以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、実質的に同じ機能を有する部材には、全図面を通して同じ符合を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る記録装置を示す構成図である。
第1実施形態に係る記録装置101は、図1に示すように、例えば、無端ベルト状の中間転写ベルト10(中間転写体)の周囲に、中間転写ベルト10の移動方向(矢印方向)における上流側から順に、中間転写ベルト10上に硬化性溶液12A(第1の硬化性溶液)を供給し被硬化層12B(第1の硬化性溶液層)を形成する溶液供給装置12(第1の硬化性溶液層形成手段)、中間転写ベルト10上に形成された被硬化層12Bにインク滴14Aを付与し画像Tを形成するインクジェット記録ヘッド14(インク付与手段)、画像Tが形成された被硬化層12Bを記録媒体P上に転写する転写装置16(転写手段)、及び中間転写ベルト10表面に残留する被硬化層12Bの残留物や付着した異物(記録媒体Pの紙粉等)等を除去するクリーニング装置20が配置されている。
また、記録媒体Pの搬送方向(矢印)における転写装置16の上流側には、記録媒体Pの表面(被硬化層12Bが転写される面)に硬化性溶液24A(第2の硬化性溶液)を供給し被硬化層24B(第2の硬化性溶液層)を形成する溶液供給装置24(第2の硬化性溶液層形成手段)が配置されている。
さらに、中間転写ベルト10の内側には、記録媒体P表面に形成された被硬化層24Bと、被硬化層24Bに接触した被硬化層12Bと、に紫外線を照射する紫外線照射装置18が配置されている。すなわち、紫外線照射装置18は、被硬化層12Bが中間転写ベルト10及び被硬化層24Bに接触している領域に対向して設置されている。
中間転写ベルト10は、例えば、3つの支持ロール10Aから10C、及び加圧ロール16B(転写装置16)により内周面側から張力を掛けつつ回転するように支持されて配設されている。また中間転写ベルト10は、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
中間転写ベルト10の材料としては、例えば、各種の樹脂(例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等)、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等、ステンレス等の金属材料等が挙げられる。中間転写ベルト10は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
上記の通り、本実施形態においては、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に設けられているため、紫外線は中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに照射される。したがって、中間転写ベルト10は、紫外線透過性が高いものが望ましく、また紫外線に対する耐久性が高いものが望ましい。具体的には、例えば、中間転写ベルト10の紫外線透過率が70%以上であることが望ましい。中間転写ベルト10の紫外線透過率が上記範囲であることにより、紫外線が効率よく被硬化層12Bに供給されると共に、中間転写ベルト10が紫外線を吸収すること等による熱の発生が抑制される。
このような中間転写ベルト10を形成する材料としては、具体的には、例えば、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)、ポリイミドフイルム、ポリオレフィン系フィルム等が挙げられる。
また、本実施形態においては、被硬化層12Bが中間転写ベルト10の表面から剥離しやすくする観点から、被硬化層12Bに接する表面における中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γT)が低いことが望ましい。特に、被硬化層12Bの転写効率向上の観点から、表面自由エネルギー(γT)は、被硬化層12Bが転写される表面における記録媒体Pの表面自由エネルギー(γP)よりも低いことが望ましく、下記式が成り立つ条件であることがより望ましい。
式:γP−γT>10
なお、表面自由エネルギーの値は、表面自由エネルギーと各成分値が既知である3種類の液体を使用して、接触角の測定を行い、これらの値をYoung−Dupreの式及び、拡張Fowkesの式より求められる。装置としては、固体表面エナジー解析装置CA−XE(協和界面化学株式会社製)を用いて、測定及び表面自由エネルギーの算出を行う。
中間転写ベルト10は、上記表面自由エネルギー(γT)の値を低くするために、被硬化層12Bに接する表面に表面離型層を設けてもよい。
表面離型層に用いられる材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料等が挙げられ、具体的には、例えば、フッソ樹脂、フッソ変性ウレタン及びシリコーン樹脂、共重合フッソゴム、フッソ樹脂−共重合ビニルエーテル、PFA(4フッ化エチレンパーフルオロアルコキシ樹脂)、FEP(4フッ化エチレン・6フッ化プロピレン共重合塗料)などの粉体塗料または樹脂チューブ、PTFE(4フッ化エチレン)塗料、PTFE分散ウレタン塗料、さらにETFE(ポリテトラフルオロエチレン)チューブ、PVdF(ポリビニリデンフルオライド)、PHV(ポリテトラフルオロビニリデン)樹脂材料等が挙げられる。
この中でも、上記刺激に対する透過性の高い材料を用いることが望ましい。また、上記刺激に対する透過性の低い材料を用いる場合は、表面離型層の膜厚を薄くする方が望ましい。
溶液供給装置12は、例えば、硬化性溶液12Aを収納する筐体12C内に、当該硬化性溶液12Aを中間転写ベルト10へ供給する供給ローラ12Dと、供給された硬化性溶液12Aにより形成された被硬化層12Bの層厚を規定するブレード12Eと、を含んで構成されている。
溶液供給装置12は、その供給ローラ12Dが中間転写ベルト10に連続的に接触するようにしてもよいし、中間転写ベルト10から離間する構成としてもよい。また、溶液供給装置12は、独立した溶液供給システム(図示せず)より硬化性溶液12Aを筐体12Cへ供給させ、硬化性溶液12Aの供給がとぎれないようにしてもよい。硬化性溶液12Aの詳細については後述する。
溶液供給装置12は、上記構成に限られず、公知の供給法(塗布法:例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。
溶液供給装置24は溶液供給装置12と同様の構成であるが、硬化性溶液24Aを記録媒体Pへ供給して被硬化層24Bを形成するものであればこれに限られない。なお、硬化性溶液24Aの詳細については後述する。
インクジェット記録ヘッド14は、例えば、中間転写ベルト10の移動方向上流側から、ブラックインクを付与するための記録ヘッド14Kと、シアンインクを付与するための記録ヘッド14Cと、マゼンタインクを付与するための記録ヘッド14Mと、イエローインクを付与するための記録ヘッド14Yと、の各色の記録ヘッドを含んで構成されている。無論、記録ヘッド14の構成は上記構成に限られず、例えば、記録ヘッド14Kのみで構成してもよいし、記録ヘッド14C、記録ヘッド14M、及び記録ヘッド14Yのみで構成してもよい。
各記録ヘッド14は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で、且つ中間転写ベルト10表面と記録ヘッド14のノズル面との距離が例えば0.7から1.5mmにして配置されている。
また、各記録ヘッド14は、例えば、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅を持つライン型インクジェット記録ヘッドが望ましいが、従来のスキャン型のインクジェット記録ヘッドを用いてもよい。
各記録ヘッド14のインク付与方式は、圧電素子駆動型、発熱素子駆動型等、インクが付与される方式であれば制限はない。なお、インクの詳細については後述する。
転写装置16は、以下のように構成されている。具体的には、例えば、加圧ロール16B及び支持ロール10Cにより中間転写ベルト10を張架し、非屈曲領域を形成している。中間転写ベルト10の非屈曲領域において、加圧ロール16B及び支持ロール10Cに対向する位置には、記録媒体Pを支持する支持体22が設けられている。また、加圧ロール16Aは、中間転写ベルト10の加圧ロール16Bと対向する位置に配置され、支持体22に設けられた開口部(図示せず)を通して記録媒体Pに接触する。
