JP5109533B2 - 芳香族ポリマー水素化触媒 - Google Patents

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Description

本発明は芳香族ポリマーを繰り返し、安定的に水素化するための触媒およびその製造方法に関する。該触媒を用いて製造された芳香族水素化ポリマーは、高透明性、低複屈折、高耐熱性、高表面硬度、低吸水、低比重、高転写性、優れた離型性を示す。特に、光学材料に要求される特性に優れているので、光学レンズ、光導光板、光拡散板、光ディスク基板材料、前面パネル等の広範な用途に用いることができる。
近年、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂をはじめとする非晶性プラスチックは様々な用途で用いられており、特にその光学的特徴を生かして、光学レンズ、光ディスク基盤等の光学材料としての需要が多い。この種の光学材料においては高い透明性のみならず、高耐熱性、低吸水性、高機械物性等のバランスに優れた高度な性能が要求されている。
従来用いられてきた材料はこれらの要件を全て備えているわけではなく、解決すべき問題点をそれぞれ有している。例えば、ポリスチレンは力学的に脆い、複屈折が大きい、透明性が劣るという欠点がある。ポリカーボネートは耐熱性に優れるが、これも複屈折が大きく、透明性もポリスチレンとほぼ同等である。ポリメタクリル酸メチルは、透明性は高いが吸水率が極めて高いため寸法安定性に乏しく耐熱性が低いことが問題である。ポリスチレンの芳香環を水素化して得られたポリビニルシクロヘキサンは透明性に優れるという特徴を有する。ただし、機械強度が弱い、耐熱安定性に乏しい、他材料との接着性にも乏しいという問題は残されている(特許文献1〜3)。密着性を改良させる方法として、ポリスチレンの芳香環水添物、共役ジエン−スチレン共重合体の二重結合及び芳香環を水素化したポリマー、飽和炭化水素樹脂を混合する例があるが(特許文献4)操作が煩雑である。また、スチレンのようなビニル芳香族化合物と無水マレイン酸のような不飽和2塩基酸を共重合したのち、芳香環の30%以上を水素化すると、ポリスチレンに比べ透明性及び複屈折が改良されることが開示されているが(特許文献5)、アクリル系の樹脂に比べ、光学特性が劣ることは否めない。
また、メタクリル酸メチル(以下、MMAと称する)とスチレンとの共重合体(以下、MS樹脂と称する)は高透明性を有し、かつ、寸法安定性、剛性、比重等のバランスに優れた樹脂であるが、複屈折が大きいという問題がある。該MS樹脂の芳香環を水素化した樹脂(以下、MSHと称する)、特に、MMAの共重合率が50%以上のMSHは、MS樹脂と比べ、複屈折が大幅に改善され、透明性、耐熱性、機械物性のバランスに優れている(特許文献6)。
芳香族ポリマーの芳香環の水素化は既に知られているが(特許文献7)、透明性を高くするには芳香環の水素化率を上げる必要があり、芳香環の水素化率がほぼ100%でないと高透明性の樹脂が得られないとされてきた。これは、芳香環の水素化率が低い場合、ブロック体を形成し全光線透過率が低下するためである。
反応基質との分離を容易にするためには固体触媒を用いることが好ましく、Pd、Pt、Rh、Ru、Re、Niなどの金属を活性炭、アルミナ、シリカ、珪藻土などの担体に担持してなる固体触媒が主に用いられる。芳香族ポリマーのみならず共役ジエン重合体などのポリマーの水素化に関する例は多く知られているが、高分子量であることから反応しにくく、高い水素化率や高い反応速度を得ることが難しい。また、触媒を繰り返し使用すると活性低下が起こりやすいことも知られている。触媒活性が低下すると、水素化率が低下し、樹脂の透明性が損なわれる。触媒活性を改善するため、担体の種類、細孔構造および粒径が検討されている。例えば、粒径が100μm未満のシリカ担体上にパラジウムを担持した触媒を用いて芳香環の水素化率が70%程度の水添ポリスチレンを得ている例や(特許文献2)、孔径が600Åを超える大きな細孔を有するシリカ担体にPtとRhを担持した触媒を用いて水添ポリスチレンを得た例がある(特許文献8)。同様に孔体積の95%以上が孔径450Åの細孔である多孔質担体にVIII族金属を担持し、その金属表面積が担体表面積の75%以内である触媒を用い、芳香環の水素化率を低めにし、エチレン系不飽和結合を高い水素化率で水素化している例もある(特許文献9)。
孔径100〜1000Åの孔容積が総孔容積の70〜25%であるシリカやアルミナにVIII族金属を担持した触媒を用いると、分子量の低下なくポリスチレンの芳香環が完全に水素化されること(特許文献10)、VIII亜族の金属を孔径100〜1000Åである孔の容積が総孔容積の15%未満であるシリカまたはアルミナ担体に担持させて得た、低分子量化合物用の市販の通常の水素化触媒を、エーテル基含有炭化水素の存在下で使用すると、分子量の低下を伴わずにポリスチレンの芳香環を完全に水素化することができること(特許文献11)が開示されている。酸化チタンや酸化ジルコニウムなどのIVa族元素の酸化物に金属を担持した触媒はNBRなどの共役ジエン系ポリマーの水素化反応に再使用しても高い活性を示すことが開示されている(特許文献12)。しかし、共役ジエン系ポリマーの水素化反応に関して記載されているのみで、芳香環の水素化への言及はない。孔径100〜100000nmである孔の容積が総孔容積の50〜100%である担体上にアルカリ金属やアルカリ土類金属を添加した後、白金族金属をその90%以上が表層部(担体径の1/10以内)に存在するように担持した触媒を用いると、芳香族―共役ジエン共重合体の不飽和結合(芳香環も含む)を効率よく水素化でき、金属成分の溶出も抑制できることが記載されている(特許文献13)。
また、活性アルミナによって重合反応液から触媒毒を除去した後に水素化することにより触媒活性が改善されること(特許文献14)、また、固定層での反応線速度を改善して生産性を上げること(特許文献15)が報告されている。
