JP5102818B2 - フェナントロリン誘導体を用いた光電変換素子およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フェナントロリン誘導体を用いた光電変換素子、当該光電変換素子を用いた太陽電池、および、光電変換素子の製造方法に関する。
従来、多結晶シリコンを用いた太陽電池が開発され実用化されている。このような太陽電池の製造には高純度シリコンが必要であり、その製造工程は高温プロセスを要する。したがって、多結晶シリコンを用いた太陽電池を製造に要するエネルギーを考慮すると、必ずしも、省エネルギー技術への貢献度は十分に高いものとは言えない。
また、一般的な屋外の発電用途以外の太陽電池(たとえば、可搬型の太陽電池)に要求されるプラスチック基板上への素子作製にも課題がある。
さらに、光センサーとしては、ファクシミリや複写機におけるイメージセンサー等において、シリコン結晶を用いた一次元センサーによるスキャナーによる画像読み取り装置が実用化されているが、スキャン不要で大面積の二次元センサーは実用化されていない。
近年、上記問題点の改良のため、省エネルギーで製造が可能であり、大面積化が比較的容易な塗布プロセスが適用可能な有機材料を用いた太陽電池の開発が行われるようになってきた。
有機材料を用いた湿式太陽電池として、たとえば色素増感型太陽電池があるが、電解質溶液を用いた系であるため、液漏れや液中のヨウ素抜け等の問題があり、実用化には至っていない。
全固体型の有機材料を用いた有機薄膜太陽電池は、活性層の設計により、「ヘテロ接合型」と「バルクへテロ接合型」に分類される。
ヘテロ接合型太陽電池は、電子供与体からなる層と電子受容体からなる層を積層して、接合界面における光誘起による電荷移動を利用するものである。
C.W. Tang:Appl. Phys. Lett., 48巻,183-185頁,1986年(非特許文献1)では、電子供与体として銅フタロシアニンを、電子受容体としてペリレン誘導体を用いて、変換効率1%が報告されている。この他にも、電子供与体としてペンタセンやテトラセン等の縮合多環芳香族化合物が検討されており、電子受容体としてはC60のようなフラーレン誘導体が使用されている。
バルクへテロ接合型太陽電池は、電子供与体と電子受容体を適当な比率で混合して活性層とするものである。したがって、活性層が混合されているバルクへテロ接合型太陽電池は、活性層が2層構造を形成するヘテロ接合型太陽電池とは構造が異なっている。
バルクへテロ接合型太陽電池では、電子供与体と電子受容体の接合が混合活性層のバルク中に一様に存在し、太陽光を有効に活用することができる。このバルクへテロ接合型素子を作製する方法として、真空蒸着により電子供与体と電子受容体を共蒸着して活性層を形成するものと、両者の混合溶液からスピンコートや印刷法により塗布して形成するものとがある。真空蒸着法では銅フタロシアニンとC60からなる活性層が報告されており(S. Uchidaら:Appl. Phys. Lett., 84巻,4218-4220頁,2004年(非特許文献2))、湿式塗布法では、共役系高分子であるポリチオフェンとフラーレンの可溶性誘導体である[6,6]-フェニルC61-ブチリックアシッドメチルエステル(略称:PCBM)を混合した系が代表的なものとしてあげられる(S.E. Shaheenら:Appl. Phys. Lett., 78巻,841-843頁,2001年(非特許文献3))。
バルクヘテロ接合型太陽電池において、効率をさらに高めるために、活性層を、電子供与体層(活性層(p-層))、電子供与体と電子受容体の混合層(活性層(i-層))、電子受容体層(活性層(n-層))とp-i-n型の3層構造にすることも行われている(M. Hiramotoら:Appl. Phys. Lett., 58巻,1062-1064頁,1991年(非特許文献4))
上記のいずれの素子構造においても、光吸収により生成した光キャリア(正孔と電子)を、電極まで効率良く輸送して高い変換効率を得るために、電極と活性層との間にバッファ層を設けることが行われている。陽極との間には導電性高分子が使われることが多く、ポリ(3, 4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(略称,PEDOT:PSS)などが挙げられる(非特許文献3)。また、陰極と活性層との間には、フッ化リチウムのような無機物や(非特許文献3)、バソクプロイン(略称,BCP)(非特許文献2)が用いられている。
C.W. Tang:Appl. Phys. Lett., 48巻,183-185頁,1986年 S. Uchidaら:Appl. Phys. Lett., 84巻,4218-4220頁,2004年 S.E. Shaheenら:Appl. Phys. Lett., 78巻,841-843頁,2001年 M. Hiramotoら:Appl. Phys. Lett., 58巻,1062-1064頁,1991年
