その他のハロゲン化物と同様に、ヨウ化セリウムもまた、商業的に入手可能であり、また公知の方法によって調製することができる。使用に際して、ヨウ化セリウムは、酸素又は酸素含有化合物を実質的に含まないものとすべきである。本明細書で使用する場合、「実質的に含まない」という用語は、約0.1モル%よりも少ない酸素を含有する化合物、また幾つかのより特殊な実施形態では、約0.01モル%よりも少ない酸素を含有する化合物を示すことを意味する。
通常は、存在するヨウ化セリウムの量は、組成物内に存在するセリウムハロゲン化物の合計モルに基づいて約0.1モル%〜約20モル%の範囲内にあることになる。幾つかの実施形態では、存在するヨウ化セリウムの量は、約0.1モル%〜約10モル%の範囲内にある。ヨウ化セリウムの存在により、光出力のような様々な特性をさらに高めることができる。(ヨウ化セリウムは、塩化セリウム又は臭化セリウムのいずれかと共に個別に存在させることできるが、多くの場合それら他の2つのハロゲン化物の組合せと共に存在させることになることを理解されたい。)
シンチレータ組成物は、幾つかの異なる形態で調製することができる。幾つかの実施形態では、組成物は、単結晶質(つまり、「single crystal」)の形態である。単結晶質のシンチレーション結晶は、より大きな透明度の性向を有する。この単結晶質シンチレーション結晶は、例えばガンマ線に使用するもののような高エネルギー放射線検出器にとって特に有用である。
しかしながら、組成物は、その意図した最終用途に応じて、その他の形態とすることもできる。例えば、組成物は、粉末の形態とすることができる。組成物はまた、多結晶質セラミックの形態として調製することもできる。シンチレータ組成物は、少量の不純物を含み得ることも理解されたい。当業者には明らかなように、これらの不純物は通常、出発材料に由来するものであり、一般的にはシンチレータ組成物の約0.1重量パーセントよりも少ない構成成分となる。非常に多くの場合、不純物は、組成物の約0.01重量パーセントよりも少ない構成成分となる。組成物はまた、寄生相(parasitic phase)を含む場合があり、その体積パーセンテージは通常、約1%よりも小さい。さらに、参考文献として本明細書に組入れている米国特許第6,585,913号(Lyons他)における教示のように、シンチレータ組成物内には微量のその他の材料を意図的に含ませることができる。例えば、残光を低減するために、微量のその他の希土類酸化物を添加することができる。放射線損傷の可能性を低減するために、カルシウム及び/又はジスプロシウムを添加することができる。
当業者は、シンチレータ材料(物質)を調製する方法に精通している。組成物は通常、幾つかの乾式プロセスで調製される。(シンチレータ組成物は、これらのプロセスの様々な反応生成物を含む可能性があることを理解されたい。)多結晶質物質を調製する幾つかの例示的な方法が、上述のLyons特許に、また参考文献として本明細書に組入れている米国特許第5,213,712号(Dole)及び第5,882,547号(Lynch他)に記載されている。通常は、正しい割合で所望の物質(例えば、セリウムハロゲン化物自体)を含有する適当な粉末を最初に調製し、次に仮焼、型成形、焼結及び/又は熱間等静圧圧縮成形のような工程を行う。粉末は、様々な形態の反応物質(例えば、塩、酸化物、ハロゲン化物、蓚酸塩、炭酸塩、硝酸塩又はこれらの混合物)を混合することによって調製することができる。混合は、水、アルコール又は炭化水素のような液体の存在下で行うことができる。
反応物質(多くの場合、セリウムハロゲン化物自体)の混合は、全体にわたって均一な混合を保証するあらゆる適当な手段によって行うことができる。例えば、混合は、めのう乳鉢及び乳棒で行うことができる。これに代えて、ボールミル、ボウルミル、ハンマミル又はジェットミルのような混合機又は粉砕装置を使用することができる。混合物はまた、媒溶化合物又は結合剤のような様々な添加物を含むことができる。時には適合性(相容性)及び/又は溶解性に応じて、ミリング時に水、ヘプタン、又はエチルアルコールのようなアルコールを液体溶媒として使用することができる。汚染はシンチレータの発光能力を低下させるおそれがあるので、適当なミリング媒体、例えばシンチレータを汚染することにならない材料を使用すべきである。
