JP5109510B2 - ガスバリア性フィルムの製造方法及びそのフィルム - Google Patents

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本発明は、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が分散した多価金属イオン架橋ポリカルボン酸(本発明では、α,β−不飽和カルボン酸重合体をポリカルボン酸という)から形成される、フィルム、積層体、積層体の前駆積層体等のガスバリア性フィルムの製造方法、及びガスバリア性フィルムに関する。
より詳しくは、本発明の製造方法で製造されるガスバリア性フィルムは、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が均一かつ微細に分散した、多価金属イオン架橋ポリカルボン酸から形成されるポリカルボン酸フィルムであり、酸素等のガスバリア性に優れ、また、中性の水、及び高温水蒸気や熱水の影響で外観、形状、及びガスバリア性が損なわれることがない耐性を有する。また、本発明は、工業的に簡便で安価なガスバリア性フィルムの製造方法、及びガスバリア性フィルムに関する。
ポリ(メタ)アクリル酸やポリビニルアルコールに代表される、分子内に親水性の高い高水素結合性基を含有する重合体は、ガスバリア性重合体として知られている。しかしながら、これら重合体単独からなるフィルムは、乾燥条件下においては、非常に優れた酸素等のガスバリア性を有する一方で、高湿度条件下においては、その親水性に起因して酸素等のガスバリア性が大きく低下し、また熱水には溶解する等、湿度や熱水に対する耐性に問題があり、それらがこれら重合体のガスバリア性樹脂としての工業的な利用に制限を与えている。
かかる問題点を解決するために、特開平6−220221号公報(特許文献1)には、ポリ(メタ)アクリル酸とポリビニルアルコール、特開平7−102083号公報(特許文献2)には、ポリ(メタ)アクリル酸の部分中和物とポリビニルアルコール、特開平7−165942号公報(特許文献3)には、ポリ(メタ)アクリル酸またはその部分中和物と糖類との組み合わせからなるそれぞれの混合物からフィルムを成形し、特定の条件下における熱処理で変性させた、高湿度下でも優れたガスバリア性を有するフィルムが提案されている。
また、特開平10−231434号公報(特許文献4)には、カルボキシル基含有高水素結合性樹脂(具体的にはポリ(メタ)アクリル酸系ポリマー)と水酸基含有高水素結合性樹脂(具体的には糖類)と無機層状化合物からなる組成物を熱、及び活性エネルギー線で変性したことを特徴とするガスバリア性樹脂組成物や、特開平11−246729号公報(特許文献5)には、水溶性ポリアクリル酸系化合物とポリビニルアルコール及び無機層状化合物を含有することを特徴とする特定の湿度下でのガスバリア性に優れた樹脂組成物等が提案されている。
さらにポリアクリル酸系重合体単独からなるフィルムに関しては、特開2001−19782号公報(特許文献6)には、ポリアクリル酸の部分中和物からなり、電離放射線照射によって酸素ガスバリア性が向上した、ポリビニルアルコールを用いないフィルムが提案されている。
いずれの従来技術においても、高湿度下で優れたガスバリア性を有するフィルムが開示されているが、高温水蒸気や熱水に対する耐性については未だ不十分である。
このような中で、特開平10−237180号公報(特許文献7)には、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール系重合体からなるフィルムの高温水蒸気や熱水に対する耐性を向上させることを目的として、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体とポリアルコール系重合体、及び多価金属との反応生成物からなる樹脂組成物が提案されている。また、特開平10−237180号公報(特許文献7)には、ポリ(メタ)アクリル酸とポリアルコールとの間に、熱処理によってエステル結合を形成させる方法、及び熱処理後のポリ(メタ)アクリル酸とポリアルコールの混合物をさらに多価金属化合物を含有する水中に浸漬することにより、ポリ(メタ)アクリル酸と多価金属イオンとの間にイオン結合を形成させる方法が提案されている。
また、特開2000−931号公報(特許文献8)には、より簡便な方法で得られる、高温水蒸気や熱水に対する耐性を向上させた、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール系重合体からなるフィルムも提案されている。そこでは、ポリ(メタ)アクリル酸系重合体とポリアルコール系重合体からなる混合物に対して、多価金属化合物を作用させることが提案されており、また、高温水蒸気や熱水に対する耐性が得られることも開示されている。
しかしながら、一般に、このようなガスバリア性樹脂組成物やフィルムに対して、十分な酸素ガスバリア性や高温水蒸気、熱水等に対する耐性を発現させるためには、熱処理等の所定の処理操作によって、ポリ(メタ)アクリル酸系ポリマーとポリアルコール系ポリマーからなる混合物を変性させる必要がある。変性が不十分な場合、混合物中のポリアルコールの存在は、多価金属化合物の作用を以てしても得られたフィルムに十分な酸素ガスバリア性と高温水蒸気や熱水に対する耐性を保証しない。
A.Claudio Habert,Journal of Applied Polymer Science,Vol.24,p.489−501(1979)(非特許文献1)には、ポリアクリル酸の多価金属塩からなるフィルム形成を試みた例として、ポリアクリル酸水溶液をガラス板上に流延し、水溶液の状態で多価金属化合物溶液に浸漬しポリアクリル酸と多価金属を反応せしめる方法が報告されている。ここでは、Alなどの特定の加水分解性金属化合物について特定の条件下、均一なフィルムの作成に成功しているが、ポリアクリル酸水溶液と多価金属化合物溶液の溶液−溶液系の反応であるため、多価金属化合物の種類や反応条件によって均一なフィルム形成が難しいことが報告されている。
特開平8−176316号公報(特許文献9)には、α,β−不飽和カルボン酸単量体と少なくとも1種のビニル系単量体とを非水系重合して得られる重合体と多価金属とを含むアルカリ可溶性フィルム、及びアルカリ可溶性コーテイング剤が提案されている。
以上述べてきた従来技術をまとめると、ポリカルボン酸系重合体から、高湿度下においても酸素等のガスバリア性に優れ、かつ高温水蒸気や熱水に対する耐性を有するフィルムを得るためには、ポリカルボン酸系重合体とポリアルコール系重合体からなる混合物を熱処理等で変性し、多価金属を作用させる方法が提案され、また、ポリアルコール系重合体と混合し、さらに熱処理等で変性させることを行わず、ポリカルボン酸系重合体単独に対して、多価金属化合物を作用させている例も報告されているということであるが、これらの技術は、ポリカルボン酸系重合体からなるフィルムとしての工業的利用を完全に満足させるものではない。
ここで、WO03/091317(特許文献10)には、成形時に特定の酸素透過係数を有するポリカルボン酸系重合体と多価金属化合物を原料とするフィルムであって、該フィルムを構成する重合体のカルボキシ基の特定割合が、多価金属と塩を形成すると、特に高湿度雰囲気下においても酸素等のガスバリア性に優れ、中性の水、高温水蒸気、及び熱水の影響で、外観、形状、及びガスバリア性が損なわれることがない耐水性を有し、酸及び/またはアルカリに易溶性のフィルムを与えることが開示されている。
具体的には、例えば、ポリアクリル酸水溶液を延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム上にバーコーターを用いて塗工し、ドライヤーにより乾燥させ、コーティングフィルムを得、次いで、得られたコーティングフィルム上にバーコーターを用いて、市販の微粒子酸化亜鉛サスペンジョンを塗工、乾燥させて、PET/PAA/ZnO(酸化亜鉛)からなる積層体を作成し、次いで、恒温恒湿槽で静置し、ZnイオンをPAA層中に移行せしめ、固相反応でPAAの亜鉛塩を形成させ、PAA亜鉛塩からなる積層体を得るという方法である。
WO2005/053954(特許文献11)には、金属アルコキシドの加水分解縮合物と、カルボキシル基およびカルボン酸無水物基から選ばれる1つの官能基を含有する重合体とを含む組成物からなる層をガスバリア層として有する積層体を、2価以上の金属イオンを含む溶液に浸漬して、該重合体中の上記した官能基を中和することによって、該組成物からなる層の特性が飛躍的に向上し、湿度に依存せずに高い酸素バリア性を発現し、レトルト処理を施したのちでも高い酸素バリア性を発現し、且つ強度および透明性に優れたガスバリア性積層体が提案されている。
具体的には、例えば、延伸PETフィルムにアンカーコート剤をコートし、乾燥させ、次いで、ポリアクリル酸水溶液に、テトラメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、塩酸等からなるゾルを添加した溶液を、アンカーコート上にバーコーターにより、コートし、ガスバリア層/アンカーコート/延伸PETからなる積層体を得、次いで、該積層体を酢酸カルシウム水溶液に浸漬し、ガスバリア層のポリアクリル酸中のカルボキシル基を中和するという方法である。
WO2005/108440(特許文献12)には、赤外線吸収スペクトルにおける1700cm−1付近のカルボン酸基のνC=0に基づく吸光度Aと1520cm−1付近のカルボキシレートイオンのνC=0に基づく吸光度Aとの比(A/A)が0.25未満である不飽和カルボン酸単量体の多価金属塩の重合体(A)からなるガスバリア性膜が提案され、該ガスバリア性膜が積層されているガスバリア性積層体は、遊離のカルボン酸が少ないので、高湿度下でのガスバリア性に優れていることが開示されている。
具体的には、例えば、アクリル酸水溶液に水酸化カルシウムを添加し、アクリル酸カルシウム水溶液を作製し、次いで、該アクリル酸カルシウム水溶液に光重合開始剤を添加し、不飽和カルボン酸多価金属塩の塗液を作製し、該塗液を二軸延伸ポリエステルフィルム上にメイヤーバーで塗布し、次いで、UV照射し、ガスバリア性積層フィルムを得る方法である。
WO2006/059773(特許文献13)には、α,β−不飽和カルボン酸単量体と該α,β−不飽和カルボン酸単量体のカルボキシル基の10〜90%を中和する量の多価金属イオンとが、組成物全量基準で20〜85重量%の水に、溶解または分散して含有されている水系重合性単量体組成物を塗工液として、基材上に塗工すると、均一な塗膜を形成し、該湿潤状態の塗膜に重合処理を行うと、ゲルの析出やフィルムの白化などの問題を生ずることなく、酸素ガスバリア性に優れたイオン架橋ポリカルボン酸重合体フィルムの得られることが開示されている。
具体的には、例えば、アクリル酸と酸化亜鉛を蒸留水で溶解し、そこにベンゾフェノンを添加し、水系重合性単量体組成物を得、該組成物をコーティング液として、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム上に、塗工後、速やかに2軸延伸6ナイロンフィルムを塗膜表面に被せて、「基材(PET)/湿潤状態の塗膜/基材(ONy)」の層構成を持つ多層構造物を得、次いで、基材(ONy)の上から、UV照射し、次いで、熱処理して、亜鉛イオンでイオン架橋したポリカルボン酸重合体フィルムを中間層に有する多層フィルムを得る方法である。
特許文献10〜13のどの文献においても、ガスバリア性フィルムにおいて、下記(1)式のような、ポリカルボン酸多価金属イオン架橋が形成され、耐水性を有するガスバリア性が発現されると考えられる。
−COOZn2+CO− ・・・(1)
そして、このポリカルボン酸多価金属イオン架橋が形成されるガスバリア性フィルムの製造方法は、従来は、次の二つの方法に大別される。
ひとつは、WO03/091317(特許文献10)、WO2005/053954(特許文献11)のような、ポリカルボン酸溶液をコーティングし、その後、多価金属イオン架橋をする方法である。このうち、WO2005/053954(特許文献11)では、ポリカルボン酸多価金属イオン架橋に加え、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物をさらに含む組成物層をガスバリア層として用いている。
もうひとつは、WO2005/108440(特許文献12)、WO2006/059773(特許文献13)のような、不飽和カルボン酸(単量体)と多価金属イオンを含む水溶液をコーティングし、次いで、重合と多価金属イオン架橋を同時に行う方法である。
ここで、WO2005/053954(特許文献11)における加水分解縮合物を含む多価金属イオン架橋ポリカルボン酸の構造についてみてみると、次のとおり記載されている。
