JP5102979B2 - レーザー光の出射方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レーザー光の出射方法に関し、特に、ファイバレーザーに用いられる光ファイバによるレーザー光の出射方法に関するものである。
近年、レーザー加工などの分野では、高出力で高ビーム品質なレーザー光が求められている。そのため、光ファイバをレーザー媒質として利用するファイバレーザーにおいても、レーザー光の高出力化及び高ビーム品質化が望まれている。
上記ファイバレーザーのレーザー媒質には、コアに光増幅成分として希土類元素がドープされた光ファイバがよく用いられている。このファイバレーザーでは、一方のファイバ端から励起光が入射されると、コア中の希土類元素が励起され、その励起された希土類元素から発振した光がコアを伝搬した後に他方のファイバ端からレーザー光として出射される。
例えば、特許文献1には、低屈折率のクラッド内に希土類元素を含んだ高屈折率のコアを複数個設けた希土類元素添加マルチコアファイバにおいて、中心部のコアの希土類元素の添加量を最も多くし、中心から離れるにつれて各コアの希土類元素の添加量を少なくすることにより、励起光を効率よく利用できることが記載されている。
特許第2713031号公報
ところで、レーザー光のビーム品質を高めるためには、光ファイバのコアの径を小さくすること、及びコアの開口数(NA:Numerical Aperture)を低くすることが考えられる。
しかしながら、コアの径を単に小さくすると、非線形効果によってビーム品質が低下するおそれがある。なお、上記非線形効果とは、光ファイバの屈折率が光強度に依存して変化することにより、信号波形が劣化したり、光ファイバ中を伝搬する異なる波長の光信号同士が影響し合って新たな干渉雑音光を作り出したりする現象である。
また、従来の希土類元素ドープファイバにおいてコアのNAを低くするには、ドープするドープ材料の屈折率差でコアのNAを調整しなければならない。例えば、コアのNAを0.06とするためには、比屈折率差を0.09%よりも小さくする必要がある。この0.09%という比屈折率差は、通信用として用いられる光ファイバにおける比屈折率差(0.35%)と比較してかなり小さいので、ドープ材料による屈折率差の調整のみによって、コアのNAを例えば0.1以下にすることは困難である。
さらに、コアの周囲のクラッドに空孔(ホール)を有する従来のホーリーファイバでは、クラッドのホール構造によって比屈折率差を調整するので、コアのNAを低くするためのホール径の制御が困難である。
一方、レーザー光の出力を高くするためには、光ファイバのコアの径を大きくして、励起光を多く入射させることが考えられる。しかしながら、コアの径を単に大きくすることは、レーザー光のビーム品質を低下させてしまうことになる。
このように、レーザー光の高出力化とビーム品質の向上とは、トレードオフの関係にあるので、レーザー光の高出力化と高ビーム品質化との両立は、困難である。
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、レーザー光のビーム品質及び出力を高めることにある。
上記目的を達成するために、本発明は、コアを構成する各コア形成部が密に配列された光ファイバにおいて、一方のファイバ端から励起光を入射させ、コア中で発振した光を他方のファイバ端から単一のレーザー光として出射させるようにしたものである。
具体的に本発明に係るレーザー光の出射方法は、各々、光増幅成分がドープされ、互いに並行に延びると共に互いに離間して配置された複数のコア形成部を含み、各コア形成部によって構成された相対的に屈折率の高い領域と、各コア形成部の周囲に配置された相対的に屈折率の低い領域とが混在しているコアと、上記コアの周囲に設けられたクラッドとを備え、上記複数のコア形成部が密に配列された光ファイバを用いるレーザー光の出射方法であって、上記光ファイバにおいて、一方のファイバ端に励起光を入射させ、上記コア中で上記光増幅成分によって増幅して発振した光を他方のファイバ端からニアフィールドパターン形状が単一の山であるシングルモード光のレーザー光として出射させることを特徴とする。