すなわち、中間転写ベルト10及び記録媒体Pが加圧ロール16A及び16Bにより挟み込まれた位置(以下、「接触開始位置」と称する場合がある)から、支持ロール10C及び支持体22により挟み込まれた位置(以下、「剥離位置」と称する場合がある)までの転写領域においては、被硬化層12Bは中間転写ベルト10と記録媒体P上の被硬化層24Bとの両方に接触した状態となっている。
紫外線照射装置18は、中間転写ベルト10の内側に設けられ、転写領域の中間転写ベルト10を介して、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の被硬化層12B及び被硬化層24Bに紫外線を照射する。
ここで、紫外線照射装置18としては、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、デイープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、UV−LED(紫外線発光ダイオード)などが適用される。
また、紫外線の照射条件としては、特に制限はなく、紫外線硬化性材料種、被硬化層12B及び被硬化層24Bの厚みなどに応じて選択しうるが、例えば、メタルハライドランプを用いた場合で、積算光量20から1000mJ/cm2等が挙げられる。
記録媒体Pとしては、浸透媒体(例えば、普通紙や、コート紙等)、非浸透媒体(例えば、アート紙、樹脂フィルムなど)、いずれも適用される。記録媒体Pは、これらに限られず、その他、半導体基板など工業製品も含まれる。
以下、本実施形態に係る記録装置101の画像記録プロセスにつき、説明する。
本実施形態に係る記録装置101では、中間転写ベルト10が回転駆動され、まず、溶液供給装置12により、中間転写ベルト10表面に硬化性溶液12Aを供給して、被硬化層12Bを形成する。
ここで、被硬化層12Bの層厚(平均膜厚)は、特に制限はないが、画像形成性と転写性とを両立させる観点から、1μm以上50μm以下が望ましく、3μm以上20μm以下がより望ましい。
また、例えば、被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では被硬化層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。
次に、インクジェット記録ヘッド14によりインク滴14Aを付与し、中間転写ベルト10上に供給された被硬化層12Bに当該インク滴14Aを付与する。インクジェット記録ヘッド14は画像情報に基づき、被硬化層12Bにインク滴14Aを付与する。
この際、インクジェット記録ヘッド14によるインク滴14Aの付与は、張力が掛けられて回転支持された中間転写ベルト10における非屈曲領域上で行われる。つまり、ベルト表面がたわみのない状態で被硬化層12Bにインク滴14Aの付与がなされる。
一方、溶液供給装置24により、記録媒体Pの表面に硬化性溶液24Aを供給して被硬化層24Bを形成する。その後、被硬化層24Bが形成された記録媒体Pは、矢印方向に転写装置16へと送られる。
ここで被硬化層24Bの層厚(平均膜厚)は、特に制限はないが、0.1μm以上50μm以下が好ましく、0.5μm以上10μm以下がより好ましい。
次に、転写装置16の加圧ロール16A及び16Bにより、記録媒体P及び中間転写ベルト10を挟み込み圧力をかける。このとき、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bが記録媒体P上の被硬化層24Bに接触する(接触開始位置)。その後、支持ロール10C及び支持体22によって挟まれた位置(剥離位置)までは、被硬化層12B及び被硬化層24Bが中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態が維持される。
ここで、加圧ロール16A及び16Bによって被硬化層12Bに加えられる圧力は、転写効率の向上及び画像乱れの抑制といった観点から、0.001MPa以上2MPa以下の範囲とすることが望ましい。
転写領域(接触開始位置から剥離位置までの間)においては、紫外線照射装置18によって、中間転写ベルト10及び記録媒体Pの両方に接触した状態の(接触中の)被硬化層12B及び被硬化層24Bに、中間転写ベルト10を透過した紫外線が照射される。それにより、被硬化層12B及び被硬化層24Bが硬化する。具体的には、中間転写ベルト10上の被硬化層12Bが記録媒体P上の被硬化層24Bに接触した後(接触開始位置を通過した後)に紫外線の照射を開始し、被硬化層12Bが中間転写ベルト10から剥離される前(剥離位置に到達する前)に紫外線の照射を終了する。
次に、剥離位置において被硬化層12Bが中間転写ベルト10から剥離されることにより、インク滴14Aによる画像Tが含まれる硬化性樹脂層(画像層)が記録媒体Pに形成される。
一方、被硬化層12Bが記録媒体Pへ転写された後の中間転写ベルト10表面に残った被硬化層12Bの残留物や異物は、クリーニング装置20により除去される。
そして、再び中間転写ベルト10上に、溶液供給装置12により硬化性溶液12Aを供給して被硬化層12Bを形成し、画像記録プロセスが繰り返される。
以上のようにして、本実施形態に係る記録装置101では、画像記録が行われる。
本実施形態においては、被硬化層12Bが転写装置16により中間転写ベルト10から記録媒体Pに転写される前に、あらかじめ記録媒体P表面に被硬化層24Bが形成される。そして転写時には、すでに被硬化層24Bが記録媒体P表面に馴染んだ状態となり、被硬化層12Bが被硬化層24Bを介して記録媒体Pに接触する。そのため、例えば、画像Tが形成された被硬化層12Bの表面(中間転写ベルト10に接していない面)に物理形状的な凹凸や表面エネルギー状態のムラ等が存在していても、被硬化層12Bが記録媒体Pに直接接触する場合に比べて上記凹凸やムラの影響を受けにくく、被硬化層12Bと記録媒体Pとの密着性が良好になると考えられる。また、被硬化層12Bに含まれるインク滴14Aが記録媒体Pと直接接触しないため、インクが浸透しやすい記録媒体Pを用いた場合においても、画像のにじみが抑制されると考えられる。
また、被硬化層12Bに吸液性材料が含まれるため(すなわち、吸液性材料を含む硬化性溶液12Aを用いるため)像流れが抑制されるという利点があるが、特に吸液性材料が粒子状又はゲル状の場合は、吸液性材料が被硬化層12Bの表面に露出することにより、被硬化層12B表面の凹凸や表面エネルギーのムラが生じやすい。さらに、吸液性材料として、インクを受容することにより膨潤するインク受容性粒子を用いる場合、インク受容性粒子が被硬化層12Bの表面から突出しやすくなり、上記凹凸がさらに生じやすくなる場合がある。
ここで図2は、第1の硬化性溶液がインク受容性粒子(インクを受容することにより膨潤するインク受容性粒子)を含む場合における、(A)中間転写ベルト上に第1の硬化性溶液層が形成され、インクが付与される前の状態、(B)インクが付与された第1の硬化性溶液層が、記録媒体上に形成された第2の硬化性溶液層に接触する前の状態、及び(C)第1の硬化性溶液層が第2の硬化性溶液層に接触した状態を模式的に示した図である。
図2に示すように、例えば、中間転写ベルト10上に形成された被硬化層12B(図2(A))にインク滴14Aを付与すると、インク受容性粒子12Jがインク滴14Aを吸収して膨張し、被硬化層12Bの表面からインク受容性粒子12Jがさらに露出して凹凸がより顕著になる場合がある(図2(B))。このようにインク受容性粒子12Jが露出した被硬化層12Bの表面が、記録媒体Pの表面に直接接触すると、被硬化層12B表面に露出したインク受容性粒子12Jにより被硬化層12B及び記録媒体Pの接触面での濡れ性が低下し、接触部において気泡が入りやすくなる場合がある。特に記録媒体Pとして、例えば気体が透過しにくいプラスチック等を用いる場合は、上記気泡の混入による影響が顕著となる場合がある。
一方、本実施形態では、図2(C)に示すように被硬化層12Bが被硬化層24Bを介して記録媒体Pに接触するため、被硬化層24Bが被硬化層12Bの凹部に入り込む。すなわち、被硬化層24Bの表面が被硬化層12B表面の凹凸に追従しやすく、接触部(界面)での濡れ性が良好であり、気泡の混入が抑制されると考えられる。
被硬化層12Bに含まれる吸液性材料としては、インク受容性材料などが挙げられる。インク受容性材料としては、具体的には、例えば、図2に示したインクを受容することにより膨潤するインク受容性粒子12Jや、多孔質体であって気孔部にインクが吸着するインク受容性粒子等が挙げられる。またインク受容性材料としてゲルを用いても良い。