「ガスバリア層は、海相(P)および島相(Q)からなる海島構造を有していた。島相(Q)は楕円形であり、楕円の長軸方向の径が50〜500nmであった。海相(P)は、海相(P1)および島相(P2)からなる海島構造を有していた。海相(P1)は主にポリアクリル酸の中和物で形成されており、島相(P2)は主にテトラメトキシシランの加水分解縮合物で形成されていた。島相(P2)の径は約20nm以下であった。島相(Q)は、海相(Q1)および島相(Q2)からなる海島構造を有していた。海相(Q1)は主にポリアクリル酸の中和物で形成されており、島相(Q2)は主にテトラメトキシシランの加水分解縮合物で形成されていた。島相(Q2)の径は約20nm以下であった。電子顕微鏡の画像から判断して、海相(P)と島相(Q)は同様の成分で構成されているが、島相(Q)の方が、テトラメトキシシランの加水分解縮合物の濃度が高かった。」(段落[0151])
つまり、WO2005/053954(特許文献11)の、加水分解縮合物を含む多価金属イオン架橋ポリカルボン酸から形成されるガスバリア性フィルムは、電子顕微鏡写真でみると、海島構造を有し、かつ、海、島が、それぞれの海島構造を有するという入れ子状態にあるということである。
特開平6−220221号公報 特開平7−102083号公報 特開平7−165942号公報 特開平10−231434号公報 特開平11−246729号公報 特開2001−19782号公報 特開平10−237180号公報 特開2000−931号公報 特開平8−176316号公報 国際公開第03/091317号パンフレット 国際公開第2005/053954号パンフレット 国際公開第2005/108440号パンフレット 国際公開第2006/059773号パンフレット A.Claudio Habert,Journal of Applied Polymer Science,Vol.24,p.489−501(1979)
本発明は、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物を含む多価金属イオン架橋ポリカルボン酸の構造において、ガスバリア性と密接な関連のある、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物の分散状態を微細かつ均一にするガスバリア性フィルムの製造方法を開発することにより、酸素等のガスバリア性に優れ、中性の水、及び高温水蒸気や熱水の影響で外観、形状、及びガスバリア性が損なわれることがない耐水性を有するガスバリア性フィルムを製造することを提供する。
本発明者らは、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物を含む多価金属イオン架橋ポリカルボン酸から形成されるガスバリア性フィルムにおいて、加水分解縮合物の分散状態が、ガスバリア性、耐水性などに多大な影響があるとの知見を得て、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物を含む多価金属イオン架橋ポリカルボン酸の微細構造において、加水分解縮合物の分散状態を、従来技術よりも、微細かつ均一にするためのガスバリア性フィルムの製造方法を鋭意探求した。
その結果、本発明者らは、「下記工程1乃至3:(1)基材1上に、α,β−不飽和カルボン酸単量体、並びにハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が金属原子に結合した加水分解性金属化合物を含有する重合性組成物からなる塗工液を塗布して、塗膜を形成する工程1;
(2)基材1上にある塗膜または該塗膜上に別の基材2を被覆して両基材間に挟まれた塗膜を重合処理して、α,β−不飽和カルボン酸重合体と加水分解性金属化合物とを含有するフィルムを形成する工程2;及び(3)該フィルムに多価金属イオンを付与して、該α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する工程3;を含む、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が10×10−3cm(STP)/(m・s・MPa)以下のガスバリア性フィルムの製造方法」により製造された、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物含有多価金属イオン架橋ポリカルボン酸から形成されるガスバリア性フィルムは、SEM写真で観察したところ、多価金属イオン架橋ポリカルボン酸の相中に、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が粒径20nm以下の相で均一に微分散していることを見出した(図1)。
このことは、加水分解縮合物の相が、非常に均一な微細構造で分散していることを示している。本発明者らは、上記製造方法で製造された、多価金属イオン架橋ポリカルボン酸から形成されるガスバリア性フィルムは、酸素等のガスバリア性に優れ、中性の水、及び高温水蒸気や熱水の影響で外観、形状、及びガスバリア性が損なわれることがない耐水性を有することを見出した。
本発明によれば、下記工程1乃至3:
(1)基材1上に、α,β−不飽和カルボン酸単量体、並びにハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が金属原子に結合した加水分解性金属化合物を含有する重合性組成物からなる塗工液を塗布して、塗膜を形成する工程1;
(2)基材1上にある塗膜または該塗膜上に別の基材2を被覆して両基材間に挟まれた塗膜を重合処理して、α,β−不飽和カルボン酸重合体と加水分解性金属化合物とを含有するフィルムを形成する工程2;及び
(3)該フィルムに多価金属イオンを付与して、該α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する工程3;
を含む、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が10×10−3cm(STP)/(m・s・MPa)以下のガスバリア性フィルムの製造方法が提供される。
また、前記製造方法により得られた、多価金属イオン架橋α,β−不飽和カルボン酸重合体中に加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が分散したガスバリア性フィルムが提供される。
本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムにおいては、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物を含む多価金属イオン架橋ポリカルボン酸中の、ガスバリア性と密接な関連のある加水分解縮合物が、均一かつ微細な状態で分散している構造になっており、その結果、耐水性のある、酸素透過度が非常に低いガスバリア性フィルムが得られる。
1.工程1
工程1では、基材1上に、α,β−不飽和カルボン酸単量体、並びにハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が金属原子に結合した加水分解性金属化合物を含有する重合性組成物からなる塗工液を塗布して、塗膜を形成する。
1−1.α,β−不飽和カルボン酸単量体
本発明で用いるα,β−不飽和カルボン酸単量体とは、不飽和カルボン酸の炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子のうちの少なくとも1つの炭素原子にカルボキシル基が結合した構造の不飽和カルボン酸単量体である。炭素−炭素二重結合は、エチレン性の二重結合であるため、この不飽和カルボン酸は、重合性単量体としての機能を有している。
本発明で用いるα,β−不飽和カルボン酸単量体は、一般に、カルボキシル基が1つの不飽和モノカルボン酸と、カルボキシル基が2つの不飽和ジカルボン酸とに分けることができる。不飽和ジカルボン酸には、エチレン性炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子の各々にカルボキシル基が結合した構造のものと、エチレン性炭素−炭素二重結合を形成する2つの炭素原子のうちの1つの炭素原子にカルボキシル基が結合し、その他の炭素原子にカルボキシル基が結合した構造のものとがある。α,β−不飽和カルボン酸単量体は、エチレン性炭素−炭素二重結合に加えて、別の炭素−炭素二重結合を有するものであってもよい。
本発明で用いるα,β−不飽和カルボン酸単量体は、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びこれらの酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種の不飽和カルボン酸単量体を含む。
これらのうち、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、セネシオ酸(すなわち、β,β−ジメチルアクリル酸)、及びチグリン酸(すなわち、2−メチルクロトン酸)は、α,β−モノエチレン性不飽和モノカルボン酸化合物である。ソルビン酸は、α,β−不飽和モノカルボン酸化合物であるが、炭素−炭素二重結合を2個有している。ケイ皮酸としては、シス型及びトランス型のものを用いることができる。
α,β−不飽和カルボン酸単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、ケイ皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、イタコン酸、マレイン酸、及びシトラコン酸が好ましく、アクリル酸及びメタクリル酸がより好ましく、ガスバリア性などの特性とコストの面でアクリル酸が特に好ましい。イタコン酸、シトラコン酸、マレイン酸などの(メタ)アクリル酸以外の単量体は、50重量%未満の少量成分としてアクリル酸またはメタクリル酸と併用することが好ましい。マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸は、α,β−モノエチレン性不飽和ジカルボン酸化合物である。酸無水物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、及び無水シトラコン酸が好ましい。ただし、これらの酸無水物は、重合性組成物中では、遊離酸の形態となっていることが多い。
原料として用いるα,β−不飽和カルボン酸単量体は、前記の如きα,β−不飽和カルボン酸単量体の形態であり得るが、α,β−不飽和カルボン酸の一価金属塩ないし多価金属塩の形態であってもよい。ただし、α,β−不飽和カルボン酸単量体の金属塩のみを用いると、金属イオンの量が過剰になり、かつ、溶解時の水分量が増加してしまうため、α,β−不飽和カルボン酸の金属塩を用いる場合には、α,β−不飽和カルボン酸単量体と併用する必要がある。
1−2.ハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が金属原子に結合した加水分解性金属化合物
本発明の加水分解性金属化合物は、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも一種の官能基が金属原子に結合した加水分解性金属化合物である。
本発明の加水分解性金属化合物は、下記の化学式(I)で示される加水分解性金属化合物であって、加水分解性金属化合物a、加水分解性金属化合物bを含む。
下記式I:
(OR m−n−t−s …(I)
〔式I中、Mは、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNdであり、Rはアルキル基、Rは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、Zは、カルボキシル基と反応性を有する官能基を有する有機基を示す。Xはハロゲン原子を表す。mはMの原子価と等しい。nは0〜m、tは0〜m、sは0若しくは1の整数であり、1≦n+t、n+t+s≦mである。〕
<加水分解性金属化合物a>
前記式Iにおいて、n及びtがそれぞれ0〜(m−1)(但し、1≦n+t≦m−1)である。
<加水分解性金属化合物b>
前記式Iにおいて、n及びtがn+t=mである。
前記式I中のZは、具体的には、エポキシ基、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、及びウレイド基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する有機基である。
前記式I中のMは、ケイ素原子であることが好ましい。
本発明の加水分解性金属化合物は、その部分加水分解物、完全加水分解物、部分加水分解縮合物、完全加水分解物の縮合物、またはこれらの2種以上の混合物の形態で存在しているのが好ましい。