上記の方法によれば、光ファイバでは、各々、光増幅成分がドープされて相対的に高い屈折率を有する複数のコア形成部が、一方のファイバ端に励起光を入射させ、コア中で光増幅成分から発振した光を他方のファイバ端から単一のレーザー光として出射させるように密に配列されているので、コア内において、各コア形成部によって構成される相対的に屈折率の高い領域と、各コア形成部の周囲に配置する相対的に屈折率の低い領域とが混在している。そのため、コアの実効的な屈折率が相対的に低くなるので、コアの実効的な比屈折率差が小さくなる。これにより、コアのNAが低下するので、ファイバ端から出射されるレーザー光のビーム品質が高くなる。
また、コアが互いに並行に延びる複数のコア形成部を含んでいるので、コアの径が比較的大きくなる。そのため、レーザー光のパワー密度が下がって、非線形効果が起こりにくくなるので、結果としてレーザー光の出力が高くなる。
したがって、レーザー光のビーム品質及び出力を高めることが可能になる。
上記レーザー光のニアフィールドパターンにおける最大高さの1/e 2 (eは自然対数の底)になるときの直径として定義されるコアのモード径は、20μm以上であり、上記コアの開口数は、0.1以下であってもよい。
上記の方法によれば、コアのモード径が大きくなっていると共に、コアのNAが低くなっているので、本発明の作用効果が具体的に奏される。
上記クラッドは、上記コア側に設けられた第1クラッドと、該第1クラッドの周囲に設けられた第2クラッドとを備えていてもよい。
上記の方法によれば、クラッドが第1クラッド及び第2クラッドを備えているので、光ファイバがダブルクラッドファイバとなる。そして、そのダブルクラッドファイバでは、一方のファイバ端から入射させた励起光が第2クラッドに囲まれた第1クラッド内を伝搬する間に、励起光がコアを通過することにより、コア中の光増幅成分が励起され、その励起された光増幅成分から発振した光がコアを伝搬した後に他方のファイバ端からレーザー光として出射されることになる。
上記光増幅成分は、エルビウム、イッテルビウム及びリンを含んでいてもよい。
上記の方法によれば、光増幅成分としてリンが含まれているので、エルビウムの蛍光寿命が短くなり、イッテルビウムの励起サイトからエルビウムの励起サイトへのエネルギートランスファーが起こりやすくなる。
上記第2クラッドには、上記コアに沿って延びる複数の細孔が形成されていてもよい。
上記の方法によれば、第2クラッドに形成された複数の細孔によって、第2クラッドの屈折率が低くなるので、第1クラッドのNAが高くなる。そのため、第1クラッドに多くの励起光を入射させられるので、ファイバ長を短くすることが可能になり、非線形効果が抑制される。
本発明によれば、コアを構成する各コア形成部が密に配列された光ファイバにおいて、一方のファイバ端から励起光を入射させ、コア中で発振した光を他方のファイバ端から単一のレーザー光として出射させるので、レーザー光のビーム品質及び出力を高めることができる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
《発明の実施形態1》
図1〜図6は、本発明に係る光ファイバの実施形態1を示している。ここで、図1は、本実施形態の光ファイバ10の断面図であり、図2は、光ファイバ10を構成するコア2の拡大断面図である。そして、図3は、光ファイバ10の屈折率分布図である。
光ファイバ10は、図1に示すように、ファイバ中心となるコア2と、コア2の周囲に設けられたクラッド3とを備えている。
コア2は、例えば、互いに並行に延びる19本のコア形成部1を有している。そして、各コア形成部1は、コア2において、図2に示すように、その中心が三角格子をなすように三角型の規則配置しているので、コア2の横断面は略正六角形状になっている。また、各コア形成部1は、ファイバ端から単一のレーザー光を出射するように密に配列されている。さらに、コア2のモード径は、20μm以上であり、コア2の開口数(NA)は、0.1以下である。
各コア形成部1は、光増幅成分として、エルビウム(Er)などの希土類元素がドープされた石英により構成され、図3に示すように、石英単体により構成されたクラッド3よりも屈折率nが高くなっている。