さらに、上記吸液性材料以外の粒子状又はゲル状の材料が被硬化層12Bに含まれる場合についても、被硬化層12Bの表面から前記粒子状又はゲル状の材料が突出しやすいため、前記凹凸や前記表面エネルギーのムラが生じやすくなる場合がある。しかし本実施形態では上記の通り、被硬化層12Bが被硬化層24Bを介して記録媒体Pに接触するため、被硬化層12Bと被硬化層24Bとの接触部における濡れ性が良好であり、気泡の混入が抑制されると考えられる。
前記吸液性材料以外の粒子状又はゲル状の材料としては、具体的には、例えば、有色粉体、顔料、金銀粉、又は雲母片や粉等が挙げられる。すなわち、硬化性溶液12Bが、前記有色粉体、顔料、金銀粉、又は雲母片や粉等を含んでもよい。具体的には、例えば、白色の色材を含んだ硬化性溶液12B及び無色透明の記録媒体Pを用いて白地にカラーの画像を形成する形態や、金粉を含んだ硬化性溶液12Bを用いてラメやホログラム入りの画像を形成する形態等が挙げられる。
また、画像形成速度が速い(特に制限はないが、好ましくは30mm/sec以上、より好ましくは100mm/sec以上)場合、被硬化層12Bが直接記録媒体Pに接触すると、被硬化層12Bが記録媒体Pに馴染みにくく、被硬化層12B表面に凹凸がある場合はより気泡が混入しやすくなる。
しかし本実施形態では、あらかじめ記録媒体Pに被硬化層24Bが形成されるため、転写工程の時間(接触開始位置から剥離位置までの時間)を短くしても、液体の被硬化層24Bが固体の記録媒体Pに馴染むために必要な時間が確保される。また、液体の被硬化層12Bが液体の被硬化層24Bに馴染む速度は、被硬化層12Bが記録媒体Pに馴染む速度よりも速いため、被硬化層12Bが被硬化層24Bを介して記録媒体Pに接触することにより、転写工程の時間を短くしても密着性が良好となると考えられる。さらに、被硬化層12B表面に凹凸があっても、被硬化層24Bの表面がその凹凸に追従しやすいため、気泡の混入が抑制されると考えられる。
本実施形態では、必要に応じて、被硬化層24Bを形成する前の記録媒体Pに、例えば、プラズマ処理、コロナ処理、UV(紫外線)処理、オゾン処理、カップリング剤を用いた表面処理等の表面改質処理を行ってもよい。
本実施形態では、被硬化層12Bと被硬化層24Bとの親和性が高く、相溶性がある方が好ましい。具体的には、例えば、硬化性溶液12Aと硬化性溶液24Aとを、1対1の体積で混合し、1時間撹拌混合した後、1時間放置しても相分離しないような、硬化性溶液12A及び硬化性溶液24Aを用いて、被硬化層12B及び被硬化層24Bを形成することが好ましい。そのような被硬化層12B及び被硬化層24Bを用いることにより、被硬化層12Bが被硬化層24Bに接触したときに界面で相溶し、被硬化層12Bと記録媒体Pとの密着性がより向上すると共に、硬化後の定着性も向上すると考えられる。
本実施形態では、硬化性溶液24Aの粘度が硬化性溶液12Aの粘度よりも低い方が好ましい。それにより、被硬化層12B及び被硬化層24Bの界面での濡れ性が良好となり、被硬化層12Bの表面に凹凸があっても被硬化層24Bが追従しやすいため、さらに気泡の混入が抑制されると考えられる。
本実施形態では、硬化性溶液24Aに含まれる硬化性材料が、硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料と同一の化合物又は同一の紫外線照射装置18により硬化反応を開始する化合物であることが好ましい。すなわち、硬化性溶液12Aに含まれる第1の硬化性材料と硬化性溶液24Aに含まれる第2の硬化性材料とが同一であるか、又は、第1の硬化性材料を硬化させる紫外線(第1の刺激)と第2の硬化性材料を硬化させる紫外線(第2の刺激)とが同一であることが好ましい。それにより、被硬化層12B及び被硬化層24Bの界面での濡れ性が良好となり、硬化後における画像の定着強度が向上する。
なお、本実施形態では、第1の硬化性材料と第2の硬化性材料とが異なる種類の化合物でもよく、第1の刺激と第2の刺激が異なる波長の紫外線でもよい。
本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置されており、紫外線が中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに照射される。そのため、被硬化層12Bのうち、中間転写ベルト10と接している側の方が、記録媒体Pと接している側に比べて、相対的に紫外線等照射量が高いため硬化反応の進行度も高くなる。よって、剥離位置においては、被硬化層12Bが、記録媒体Pからは剥離しにくいが中間転写ベルト10からは剥離しやすい状態となり、中間転写ベルト10から記録媒体Pへの転写効率が向上する。
また本実施形態では、上記の通り、紫外線照射装置18により照射される紫外線が、中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに照射される構成である。例えば、紫外線を中間転写ベルト10の外側から照射する場合、支持体22及び記録媒体Pに紫外線透過性の材料を用いる必要がある等の制約を受ける場合があるが、本実施形態では前記制約を受けないため、装置構成の簡易化も実現される。
さらに、上記の通り、本実施形態においては、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置されているため、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の外側に配置される場合に比べ省スペース化される。
本実施形態においては、上記の通り、被硬化層12Bにインク滴14Aを付与する構成である。そのため、記録媒体Pが浸透性であるか非浸透性であるかに関わらず、高画質な画像形成が行われる。
また本実施形態においては、上記の通り、中間転写ベルト10上に形成された被硬化層12Bにインク滴14Aを付与し、転写装置16により記録媒体Pへ転写される構成である。よって、例えば、被硬化層12Bの厚みをインク滴14Aが被硬化層12Bの最下層まで到達しない程度とすれば、記録媒体Pへの転写後では被硬化層12Bのうちインク滴14Aが存在する領域が露出せず、インク滴14Aが存在しない領域が硬化後には保護層として機能する。そのため、画像の印字部と非印字部との間に段差が無く、画像耐久性が向上する。
なお本実施形態においては、上記の通り、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段として、紫外線照射装置18を用いているが、これに限られない。
第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段の種類は、それぞれ、適用する硬化性溶液12A及び硬化性溶液24Aに含まれる硬化性材料の種類に応じて選択される。具体的には、例えば本実施形態のように、第1の硬化性材料及び第2の硬化性材料として同一の紫外線照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段として、紫外線照射装置18を用いる。また、第2の硬化性材料として第1の硬化性材料とは異なる紫外線の照射により硬化する紫外線硬化性材料を適用する場合は、硬化性溶液24Aを硬化させる紫外線照射装置をさらに用いる必要がある。
また、硬化性材料として電子線の照射により硬化する電子線硬化性材料を適用する場合、刺激供給手段として電子線照射装置を適用し、硬化性材料として熱の付与により硬化する熱硬化性材料を適用する場合、刺激供給手段として熱付与装置を適用する。
第1の硬化性材料及び第2の硬化性材料としては、同種の硬化性材料を用いてもよく、異種の硬化性材料を用いてもよい。
同種の硬化性材料を用いる形態としては、例えば、第1の硬化性材料及び第2の硬化性材料として熱硬化性材料を用いる形態等が挙げられ、その場合は、第1の刺激供給手段及び第2の刺激供給手段として熱付与装置を適用する。また、異種の硬化性材料を用いる形態としては、例えば、第1の硬化性材料として電子線硬化性材料を用い、第2の硬化性材料として熱硬化性材料を用いる形態等が挙げられ、その場合は、第1の刺激供給手段として電子線照射装置を適用し、第2の刺激供給手段として熱付与装置を適用する。
電子線照射装置としては、例えば、走査型の電子線照射装置や、カーテン型の電子線照射装置等が挙げられる。カーテン型の電子線照射装置は、フィラメントで生じた熱電子を、真空チャンバー内のグリッドによって引き出し、さらに高電圧(例えば70乃至300kV)によって、一気に加速させ、電子流とし、窓箔を通過して、大気側に放出する装置である。電子線の波長は一般的に1nmより小さく、またエネルギーは大きいもので数MeVに及ぶが、電子線の波長数がpmのオーダーでエネルギーが数十乃至数百keVが適用される。
