JP5108799B2 - 内燃機関の制御装置 - Google Patents

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Description

この発明は、内燃機関の制御装置に係り、特に、内燃機関のトルクを吸気量調整弁の弁開度と点火時期とによって制御することができる内燃機関の制御装置に関する。
内燃機関のトルクの制御方法として、要求トルクに基づいてスロットル開度と点火時期とを協調制御するいわゆるトルクデマンド制御が知られている。特開2006−138300号公報に開示されている技術も、そのようなトルクデマンド制御に関するものである。この公報に開示された技術では、要求トルクとは別にトルクリザーブのためのトルク余裕値が入力され、要求トルクとトルク余裕値とに基づいて、スロットル開度と点火時期とを算出している。より詳しくは、要求トルクにトルク余裕値を加算した値からスロットル開度を算出している。また、要求トルクと、要求トルクにトルク余裕値を加算した値との比から点火時期の遅角量を算出している。
特開2006−138300号公報
上記従来の技術では、要求トルクとトルク余裕値とは個々に独立して設定されているが、要求トルクとトルク余裕値との関係によっては、内燃機関におけるそれらの実現が不可能な場合もある。入力された要求トルクとトルク余裕値とから算出されたスロットル開度および点火時期によって内燃機関を制御したときに、筒内の燃焼条件が燃焼限界を超えてしまった場合である。筒内の燃焼条件が燃焼限界を超えることで、燃焼変動や失火といった問題が発生してしまう。
このような問題への対応策としては、独立して設定された各機関要求(要求トルクとトルク余裕値)を相互の関係に基づいて修正することが考えられる。しかしながら、燃焼限界を超えないための安全代を大きくとりすぎると、要求の修正が大きくなってしまい要求の実現精度は低下してしまう。また、要求の修正によって燃焼限界を超えないように制御したとしても、その修正によって点火時期を長時間遅角しすぎると、燃焼温度の上昇によって内燃機関の耐久性に支障をきたしてしまう。
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、内燃機関の耐久性に支障をきたすことなく、可能な限り機関要求を実現することが可能な内燃機関の制御装置を提供することを目的とする。
第1の発明は、上記の目的を達成するため、吸入空気量を調整する吸気量調整弁の開度と点火時期と燃料量とによって動作を制御される内燃機関の制御装置において、
前記内燃機関の動作を決定する複数の所定物理量に関する要求(以下、機関要求)として、少なくとも要求トルクと要求効率とを取得する要求取得手段と、
取得した各機関要求と前記内燃機関の現在の運転状態とに基づいて、取得した各機関要求が前記内燃機関で実現されるための目標弁開度及び目標点火時期を算出する目標値算出手段と、
目標弁開度及び目標点火時期によって決まる筒内の燃焼条件が燃焼限界内に収まるように、少なくとも目標点火時期が算出される過程で用いられる要求トルクに下限のガード値を設けるガード手段と、
前記機関要求としての要求トルクが前記ガード手段におけるガード値よりも小さい期間が所定の許容期間を超えた場合に、前記内燃機関への燃料の供給を制限する燃料カット手段と、
を備えることを特徴とする。
第2の発明は、第1の発明において、
前記所定の許容期間は、触媒温度が所定の温度限界を超えない期間に設定されることを特徴とする。
第3の発明は、第1または2の発明において、
前記所定の許容期間は、前記内燃機関の機関回転数に応じて可変に設定されることを特徴とする。
第4の発明は、第1乃至第3の何れか1つの発明において、
少なくも1つの機関要求についてその時間変化量を計算し、算出した時間変化量の大きさに応じて前記ガード手段による制限を緩和させるガード緩和手段を更に備え、
前記ガード手段は、目標点火時期が算出される過程で用いられる要求トルクを制限するためのガード値として厳しいガード値と緩いガード値とを有しており、
前記ガード緩和手段は、算出した時間変化量が基準量を越えるときには、前記ガード手段に対して厳しいガード値から緩いガード値への切り替えを指示することを特徴とする。
第5の発明は、第4の発明において、