上記構成の光ファイバ10では、一方のファイバ端からコア2に入射された励起光によって、コア2中の希土類元素が励起され、その励起された希土類元素から発振した光がコア2を伝搬した後に他方のファイバ端からレーザー光として出射される。
次に、上記構成の光ファイバ10の製造方法について図5及び図6を用いて説明する。ここで、図5は、光ファイバ10を製造するためのプリフォーム30aの断面図であり、図6は、プリフォーム30aを構成するコアロッド配置部12の拡大断面図である。なお、本実施形態の製造方法は、コアロッド作製工程、プリフォーム作製工程及び線引き工程を備えている。
<コアロッド作製工程>
まず、MCVD(Modified Chemical Vapor Deposition)法により、中心軸にエルビウムがドープされた石英からなるコアロッド母材を作製する。
続いて、コアロッド母材を加熱及び延伸した後、フッ酸(HF)によるエッチングを行うことにより、例えば、直径2.5mm及び長さ50mmで、図6に示すように、ロッド中心部11aと、ロッド中心部11aの周囲に設けられたロッド外周部11bとを有する円柱状のコアロッド11を19本作製する。ここで、エルビウムがドープされたロッド中心部11aの直径は、例えば、1.2mmである。
<プリフォーム作製工程>
まず、例えば、外径26mm、内径14mm及び長さ50mmの石英製の円筒状のサポート管13aの内部に、図5に示すように、各コアロッド11を三角格子状に配置すると共に、サポート管13aの内壁と各コアロッド11との隙間に直径0.5mm(又は0.4mm)及び長さ50mmの石英からなる円柱状のスペーサロッド(不図示)を挿入する。
続いて、サポート管13aの内部に塩素ガスを流すことにより脱水処理を行い、その後、酸水素バーナを用いてガス圧を調整しながら、サポート管13a、コアロッド11及びスペーサロッドからなる母材を一体化させる。
次いで、一体化させた母材を延伸して外径を26mmから10.5mmに縮径した後に、HFによるエッチングを行うことにより、外径を9.5mmに縮径する。
さらに、水分の混入に注意しながら、石英からなるパイプ13bの被覆、及びその延伸を繰り返しながら、図5に示すように、直径1.7mmのコアロッド配置部12を有する外径25.3mmのプリフォーム30aを作製する。
<線引き工程>
プリフォーム30aを、電気炉で加熱及び延伸して、ファイバ状に線引きする。このとき、プリフォーム30aを構成する19本のコアロッド11(コアロッド配置部12)によってコア2が形成され、プリフォーム30aを構成するサポート管13(13a及び13b)によってクラッド3が形成される。
以上のようにして、光ファイバ10を製造することができる。
次に、具体的に行った実験について説明する。
本発明の実施例として、上記実施形態と同じ製造方法で、光ファイバ10に対応する光ファイバF1を製造した。
具体的には、以下の表1に示す構成で光ファイバF1を製造した。なお、表1の右欄は、光ファイバF1と同様な構成材料によって比較例として製造したシングルコアの光ファイバSCFのデータである。
Figure 0005102979
ここで、表1の単体コア径及び単体コア間隔は、それぞれ、図2におけるd及びPの平均値である。なお、単体コア間隔Pは、各単体コア、すなわち、各コア形成部1の中心間の距離である。
また、表1のマルチコア径は、5本のコア形成部1が並んだコア2における最大径である。
さらに、表1のコア・NFP(1/e)は、波長1.55μmのレーザーダイオードを用いて、ファイバ端面のコア2に励起光を入射させ、ファイバの出射端のニアフィールドパターン(NFP)を測定して算出されたコアのモード径である。ここで、図4は、ファイバの出射端におけるNFPのx軸(又はy軸)に沿った断面模式図である。そして、上記コア・NFP(1/e)は、図4のNFPにおいて、高さが最大高さHの1/eになるときの直径である。なお、1/eのeは、自然対数の底である。
