JP5104995B2 - 記録装置 - Google Patents

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Description

本発明は、記録装置に関する。
インクを利用した画像やデータ等を記録の一つとして、インクジェット記録方式がある。インクジェット記録方式の原理は、ノズル、スリット、或いは多孔質フィルム等から液体或いは溶融固体インクを吐出(付与)し、紙、布、フィルム等に記録を行うものである。インクを吐出する方法については、静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆるドロップオンデマンド方式(圧力パルス方式)、高熱により気泡を形成、成長させることにより生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されており、これらの方式により、極めて高精細の画像やデータの記録物を得ることができる。
このインクジェット記録方式も含め、インクを利用した記録方式では、浸透媒体や非浸透媒体などの多様な記録媒体に対し高画質で記録を行うために、中間転写体に記録した後、記録媒体に転写する方式が提案されている。
例えば、特許文献1には、飛翔インク滴が中間転写体に転写されるのに先だって、中間転写体の表面に液体を付着させ、その液体上にインクを付着させてから、中間転写体上のインクを液体とともに被印刷体に転写することを特徴とする記録方法について開示されている。
特開平2001−212956号公報
本発明は、中間転写体から記録媒体への硬化性溶液層の転写効率が高い記録装置を提供することを目的とする。
上記課題は、以下の手段により解決される。即ち、
請求項1に係る発明は、
中間転写体と、
外部からの刺激により硬化する硬化性材料を少なくとも含む硬化性溶液を、前記中間転写体上に供給し、硬化性溶液層を形成する硬化性溶液層形成手段と、
前記中間転写体上に形成された前記硬化性溶液層にインクを付与するインク付与手段と、
前記インクが付与された前記硬化性溶液層を記録媒体に接触させ、前記中間転写体から前記記録媒体に前記硬化性溶液層全体を転写する転写手段と、
前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を前記硬化性溶液層に供給する刺激供給手段と、
を有し、
前記刺激供給手段は、前記刺激を前記中間転写体及び前記記録媒体の両方に接触中の前記硬化性溶液層に供給し、且つ前記中間転写体を透過した前記刺激を前記硬化性溶液層に供給する手段であり、
前記インクは、水性インクであり、
前記硬化性溶液は、前記水性インクに対して吸液性を有する材料を含むことを特徴とする記録装置。
請求項2に係る発明は、
前記刺激供給手段は、前記刺激を前記中間転写体及び前記記録媒体の両方に接触前の前記硬化性溶液層には供給しない手段であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
請求項1に係る発明によれば、本構成を有さないものと比較して、中間転写体から記録媒体への硬化性溶液層の転写効率が向上する、といった効果を奏する。
請求項に係る発明によれば、本構成を有さない場合に比べ、転写時の圧力によるインクの不均一な転写を軽減する、とった効果を奏する
第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。 第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。 第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。 参考例に係る記録装置を示す構成図である。
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第1実施形態に係る記録装置101は、図1に示すように、例えば、無端ベルト状の中間転写ベルト10(中間転写体)の周囲に、中間転写ベルト10の移動方向(矢印方向)における上流側から順に、中間転写ベルト10上に硬化性溶液12A(詳細後述)を供給し被硬化層12B(硬化性溶液層)を形成する溶液供給装置12(硬化性溶液層形成手段)、中間転写ベルト10上に形成された被硬化層12Bにインク滴14Aを付与し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14(インク付与手段)、画像Tが形成された被硬化層12Bを記録媒体Pに接触させ圧力を加えることにより画像Tが形成された被硬化層12Bを記録媒体P上に転写する転写装置16(転写手段)、及び中間転写ベルト10表面に残留する被硬化層12Bの残留物や付着した異物(記録媒体Pの紙粉等)等を除去するクリーニング装置20が配置されている。
また、中間転写ベルト10の内側には、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触中に被硬化層12Bを硬化させる刺激を被硬化層12Bに供給する刺激供給装置18(刺激供給手段)が設けられている。すなわち、被硬化層12Bが記録媒体Pと接触している領域に対向して刺激供給装置18を設置している。
中間転写ベルト10は、例えば、3つの支持ロール10Aから10C、及び加圧ロール16B(転写装置16)により内周面側から張力を掛けつつ回転するように支持されて配設されている。また中間転写ベルト10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
中間転写ベルト10の材料としては、一般に中間転写ベルトとして用いられている公知の材料、例えば、各種の樹脂(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等)、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。中間転写ベルト10は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
上記の通り、本実施形態においては、刺激供給装置18が中間転写ベルト10の内側に設けられているため、刺激は中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに供給される。したがって、中間転写ベルト10は、被硬化層12Bに効率よく刺激を供給させるため、刺激透過性の高いものが望ましい。また、中間転写ベルト10は、耐刺激性の高いものが望ましい。
例えば、刺激供給装置18が紫外線照射装置である場合、中間転写ベルト10は、紫外線透過性が高く、紫外線に対する耐久性が高いものが望ましい。具体的には、例えば、中間転写ベルト10の紫外線透過率が70%以上であることが望ましい。中間転写ベルト10の紫外線透過率が上記範囲であることにより、被硬化層12Bの硬化反応に必要な紫外線エネルギーが効率よく被硬化層12Bに供給されると共に、中間転写ベルト10が紫外線を吸収すること等による熱の発生が抑制される。
このような中間転写ベルト10を形成する材料としては、具体的には、例えば、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、ポリイミドフイルム、ポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。
また、本実施形態においては、被硬化層12Bに接する表面における中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γ)が低いことが望ましい。特に、表面自由エネルギー(γ)は、被硬化層12Bに接する表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γ)よりも低いことが望ましく、下記式が成り立つ条件であることがより望ましい。
式:γ−γ>10
表面自由エネルギーの値は、例えば、以下の方法により求めることができる。
具体的には、接触角計CAM−200(KSV社製)を用い、Zisman法を用いた装置内臓のプログラム計算にて算出した。
中間転写ベルト10は、上記表面自由エネルギー(γ)の値を低くするために、被硬化層12Bに接する表面に表面離型層を設けてもよい。
表面離型層に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料等が挙げられ、具体的には、例えば、フッソ樹脂、フッソ変性ウレタン及びシリコーン樹脂、共重合フッソゴム、フッソ樹脂−共重合ビニルエーテル、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合塗料)などの粉体塗料または樹脂チューブ、PTFE(4フッ化エチレン)塗料、PTFE分散ウレタン塗料、さらにETFE(ポリテトラフルオロエチレン)チューブ、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)、PHV(ポリテトラフルオロビニリデン)樹脂材料等が挙げられる。
この中でも、上記刺激に対する透過性の高い材料を用いることが望ましい。また、上記刺激に対する透過性の低い材料を用いる場合は、表面離型層の膜厚を薄くする方が望ましい。
また、中間転写ベルト10の表面を平滑又は凹凸となるように変更しても良い。中間転写ベルト10の表面に接触していた画像が転写により写し取られるため、中間転写ベルト10の表面形状を平滑にすると高グロスの光沢記録物が得られ、中間転写ベルト10の表面に凹凸を設けると凹凸表面の記録物が得られる。
溶液供給装置12は、例えば、硬化性溶液12Aを収納する筐体12C内に、当該硬化性溶液12Aを中間転写ベルト10へ供給する供給ローラ12Dと、供給された硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
溶液供給装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また、溶液供給装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。硬化性溶液12Aの詳細については後述する。
溶液供給装置12は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、ダイコータ、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ベルト10の移動方向上流側から、ブラックインクを付与するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを付与するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを付与するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを付与するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