また、熱付与装置としては、例えば、ハロゲンランプ、セラミックヒータ、ニクロム線ヒータ、マイクロ波加熱、赤外線ランプなどが適用される。また、熱付与装置としては、電磁誘導方式の加熱装置も適用される。
また本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18による紫外線照射を、被硬化層12Bが接触開始位置を通過した後に開始し、被硬化層12Bが剥離位置に到達する前に終了している。しかしこれに限られず、例えば、紫外線照射装置18による紫外線照射を、被硬化層12Bが接触開始位置に到達する前に開始してもよく、被硬化層12Bが剥離位置を通過した後に終了してもよい。また紫外線照射装置18とは別に、被硬化層12Bが接触開始位置を通過する前や剥離位置を通過した後に、被硬化層12Bに紫外線を照射する紫外線照射装置を別途設けてもよい。
また、本実施形態においては、上記の通り、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の内側に配置され、紫外線が中間転写ベルト10を透過した後に被硬化層12Bに照射されるが、これに限られない。具体的には、例えば、紫外線照射装置18が中間転写ベルト10の外側に配置され、支持体22及び記録媒体Pを透過した後に中間転写ベルト10上の被硬化層12Bに紫外線を照射する形態であっても良い。
また、例えば、紫外線照射装置18の本体を、中間転写ベルト10の外側に配置しつつ、中間転写ベルト10を透過した紫外線を被硬化層12Bに照射する形態もありうる。具体的には、例えば、紫外線照射装置18の本体を中間転写ベルト10の外側に配置し、例えば光ファイバー等を用いて紫外線を紫外線照射装置本体から中間転写ベルト10の内側に誘導し、中間転写ベルト10を透過した後の紫外線を被硬化層12Bに照射する形態等が挙げられる。
また本実施形態において、被硬化層12Bを形成する前の中間転写ベルト10に離型剤を供給し離型剤層を形成する離型剤塗布装置をさらに備えた形態としてもよい。
離型剤塗布装置をさらに備えることにより、被硬化層12Bが接する表面における中間転写ベルト10の表面自由エネルギー(γT)の値を低く設定することが容易となり、より中間転写ベルト10から記録媒体Pへの被硬化層12Bの転写効率が向上する。
また、上記構成であることにより、中間転写ベルト10の表面状態の経時的な変化による影響を受けにくく経時安定性が向上すると共に、中間転写ベルト10表面のクリーニング性も向上する。
ここで、上記構成のように離型剤塗布装置を備えた形態において「表面自由エネルギー(γT)」とは、離型剤層が形成された中間転写ベルト10における、被硬化層12Bが接する表面の表面自由エネルギーを意味する。
離型剤塗布装置としては、公知の塗布法(例えば、バーコーター塗布、スプレー方式の塗布、インクジェット方式の塗布、エアーナイフ方式の塗布、ブレード方式の塗布、ロール方式の塗布、ダイコータ方式の塗布等)などを利用した装置が適用される。具体的には、例えば、離型剤を収納する筐体内に、離型剤を中間転写ベルト10へ供給する供給ローラと、供給された離型剤により形成された離型剤層の層厚を規定するブレードと、離型剤を加熱溶融させる加熱手段を含むものが挙げられる。
離型剤としては、具体的には、シリコーン系オイル、フッ素系オイル、炭化水素系・ポリアルキレングリコール、脂肪酸エステル、フェニルエーテル、リン酸エステル等が挙げられ、これらの中でもシリコーン系オイル、フッ素系オイル、ポリアルキレングリコールが望ましい。
また本実施形態においては、中間転写体として中間転写ベルトを用いているが、これに限られず、例えば中間転写ドラムを用いてもよい。
中間転写ドラムは、単層構成でもよく、複層構成でもよい。複層構成としては、例えば、円筒状基体と、当該基体表面に被覆される表面層と、を有する構成が挙げられる。中間転写ドラムは、記録媒体Pの幅と同等又はそれ以上の幅(軸方向長さ)を有している。
円筒状基体の材質としては、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼(SUS)、銅、ガラス等が挙げられる。
表面層の材質としては、例えば、各種の樹脂[例えば、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテルサルフォン、フッ素系樹脂等]、各種のゴム(例えば、ニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロプレンゴム、イソプレンゴム、スチレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、ウレタンゴム、エピクロロヒドリンゴム、アクリルゴム、シリコーンゴム、フッ素ゴム等)等が挙げられる。表面層は、単層構成でもよいし、積層構成でもよい。
また紫外線透過率が70%以上である中間転写ドラムとしては、具体的には、例えば、石英ガラスで構成されたもの、石英ガラス製の円筒状基体にフッ素系樹脂の表面層を形成したもの等が挙げられる。
本実施形態においては、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンの各色のインクジェット記録ヘッド14から画像データに基づいて選択的にインク滴14Aが付与されてカラーの画像が記録媒体Pに記録されるようになっているが、記録媒体上への文字や画像の記録に限定されるものではない。すなわち、工業的に用いられる液滴付与(噴射)装置全般、また版を用いた転写による画像を形成する方法、スクリーン印刷による画像形成方法などにも本発明に係る装置が適用される。
以下、上記実施形態において用いられる材料(具体的には、硬化性溶液12A、硬化性溶液24A、及びインク滴14Aに含まれるインク)の詳細について説明する。
まず、上記第1実施形態において用いられる硬化性溶液12Aについて説明する。
硬化性溶液12Aは、外部からの第1の刺激(エネルギー)により硬化する第1の硬化性材料を少なくとも含んでいる。ここで、硬化性溶液12Aに含有される「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」とは、外部からの刺激によって硬化し、「硬化性樹脂」となる材料を意味する。具体的には、例えば、硬化性のモノマー、硬化性のマクロマー、硬化性のオリゴマー、硬化性のプレポリマー等が挙げられる。
硬化性材料としては、例えば、紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料、熱硬化性材料等が挙げられる。紫外線硬化性材料は、硬化がし易く、他のものに比べ硬化速度も速く、取り扱いやすいため、最も望ましい。電子線硬化性材料は、重合開始剤が不要であり、硬化後の層の着色制御が実施しやすい。熱硬化性材料は、大掛りな装置を必要とすることなく硬化される。なお、硬化性材料は、これらに限られず、例えば湿気、酸素等により硬化する硬化性材料を適用してもよい。なお、ここで言う硬化性材料は、硬化後は不可逆である。
紫外線硬化性材料を硬化することにより得られる「紫外線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、マレイミド樹脂、エポキシ樹脂、オキセタン樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、紫外線硬化性のモノマー、紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、及び紫外線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また、硬化性溶液12Aは、紫外線硬化反応を進行させるための紫外線重合開始剤を含んでいることが望ましい。さらに硬化性溶液12Aは、必要に応じて、重合反応をより進行させるための、反応助剤、重合促進剤等を含んでいてもよい。
ここで、紫外線硬化性のモノマーとしては、例えば、アルコール/多価アルコール/アミノアルコール類のアクリル酸エステル、アルコール/多価アルコール類のメタクリル酸エステル、アクリル脂肪族アミド、アクリル脂環アミド、アクリル芳香族アミド類等のラジカル硬化性材料;エポキシモノマー、オキセタンモノマー、ビニルエーテルモノマー等のカチオン硬化性材料;などが挙げられる。上記紫外線硬化性のマクロマー、紫外線硬化性のオリゴマー、紫外線硬化性のプレポリマーとしては、これらモノマーを重合させたものの他、エポキシ、ウレタン、ポリエステル、ポリエーテル骨格に、アクリロイル基やメタクリロイル基の付加した、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンメタクリレート、ポリエステルメタクリレート等のラジカル硬化性材料が挙げられる。