また、図4では、NFPのパターン形状が単一の山になっているので、シングルモードの光が出射されたことが確認された。仮に、マルチモードの光が出射された場合には、NFPのパターン形状が複数の山を有することになる。
さらに、表1の実効コアΔは、ファイバの出射端のファーフィールドパターン(FFP)を測定して算出された値である。
表1における光ファイバF1及びSCFを各データを比較すれば分かるように、両ファイバにおいてコアの比屈折率差Δに大差がないが、実施例の光ファイバF1では、図3に示すように、コア2内に希土類元素がドープされた石英からなる屈折率nの高い領域と石英単体からなる屈折率nの低い領域とが混在することにより、実効的に屈折率が低下して実効コアΔ(=0.07)がかなり小さくなった。これにより、コアのNA(=0.054)も低下し、コア・NFP(1/e)(=25.1)が拡大した。また、光ファイバF1におけるコア2の吸収係数(=8.2)は、光ファイバSCFの2/3程度となった。
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ10によれば、各々、光増幅成分としてエルビウムがドープされて相対的に高い屈折率を有する複数のコア形成部1がファイバ端から単一のレーザー光を出射するように密(例えば、図2のP=4.1μm)に配列されているので、コア2内では、エルビウムがドープされた石英からなる相対的に屈折率nの高い領域(各コア形成部1)と、各コア形成部1の周囲に配置され石英単体からなる相対的に屈折率nの低い領域とが混在している。そのため、コア2の実効的な屈折率が相対的に低くなるので、コア2の実効的な比屈折率差Δが小さくなる。これにより、コア2のNAが低下するので、ファイバ端から出射されるレーザー光のビーム品質を高めることができる。
また、コア2が互いに並行に延びる複数のコア形成部1を含んでいるので、コア2の径が比較的大きくなる。そのため、レーザー光のパワー密度が下がって、非線形効果が起こりにくくなるので、結果としてレーザー光の出力を高めることができる。
したがって、光ファイバ10において、出射されるレーザー光のビーム品質及び出力を高めることができる。
《発明の実施形態2》
図7及び図8は、本発明に係る光ファイバの実施形態2を示している。ここで、図7は、本実施形態の光ファイバ20の断面図である。なお、以下の各実施形態において、図1〜図6と同じ部分については同じ符号を付して、その詳細な説明を省略する。
光ファイバ20は、図7に示すように、ファイバ中心となるコア2と、コア2の周囲に設けられた第1クラッド4と、第1クラッド4の周囲に設けられた第2クラッド5と、第2クラッド5の周囲に設けられたサポート層6とを備えたダブルクラッドファイバである。
第1クラッド4は、上記実施形態1の光ファイバ10におけるクラッド3と実質的に同じであるので、詳細な説明を省略する。
第2クラッド5は、各々、コア2に沿って延びる複数の細孔5aを有し、石英により構成されている。そして、第2クラッド5の屈折率は、複数の細孔5a内の空気の屈折率と、その細孔5a以外の部分の石英の屈折率とが複合したものとなり、第1クラッド4の屈折率、すなわち、石英の屈折率よりも低くなっている。
サポート層6は、石英により構成されている。
上記構成の光ファイバ20では、一方のファイバ端から入射させた励起光が第1クラッド4を伝搬する間に、励起光がコア2を通過することにより、コア2中の希土類元素が励起され、その励起された希土類元素から発振した光がコア2を伝搬した後に他方のファイバ端から出射される。
次に、上記構成の光ファイバ20の製造方法について図8を用いて説明する。ここで、図8は、光ファイバ20を製造するためのプリフォーム40の断面図である。なお、本実施形態の製造方法は、コアロッド作製工程、プリフォーム作製工程及び線引き工程を備えている。本実施形態のコアロッド作製工程は、上記実施形態1のコアロッド作製工程と実質的に同じであるので、詳細な説明を省略する。
<プリフォーム作製工程>
まず、上記実施形態1のプリフォーム作製工程と同様な処理を行い、例えば、外径17.5mmのプリフォーム母材30bを作製する。なお、このプリフォーム母材30bと上記実施形態1のプリフォーム母材30aとは、その外径が異なるだけである。