各記録ヘッド14は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト10表面と記録ヘッド14のノズル面との距離が例えば0.7から1.5mmにして配置されている。
また、各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。
各記録ヘッド14のインク付与方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インク付与可能な方式であれば制限はない。なお、インクの詳細については後述する。
転写装置16は、以下のように構成されている。具体的には、例えば、加圧ロール16B及び支持ロール10Cにより中間転写ベルト10を張架し、非屈曲領域を形成している。中間転写ベルト10の非屈曲領域において、加圧ロール16B及び支持ロール10Cに対向する位置には、記録媒体Pを支持する支持体22が設けられている。また、加圧ロール16Aは、中間転写ベルト10の加圧ロール16Bと対向する位置に配置され、支持体22に設けられた開口部(図示せず)を通して記録媒体Pに接触する。
すなわち、中間転写ベルト10及び記録媒体Pが加圧ロール16A及び16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、支持ロール10C及び支持体22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域においては、被硬化層12Bは中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態となっている。
刺激供給装置18は、中間転写ベルト10の内側に設けられ、転写領域の中間転写ベルト10を介して、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の被硬化層12Bに刺激を供給する。
刺激供給装置18の種類は、適用する硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば、紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18としては硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に紫外線を照射する紫外線照射装置を適用する。また、電子線の照射により硬化する電子線硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に電子線を照射する電子線照射装置を適用する。また、熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、刺激供給装置18として硬化性溶液12A(これにより形成された被硬化層12B)に熱を付与する熱付与装置を適用する。
ここで、紫外線照射装置としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LEDなどが適用される。
ここで、紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、紫外線硬化性材料種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、メタルハライドランプを用いた場合で、積算光量20から1000mJ/cm等である。
また、電子線照射装置としては、例えば、走査型/カーテン型等があり、カーテン型はフィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流となり、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。電子線の波長は一般的に1nmより小さく、またエネルギーは大きいもので数MeVに及ぶが、電子線の波長数がpmのオーダーでエネルギーが数十乃至数百keVが適用される。
ここで、電子線の照射条件としては、特に制限はなく、電子線硬化性材料種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、電子線量は5乃至100kGyレベル等である。
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用できる。
ここで、熱の付与条件としては、特に制限はなく、熱硬化性材料種、被硬化層12Bの厚みなどに応じて選択し得るが、例えば、空気中において、200℃環境で5min等である。
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体Pは、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
以下、本実施形態に係る記録装置101の画像記録プロセスにつき、説明する。
本実施形態に係る記録装置101では、中間転写ベルト10が回転駆動され、まず、溶液供給装置12により、中間転写ベルト10表面に硬化性溶液12Aを供給して、被硬化層12Bを形成する。
ここで、被硬化層12Bの層厚(平均膜厚)は、特に制限はないが、画像形成性と転写性とを両立させる観点から、1μm以上50μm以下が望ましく、3μm以上20μm以下がより望ましい。
また、例えば、被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では被硬化層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
次に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与し、中間転写ベルト10上に供給された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。インクジェット記録ヘッド14は所定の画像情報に基づき、被硬化層12Bの所定の位置にインク滴14Aを付与する。
ここで被硬化層12Bは、インクを付与されたときにインク色材を固定化する特性を有することが好ましい。
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの付与は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの付与がなされる。
次に、転写装置16の加圧ロール16A及び16Bにより記録媒体Pと中間転写ベルト10とを挟み込んで圧力をかける。このとき、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触する(接触開始位置)。その後、支持ロール10C及び支持体22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、被硬化層12Bが中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
ここで、加圧ロール16A及び16Bによって被硬化層12Bに加えられる圧力は、転写効率の向上及び画像乱れの抑制といった観点から、0.001MPa以上2MPa以下、好ましくは0.001MPa以上0.5MPa以下の範囲とすることが望ましい。
次に、刺激供給装置18によって、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)被硬化層12Bに、中間転写ベルト10を介して刺激が供給されることで、被硬化層12Bが硬化する。具体的には、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触した後(接触開始位置を通過した後)に刺激供給を開始し、被硬化層12Bが中間転写ベルト10から剥離される前(剥離位置に到達する前)に刺激供給を終了する。
刺激供給量としては、被硬化層12Bが、中間転写ベルト10から剥離しやすくなる程度に硬化する量であることが望ましい。具体的には、例えば刺激が紫外線である場合、転写効率及び発熱抑制の観点から、積算光量で10mJ/cm以上1000mJ/cm以下範囲が望ましい。
次に、剥離位置において被硬化層12Bが中間転写ベルト10から剥離されることにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
そして、被硬化層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト10表面に残った被硬化層12Bの残留物や異物をクリーニング装置20により除去し、再び、中間転写ベルト10上に、溶液供給装置12により硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
以上のようにして、本実施形態に係る記録装置101では、画像記録が行われる。
本実施形態の記録装置では、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bが接触開始位置を通過した後に刺激供給を開始するため、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bが液状のまま記録媒体Pと接触し、被硬化層12Bと記録媒体Pとの密着性が良好となる。
また、被硬化層12Bが剥離位置に到達するときには、接触開始位置を通過したときに比べ被硬化層12Bの硬化反応が進行しているため、被硬化層12Bの内部凝集力が高くなる。そのため、剥離時の液別れ(すなわち、被硬化層12Bが分離し、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に被硬化層12Bの一部が密着したまま剥離されること)が抑制される。また、接触開始位置を通過したときに比べ被硬化層12Bの硬化反応が進行することにより、被硬化層12B表面の粘着性が下がり剥離性が向上する。
さらに、被硬化層12Bと記録媒体Pとの密着性が良好な状態において、刺激供給により被硬化層12Bの硬化反応が進行するため、被硬化層12B及び記録媒体Pが強固に接着され、被硬化層12Bが薄膜化(フィルム化)することにより、剥離時に被硬化層12Bが中間転写ベルト10に残留することを抑制する。
以上のような作用により、中間転写ベルト10から記録媒体Pへの転写効率が向上する。
本実施形態においては、上記の通り、剥離時の液別れが抑制されるため、転写工程を高速で行っても、転写効率が向上する。