高分子反応であるため芳香環の水素化反応には溶媒の寄与も大きい。これまで一般的に炭化水素、アルコール、エーテル、エステルなど多くの反応溶媒が用いられている(特許文献16)。炭化水素やアルコールは樹脂に対する溶解性が低い。エーテル類、例えば、1,4−ジオキサンは発火点が低く、高温の脱揮押出操作を施す際にはトルエンなど他の溶媒に置換しなくはならない、また、テトラヒドロフランは開環反応が起こりやすく不安定という問題がある。エステルは安全でかつ比較的安定であり、速やかに反応が進行するものの、水素化率によっては反応溶液ならびに固形樹脂が白濁化し、透明度が低下するという問題がある。そこでエステルにアルコールを添加することにより安全、安定的かつ速やかに透明度の高い水素化された芳香族系ポリマーを得る方法が開示されている(特許文献17)。しかし、2種類の溶媒を併用することになりその分離操作が煩雑になる。また、エーテル溶媒にアルコールや水を添加することにより低水素化率でも高透明性を達成する方法が開示されているが(特許文献18)、適用できる芳香族系ポリマーが限定されているため、適用できない場合が多い。
上記のように分離回収の容易な固体触媒を用いて、高い光学特性を有する芳香環水素化ポリマーを長期安定的に得るには困難な問題が多くある。これらの条件をすべて満たし工業的に生産しうる触媒の製法は今のところ知られていない。
特開2003−138078号公報 特許第3094555号公報 特開2004−149549号公報 特許第2725402号公報 特公平7−94496号公報 特開2006−89713号公報 独国特許出願公開第1131885号明細書 特表平11−504959号公報 特許第3200057号公報 特表2002−521509号公報 特表2002−521508号公報 特開平1−213306号公報 特開2000−95815号公報 特表2003−529646号公報 特開2002−249515号公報 特表2001−527095号公報 特開2006−291184号公報 特許第2890748号公報
本発明は、長期間または繰り返し安定的に、かつ、速やかに芳香環水素化ポリマーを製造する触媒およびその製造方法を提供する。
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、塩化パラジウムを含有する触媒前駆体を酸化ジルコニウムを主成分とする担体に吸着せしめ、洗浄操作により塩素含有率を原子比としてCl/Pd=0.5未満まで減少させ、かつ、非水系で還元することにより得られる最終的にパラジウム分散度50%以上を有する芳香族ポリマー水素化用の酸化ジルコニウム担持パラジウム触媒を製造する方法を見出し、該触媒を用いて芳香族ポリマーを水素化すると、透明度の高い芳香環水素化ポリマーが長期安定的かつ速やかに得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち本発明は、塩化パラジウムを含有する触媒前駆体を酸化ジルコニウムを主成分とする担体に吸着せしめ、洗浄操作により塩素含有率を原子比としてCl/Pd=0.5未満まで減少させ、かつ非水系で還元することにより、最終的にパラジウム分散度50%以上を有する酸化ジルコニウム担持パラジウム触媒およびその製造方法に関する。
本発明はさらに、該触媒を用いることによって得られる水素化ポリマーに関する。
本発明はまた、該水素化ポリマーを含む光学組成物に関する。
本発明の触媒によると、芳香族ポリマーの芳香環を、長期間また繰り返し安定的かつ均質に水素化することができる。得られた水素化ポリマーは、高透明性、低複屈折、高耐熱性、高表面硬度、低吸水、低比重、高転写性、優れた離型性を示す。特に光学材料として優れた特性を有しており、光学レンズ、光導光板、光拡散板、光ディスク基板材料、前面パネル等の広範な用途に用いることができるので、本発明の工業的意義は大きい。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明で用いる芳香族ポリマーとは、具体的にはスチレン、α―メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、アルコキシスチレン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル化合物を含有する重合体が挙げられるが、スチレンを含有する重合体が好ましい。また、2種以上の芳香族ビニル化合物を共重合することも可能である。
本発明においては、芳香族ビニル化合物だけからなる重合体を水添して得ることも可能だが、表面密着性や光学特性を改善するためなどの目的で芳香族ビニル化合物及びそれと共重合可能な他の単量体を共重合した共重合体を水添することも可能である。共重合可能な単量体としては、不飽和脂肪酸エステル、シアノビニル化合物、不飽和2塩基酸またはその誘導体、不飽和脂肪酸またはその誘導体である。光学特性を改善するには特に不飽和脂肪酸エステルとの組み合わせが好ましく、中でも(メタ)アクリレートとの組み合わせが良好である。(メタ)アクリレートとは、具体的には(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸イソボルニルなどの(メタ)アクリル酸アルキル;(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシメチル)、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシプロピル)、(メタ)アクリル酸(2−ヒドロキシ−2−メチルプロピル)などの(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル;(メタ)アクリル酸(2−メトキシエチル)、(メタ)アクリル酸(2−エトキシエチル)などの(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルなどの芳香環を有する(メタ)アクリル酸エステル;および2−(メタ)アクロイルオキシエチルホスホリルコリンなどのリン脂質類似官能基を有する(メタ)アクリル酸エステルなどを挙げることができるが、物性面のバランスから、メタクリル酸アルキルを単独で用いるか、またはメタクリル酸アルキルとアクリル酸アルキルを併用することが好ましい。併用する場合、メタクリル酸アルキル80〜100モル%およびアクリル酸アルキル0〜20モル%を用いることが好ましい。メタクリル酸アルキルとしてはメタクリル酸メチルが特に好ましく、アクリル酸アルキルとしてはアクリル酸メチルまたはアクリル酸エチルが特に好ましい。
