JP5103715B2 - 電磁波妨害信号の発生源特定方法及びプログラム - Google Patents

電磁波妨害信号の発生源特定方法及びプログラム Download PDF

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本発明はデジタル回路を有する電子機器の電磁波妨害信号の発生源を特定するのに適用して好適な電磁波妨害信号の発生源特定方法及びその電磁波妨害信号の発生源特定処理を実行するプログラムに関する。
デジタル回路を有する多くの電子機器において、CPU、バス及び外部メモリ等を駆動するためのクロック発振回路等から放射される電磁波は、他の電子機器等の機能を妨害する電磁波妨害信号(EMI:Electro-magnetic Interference)の原因となり得ることから、米国規格協会(ANSI:American National Standards Institute)および国際無線障害特別委員会(The International special committee on Radio Interference:CISPR)等の公的機関によりEMI関連工業規格が策定され、政府機関である例えば米国連邦通信委員会(FCC:Federal communications Commission)等によりそのEMIレベルが規制されている。このため、一般に、電子機器等から放射される電磁波妨害信号の尖頭値(PK:Peak)または準尖頭値(QP:Quasi Peak)がFCCルール、CISPR22規格等に規定された放射レベルの限界値(リミット)を満たすか否かの規格適合判定を実施している。
電子機器等が規格のリミットを満たせなかった場合、商品設計者によりEMI対策検討および規格適合判定が繰り返し実施される。このEMI対策検討は、一般的に、商品設計者の勘と経験に頼ることが多い。さらに、近年のデジタル電子機器のテクノロジーは多様化されているため、複数のクロック信号もしくはそれに同期するデジタル伝送信号等の基本波や高調波が複雑に重畳する傾向にあり、電磁波妨害信号の発生源や伝達経路の特定が困難となっている。
ゆえに、電磁波妨害信号の最適な対策手段の選定が困難となり、過剰なEMI対策による商品コストの高騰を招いたり、EMI対策検討時間の増加による商品設計者への負担増大を招く傾向にある。
特許文献1には、従来の電磁波放射測定方法の例についての記載がある。
特開2001−343409号公報
上述した従来の電磁波放射測定方法での問題点を低減する方法として、既に複数の特許出願があるが、今までに提案されている方法では、以下に示す問題があった。
問題点1)
従来の電磁波妨害信号の発生源や、その伝達経路の特定処理では、電磁波妨害信号の変調率が非常に低い場合、すなわち搬送波と側波帯の信号レベル比が大きい場合(例えば、40dB以上)、側波帯のレベルがEMI測定機器の最低感度以下となるために側波帯(変調周波数)の抽出を行えず、EMI発生源や伝達経路の特定を行えない。図12は、側波帯のレベルがEMI測定機器の最低感度以下の波形例(この例では0dBが最低感度)であり、この例では搬送波以外の信号成分は、全て0dB以下となっている。
問題点2)
側波帯のレベルがEMI測定機器の最適感度以下(例えば、S/Nが30dB以下)となる場合、側波帯には測定誤差を含むことになる。一方、搬送波に含まれる誤差はわずかであり、これらの数値から変調率の抽出が的確に行えず、EMI発生源や伝達経路の特定を確度が低下する。図16は、側波帯のレベルがEMI測定機器の最適感度以下の波形例であり、搬送波と側波帯の信号が、0dBを越えているが、側波帯のレベルは0dB近傍の低いレベルになっている。
問題点3)
側波帯のレベルが変動している場合、変調率および変調周波数を的確に抽出するためには、測定機器のスイープ時間を遅く、あるいはスイープの回数を多くし、側波帯のレベルが的確に取得されるまで時間を要する。