本発明の加水分解性金属化合物が、金属アルコキシドの場合の具体的な化合物は、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メルカプトプロピルトリメトキシシラン、メルカプトプロピルトリエトキシシラン、ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ウレイドプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン等であるが、これらには限定されない。
また、本発明の加水分解性金属化合物が、ハロゲン原子(式I中X)を含む場合の具体的な化合物は、アミノプロピルトリクロロシラン、クロロプロピルトリクロロシラン、γ−グリシドキシプロピルトリクロロシラン、γ−ブロモプロピルトリクロロシラン、イソシアネートプロピルトリクロロシラン、ウレイドプロピルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、メルカプトプロピルトリクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、テトラクロロシラン等であるが、これらには限定されない。
このうち、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラクロロシランは、加水分解性金属化合物bであり、その他は、加水分解性金属化合物aである。
本発明工程1の重合性組成物中において、α,β−不飽和カルボン酸単量体100重量部に対して含有する加水分解性金属化合物は0.1〜400重量部、好ましくは0.2〜300重量部、さらに好ましくは0.3〜250重量部、特に好ましくは0.4〜200重量部である。
本発明の加水分解性金属化合物において、加水分解性金属化合物aは、製膜性や可とう性を向上させ、一方、加水分解性金属化合物bは、バリア性向上に効果を発揮することが知られている。それぞれの量をa、bとし、前記工程1における重合性組成物における、α,β−不飽和カルボン酸単量体100重量部に対して含有する加水分解性金属化合物が50重量部未満の場合、重量比a/bは問題とならない。しかし、重合性組成物中のα,β−不飽和カルボン酸単量体100重量部に対して加水分解性金属化合物が50重量部以上の場合、バリア性、製膜性、可とう性の観点から、a/bは、1/99〜100/0、より好ましくは3/97〜98/2、さらに好ましくは5/95〜96/4である。
1−3.重合性組成物である塗工液
本発明の重合性組成物(polymerizable monomer composition)は、ガスバリア性フィルムを塗布法により製造する際に、基材上に塗布する塗工液(コーティング液)として使用されるものである。
本発明の重合性組成物は、少なくとも1種のα,β−不飽和カルボン酸単量体と、ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む一種の加水分解性金属化合物とが、水に溶解または分散して含有されている組成物である。
ハロゲン原子及びアルコキシ基から選ばれる少なくとも1つの官能基が結合した金属原子を含む1種の加水分解性金属化合物は、重合性組成物を調製する際に加水分解を起こす。
加水分解については、重合性組成物の塗膜を重合してα、β−不飽和カルボン酸重合体と加水分解性金属化合物を含有するフィルムを得る工程2の後で、50〜400℃の温度での熱処理を行う工程において調湿を併せて行うことで加水分解反応を行ってもよい。前記熱処理工程において加水分解した金属化合物の縮合反応を促進することができる。
本発明の重合性組成物は、ガスバリア性を阻害しない範囲内において、分子中に水酸基、アミノ基、カルボニル基、アミド基、カルボキシル基から選ばれる水素結合性官能基を少なくとも1つ以上含有する物質、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン及びそれらの縮合物及びそのエステル、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、キトサン、アルブミン、ゼラチンなどの合成樹脂、天然樹脂、生体高分子、でんぷんなどの多糖類を更に加えてもよい。これらの添加量は、本発明におけるガスバリア性を阻害しない範囲において、重合性組成物中のα,β−不飽和カルボン酸単量体100重量部に対して30重量部以下が好ましく、20重量部以下がより好ましい。
本発明の重合性組成物は、必要に応じて、重合を加速させるために重合開始剤を含有させることができる。
重合開始剤としては、光重合開始剤と熱重合開始剤とが代表的なものである。光重合開始剤と熱重合開始剤とを組み合わせて使用してもよい。熱重合開始剤には、紫外線の照射により活性化するアゾ化合物や過酸化物も含まれる。
湿潤状態の塗膜に紫外線を照射する場合には、重合性組成物に光重合開始剤を含有させることが好ましい。光重合開始剤は、単に光開始剤または増感剤と呼ばれることがある。光重合開始剤には、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ミヒラーケトン類、ベンジル類、ベンゾイン類、ベンゾインエーテル類、ベンジルジメチルケタール類、チオキサントン類、及びこれらの2種以上の混合物が含まれる。
光重合開始剤の好ましい具体例としては、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、m−クロロアセトフェノン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、4−ジアルキルアセトフェノンなどのアセトフェノン類;
ベンゾフェノンなどのベンゾフェノン類;ミヒラーケトンなどのミヒラーケトン類;ベンジル、ベンジルメチルエーテルなどのベンジル類;ベンゾイン、2−メチルベンゾインなどのベンゾイン類;ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインブチルエーテルなどのベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタールなどのベンジルジメチルケタール類;チオキサントンなどのチオキサントン類;プロピオフェノン、アントラキノン、アセトイン、ブチロイン、トルオイン、ベンゾイルベンゾエート、α−アシロキシムエステル;などのカルボニル化合物を挙げることができる。
光重合開始剤としては、上記カルボニル化合物以外に、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、チオキサンソン、2−クロロチオキサンソンなどの硫黄化合物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリルなどのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイドなどの過酸化物;が挙げられる。
これらの光重合開始剤は、添加しなくてもよいが、添加する場合は、重合性組成物中に通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の割合で添加される。光重合開始剤は、必ずしも添加する必要はないが、紫外線の照射による重合を行う場合には、重合効率を高める上で光重合開始剤を添加することが好ましい。ベンゾフェノンなどの水素引抜き型の光重合開始剤を用いると、α,β不飽和カルボン酸単量体の一部が基材として用いるプラスチックフィルムにグラフトして、基材と生成フィルムとの間の層間密着性を高めることができる。光重合開始剤とともに、その他の増感剤、光安定剤などの汎用の添加剤を添加してもよい。
熱重合を行う場合には、熱解離して開始剤としての機能を発揮する熱重合開始剤を用いることが好ましい。熱重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩;2,2′−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド〕、2,2′−アゾビス[2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)エチル〕プロピオンアミド]、2,2′−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、4,4′−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2′−アゾビス(メチルイソブチレート)、1,2′−アゾビス(N,N′−ジメチレンイソブチルアミジン)ジヒドロクロリド、1,1′−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリルなどのアゾ系重合開始剤;tert−アルキルヒドロパーオキサイドなどのヒドロパーオキサイド;ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシピバレート、ジ−イソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−tert−ブチルパーオキシイソフタレート、1,1′,3,3′−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチルパーオキシブチレートなどの過酸化物;が含まれる。熱重合開始剤を用いる場合には、重合性組成物中に、通常0.001〜10重量%、好ましくは0.01〜5重量%の割合で添加する。
本発明の重合性組成物には、工程2のα,β−不飽和カルボン酸単量体の重合と工程3における多価金属イオンによるイオン架橋反応を阻害しない範囲内において、必要に応じて、増粘剤、無機層状化合物、分散剤、界面活性剤、柔軟剤、熱安定剤、酸化防止剤、酸素吸収剤、着色剤、アンチブロッキング剤、多官能モノマーなどの添加剤を含有させることができる。
本発明の重合性組成物は、多官能モノマーを添加しなくても、耐水性、耐熱水性、耐水蒸気性が良好なガスバリア性フィルムを得ることができるが、架橋度を高める必要がある場合には、多官能モノマーを少量の範囲で添加することができる。多官能モノマーは、α,β−不飽和カルボン酸単量体100重量部に対して、好ましくは30重量部以下、より好ましくは20重量部以下の割合で用いられる。
多官能モノマーとしては、例えば、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール400ジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルジアクリレート、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジアクリレートなどのジアクリレート類;エチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジメタクリレートなどのジメタクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレートなどのトリアクリレート類;トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレートなどのトリメタクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリメチロールプロパンポリアクリレートなどの四官能以上のアクリレート類;などの多官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
本発明の重合性組成物には、α,β−不飽和カルボン酸単量体がアクリル酸の場合は、アクリル酸の揮発の抑制のために、中和度20%以下となるように塩基の添加を行ってもよい。
本発明の重合性組成物には、溶液としての均一性を損なわない範囲において、ナトリウムやカリウムなどの一価の金属イオンを含有させることができる。
本発明の重合性組成物は、組成物全量基準で0.01〜85重量%の水を含有してもよい。水は、α,β−不飽和カルボン酸単量体及びそれらの塩を均一に溶解または分散させる他、加水分解性金属化合物の加水分解を進行させる上で添加される。加水分解性金属化合物の加水分解反応に必要な水分は、重合性組成物中の加水分解性金属化合物における加水分解性を有する官能基の総モル数の半数を反応させうる量以上あればよい。水分量が少ないと、各成分の均一な溶解、分散や加水分解の進行を妨げ、製膜後の外観及びガスバリア性の悪化を誘起するおそれがある。水分量が過多になると、塗膜を重合させる工程2でゲルを析出してフィルムの外観を低下させたり、重合後の水分除去が困難になったりする。
水分量は、組成物全量基準で、好ましくは0.05〜80重量%、より好ましくは0.1〜70重量%であり、この範囲内において、組成物中のα,β−不飽和カルボン酸単量体及びその塩、加水分解性金属化合物の含有量、重合後の水分除去効率などを考慮して適宜調節する。