硬化反応がラジカル反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、チオキサントン系、ベンジルジメチルケタール、α-ヒドロキシケトン、α-ヒドロキシアルキルフェノン、 α-アミノケトン、α-アミノアルキルフェノン、モノアシルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド、ヒドロキシベンゾフェノン、アミノベンゾフェノン、チタノセン型、オキシムエステル型、オキシフェニル酢酸エステル型などが挙げられる。
また硬化反応がカチオン反応により進行するタイプである場合、紫外線重合開始剤としては、例えば、アリールスルホニウム塩、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩、アレン-イオン錯体誘導体、トリアジン系開始剤等が挙げられる。
電子線硬化性材料を硬化することにより得られる「電子線硬化性樹脂」としては、例えば、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、及び電子線硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。
ここで、電子線硬化性のモノマー、電子線硬化性のマクロマー、電子線硬化性のオリゴマー、電子線硬化性のプレポリマーとしては、紫外線硬化性の材料と同様のものが挙げられる。
熱硬化性材料を硬化することにより得られる「熱硬化性樹脂」としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。そして、その硬化性溶液12Aは、熱硬化性のモノマー、熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、及び熱硬化性のプレポリマーの少なくとも1種を含んでいる。また重合の際に硬化剤を添加してもよい。また、硬化性溶液12Aは、熱硬化反応を進行させるための熱重合開始剤を含んでもよい。
ここで、熱硬化性のモノマーとしては、例えば、フェノール、ホルムアルデヒド、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン、シアヌリル酸アミド、尿素、グリセリン等のポリアルコール、無水フタル酸、無水マレイン酸、アジピン酸等の酸などが挙げられる。熱硬化性のマクロマー、熱硬化性のオリゴマー、熱硬化性のプレポリマーとしては、これらのモノマーを重合させたものや、エポキシプレポリマー、ポリエステルプレポリマーなどが挙げられる。
熱重合開始剤としては、例えば、プロトン酸/ルイス酸等の酸、アルカリ触媒、金属触媒などが挙げられる。
以上のように、硬化性材料は、紫外線、電子線、熱等の外部エネルギーにより硬化(例えば、重合反応が進行することによる硬化)するものであれば何でもよい。
上記硬化性材料の中でも、画像記録の高速化という観点を考慮すると、硬化速度の速い材料(例えば、重合の反応速度が速い材料)が望ましい。このような硬化性材料としては、例えば、放射線硬化型の硬化性材料(上記紫外線硬化性材料、電子線硬化性材料等)が挙げられる。
硬化性材料は、中間転写体等との濡れ性を考慮して、Siやフッ素等による変性がされていてもよい。また硬化性材料は、硬化速度と硬化度を考慮すると、多官能のプレポリマーを含有するのが望ましい。
また、硬化性溶液には、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
また、硬化性溶液は、硬化後の層を着色制御を行う目的で各種色材を含んでいてもよい。
また、硬化性溶液の粘度は、5mPa・sから10000mPa・sが望ましく、より望ましくは10mPa・sから1000mPa・sであり、さらに望ましくは15mPa・sから500mPa・sの範囲が挙げられる。また、硬化性溶液の粘度は、インクの粘度よりも高いことがよい。
上記硬化性溶液12Aは、画像ムラ及び色間にじみの抑制という観点から、インク中の着色剤を固定化する材料を含むことが望ましい。
また、これらの材料としては、インクに対して吸液性を有する材料(吸液性材料)が好ましい。吸液性材料とは、吸液性材料とインクを重量比30:100で24時間混合した後、混合液中からフィルターにより吸液性材料を取り出した時、吸液性材料の重量がインク混合前に対して5%以上増加するものである。
このように、硬化性溶液12Aがインク吸液性材料を含有することによって、速やかにインク液体成分(例えば、水、水性溶媒)が、樹脂層に取り込まれ画像が固定化するため、インク間の境界部での混色が抑制され、画像ムラが抑制され、さらには転写時の圧力によるインクの像流れが軽減される。
吸液性材料は、例えば樹脂(以下、吸液樹脂と称する場合がある)や、表面親インク性を持たせた無機粒子(例えば、シリカ、アルミナ、ゼオライトなど)等があげられ、用いるインクに応じて選択される。
具体的には、インクとして水性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸水材料を用いることが望ましい。また、インクとして油性インクを用いる場合は、吸液性材料として吸油材料を用いることが望ましい。
吸水材料としては、具体的には、例えば、ポリアクリル酸及びその塩、ポリメタクリル酸及びその塩、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸及びその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸及びその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、ブタジエン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、ポリマレイン酸およびその塩、スチレン−マレイン酸及びその塩から構成される共重合体等、前記それぞれの樹脂のスルホン酸変性体、それぞれの樹脂のリン酸変性体等、等が挙げられ、望ましくは、ポリアクリル酸およびその塩、スチレン−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル−カルボン酸およびその塩構造を有する脂肪族又は芳香族置換基を有するアルコールと(メタ)アクリル酸とから生成するエステルから構成される共重合体、(メタ)アクリル酸エステル−(メタ)アクリル酸およびその塩から構成される共重合体、が挙げられる。これら樹脂は、未架橋でも架橋されていてもよい。
また吸油材料としては、具体的には、例えば、ヒドロキシステアリン酸、コレステロール誘導体、ベンジリデンソルビトールといった低分子ゲル化剤や、ポリノルボルネン、ポリスチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエン共重合体、各種ロジン類等が挙げられ、望ましくは、ポリノルボルネン、ポリプロピレン、ロジン類が挙げられる。
吸液性材料が粒子状である場合(インク受容性粒子である場合)には、硬化性溶液12Aの安定性と画質との両立といった観点から、体積平均粒径が0.05μm以上25μmの範囲であることが望ましく、0.5μm以上10μm以下がより望ましい。
この吸液性材料の硬化性溶液12A全体に対する比率は、例えば質量比で10%以上望ましくは20%以上であり、より望ましくは25%以上70%以下の範囲が挙げられる。
次に、硬化性溶液12Aに含まれる、その他の添加剤について説明する。
硬化性溶液12Aは、インクの成分を凝集又は増粘させる成分を含んでもよい。
この機能を有する成分は、上記吸液樹脂粒子を構成する樹脂(樹脂吸水性樹脂)の官能基として含んでもよいし、化合物として含んでもよい。当該官能基としては、例えば、カルボン酸、多価金属カチオン、ポリアミン類等などが挙げられる。
また、当該化合物としては、無機電解質、有機酸、無機酸、有機アミンなどの凝集剤が好適に挙げられる。
凝集剤は単独で使用しても、あるいは2種類以上を混合して使用しても構わない。また、凝集剤の含有量としては、0.01質量%以上30質量%以下であることが望ましい。より望ましくは、0.1質量%以上15質量%以下であり、更に望ましくは、1質量%以上15質量%以下である。
以下、硬化性溶液24Aについて説明する。
硬化性溶液24Aは、外部からの第2の刺激により硬化する第2の硬化性材料を少なくとも含んでいる。第2の硬化性材料は、上記第1の硬化性材料として説明した材料と同様の材料が用いられる。第2の硬化性材料は、上記の通り、硬化性溶液12Aに含まれる第1の硬化性材料と同種の材料でもよく、異種の材料でもよい。