また本実施形態においては、被硬化層12Bが接触開始位置を通過してから被硬化層12Bが硬化するまでの時間が短くなるように、刺激供給装置18の配置位置及び刺激供給の条件を設定することにより、浸透性の記録媒体Pを用いた場合においても、被硬化層12Bが記録媒体Pへ浸透することが抑制される。そのため、浸透性の記録媒体Pを用いても、非浸透性の記録媒体Pを用いた場合と同様に、高画質な画像形成が行われる。
また、上記の通り、本実施形態においては、被硬化層12Bに接する表面における中間転写体の表面自由エネルギー(γ)が、被硬化層12Bに接する表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γ)よりも低いことが望ましい。これにより、被硬化層12Bの記録媒体Pに対する密着性が高くなると共に、被硬化層12Bが中間転写体から剥離しやすくなるため、中間転写体から記録媒体Pへの転写効率がより向上する。
さらに、本実施形態においては、刺激照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置されており、刺激が中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに供給される。そのため、被硬化層12Bのうち、中間転写ベルト10と接している側の方が、記録媒体Pと接している側に比べて、相対的に刺激供給量が高いため、硬化が進みやすく、剥離性が高くなる。つまり、被硬化層12Bの記録媒体Pと接している側は、相対的に硬化反応の進行度が低いため、記録媒体Pとの密着性が高い。一方、被硬化層12Bの中間転写ベルト10と接している側は、相対的に硬化反応の進行度が高いため、中間転写ベルト10との密着性が低い。よって、被硬化層12Bにおいて、記録媒体Pとの接触面における密着性と、中間転写ベルト10との接触面における密着性との差がより大きくなることによって、記録媒体Pからは剥離しにくいが中間転写ベルト10からは剥離しやすい状態となり、中間転写体から記録媒体Pへの転写効率がより向上する。
さらに本実施形態では、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bに、中間転写ベルト10と接しない側からインク滴14Aを付与する。そのため、例えば被硬化層12Bの厚みが、インク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで達しない程度であれば、被硬化層12Bのうち中間転写ベルト10と接しない側に、インク滴14Aが存在する。すなわち、被硬化層12Bのうち中間転写ベルト10と接する側は、硬化性溶液12Aで覆われているため、中間転写ベルト10を透過した刺激がインク滴14Aに阻害されることなく、被硬化層12Bを硬化させる。このため、画像部であるか非画像部であるかによらず、また、画像の色(すなわちインク滴14Aの成分)によらず、被硬化層12Bのうち中間転写ベルト10と接する側が満遍なく硬化する。一方、硬化性材料を含むインクを直接中間転写ベルト10に付与する形態においては、インクの種類や色によって必要な刺激供給量が異なる場合があり、また本実施形態に比べ必要な刺激供給量が多い場合がある。以上の事から、本実施形態では、画像に起因する硬化度のバラツキは発生しにくく、剥離時の液別れが抑制され、転写効率が向上する。
また、上記の通り、本実施形態においては、刺激が中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに供給されるため、装置構成に制約(例えば、刺激を中間転写ベルト10の外側から供給する場合において、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触中に刺激を供給するためには、支持体22及び記録媒体Pに刺激透過性の材料を用いる必要があるとの制約を受けることなど)を受けずに、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触中に刺激を供給することを実現しやすくなる。
さらに、上記の通り、本実施形態においては、刺激供給装置18が中間転写ベルト10の内側に配置されているため、刺激供給装置18が中間転写ベルト10の外側に配置される場合に比べ省スペース化される。
また、本実施形態は、上記の通り、被硬化層12Bにインク滴14Aを付与する形態であるため、中間転写ベルト10上に形成された画像層(インク滴14Aが付与された被硬化層12B)は、画像によらず均一である。よって、中間転写ベルト10上に直接インク滴14Aを付与する形態に比べ、転写時の圧力が一部(例えば画像部)に集中することが無く、画像部及び非画像部に圧力が均一に分散されるため、画像乱れが抑制される。
また、本実施形態は、上記の通り、インク滴14Aが付与された被硬化層12Bに含まれる硬化性溶液12Aが硬化するため、インク滴14Aに硬化性材料が含まれなくても画像が定着される。よって、硬化性材料を含まないインクを用いることにより、インクが油性であるか水性であるかによらず、インクジェット記録ヘッド14における閉塞が起こりにくく、インク吐出安定性が向上する。
なお、本実施形態においては、上記の通り、被硬化層12Bが、接触開始位置を通過した後に刺激供給を開始し剥離位置に到達する前に刺激供給を終了しているが、上記形態に限られない。
具体的には、例えば、被硬化層12Bが、接触開始位置を通過するのと同時に刺激供給を開始してもよく、接触開始位置を通過する前に刺激供給を開始していてもよい。また、例えば、被硬化層12Bが、剥離位置に到達するのと同時に刺激供給を終了してもよく、剥離位置を通過した後に刺激供給を終了してもよい。さらに、刺激供給の開始から終了までの間において、一時的に刺激供給を停止した後に刺激供給を再開してもよい。
また、本実施形態においては、上記の通り、刺激供給装置18が中間転写ベルト10の内側に配置され、刺激が中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに供給されるが、これに限られない。具体的には、例えば、刺激供給装置18を中間転写ベルト10の外側に配置され、中間転写ベルト10を透過せずに、直接(又は、支持体22及び記録媒体Pを透過した後に)中間転写ベルト10上の被硬化層12Bに刺激を供給する形態であっても良い。
また、例えば、刺激供給装置18の本体を中間転写ベルト10の外側に配置しつつ、中間転写ベルト10を透過した刺激を被硬化層12Bに供給する形態もありうる。具体的には、例えば、刺激供給装置18が紫外線照射装置である場合、紫外線照射装置本体を中間転写ベルト10の外側に配置し、例えば光ファイバー等を用いて紫外線を紫外線照射装置本体から中間転写ベルト10の内側に誘導し、中間転写ベルト10を透過した後の紫外線を被硬化層12Bに照射する形態等が挙げられる。
本実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド14から画像データに基づいて選択的にインク滴14Aが付与されてフルカラーの画像が記録媒体Pに記録されるようになっているが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴付与(噴射)装置全般、また版を用いた転写による画像を形成する方法、スクリーン印刷による画像形成方法などにも本発明に係る装置を適用することができる。
<第2実施形態>
図2は、第2実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第2実施形態に係る記録装置102は、図2に示すように、離型剤層24Bを形成する離型剤塗布装置24をさらに備えた形態である。
離型剤塗布装置24は、中間転写ベルト10の移動方向において、溶液供給装置12よりもさらに上流側に配置されている。すなわち離型剤塗布装置24は、中間転写ベルト10の周囲において、溶液供給装置12とクリーニング装置20との間に配置されている。
離型剤塗布装置24は、例えば、離型剤24Aを収納する筐体24C内に、離型剤24Aを中間転写ベルト10へ供給する供給ローラ24Dと、供給された離型剤24Aにより形成された離型剤層24Bの層厚を規定するブレード24Eと、を含んで構成され、必要に応じて、離型剤24Aを加熱溶融させる加熱手段(図示せず)を含んでもよい。
離型剤塗布装置24は、供給ローラ24Dが中間転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また離型剤塗布装置24は、上記構成に限られず、公知の塗布法(例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
離型剤24Aとしては、具体的には、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、炭化水素系・ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、フェニルエーテル、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコールが望ましい。
シリコーン系オイルとしては、例えば、ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルが挙げられる。
ストレートシリコーンオイルとしては、例えばジメチルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルが挙げられる。
変性シリコーンオイルとしては、例えばメチルスチリル変性オイル、アルキル変性オイル、高級脂肪酸エステル変性オイル、フッ素変性オイル、アミノ変性オイルが挙げられる。
ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、ポリブチレングリコールが挙げられ、これらの中でも、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコールが望ましい。
本実施形態に係る記録装置102では、溶液供給装置12により中間転写ベルト10表面に硬化性溶液12Aを供給する前に、予め、離型剤塗布装置24により中間転写ベルト10表面に離型剤24Aを塗布し離型剤層24Bを形成する。
次に、溶液供給装置12により、中間転写ベルト10上の離型剤層24Bに硬化性溶液12Aが供給される。
また、被硬化層12Bが中間転写ベルト10から剥離された後に中間転写ベルト10の表面に残留した離型剤層24Bは、クリーニング装置20によって除去され、再び、中間転写ベルト10上に離型剤塗布装置24により新たに離型剤24Aが塗布され、画像記録プロセスが繰り返される。