前記ガード緩和手段は、緩いガード値への切り替えから所定時間が経過した後は、前記ガード手段に対して再び厳しいガード値への切り替えを指示することを特徴とする。
機関要求としての要求トルクがガード手段における下限のガード値で制限されると、目標点火時期が遅角側に修正される。第1の発明によれば、要求トルクがガード手段のガード値よりも小さい期間が所定の許容期間を超えた場合に、内燃機関への燃料の供給が制限される。このため、本発明によれば、点火時期の過剰な遅角制御により内燃機関の耐久性に支障が生じる事態を効果的に抑制することができる。
第2の発明によれば、所定の許容期間は、触媒温度が所定の温度範囲を超えない期間に設定される。このため、本発明によれば、触媒の温度が過剰に上昇する事態を効果的に回避することができる。
機関回転数が高いほど触媒の温度上昇に要する時間は短くなる。第3の発明によれば、所定の許容時間は、内燃機関の機関回転数に応じて可変に設定される。このため、本発明によれば、可能な限り要求トルクを実現することができる。
第4の発明によれば、目標点火時期が算出される過程で用いられる要求トルクに対する制限は機関要求の時間変化量の大きさに応じて自動的に緩和されるので、内燃機関の動作を決定する所定物理量を速く或いは大きく変化させたいという要求がある場合には、その要求通りの時間変化或いは要求に可能な限り近い時間変化を実現することができる。また、厳しいガード値から緩いガード値への切り替えは、機関要求の時間変化量と基準量との比較に基づいて行なわれるので、外部から切り替えのための指示情報を供給する必要がないという利点もある。
第5の発明によれば、緩いガード値への切り替えから所定時間が経過したら再び厳しいガード値への切り替えが行なわれるので、緩いガード値が選択されている間に筒内の燃焼条件が一時的に燃焼限界を超えたとしても、それによって内燃機関に無理が生じることを防止することができる。
本発明の実施の形態1としての内燃機関の制御装置の構成を示すブロック図である。 短時間可能トルクを下回るトルク要求が出された場合のトルクの変化の様子を示す図である。
本発明の実施の形態について図1および図2の各図を参照して説明する。
本実施の形態にかかる内燃機関は、火花点火式の内燃機関であって、その動作を制御するためのアクチュエータとしてスロットル弁、点火装置及び燃料噴射装置を備えている。本実施の形態の制御装置は、いわゆるトルクデマンド制御によって内燃機関を制御するものであり、要求トルクを含む種々の機関要求に基づいて各アクチュエータの制御に用いる目標値、すなわち、目標スロットル開度、目標点火時期、および目標A/Fを算出する。なお、ここでいう機関要求とは、内燃機関の動作を決定する物理量の要求値である。内燃機関の動作はトルク、効率及びA/F(空燃比)の3つの物理量によって決定することができることから、機関要求としては要求トルク、要求効率及び要求A/Fが入力される。
本実施の形態の制御装置は、図1のブロック図にて示すように構成されている。図1では制御装置の各要素をブロックで示し、ブロック間の信号の伝達(主なもの)を矢印で示している。以下、図1を参照して本実施の形態の制御装置の全体の構成と、その特徴について説明する。
本実施の形態の制御装置は、内燃機関に要求されるトルクを取得する要求トルク取得部2と、内燃機関に要求される効率を取得する要求効率取得部4と、内燃機関に要求されるA/Fを取得する要求A/F取得部6とを備えている。各要求は車両の駆動系全体を制御する上位の制御装置から発せられている。
本実施の形態の制御装置は、入力された各機関要求(要求トルク、要求効率及び要求A/F)と、内燃機関の現在の運転状態に関する機関情報とに基づいて目標スロットル開度、目標点火時期及び目標A/Fを算出する。その計算を行うのがトルク実現部10である。トルク実現部10は内燃機関の逆モデルにあたり、マップや関数で表された複数の統計モデルや物理モデルで構成されている。内燃機関の逆モデルの構成は、制御装置による内燃機関の制御特性を特徴付けるが、本実施の形態では要求トルク、要求効率、および要求A/Fのうち、要求トルクを最優先して実現するような構成とされている。