次いで、例えば、外径29mm及び内径19mmの石英製の円筒状のサポート管16の内部に、図8に示すように、プリフォーム母材30bを位置付けると共に、サポート管16の内壁とプリフォーム母材30bとの隙間に外径500μm及び内径440μmの石英からなる円筒状のキャピラリ15を複数本挿入することにより、プリフォーム40を作製する。
<線引き工程>
プリフォーム40を、電気炉で加熱及び延伸して、ファイバ状に線引きする。このとき、プリフォーム母材30bを構成する19本のコアロッド11(コアロッド配置部12)によってコア2が形成され、プリフォーム母材30bを構成するサポート管13によって第1クラッド4が形成され、プリフォーム40を構成する各キャピラリ15によって第2クラッド5が形成され、プリフォーム40を構成するサポート管16によってサポート層6が形成される。
以上のようにして、光ファイバ20を製造することができる。
次に、具体的に行った実験について説明する。
まず、本発明の実施例として、上記実施形態と同じ製造方法で、光ファイバ20に対応し、以下の表2に示すように、第1クラッド4の径がそれぞれ異なる光ファイバF2(150μm)、F3(200μm)及びF4(250μm)を製造した。
Figure 0005102979
ここで、コア2は、上記実施形態1と同様に、19個のコア形成部1が三角格子状に配列されている。また、本各実施例では、表2に示すように、コア・NFP(1/e)を25μmとした。
表2における光ファイバF2〜F4の各データを比較すれば分かるように、第1クラッド4の径が小さいほど、第1クラッド4及びコア2の各吸収係数が大きくなった。これにより、第1クラッド4の径が大きいほど、光ファイバのファイバ長を短くできることが確認された。ゆえに、第1クラッド4の高NAとすることによって、非線形効果がさらに抑制された光ファイバを実現できることが分かった。また、コア(径600μm、NA0.2)とクラッド(径750μm、NA0.3)とを備えた光ファイバにカップリングされ、伝搬光の一部がクラッドに拡がったLD光によって励起するためには、第1クラッド4の径がそれぞれ150μm、200μm及び250μmである場合、第1クラッド4のNAが0.63以上、0.56以上、及び0.50以上が必要であることが確認された。
次に、本発明の実施例として、上記実施形態と同じ製造方法で、光ファイバ20に対応し、以下の表3に示すように、各コア形成部1にドープする各ドープ材料の濃度を変えて光ファイバF5〜F10を製造した。
Figure 0005102979
ここで、表3の各吸収係数は、ドープされた各ドープ材料の濃度に対応する数値である。また、表3のスロープ効率は、第1クラッド4に入射させる励起光の出力に対するファイバから出射されるレーザー光の出力の比であり、励起光/レーザー光の変換効率を評価するための数値である。さらに、LDパワー閾値は、レーザー光が発振し始める励起光の出力値である。また、表3のカットオフ波長は、シングルモード光のみ伝搬できる最短の波長である。
表3に示すように、各光ファイバF5〜F10では、コア形成部1にリンが含まれているので、スロープ効率が17%以上となって、ファイバレーザーとして有用であった。なお、コア形成部にリンが含まれていない場合には、スロープ効率が数%になってしまう。ここで、コア形成部1にリンが含まれていることによって、エルビウムの蛍光寿命が短くなり、イッテルビウムの励起サイトからエルビウムの励起サイトへのエネルギートランスファーが起こりやすくなっている。また、イッテルビウム、アルミニウム及びエルビウムなどと同様に、リンは、屈折率を高めるように作用するので、例えば、各光ファイバF6〜F10のように、コアΔが0.5%〜0.8%となった。さらに、フッ素は、屈折率を下げるように作用するので、フッ素がドープされた光ファイバF5では、コアΔが0.24%となり、スロープ効率が17%となった。これらのことにより、高効率なエネルギートランスファーを実現させるためには、コアΔが0.5%〜0.8%必要であることが確認された。