これら以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態の記録装置では、離型剤塗布装置24により中間転写ベルト10表面に離型剤24Aを供給し離型剤層24Bを形成する形態となっている。これにより、被硬化層12Bが接する表面における中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γ)の値を低く設定することが容易となる。よって、第1実施形態に比べ、より中間転写ベルト10から記録媒体Pへの被硬化層12Bの転写効率が向上する。
また、本実施形態の記録装置では、上記構成であることにより、中間転写ベルト10の表面状態の経時的な変化による影響を受けにくく経時安定性が向上すると共に、中間転写ベルト10表面のクリーニング性も向上する。
ここで、本実施形態のように離型剤塗布装置24を備えた形態において「表面自由エネルギー(γ)」とは、離型剤層24Bが形成された中間転写ベルト10における、被硬化層12Bが接する表面の表面自由エネルギーを意味する。すなわち、中間転写ベルト10本体の表面における表面自由エネルギーの値が高い場合においても、離型剤層24Bが形成された中間転写ベルト10の「表面自由エネルギー(γ)」が低い場合には、望ましい形態である。
<第3実施形態>
図3は、第3実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第3実施形態に係る記録装置103は、図3に示すように、第1実施形態における中間転写ベルト10の代わりに中間転写ドラム26を配置した形態である。また本実施形態においては、刺激供給装置18よりもさらに記録媒体Pの進行方向下流側に、記録媒体Pに転写された被硬化層12Bをさらに硬化させることにより被硬化層12Bを記録媒体Pに定着させる刺激供給装置28が配置されている。
中間転写ドラム26は、単層構成でもよく、複層構成でもよい。複層構成としては、例えば、円筒状基体と、当該基体表面に被覆される表面層と、を有する構成が挙げられる。中間転写ドラム26は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
円筒状基体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅、ガラス等が挙げられる。
表面層の材質としては、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等が挙げられる。表面層は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
本実施形態においても、上記第1実施形態と同様に、刺激供給装置18が中間転写ドラム26の内側に設けられているため、刺激は中間転写ドラム26を透過した後に被硬化層12Bに供給される。したがって、被硬化層12Bに効率よく刺激を供給させる観点から、中間転写ドラム26は、刺激透過性の高いものが望ましい。また、中間転写ドラム26の耐久性の観点から、中間転写ドラム26は、耐刺激性の高いものが望ましい。
具体的には、例えば、刺激供給装置18が紫外線照射装置である場合、エネルギー効率及び発熱抑制の観点から、中間転写ドラム26の紫外線透過率が70%以上であることが望ましい。そのような中間転写ドラム26の構成としては、具体的には、例えば、石英ガラスで構成されたもの、石英ガラス製の円筒状基体にフッ素系、シリコン系樹脂の表面層を形成したもの等が望ましい。
また、本実施形態においても、被硬化層12Bに接する表面における中間転写ドラム26の表面自由エネルギー(γ)が低いことが望ましく、特に被硬化層12Bに接する表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γ)よりも低いことがより望ましく、下記式が成り立つ条件であることがさらに望ましい。
式:γ−γ>10
上記表面自由エネルギー(γ)の値を低くするという観点から、望ましい中間転写ドラム26の表面層の材料としては、例えば、上記第1実施形態における中間転写ベルト10の表面離型層に用いられる材料と同様のものが挙げられる。
各記録ヘッド14は、中間転写ドラム26表面とヘッドのノズル面との距離が例えば0.3乃至0.7mm程度にして配置されている。また、各記録ヘッド14は、例えば、その長手方向が中間転写ドラムの回転方向と交差(望ましくは直交)して配設されている。
転写装置16は、中間転写ドラム26に対し押し当てて配置される加圧ロール16Aを含んで構成されている。
刺激供給装置28は、刺激供給装置18と同種の刺激を供給するものであり、刺激供給装置18と同様のものが用いられる。
本実施形態に係る記録装置103では、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与し、中間転写ドラム26上に形成された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの付与は、剛体である中間転写ドラム26上で行われる。つまり、ドラム表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの付与がなされる。
次に、インク滴14Aを付与された被硬化層12Bは、転写装置16の加圧ロール16Aにより圧力を受けることによって記録媒体Pに接触する。そして、被硬化層12Bが記録媒体Pに接触する位置(接触開始位置)において、刺激供給装置18は、中間転写ドラム26及び記録媒体Pの両方に接触した被硬化層12Bへの刺激供給を開始する。
その後、被硬化層12Bは中間転写ドラム26から剥離され、さらにその後に被硬化層12Bへの刺激供給が終了する。
次に、中間転写ドラム26から剥離され刺激供給装置18による刺激供給が終了した記録媒体P上の被硬化層12Bは、刺激供給装置28によりさらに刺激を供給され、さらに硬化することにより記録媒体Pに定着する。
これら以外は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本実施形態の記録装置では、中間転写体として中間転写ドラム26を用いているが、第1実施形態の記録装置と同様に、中間転写ドラム26から記録媒体Pへの被硬化層12Bの転写効率が向上する。具体的な作用は、中間転写体として中間転写ベルト10を用いた上記第1実施形態と同様である。
なお、本実施形態においては、上記の通り、被硬化層12Bが、接触開始位置において刺激供給を開始し剥離位置を通過した後に刺激供給を終了しているが、上記形態に限られない。とりうる具体的な形態は、上記第1実施形態と同様である。
また、本実施形態においては、上記の通り、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触中及び接触後に刺激を供給しているが、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触直前及び接触中の少なくとも何れか一方において刺激が供給されれば、上記形態に限られない。
さらに、本実施形態においては、刺激供給装置28を用いて形態であるが、刺激供給装置28を用いない形態でもよい、
また、本実施形態においては、上記の通り、刺激供給装置18が中間転写ドラム26の内側に配置され、刺激が中間転写ドラム26を透過した後に被硬化層12Bに供給されるが、これに限られない。とりうる具体的な形態は、具体的な作用は、中間転写体として中間転写ベルト10を用いた上記第1実施形態と同様である。
<参考例>
図4は、参考例に係る記録装置を示す構成図である。
参考例に係る記録装置104は、図4に示すように、第3実施形態における刺激供給装置18の配置位置を、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触直前のみにおいて被硬化層12Bに刺激が供給されるようにした形態である。すなわち刺激供給装置18は、加圧ロール16Aにより中間転写ドラム26上の被硬化層12Bが記録媒体Pに接触する位置(接触開始位置)よりも、中間転写ドラム26の回転方向において上流側に配置した形態である。また本参考例に係る記録装置104においては、硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料として、カチオン硬化性材料を用いている。
ここで、「接触直前に刺激を供給」とは、被硬化層12Bが液状を保ったまま接触開始位置(被硬化層12Bが記録媒体Pに接触する位置)に到達する条件で、被硬化層12Bが接触開始位置に到達する前に、被硬化層12Bへの刺激供給を開始することを言う。すなわち、被硬化層12Bが接触開始位置に到達する前に刺激を供給することにより、接触開始位置において被硬化層12Bが硬化して液状ではなくなっている場合は、「接触直前に刺激を供給」ではない。
また、「接触直前のみにおいて刺激を供給」とは、被硬化層12Bが液状を保ったまま接触開始位置に到達する条件で、被硬化層12Bが接触開始位置に到達する前において、被硬化層12Bへの刺激供給を開始し終了することを言う。
本参考例においては、上記の通り、硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料として、カチオン硬化性材料を用いている。カチオン硬化性材料は硬化速度が比較的遅く、刺激供給を開始し終了した後も、徐々に硬化反応が進む。そのため、接触直前のみにおいて刺激を供給することにより、被硬化層12Bが液状を保ったまま接触開始位置に到達し、その後刺激を供給しなくてもさらに硬化反応が進み、被硬化層12Bが硬化し剥離しやすくなった状態で剥離位置(被硬化層12Bが中間転写ドラム26から剥離される位置)に到達する。
具体的には、例えば、硬化性材料としてカチオン硬化性材料を用いた場合において、前記「接触直前に刺激を供給」とは、被硬化層12Bへの刺激供給を開始してから、被硬化層12Bが接触開始位置に到達するまでの時間が、10秒以下であることを言う。
本参考例に係る記録装置104では、上記の通り、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与された被硬化層12Bが、接触開始位置に到達する直前に、刺激供給装置18による刺激供給が開始され終了される。
次に、刺激を供給された被硬化層12Bが、転写装置16の加圧ロール16Aにより圧力を受けることによって記録媒体Pに接触し(接触開始位置)、その後、中間転写ドラム26から剥離される(剥離位置)。
これら以外は、第3実施形態と同様であるので、説明を省略する。
本参考例の記録装置では、中間転写ドラム26上の被硬化層12Bが、接触開始位置に到達する直前に刺激供給を開始し終了するが、中間転写ドラム26上の被硬化層12Bが液状のまま記録媒体Pと接触するため、被硬化層12Bと記録媒体Pとの密着性が良好となる。