また硬化性溶液24Aは、硬化性溶液12Aと同様に、上記第2の硬化性材料等を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでもよい。
硬化性溶液24Aの粘度は、上記の通り、硬化性溶液12Aの粘度よりも低い方が好ましく、具体的には、3mPa・s以上99000mPa・s以下が好ましく、8mPa・s以上900mPa・s以下がより好ましく、13mPa・s以上450mPa・s以下がより好ましい。
本実施形態では、硬化性溶液24Aが、有色粉体、顔料、金銀粉、又は雲母粉等を含んでもよい。具体的には、例えば、白色の色材を含んだ硬化性溶液24A及び無色透明の記録媒体Pを用いて白地にカラーの画像を形成する形態や、金粉を含んだ硬化性溶液24Aを用いてラメ入りの画像を形成する形態等が挙げられる。
以下、インク滴14Aに含まれるインクの詳細について説明する。
インクとしては、溶媒として水性溶媒を含む水性インク、溶媒として油性溶媒を含む油性インク、紫外線硬化型インク、相変化型ワックスインクなどが挙げられる。本実施形態においては、水性インク又は油性インクを用い、記録媒体として非浸透媒体を用いた場合でも、ヒーター等により溶媒を揮発させることなく良い画像定着性が得られる。また、インクとしては、紫外線硬化型インクも使用される。紫外線硬化型インクを用いることにより、耐久性の高い画像が形成される。
水性インクとしては、例えば、記録材として水溶性染料又は顔料を水性溶媒に分散又は溶解したインクが挙げられる。また、油性インクとしては、例えば、記録材として油溶性染料を油性溶媒に溶解したインク、記録材として染料又は顔料を逆ミセル化して分散したインクが挙げられる。
油性インクを用いる場合は、低揮発性又は不揮発性の溶媒を用いた油性インクを用いることが望ましい。油性インクの溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、ヘッドノズル端部において、溶媒揮発によるインク状態変化が起きにくいため、ヘッドノズル耐目詰まり性が良い。また油性インクの溶媒が低揮発性又は不揮発性であることにより、インク滴を受容した被硬化層が記録媒体に転写された後に、油性インクの溶媒が記録媒体に浸透しても、カール・カックルが生じにくい。さらに油性インクの溶媒は、カチオン硬化性のものであってもよい。
本実施形態においては、インクとして水性インクを用いることが望ましい。この場合、上記硬化性溶液12Aに含まれる吸液性材料としては、吸水材料を用いることが望ましい。水性インクを用いる事で、油性インクや紫外線硬化型インクなどに比べ、インクジェットヘッドを含むシステムの長期信頼性が向上する。
まず、記録材について説明する。記録材としては、主に色材が挙げられる。色材としては、染料、顔料のいずれも用いられるが、耐久性の点で顔料であること望ましい。顔料としては有機顔料、無機顔料のいずれも使用され、黒色顔料ではファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック顔料等が挙げられる。黒色とシアン、マゼンタ、イエローの3原色顔料のほか、赤、緑、青、茶、白等の特定色顔料や、金、銀色等の金属光沢顔料、無色又は淡色の体質顔料、プラスチックピグメント等を使用してもよい。また、本発明のために、新規に合成した顔料でも構わない。
また、シリカ、アルミナ、又は、ポリマービード等をコアとして、その表面に染料又は顔料を固着させた粒子、染料の不溶レーキ化物、着色エマルション、着色ラテックス等を顔料として使用する方法もある。
黒色顔料の具体例としては、Raven7000(コロンビアン・カーボン社製)、Regal400R(キャボット社製)、Color Black FW1(デグッサ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
シアン色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Blue−1,−2,−3,−15,−15:1,−15:2,−15:3,−15:4,−16,−22,−60等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
マゼンタ色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Red−5,−7,−12,−48,−48:1,−57,−112,−122,−123,−146,−168,−177,−184,−202, C.I.Pigment Violet −19等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
黄色顔料の具体例としては、C.I.Pigment Yellow−1,−2,−3,−12,−13,−14,−16,−17,−73,−74,−75,−83,−93,−95,−97,−98,−114,−128,−129,−138,−151,−154,−180等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
ここで、色材として顔料を使用した場合には、併せて顔料分散剤を用いることが望ましい。使用される顔料分散剤としては、高分子分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤等が挙げられる。
高分子分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体が好適に用いられる。親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体としては、縮合系重合体と付加重合体とが使用される。縮合系重合体としては、公知のポリエステル系分散剤が挙げられる。付加重合体としては、α,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の付加重合体が挙げられる。親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体と疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体を組み合わせて共重合することにより目的の高分子分散剤が得られる。また、親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体の単独重合体も用いられる。
親水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、カルボキシル基、スルホン酸基、水酸基、りん酸基等を有する単量体、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、スルホン化ビニルナフタレン、ビニルアルコール、アクリルアミド、メタクリロキシエチルホスフェート、ビスメタクリロキシエチルホスフェート、メタクリロオキシエチルフェニルアシドホスフェート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。
疎水基を有するα,β−エチレン性不飽和基を有する単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のスチレン誘導体、ビニルシクロヘキサン、ビニルナフタレン、ビニルナフタレン誘導体、アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸フェニルエステル、メタクリル酸シクロアルキルエステル、クロトン酸アルキルエステル、イタコン酸ジアルキルエステル、マレイン酸ジアルキルエステル等が挙げられる。
高分子分散剤として用いられる、望ましい共重合体の例としては、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられる。また、これらの重合体に、ポリオキシエチレン基、水酸基を有する単量体を共重合させてもよい。
上記高分子分散剤としては、例えば重量平均分子量で2000乃至50000のものが挙げられる。
これら顔料分散剤は、単独で用いても、二種類以上を併用しても構わない。顔料分散剤の添加量は、顔料により大きく異なるため一概には言えないが、一般に顔料に対し、合計で0.1乃至100質量%が挙げられる。
色材として水に自己分散する顔料も用いられる。水に自己分散する顔料とは、顔料表面に水に対する可溶化基を数多く有し、高分子分散剤が存在しなくとも水中で分散する顔料のことを指す。具体的には、通常のいわゆる顔料に対して酸・塩基処理、カップリング剤処理、ポリマーグラフト処理、プラズマ処理、酸化/還元処理等の表面改質処理等を施すことにより、水に自己分散する顔料が得られる。