なお、本明細書においては、「アクリル酸」と「メタクリル酸」を総称して(メタ)アクリル酸といい、「アクリレート」と「メタクリレート」を総称して(メタ)アクリレートという。
上記の芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリレートの重合は公知の方法で行うことができるが、工業的にはラジカル重合による方法が簡便でよい。ラジカル重合は塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法など公知の方法を適宜選択することができる。例えば塊状重合法や溶液重合法では、モノマー、連鎖移動剤、重合開始剤を含むモノマー組成物を完全混合槽に連続的にフィードしながら100〜180℃で連続重合する。溶液重合法ではトルエン、キシレン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの炭化水素系溶媒、酢酸エチルなどのエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、メタノールやイソプロパノールなどのアルコール系溶媒などをモノマー組成物と共にフィードする。重合後の反応液は重合槽から抜き出して、脱揮押出機や減圧脱揮槽に導入し、揮発分を除去して共重合体を得ることができる。
使用する芳香族ビニル化合物−(メタ)アクリレート共重合体の構成単位組成は、仕込んだモノマーの組成とは必ずしも一致せず、重合反応によって実際に共重合体に取り込まれる各モノマーの量は重合率、モノマーの反応性などによって変化する。共重合体の構成単位組成は、重合率が100%であれば仕込みモノマー組成と一致するが、実際には50〜80%の重合率で製造する場合が多く、反応性の高いモノマーほど共重合体に取り込まれ易いため、モノマーの仕込み組成と共重合体の構成単位の組成にズレが生じるので、仕込みモノマーの組成を適宜調整する必要がある。
芳香族ビニル化合物−(メタ)アクリレート共重合体の重量平均分子量は、10,000〜1,000,000が好ましく、50,000〜700,000がより好ましく、100,000〜500,000がさらに好ましい。10,000未満または1,000,000を超える共重合体も本発明の方法によって水素化することができるが、10,000未満では機械強度などの面で実用性に耐えない場合があり、1,000,000を超えると粘度などの面から取扱いが困難である場合がある。重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、THFを溶媒として用い、標準ポリスチレンで検量して求めた。
芳香族ビニル化合物−(メタ)アクリレート共重合体において、A/B(Aは(メタ)アクリレート由来の構成単位のモル数、および、Bは芳香族ビニル化合物由来の構成単位のモル数)が0.25〜4.0であることが好ましい。
本発明の方法によって得られる水素化ポリマーは、可視光領域の光線を良好に透過するため、外観は透明である。JIS K7105に規定する方法で測定した、3.2mm厚の成形品の全光線透過率が90%以上であることが好ましい。成形品表面の反射による損失が避けられないため、この全光線透過率の上限は屈折率に依存する。光学材料として使用される場合にはさらに高度な透明性が要求されることがあるので、全光線透過率は91%以上であることがより好ましく、92%以上であることがさらに好ましい。このような透明性を得るためには、出発共重合体中の芳香環が均質に水素化されていることが好ましい。
一般に芳香族ビニル共重合体の芳香環の水素化においては、全ての芳香環を完全に水素化することは困難であり、普通、未水素化の芳香環が残存する。この未水素化の芳香環が、しばしば白濁の原因となる。該原因の一つは水素化された芳香環を含む部位と未水素化の芳香環を含む部位がそれぞれブロックを形成することである。特に芳香環の水素化率が低い場合にブロックを形成しやすく、それを抑制するためには水素化率は85%(モル%)以上が好ましい。一般に、芳香族ビニル共重合体の分子量は分布しており、低分子量芳香族ビニル共重合体の芳香環が優先的に水素化され、高分子量芳香族ビニル共重合体の芳香環が水素化されずに残ることも白濁の原因となる。すなわち、高分子量芳香族ビニル共重合体の芳香環の水素化速度が低分子量芳香族ビニル共重合体のそれよりも大幅に低いと、低分子量芳香族ビニル共重合体の芳香環が優先的に水素化され、得られるポリマーは白濁しやすくなる。しかし、高分子量芳香族ビニル共重合体の芳香環の水素化率を向上させて未水素化芳香環を減少させ、得られるポリマー全体の相溶性を上げるとドメインがなくなり、高い透明性を示すことが知られている。分子量に起因する芳香環の水素化速度の相違による白濁の防止には、一般に溶剤や触媒が大きく影響する。
本発明における水素化反応に用いる触媒としては、水素化速度が高くなり、原料共重合体の分子量を低下させることがなく、また、水素化条件下で溶媒自身の反応を誘発しない触媒を選定する。具体的には、担持することにより高い金属表面積を得ることができるので、パラジウム(Pd)を担体に担持した固体触媒が好適である。
一般に、触媒担体としては、活性炭、アルミナ(Al)、シリカ(SiO)、シリカ−アルミナ(SiO−Al)、珪藻土、酸化チタン、酸化ジルコニウムなどが用いられる。しかしながら、活性炭やアルミナなどの担体を使用した場合、芳香環の水素化が均質に進行しにくく、しばしば透明性が不十分になる。この問題は酸化ジルコニウム担体を用いることにより解決されることが明らかになった。すなわち、酸化ジルコニウム担体にパラジウムを担持した触媒の存在下で水素化すると、芳香環の水素化速度が高く、また、水素化が均質に進行し、高透明性を有する水素化ポリマーが得られる。