また、被硬化層12Bが接触開始位置を通過し剥離位置に到達するまでの間に硬化が進むため、被硬化層12Bが剥離位置に到達するときには、被硬化層12Bが硬化し内部凝集力が高くなる。そのため、剥離時の液別れ(すなわち、被硬化層12Bが分離し、中間転写ドラム26及び記録媒体Pの両方に被硬化層12Bの一部が密着したまま剥離されること)が抑制される。また、被硬化層12Bが硬化していることにより、被硬化層12B表面の粘着性が下がり剥離性が向上する。
さらに、被硬化層12Bと記録媒体Pとの密着性が良好な状態において、硬化性材料の硬化反応が進むため、被硬化層12B及び記録媒体Pが強固に接着され、被硬化層12Bが薄膜化(フィルム化)することにより、剥離時に被硬化層12Bが中間転写ドラム26に残留することを抑制する。
以上のような作用により、中間転写ドラム26から記録媒体Pへの転写効率が向上する。
また、本参考例においては、上記の通り、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触直前にのみ刺激を供給しているが、被硬化層12B及び記録媒体Pの接触直前及び接触中の少なくとも何れか一方において刺激が供給されれば、上記形態に限られない。とりうる具体的な形態は、上記第1実施形態と同様である。
また、本参考例においては、上記の通り、硬化性材料としてカチオン硬化性材料を用いているが、これに限られず、例えば、硬化性材料としてラジカル硬化性材料を用いてもよい。
なお、硬化性材料としてラジカル硬化性材料を用いた場合、前記「接触直前に刺激を供給」とは、被硬化層12Bへの刺激供給を開始してから、被硬化層12Bが接触開始位置に到達するまでの時間が、5秒以下であることを言う。
以下、硬化性溶液12Aの詳細について説明する。
硬化性溶液12Aは、外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料を少なくとも含んでいる。ここで、硬化性溶液12Aに含有される「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」とは、外部からの刺激によって硬化し、「硬化性樹脂」となる材料を意味する。具体的には、例えば、硬化性のモノマー、硬化性のマクロマー、硬化性のオリゴマー、硬化性のプレポリマー等が挙げられる。
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。紫外線硬化性材料は、硬化がし易く、他のものに比べ硬化速度も速く、取り扱いやすいため、最も望ましい。電子線硬化性材料は、重合開始剤が不要であり、硬化後の層の着色制御が実施しやすい。熱硬化性材料は、大掛りな装置を必要とすることなく硬化される。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用することもできる。
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、及び紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、硬化性溶液12Aは、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに硬化性溶液12Aは、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
ここで、紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、アルコール/多価アルコール/アミノアルコール類のアクリル酸エステル、アルコール/多価アルコール類のメタクリル酸エステル、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル芳香族アミド類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを所定の重合度で重合させたものの他、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
硬化反応がラジカル反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシケトン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、 α-アミノケトン、α-アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
また硬化反応がカチオン反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
電子線硬化性材料を硬化することにより得られる「電子線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、及び電子線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。
ここで、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、電子線硬化性のプレポリマーとしては、紫外線硬化性の材料と同様のものが挙げられる。
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、硬化性溶液12Aは、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
ここで、熱硬化性のモノマーとしては、例えば、フェノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン、シアヌリル酸アミド、尿素、グリセリン等のポリアルコール、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等の酸などが挙げられる。熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、熱硬化性のプレポリマーとしては、これらのモノマーを所定の重合度で重合させたものや、エポキシプレポリマー、ポリエステルプレポリマーなどが挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
以上のように、硬化性材料は、紫外線、電子線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
上記硬化性材料の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。このような硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性材料(上記紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料等)が挙げられる。
硬化性材料は、中間転写体等との濡れ性を考慮して、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。また硬化性材料は、硬化速度と硬化度を考慮すると、多官能のプレポリマーを含有するのが望ましい。
また、硬化性溶液には、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
また、硬化性溶液は、硬化後の層の着色制御を行う目的で各種色材を含んでいてもよい。
また、硬化性溶液の粘度は、5mPa・s〜10000mPa・s、望ましくは10mPa・s〜1000mPa・s、より望ましくは15mPa・s〜500mPa・sの範囲が挙げられる。また、硬化性溶液の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
上記硬化性溶液12Aは、インク中の着色剤を固定化する材料を含むことが望ましい。
また、これらの材料としては、インクに対して吸液性を有する材料(吸液性材料)が好ましい。吸液性材料とは、吸液性材料とインクを重量比30:100で24時間混合した後、混合液中からフィルターにより吸液性材料を取り出した時、吸液性材料の重量がインク混合前に対して5%以上増加するものである。
このように、硬化性溶液12Aがインク吸液性材料を含有することによって、速やかにインク液体成分(例えば、水、水性溶媒)が、樹脂層に取り込まれ画像が固定化するため、インク間の境界部での混色や、画像均一性、さらには転写時の圧力によるインクの不均一な転写を軽減することが出来る。
吸液性材料は、例えば樹脂(以下、吸液樹脂と称する場合がある)や、表面親インク性を持たせた無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなど)等があげられ、用いるインクに応じて適宜選択される。
具体的には、インクとして水性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸水材料を用いることが望ましい。また、インクとして油性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸油材料を用いることが望ましい。
吸水材料としては、具体的には、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸及びその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、ポリマレイン酸およびその塩、スチレン−マレイン酸及びその塩から構成される共重合体等、前記それぞれの樹脂のスルホン酸変性体、それぞれの樹脂のリン酸変性体等、等が挙げられ、望ましくは、ポリアクリル酸およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、が挙げられる。これら樹脂は、未架橋でも架橋されていてもよい。
また吸油材料としては、具体的には、例えば、ヒドロキシステアリン酸、コレステロール誘導体、ベンジリデンソルビトールといった低分子ゲル化剤や、ポリノルボルネン、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種ロジン類等が挙げられ、望ましくは、ポリノルボルネン、ポリプロピレン、ロジン類が挙げられる。
吸液性材料が粒子状である場合には、硬化性溶液12Aの安定性と画質との両立といった観点から、体積平均粒径が0.05μm以上25μmの範囲であることが望ましく、0.05μm以上5μm以下がより望ましい。
この吸液性材料の硬化性溶液12A全体に対する比率は、例えば質量比で10%以上望ましくは20%以上であり、より望ましくは25%以上70%以下の範囲が挙げられる。
次に、硬化性溶液12Aに含まれる、その他の添加剤について説明する。
硬化性溶液12Aは、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含んでもよい。