本発明はこれらの点に鑑み、側波帯のレベルが低い場合でも良好に電磁波妨害信号の発生源特定や伝達経路の特定が行えるようにすることを目的とする。
本発明は、遠方界又は近傍界で測定した電磁波妨害信号の所定周波数範囲の信号を復調し、復調した所定周波数範囲の信号のオーディオ周波数帯に相当する周波数帯の信号を抽出し、抽出した周波数帯の信号を周波数解析して変調周波数を算出して、電磁波妨害信号の発生源又はその伝達経路を特定するようにしたものである。この場合、判断された側波帯の周波数のレベルが、測定誤差補正が必要なレベルであるとき、側波帯の周波数のレベルからノイズフロアのレベルを減算し、そのノイズフロアのレベルを減算して得た側波帯の周波数のレベルに含まれる測定誤差を、電磁波妨害信号の測定機器のS/Nと測定誤差の関係から求め、ノイズフロアのレベルを減算して得た側波帯の周波数のレベルから、求められた測定誤差を差し引いた補正を行い、その補正された側波帯の周波数のレベルから電磁波妨害信号の側波帯を検出する。
かかる処理を行うことで、複数の変調周波数の抽出時間の短縮化、検出精度の向上など図ることができる。
本発明によれば、複数の変調周波数の抽出時間を短縮化することができ、電磁波妨害信号の発生源又はその伝達経路を良好に特定することができる。また、EMI測定機器の最低感度レベル(スペクトラムアナライザの場合、ノイズフロア)近傍、あるいは、それ以下における変調周波数の抽出を実現する。抽出された変調周波数はコンピュータ等に記録して、EMI特徴照合時に用いるプロファイル情報とすることができる。
また、EMI測定機器の特性として公開されている測定誤差特性、あるいは任意手法により求められたEMI測定機器のS/Nと測定誤差の関係を用い、測定機器の最適感度以下で観測される信号レベルの補正を行って搬送波と側波帯のレベル比を算出することで、EMI測定機器の最適感度以下で観測される電磁波妨害信号の変調率算出確度向上を実現することができる。
以下、添付図面を参照して本発明の一実施の形態を説明する。
図1は、電波暗室での電磁界測定システム構成例であり、図2は、そのシステムを使用して、遠方界におけるEMI特徴抽出を行うシステム全体の構成例である。図2に示すように、電波暗室10で用いられるスペクトラムアナライザやEMIレシーバ等のEMI測定機器11及び同軸リレースイッチマトリクス12と、図1に示したターンテーブル5及びアンテナ7用のアンテナポジショナ等の駆動装置を、測定機器接続の標準規格である汎用計測インターフェースバス(GPIB:General Purpose Interface Bus)等でコントロールする電磁界自動測定システム構成としてある。即ち、測定システム構成としては、図1に示すように、電波暗室で構成されたリファレンスグランドプレーン6内に、ターンテーブル5を設け、そのターンテーブル5上に非金属製の台4を設置して、その台4の上に被試験機器(EUT)1及び周辺機器2,3を配置して、ターンテーブル5で回転させながら測定を行う。受信アンテナ7については、アンテナマスト8に取付けられて、例えば1mから4mの範囲でアンテナ高さを可変できる構成としてある。
そして、図2に示すように、受信アンテナ7で受信した信号は、EMI測定機器であるスペクトラムアナライザ11で測定されて、測定室20側に設置されたコンピュータ装置22に測定信号を供給する。ここで本例においては、コンピュータ装置22として、オーディオ信号の入力処理を行うサウンドボード22aを接続し、スペクトラムアナライザ11の出力(AF OUT)を、このサウンドボード22aのアナログオーディオ信号入力端子(AF IN)に供給する。サウンドボード22aに入力されたアナログ信号は、オーディオ周波数(AF)帯のアナログ信号をデジタル信号に変換する処理が行われる。コンピュータ装置22内では、デジタル化された信号の周波数成分について、高速フーリエ変換処理などを行って解析して、側波帯を抽出する。このコンピュータ装置22内での処理は、これらの処理機能を持つEMI評価用ソフトウェアが実装され、そのソフトウェアの実行で行われる。なお、ここでのオーディオ周波数帯とは、例えば0Hz〜20kHzなどのいわゆる可聴帯域に相当する周波数帯である。