有機薄膜太陽電池では、バソクプロインを含む陰極バッファ層が用いられていたが、当該陰極バッファ層は6nm程度の膜厚に成膜できるが、耐熱性に乏しいことから、得られる太陽電池素子の安定性が低い。従来のフッ化リチウムの有機薄膜太陽電池においては、陰極と活性層との間に設けられる陰極バッファ層が1nm以下の極薄膜が要求され、当該要求を満たす均一な厚さの成膜が極めて困難であった。
また、これらの太陽電池で用いられる光電変換素子の変換効率が十分に高くないものであった。
[1]
基板上に、少なくとも一方が透明である2つの電極間に、電子供与体と電子受容体を含む活性層を有する光電変換素子において、
活性層と陰極との間に、下記一般式(I)で表わされるフェナントロリン誘導体を含む陰極バッファ層を有する光電変換素子。

(R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、環の数が2個以上からなる置換基を有してもよい芳香族環基である。)
[2]
透明基板上に、(1)透明電極、(2)陽極バッファ層、(3)活性層、(4)陰極バッファ層および(5)陰極が順に積層された構造を有する光電変換素子であって、
陰極バッファ層が下記一般式(I)で表わされるフェナントロリン誘導体を含む光電変換素子。

(R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、環の数が2個以上からなる置換基を有してもよい芳香族環基である。)
[3]
前記一般式で表わされるフェナントロリン誘導体において、環の数が2個以上からなる芳香族環基が芳香族縮合環基である、[1]または[2]に記載の光電変換素子。
[4]
活性層が、電子供与体として下記一般式(II)または(III)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含有する、[1]〜[3]のいずれかにに記載の光電変換素子。



(式(II)および(III)中、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり、Z1aとZ1b、Z2aとZ2b、Z3aとZ3bまたはZ4aとZ4bが結合して環を形成していてもよく;
9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり;
Mは2価の金属原子または3価以上の金属と他の原子の結合した原子団である。)
[5]
ベンゾポルフィリン化合物が溶解性前駆体からの熱転換により形成されることを特徴とする[3]または[4]に記載の光電変換素子。
[6]
溶解性前駆体が下記一般式(IV)または(V)で表される化合物である、[5]に記載の光電変換素子。



(式(IV)および(V)中、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり、Z1aとZ1b、Z2aとZ2b、Z3aとZ3bまたはZ4aとZ4bが結合して環を形成していてもよく;
9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり;
Mは2価の金属原子または3価以上の金属と他の原子の結合した原子団であり;
1〜Y4は、それぞれ独立して、1価の原子または原子団である。)
[7]
基板上に、少なくとも一方が透明である2つの電極間に存在する電子供与体と電子受容体とからなる活性層を有する光電変換素子において、該活性層が、電子供与体として共役系高分子を含有し、電子受容体としてフラーレンまたはフラーレン誘導体を含有することを特徴とする[1]〜[6]のいずれかに記載の光電変換素子。
[8]
[1]〜[7]のいずれかに記載の光電変換素子を含む太陽電池。
[9]
透明基板上に透明電極を設ける工程、透明電極上に陽極バッファ層を設ける工程、陽極バッファ層上に活性層を設ける工程、活性層上に陰極バッファ層を設ける工程および陰極バッファ層上に陰極6を設ける工程を含み、
陰極バッファ層が下記一般式(I)で表わされるフェナントロリン誘導体を含む、光電変換素子の製造方法。

(R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、環の数が2個以上からなる置換基を有してもよい芳香族環基である。)
[10]
活性層上に陰極バッファ層を設ける工程以降に、基板を50〜250℃の温度範囲で、アニール処理する工程を含む、[9]に記載の光電変換素子の製造方法。
本明細書において、「置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基」の「C〜C30脂肪族炭化水素基」とは飽和または不飽であってもよく、また、線状でもよいし、分岐状でもよい。「C〜C30脂肪族炭化水素基」としては、たとえば、C〜C30アルキル基、C〜C30アルケニル基、C〜C30アルキニル基、C〜C30アルキルジエニル基などが挙げられる。