この機能を有する成分は、上記吸液樹脂粒子を構成する樹脂(樹脂吸水性樹脂)の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等などが挙げられる。
また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が好適に挙げられる。
無機電解質としては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン及び、アルミニウムイオン、バリウムイオン、カルシウムイオン、銅イオン、鉄イオン、マグネシウムイオン、マンガンイオン、ニッケルイオン、スズイオン、チタンイオン、亜鉛イオン等の多価金属イオンと、塩酸、臭酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、チオシアン酸、及び、酢酸、蓚酸、乳酸、フマル酸、フマル酸、クエン酸、サリチル酸、安息香酸等の有機カルボン酸及び、有機スルホン酸の塩等が挙げられる。
具体例としては、塩化リチウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、硫酸ナトリウム、硝酸カリウム、酢酸ナトリウム、蓚酸カリウム、クエン酸ナトリウム、安息香酸カリウム等のアルカリ金属類の塩、及び、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸ナトリウムアルミニウム、硫酸カリウムアルミニウム、酢酸アルミニウム、塩化バリウム、臭化バリウム、ヨウ化バリウム、酸化バリウム、硝酸バリウム、チオシアン酸バリウム、塩化カルシウム、臭化カルシウム、ヨウ化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、リン酸二水素カルシウム、チオシアン酸カルシウム、安息香酸カルシウム、酢酸カルシウム、サリチル酸カルシウム、酒石酸カルシウム、乳酸カルシウム、フマル酸カルシウム、クエン酸カルシウム、塩化銅、臭化銅、硫酸銅、硝酸銅、酢酸銅、塩化鉄、臭化鉄、ヨウ化鉄、硫酸鉄、硝酸鉄、蓚酸鉄、乳酸鉄、フマル酸鉄、クエン酸鉄、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウム、硫酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、塩化マンガン、硫酸マンガン、硝酸マンガン、リン酸二水素マンガン、酢酸マンガン、サリチル酸マンガン、安息香酸マンガン、乳酸マンガン、塩化ニッケル、臭化ニッケル、硫酸ニッケル、硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、硫酸スズ、塩化チタン、塩化亜鉛、臭化亜鉛、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、チオシアン酸亜鉛、酢酸亜鉛等の多価金属類の塩等が挙げられる。
有機酸としては、具体的にはアルギニン酸、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、システイン、シュウ酸、フマル酸、フタル酸、マレイン酸、マロン酸、リシン、リンゴ酸、及び、一般式(1)で表される化合物、これら化合物の誘導体などが挙げられる。


ここで、式中、Xは、O、CO、NH、NR、S、又はSOを表す。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。Rはアルキル基を表し、Rとして望ましくは、CH,C、COHである。なお、Rは式中に含んでいてもよいし、含んでいなくても構わない。Xとして望ましくは、CO、NH、NR,Oであり、より望ましくは、CO、NH、Oである。Mは、水素原子、アルカリ金属又はアミン類を表す。Mとして望ましくは、H、Li、Na、K、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等であり、より望ましくは、H、Na,Kであり、更に望ましくは、水素原子である。nは、3以上7以下の整数である。nとして望ましくは、複素環が6員環又は5員環となる場合であり、より望ましくは、5員環の場合である。mは、1又は2である。一般式(1)で表される化合物は、複素環であれば、飽和環であっても不飽和環であってもよい。lは、1以上5以下の整数である。
一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、フラン、ピロール、ピロリン、ピロリドン、ピロン、ピロール、チオフェン、インドール、ピリジン、キノリン構造を有し、更に官能基としてカルボキシル基を有する化合物が挙げられる。具体的には、2−ピロリドン−5−カルボン酸、4−メチル−4−ペンタノリド−3−カルボン酸、フランカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、5−メチル−2−フランカルボン酸、2,5−ジメチル−3−フランカルボン酸、2,5−フランジカルボン酸、4−ブタノリド−3−カルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、2−ピロン−6−カルボン酸、4−ピロン−2−カルボン酸、5−ヒドロキシ−4−ピロン−5−カルボン酸、4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、3−ヒドロキシ−4−ピロン−2,6−ジカルボン酸、チオフェンカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、2,3−ジメチルピロール−4−カルボン酸、2,4,5−トリメチルピロール−3−プロピオン酸、3−ヒドロキシ−2−インドールカルボン酸、2,5−ジオキソ−4−メチル−3−ピロリン−3−プロピオン酸、2−ピロリジンカルボン酸、4−ヒドロキシプロリン、1−メチルピロリジン−2−カルボン酸、5−カルボキシ−1−メチルピロリジン−2−酢酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、ピリジンジカルボン酸、ピリジントリカルボン酸、ピリジンペンタカルボン酸、1,2,5,6−テトラヒドロ−1−メチルニコチン酸、2−キノリンカルボン酸、4−キノリンカルボン酸、2−フェニル−4−キノリンカルボン酸、4−ヒドロキシ−2−キノリンカルボン酸、6−メトキシ−4−キノリンカルボン酸等の化合物が挙げられる。
有機酸としては、望ましくは、クエン酸、グリシン、グルタミン酸、コハク酸、酒石酸、フタル酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。より望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ビリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩である。さらに望ましくは、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、フランカルボン酸、クマリン酸、若しくは、これらの化合物誘導体、又は、これらの塩である。
有機アミン化合物としては、1級、2級、3級及び4級アミン及びそれらの塩のいずれであっても構わない。具体例としては、テトラアルキルアンモニウム、アルキルアミン、ベンザルコニウム、アルキルピリジウム、イミダゾリウム、ポリアミン、及び、それらの誘導体、又は、塩等が挙げられる。具体的には、アミルアミン、ブチルアミン、プロパノールアミン、プロピルアミン、エタノールアミン、エチルエタノールアミン、2−エチルヘキシルアミン、エチルメチルアミン、エチルベンジルアミン、エチレンジアミン、オクチルアミン、オレイルアミン、シクロオクチルアミン、シクロブチルアミン、シクロプロピルアミン、シクロヘキシルアミン、ジイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、ジ2−エチルヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、ジフェニルアミン、ジブチルアミン、ジプロピルアミン、ジヘキシルアミン、ジペンチルアミン、3−(ジメチルアミノ)プロピルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルエチレンジアミン、ジメチルオクチルアミン、1,3−ジメチルブチルアミン、ジメチル−1,3−プロパンジアミン、ジメチルヘキシルアミン、アミノ−ブタノール、アミノ−プロパノール、アミノ−プロパンジオール、N−アセチルアミノエタノール、2−(2−アミノエチルアミノ)−エタノール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−(2−アミノエトキシ)エタノール、2−(3,4−ジメトキシフェニル)エチルアミン、セチルアミン、トリイソプロパノールアミン、トリイソペンチルアミン、トリエタノールアミン、トリオクチルアミン、トリチルアミン、ビス(2−アミノエチル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)1,3−プロパンジアミン、ビス(3−アミノプロピル)メチルアミン、ビス(2−エチルヘキシル)アミン、ビス(トリメチルシリル)アミン、ブチルアミン、ブチルイソプロピルアミン、プロパンジアミン、プロピルジアミン、ヘキシルアミン、ペンチルアミン、2−メチル−シクロヘキシルアミン、メチル−プロピルアミン、メチルベンジルアミン、モノエタノールアミン、ラウリルアミン、ノニルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレシジアミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、ジヒドロキシエチルステアリルアミン、2−ヘプタデセニル−ヒドロキシエチルイミダゾリン、ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルピリジニウムク口ライド、ステアラミドメチルビリジウムクロライド、ジアリルジメチルアンモニウムクロライド重合体、ジアリルアミン重合体、モノアリルアミン重合体等が挙げられる。
より望ましくは、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、エタノールアミン、プロパンジアミン、プロピルアミンなどが使用される。
これら凝集剤の中でも、多価金属塩(Ca(NO)、Mg(NO)、Al(OH)、ポリ塩化アルミニウム等)が好適に用いられる。