スペクトラムアナライザ11や同軸リレースイッチマトリクス12のGPIB端子は、電波暗室10側のGPIBエクステンダ13及び測定室20側のGPIBエクステンダ21を介してコンピュータ装置22のGPIBボード22bと接続してある。図2の例では、両GPIBエクステンダ13,21間は、光ファイバケーブルで接続してあり、それぞれのGPIBエクステンダ13,21と機器の間はGPIBケーブルで接続してある。
また、コンピュータ装置22のGPIBボード22cには、ターンテーブルコントローラ23、アンテナポジションコントローラ24、信号発生器25、EMIレシーバ26などの機器が接続してある。遠方界におけるEMI検出に使用されるアンテナとしては、一般にダイポール、バイコニカル、ログペリオディックアンテナ等が用いられる。
図3は、近傍界EMI特徴抽出・照合におけるシステム構成例である。スペクトラムアナライザやEMIレシーバ等のEMI測定機器11と、これらをGPIB等でコントロールする電磁界自動測定システムとしてある。EMI測定機器11には、被試験機器(EUT)1の近傍に設置された磁界プローブとしての電磁界センサ11aが接続してある。図3ではGPIB等でコントロールする構成の詳細については省略してある。
ここで、EMI測定機器11が出力するオーディオ周波数(AF)帯のアナログ信号を、コンピュータ装置22のサウンドボード22aのオーディオ信号入力(AFIN)に供給して、このサウンドボード22aでデジタル信号に変換して、コンピュータ装置22に取り込ませる。取り込まれたデジタル化された信号は、その信号の周波数成分を解析機能して、側波帯を抽出および照合する機能を持つEMI評価用ソフトウェアによって処理される。
次に、本実施の形態の処理について説明する前に、以下の説明で使用される語句の定義を示しておく。図4は、これらの語句を示した波形である。
・fc: 搬送波の周波数
・fs: 側波帯の周波数。fc±fdにおける周波数
・fd: 変調周波数。|fc-fs|で算出される周波数の差
・Lc: 搬送波のレベル
・Ls: 側波帯のレベル
・Lm: 変調率。|Lc-Ls|で算出されるレベル差
・fAF: 周波数解析機能で算出される変調周波数(fd=fAFである)
・抽出EMI特徴−1:抽出されたEMIの特徴がfcとfAF(=0も含む)であるプロファイル情報
・抽出EMI特徴−2:抽出されたEMIの特徴がfcとfAFとLsであるプロファイル情報
また、変調周波数fAFの抽出条件について説明する。
検出信号の復調機能付スペクトラムアナライザを用いて変調周波数fAFを抽出する場合の初期条件設定例を示す。
・中心周波数:後述する図5のステップ4で微調された周波数。
・周波数スパン:ゼロスパンに設定
・RBW(Resolution bandwidth):スペクトラムアナライザにおけるオーディオ周波数(AF)出力の最大周波数+α
例えば、AF=20kHzの場合、RBW=100kHzである。
・VBW(Video bandwidth): 通常、自動(Auto)にしておく。
・SWT(Sweep Time): 通常、自動(Auto)にしておく。
・DEMOD(AF Demodulators): AMまたはFMの復調を行う
変調周波数fAFのEMI特徴抽出・照合時においては、変調周波数fAF抽出時の設定と同一条件とする。
また、復調機能付スペクトラムアナライザを用いて変調率Lmを抽出する場合の初期条件設定例を示す。
・中心周波数:後述する図5のステップ4で微調された周波数を用いる
・周波数スパン:後述する図6のステップ11で算出された変調周波数fAFの2倍以上とする。例えば、fAF=10kHzの場合、周波数スパン=30kHzである。
・RBW:後述する図6のステップ11で算出された変調周波数fAFの1/2以下とする。例えば、fAF=10kHzの場合、RBW=1kHzとする。
・VBW:通常、自動(Auto)にしておく。