トルク実現部10に入力される要求トルクと要求効率とは、直接には目標スロットル開度の計算に用いられる信号となる。また、トルク実現部10に入力される要求A/Fは、直接には目標A/Fの計算に用いられる信号となる。内燃機関の動作を制御するためには、これらの信号に加えて目標点火時期の計算に用いる信号が必要であり、トルク実現部10にはその信号を生成する機能も備えられている。
本実施の形態の制御装置において目標点火時期の計算に用いられる信号はトルク効率である。トルク効率は、内燃機関の推定トルクに対する要求トルクの比として定義される。トルク実現部10は、トルク効率を算出するための要素として、推定トルク算出部112及びトルク効率算出部114を備えている。
推定トルク算出部112は、現在のスロットル開度から内燃機関のトルクを推定計算する。より詳しくは、現在のスロットル開度で実現できる吸入空気量を吸気系の物理モデルであるエアモデルを用いて計算する。次に、エアモデルで計算した見込みの吸入空気量をトルクマップに照合してトルクに変換する。トルクマップは、トルクと吸入空気量との関係を示す統計モデルであり、吸入空気量を含む複数のパラメータを軸とする多次元マップになっている。各パラメータには現在の機関情報から得られる値が入力される。ただし、点火時期は最適点火時期(MBTとトレースノック点火時期のうちより遅角側の点火時期)とされている。推定トルク算出部112は、見込みの吸入空気量から変換されたトルクを内燃機関の最適点火時期における推定トルクとして算出する。
トルク効率算出部114は、後述する修正部20で修正された修正後の要求トルクと、推定トルク算出部112で算出された推定トルクとの比をトルク効率として算出する。後述するが、スロットル開度は要求トルクを要求効率で除算して嵩上げした補正要求トルクを実現するように制御される。これは要求効率の分だけ低下するトルクを吸入空気量の増量によって補うためである。ただし、スロットル開度の変化に対する実際の吸入空気量の応答には遅れがあるため、実際に出力可能なトルク(推定トルク)は要求効率の変化に対して応答遅れを有している。推定トルクと要求トルクとの比であるトルク効率は、要求効率と実際の吸入空気量の変化とを共に目標点火時期の計算に反映させるためのパラメータになっている。少なくとも吸入空気量が一定となった定常状態では、理論的には推定トルクは補正要求トルクに一致し、トルク効率は要求効率に一致するようになる。
ところで、車両駆動系の上位制御装置から内燃機関に発せられる要求トルク、要求効率及び要求A/Fは、各々が独立して生成されるものであって他機関要求との関係で実現可能な値かどうかは考慮されていない。このため、各機関要求の大きさの関係によっては筒内の燃焼条件が燃焼限界を超えてしまう可能性がある。そこで、トルク実現部10には、内燃機関の適正運転が可能になるように、内燃機関の各制御に用いられる信号の大きさを修正する修正部20が設けられている。修正部20の構成とその機能に関しては追って詳細に説明する。
修正部20による処理の結果、アクチュエータを制御するための各目標値の計算に使用される主信号は、修正後の要求効率、要求トルク、要求A/Fとなる。トルク実現部10は、要求トルク及び修正後の要求効率に基づいて目標スロットル開度を算出する。また、トルク実現部10は、修正後の要求トルクと推定トルクとから算出されたトルク効率に基づいて目標点火時期を算出する。また、トルク実現部10は、修正後の要求A/Fを目標A/Fとして算出する。
トルク実現部10は、目標スロットル開度の計算のため、要求トルク補正部102、吸入空気量算出部104及びスロットル開度算出部106を備えている。要求トルクと修正後の要求効率とは、要求トルク補正部102に入力される。要求トルク補正部102は要求トルクを要求効率で除算して補正し、効率補正後の要求トルクを吸入空気量算出部104に出力する。修正後の要求効率の値が1よりも小さければ、要求効率による除算によって要求トルクは嵩上げされ、嵩上げされた要求トルクが吸入空気量算出部104に供給される。
吸入空気量算出部104は、効率補正された要求トルクを吸入空気量に変換する。要求トルクの吸入空気量への変換には空気量マップが用いられる。空気量マップは、トルクと吸入空気量との関係を示す統計モデルであり、トルクを含む複数のパラメータを軸とする多次元マップになっている。各パラメータには現在の機関情報から得られる値が入力される。ただし、点火時期は最適点火時期とされている。吸入空気量算出部104は、効率補正された要求トルクから変換された吸入空気量を目標吸入空気量として算出する。
