JP5106257B2 - 流し込み不定形耐火物 - Google Patents

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本発明は、流し込み不定形耐火物に関する。
炉本体、樋、取鍋などにおいては、各種の高温溶融物と接触したり高温雰囲気に曝されるため、流し込み不定形耐火物により内張りすることが従来から行われている。不定形耐火物としては、アルミナセメントを使用するのが一般的であるが、混練後に短時間で硬化してしまうため、施工現場にミキサー等を持ち込んで、施工者が硬化しないように少量ずつ加水混練を行う必要があり、作業面やコスト面での問題がある。
このため、特許文献1には、粉末珪酸塩とアルカリ金属リン酸塩とを所定の混合比で混合し、これを耐火性骨材に所定の割合で添加した後、水を加えて混練してなる熱硬化性流し込み耐火物が開示されている。この流し込み耐火物は、常温では硬化の進行が遅いため、予め工場で混練してから現場に運んで施工することができる。
特開平10−130065号公報
ところが、特許文献1に開示された熱硬化性流し込み耐火物は、長期間の保管やトラック等での輸送中に、材料中の骨材が沈んで水が浮くという分離現象を生じることがあり、施工性の面で更に改良の余地があった。
そこで、本発明は、現場での施工性に優れる流し込み不定形耐火物の提供を目的とする。
本発明者らは、鋭意研究の結果、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムを含む結合剤を、耐火性骨材に添加した流し込み不定形耐火物において、結合剤として酸化亜鉛を更に加えることにより、加水混練の後に一旦硬化しても、振動を与えることで再び流動性を発現することを見出し、本願発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の前記目的は、耐火性骨材100重量部に対する結合剤の添加割合が0.1〜10重量部であり、前記結合剤は、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムを重量比で6:4〜2:8の割合で混合した混合物100重量部に対し、酸化亜鉛を0.05〜30重量部添加したことを特徴とする流し込み不定形耐火物により達成される。
本発明によれば、現場での施工性に優れる流し込み不定形耐火物を提供することができる。
本発明の流し込み不定形耐火物は、耐火性骨材に結合材を添加して生成される。
(a)耐火性骨材
本発明に使用する耐火性骨材としては、(1) 電融アルミナ、焼結アルミナ、化焼アルミナなどの高アルミナ原料(2) 焼成ボーキサイト、ムライト、シリマナイト、カイヤナイト、アンダルサイトなどのアルミナ−シリカ原料(3) ロー石、シャモット、粘土質鉱物などのシリカ−アルミナ原料(4) 珪砂、珪石、溶融石英などの珪酸質原料(5) クロム鉄鉱、焼結スピネル、電融スピネルなどのスピネル原料(6) マグネシアクリンカー、フォルステライト、ドロマイトクリンカー、カルシアなどの塩基性原料(7) ジルコン質原料(8) ジルコニア質原料(9) 炭化珪素、炭化ジルコニウム、炭化アルミニウム、炭化硼素などの炭化物質原料(10)窒化珪素、窒化ジルコニウム、窒化硼素、窒化アルミニウムなどの窒化物質原料(11)コークス、天然黒鉛、人造黒鉛、無煙炭、カーボンブラック、カーボン煉瓦屑、電極屑などの炭素質原料(12)珪酸ソーダ塊、珪素、酸化クロムなどの耐火性粉末を使用可能である。また、耐火性骨材として、これら各群から1種または2種以上選択して利用することもでき、或いは、異なる群から1種又は2種以上選択して利用することもできる。耐火性骨材は、約5mm以下に粒度調整されていることが好ましい。
(b)結合剤
結合剤としては、難溶性の粉末珪酸ナトリウムと、トリポリリン酸二水素アルミニウムとを含む混合物に、酸化亜鉛を添加したものを使用する。
粉末珪酸ナトリウムは、SiOを50〜80%、NaOを15〜40%含有するものを使用することが好ましい。SiOとNaOのモル比は、特に限定されるものではないが、溶解度が小さすぎると硬化がし難くなる一方、溶解度が大きすぎると早く硬化して施工時の流動性が確保しにくいことから、20℃における溶解度が0.1〜5%程度となるように、適宜調整することが好ましい。
また、アルカリ金属リン酸塩は、リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、テトラポリリン酸ナトリウム、リン酸カリウム、ポリリン酸カリウムなどを例示することができる。珪酸ナトリウムと混合するものとして、特に、トリポリリン酸二水素アルミニウムの水和物(AlH10・2HO)を好ましく使用することができる。