・SWT:通常、自動(Auto)にしておく。
変調率LmのEMI特徴抽出・照合時においては、変調率Lm抽出時の設定と同一条件とする。
次に、本例のEMI特徴抽出法について、フローチャートを参照して説明する。本例の場合には、例えば図15に示すような側波帯のS/Nが十分な場合だけでなく、従来問題であった図16や図12に示すような側波帯のレベルがEMI測定機器の最低感度(ノイズフロア)近傍あるいはそれ以下においても、また変調率が数%以下であった場合において、変調周波数fAFを短時間に的確に抽出できる点を特徴とする。
以下に、EMI測定機器にスペクトラムアナライザを用いた場合を例に、EMI特徴抽出手順を説明する。まず、図5のフローチャートを参照して電磁界測定処理について説明すると、スペクトラムアナライザの最大値ホールド機能を利用して周波数別に最大値を取得する(ステップS1)。そして、規格リミット(所定マージン)を満たすか否か判断され(ステップS2)、規格リミット(所定マージン)を満たす場合には測定を終了し、規格リミット(所定マージン)を満たさない場合には規格リミットを満たさない周波数を全て抽出し(ステップS3)、周波数別に最大放射周波数の特定を行い(ステップS4)、周波数放射方向の特定を行い(ステップS5)、周波数別にQP値を取得する(ステップS6)。このときには、EMIレシーバのQuasi Peak検波モードが使用される。そして、周波数別にリミットが判定される(ステップS7)。そして、EMIの特徴を抽出したい周波数(例えば、規格リミットに対する所定のマージンが不足した周波数)を選択した後に(ステップS8)、EMIの特徴抽出を、図6のフローチャートに従って行う。
次に、EMIの特徴抽出を行う図6のフローチャートに示した処理について説明する。まず、スペクトラムアナライザの設定を、項目4に記述した変調周波数fAF抽出条件とする(ステップS9)。そして、ステップS10及びステップS11において、スペクトラムアナライザの復調機能により復調されたAF信号出力を、サウンドボードへ入力する。ここで信号のデジタル化をしてからコンピュータへ取り込み、周波数解析機能(例えば、オーディオ周波数帯の高速フーリエ変換機能)を用いて周波数変換し、変調周波数fAFを抽出する。図13は、変調周波数fAFの抽出結果例を示した図である。この図13の例では、変調周波数8kHzで変調率1%のAM変調波の変調周波数抽出結果例である。変調周波数fAFは、複数存在する場合がある。
次に、ステップS12において、変調周波数fAFが抽出されたか否か判断する。ここで、図13に示すような変調周波数fAFが抽出された場合はステップS13へ進み、例えば図14に示すように変調周波数fAFが抽出されなかった場合には、ステップS20へ進む。
ステップS13では、上述した変調率Lm抽出条件を設定する。そして、ステップS14で、Lm抽出用データの取得を行う。ここでは、例えば、以下のいずれかで行う。
1)スペクトラムアナライザのMaxHold機能を活用する。
2)スペクトラムアナライザのAverage機能(平均波形)を活用する。
3)スペクトラムアナライザのClear/Write機能を活用し、スイープ毎のスペクトラムデータをコンピュータに取り込み、最大波形または平均波形を算出する。
次に、ステップS15として、ステップS14で得られた波形における最大値の周波数を搬送波周波数fcとし、ステップS11で算出された変調周波数fAF(=fd)を用いて側波帯の周波数fs(=fc±fAF)を算出する。次に、算出されたfc、fsにおけるレベルLc、Lsを抽出する。そして、ステップS16で、ステップS15で抽出された搬送波及び側波帯のレベルLc、Lsを用いて、変調率Lm(=Lc-Ls)を算出する。