本明細書において、「置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基」の「C〜C30アルコキシ基」としては、たとえば、C〜C10アルコキシ基であることが好ましく、C〜Cアルコキシ基であることが更に好ましい。アルコキシ基の例としては、制限するわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ等がある。
本明細書において、「置換基を有してもよい芳香族環基」の「芳香族環基」としては、たとえば、芳香族縮合環基等の芳香族炭化水素環基、芳香族縮合環基、芳香族複素環基、芳香族縮合複素環基などが挙げられる。
本明細書において、「芳香族炭化水素環基」は「芳香族縮合環基」を含む基であり、「芳香族炭化水素環基」としては、C〜C20芳香族炭化水素環基であることが好ましく、例えば、フェニル、2−ビフェニリル、3−ビフェニリル、4−ビフェニリル、ナフチル、シクロオクタテトラエニルなどのC〜C10アリール基が挙げられる。
本明細書において、「芳香族縮合環基」としては、C〜C20芳香族縮合環基であることが好ましく、たとえば、ナフチル(例、1−ナフチル、2−ナフチル)、アンスリル(例、2−アンスリル、9−アンスリル)、フルオレニル基などのC〜C20芳香族縮合環基が挙げられる。
本明細書において、「芳香族複素環基」としては、C〜C20芳香族複素環基であることが好ましく、例えば、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1または2種、1〜4個のヘテロ原子を含む5〜14員、好ましくは5〜10員、より好ましくは5または6員の芳香族複素環基が用いられる。具体的には、例えば、チエニル(例、2−チエニル、3−チエニル)、フリル(例、2−フリル、3−フリル)、ピリジル(例、2−ピリジル、3−ピリジル、4−ピリジル)、チアゾリル(例、2−チアゾリル、4−チアゾリル、5−チアゾリル)、オキサゾリル(例、2−オキサゾリル、4−オキサゾリル)、ピラジニル、ピリミジニル(例、2−ピリミジニル、4−ピリミジニル)、ピロリル(例、1−ピロリル、2−ピロリル、3−ピロリル)、イミダゾリル(例、1−イミダゾリル、2−イミダゾリル、4−イミダゾリル)、ピラゾリル(例、1−ピラゾリル、3−ピラゾリル、4−ピラゾリル)、ピリダジニル(例、3−ピリダジニル、4−ピリダジニル)、イソチアゾリル(例、3−イソチアゾリル)、イソオキサゾリル(例、3−イソオキサゾリル)、イミダゾリル基などが挙げられる。
本明細書において、「芳香族縮合複素環基」としては、C〜C20芳香族縮合複素環基であることが好ましく、たとえば、3〜11個の炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1または2種、1〜4個のヘテロ原子を含む5〜14員(好ましくは5〜10員)の2環または3環式の芳香族複素環基、または炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子および酸素原子から選ばれる1または2種、1〜4個のヘテロ原子を含む5〜14員(好ましくは5〜10員)の7〜10員芳香族複素架橋環から任意の1個の水素原子を除いてできる1価の基が用いられる。具体的には、例えば、キノリル(例、2−キノリル、3−キノリル、4−キノリル、5−キノリル、8−キノリル)、イソキノリル(例、1−イソキノリル、3−イソキノリル、4−イソキノリル、5−イソキノリル)、インドリル(例、1−インドリル、2−インドリル、3−インドリル)、2−ベンゾチアゾリル、ベンゾ[b]チエニル、(例、2−ベンゾ[b]チエニル、3−ベンゾ[b]チエニル)、ベンゾ[b]フラニル(例、2−ベンゾ[b]フラニル、3−ベンゾ[b]フラニル)などが挙げられる。
本明細書において、「C〜C30アルキル基」は、C〜C10アルキル基であることが好ましく、C〜Cアルキル基であることが更に好ましい。アルキル基の例としては、制限するわけではないが、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデカニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C〜C30アルケニル基」は、C〜C10アルケニル基であることが好ましく、C〜Cアルケニル基であることが更に好ましい。アルケニル基の例としては、制限するわけではないが、ビニル、アリル、プロペニル、イソプロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチルアリル、2−ブテニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C2〜C30アルキニル基」は、C〜C10アルキニル基であることが好ましく、C〜Cアルキニル基であることが更に好ましい。アルキニル基の例としては、制限するわけではないが、エチニル、プロピニル、ブチニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C〜C30アルキルジエニル基」は、C〜C10アルキルジエニル基であることが好ましく、C〜Cアルキルジエニル基であることが更に好ましい。アルキルジエニル基の例としては、制限するわけではないが、1,3−ブタジエニル等を挙げることができる。