本発明の重合性組成物は、重合反応及び製膜後のガスバリア性を阻害しない範囲内において、少量の有機溶媒(例えば、アルコール類)を、各成分の溶解、分散性向上のために添加してもよい。また、加水分解反応を促進させるために、少量の酸、アルカリなどの触媒を添加してもよい。
また、本発明の重合性組成物の粘度を調整するために、光重合性プレポリマーを少量の割合で添加してもよい。
本発明の工程3の多価金属イオンによるイオン架橋を調整するために、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレートなどの単官能のアクリル酸エステル類やメタクリル酸エステル類を少量の割合で添加することもできる。
1−4.基材1及び2
本発明の基材としては、特に限定されないが、紙、プラスチックフィルム(シートを含む)、及びゴムが好ましく用いられる。基材は、一般に、フィルムまたはシートの形態で使用されるが、所望によりプラスチック容器、チューブ、及びタイヤなどの立体形状を有する成形品であってもよい。重合性組成物(塗工液、コーティング液)を塗布するのに用いる基材は、塗膜の支持体として機能する。
本発明の基材のプラスチックフィルムを構成するプラスチックの種類としては、特に制限されないが、例えば、高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチルペンテン、環状ポリオレフィンなどのオレフィン重合体類及びその酸変性物;ポリ酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコールなどの酢酸ビニル重合体類及びその変性物;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル類;ポリε−カプロラクトン、ポリヒドロキシブチレート、ポリヒドロキシバリレートなどの脂肪族ポリエステル類;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン12、ナイロン6/66共重合体、ナイロン6/12共重合体、メタキシレンアジパミド・ナイロン6共重合体などのポリアミド類;ポリエチレングリコール、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシドなどのポリエーテル類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンなどのハロゲン化重合体類;ポリメチルアクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルメタクリレート、ポリアクリロニトリルなどのアクリル重合体類;ポリイミド樹脂;その他、塗料用に用いるアルキド樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂、硝化綿、ウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、アミノ樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂;セルロース、澱粉、プルラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、アガロース、ゼラチンなどの天然高分子化合物及び上記の混合物;などを挙げることができる。
本発明の基材のゴムを構成するゴムの種類としては、特に制限されないが、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリルゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、ヒドリンゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴム、シリコーンゴム、フッ素系ゴム及び上記の混合物;などを挙げることができる。
本発明の基材{基材1(支持体)及び基材2(被覆材)}としては、紙やゴム、プラスチックフィルムあるいはこれらの複合物を用いることができる。プラスチックフィルムとしては、未延伸フィルムまたは延伸フィルムが好ましい。プラスチックフィルムには、必要に応じて、エッチング、コロナ放電処理、アンカーコートなどの前処理を施すことができる。プラスチックフィルムの表面に、ケイ素酸化物、酸化アルミニウム、アルミニウム、窒化ケイ素などの無機物などの薄膜が、蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法により形成されたものを基材として用いることができる。基材の表面には、印刷が施されていてもよい。基材は、複数のプラスチックフィルムからなる多層フィルムや、紙、ゴムなどの他の材質のものとの積層フィルムであってもよい。さらに、基材として用いるプラスチックフィルムには、酸素吸収能を有する酸素吸収性樹脂組成物フィルム、または該フィルムと他のプラスチックフィルムとの酸素吸収性多層フィルムであってもよい。工程2の後に、基材1または/及び基材2を剥離する工程をさらに配置する場合は、剥離する基材1または/及び基材2それぞれの基材の材質は問わない。
1−5.塗布
本発明の重合性組成物(塗工液、コーティング液)を基材(支持体)上に塗布するには、該基材の片面または両面に、スプレー法、ディッピング法、コーターを用いた塗布法、印刷機による印刷法など任意の塗工法を利用することができる。コーターや印刷機を用いて塗布する場合には、例えば、ダイレクトグラビア方式、リバースグラビア方式、キスリバースグラビア方式、オフセットグラビア方式などのグラビアコーター;リバースロールコーター、マイクログラビアコーター、エアナイフコーター、ディップコーター、バーコーター、コンマコーター、ダイコーターなどの各種方式を採用することができる。
工程1の塗膜の厚みは、生成するフィルムの厚み(乾燥厚み)が通常0.001μm〜1mm、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.04〜10μmの範囲となるように調整することが好ましい。重合性組成物の塗布量は、水の含有量または固形分濃度にもよるが、好ましくは0.01〜1000g/m、好ましくは0.1〜100g/m、より好ましくは1〜80g/mである。
1−6.後処理
工程1の後、塗膜を若干乾燥してもよいが、湿潤状態のままで工程2を行うのが普通である。
2.工程2
工程2においては、基材1上にある塗膜または該塗膜上に別の基材2を被覆して両基材間に挟まれた塗膜を重合処理して、α,β−不飽和カルボン酸重合体と加水分解性金属化合物とを含有するフィルムを形成する。
2−1.重合
本発明では、基材上に重合性組成物を塗布して塗膜を形成した後、該塗膜に電離放射線を照射したり、加熱したり、あるいはこれら両方の処理を行うことにより、α,β−不飽和カルボン酸単量体を重合させることが好ましい。多官能モノマーなどの他の重合性単量体を添加した場合には、これらの重合性単量体も重合することが好ましい。
このように、重合性組成物から形成された塗膜への電離放射線の照射及び/または加熱処理により、α,β−不飽和カルボン酸単量体が重合して、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物(部分加水分解物、完全加水分解物、部分加水分解縮合物、完全加水分解物の縮合物、またはこれら2種以上の混合物)を含むポリカルボン酸のフィルムが生成する。
電離放射線としては、紫外線、電子線(ベータ線)、ガンマ線、アルファ線が好ましく、紫外線及び電子線がより好ましい。電離放射線を照射するには、それぞれの線源を発生する装置を用いればよい。
紫外線を照射するには、殺菌灯、紫外用蛍光灯、カーボンアーク、キセノンランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、無電極ランプなどのUV照射装置を用いて、波長200〜400nmを含む光を照射する。UV照射装置のランプ出力は、発光長1cm当りの出力ワット数(W/cm)で表示する。単位長当りのワット数が大きくなれば、発生する紫外強度が大きくなる。ランプ出力は、線量が100mJ/cm以上となるように、通常30〜300W/cmの範囲から選択される。発光長は、通常40〜2500mmの範囲から選ばれる。
電子線の照射による処理は、20〜2000kVの電子線加速器から取り出される加速電子線を、照射線量1〜300kGyで照射することが好ましい。
湿潤状態の塗膜を加熱してフィルムを形成するには、湿潤状態の塗膜を通常50〜250℃、好ましくは60〜200℃、より好ましくは70〜150℃の温度に加熱する。加熱時間は通常1分間から24時間、好ましくは3分間から12時間加熱する。加熱手段としては、加熱ヒータを用いて塗膜を加熱する方法、塗膜を温度制御した加熱炉を通過させる方法などが挙げられる。
フィルムを形成するに際し、酸素による重合禁止効果を除去する必要がある場合には、電離放射線の照射及び/または加熱処理を窒素ガス、炭酸ガス、希ガスなどの不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。塗膜の湿潤状態を保持し、同時に酸素による重合禁止効果を除去するには、基材(支持体)上に形成した湿潤状態の塗膜の表面を他の基材(被覆材)で被覆することが好ましい。被覆材として用いる他の基材としては、光線透過性プラスチックフィルム、ガラス板、紙などが挙げられるが、これらに限定されない。
このように、工程2においては、基材1(支持体)上に形成された湿潤状態の塗膜表面を別の基材2(被覆材)で被覆することにより、塗膜の湿潤状態を保持しながら、該湿潤状態の塗膜に、電離放射線の照射または加熱もしくはこれら両方による処理を行うことが好ましい。基材1と基材2の材質は、同種または異種であってもよい。電離放射線の照射を行う場合には、塗膜上から直接または基材1もしくは基材2を通して、あるいは塗膜上から直接及び基材1もしくは基材2を通して行う処理が好適であり、基材1及び基材2の少なくとも一方を電離放射線透過性基材(例えば、光線透過性のプラスチックフィルム)とすることが好ましく、塗膜表面を被覆する基材2として電離放射線透過性基材を用いることがより好ましい。
加熱によりフィルムを形成する場合でも、工程1において、基材1上に塗膜を形成した後、工程2の前に、前記塗膜の表面を別のもしくは同じ基材2で被覆する工程を配置してもよい。
工程2において、電離放射線の照射及び加熱の両方による処理を行うこともできる。
更に工程3の前に、基材1、基材2のどちらか一方、若しくはその両方を剥離させる工程を配置することもできる。工程2の前に基材2(被覆材)で被覆する工程を設けた場合は、基材1及び/または基材2を剥離する工程を配置する。
工程3の前に、熱処理、調湿もしくはこれら両方を行う工程をさらに含んでもよい。熱処理は、必ずしも行う必要はないが、加水分解性金属化合物に由来する加水分解物の縮合反応を促進させる意味では、行うことが好ましい。行う場合には、フィルムを通常50〜400℃、好ましくは60〜350℃、より好ましくは100〜300℃の温度で処理することにより行う。処理時間は、熱処理温度や熱処理条件にもよるが、連続的処理を行う場合には、通常1秒間から60分間、好ましくは5秒間から30分間、より好ましくは10秒間〜20分間である。 連続的な熱処理ではなく、バッチ式での熱処理を行う場合には、被覆材を有する多層ガスバリア性フィルムをロール状に巻回または巻回することなく、比較的低温(例えば、30〜100℃の温度)に保持した加熱炉内に放置することにより行うことができる。放置時間は、特に限定されず、熱処理温度によって適宜選定することができるが、生産効率の観点から、通常30分間から25時間の範囲が好ましい。
3.工程3
工程3においては、フィルムに多価金属イオンを付与して、α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する。
3−1.多価金属イオン
多価金属イオンは、工程2で製造されたフィルムを形成しているポリカルボン酸に対して、多価金属イオン架橋を行うために付与される。
多価金属イオンは、2価金属イオン及び3価金属イオンからなる群より選ばれ、その多価金属は、Be、Mg、Caなどのアルカリ土類金属、Ti、Zr、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Znなどの遷移金属、さらにAlを挙げることができる。その中でも、ガスバリア性の観点から、Mg、Ca、Cu、Znが好ましい。多価金属イオンは、多価金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩及び無機酸塩、その他、多価金属のアンモニウム錯体や多価金属の2〜4級アミン錯体とそれら錯体の炭酸塩や有機酸塩などからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物由来の多価金属イオンであることが好ましい。