側波帯のレベルLsのS/Nが十分でない場合(通常、30dB以下)、側波帯のレベルLsは図16に示すように測定誤差を含む。そのため、EMI特徴照合時の一致率を悪化させてしまう。ゆえに、ステップS17で、側波帯のレベルLsとノイズフロアの差を算出し、しきい値AdB(例えば、測定誤差が1dB以下となるA=15dB)以上となる側波帯の周波数fsを抽出する。そして、ステップS17で側波帯の周波数fsが抽出された場合はステップS19へ進み、側波帯の周波数fsが抽出されなかった場合はステップS20へ進む(ステップS18)。
ステップS19では、搬送波周波数fc、変調周波数fAF、変調率Lmを抽出し、EMI特徴−2としてコンピュータ装置内に保存し、EMI特徴照合時のプロファイル情報とする。
また、ステップS20では、搬送波周波数fc、変調周波数fAFを抽出EMI特徴−1としてコンピュータ装置内に保存し、EMI特徴照合時のプロファイル情報とする。
なお、ここまでの処理では、データ処理計算時間短縮のため、図6のステップS13〜ステップS17において、周波数解析機能により算出された変調周波数fAFを活用して変調率Lmを抽出しているが、既に知られた別の処理で変調率Lmを抽出しても良い。
次に、EMI測定機器にスペクトラムアナライザを用いた場合を例に、EMI特徴抽出・照合手順を説明する。
遠方界で観測されたEMIの発生源や伝達経路の特定を行うため、上述した図6のフローチャートのEMI特徴抽出法で抽出された特徴と、近傍界におけるEMIの特徴を図7、図8、図9、図10に示すフローチャートに従って、照合を実施し、一致率を算出する。EMI特徴照合の一致率算出は、照合終了フラグが成立するまで、繰返しでリアルタイムに行われる。
まず、図7のフローチャートについて説明すると、ステップS21で、図6のフローチャートのEMI特徴抽出法で抽出を行った周波数fcをスペクトラムアナライザに設定する。そして、次に、ステップS21で設定された周波数のEMIの特徴が、抽出EMI特徴−1の場合はステップS23へ進み、抽出EMI特徴−2の場合はステップS24へ進む(ステップS22)。そして、ステップS23では、図8に示すEMI特徴照合法をコールする。ステップS24では、図9に示すEMI特徴照合法をコールする。
次に図8に示すEMI特徴照合法のフローチャートについて説明すると、ステップS25において、図7のステップS21で設定された周波数のEMI特徴抽出法で用いられた変調周波数fAF抽出条件をスペクトラムアナライザに設定する。
そして、照合途中において、照合終了フラグが成立した場合(例えば、照合終了ボタンをクリック)、照合を終了する。照合終了フラグが成立していない場合、ステップS27を実行する(ステップS26)。
ステップS27では、スペクトラムアナライザの復調機能により復調されたAF信号出力を、サウンドボードへ入力する。ここで信号のデジタル化をしてからコンピュータへ取り込み、周波数解析機能(例えば、AF周波数帯FFT機能)を用いて周波数変換し、変調周波数fAFを抽出する(ステップS28)(図13参照)。変調周波数fAFは、複数存在する場合がある。
そして、ステップS28で算出された変調周波数fAFと抽出EMI特徴−1の変調周波数fAFから一致率を算出し(ステップS29,S30)、その変調周波数fAFの一致率をコンピュータディスプレイに出力する(ステップS31)。そして、ステップS26へ戻る。変調周波数fAFの一致率の算出方法は任意であるが、例えば、2波の変調周波数fAFのうち、1波が一致する場合は50%、2波共に一致する場合は100%とする。
次に、図9に示すフローチャートについて説明すると、ステップS32で、変調周波数fAFの抽出条件を設定する。ここでのスペクトラムアナライザの設定は、図7のステップS21で設定されたEMI特徴抽出法で用いられた変調周波数fAF抽出条件と同一にする。
次に、照合途中において、照合終了フラグが成立した場合(例えば、照合終了ボタンをクリック)、照合を終了する。照合終了フラグが成立していない場合、ステップS34へ進む(ステップS33)。ステップS34及びステップS35では、スペクトラムアナライザの復調機能により復調されたAF信号出力を、サウンドボードへ入力する。ここで信号のデジタル化をしてからコンピュータへ取り込み、周波数解析機能(例えば、AF周波数帯FFT機能)を用いて周波数変換し、変調周波数fAFを抽出する(図13参照)。変調周波数fAFは、複数存在する場合がある。