酸化亜鉛(ZnO)は、微粉末状であることが好ましく、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムの混合物に、均一に分散される。また、使用する酸化亜鉛の純度は、90%以上であることが好ましい。
(c)混合割合
i)結合剤(珪酸ナトリウム、トリポリリン酸二水素アルミニウム、酸化亜鉛)
結合剤に含まれる珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムの混合比は、トリポリリン酸二水素アルミニウムの割合が大きすぎると、施工後に硬化し難く十分な強度が得られない一方、珪酸ナトリウムの割合が大きすぎると、流動性が悪化すると共に硬化が早く生じて施工が困難になる傾向になる。したがって、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムを、重量比で6:4〜2:8の割合で混合することが好ましく、4:6〜2.5:7.5の割合で混合することがより好ましい。また、スラリーを構成する耐火性骨材等の粉体の粒度分布、粉体嵩等のばらつきは、加水混錬後のスラリーの性質にもばらつきを与え、施工性に悪影響を生ずる場合がある。このような原料粉体のばらつきにも影響されにくいという観点から、実用的に最も好ましい珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムの重量比は、1:約2.8である。
また、上記の混合物に添加する酸化亜鉛は、多すぎると、振動を与えても再び流動性を発現し難くなる一方、少なすぎると、生成される流し込み不定形耐火物に従来と同様の分離現象を生じるおそれがある。したがって、上記混合物100重量部に対し、酸化亜鉛を0.05〜30重量部添加することが好ましく、1〜25重量部添加することがより好ましい。
ii)耐火性骨材と結合剤
耐火性骨材に対する結合剤の割合は、小さすぎると、施工後に十分な強度が得られない一方、大きすぎると、施工後に十分な耐食性が得られない。したがって、耐火性骨材100重量部に対し、結合剤の添加割合を0.1〜10重量部とすることが好ましい。
iii)その他
本発明の流し込み不定形耐火物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、従来の流し込み不定形耐火物に使用されるものを添加してもよい。例えば、アルカリ金属カルボン酸塩、ポリカルボン酸系重合体、アルキルスルホン酸塩などの分散剤を使用することができる。
(d)使用方法
上記の流し込み不定形耐火物粉体は、予め工場などで適量の水を加えて混練することにより、1〜3日程度で自然硬化する。これにより、保存中や運搬中における水の分離現象を防止することができる。流し込み不定形耐火物に対する水の添加量は、例えば、流し込み不定形耐火物粉体100重量部に対して、5〜7重量部とすることができる。
ついで、加水混練後に硬化した流し込み不定形耐火物を、現場まで搬送し、施工直前にバイブレータ等で振動を与える。本発明の流し込み不定形耐火物は、結合剤中に酸化亜鉛が適量添加されているため、振動の付与によって、流動性を容易に発現させることができ、流し込み施工を行うことができる。
流し込み施工の終了後、流し込み不定形耐火物の表面をバーナー等で加熱する。加熱条件は、例えば80〜100℃で3〜5時間程度である。このような強制加熱によって、難溶性の粉末珪酸ナトリウムは、溶解度が高まり、トリポリリン酸二水素アルミニウムと反応する。この結果、施工された流し込み不定形耐火物は、耐火材としての機能を十分発揮できる程度に硬化する。
このように、本発明の流し込み不定形耐火物によれば、保存・運搬時には擬似的な硬化状態により水分離を抑制することができると共に、施工時には振動の付与により流動性を容易に発現させることができるので、施工性を良好にすることができる。
本発明の流し込み不定形耐火物は、各種金属、ガラス、セメント、スラグ、産業廃棄物等を溶解または処理するための高炉、キュポラ、アルミ、銅等およびその他の非鉄金属の溶解・保持炉、各種均熱炉、加熱炉、溝型または坩堝型等の電気誘導加熱炉、各種焼却炉、セメントキルン、ガラス溶解炉等の炉本体を初め、それらに付随した樋、取鍋、蓋、煙道、ダクト、ボイラー等の高温で用いる器具・装置において、各種の高温溶融物に接したり、高温雰囲気にさらされる部位を覆うために流し込み硬化させる目的で、好適に使用することができる。