有機酸塩としては、酢酸塩、蓚酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、ステアリン酸塩、モノエチレン性不飽和カルボン酸塩などが挙げられる。無機酸塩としては、塩化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、亜リン酸塩、次亜リン酸塩などを挙げることができる。さらには多価金属のアルキルアルコキシドも使用できる。これらの金属化合物はそれぞれ単独で、又は少なくとも2種の多価金属化合物を混合して用いることができる。
工程3における多価金属イオン付与を、多価金属イオンを含有した溶液に浸漬する場合には、該金属化合物は、水溶液への溶解性が高く、イオンとして存在する、酢酸塩、乳酸塩、塩化物、硫酸塩などが好ましい。この中でも、ガスバリア性の観点から、酢酸亜鉛、酢酸カルシウムを用いることが特に好ましい。
一方、工程3における多価金属イオン付与を、多価金属化合物を含有した固体層、好ましくは多価金属化合物を含有した樹脂層を積層後、調湿することによって行う場合には、酸化物、水酸化物、炭酸塩が好ましく、工業的生産性、ガスバリア性の観点から、酸化亜鉛、水酸化カルシウムを用いることが特に好ましい。また、イオン化を促進する観点から、一次粒子径が100nm以下の微粒子を用いることが好ましい。
3−2.フィルムへの多価金属イオンの付与方法
工程3の多価金属イオンの付与は、工程2より得られた「基材1/フィルム」を多価金属イオンを含有した溶液中に浸漬させることによって行うことが好ましい。
通常の浸漬処理以外に、加圧下で加熱して浸漬処理を行うこともできる。
多価金属化合物を含む水溶液を大気圧を超える加圧下に加熱すると、水の沸騰点を超える温度に加熱することが可能となり、多価金属イオンの付与が促進され、浸漬時間が短縮される。
工程3の多価金属イオンの付与を、工程2より得られた「基材1/フィルム」に、多価金属化合物を合有する固体を更に積層後、調湿させることによって行うこともできる。
工程3の多価金属イオンの付与を、工程2の後に得られた「基材1/フィルム/基材2」の基材1及び基材2のいずれか一方もしくはその両方を剥離する工程を経た後、多価金属イオンを含有した溶液中に浸漬させる、もしくは多価金属イオンを含有した樹脂を更に積層後、調湿またはボイル処理、レトルト処理させることによって行うこともできる。
調湿処理を行う場合は、フィルムを通常10〜99℃、大気圧下、相対湿度20〜99%の雰囲気下に置くことで行う。調湿時間は、温度と湿度によって必要な時間は異なり、低温低湿度であるほど長時間の調湿を必要とし、高温高湿度であれば、短時間で処理を終えることができる。
ボイル処理を行う場合は、フィルムを通常60〜100℃、大気圧下で、1〜120分の条件で行う。フィルムをパウチ状の容器に成形し、食品などの内容物を包装した状態でボイル処理を行うことができる。ボイル処理は、通常、熱水槽を用いて行うが、一定温度の熱水槽の中に浸漬し、一定時間後に取り出すバッチ式でも、熱水槽の中をトンネル式に通して処理する連続式でも行うことができる。
レトルト処理とは、一般に食品保全のために微生物を加圧殺菌する方法である。通常は、フィルムをパウチ状の容器に成形し、食品を包装した状態で温度105から140℃、0.15MPa〜0.30MPaの条件で、5〜120分間の条件で加圧殺菌処理することができる。レトルト装置は、加熱蒸気を利用する蒸気式と加圧過熱水を利用する熱水式などがあるが、どのような方式によっても行うことができる。
浸漬処理時に付着した過剰な多価金属化合物などを水道水、蒸留水あるいはイオン交換水などで洗浄することもできる。
3−3.熱処理
工程3の後、熱処理は必ずしも行う必要はないが、熱処理を行うことで未反応の加水分解性金属化合物由来の加水分解物の縮合反応を進め、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が分散した多価金属イオン架橋ポリカルボン酸フィルムのガスバリア性をさらに向上させることができる。熱処理は、必ずしも行う必要はないが、行う場合には、フィルムを通常50〜250℃、好ましくは60〜240℃、より好ましくは70〜230℃の温度で処理することにより行う。処理時間は、熱処理温度や熱処理条件にもよるが、連続的処理を行う場合には、通常1秒間から120分間、好ましくは2秒間から60分間、より好ましくは5秒間〜30分間である。加熱炉内に搬送することにより乾熱雰囲気で行うことができるが、該多層構造物を加熱ロールと接触させることにより行うこともできる。
4.本発明のガスバリア性フィルムの特性
本発明のガスバリア性フィルムは、酸素ガスバリア性に優れている。すなわち、本発明のガスバリア性フィルムは、温度30℃、相対湿度80%の高湿条件下で測定した酸素透過度が通常10×10−3cm(STP)/(m・s・MPa)以下、好ましくは5×10−3cm(STP)/(m・s・MPa)以下、より好ましくは1×10−3cm(STP)/(m・s・MPa)以下、特に好ましくは5×10−4cm(STP)/(m・s・MPa)以下である。
本発明のガスバリア性フィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真をみると、海島構造が見あたらず、加水分解縮合物が微細かつ均一に分散している(図1の模式図参照)。このことは、多価金属イオン架橋ポリカルボン酸中に、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が均一に分散した微細構造であることがわかる。
これに対して、特許文献11中の実施例1に記載の方法に準拠した方法で作製した比較例2の多価金属イオン架橋ポリカルボン酸を使用して作製したフィルムの走査型電子顕微鏡(SEM)写真を観察すると、大きな島相が存在している(図2の模式図参照)。
このことは、特許文献11中の実施例1では、本発明と相違して、加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が均一に分散した微細構造となっていないと推察される。
してみると、本発明のように、塗布する出発原料が、重合体でなく単量体の場合、複雑な海島構造ではなく、加水分解縮合物が極めて微細かつ均一に分散した構造を形成するものと推察される。すなわち、多価金属イオン架橋ポリカルボン酸中に加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物がきわめて微細かつ均一に存在することを示している。
5.多層フィルム
本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムは、基材1(支持体)及び基材2(被覆材)を剥離して単層のフィルムとして用いることができるが、基材1または基材2と一体化した多層フィルムとして用いることが好ましい。本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムは、「基材/フィルム」、「基材/フィルム/多価金属含有層」の群から選ばれる層構成を持つ多層の積層体であることもできる。各層の厚みは、使用目的に合わせて適宜定めることができる。本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムの厚み(乾燥厚み)は、ガスバリア性の観点から、通常0.001μm〜1mm、好ましくは0.01〜100μm、より好ましくは0.04〜10μmの範囲となるように調整することが好ましい。
6.用途
本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムは、ガスバリア性包装体やガスバリア性容器などとして利用することができる。本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムは、酸素によって変質を受け易い食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品、精密金属部品などの包装体や容器として特に好適である。
包装体の具体的な形状としては、例えば、平パウチ、スタンディングパウチ、ノズル付きパウチ、ピロー袋、ガゼット袋、砲弾型包装袋などが挙げられる。多層フィルムの層構成を選択することにより、包装体に、易開封性、易引裂性、収縮性、電子レンジ適性、紫外線遮蔽性、酸素吸収性、意匠性などを付与することができる。
容器の具体的な形状としては、例えば、ボトル、トレー、カップ、チューブ、タイヤなどが挙げられる。また、容器の蓋材、口部シール材などの用途にも用いることができる。これら容器や蓋材などについても、多層フィルムの層構成を選択することにより、易開封性、易引裂性、収縮性、電子レンジ適性、紫外線遮蔽性、酸素吸収性、意匠性などを付与することができる。包装体や容器への成形加工法としては、熱融着法など当該技術分野で採用されている各種方法を採用することができる。
多層フィルムとすることにより、ガスバリア性フィルムを保護することに加えて、例えば、耐熱性、耐屈曲性、耐摩耗性、遮光性、ヒートシール性、耐油性など様々な機能を備えたガスバリア性の材料とすることができる。多層フィルムをさまざまな用途に適用する場合にも、それぞれの用途に適した多層構成とすることができる。例えば、基材1または基材2をポリオレフィンフィルムとすることにより、ヒートシール性を有する多層フィルムを得ることができる。基材1または基材2をポリエステルフィルムやポリアミドフィルムとすることにより、耐熱性、耐摩耗性などに優れた多層フィルムを得ることができる。基材1または基材2をアルミニウム蒸着フィルムやアルミニウム箔積層フィルムとすることにより、遮光性を賦与したり、ガスバリア性をさらに向上させたりすることができる。基材1及び/または基材2の表面には、印刷が施されていてもよい。さらに、基材1及び/または基材2を酸素吸収性フィルムとすることにより、酸素ガスバリア性をさらに向上させることができる。また、本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムは、真空断熱材料などとしても利用することができる。
<測定方法>
・酸素透過度
本発明における酸素透過度は、次の測定法によって測定されたものである。
フィルムの酸素透過度は、モダンコントロール社製酸素透過度測定装置Oxtran(登録商標)2/20を用い、温度30℃及び相対湿度80%の条件下で測定した。測定方法はASTM D 3985−81(JIS K 7126のB法に相当)に従って行った。測定値の単位は、cm(STP)/(m・s・MPa)である。「STP」は、酸素の体積を規定するための標準条件(0℃、1気圧)を意味する。多層フィルムの酸素透過度の測定は、多層フィルムの状態で行ったが、基材として用いるフィルムや紙の酸素透過度は十分に大きいため、測定値は、コート層である多価金属イオン架橋ポリカルボン酸フィルムの酸素透過度と実質的に一致していると評価することができる。
・基材
下記の実施例及び比較例において、基材として使用しているプラスチックフィルムは下記の通りである。
(1)PET# 12:ポリエチレンテレフタレートフィルム、東レ(株)製ルミラー(登録商標)P60、厚さ12μm;
(2)PET#50:ポリエチレンテレフタレートフィルム、東レ(株)製ルミラー(登録商標)S10、厚さ50μm;
(3)ONy#15:二軸延伸6ナイロンフィルム、ユニチカ(株)製エムブレム(登録商標)ONBC、厚さ15μm、片面コロナ処理品
(4)OPP#20:二軸延伸ポリプロピレンフィルム、東レ(株)製トレファン(登録商標)BO、厚さ20μm、片面コロナ処理品
(5)PE#30:未延伸ポリエチレンフィルム(LLDPEフィルム)、東セロ(株)製T.U.X(登録商標)−HC、厚さ30μm
(6)PI#25:ポリイミドフィルム、東レ・デュポン(株)製カプトン(登録商標)100EN、厚さ25μm、片面コロナ処理品
(7)アート紙:坪量100g/m(厚さ120μm)、アート紙とは、カオリン等の無機物や樹脂、それらの混合物により表面が平滑化された紙材である。
(8)エチレンプロピレン(EPT)ゴムシート、クレハエラストマー(株)製EPT508Z、厚さ1mm
<塗工液(コーティング液)組成>
[溶液S−1]
加水分解性金属化合物aとしてγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、信越シリコーン社製)13.6重量部と、加水分解性金属化合物bとしてテトラメトキシシラン(TMOS、信越シリコーン社製)36.4重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液(和光純薬製)を7.2重量部添加し室温で15分間攪拌し加水分解及び重縮合反応をおこなった。