本明細書において、「C〜Cのアルコキシカルボニル基」は、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基であることが好ましい。
本明細書において、「ジアルキルアミノ基」は、メフェノキシ基、ジエチルアミノ基、ジイソプロピルアミノ基であることが好ましい。
本明細書において、「ジアラルキルアミノ基」は、ジベンジルアミノ基、ジフェネチルアミノ基であることが好ましい。
本明細書において、「α−ハロアルキル基」は、トリフルオロメチル基であることが好ましい。
本明細書において、「置換基」としては、例えば、オキソ、フッ素原子等のハロゲン原子;メチル基、エチル基等のC〜Cのアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等のC〜Cのアルコキシカルボニル基;メトキシ基、エトキシ基等のC〜Cのアルコキシ基;フェノキシ基、ベンジルオキシ基などのアリールオキシ基;ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基等のジアルキルアミノ基、アセチル基等のアシル基、トリフルオロメチル基等のハロアルキル基、シアノ基、ニトロ基、メチレンジオキシ、エチレンジオキシ等のC〜Cアルキレンジオキシが挙げられる。
本明細書において、「フラーレン」とは、炭素原子が球状またはラグビーボール状に配置して形成される炭素クラスターの総称であり(現代化学2000年6月号46頁,Chemical Reviews, 98, 2527(1998)参照)、例えば、フラーレンC60(いわゆるバックミンスター・フラーレン)、フラーレンC70、フラーレンC76、フラーレンC78、フラーレンC82、フラーレンC84、フラーレンC90、フラーレンC94、フラーレンC96等が挙げられる。
本発明の好ましい態様の光電変換素子では、陰極バッファ層にフェナントロリン誘導体を用いるため、陰極バッファ層を均一に成膜できる。また、フェナントロリン誘導体を用いた陰極バッファ層は耐熱性が高いため、本発明の光電変換素子は高い安定性を有する。
本発明の好ましい態様の光電変換素子によれば、光電変換特性に優れた光電変換素子を得ることができる。また、本発明の光電変換素子を用いることによって、高い変換効率の太陽光発電素子および高感度の光センサーが提供できる。
本発明の光電変換素子の第1の実施形態の模式断面図である。 本発明の光電変換素子の第2の実施形態の模式断面図である。 本発明の光電変換素子の第3の実施形態の模式断面図である。
以下に図面を参照して本発明の光電変換素子の実施の形態を説明する。
1 光電変換素子
本発明の光電変換素子の第1の実施形態は、図1に示すように、透明基板1、透明電極2、陽極バッファ層3、活性層4、陰極バッファ層5および陰極6を有する。
本発明の光電変換素子の第2の実施形態は、図2に示すように、透明基板1、透明電極2、陽極バッファ層3、活性層(p-層)4a、活性層(n-層)4b、陰極バッファ層5および陰極6を有する。
本発明の光電変換素子の第3の実施形態は、図3に示すように、透明基板1、透明電極2、陽極バッファ層3、活性層(p-層)4a、活性層(i-層)4c、活性層(n-層)4b、陰極バッファ層5および陰極6を有する。
1.1 透明基板
透明基板1は光電変換素子の支持体となるものであり、石英やガラスの板、プラスチックフィルムやシートなどが用いられる。透明基板1としては、特にガラス板、ポリエステル、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリスルホンなどの透明な合成樹脂基板を用いることが好ましい。透明基板1は、複数の層からなる多層構造を有してもよい。
透明基板1のガスバリア性が低いと、透明基板1を透過してくる外気により光電変換素子が劣化することがある。そこで、透明基板1のガスバリア性が高いことが好ましい。透明基板1に合成樹脂基板を用いる場合、たとえば、合成樹脂基板のどちらか片側もしくは両側に緻密なシリコン酸化膜等を設けることによって、透明基板1のガスバリア性高めることができる。
また、透明基板1は透光性であれば、有色であっても無色であってもよい。