ステップS36、ステップS37、ステップS38としては、ステップS35で算出されたfAFと抽出EMI特徴−2の変調周波数fAFから一致率を算出し、その変調周波数fAFの一致率をコンピュータディスプレイに出力する。変調周波数fAFの一致率の算出方法任意であるが、例えば、照合時の変調周波数fAFの一致する数の割合がある。
その後、ステップS39として、ステップS37で算出された一致率がしきい値A%以上(例えば、A=75)の場合はステップS40へ進み、一致率が閾値A%未満である場合はステップS33へ戻る。
ステップS40では、発生源および伝達経路の一致確度を向上するため、変調率Lmによる照合を実施する場合はステップS41へ進み、実施しない場合はステップS33へ戻る。変調率Lmによる照合の実行/不実行の選択は、事前に設定しておいても良い。
ステップS41では、スペクトラムアナライザの設定を、図7のステップ21で設定された周波数のEMI特徴抽出法で用いられた変調率Lm抽出条件と同一とする。その後、ステップS42で変調率Lm抽出用データの取得を行う。変調率Lm抽出用データの取得は、例えば、以下のいずれかで行う。
1)スペクトラムアナライザのMaxHold機能を活用する。
2)スペクトラムアナライザのAverage機能を活用する。
3)スペクトラムアナライザのClear/Write機能を活用し、スイープ毎のスペクトラムデータをコンピュータに取り込み、最大波形または平均波形を算出する。
そして、ステップS43として、ステップS42で得られた波形における最大値を搬送波の周波数fcとし、ステップS35で算出された変調周波数fAF(=fd)を用いてfs(=fc±fAF)を算出する。次に、Lcと算出された側波帯の周波数fsにおけるレベルLsを抽出する。そして、ステップS44として、ステップS43で抽出されたレベルLc、Lsを用いて、変調率Lm(=Lc-Ls)を算出する。
ここで、図6のステップS17において、閾値Aを15dB以下に設定した場合、図11に示す測定誤差を含むため、一致率の悪化が生じる。この抑制のため、測定誤差補正の有無をあらかじめ設定しておき、測定誤差補正を実施する場合はステップ46へ進み、実施しない場合はステップS47へ進む(ステップS45)。
ステップS46では、図10のフローチャートに示す測定誤差補正法をコールする。その後、ステップS47及びステップS48として、ステップS43で算出された変調周波数fAFと抽出EMI特徴−2の変調率Lmを用いて一致率を算出し、それをコンピュータディスプレイに出力する。そして、ステップS32へ戻る。変調率Lmの一致率の算出方法は任意で、例えば、抽出EMI特徴―2の変調率Lmと照合時の変調率Lmの差分に重み付けをし、その重み付け結果に応じた割合を算出する方法がある。
次に、図10のフローチャートに示す測定誤差補正法について説明する。この処理は、EMI特徴抽出・照合時の側波帯のレベルLsについてのみならず、あらかじめ取得された抽出EMI特徴−2の側波帯のレベルLsについても実施する。
まず、ステップS49で、(側波帯のレベル)−(ノイズフロアのレベル)を算出する。次に、ステップS50で、図11に示すようなS/Nと測定誤差の関係を用いて、ステップS49で算出された値における測定誤差を求める。さらに、側波帯のレベルは測定誤差分高い値となっているため、ステップS51で、変調率Lmを測定誤差分補正(差し引く)する。
なお、ここまでの説明では、データ処理計算時間短縮のため、ステップS41〜ステップS44およびステップS46において、周波数解析機能により算出された変調周波数fAFを活用して変調率Lmを抽出し、変調率Lmの一致率を算出しているが、既に知られた別の処理を適用して、変調周波数fdと変調率Lmの一致率を算出しても良い。