また、水に自己分散する顔料としては、上記顔料に対して表面改質処理を施した顔料の他、キャボット社製のCab−o−jet−200、Cab−o−jet−300、IJX−157、IJX−253、IJX−266、IJX−273、IJX−444、IJX−55、Cab−o−jet−260M、Cab−o−jet−250C、Cab−o−jet−270Y、Cab−o−jet−1027R、Cab−o−jet−554B、オリエント化学社製のMicrojet Black CW−1、CW−2等の市販の自己分散顔料等も使用される。
自己分散顔料としては、その表面に官能基として少なくともスルホン酸、スルホン酸塩、カルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料であることが望ましい。より望ましくは、表面に官能基として少なくともカルボン酸、又はカルボン酸塩を有する顔料である。
更に、樹脂により被覆された顔料等も使用される。これは、マイクロカプセル顔料と呼ばれ、大日本インキ化学工業社製、東洋インキ社製などの市販のマイクロカプセル顔料だけでなく、本発明のために試作されたマイクロカプセル顔料等も使用される。
また、高分子物質を上記顔料に物理的に吸着又は化学的に結合させた樹脂分散型顔料も用いられる。
記録材としては、その他、親水性のアニオン染料、直接染料、カチオン染料、反応性染料、高分子染料等や油溶性染料等の染料類、染料で着色したワックス粉・樹脂粉類やエマルション類、蛍光染料や蛍光顔料、赤外線吸収剤、紫外線吸収剤、フェライトやマグネタイトに代表される強磁性体等の磁性体類、酸化チタン、酸化亜鉛に代表される半導体や光触媒類、その他有機、無機の電子材料粒子類などが挙げられる。
記録材の含有量(濃度)は、例えばインクに対して1乃至30質量%の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径は、例えば10nm以上1000nm以下の範囲が挙げられる。
記録材の体積平均粒径とは、記録材そのものの粒径、又は記録材に分散剤等の添加物が付着している場合には、添加物が付着した粒径をいう。体積平均粒径の測定装置には、マイクロトラックUPA粒度分析計 9340 (Leeds&Northrup社製)を用いた。その測定は、インク4mlを測定セルに入れて行った。なお、測定時の入力値として、粘度にはインクの粘度を、分散粒子の密度は記録材の密度とした。
次に水性溶媒について説明する。水性溶媒としては、水が挙げられ、特にイオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することがよい。また、水性溶媒と共に、水溶性有機溶媒を用いてもよい。水溶性有機溶媒としては、多価アルコール類、多価アルコール類誘導体、含窒素溶媒、アルコール類、含硫黄溶媒等が使用される。
水溶性有機溶媒の具体例としては、多価アルコール類では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1、5−ペンタンジオール、1,2−へキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、キシリトールなどの糖アルコール類、キシロース、グルコース、ガラクトースなどの糖類等が挙げられる。
多価アルコール類誘導体としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
含窒素溶媒としては、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が、アルコール類としてはエタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類が挙げられる。
含硫黄溶媒としては、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルフォラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
水溶性有機溶媒としては、その他、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等も用いられる。
水溶性有機溶媒は、少なくとも1種類以上使用してもよい。水溶性有機溶媒の含有量としては、例えば1質量%以上70質量%以下の範囲が挙げられる。
次に、油性溶媒について説明する。油性溶媒としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、グリコール類、含窒素溶媒、植物油等の有機溶媒が使用される。脂肪族炭化水素の例として、n−ヘキサン、シクロヘキサン、メチルヘキサン、n−オクタン、メチルヘプタン、ジメチルヘキサン、ノナン、デカン等が挙げられ、アイソパーなどのn−パラフィン系溶剤、iso−パラフィン系溶剤、シクロパラフィン系溶剤などのパラフィン系溶剤でも構わない。また、芳香族炭化水素としては、トルエン、エチルベンゼン、キシレン等が挙げられる。アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。ケトン類としては、アセトン、メチルエチルケトン、ペンタノン、ヘキサノン、ヘプタノン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ビニル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては、ジエチルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルプロピルエーテル、エチルイソプロピルエータル等が挙げられる。グリコール類としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、ヘキサンジオール、グリセリン、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。その他、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル等のグリコール誘導体を溶媒として用いても良い。植物油としては、乾性油、半乾性油、不乾性油などが挙げられる。乾性油としては、荏の油、アマニ油、桐油、ケシ油、くるみ油、紅花油、ひまわり油などが挙げられ、半乾性油としては菜種油、不乾性油としては、ヤシ油が挙げられる。上記溶媒は単独もしくは二種以上併用しても良い。
次に、その他の添加剤について説明する。インクには、その他、必要に応じて、界面活性材が添加される。
これら界面活性剤の種類としては、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられ、望ましくは、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が用いられる。
界面活性剤は単独で使用しても混合して使用してもよい。また界面活性剤の親水性/疎水性バランス(HLB)は、溶解性等を考慮すると例えば3乃至20の範囲が挙げられる。
界面活性剤の添加量は、例えば0.001乃至5質量%、望ましくは0.01乃至3質量%の範囲が挙げられる。
また、インクには、その他、浸透性を調整する目的で浸透剤、インク吐出性改善等の特性制御を目的でポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等や、導電率、pHを調整するために水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属類の化合物等、その他必要に応じ、pH緩衝剤、酸化防止剤、防カビ剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、及びキレート化剤等も添加される。
また、外部からのエネルギーにより硬化する硬化性材料を含有しても良い。この場合、水性インク中においては水溶性の硬化性材料が好ましい。
またインクは、外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料を少なくとも含んだ紫外線硬化性インクでもよい。「外部からの刺激(エネルギー)により硬化する硬化性材料」については、上記硬化性溶液12Aに含まれる硬化性材料と同様である。
また紫外線硬化性インクには、上記硬化反応に寄与する主成分(モノマー、マクロマー、オリゴマー、及びプレポリマー、重合開始剤等)を溶解又は分散するための水や有機溶媒を含んでいてもよい。但し、当該主成分の比率が例えば30質量%以上、望ましくは60質量%以上、より望ましくは90質量%以上の範囲が挙げられる。