1.2 透明電極
本発明の光電変換素子では、透明基板1上に透明電極2が設けられる。
透明電極2は透光性であり、透明基板から入射した光を活性層4に透過させると共に、透明電極2は活性層4で生成した光キャリアである正孔を受け取ることができる。
透明電極2は、通常、インジウム・スズ酸化物またはインジウム亜鉛酸化物などの金属酸化物などにより構成することができる。
透明電極2の形成は、たとえば、スパッタリング法、真空蒸着法などにより行われることができる。透明電極2における可視光の透過率は60%以上が好ましく、80%以上がさらに好ましい。透明電極2の厚みは特に限定されないが、10〜1000nmが好ましく、50〜300nmがさらに好ましい。
また、透明電極2は透光性であれば、有色であっても無色であってもよい。
1.3 陽極バッファ層
本発明の光電変換素子では、透明電極2と活性層4との間に陽極バッファ層3が設けられることが好ましい。
陽極バッファ層3に用いられる材料は、活性層4で生成した正孔を透明電極2へ輸送できる材料であれば特に限定されないが、正孔移動度が高く導電率が高い材料が好ましく、透明電極2との間の正孔注入障壁が小さいことが好ましい。また、陽極バッファ層3に用いられる材料は、可視光の光に対する透過率が高いことが好ましい。
陽極バッファ層3の材料として、たとえば、電子受容性化合物を混合したポリチオフェンであるポリ(3, 4-エチレンジオキシチオフェン)ポリ(スチレンスルホン酸)(略称,PEDOT:PSS)、電子受容性化合物を混合したポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子を用いることができる。
陽極バッファ層3の形成方法としては、たとえばスピンコートやインクジェット等の湿式塗布法が挙げられる。陽極バッファ層3の膜厚は3〜200nmが好ましく、10〜100nmがさらに好ましい。
1.4 活性層
本発明の光電変換素子では、透明電極2と陰極バッファ層5との間に活性層4が設けられる。光電変換素子が陽極バッファ層3を有する場合には、陽極バッファ層3と陰極バッファ層5との間に活性層4が設けられる。
活性層4は、電子供与体と電子受容体とを含む層であれば特に限定されない。活性層4に用いられる材料は、可視から近赤外の光を効率的に吸収でき、光で誘起された正孔または電子を効率よく輸送するために高い移動度を有する材料が好ましい。また、活性層4では電子供与体と電子受容体との接触面積が大きいことが好ましく、そのためには、エキシトンの拡散長程度の大きさで相分離構造を形成していることが好ましい。
光の吸収により生成した正孔・電子対の電荷分離を効率良く行うための活性層の構造としては、たとえば、ヘテロ接合型とバルクへテロ接合型が例示できる。
ヘテロ接合型の光電変換素子においては、図2に示すように、活性層は電子供与体からなる活性層(p-層)4aと電子受容体からなる活性層(n-層)4bとからなる2層構造を有し、このpn接合界面で電荷分離が行われる(第2の態様)。
他方、バルクヘテロ接合型の光電変換素子においては、図1に示すように、電子供与体と電子受容体を混合して活性層4を形成するものである(第1の態様)。電子供与体と電子受容体が相分離構造を形成することにより、両者の接触面積を増大させることができる。
また、このバルクへテロ接合素子における電荷分離をさらに高効率に行え得る構造として、図3に示すような、3層構造からなるp-i-n接合素子がある(第3の態様)。p-i-n接合素子においては、電子供与体からなる活性層(p-層)4a、電子供与体と電子受容体の混合物からなる活性層(i-層)4c、電子受容体からなる活性層(n-層)4bが積層される。
本明細書において特に言及しなければ、「活性層」は、活性層(p-層)、活性層(i-層)および活性層(n-層)からなる層、ならびに、活性層(p-層)および活性層(n-層)からなる層を含む意味である。
以下に、上記活性層に用いられる電子供与体と電子受容体について説明する。
1.4.1 電子供与体
活性層に用いられる電子供与体としては、電子供与体として機能する化合物であれば特に限定されない。
電子供与体としては、たとえば、ポルフィリン化合物およびフタロシアニン化合物が挙げられるが、これらの化合物は中心金属を有していてもよいし、無金属の化合物であってもよい。ポルフィリン化合物としては、たとえば、上記一般式(II)または(III)で表されるベンゾポルフィリン化合物が挙げられる。
上記一般式(II)および(III)において、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり、Z1aとZ1b、Z2aとZ2b、Z3aとZ3bまたはZ4aとZ4bが結合して環を形成していてもよい。