反応の途中で水素化が均質に進行しなかったとしても、最終的に水素化率がほぼ100%に到達した場合にはドメインがなくなるため高透明性の水素化ポリマーが得られる。しかし、触媒を長期間および繰り返し使用する場合、ほぼ100%の水素化率を達成することは不可能である。酸化ジルコニウムにパラジウムを担持した触媒の存在下で水素化すると水素化が均質に進行するので、水素化率が例えば90モル%未満であっても全光線透過率が90%以上である高透明性水素化ポリマーを確実に得ることができ、工業生産上極めて有利である。
また、該酸化ジルコニウムにパラジウムを担持した触媒は再利用した場合にも活性の低下が非常に少なく、使用初期と同様に水素化が均質に進行するので、長期間または繰り返し安定的に高透明性を有するポリマーを得ることが可能となる。
パラジウムのような貴金属は高価であるため、経済上、使用量は最小限とし、反応に有効な活性部位、即ち金属表面をより多く保持することが重要である。そのために、表面露出パラジウムをバルクパラジウム量で除することにより算出されるパラジウム分散度が高いことが非常に重要である。分散度は以下に定義される(式(1))。
分散度=(表面露出パラジウム/全体パラジウム量)×100 (1)
分散度を測定するには、一酸化炭素のパルス吸着法など既知の方法で測定することができる。
担体へのパラジウムの担持量が多い場合、分散度が低くなり、活性に寄与しないパラジウムが増加してしまう。また、担持量が少なすぎる場合、分散度は高いものの反応活性を維持するのに必要な触媒量が増加してしまい、取り扱い上不利となる。そのため、パラジウム金属の担持量は、酸化ジルコニウム担体に対して0.01〜3重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜1重量%である。また、本発明の触媒の分散度は50%以上であり、より好ましくは60%、さらに好ましくは70%以上である。分散度は高ければ高いほど好ましく、50%以上の分散度を有する場合、パラジウムが相当有効に活用できていると考えることができる。酸化ジルコニウム担体に用いた場合、高分散にパラジウムを担持することが可能であり、パラジウムの単位重量当たりの水素化速度を非常に大きくすることができるので、パラジウムの担持量を0.1〜0.5重量%程度にした場合でも十分な水素化速度が得られる。
一般にパラジウムの前駆体としては塩化パラジウム、硝酸パラジウム、酢酸パラジウムなどの公知の塩または錯体が存在するが、経済上及び取り扱い上塩化パラジウムが好適である。塩化パラジウムは水のみでは溶解しがたいため、塩酸水溶液または塩化ナトリウム水溶液を用いて溶解させることができる。中でも、溶解性の観点から、塩酸水溶液が好適である。
塩酸の量は塩化パラジウムに対して、0.1〜100倍モル加えることができる。一般に、塩酸濃度が薄い場合表面担持、塩酸濃度が濃い場合内部まで担持できるとされているが、本発明の場合、塩素を洗浄する点からも塩酸濃度は薄い方が好ましく、原子比としては、HCl/PdCl=2/1程度で十分である。
得られた塩化パラジウム水溶液を酸化ジルコニウムと混合させるが、その際、全重量に対する酸化ジルコニウムの濃度、すなわちスラリー濃度は1〜80wt%が好ましく、さらに好ましくは10〜50wt%である。それ以上薄い場合は廃液量が増加し、それ以上濃い場合は溶液量が不足し、酸化ジルコニウム全体に溶液がいきわたらなくなる。
橙色の該塩化パラジウム溶液を酸化ジルコニウムに吸着させた場合、速やかにパラジウム前駆体が担体上に吸着し、溶液の色が透明になる。その場合、そのままろ過してもほぼ全量が担体上に吸着しており、定量的にパラジウムを酸化ジルコニウム上に含浸させることができる。また、溶液の色がまだ残っている場合は、攪拌しながら水分を留去することにより、パラジウム前駆体のほぼ全量を担体上に含浸させることが可能となる。含浸して得られた液にはパラジウムのみならず、塩素根も担体上に吸着している。塩素根が触媒活性に影響しない場合、除去する必要はないが、本反応の如く、得られた製品を蒸留操作などで精製することが難しい場合は、触媒中の塩素根が製品に混入する可能性があるため、塩素などの不純物はなるべく除去されていることが好ましい。また、塩素は金属を腐食する恐れもあるため、なるべく除去されていることが好ましい。塩素根は焼成操作によっても一部除去されるが十分ではなく、水やアルカリ水溶液などで塩素根を除去する操作が必要となる。
塩化パラジウムなどのパラジウム前駆体はアルカリによって加水分解を受け、水酸化パラジウムとなり塩素を放出するため、アルカリ水溶液の添加は有用であるが、その場合、使用するアルカリとしては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウムのような通常の塩基性化合物を使用することができるが、アンモニア水およびアンモニウム塩の水溶液についてはパラジウムを錯化溶解するので好ましくない。使用するアルカリ水溶液の量は、仕込み液中の塩素根、すなわち、塩化パラジウムおよび溶解に用いた塩化水素や塩化ナトリウム中の塩素分の合計量と当量以上用いれば十分に加水分解を完遂させることができる。アルカリ化合物を多量に使用し、pHがあまりに高すぎる場合、パラジウムが凝集しやすくなり分散度が低下し、また、廃液処理の観点からも好ましくない。塩素根に対するアルカリ化合物の使用量は1〜10モル、好ましくは1〜4モルである。その後、ろ過操作を行うが、同操作によってもアルカリもしくは塩化アルカリなどの塩類が触媒上に残存するので、水洗操作を施す必要がある。洗浄水中の塩素量は硝酸銀滴定など既存の方法で行うことができ、また、pH確認や導電率について随時確認し、水洗操作の完遂を判定することができる。