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが望ましい。より望ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に望ましくは、1質量%以上15質量%以下である。
以下、インクの詳細について説明する。
インクとしては、溶媒として水性溶媒を含む水性インク、溶媒として油性溶媒を含む油性インク、紫外線硬化型インク、相変化型のワックスインクなどが挙げられる。本実施形態においては、水性インク又は油性インクを用い、記録媒体として非浸透媒体を用いた場合でも、ヒーター等により溶媒を揮発させることなく良い画像定着性が得られる。
水性インクとしては、例えば、記録材として水溶性染料又は顔料を水性溶媒に分散又は溶解したインクが挙げられる。また、油性インクとしては、例えば、記録材として油溶性染料を油性溶媒に溶解したインク、記録材として染料又は顔料を逆ミセル化して分散したインクが挙げられる。
油性インクを用いる場合は、低揮発性又は不揮発性の溶媒を用いた油性インクを用いることが望ましい。油性インクの溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、ヘッドノズル端部において、溶媒揮発によるインク状態変化が起きにくいため、ヘッドノズル耐目詰まり性が良い。また油性インクの溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、インク滴を受容した被硬化層が記録媒体に転写された後に、油性インクの溶媒が記録媒体に浸透しても、カール・カックルが生じにくい。さらに油性インクの溶媒は、カチオン硬化性のものであってもよい。
本実施形態においては、インクとして水性インクを用いることが望ましい。水性インクを用いることで、紫外線硬化型インクや相変化型インクなどに比べ、インクジェットヘッドやメンテナンス時、長期保管時の信頼性を向上することができる。この場合、上記硬化性溶液12Aに含まれる吸液性材料としては、吸水材料を用いることが望ましい。
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いられるが、耐久性の点で顔料であること望ましい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用でき、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用する方法もある。
黒色顔料の具体例としては、Raven7000,Raven5750,Raven5250,Raven5000 ULTRAII,Raven 3500,Raven2000,Raven1500,Raven1250,Raven1200,Raven1190 ULTRAII,Raven1170,Raven1255,Raven1080,Raven1060(以上コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R,Regal330R,Regal660R,Mogul L,Black Pearls L,Monarch 700,Monarch 800,Monarch 880,Monarch 900,Monarch 1000,Monarch 1100,Monarch 1300,Monarch 1400(以上キャボット社製)、Color Black FW1,Color Black FW2,Color Black FW2V,Color Black 18,Color Black FW200,Color Black S150,Color Black S160,Color Black S170,Printex35,Printex U,Printex V,Printex140U,Printex140V,Special Black 6,Special Black 5,Special Black 4A,Special Black4(以上デグッサ社製)、No.25,No.33,No.40,No.47,No.52,No.900,No.2300,MCF−88,MA600,MA7,MA8,MA100(以上三菱化学社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用される顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用される。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いられる。
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000乃至50000のものが挙げられる。
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1乃至100質量%が挙げられる。
色材として水に自己分散可能な顔料も用いられる。水に自己分散可能な顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散可能な顔料が得られる。
また、水に自己分散可能な顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−157、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、Cab−o−jet−260M、Cab−o−jet−250C、Cab−o−jet−270Y、Cab−o−jet−1027R、Cab−o−jet−554B、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用される。
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
更に、樹脂により被覆された顔料等も使用される。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等も使用される。
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料も用いられる。
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して5乃至30質量%の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 (Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れ、所定の測定法に従って行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
次に水性溶媒について説明する。水性溶媒としては、水が挙げられ、特にイオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することがよい。また、水性溶媒と共に、水溶性有機溶媒を用いてもよい。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等も用いられる。
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられる。
次に、油性溶媒について説明する。油性溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、含窒素溶媒、植物油等の有機溶媒が使用される。脂肪族炭化水素の例として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルヘキサン、n−オクタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、ノナン、デカン等が挙げられ、アイソパーなどのn−パラフィン系溶剤、iso−パラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤などのパラフィン系溶剤でも構わない。また、芳香族炭化水素としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエータル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。その他、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のグリコール誘導体を溶媒として用いても良い。植物油としては、乾性油、半乾性油、不乾性油などが挙げられる。乾性油としては、荏の油、アマニ油、桐油、ケシ油、くるみ油、紅花油、ひまわり油などが挙げられ、半乾性油としては菜種油、不乾性油としては、ヤシ油が挙げられる。上記溶媒は単独もしくは二種以上併用しても良い。
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、その他、必要に応じて、界面活性材が添加される。
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
以下、界面活性剤の具体例を列挙する。
アニオン性界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が使用でき、望ましくは、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩等が用いられる。
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、アルキルアルカノールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物等が挙げられ、望ましくは、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アセチレングリコール、アセチレングリコールのポリオキシエチレン付加物が用いられる。
その他、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤や、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤、スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント等も使用される。
これらの界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると例えば3乃至20の範囲が挙げられる。
これらの界面活性剤の添加量は、例えば0.001乃至5質量%、望ましくは0.01乃至3質量%の範囲が挙げられる。
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加される。