以上説明したように、本実施形態の光ファイバ20によれば、各々、光増幅成分としてエルビウム及びイッテルビウムがドープされて相対的に高い屈折率を有する複数のコア形成部1がファイバ端から単一のレーザー光を出射するように密に配列されているので、コア2内では、エルビウム及びイッテルビウムがドープされた石英からなる相対的に屈折率の高い領域(各コア形成部1)と、各コア形成部1の周囲に配置され石英単体からなる相対的に屈折率の低い領域とが混在している。そのため、コア2の実効的な屈折率が相対的に低くなるので、コア2の実効的な比屈折率差Δが小さくなる。これにより、コア2のNAが低下するので、ファイバ端から出射されるレーザー光のビーム品質を高めることができる。
また、コア2が互いに並行に延びる複数のコア形成部1を含んでいるので、コア2の径が比較的大きくなる。そのため、第1クラッド4に入射して第2クラッド内を伝搬する励起光がコア2内に多く入射されるので、ファイバ端から出射されるレーザー光の出力を高めることができる。
したがって、光ファイバ20において、出射されるレーザー光のビーム品質及び出力を高めることができる。
なお、上記実施形態では、光ファイバ20として、エアホール型の第2クラッドを有するダブルクラッドファイバを例示したが、本発明は、低屈折率のポリマー型の第2クラッドを有するダブルクラッドファイバに適用してもよい。
また、上記各実施形態では、各コア形成部1を三角格子状に配置させていたが、本発明は、各コア形成部を他の形状で密に配置させてもよい。
以上説明したように、本発明は、高出力で高品質なビームを出力できるので、ファイバレーザーについて有用である。
実施形態1に係る光ファイバ10の断面図である。 光ファイバ10を構成するコア2の拡大断面図である。 光ファイバ10の屈折率分布図である。 光ファイバ10の出射端におけるニアフィールドパターンのx軸(y軸)に沿った断面模式図である。 光ファイバ10を製造するためのプリフォーム30aの断面図である。 プリフォーム30aを構成するコアロッド配置部12の断面模式図である。 実施形態2に係る光ファイバ20の断面図である。 光ファイバ20を製造するためのプリフォーム40の断面図である。
1 コア形成部
2 コア
3 クラッド
4 第1クラッド
5 第2クラッド
5a 細孔
10,20 光ファイバ

Claims (5)

  1. 各々、光増幅成分がドープされ、互いに並行に延びると共に互いに離間して配置された複数のコア形成部を含み、各コア形成部によって構成された相対的に屈折率の高い領域と、各コア形成部の周囲に配置された相対的に屈折率の低い領域とが混在しているコアと、
    上記コアの周囲に設けられたクラッドとを備え、
    上記複数のコア形成部が密に配列された光ファイバを用いるレーザー光の出射方法であって、
    上記光ファイバにおいて、一方のファイバ端に励起光を入射させ、上記コア中で上記光増幅成分によって増幅して発振した光を他方のファイバ端からニアフィールドパターン形状が単一の山であるシングルモード光のレーザー光として出射させることを特徴とするレーザー光の出射方法。
  2. 請求項に記載されたレーザー光の出射方法において、
    上記レーザー光のニアフィールドパターンにおける最大高さの1/e2(eは自然対数の底)になるときの直径として定義されるコアのモード径は、20μm以上であり、
    上記コアの開口数は、0.1以下であることを特徴とするレーザー光の出射方法。
  3. 請求項1に記載されたレーザー光の出射方法において、
    上記クラッドは、上記コア側に設けられた第1クラッドと、該第1クラッドの周囲に設けられた第2クラッドとを備えていることを特徴とするレーザー光の出射方法。
  4. 請求項に記載されたレーザー光の出射方法において、
    上記光増幅成分は、エルビウム、イッテルビウム及びリンを含んでいることを特徴とするレーザー光の出射方法。
  5. 請求項に記載されたレーザー光の出射方法において、
    上記第2クラッドには、上記コアに沿って延びる複数の細孔が形成されていることを特徴とするレーザー光の出射方法。
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