また、アルカリ水を用いなくとも、水を多量に用いることでもパラジウム前駆体を加水分解させることができる。その場合、水温を50〜70℃程度に上げることで加水分解を促進することができる。
塩化パラジウムは元来原子比としてCl/Pd=2であり、溶解のため、塩酸や塩化ナトリウムを使用し、HPdClやNaPdClを形成させた場合、Cl/Pd=4となるが、上記の洗浄操作で、担体上に吸着しているパラジウムを溶出させることなく、Cl/Pd=0.5未満まで塩素根を除去する。Cl/Pd=0.2未満まで塩素根を除去することが好ましく、さらに好ましくはCl/Pd=0.1未満まで塩素根を除去することが好ましい。特にアルカリ水を用い、pH7以上にした場合、容易にCl/Pd=0.1未満を達成することができる。
パラジウム前駆体を酸化ジルコニウム上に強固に固定し、水分を除去するためには焼成操作が有効である。焼成は、100℃〜800℃で行うことができる。酸化ジルコニウムの相転移や結晶成長を避けるために100℃〜600℃が好ましい。先述のアルカリ水溶液洗浄や水洗の操作は焼成の前後いずれで行うこともできる。
また、水添反応前にはパラジウムが還元状態である必要がある。その際、分散度を維持するためには非水系での還元が好適である。還元は、反応器に触媒を仕込む前に行ってよいし、反応器の中で行ってもより。事前に還元を行う場合は、水素還元を行うことができ、室温から400℃で行い、Nなどで希釈しながら行うこともできる。反応器内で行う場合は、水添反応時に同時に水素還元を行ってもよい。
既知のホルマリン還元やヒドラジン還元を行うこともできるが、水系で還元を行うことになり分散度が低下しやすく、特に温度が高い場合、もしくはpHが10以上と高い場合は分散度が低下しやすく、好ましくない。
担体である酸化ジルコニウムは一般的な方法で得ることができる。例えば、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニルなどを加水分解する方法、または、オキシ塩化ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸ジルコニルなどをアンモニアまたは炭酸アンモニウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウムなどのアルカリで中和して水酸化ジルコニウムまたは非晶質の酸化ジルコニウム水和物を沈殿させ、該沈殿を焼成することにより酸化ジルコニウムを得ることができる。また、オキシ塩化ジルコニウムまたはジルコニウムアルコキシドの熱分解や四塩化ジルコニウムの気相酸素分解によっても得ることができる。酸化ジルコニウム水和物や水酸化ジルコニウムの焼成温度を適宜選択することによって、含水量、比表面積、細孔径および細孔容積を変化させることができる。比表面積が大きい酸化ジルコニウムを得ることができるので、300〜800℃で焼成することが好ましい。担持パラジウムの分散度や水素化能の向上、基質の拡散という観点から、酸化ジルコニウム担体の孔径は20〜3,000Åが好ましく、特に50Å〜3000Åが好ましい。比表面積は10m/g以上であることが好ましく、特に50m/g以上であることが好ましい。
触媒強度改良などを目的として、必要に応じて、酸化ジルコニウムを他の担体上に担持し、その後、パラジウムを酸化ジルコニウムに担持してもよい。また、酸化ジルコニウムにパラジウムを担持した触媒を粘土化合物などのバインダー成分と混合、成形してもよい。この場合、触媒成分全体に占める酸化ジルコニウムの含有量が10重量%以上であることが好ましい。
芳香族ポリマーの水素化は適当な溶媒中で行う。水素化反応前後のポリマーの溶解性及び水素の溶解性が良好であり、水素化される部位を持たない溶媒が好ましい。このような溶媒としては、シクロヘキサンなどの炭化水素系溶剤、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル系溶剤、テトラヒドロフランや1,4−ジオキサンなどの環状エーテル、もしくはカルボン酸エステルなどが好適である。また、反応後に溶媒を脱揮除去するので、溶媒の発火点が高いことが好ましいが、その場合はカルボン酸エステルが好ましい。
該カルボン酸エステルとしては下記一般式(1):
COOR (1)
(式中、Rは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基、Rは炭素数1〜6のアルキル基または炭素数3〜6のシクロアルキル基である)
で示される脂肪族カルボン酸エステルが好適である。R及びRとしては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基が例として挙げられる。エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸‐n‐ブチル、酢酸ペンチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸‐n‐プロピル、プロピオン酸‐n‐ブチル、n‐酪酸メチル、イソ酪酸メチル、n‐酪酸‐n‐ブチル、n‐吉草酸メチル、n‐ヘキサン酸メチルなどが挙げられるが、特に、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、イソ酪酸メチル、n―酪酸メチルが好適に用いられる。
水素化反応時の溶液中における芳香族ポリマーの濃度は、好ましくは1〜50重量%、より好ましくは3〜30重量%、さらに好ましくは5〜20重量%である。上記範囲内であると、反応速度の低下や溶液粘性の上昇による取扱いの不便さを避けることができ、また、生産性、経済性の面から好ましい。
本発明の水素化は、懸濁床または固定床、バッチ式、セミバッチ式または連続流通式など公知の反応様式で行うことができる。
懸濁床で反応を行なう場合、担体粒径は0.1〜1,000μmが好ましく、より好ましくは1〜500μm、さらに好ましくは5〜200μmである。粒径が上記範囲内であると、水素化反応後の触媒分離が容易であり、充分な反応速度が得られる。