スロットル開度算出部106は、目標吸入空気量を実現するためのスロットル開度を算出する。その計算にはエアモデルの逆モデル(以下、エア逆モデル)が用いられる。エアモデルによる計算には、機関回転数やバルブタイミング等の吸入空気量に影響する各種の運転状態に関する機関情報が用いられる。スロットル開度算出部106は、目標吸入空気量から変換されたスロットル開度を目標スロットル開度として出力する。
トルク実現部10は、トルク効率から目標点火時期を計算するため、点火時期算出部116を備えている。点火時期算出部116は、トルク効率から最適点火時期に対する遅角量を計算する。遅角量の計算にはマップ等の統計モデルが用いられる。トルク効率が小さいほど点火遅角量は大きい値に設定される。また、点火時期算出部116は、内燃機関の運転状態に基づいて最適点火時期を計算する。点火時期算出部116は、点火遅角量を最適点火時期に加算し、得られた最終的な点火時期を目標点火時期として出力する。
以上がトルク実現部10の基本的な構成に関する説明である。次に、本実施の形態の制御装置にとっての要部である修正部20の構成とその機能について説明する。
修正部20は、要求効率、要求トルク、および要求A/Fのそれぞれについて、その値を所定範囲に制限するためのガード部202,214,232を備えている。要求効率、要求トルク、および要求A/Fは、何れもトルク実現部10の内部で使用される中間変数である点で共通している。各ガード部202,214,232に設定されているガード値は可変であり、内燃運転状態に応じて適宜の値がセットされる。なお、ガード部202,および232は、上限および下限のガード値がセットされ、ガード部214は、下限のガード値のみがセットされる。
要求トルクガード部202にセットされるガード値は、効率限界値マップ204から読み込まれる。効率限界値マップ204には、失火限界やノック限界等の燃焼限界に対応する効率のガード値が機関回転数等に関連付けて記憶されている。また、要求A/Fガード部232にセットされるガード値は、A/F限界値マップ234から読み込まれる。A/F限界値マップ234には、燃焼限界に対応するA/Fの値が機関回転、要求トルク、要求効率等に関連付けて記憶されている。
要求トルクガード部214には、下限のガード値のみがセットされる。修正部20は、このガード部214のために、ガード値の設定に用いるトルク限界値を2種類用意している。より具体的には、より高いガード値、すなわち、より厳しいガード値をとるのが第1のトルク限界値218である。第1のトルク限界値218では、ドラビリ限界に対応するトルクの値がガード値として設定されている。ドラビリ限界とはトルクの値がそれ以上であれば良好なドライバビリティを維持することが可能であって、長時間(例えば20s)使用しても内燃機関の耐久性に影響を与えることがない限界値である。ドラビリ限界は理論上の燃焼限界に対応している。以下、ドラビリ限界に対応するトルクの値を「長時間可能トルク」と称する。
これに対して、より低いガード値、すなわち、より緩いガード値をとるのが第2のトルク限界値220である。このトルク限界値220では、理論上の燃焼限界を超えたOT限界に対応するトルクの値がガード値として設定されている。OT限界とは、長時間使用すると過熱によって内燃機関の耐久性に支障をきたしてしまうものの、短時間(例えば500〜1000msec程度)であるならば使用が可能な限界値である。以下、OT限界に対応するトルクの値を「短時間可能トルク」と称する。
修正部20は、使用するトルク限界値218,220を選択するための選択部216と、選択部216に対して選択の切り替えを指示する切り替え指示部222とを備えている。選択部216は、切り替え指示部222からの指示に従って2つのトルク限界値218,220の何れか一方を選択する。要求トルクガード部214には、選択部216によって選択されたマップから読み込まれたガード値がセットされる。