得られたゾルに対してアクリル酸(和光純薬社製)100重量部とべンゾフェノン(和光純薬製)1.3重量部及び蒸留水10重量部を混合したものを加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−1を得た。得られた溶液S−1の外観は無色透明であった。
[溶液S−2]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン1.7重量部及びテトラメトキシシラン15.6重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液を2.9重量部添加し、10℃で1時間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。得られたゾルに対して、アクリル酸100重量部、ポリビニルアルコール〔クラレ社製ポパール(登録商標)110〕5重量部及び蒸留水52重量部を混合したものを加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−2を得た。
[溶液S−3]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン6.6重量部、及びテトラメトキシシラン26.2重量部を混合したものに、蒸留水を6重量部添加し、室温で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。得られたゾルに対して、アクリル酸100重量部と0.01N水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬製)を27.3重量部とを混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−3を得た。
[溶液S−4]
加水分解性金属化合物aとしてγ−アミノプロピルトリメトキシシラン(APTMS、アルドリッチ社製)28.3重量部及び加水分解性金属化合物bとしてテトラメトキシシラン27.8重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液を11重量部添加し、室温で15分間攪拌し加水分解及び重縮合反応させた。次いで得られたゾルに対して、アクリル酸100重量部及びデカグリセリンラウレート〔理研ビタミン社製ポエム(登録商標)L−021〕13.2重量部及び蒸留水8.5重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−4を得た。
[溶液S−5]
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン95重量部及びテトラメトキシシラン5重量部を混合したものに蒸留水15.5重量部を添加し、室温で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。得られたゾルに対して、アクリル酸100重量部及び蒸留水93.4重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−5を得た。
[溶液S−6]
加水分解性金属化合物aとしてビニルトリメトキシシラン(VTMS、アルドリッチ社製)1.0重量部、及び加水分解性金属化合物bとしてテトラエトキシシラン(TEOS、アルドリッチ社製)5.0重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液を1.0重量部添加し室温で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。次いで得られたゾルに対して、アクリル酸100重量部と蒸留水56.2重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−6を得た。
[溶液S−7]
加水分解性金属化合物aとしてメタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(MPTMS、アルドリッチ社製)7.3重量部及び加水分解性金属化合物bとしてテトラエトキシシラン60.0重量部を混合したものに0.1N塩酸水溶液を11重量部添加し、10℃で1時間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。次いで得られたゾルに対して、アクリル酸100重量部とポリアクリルアミド(MW=10000)50重量%水溶液(和光純薬製)28重量部、蒸留水13.4重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−7を得た。
[溶液S−8]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン65重量部及びテトラエトキシシラン176重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液12.7重量部及び蒸留水36.4重量部を混合したものを添加し、室温で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。次いでアクリル酸100重量部、蒸留水32.8重量部、過硫酸アンモニウム2.7重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−8を得た。
[溶液S−9]
加水分解性金属化合物aとしてメチルトリクロロシラン(MTCS、信越シリコーン社製)4重量部、及び加水分解性金属化合物bとしてテトラエトキシシラン17.8重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液3.8重量部を添加し、0℃で20分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。更に、メタクリル酸(和光純薬社製)100重量部と蒸留水80重量部とを混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−9を得た。
[溶液S−10]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン6.2重量部及びテトラエトキシシラン55.5重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液13.8重量部を添加し、20℃で30分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。更にマレイン酸(和光純薬社製)100重量部と蒸留水125重量部とを混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−10を得た。
[溶液S−11]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5重量部及びテトラメトキシシラン7.1重量部を混合したものに0.1N塩酸水溶液1.7重量部添加し、室温で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。更に、アクリル酸100重量部と蒸留水35.3重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−11を得た。
[溶液S−12]
γ−アミノプロピルトリメトキシシラン9.0重量部に対し、0.1N塩酸水溶液1.4重量部添加し、氷浴中にて15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応を進行させた。更に、アクリル酸100重量部を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−12を得た。
[溶液S−51]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン87.6重量部及びテトラメトキシシラン350重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液21.0重量部及び蒸留水72重量部を混合したものを添加し、室温で15分間攪拌した。次いで、東亜合成(株)製ポリアクリル酸(PAA)アロンA−1OH(登録商標)(数平均分子量20000、25重量%水溶液)を400重量部混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−51を得た。
[溶液S−52]
ビニルトリメトキシシラン12.5重量部及びテトラメトキシシラン59.5重量部を混合したものに、0.1N塩酸水溶液を12.6重量部添加し20℃で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。得られたゾルに対して、蒸留水110重量部を混合した溶液を加えて混合し、表1中に示すような組成の溶液S−52を得た。
[溶液S−53]
γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン466重量部に対し、0.1N塩酸水溶液を7.6重量部及び蒸留水45.7重量部を混合したものを添加し、室温で15分間攪拌し、加水分解及び重縮合反応させた。得られたゾルに、前述のアロンA−10H400重量部を混合した溶液を加えて表1中に示すような組成の溶液S−53を得た。
[溶液S−54]
テトラメトキシシラン91重量部に対し、0.1N塩酸水溶液を15.4重量部添加し、室温で15分間撮排し、加水分解及び重縮合反応させた。得られたゾルに、前述のアロンA−10H78重量部を混合した溶液を加えて表1中に示すような組成の溶液S−54を得た。
Figure 0005109510
<前駆体 作製方法>
[前駆体P−1]
前記で調製した溶液(S−1)を、調製後速やかに卓上コーター(RK Print−Coat Instruments 社製 K303PR00FER)を用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET#50)上に成膜後の厚みが1μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに「基材(PET)/溶液S−1塗膜」の層構成を持つ多層構造物を得た。次いで溶液S−1塗膜の上から、トレー搬送コンベア方式のEB照射装置(CB250/15/180L 岩崎電気製EB装置)を用いて、加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGyの条件で電離放射線(EB)を照射した。照射後、多層構成物をギアオーブンで100℃、24時間の熱処理を行い、表2に示すような前駆体P−1を得た。
[前駆体P−2]
前記で調製した溶液(S−2)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET#12)上に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに同じポリエチレンテレフタレートフィルムを塗膜表面に被せて、「基材(PET)/溶液S−2塗膜/基材(PET)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで、基材(PET)の上から前述のEB照射装置を用いて、加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGyの条件でEB照射を行った。EB照射後、190℃、10分間の熱処理を行い、多層構成物におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−2を得た。
[前駆体P−3]
前記で調製した溶液(S−3)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET#50)上に、成膜後の厚みが1μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面に被せて、「基材(PET)/溶液S−3塗膜/基材(ONy)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで、基材(ONy)の上から前述のEB照射装置を用いて、加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGyの条件でEB照射を行った。EB照射後、190℃、10分間の熱処理を行い、多層構成物におけるEB照射側の基材(ONy)をはがして、表2に示すような前駆体P−3を得た。
[前駆体P−4]