水素化をバッチ式もしくはセミバッチ式で行う場合、触媒の使用量は原料共重合体100重量部に対してパラジウムとして0.0005〜10重量部であるのが好ましい。連続流通式で行う場合、単位触媒量あたりの原料共重合体供給量、すなわち空間速度が0.001〜1h−1になるように原料共重合体の溶液を供給する。
水素化は、60〜250℃、3〜30MPaの水素圧で、3〜24時間行うのが好ましい。反応温度が上記範囲内であると、充分な反応速度が得られ、原料共重合体および水素化共重合体の分解を避けることができる。また、水素圧が上記範囲内であると、充分な反応速度が得られる。
水素化反応後は、濾過または遠心分離などの公知の方法で触媒を分離し、回収する。着色、機械物性への影響などを考慮すると、得られた水素化ポリマー中の残留金属濃度は出来るだけ少ないことが好ましい。残留金属濃度は、10ppm以下が好ましく、より好ましくは1ppm以下である。
触媒を分離した後、水素化ポリマー溶液から溶媒を除去し、水素化ポリマーを精製する。水素化ポリマーの分離には、
(1)水素化ポリマー溶液から溶媒を連続的に除去して濃縮液とし、該濃縮液を溶融状態で押し出し、次いでペレット化する方法、
(2)水素化ポリマー溶液から溶媒を蒸発させて塊状物を得、該塊状物をペレット化する方法、
(3)水素化ポリマー溶液を貧溶媒に加える、または、水素化ポリマー溶液に貧溶媒を加えて水素化ポリマーを沈殿させ、該沈殿をペレット化する方法、
(4)熱水と接触させて塊状物を生成させ、該塊状物をペレット化する方法
などの公知の方法を用いることができる。
本発明の方法によって得られる水素化ポリマーは公知の方法によって光学組成物にすることができる。該水素化ポリマーを含む光学組成物は熱可塑性を有しているため、押し出し成形、射出成形、シート成形体の二次加工成形など種々の熱成形によって精密かつ経済的に光拡散性光学物品を製造することが可能である。光拡散性光学物品の具体的な用途としては、導光板、導光体、ディスプレイ前面パネル、プラスチックレンズ基板、光学フィルター、光学フィルム、照明カバー、照明看板などを挙げることができる。
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例により特に限定されるものではない。
樹脂の評価方法は次の通りである。
(1)芳香環の水素化率
水素化反応前後のUVスペクトル測定における260nmの吸収の減少率で評価した。
(2)重量平均分子量
水素化前後の重量平均分子量(Mw)をRI検出器を使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求めた。溶媒としてTHFを用い、標準ポリスチレンで検量した。
(3)パラジウム金属の分散度
COパルス吸着法により測定した。CO/Pd=1として算出した。
(4)塩素およびパラジウム含有量
蛍光X線装置により標準添加法により測定した。
(5)全光線透過率
水素化ポリマー粉を減圧下、4時間、80℃にて乾燥した後、鏡面加工した金型の中に入れ、東邦プレス製作所の油圧成形機を用いて、210℃、10MPaで圧縮加熱成形し、試験片(3.2mm×30mm×30mmの平板)を作製した。この試験片の全光線透過率を、日本電色工業製色度・濁度測定器COH−300Aを用いて、JIS K7105に準拠し、透過法で測定した。
実施例1
(1)触媒調製
塩化パラジウム0.0835g(0.00047mol)及び0.1N HCl 9.4cc(0.00094mol)を水10gに溶解した。この溶液に酸化ジルコニウム担体(MEL社製1501/07)9.95gを加え、吸着させた。ろ過後、50℃の水10000gにて水洗を行ったのち、400℃にて3hr焼成した。その後、さらに50℃の水6000gにて水洗を行い、水洗水の電気伝導度が200μS以下になるのを確認した後、120℃で乾燥し、0.5%Pd/ZrO触媒を得た。得られた触媒には所定量のパラジウムが含有されていることを確認した。また塩素の含有率は500ppm(Cl/Pd=0.3)であった。その後、10%水素−90%窒素の混合ガスを50cc/minの速度で流通させながら240℃で還元処理を施したのち、COパルス吸着を行い、パラジウム金属分散度を測定したところ、80%であった。
(2)水素化反応1
重量平均分子量(Mw)170,000のMMA−スチレン共重合体(新日鐵化学社製、MS600(MMA/スチレンモル比=6/4))5gをイソ酪酸メチル(IBM)45gに溶解し、0.1gの0.5%Pd/ZrOと共に200mlオートクレーブに仕込んだ。水素圧9MPa、温度200℃で12時間水素化反応を行なった。濾過により触媒を除去した後、反応液を過剰のメタノール中に滴下し、沈殿したポリマーを回収した。このポリマーの最終的な水素化率は99.1%であった。加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなかった。
また、ろ過しながら反応液を抜き出したところ、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
(3)水素化反応2
重量平均分子量(Mw)170,000のMMA−スチレン共重合体(新日鐵化学社製、MS600(MMA/スチレンモル比=6/4))11.25gをイソ酪酸メチル(IBM)63.75gに溶解し、15重量%MS600のIBM溶液75gを作った。0.5gの0.5%Pd/ZrOとIBM25gを200mlオートクレーブに仕込んだのち、水素圧9MPa、温度170℃とした。その後、先述の15重量%MS600のIBM溶液を5g/hrで15時間かけて供給した後、5hr保持した。その後、70℃まで降温した。水素を放出し、N雰囲気にし、反応器内に設置したフィルターより、反応液75gをろ過した。反応液を過剰のメタノール中に滴下し、沈殿したポリマーを回収した。このポリマーの水素化率は99.1%であった。加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなかった。また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