1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bにおける1価の有機基としては、たとえば、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC〜C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(−SY、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(−SY、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(−SO、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(−SO、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C18アリール基を示す。)、シアノ基、アシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいジアラルキルアミノ基、置換基を有してもよいα−ハロアルキル基、置換基を有してもよい芳香族環基が好ましい。
(i=1〜4)
上記一般式(II)および(III)において、ZiaとZib(i=1〜4)が結合して環を形成する有機基としては、たとえば、置換基を有していてもよいベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環等の芳香族炭化水素環;置換基を有していてもよいピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環等の芳香族複素環;シクロヘキサン環等の非芳香族環状炭化水素等が挙げられる
上記一般式(II)および(III)において、R9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基である。
9〜R12における1価の有機基としては、たとえば、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC〜C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(−SY、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(−SY、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(−SO、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(−SO、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C18アリール基を示す。)、シアノ基、アシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいジアラルキルアミノ基、置換基を有してもよいα−ハロアルキル基、置換基を有してもよい芳香族環基が好ましい。
これらの中でも、R9〜R12は、化合物の分子の平面性を高めるために、水素原子、ハロゲン原子等の単原子から選ばれることが好ましい。
上記一般式(III)において、Mは2価の金属原子または3価以上の金属と他の原子の結合した原子団である。2価の金属原子としては、たとえば、Zn、Cu、Fe、Ni、Coが挙げられ、3価以上の金属と他の原子の結合した原子団としては、たとえばFe−B1、Al−B2、Ti=O、Si−B34、等が挙げられる(これらの式中、B1、B2、B3、B4はハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基等の1価の基を表す)。
活性層の電子供与体に用いられるベンゾポルフィリン化合物として好ましい化合物の具体例としては、下記の式BP-1〜BP-10で表される化合物、2,3,7,8,12,13,17,18-21H,23H-ポルフィン白金等が挙げられる。なお、ベンゾポルフィリン化合物等の具体例は下記の化合物に限定されるものではない。また、対称性の良い分子構造の化合物を主に例示しているが、部分的な構造の組み合わせによる非対称構造の化合物も使用できる。

活性層4の電子供与体に用いられるフタロシアニン化合物の具体例としては、29H,31H-フタロシアニン、銅フタロシアニン、亜鉛フタロシアニン、スズフタロシアニン、チタンフタロシアニンオキシド、銅,4',4'',4'''-テトラアザ-29H,31H-フタロシアニンなどが挙げられる。
活性層4の電子供与体は2以上の化合物の混合物であってもよい。
電子供与体として、ポルフィリン化合物およびフタロシアニン化合物以外にも、共役系高分子化合物を用いることができる。共役系高分子化合物の具体例としては、ポリチオエフェン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリフルオレンを基本骨格とするものが挙げられる。以下に具体例を示す。