ここまで説明した本実施の形態の処理を行うことで、以下のような効果を有する。
・EMI発生源および伝達経路特定時間短縮
周波数解析機能を用いて変調周波数を算出してEMI特徴を抽出・照合することにより、その時間を大幅に短縮できる。例えば、
・側波帯レベルの最大値取得に必要な観測時間を10s
・スイープタイムを200ms
・変調周波数を抽出する周波数の数を2
・クロック発振源の数を5
・1ヶ所あたりの観測ポイント数4
とすると、変調周波数の抽出時間は
従来は、10s×4×5=200s必要であったのが、本実施の形態では、200ms×4×5=4sとなり、抽出時間を1/50に短縮できる。
・照合確度の向上
従来手法では認知できない変調率数%程度のEMIや、側波帯のレベルがEMI測定機器の最低感度(スペクトラムアナライザの場合はノイズフロア)近傍あるいはそれよりわずかに下回るEMIの変調周波数を抽出して照合を実現できる。また、最適感度以下の側波帯について測定誤差補正法を用いることで変調率算出角度を向上できる。以上2つの方法の組み合わせにより、より多くのEMIの特徴照合の確度を向上させることができる。
・設計者の負担軽減
商品設計者の評価スキルに依存することなく、EMI発生源の特定や伝達経路の特定を短時間かつ的確に行える。設計者はEMI対策案の考案に集中することができる。
なお、ここまで説明した実施の形態では、1台のEMI測定機器を使用して測定した例について説明したが、例えば図17に示すように、電磁界センサ11a(Magnetic -Probeなど)から抽出されたEMIを、分波器31を介して2台のEMI測定機器11,32に同時に入力させる構成としてもよい。一方のEMI測定機器11で復調したアナログオーディオ帯域信号(AF信号)は、コンピュータ装置22のサウンドボード22aに入力させて、アナログ/デジタル変換してFFT等による周波数解析を行い、変調周波数fAFの抽出・照合を実施、もう一方のEMI測定機器32の出力についてもコンピュータ装置22に入力させて、別の処理で変調率Lmの抽出・照合を同時に行う。このようにしたことにより、より高速にEMI特徴の抽出・照合を行うことができる。
また、EMI測定機器として、オーディオ復調機能を持たないEMI測定機器を用いる場合、例えば図18に示すように、EMI測定機器11が出力する中間周波数(IF)を、ラジオ放送受信機であるAM/FM受信機33に入力してオーディオ周波数を復調処理させる。これをコンピュータ装置22のサウンドボード22a等によりデジタル化してコンピュータ装置22へ取り込み、周波数解析機能(例えば、AF周波数帯FFT機能)を用いて変調周波数fAFを抽出する。この変調周波数fAFを用いて抽出・照合を実施することで、上述した例と同様に検出できる。
本発明の一実施の形態が適用される測定システム例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態が適用されるEMI特徴抽出システム例を示す構成図である。 本発明の一実施の形態が適用されるEMI特徴抽出・照合システム例を示す構成図である。 EMI特徴データの定義を説明するための波形図である。 本発明の一実施の形態による電磁界測定例を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態によるEMI特徴抽出例を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態によるEMI特徴照合手順の例を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態によるEMI特徴照合例(例1)を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態によるEMI特徴照合例(例2)を示すフローチャートである。 本発明の一実施の形態による測定誤差補正例を示すフローチャートである。 S/Nと測定誤差の関係例を示す特性図である。 変調波形例を示す波形図である。 変調波形抽出結果例を示す波形図である。 非変調波形抽出結果例を示す波形図である。 側波帯のS/Nが10dB以上の例を示す波形図である。 側波帯のS/Nが5dB以下の例を示す波形図である。 本発明の他の実施の形態によるEMI特徴抽出システム例を示す構成図である。 本発明のさらに他の実施の形態によるEMI測定システム例を示す構成図である。