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、例えば20乃至45mN/mの範囲が挙げられる。
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下、望ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下の範囲が挙げられる。ヘッド吐出性の観点からは、インクの粘度は20mPa・s以下が望ましい。また、インクの粘度は、上記硬化性溶液の粘度に比べ低いことがよい。
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
以下、本発明を、実施例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
上記第1実施形態と同様な構成の記録装置(図1参照)を用いて、溶液供給装置により硬化性溶液を中間転写ベルトに供給して被硬化層を形成し、その被硬化層に記録ヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ被硬化層を接触させながら刺激供給手段により刺激を供給し被硬化層を硬化させて中間転写ベルトから剥離し、評価を行った。条件は以下の通りである。なお、下記紫外線照射強度及び積算光量は、中間転写ベルトを透過した後の紫外線照射強度及び積算光量である。
・中間転写ベルト:厚さ0.1mm、ベルト幅350mm、外径Φ168mmのETFE製無端ベルトにフッ素系樹脂を被覆したもの(プロセス速度:400mm/s)
・溶液供給装置:グラビアロールコーター(被硬化層の層厚15μm)
・各記録ヘッド:ピエゾ方式の記録ヘッド(解像度解像度1200×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数、以下同様である)、ドロップサイズ2pL)
・転写装置(加圧ロール):径30mmの鋼製パイプにフッ素系樹脂を被覆したもの(中間転写ベルトに対する押し当て力:線圧2kgf/cm)
・刺激供給装置:メタルハライドランプ(紫外線照射強度240W/cmを積算光量で100mJ/cm照射)
・記録媒体:アート紙(OK金藤)
また、硬化性溶液、及び各色のインクは、以下のように作製したものを用いた。
−硬化性溶液(ラジカル硬化性材料)−
・ポリウレタンアクリレート:40重量部
・アクリロイルモルホリン(UV硬化モノマー):20.0重量部
・ポリアクリル酸ナトリウム(吸液樹脂、ボールミル粉砕により数平均粒子径2.5μmとしたもの):35.0重量部
・メチルベンゾイルベンゾエート(光重合開始剤):5重量部
−ブラックインク−
Cab−o−jet−300(キャボット社製)を超音波ホモジナイザーで30分間処理した後、遠心分離処理(7000r.p.m.,20分間)して顔料分散液(カーボン濃度12.8%)を得た。
次に、下記の各成分を十分混合し、1μmフィルターで加圧ろ過し、インクを調製した
・上記顔料分散液:40重量部
・グリセリン:20重量部
・サーフィノール465:1.5重量部
・純水:35重量部
−インク作成方法1−
顔料30重量部に、スチレン−マレイン酸共重合体のナトリウム中和塩を3重量部加え、さらにイオン交換水を加えて、総量を300重量部とした。この液を超音波ホモジナイ
ザーを用いて分散した。この液を遠心分離装置で、遠心分離をし、残部分100重量部を除去した。この上澄み液を1μmのフィルターに通過させて、分散液を得た。適量の前記分散液に、グリセリン10重量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5重量部、界面活性剤0.03重量部、イソプロピルアルコール3重量部、イオン交換水及び水酸化ナトリウムを適量加え、総量が100重量部、顔料濃度が5重量%となるように調整した。これを、混合し、1μmのフィルターを通過させることにより、目的とするインクを得た。
−シアンインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.アシッドブルー199:5重量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.3重量部
・グリセリン:15重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5重量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0重量部
・イソプロピルアルコール:3重量部
・イオン交換水:残部
計100重量部
−マゼンタインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.アシッドレッド52:3.5重量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.3重量部
・グリセリン:20重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5重量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0重量部
・イオン交換水:残部
計100重量部
−イエローインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.ダイレクトイエロ86:4.0重量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.4重量部
・グリセリン:15重量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:10重量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0重量部
・イオン交換水:残部
計100重量部
(実施例2)
上記第2実施形態と同様な構成の記録装置(図2参照)を用いて、離型剤塗布装置により離型剤を中間転写ベルトに供給して離型剤層を形成し、その離型剤層の上に溶液供給装置により硬化性溶液を供給して被硬化層を形成した以外は、実施例1と同様に行った。
なお、離型剤塗布装置としてはロールコータを用い、離型剤であるポリプロピレンワックスを加熱し、層厚が1.5μmとなるように塗布して離型剤層を形成した。
(実施例3)
上記第3実施形態と同様な構成の記録装置(図3参照)を用いて、溶液供給装置により硬化性溶液を中間転写ドラムに供給して被硬化層を形成し、その被硬化層に記録ヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、転写装置により記録媒体へ被硬化層を接触させながら刺激供給手段により刺激を供給し被硬化層を硬化させて中間転写ベルトから剥離した。その後、定着装置により、さらに刺激を供給して被硬化層を完全に硬化させて、評価を行った。中間転写ドラム及び定着装置の詳細は以下の通りであり、それ以外の条件は、実施例1と同様である。
・中間転写ドラム:外径500mmのガラス製パイプにテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体を被覆したもの(ドラム(プロセス速度):125mm/s)
・定着装置:メタルハライドランプ(紫外線照射強度240W/cmを、積算光量で200mJ/cm照射)
(参考例4)
上記参考例の記録装置と同様な構成の記録装置(図4参照)を用いて、溶液供給装置により硬化性溶液を中間転写ドラムに供給して被硬化層を形成し、その被硬化層に記録ヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、刺激供給手段により刺激を供給した後、被硬化層が未硬化の状態で転写装置により記録媒体へ被硬化層を接触させ、被硬化層を硬化した後に中間転写ベルトから剥離した。その後、定着装置により、さらに刺激を供給して被硬化層を完全に硬化させて、評価を行った。用いた硬化性溶液の作製方法は以下の通りであり、それ以外の条件は、実施例3と同様である。
−硬化性溶液(カチオン硬化性材料)−
・(3’,4’−エポキシシクロヘキサン)メチル−3,4−エポキシシクロへキサンカルボキシレート: 60質量部
・1−メチル−4−2−メチルオキシラニル7−オキサビシクロ4.1.0ヘプタン、 30質量部
上記組成に対し、トリアリールスルフォニウムヘキサフルオロホスフェイト(光重合開始剤)2質量部を加え、4−ビニルシクロヘキセン−1.2−エポキシドを加え粘度を120mPa・sになるように調整した。
<中間転写体から記録媒体への転写性の評価>
アート紙(OK金藤 王子製紙社製)を記録媒体として、5枚連続で印字テストを実施。テスト後の中間転写体上の残留物を目視観察することによって被硬化層の剥離性を評価し、残留物が単位面積あたり面積で10%未満である場合には転写性良好と判断し、10%以上である場合には転写性不良と判断した。
実施例1から実施例3及び参考例4においては、中間転写上の残留物が5%未満の結果が得られ、良好な剥離性が確認された。
10 中間転写ベルト(中間転写体)
12 溶液供給装置(硬化性溶液層形成手段)
12A 硬化性溶液
12B 被硬化層(硬化性溶液層)
14 インクジェット記録ヘッド(付与手段)
14A インク滴
16 転写装置(転写手段)
18 刺激供給装置(刺激供給手段)
24 離型剤塗布装置
24A 離型剤
24B 離型剤層
26 中間転写ドラム(中間転写体)
28 刺激供給装置
101、102、103、104 記録装置

Claims (2)

  1. 中間転写体と、
    外部からの刺激により硬化する硬化性材料を少なくとも含む硬化性溶液を、前記中間転写体上に供給し、硬化性溶液層を形成する硬化性溶液層形成手段と、
    前記中間転写体上に形成された前記硬化性溶液層にインクを付与するインク付与手段と、
    前記インクが付与された前記硬化性溶液層を記録媒体に接触させ、前記中間転写体から前記記録媒体に前記硬化性溶液層全体を転写する転写手段と、
    前記硬化性溶液層を硬化させる前記刺激を前記硬化性溶液層に供給する刺激供給手段と、
    を有し、
    前記刺激供給手段は、前記刺激を前記中間転写体及び前記記録媒体の両方に接触中の前記硬化性溶液層に供給し、且つ前記中間転写体を透過した前記刺激を前記硬化性溶液層に供給する手段であり、
    前記インクは、水性インクであり、
    前記硬化性溶液は、前記水性インクに対して吸液性を有する材料を含むことを特徴とする記録装置。
  2. 前記刺激供給手段は、前記刺激を前記中間転写体及び前記記録媒体の両方に接触前の前記硬化性溶液層には供給しない手段であることを特徴とする請求項1に記載の記録装置。
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