切り替え指示部222は、次のような切り替え規則にしたがって選択の切り替えを指示する。まず、選択部216による基本の選択は、第1のトルク限界値218とされている。つまり、基本的には、燃焼限界に対応する厳しいガード値によって、要求効率及びトルク効率の各制限が行なわれるようになっている。
第1のトルク限界値218から第2のトルク限界値220への選択の切り替えは、次のいずれかの切替条件が成立した場合にのみ行なわれる。
(1)要求トルクの所定時間あたりの変化量が所定の切替基準量を超えていること。
(2)要求効率の所定時間あたりの変化量が所定の切替基準量を超えていること。
つまり、トルクや効率を速く或いは大きく変化させたいという要求がある場合に、長時間限界に対応する厳しいガード値から短時間限界に対応する緩いガード値への切り替えが行なわれる。この場合、切り替えの判定に必要な情報は要求トルクと要求効率のみであるので、トルク実現部10の外部から切り替えのための指示情報を供給する必要はない。
そして、第2のトルク限界値220への切り替え後、所定時間が経過した時点で、再び第1のトルク限界値218への切り替えが行なわれる。前記の所定時間は、短時間可能トルクを連続使用することが可能な時間(例えば1sec)である。緩いガード値が選択されているときには、その間に筒内の燃焼条件が一時的に燃焼限界を超えてしまう可能性があるが、連続使用可能時間を越える前に再び厳しいガード値に切り替えられることで、内燃機関に無理が生じることを防止することができる。また、この場合も、トルク実現部10の外部から切り替えのための指示情報を供給する必要はない。
但し、極めて小さな要求トルクがトルク実現部10へ入力され続けた場合においては、その要求を実現すると、内燃機関(例えば触媒)の耐久性に支障が生じることが想定される。つまり、極めて小さな要求トルクが長時間可能トルクでガードされ続けると、点火時期が遅角され続けるため、触媒がOT限界を超えてしまうおそれがある。
そこで、本実施の形態では、トルク実現部10に入力された要求トルクが長時間限界トルクを下回る期間が所定の許容期間(例えば20sec)を超えたときに、換言すれば、所定の許容期間を超えてもなお長時間可能トルクよりも小さいトルク要求が出されている場合に、内燃機関の燃料カットを実行することとしている。これにより、触媒がOT限界を超える事態を効果的に抑止することができる。また、燃料カットの実行により、トルクダウン要求を満たすことができ、可能な限り要求トルクを実現することが可能となる。
尚、触媒の温度上昇は、内燃機関の機関回転数と相関を有する。そこで、所定の許容期間は、機関回転数が低回転である場合には長く(例えば20sec)、高回転である場合には短く(例えば2sec)することにより、触媒の保護をより確実なものとすることが可能となる。
以上のように内燃機関の制御が行われた結果の一例を図2に示す。図2は、短時間可能トルクを下回るトルク要求が出された場合のトルクの変化の様子を示す図である。この図では、時刻t1において短時間可能トルクを下回る急激なトルクダウン要求が出されている。要求トルクが急低下することで前述の切替条件が成立する。これにより、要求トルクガード部214にセットされるトルクガード値は、長時間可能トルクから短時間可能トルクに切り替えられる。これにより、時刻t1以降のトルクは要求トルクに近い短時間可能トルクでガードされる。
その後、トルクガード値が短時間可能トルクに切り替えられてから所定時間(ここでは1sec)が経過した時刻t2の時点で、トルクガード値は再び長時間可能トルクに切り替えられる。これにより、時刻t2以降のトルクは短時間可能トルクよりも大きい長時間可能トルクでガードされる。
その後、時刻t1から所定の許容期間が経過した時刻t3の時点で、未だ短時間限界トルクを下回る低トルク要求が出されている場合には、燃料カットが行われる。これにより、時刻t3において急激にトルクが低下する。
このように、要求トルクが下限のガード値で制限される期間が所定の許容期間継続された場合に、燃料カットが実行される。これにより、触媒がOT限界を超えてしまう事態を抑止することができる。また、所定の許容期間は、内燃機関の機関回転数に応じて設定されるので、可能な限り要求トルクを実現することができる。