前記で調製した溶液(S−4)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET#50)上に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングし、「基材(PET)/溶液S−4塗膜」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで、溶液S−4塗膜の上から前述のEB照射装置を用いて、加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGyの条件でEB照射を行い、表2に示すような前駆体P−4を得た。
[前駆体P−5]
前記で調製した溶液(S−5)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP#20)上に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面に被せて、「基材(OPP)/溶液S−5塗膜/基材(ONy)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで、基材(ONy)の上から前述のEB照射装置を用いて、加速電圧150kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGyの条件でEB照射を行った。EB照射後、100℃、24時間の熱処理を行い、多層構造体におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−5を得た。
[前駆体P−6]
前記で調製した溶液(S−6)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP#20)上に、成膜後の厚みが1μmとなるようにコーティングした。塗工後速やかにポリエチレンテレフタレートフィルム(PET#12)を塗膜表面に被せて、「基材(OPP)/溶液S−6塗膜/基材(PET)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで基材(PET)の上から、UV照射装置(COMPACT UV CONVEYER CSOT −40 GS YUASA製)を用いて、ランプ出力120W/cm、搬送速度2m/min、ランプ高さ24cmの条件で紫外線(UV)を照射した。照射後、100℃、24時間の熱処理を行い、多層構造体におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−6を得た。
[前駆体P−7]
前記で調製した溶液(S−7)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)上に成膜後の厚みが1μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに未延伸ポリエチレンフィルム(LLDPE#30)を塗膜表面上に被せて、「基材(ONy)/溶液S−7塗膜/基材(LLDPE)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで基材(LLDPE)の上から前述のUV照射装置を用いて、ランブ出力120W/cm、搬送速度2m/min、ランブ高さ24cmの条件でUV照射を行った。照射後、100℃、24時間の熱処理を行い、多層構造体におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−7を得た。
[前駆体P−8]
前記で調製した溶液(S−8)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレート(PET#50)上に、成膜後の厚みが1μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面に被せて、「基材(PET)/溶液S−8塗膜/基材(ONy)」の層構成を持つ多層構造体を得た。得られた多層構造体を70℃で12時間加熱処理を行った。加熱処理後190℃で10分間熱処理を行い、多層構造体におけるONy側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−8を得た。
[前駆体P−9]
前記で調製した溶液(S−9)を調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリイミドフィルム(PI#25)上に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングし、「基材(PI)/溶液S−9塗膜」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで多層構造体の溶液S−9塗膜の上から先述のEB照射装置を用いて加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGyの条件でEB照射を行った。照射後、300℃、2分間の熱処理を行し、表2に示すような前駆体P−9を得た。
[前駆体P−10]
前記で調製した溶液(S−10)を、調製後速やかに、卓上コーターを用いて、アート紙(坪量100g/m、#120)上に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかにポリエチレンテレフタレートフィルム(PET#12)を塗膜表面上に被せ、「基材(アート紙)/溶液S−10塗膜/基材(PET)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで基材(PET)上から、先述のEB照射装置を用いて加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGyの条件でEB照射を行った。照射後、190℃、10分間の熱処理を行い、多層構造体におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−10を得た。
[前駆体P−11]
前記で調製した溶液(S−11)を、調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET#12)上に、製膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面上に被せ「基材(PET)/溶液S−11 塗膜/基材(ONy)」の層構成を有する多層構造体を得た。次いで、基材(ONy)上から先述のEB照射装置を用いて加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGyの条件でEB照射を行った。照射後200℃、15分間熱処理を行い、多層構造体におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−11を得た。
[前駆体P−12]
前記で調製した溶液(S−12)を、調製後速やかに、卓上コーターを用いて、エチレンプロピレンゴムシート(#1000)に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面上に被せ、「基材(エチレンプロピレンゴムシート)/溶液S−12塗膜/基材(ONy)」の層構成を持つ多層構造体を得た。次いで基材(エチレンプロピレンゴムシート)上から、先述のEB照射装置を用いて加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGyの条件で EB照射を行った。照射後、100℃、24時間の熱処理を行い、多層構造体における基材(ONy)をはがして、表2に示すような前駆体P−12を得た。
[前駆体P−51]
前記で調製した溶液(S−3)を、調製後速やかに、卓上コーターを用いて、 ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET#12)上に、成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後、速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面上に被せ「基材(PET)/溶液S−3塗膜/基材(ONy)」の層構成を持つ、表2に示すような前駆体P−51を得た。
[前駆体P−52]
前記で調製した溶液(S−51)を、調製後速やかに、卓上コーターを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PET#12)上に成膜後の厚みが2μmとなるようにコーティングした。塗工後速やかに二軸延伸6ナイロンフィルム(ONy#15)を塗膜表面上に被せ「基材(PET)/溶液S−51塗膜/基材(ONy)」の層構成を有する多層構造体を得た。次いで、基材(ONy)上から先述のEB照射装置を用いて加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGyの条件でEB照射を行った。照射後190℃、10分間熱処理し、多層構造体におけるEB照射側の基材をはがして、表2に示すような前駆体P−52を得た。
[前駆体P−53〜P−55]
溶液S−51に代えて溶液S−52〜S−54を使用したこと以外は前駆体P−52と同様のガスバリア性フィルムの製造方法によって、表2に示すような前駆体P−53〜P−55を得た。
Figure 0005109510
(※2)
EB−1:加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGy
EB−2:加速電圧100kV、搬送速度10m/min、照射線量100kGy
EB−3:加速電圧150kV、搬送速度10m/min、照射線量50kGy
UV:ランプ出力120W/cm、搬送速度2m/min、ランプ高さ24cm
熱:70℃で12時間加熱処理
※:基材2の*印の場合、基材2は、剥がす。
[実施例1]
濃度が10重量%となるように酢酸カルシウム(和光純薬製)を蒸留水に溶解して、80℃に保温した水溶液(M−1)に前述の前駆体P−1を約20秒間浸漬した。次いで同様に80℃に保温された蒸留水で30秒間洗浄処理を行った後、100℃で10分間乾燥工程を経た。このようにして得られたポリカルボン酸多価金属イオン架橋が形成された層を含有するフィルムの30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例2]
濃度が10重量%となるように酢酸亜鉛(和光純薬製)を蒸留水に溶解して、23℃に保温した水溶液(M−2)に前述の前駆体P−2を約20秒間浸漬した。次いで同様に23℃に保温された蒸留水で30秒間洗浄処理を行った後、100℃で10分間乾燥工程を経た。このようにして得られたポリカルボン酸多価金属イオン架橋が形成された層を含有するフィルムの30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例3]
前駆体をP−2に代えてP−3を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法で得られたフイルムの30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例4]
前駆体をP−2に代えてP−4を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法で得られたフイルムの30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例5]
前駆体をP−2に代えてP−5を使用したこと以外は実施例1と同様の作製方法で得られたフイルムの30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例6]
市販の微粒子酸化マグネシウム(MgO、和光純薬工業社製、平均粒子径0.01μm)を用い、エタノール中に超音波ホモジナイザーを用いて分散させMgO含量10重量%のサスペンシヨンを調製した。これを前駆体P−6のアクリル酸重合体を含有する層の上から、バーコーター(RK PRINT−COATINSTRUMENT社製K303PROOFER)を用いて乾燥塗工量が1.0g/mとなるように塗工・乾燥し、積層させ、得られたフィルムを温度30℃、80%RHの雰囲気にコントロ一ルした恒温恒湿槽中に24時間静置し、アクリル酸重合体への固相反応によるイオン化処理を行つた。得られたフィルムを、ギアオーブンで80℃6時間乾燥したのち30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例7]