以下に本発明の実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
流し込み不定形耐火物として、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムの重量混合比をパラメータとして、各材料を表1に示す重量割合で混合したものを使用し、加水混練して混練直後のフロー値を測定すると共に、この混練物を長期保存し、7日後、14日後、21日後、28日後のフロー値をそれぞれ測定した。フロー値の測定は、JIS R2521(アルミナセメントのフロー試験)に準じて行い、流動性を発現させるため、測定直前にバイブレータによる振動を与えた。
表1に示すように、比較例1及び実施例1〜4については、トリポリリン酸二水素アルミニウムに対して珪酸ナトリウムの割合が大きくなるにつれ、フロー値(すなわち流動性)が徐々に低下しているが、実施例4においても、28日後のフロー値は120以上を確保しており、長期保存後も振動の付与により良好な流動性を発現可能であった。一方、比較例2については、珪酸ナトリウムの割合が大きくなり過ぎて、保存期間が長期化すると流動性が急激に低下した、また、比較例3については、珪酸ナトリウムの割合が更に大きくなり、14日後には振動を与えても流動性を発現することはなく、施工が不可能な状態になった。
混練物の保存中は、耐火物原料に対して水が分離していないかを定期的に目視確認したが、実施例1〜4及び比較例1〜3のいずれも、分離現象は生じなかった。
混練物の保存開始から28日後に、バイブレータにより混練物に振動を与えて流動性を発現させてから、40×40×160(mm)の型枠に流し込み、60℃で3時間養生した後に脱枠して、施工性(流動性及び保形性)を評価した。
表1に示すように、実施例2〜3については、施工中の十分な流動性が確保されていると共に、施工後は硬化して十分な保形性が維持され、施工性は良好であった。また、実施例1は保形性が若干低下し、実施例4は流動性が若干低下しているものの、いずれも施工作業は可能であった。これに対し、比較例1は、施工後の十分な硬化強度が得られず、脱枠が困難であった。また、比較例2は、施工中の流動性が十分でなく、型枠への充填が困難であった。比較例3は、上記のとおり保存中に硬化してしまい、施工作業は不可能であった。
Figure 0005106257
次に、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムの混合物に対する酸化亜鉛の重量混合比をパラメータとして、表1の場合と同様に、フロー値の測定、分離現象の目視、及び施工性の評価を行った。
表2に示すように、比較例4及び実施例5〜9については、酸化亜鉛の割合が大きくなるにつれ、フロー値(すなわち流動性)が徐々に低下しているが、実施例9においても、28日後のフロー値は120以上を確保しており、長期保存後も振動の付与により良好な流動性を発現可能であった。一方、比較例5については、酸化亜鉛の割合が大きくなり過ぎたために、21日後には振動を与えても流動性を発現することはなく、施工が不可能な状態になった。
混練物の保存中は、実施例6〜9及び比較例5については、分離現象は生じなかった。実施例5は、若干の水浮きが生じるものの、施工作業は可能であった。一方、比較例4は、水の分離現象が生じやすく、十分撹拌しないと施工作業が行えない状態であった。
施工性については、実施例5〜8は、施工中の十分な流動性が確保されていると共に、施工後は硬化して十分な保形性が維持され、施工性は良好であった。実施例9は、流動性が若干低下しているものの、施工作業は可能であった。これに対し、比較例4は、上記のとおり水の分離現象が生じるために、十分な撹拌を行えば施工性は確保されるが、ミキサーなどを用いた煩雑な撹拌作業が必要であった。また、比較例5は、上記のとおり保存中に硬化してしまい、施工作業は不可能であった。
Figure 0005106257

Claims (1)

  1. 耐火性骨材100重量部に対する結合剤の添加割合が0.1〜10重量部であり、
    前記結合剤は、珪酸ナトリウム及びトリポリリン酸二水素アルミニウムを重量比で6:4〜2:8の割合で混合した混合物100重量部に対し、酸化亜鉛を0.05〜30重量部添加したことを特徴とする流し込み不定形耐火物。
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