(上記式中、nは20〜5000の整数である)
これらの共役系高分子化合物を含む活性層4は、湿式塗布法等により形成することができる。
1.4.2 電子受容体
活性層に用いられる電子受容体としては、電子供与体として機能する化合物であれば特に限定されない。
活性層4に用いられる電子受容体は、光吸収に際して電子供与体から効率よく電子を受け取り、陰極バッファ層5を通して陰極6へと効率よく輸送できることが好ましい。このためには、電子受容体と電子供与体の最低空軌道(LUMO)の相対関係が重要であり、電子供与体材料のLUMOが電子受容体材料のLUMOより約0.3eV以上高い、すなわち、電子受容体層材料の電子親和力が電子供与体層材料の電子親和力より0.3eV以上高いことが好ましい。また、電子受容体においては電子の移動度が高いことが好ましく、10-4[cm2/Vs]以上の移動度を有する電子受容体を用いることが好ましい。
活性層4に用いられる好ましい電子受容体材料としては、フラーレンまたはフラーレン誘導体が挙げられ、具体例としては、以下に示すフラーレンまたはフラーレン誘導体が挙げられる。
活性層4の電子受容体は2以上の化合物の混合物であってもよい。
1.4.3 活性層の形成方法
活性層4を形成する方法は限定されず、活性層4に含まれる電子受容体および電子供与体等の性質に応じて適した活性層の形成方法が用いられる。活性層4(活性層が複数の層からなる場合は、これらを構成する各層)の形成方法としては、活性層を構成する電子受容体、電子供与体またはそれらの混合物を準備し、これらを真空蒸着法または湿式塗布によって設けることが一般的である。
活性層に含まれる材料が昇華性を有する場合には真空蒸着法が適用され、活性層に含まれる材料が適当な溶媒に可溶な場合には、スピンコート、キャスト法、ブレードコート、インクジェット、グラビア印刷等の塗布方法が適用される。薄膜の結晶性および形状を制御する目的からは、湿式塗布法で形成することが好ましい。
図2に示すヘテロ接合素子構造では、電子供与体と電子受容体からなる層をいずれかの成膜方法により積層すればよい。図1および図3に示すバルクへテロ接合素子においては、電子供与体と電子受容体の混合層を形成する必要があるが、真空蒸着法では電子供与体と電子受容体を共蒸着することにより形成され、塗布方法では電子供与体と電子受容体を含有する混合溶液を用いて形成することができる。
このように形成される活性層4の平均膜厚は、一般的に10〜2000 nmであり、好ましくは20〜1000 nmである。
ベンゾポルフィリン化合物は有機溶媒等に対する溶解度が低いため、湿式塗布法を用いてベンゾポルフィリン化合物を含む活性層4を形成する場合、塗布が容易ではない場合がある。したがって、活性層においてベンゾポルフィリン化合物を電子供与体として用いる場合、たとえば、上記一般式(IV)または(V)で表される可溶性前駆体を用いて塗布成膜後に、熱転換して目的とする化合物からなる層を形成することが好ましい。
上記一般式(IV)および(V)において、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4a、Z4b、R9〜R12およびMは、それぞれ、一般式(II)および(III)と同様である。前記一般式(IV)および(V)において、Y1〜Y4は、それぞれ独立して、1価の原子または原子団を表す。また、一般式(II)および(III)において、Y1〜Y4はそれぞれ4個ずつ存在するが、Y1同士、Y2同士、Y3同士およびY4同士はそれぞれ同じでもよく、異なってもよい。
一般式(IV)および(V)におけるY1〜Y4の例を挙げると、原子としては水素原子、ハロゲン原子などが挙げられ、原子団としては水酸基、1価の有機基などが挙げられる。
1〜Y4における1価の有機基としては、たとえば、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよいC〜C30アリールオキシ基、置換基を有してもよいアミノ基、置換基を有してもよいシリル基、置換基を有してもよいアルキルチオ基(−SY、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールチオ基(−SY、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C18アリール基を示す。)、置換基を有してもよいアルキルスルホニル基(−SO、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C30アルキル基を示す。)、置換基を有してもよいアリールスルホニル基(−SO、式中、Yは置換基を有してもよいC〜C18アリール基を示す。)、シアノ基、アシル基、置換基を有してもよいアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいジアルキルアミノ基、置換基を有してもよいジアラルキルアミノ基、置換基を有してもよいα−ハロアルキル基、置換基を有してもよい芳香族環基が好ましい。