混合した後に、混合物は、該混合物を固溶体に変えるのに十分な温度及び時間条件の下で炉内において焼成することができる。これらの条件は、部分的には使用するマトリックス材料及び活性剤の具体的タイプに応じて決まることになる。粉末反応物質の場合、焼成は通常、約500℃〜900℃の範囲の温度で行われることになる。焼成時間は一般的に、約15分〜約10時間の範囲内となるであろう。
焼成は、例えば真空のような酸素及び湿気を含まない雰囲気内で、或いは窒素、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン又はキセノンのような不活性ガスを使用して行うべきである。当業者は、酸素及び湿気を厳密に排除しながら組成物を調製する方法に非常に精通している。それらの方法の幾つかは、2003年10月17日に出願されたA.Srivastava他の出願中の米国特許出願第10/689,361号に記載されており、この出願は、参考文献として本明細書に組入れる。しかしながら、様々なその他の方法も使用することができる。当業者は、所定の状況に対して最も適切な方法及び装置を容易に決定することができるであろう。焼成が完了した後に、得られた物質を粉末化して、シンチレータを粉末形態にすることができる。次に従来通りの方法を使用して粉末を処理して、放射線検出素子にすることができる。
単結晶物質を作る方法もまた、当技術分野においてはよく知られている。非限定な例示的な参考文献には、Springer−VerlagからのG.Blasse他による「Luminescent Materials(発光材料)」(1994年)がある。通常、適切な反応物質は、一致溶融した組成物を形成するために十分な温度で溶融される。溶融温度は、反応物質自体の独自性に応じて決まることになる。その温度は通常、約650℃〜約1100℃の範囲内にある。
溶融材料から単結晶を形成するために、様々な方法を採用することができる。これらの方法の幾つかが、米国特許第6,437,336号(Pauwels他)及び第6,302,959号(Srivastava他)、Brackie & Son LtdからのJ.C.Briceによる「Crystal Groth Processes(結晶成長法)」(1986)、並びにDrolier Incorporatedからの「Encyclopedia Americana」第8巻(1981)の286−293頁に記載されている。これらの文献は、参考文献として本明細書に組入れる。結晶成長方法の非限定的な実例には、Bridgman−Stockbarger法、Czochralski法、ゾーンメルティング法(つまり、「フローティングゾーン」法)及び温度勾配法がある。当業者は、これらの方法の各々に関する必要詳細事項に精通している。
部分的には上述のLyons他の特許の教示に基づいて、単結晶の形態でシンチレータを製造する1つの非限定的な方法の例示を行うことができる。この方法では、所望の組成物(上述した)の種結晶を、飽和溶液内に挿入する。この溶液は、適当なるつぼ内に収容されており、シンチレータ物質のための適切な前駆体を含む。上述した結晶成長法の1つを用いて、新しい結晶質物質を成長させかつ単結晶に付加させる。結晶のサイズは、部分的にはその所望の最終用途、例えばその結晶が組み込まれることになる放射線検出器のタイプに応じて決まることになる。
シンチレータ物質は、従来通りの方法によってその他の形態としても調製することができる。例えば、上述した多結晶質セラミックの形態の場合には、シンチレータ物質は、前述したように最初は粉末の形態で製造される(又は、粉末の形態に変えられる)。次に、従来通りの方法によって、一般的には粉末の融点の約65%〜85%である温度で(例えば、炉内で)その物質を焼結して透明にする。この焼結作業は、大気条件下又は加圧下で行うことができる。
本発明の別の実施形態は、シンチレーション検出器で高エネルギー放射線を検出する方法に関する。この検出器は、本明細書に記載したシンチレータ組成物で形成された1つ又はそれ以上の結晶を含む。シンチレーション検出器は、当技術分野においてはよく知られており、ここで詳述する必要はない。このような装置について説明している幾つかの参考文献(多くの参考文献のうちの)には、上述した米国特許第6,585,913号及び第6,437,336号、並びにこれまた参考文献として本明細書に組入れている米国特許第6,624,420号(Chai他)がある。一般的に、これらの装置のシンチレータ結晶は、調査対象の線源から放射線を受け、その放射線に特有の光子を生成する。これらの光子は、或るタイプの光検出器によって検出される。(光検出器は、従来型の電子的及び機械的取付けシステムによってシンチレータ結晶に結合される。)