符号の説明
1…被試験機器(EUT)、2,3…周辺機器、4…非金属製の台、5…ターンテーブル、6…リファレンスグランドプレーン、7…受信アンテナ、8…アンテナマスト、10…電波暗室、11…EMI測定機器(スペクトルアナライザ)、11a…電磁界センサ、12…同軸リレースイッチ、13…GPIBエクステンダ、20…測定室、21…GPIBエクステンダ、22…コンピュータ装置、22a…サウンドボード、22b,22c…GPIBボード、23…ターンテーブルコントローラ、24…アンテナポジションコントローラ、25…信号発生器、26…EMIレシーバ、31…分波器、32…EMI測定機器、33…AM/AM受信機

Claims (2)

  1. 電波暗室に配置された被試験機器が発する電磁波妨害信号の発生源を特定する電磁波妨害信号の発生源特定方法において、
    前記電波暗室内のアンテナ又は磁気プローブで受信した電磁波妨害信号の所定周波数範囲の信号のAM復調又はFM復調を行い、
    前記AM復調又はFM復調した前記所定周波数範囲の信号のオーディオ周波数帯に相当する周波数帯の信号を抽出し、
    前記抽出した周波数帯の信号を周波数解析して変調周波数を算出して、算出された変調周波数から側波帯の周波数を算出し、その算出した側波帯の周波数のレベルを判断して、電磁波妨害信号の側波帯を検出して、電磁波妨害信号の発生源又はその伝達経路を特定する電磁波妨害信号の発生源特定方法であり、
    判断された側波帯の周波数のレベルが、測定誤差補正が必要なレベルであるとき、側波帯の周波数のレベルからノイズフロアのレベルを減算し、
    そのノイズフロアのレベルを減算して得た側波帯の周波数のレベルに含まれる測定誤差を、電磁波妨害信号の測定機器のS/Nと測定誤差の関係から求め、
    ノイズフロアのレベルを減算して得た側波帯の周波数のレベルから、求められた測定誤差を差し引いた補正を行い、その補正された側波帯の周波数のレベルから電磁波妨害信号の側波帯を検出する
    電磁波妨害信号の発生源特定方法。
  2. 演算処理装置に実装させることで、電波暗室に配置された被試験機器が発する電磁波妨害信号の発生源特定処理を行うプログラムにおいて、
    前記電波暗室内のアンテナ又は磁気プローブで受信した電磁波妨害信号の所定周波数範囲の信号をAM復調又はFM復調する復調処理と、
    前記AM復調又はFM復調した前記所定周波数範囲の信号のオーディオ周波数帯に相当する周波数帯の信号を抽出する抽出処理と、
    前記抽出した周波数帯の信号を周波数解析して変調周波数を算出して、算出された変調周波数から側波帯の周波数を算出し、その算出した側波帯の周波数のレベルを判断して、電磁波妨害信号の側波帯を検出して、電磁波妨害信号の発生源又はその伝達経路を特定する特定処理とを行うプログラムであり、
    前記特定処理において、判断された側波帯の周波数のレベルが、測定誤差補正が必要なレベルであるとき、側波帯の周波数のレベルからノイズフロアのレベルを減算する減算処理と、
    前記減算処理でノイズフロアのレベルを減算して得た側波帯の周波数のレベルに含まれる測定誤差を、電磁波妨害信号の測定機器のS/Nと測定誤差の関係から求める測定誤差算出処理と、
    前記減算処理でノイズフロアのレベルを減算して得た側波帯の周波数のレベルから、求められた測定誤差を差し引いた補正を行い、その補正された側波帯の周波数のレベルから電磁波妨害信号の側波帯を検出する補正処理とを行う
    プログラム。
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