引き続いて水素雰囲気に再度置換した後、水素圧9MPa、温度170℃とした。その後、先述の15重量%MS600のIBM溶液を5g/hrで15時間かけて供給した後、5hr保持し反応せしめ、その後、70℃まで降温し、N雰囲気下で反応液75gをろ過するという操作を10回繰り返した。10回目の核水添率は98.9%であり、加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなく、また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例2
(1)触媒調製
塩化パラジウム0.0835g(0.00047mol)及び0.1N HCl 9.4cc(0.00094mol)を水10gに溶解した。この溶液に酸化ジルコニウム担体(MEL社製1501/07)9.95gを加え、吸着させた。その後、0.3%NaHCO水溶液79g(0.00282mol)を加えて30℃、20min攪拌した後、ろ過した。1000gの水にて水洗を行い、電気伝導度が20μS以下になるのを確認した後、120℃、7hr乾燥、400℃、3hr焼成して、0.5%Pd/ZrO触媒を得た。得られた触媒には所定量のパラジウムが含有されていることを確認した。また、塩素の含有率は100ppm未満であった。
その後、10%水素−90%窒素の混合ガスを50cc/minの速度で流通させながら240℃で還元処理を施したのち、COパルス吸着を行い、パラジウム金属分散度を測定したところ、80%であった。
(2)水素化反応1
前記触媒を0.1g用いた以外は実施例1と同様にして水素化反応を行ない、ポリマーを回収した。このポリマーの水素化率は99.1%であった。
また、ろ過しながら反応液を抜き出したところ、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
(3)水素化反応2
反応温度を175℃にした以外は実施例1と同様に行った。1回目の水素化率は99.1%であった。加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなかった。また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例1と同様に、10回繰り返し、10回目の核水添率は99.0%であり、加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなく、また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例3
(1)触媒調製
塩化パラジウム0.0835g(0.00047mol)及び0.1N HCl 9.4cc(0.00094mol)を水10gに溶解した。この溶液に酸化ジルコニウム担体(MEL社製1501/07)9.95gを加え、吸着させた。その後、1NNaOH6.6cc(0.0066mol)を加えて30℃、20min攪拌した後、ろ過した。1000gの水にて水洗を行い、電気伝導度が20μS以下になるのを確認した後、120℃、7hr乾燥、400℃、3hr焼成して、0.5%Pd/ZrO触媒を得た。得られた触媒には所定量のパラジウムが含有されていることを確認した。また、塩素の含有率は100ppm未満であった。その後、10%水素−90%窒素の混合ガスを50cc/minの速度で流通させながら240℃で還元処理を施したのち、COパルス吸着を行い、パラジウム金属分散度を測定したところ、72%であった。
(2)水素化反応1
前記触媒を0.1g用いた以外は実施例1と同様にして水素化反応を行ない、ポリマーを回収した。このポリマーの水素化率は98.9%であった。
また、ろ過しながら反応液を抜き出したところ、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
(3)水素化反応2
反応温度を175℃にした以外は実施例1と同様に行った。1回目の水素化率は99.1%であった。加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなかった。また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例1と同様に、10回繰り返し、10回目の核水添率は98.8%であり、加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなく、また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例4
(1)触媒調製
塩化パラジウム0.167g(0.00094mol)及び0.1N HCl 18.8cc(0.00188mol)を水20gに溶解した。この溶液に酸化ジルコニウム担体(MEL社製1501/07)9.95gを加え、吸着させた。その後、0.3%NaHCO水溶液158g(0.00564mol)を加えて30℃、20min攪拌した後、ろ過した。1000gの水にて水洗を行い、電気伝導度が20μS以下になるのを確認した後、120℃、7hr乾燥、400℃、3hr焼成して、1%Pd/ZrO触媒を得た。得られた触媒には所定量のパラジウムが含有されていることを確認した。また、塩素の含有率は100ppm未満であった。
その後、10%水素−90%窒素の混合ガスを50cc/minの速度で流通させながら240℃で還元処理を施したのち、COパルス吸着を行い、パラジウム金属分散度を測定したところ、70%であった。
(2)水素化反応1
前記触媒を0.1g用いた以外は実施例1と同様にして水素化反応を行ない、ポリマーを回収した。このポリマーの水素化率は99.3%であった。
また、ろ過しながら反応液を抜き出したところ、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