次に、インクの好適な特性について説明する。まず、インクの表面張力は、例えば20乃至45mN/mの範囲が挙げられる。
ここで、表面張力としては、ウイルヘルミー型表面張力計(協和界面科学株式会社製)を用い、23℃、55%RHの環境において測定した値を採用した。
インクの粘度は、1.5mPa・s以上30mPa・s以下、望ましくは1.5mPa・s以上20mPa・s以下の範囲が挙げられる。ヘッド吐出性の観点からは、インクの粘度は20mPa・s以下が望ましい。また、インクの粘度は、上記硬化性溶液の粘度に比べ低いことがよい。
ここで、粘度としては、レオマット115(Contraves製)を測定装置として用いて、測定温度は23℃、せん断速度は1400s−1の条件で測定した値を採用した。
なお、インクは、上記構成に限定されるものではない。記録材以外に、例えば、液晶材料、電子材料など機能性材料を含むものであってもよい。
[試験例]
以下、本発明を、試験例を挙げてさらに具体的に説明する。ただし、これら各試験例は、本発明を制限するものではない。また、試験例2は参考例である。
(試験例1)
上記第1実施形態と同様な構成の記録装置(図1参照)を用いて、溶液供給装置により硬化性溶液A(第1の硬化性溶液)を中間転写ベルトに供給して被硬化層A(第1の硬化性溶液層)を形成し、その被硬化層Aに記録ヘッドにより各色インクを付与して画像を形成した。そして、あらかじめ溶液供給装置により硬化性溶液B(第2の硬化性溶液)を記録媒体に供給して被硬化層B(第2の硬化性溶液層)を形成し、転写装置により被硬化層Bへ被硬化層Aを接触させながら紫外線照射装置により紫外線を照射し被硬化層A及び被硬化層Bを硬化させて中間転写ベルトから剥離し、評価を行った。条件は以下の通りである。
・中間転写ベルト:厚さ0.1mm、ベルト幅350mm、外径Φ168mmのETFE製無端ベルトにフッ素系樹脂を被覆したもの(プロセス速度:125mm/s)
・溶液供給装置:グラビアロールコーター(被硬化層Aの層厚15μm、被硬化層Bの層厚10μm)
・各記録ヘッド:ピエゾ方式の記録ヘッド(解像度解像度1200×1200dpi(dpi:1インチ当たりのドット数)、ドロップサイズ2pL)
・転写装置(加圧ロール):径30mmの鋼製パイプにフッ素系樹脂を被覆したもの(中間転写ベルトに対する押し当て力:線圧2kgf/cm)
・紫外線照射装置:メタルハライドランプ(紫外線照射強度240W/cmを積算光量で100mJ/cm2照射)
・記録媒体:アート紙(OK金藤)
また、硬化性溶液、及び各色のインクは、以下のように作製したものを用いた。
<硬化性溶液A(ラジカル硬化性材料)>
・シリコーン変性ポリウレタンアクリレート:20質量部
・アクリロイルモルホリン(第1の硬化性材料):40.0質量部
・ポリアクリル酸ナトリウム(吸液樹脂、ボールミル粉砕により数平均粒子径2.5μmとしたもの):35.0質量部
・メチルベンゾイルベンゾエート(光重合開始剤):5質量部
上記成分を混合し、硬化性溶液Aとした。
<硬化性溶液B(ラジカル硬化性材料)>
・シリコーン変性ポリウレタンアクリレート:20質量部
・アクリロイルモルホリン(第1の硬化性材料):40.0質量部
・メチルベンゾイルベンゾエート(光重合開始剤):5質量部
上記成分を混合し、硬化性溶液Bとした。
<ブラックインク作製方法>
Cab−o−jet−300(キャボット社製)を超音波ホモジナイザーで30分間処理した後、遠心分離処理(7000r.p.m.,20分間)して顔料分散液(カーボン濃度12.8%)を得た。
次に、下記の各成分を十分混合し、1μmフィルターで加圧ろ過し、インクを調製した
・上記顔料分散液:40質量部
・グリセリン:20質量部
・サーフィノール465:1.5質量部
・純水:35質量部
<インク作製方法1>
顔料30質量部に、スチレン−マレイン酸共重合体のナトリウム中和塩を3質量部加え、さらにイオン交換水を加えて、総量を300質量部とした。この液を超音波ホモジナイ
ザーを用いて分散した。この液を遠心分離装置で、遠心分離をし、残部分100質量部を除去した。この上澄み液を1μmのフィルターに通過させて、分散液を得た。適量の前記分散液に、グリセリン10質量部、ジエチレングリコールモノブチルエーテル5質量部、界面活性剤0.03質量部、イソプロピルアルコール3質量部、イオン交換水及び水酸化ナトリウムを適量加え、総量が100質量部、顔料濃度が5重量%となるように調整した。これを、混合し、1μmのフィルターを通過させることにより、目的とするインクを得た。
−シアンインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.アシッドブルー199:5質量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.3質量部
・グリセリン:15質量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5質量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0質量部
・イソプロピルアルコール:3質量部
・イオン交換水:残部
計100質量部
−マゼンタインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.アシッドレッド52:3.5質量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.3質量部
・グリセリン:20質量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:5質量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0質量部
・イオン交換水:残部
計100質量部
−イエローインク−
上記インク作成方法1に従い以下に示す組成のインクを得た
・C.I.ダイレクトイエロ86:4.0質量部
・スチレン−マレイン酸−マレイン酸ナトリウム共重合体:0.4質量部
・グリセリン:15質量部
・ジエチレングリコールモノブチルエーテル:10質量部
・界面活性剤(サーフィノール465:日信化学社製):1.0質量部
・イオン交換水:残部
計100質量部
<密着性の評価>
PETシール紙(王子タック社製、PETC50/OPT1/YA10)を記録媒体として印字テストを実施し、クロスカット法(JIS K5600−5−6(ISO02409))によって、被硬化層Aの記録媒体Pに対する密着性の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、結果を表1に示す。
○:マス目の剥離個数:0個
△:マス目の剥離個数:1個以上15個以下
×:マス目の剥離個数:16個以上
<気泡混入の評価>
アート紙(OK金藤 王子製紙社製)を記録媒体として印字テストを10枚実施した。解像度1200×1200dpi・4ドットパターン・ドロップサイズ 2plの条件にて、3mmの格子パターンを印字して、格子内の気泡や隙間の個数を、目視および顕微鏡にて観察することによって被硬化層内における気泡混入の評価を行った。評価基準は以下の通りであり、評価結果を表1に示す。
○:目視で凝視しても気泡が確認できない。また、顕微鏡で観察した場合に気泡が0個、あるいはごく小さな気泡が5個以下。
△:目視で凝視しても、気泡が確認できない。また、顕微鏡で観察した場合に、ごく小さな気泡が6個以上15個以下。
×:目視で凝視すると、気泡が確認できる。また、顕微鏡で観察した場合に、ごく小さな気泡が16個以上。
<像流れの評価>
アート紙(OK金藤 王子製紙社製)を記録媒体として印字テストを実施し、形成された画像を目視観察することによって、像流れの評価を行った。結果を表2に示す。
○:像流れは発生していない。
△:像流れがわずかに発生しているが、許容範囲である。
×:像流れが発生し、許容範囲を超えている。
(試験例2)
硬化性溶液Aにポリアクリル酸ナトリウムを含めない以外は、試験例1と同様にして、試験例2を行った。評価結果を表1及び表2に示す。
(試験例3)
硬化性溶液Bを用いない以外は、試験例1と同様にして試験例3を行った。評価結果を表1に示す。
(試験例4)
硬化性溶液Aにポリアクリル酸ナトリウムを含めない以外は、試験例3と同様にして、試験例4を行った。評価結果を表1に示す。
試験例1及び試験例2では、試験例3及び試験例4に比べ、被硬化層Aの記録媒体Pに対する密着性が良好であった。また試験例1では、試験例3に比べ、気泡の混入が抑制された。さらに試験例1では、試験例2に比べ、像流れが抑制された。