上述したように、光検出器は、当技術分野において全てよく知られた多様な装置とすることができる。非限定的な実例には、光電子倍増管、光ダイオード、CCDセンサ及びイメージ増強管が含まれる。特定の光検出器の選択は、部分的には製作しようとする放射線検出器のタイプ及びその意図した用途に応じて決まることになる。
シンチレータ及び光検出器を含む放射線検出器自体は、前に述べたように多様なツール及び装置に結合することができる。非限定的な実例には、ボーリング検層ツール及び核医学装置(例えば、PET)が含まれる。放射線検出器はまた、例えばピクサレイテッドフラットパネル装置などのデジタルイメージング装置に結合することができる。さらに、シンチレータは、スクリーンシンチレータの構成要素として役立てることもできる。例えば、粉末状のシンチレータ物質は、例えば写真フィルムなどのフィルムに取り付けられる比較的平坦なプレートに形成することができる。或る線源から発した例えばX線などの高エネルギー放射線は、シンチレータと接触し、光子に変換され、この光子がフィルム上に現像されることになる。
最終用途の幾つかについて簡潔に説明することにする。ボーリング検層装置は、前に述べたが、これらの放射線検出器の重要な用途に相当する。放射線検出器をボーリング検層管に対して作動可能に結合する方法は、当技術分野において公知である。その一般的概念は、参考文献として本明細書に組入れている米国特許第5,869,836号(Linden他)に記載されている。シンチレータを含む結晶パッケージは通常、収納ケーシングの一端部に光学窓を含む。この窓は、放射線誘起シンチレーション光が、パッケージに結合された光感知装置(例えば、光電子倍増管)による測定のために、結晶パッケージから外に出ることを可能にする。光感知装置は、結晶から放出された光子を電気パルスに変換し、これらの電気パルスは、関連する電子機器によって整形されかつデジタル化される。この一般的プロセスによってガンマ線を検出することができ、これにより、掘削ボーリング孔を囲む岩層の分析を可能にする。
上述したPET装置のような医用イメージング装置は、これらの放射線検出の別の重要な用途に相当する。放射線検出器(シンチレータを含む)をPET装置に対して作動可能に結合する方法もまた、当技術分野においてよく知られている。その一般的概念は、参考文献として本明細書に組入れている米国特許第6,624,422号(Williams他)のような多くの参考文献に記載されている。要するに、放射性医薬品は通常、患者の体内に注入され、関心のある器官内に集中した状態になる。その化合物からの放射性核種は、崩壊して陽電子を放出する。陽電子が電子と遭遇した時、それら陽電子は壊滅して、光子又はガンマ線に変換される。PETスキャナは、これらの「壊滅」を三次元的に定位し、それによって関心のある器官の形状を観察のために再構成することができる。スキャナ内の検出器モジュールは通常、多数の「検出器ブロック」と共に関連する回路を含む。各検出器ブロックは、特殊な配列のシンチレータ結晶のアレイと共に光電子倍増管を含むことができる。
前に暗に示したように、シンチレータの光出力は、ボーリング検層法及びPET法の両方において非常に重要である。本発明は、これらの方法の厳しい用途に合った所望の光出力をもたらすことができるシンチレータ材料を提供する。さらに、これらの結晶は、上述したその他の重要な特性、例えば短い減衰時間、少ない残光、高い「阻止能」及び許容可能なエネルギー分解能を同時に示すことができる。さらに、これらのシンチレータ材料は、経済的に製造することができ、また放射線検出を必要とする多様なその他の装置内で使用することもできる。
実施例
下記の実施例は、単に説明のためのものであって、特許請求している本発明の技術的範囲に対する何らかの限定の根拠であると解釈してはならない。
3つのシンチレータ試料を調製し、次いで光出力分析について試験した。各組成物は、塩化セリウム及び臭化セリウムの様々な割合部分を乾燥混合することによって調製した。(全ての材料は、商業的に入手した。)混合は、めのう乳鉢及び乳棒で行った。次に、均一な混合物をアルミニウム製るつぼに移し、約600℃の温度で焼成した。加熱雰囲気は、0.5%の水素及び99.5%の窒素の混合物であった。