また、上述のような構成及び機能を有する修正部20によれば、要求効率、要求トルク、および要求A/Fのそれぞれに対してガード部202,214,232が設けられることで、入力される要求効率、要求トルク、および要求A/Fの各値がどのようであっても、筒内の燃焼条件は燃焼限界内に収めることができる。また、要求トルクを制限するガード値は要求トルクや要求効率の時間変化量の大きさに応じて自動的に緩和されるので、トルクや効率を速く或いは大きく変化させたいという要求がある場合には、その要求通りの時間変化或いは要求に可能な限り近い時間変化を実現することができる。
以上、本発明の実施の形態について説明した。実施の形態には、本発明のうち第1乃至第4の発明が具現化されている。詳しくは、図1に示す構成において、要求トルク取得部2、要求効率取得部4及び要求A/F取得部6は第1の発明の「要求取得手段」に、トルク限界値は第1の発明の「ガード値」に、要求トルク、要求効率、および要求A/Fは「機関要求」に、それぞれ相当している。また、トルク実現部10は第1の発明の「目標値算出手段」に相当する。また、要求トルクガード部214と2つのトルク限界値218,220とにより、第1の発明の「ガード手段」が構成されている。また、選択部216及び切り替え指示部222により第4の発明の「ガード緩和手段」が構成されている。
2 要求トルク取得部
4 要求効率取得部
6 要求A/F取得部
10 トルク実現部
20 修正部
102 要求トルク補正部
104 吸入空気量算出部
106 スロットル開度算出部
112 推定トルク算出部
114 トルク効率算出部
116 点火時期算出部
202 要求効率ガード部
204 効率限界値マップ
214 要求トルクガード部
216 選択部
218 トルク限界値(長時間可能トルク)
220 トルク限界値(短時間可能トルク)
222 切り替え指示部
232 要求A/Fガード部
234 A/F限界値マップ

Claims (5)

  1. 吸入空気量を調整する吸気量調整弁の開度と点火時期と燃料量とによって動作を制御される内燃機関の制御装置において、
    前記内燃機関の動作を決定する複数の所定物理量に関する要求(以下、機関要求)として、少なくとも要求トルクと要求効率とを取得する要求取得手段と、
    取得した各機関要求と前記内燃機関の現在の運転状態とに基づいて、取得した各機関要求が前記内燃機関で実現されるための目標弁開度及び目標点火時期を算出する目標値算出手段と、
    目標弁開度及び目標点火時期によって決まる筒内の燃焼条件が燃焼限界内に収まるように、少なくとも目標点火時期が算出される過程で用いられる要求トルクに下限のガード値を設けるガード手段と、
    前記機関要求としての要求トルクが前記ガード手段におけるガード値よりも小さい期間が所定の許容期間を超えた場合に、前記内燃機関への燃料の供給を制限する燃料カット手段と、
    を備えることを特徴とする内燃機関の制御装置。
  2. 前記所定の許容期間は、触媒温度が所定の温度限界を超えない期間に設定されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の制御装置。
  3. 前記所定の許容期間は、前記内燃機関の機関回転数に応じて可変に設定されることを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の制御装置。
  4. 少なくも1つの機関要求についてその時間変化量を計算し、算出した時間変化量の大きさに応じて前記ガード手段による制限を緩和させるガード緩和手段を更に備え、
    前記ガード手段は、目標点火時期が算出される過程で用いられる要求トルクを制限するためのガード値として厳しいガード値と緩いガード値とを有しており、
    前記ガード緩和手段は、算出した時間変化量が基準量を越えるときには、前記ガード手段に対して厳しいガード値から緩いガード値への切り替えを指示することを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の内燃機関の制御装置。
  5. 前記ガード緩和手段は、緩いガード値への切り替えから所定時間が経過した後は、前記ガード手段に対して再び厳しいガード値への切り替えを指示することを特徴とする請求項4記載の内燃機関の制御装置。
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