(3)水素化反応2
反応温度を175℃にした以外は実施例1と同様に行った。1回目の水素化率は99.4%であった。加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなかった。また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例1と同様に、10回繰り返し、10回目の核水添率は99.1%であり、加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなく、また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
比較例1
(1)触媒調製
塩化パラジウム0.0835g(0.00047mol)及び0.1N HCl 9.4cc(0.00094mol)を水10gに溶解した。この溶液に酸化ジルコニウム担体(MEL社1501/07)9.95gを加え、攪拌しながら3%ホルマリン水溶液10g(0.0099mol)および1.3%NaOH水溶液10g(0.0033mol)をさらに加え、パラジウムを酸化ジルコニウムに沈着させた。次いで、ろ過し、1Lの水により水洗を繰り返した後、120℃にて乾燥し、0.5wt%Pd/ZrO触媒を得た。得られた触媒には所定量のパラジウムが含有されていることを確認した。また、塩素の含有率は100ppm未満であった。10%水素−90%窒素の混合ガスを50cc/minの速度で流通させながら240℃で還元処理を施したのち、COパルス吸着を行い、パラジウム金属分散度を測定したところ、30%であった。
(2)水素化反応
前記触媒を0.1g用いた以外は実施例1と同様にして水素化反応を行ない、ポリマーを回収した。このポリマーの水素化率は80%であった。
(3)水素化反応2
反応温度を180℃にした以外は実施例1と同様に行った。1回目の水素化率は98.0%であった。加熱成形品の全光線透過率は92%であった。反応後の分子量の低下もなかった。また、反応液中、パラジウムの溶出は見られなかった(0.01ppm以下)。
実施例1と同様に、繰り返し反応を行ったが、10回目で核水添率は70.1%まで低下し、加熱成型品の全光線透過率は87%であった。
比較例2
(1)触媒調製
塩化パラジウム0.0417g(0.000235mol)及び0.1N HCl 4.7cc(0.00047mol)を水10gに溶解した。この溶液に酸化ジルコニウム担体(MEL社製1501/07)4.975gを加え、40℃で溶液を含浸させた。70℃で減圧しながら水分を留去したのち、120℃で4hr乾燥し、400℃で3時間焼成処理した。その後、10%水素−90%窒素の混合ガスを50cc/minの速度で流通させながら240℃で還元処理を施し、0.5wt%Pd/ZrO触媒を調製した。パラジウム金属分散度は80%であったが、塩素の含有率は3000ppm(Cl/Pd=1.4)と多量に残存していた。
実施例5
(1)触媒調製
実施例1と同様に調製した。
(2)水素化反応
重量平均分子量(Mw)230,000のポリスチレン5gを1,4−ジオキサン45gに溶解し、0.25gの0.5%Pd/ZrOと共に200mlオートクレーブに仕込んだ。水素圧9MPa、温度200℃で15時間水素化反応を行なった。濾過により触媒を除去した後、反応液を過剰のメタノール中に滴下し、沈殿したポリマーを回収した。このポリマーの最終的な水素化率は95.0%であった。反応後の分子量の低下もなかった。得られたポリマーの全光線透過率は90%であった。
比較例3
(1)触媒調製
比較例1と同様に調製した。
(2)水素化反応1
重量平均分子量(Mw)230,000のポリスチレン5gを1,4−ジオキサン45gに溶解し、0.25gの0.5%Pd/ZrOと共に200mlオートクレーブに仕込んだ。水素圧9MPa、温度200℃で15時間水素化反応を行なった。濾過により触媒を除去した後、反応液を過剰のメタノール中に滴下し、沈殿したポリマーを回収した。このポリマーの最終的な水素化率は70%であった。得られたポリマーの全光線透過率は85%であった。

Claims (8)

  1. 芳香族ポリマーの芳香環を水素化して水素化ポリマーを製造する水素化触媒の製造方法であり、塩化パラジウムを含有する触媒前駆体を酸化ジルコニウムを主成分とする担体に吸着せしめ、洗浄操作により塩素含有率を原子比としてCl/Pd=0.5未満まで減少させ、かつ非水系で還元することによりパラジウム分散度50%以上を有する水素化触媒を得る、酸化ジルコニウム担持パラジウム触媒製造方法。
  2. パラジウムの担持量が酸化ジルコニウムに対して0.01〜3重量%である請求項に記載の酸化ジルコニウム担持パラジウム触媒製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の製造方法で得られた触媒および溶媒の存在下、芳香族ポリマーの芳香環を水素化する水素化ポリマーの製造方法。
  4. 芳香族ポリマーが芳香族ビニル化合物−(メタ)アクリレート共重合体である請求項に記載の水素化ポリマーの製造方法。
  5. 芳香族ビニル化合物−(メタ)アクリレート共重合体において、A/B(Aは(メタ)アクリレート由来の構成単位のモル数、および、Bは芳香族ビニル化合物由来の構成単位のモル数)が0.25〜4.0である請求項に記載の水素化ポリマーの製造方法。
  6. 該芳香環の水素化率が85%以上である請求項のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
  7. 該共重合体の重量平均分子量が10,000〜1,000,000である請求項のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
  8. 溶媒がカルボン酸エステルである請求項のいずれかに記載の水素化ポリマーの製造方法。
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