市販の超微粒子酸化亜鉛含有塗料(住友大阪セメント社製ZR133、不揮発分33重量%(内酸化亜鉛超微粒子18重量%))及び硬化剤としてイソシアネートプレポリマー(大日本インキ化学工業DN980)を10:1の重量比で配合したものを、前述の前駆体P−7のアクリル酸重合体を含有する層の上から、先述のバーコーターを用いてZnOの乾燥塗工量が1.0g/mとなるように塗工・乾燥した。得られたフィルムを食品のレトルト殺菌に用いる高圧釜を用いて、120℃、0.25MPaの条件で30分間加圧、加熱処理(レトルト処理)をすることでアクリル酸重合体のイオン化処理を行った。得られたフィルムをギアオーブンで100℃、10分間乾燥したのち、30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例8]
実施例7で使用した市販の超微粒子酸化亜鉛合有塗料及び硬化剤としてイソシアネートプレポリマーを10:1の重量比で配合したものを、前述の前駆体P−8のアクリル酸重合体を含有する層の上から、先述のバーコーターを用いてZnOの乾燥塗工量が1.0g/mとなるように塗工・乾燥した。90℃の水中で120分間浸漬(ボイル処理)し、アクリル酸重合体の金属イオン化処理を行つた。得られたフィルムをギアオーブンで100℃、10分間乾燥したのち、30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[実施例9]
実施例6の酸化マグネシウムに代えて、炭酸カルシウム(和光純薬工業社製)を使用したこと、前駆体P−6に代えてP−9を使用したこと以外は実施例6と同様にフィルムを作製し、30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。炭酸力ルシウムは、メノウ製のすり鉢で微粉化し、エタノール中に超音波ホモジナイザーを用いて分散させCaCO10重量%のサスペンシヨンを調製して用いた。得られたフィルムにおけるCaCOの乾燥塗工量は1.0g/mであった。結果を表3に示す。
[実施例10]
実施例9のCaCO10重量%のサスペンションに代えて、市販の微粒子酸化亜鉛サスペンション(住友大阪セメント社製ZS303、平均粒径0.02μm、固形分30重量%分散溶剤トルエン)を用いたこと、及び前駆体P−9に代えて前駆体P−10を使用したこと以外は実施例6と同様にフィルムを作製し、30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。尚、得られたフィルムにおけるZnOの乾燥塗工量は1.0g/mであった。結果を表3に示す。
[実施例11]
実施例9の前駆体P−9に代えて、前駆体P−11を使用したこと以外は実施例9と同様にフィルムを作製し、30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。なお、得られたフィルムにおけるCaCOの乾燥塗工量は1.0g/mであった。結果を表3に示す。
[実施例12]
実施例2の前駆体P−2に代えて前駆体P−12を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法でフィルムを作製し、30℃、80%RHにおける酸素透過度を測定した。結果を表3に示す。
[比較例1]
実施例2の前駆体P−2に代えて前駆体P−51を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法でフィルムを作製した。得られたフィルムにおいて、カルボン酸単量体の重合が進行していなかったことから、浸漬処理中にアクリル酸が水溶液(M−2)中に溶解してしまい、ガスバリア性は劣悪なものであった。結果を表3に示す。
[比較例2]
実施例2の前駆体P−2に代えて前駆体P−52を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法でフィルムを作製し評価したが、優れたガスバリア性は得られなかった。結果を表3に示す。
[比較例3]
実施例2の前駆体P−2に代えて前駆体P−53を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法でフィルムを作製し評価した。フィルムの表面状態も劣悪でありガスバリア性も得られなかった。結果を表3に示す。
[比較例4]
実施例2の前駆体P−2に代えて前駆体P−54を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法でフィルムを作製し評価した。得られたフィルムは硬化が十分に行われず、ガスバリア性も得られなかった。結果を表3に示す。
[比較例5]
実施例2の前駆体P−2に代えて前駆体P−55を使用したこと以外は実施例2と同様の作製方法でフィルムを作製したが、表面状態は亀裂などが観察され、そのガスバリア性も劣悪なものであった。結果を表3に示す。
Figure 0005109510
[考察]工程2を行わず、重合していない比較例1では、得られたフィルムにおいて、不飽和カルボン酸単量体の重合が進行していなかったことから、浸漬処理中に不飽和カルボン酸単量体が水溶液中に溶解してしまい、ガスバリア性は劣悪なものであった。工程1で重合体を使用した比較例2では、優れたガスバリア性は得られなかった。工程1で、単量体も重合体も使用しなかった比較例3では、フィルムの表面状態も劣悪であり、十分ガスバリア性も得られなかった。工程1で、重合体を使用した比較例4は、硬化が十分に行われず、十分なガスバリア性も得られなかった。工程1で重合体を使用した比較例5は、表面状態は亀裂などが観察され、そのガスバリア性も劣悪なものであった。
これに対して、実施例1〜12は、酸素透過度において、格別顕著な効果を奏した。
本発明の製造方法で製造されたガスバリア性フィルムは、酸素等の影響により、劣化を受けやすい、食品、飲料、薬品、医薬品、電子部品等の精密金属部品の包装体、容器や真空断熱材料として適している。さらに長期にわたり安定したガスバリア性能が必要で、かつボイル、レトルト殺菌等の高温熱水条件下での処理を必要とする物品の包装材料として好適に用いることができる。
本発明の実施例1のフィルムの走査型電子顕微鏡写真の模式図である。 比較例2のフィルムの走査型電子顕微鏡写真の模式図である。

Claims (21)

  1. 下記工程1乃至3:
    (1)基材1上に、α,β−不飽和カルボン酸単量体、並びにハロゲン原子及びアルコキシ基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基が金属原子に結合した加水分解性金属化合物を含有する重合性組成物からなる塗工液を塗布して、塗膜を形成する工程1;
    (2)基材1上にある塗膜または該塗膜上に別の基材2を被覆して両基材間に挟まれた塗膜を重合処理して、α,β−不飽和カルボン酸重合体と加水分解性金属化合物とを含有するフィルムを形成する工程2;及び
    (3)該フィルムに多価金属イオンを付与して、該α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する工程3;
    を含む、温度30℃、相対湿度80%の条件下で測定した酸素透過度が10×10−3cm(STP)/(m・s・MPa)以下のガスバリア性フィルムの製造方法。
  2. 前記α,β−不飽和カルボン酸単量体が、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸、セネシオ酸、チグリン酸、ソルビン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、及びこれらの酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも一種の不飽和カルボン酸単量体である請求項1記載の製造方法。
  3. 前記加水分解性金属化合物が、下記式I:
    (OR m−n−t−s …(I)
    〔式I中、Mは、Si、Al、Ti、Zr、Cu、Ca、Sr、Ba、Zn、B、Ga、Y、Ge、Pb、P、Sb、V、Ta、W、LaまたはNdであり、Rはアルキル基、Rは、アルキル基、アラルキル基、アリール基、アルケニル基、Zは、カルボキシル基と反応性を有する官能基を有する有機基を示す。Xはハロゲン原子を表す。mはMの原子価と等しい。nは0〜m、tは0〜m、sは0若しくは1の整数であり、1≦n+t、n+t+s≦mである。〕
    で表される少なくとも一種の加水分解性金属化合物である請求項1または2記載の製造方法。
  4. 前記加水分解性金属化合物が、前記式Iにおいて、n及びtがそれぞれ0〜(m−1)(但し、1≦n+t≦m−1)である少なくとも一種の加水分解性金属化合物aと、n及びtがn+t=mである少なくとも一種の加水分解性金属化合物bとを含む請求項3に記載の製造方法。
  5. 前記加水分解性金属化合物について、前記式I中のZが、エポキシ基、アミノ基、水酸基、イソシアネート基、及びウレイド基からなる群より選ばれる少なくとも一種の官能基を有する有機基である請求項3または4に記載の製造方法。
  6. 前記金属原子が、ケイ素原子である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記重合性組成物が、α,β−不飽和カルボン酸単量体100重量部に対して、加水分解性金属化合物を0.1〜400重量部含有する請求項1乃至6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 前記工程1において、塗工液中に、加水分解性金属化合物が、その部分加水分解物、完全加水分解物、部分加水分解縮合物、完全加水分解物の縮合物、またはこれらの2種以上の混合物の形態で存在している請求項1乃至7のいずれか1項に記載の製造方法。
  9. 前記重合性組成物が、分子中に、水酸基、アミノ基、カルボニル基、アミド基、及びカルボキシル基からなる群より選ばれる少なくとも一種の水素結合性官能基を持つ物質をさらに含有する請求項1乃至8のいずれか1項に記載の製造方法。
  10. 前記工程2において、塗膜に対する電離放射線の照射処理または加熱処理もしくはこれら両方の処理により、塗膜を構成する重合性組成物を重合する請求項1乃至9のいずれか1項に記載の製造方法。
  11. 前記加熱処理が、温度50〜250℃で、1分間から24時間の加熱処理である請求項10に記載の製造方法。
  12. 前記基材1及び2が、プラスチックまたは紙またはゴムもしくはこれらの複合物である請求項1乃至11のいずれか1項に記載の製造方法。
  13. 前記工程2において、塗膜上から直接または基材1もしくは基材2を通して、あるいは塗膜上から直接及び基材1もしくは基材2を通して、電離放射線を照射して、塗膜を構成する重合性組成物を重合する請求項1乃至12のいずれか1項に記載の製造方法。
  14. 前記工程2と工程3との間に、温度50〜400℃での熱処理を行う工程を追加して配置する請求項1乃至13のいずれか1項に記載の製造方法。
  15. 前記工程3において、フィルムに、2価金属イオン及び3価金属イオンからなる群より選ばれる少なくとも一種の多価金属イオンを付与して、α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する請求項1乃至14のいずれか1項に記載の製造方法。
  16. 前記多価金属イオンが、Be、Mg、Ca、Cu、Co、Ni、Zn、Al、Fe、またはZrから選ばれる金属の酸化物、水酸化物、炭酸塩、有機酸塩、アンモニウム錯体、及び無機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の多価金属化合物に由来する多価金属イオンである請求項1乃至15のいずれか1項に記載の製造方法。
  17. 前記工程3において、別の基材2を被覆した場合は、基材1または基材2を剥離した後、基材1または基材2上のフィルムを、多価金属イオンを含有する溶液中に浸漬することにより、該フィルムに多価金属イオンを付与して、α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の製造方法。
  18. 前記工程3において、別の基材2を被覆した場合は、基材1または基材2を剥離した後、基材1または基材2上のフィルムの上に、多価金属化合物を含有する固体層を設け、調湿又はボイル処理、レトルト処理して多価金属イオンを発生させ、該固体層からの多価金属イオンの移動により、該フィルムに多価金属イオンを付与して、α,β−不飽和カルボン酸重合体を多価金属イオン架橋する請求項1乃至16のいずれか1項に記載の製造方法。
  19. 前記固体層が、多価金属化合物を含有する樹脂組成物層である請求項18記載の製造方法。
  20. 前記工程3の後、ガスバリア性フィルムを50〜250℃の温度で1秒間から60分間熱処理する工程をさらに含む請求項1乃至19のいずれか1項に記載の製造方法。
  21. 前記請求項1乃至20のいずれか1項に記載の製造方法により得られた、多価金属イオン架橋α,β−不飽和カルボン酸重合体中に加水分解性金属化合物由来の加水分解縮合物が分散したガスバリア性フィルム。
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