試料Aにおいては、臭化セリウムに対する塩化セリウムのモル比は、50:50であった。試料Bにおいては、臭化セリウムに対する塩化セリウムのモル比は、20:80であった。試料Cにおいては、臭化セリウムに対する塩化セリウムのモル比は、10:90であった。
各試料についての発光スペクトルは、光学分光器を使用してX線励起下で測定した。図1、図2及び図3は、試料A、試料B及び試料3に対応する。各図は、強度(任意の単位)の関数としての波長(nm)のプロットである。試料A(図1)についてのピーク励起波長は、約400nmであった。試料B(図2)についてのピーク励起波長は、約410nmであった。試料C(図3)についてのピーク励起波長は、約405nmであった。
図1〜図3に対応するデータは、セリウムハロゲン化物組成物中の塩化物−臭化物の割合の範囲全体にわたって、X線によってセリウムを励起させることができることを証明している。従って、セリウムイオンに特有の発光レベルにガンマ線によってセリウムを励起させることができることも明らかである。これらの発光特性は、セリウムハロゲン化物の混合物が多様な装置によってガンマ線を検出するためのシンチレータ組成物として非常に有用なものになることを明確に示している。さらに、これらのシンチレータ組成物は、自己活性化していることに注目されたい。言い換えると、セリウムが活性化剤(つまり、シンチレーション検出器によって測定される放射線の放出源)及びホスト元素の両方として機能するので、これらのシンチレータ組成物は、別個の活性化剤を必要としない。
上述の説明は、本発明の実施形態の幾つかを示している。しかしながら、本発明の技術思想及び技術的範囲から逸脱することなく、これらの実施形態に対して様々な追加、変更及び置換えを行うことができることは明らかである。上述した特許、論文及び文献の全ては、参考文献として本明細書に組入れる。
本発明の実施形態によるシンチレータ組成物についての放出スペクトル(X線励起下における)のグラフ。 本発明の実施形態によるシンチレータ組成物についての放出スペクトル(X線励起下における)の別のグラフ。 本発明の実施形態によるシンチレータ組成物についての放出スペクトル(X線励起下における)の第3のグラフ。

Claims (10)

  1. 少なくとも2種類のセリウムハロゲン化物の固溶体を含む、シンチレータ組成物。
  2. 前記ハロゲン化物が、臭素、塩素及びヨウ素から成る群から選ばれることを特徴とする請求項1記載のシンチレータ組成物。
  3. 前記固溶体が、塩化セリウムと臭化セリウムとを含むことを特徴とする請求項2記載のシンチレータ組成物。
  4. 前記塩化セリウム及び臭化セリウムの合計モルに基づいて5モル%〜5モル%の塩化セリウムを含むことを特徴とする請求項3記載のシンチレータ組成物。
  5. ヨウ化セリウムをさらに含むことを特徴とする請求項3記載のシンチレータ組成物。
  6. 存在する前記ヨウ化セリウムの量が、該組成物中に存在するセリウムハロゲン化物の合計モルに基づいて.1モル%〜0モル%の範囲内にあることを特徴とする請求項5記載のシンチレータ組成物。
  7. 高エネルギー放射線を検出するための放射線検出器であって、
    (a) なくとも2種類のセリウムハロゲン化物の固溶体含む結晶シンチレータと、
    (b)前記シンチレータによって生成された光パルスの放出に応答して電気信号を生成することができるように、該シンチレータに光学的に結合された光検出器と、
    を具備する放射線検出器。
  8. 前記光検出器が、光電子倍増管、光ダイオード、CCDセンサ及びイメージ増強管から成る群から選ばれた少なくとも1つの装置であることを特徴とする請求項7記載の放射線検出器。
  9. ボーリング検層ツールに作動可能に結合されたことを特徴とする請求項7記載の放射線検出器。
  10. シンチレーション検出器で高エネルギー放射線を検出する方法であって、
    (A)セリウムハロゲン化物系シンチレータ結晶による放射線を受けて、該放射線に特有の光子を生成する工程と、
    (B)前記シンチレータ結晶に結合された光子検出器で前記光子を検出する工程とを具備し
    前記シンチレータ結晶は少なくとも2種類のセリウムハロゲン化物の固溶体を含む組成物で形成されたことを特徴とする検出方法。
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