前記ベンゾポルフィリン化合物(テトラベンゾポルフィリン BP-1)を例にとって、湿式塗布成膜による電子供与体層(p-層)を形成する方法を以下に説明する。
ベンゾポルフィリン化合物は、その前駆体として対応するビシクロ化合物を用いて合成することができる。この前駆体は平面構造でないため、溶媒への溶解性が高くかつ結晶化もしにくいため、溶液から塗布することにより、アモルファスまたはアモルファスに近い良好な膜を与える。この膜を加熱処理して脱エチレン反応により、平面性の高いベンゾポルフィリン化合物膜を得ることができる。無置換、無金属体の構造では以下のような化学反応で表される。
上記の反応は100℃以上、好ましくは150℃以上に加熱することにより定量的に進行する。また、前駆体から脱離する化合物がエチレン分子であるため、系内に残りにくく、毒性、安全性の面でも特に問題はなく、上記反応を用いることは好ましい。
1.5 陰極バッファ層
本発明の光電変換素子は、活性層4と陰極6との間に上記一般式(I)で表されるフェナントロリン誘導体を含む陰極バッファ層5が設けられている。上記一般式(I)で表されるフェナントロリン誘導体を含む陰極バッファ層5が設けられることによって、活性層4で生成した光キャリアである電子を再結合等による失活を防ぎ効率的に陰極6に輸送できるため、結果的に光電変換素子の光電変換特性を向上させることができる。
一般式(I)において、R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、環の数が2個以上からなる置換基を有してもよい芳香族環基である。
1〜R8の少なくとも一つは、環の数が2個以上からなる芳香族環基の中でも、芳香族炭化水素環基であることが好ましく、芳香族縮合環基であることがさらに好ましい。
陰極バッファ層に用いられる一般式(I)のフェナントロリン誘導体としては、以下に示す式(1)〜(18)で表される化合物を用いることが好ましい。なお、本発明において、フェナントロリン誘導体は(1)〜(18)で表される化合物に限定されるものではない。


本発明の光電変換素子のフェナントロリン誘導体を含む陰極バッファ層5は、真空蒸着法または湿式塗布方法により形成できる。陰極バッファ層5の膜厚が1nm以下の場合、活性層を完全に被覆することが困難となるため開放電圧(Voc)が低下しやすくなる。他方、陰極バッファ層の膜厚が100nm以上の場合、陰極バッファ層5の層自体の直列抵抗が無視できなくなり、フィルファクター(FF)が低下しやすくなる。そこで、陰極バッファ層の膜厚は、1〜100 nmが好ましく、2〜50 nmであることがさらに好ましい。
本発明の光電変換素子の陰極バッファ層5は、フェナントロリン誘導体を含むが、フェナントロリン誘導体からなることが好ましい。
1.6 陰極
本発明の光電変換素子では、陰極バッファ層5の上に陰極6が設けられる。
陰極6に用いられる材料は、活性層4で電荷分離した電子を、陰極バッファ層5を通して受け取ることができる材料であれば特に限定されない。
陰極6に用いられる材料として、マグネシウム、インジウム、カルシウム、アルミニウム、銀等の適当な金属またはそれらの合金を用いると、活性層4で電荷分離した電子を効率的に受け取ることができるので好ましい。
陰極6の膜厚は特に限定されないが、一般的に50〜300 nmが好ましい。
2 その他の実施形態
図1、図2および図3に基づき本発明の第1〜第3の実施形態の光電変換素子を説明したが、本発明はこれらの実施形態の構成に限定されるものではない。たとえば、第1〜第3の実施形態の光電変換素子は、透明電極を陽極として用いる構成を有するが、透明電極を陰極として用いる構成を有してもよい。この場合本発明の光電変換素子は、たとえば、透明基板1の上に、陰極である透明電極2、陰極バッファ層5、活性層4(活性層(p-層)4a、活性層(i-層)4c、活性層(n-層)4b等からなる活性層を含む)、陽極バッファ層3、陽極という順に積層された構造を有することもできる。
3 アニール処理
本発明の光電変換素子は、透明基板1上に透明電極2を設ける工程、透明電極2上に陽極バッファ層3を設ける工程、陽極バッファ層3上に活性層4を設ける工程、活性層4上に陰極バッファ層5を設ける工程および陰極バッファ層5上に陰極6を設ける工程を経て製造できる。
本発明の光電変換素子を製造する際、活性層4上に陰極バッファ層5を設ける工程以降に、素子を50〜250℃の温度範囲でアニール処理すると、得られる光電変換素子の熱安定性を向上させることができる、陰極6と陰極バッファ層5との間の接触を向上させることができる、活性層4の構造緩和ができる、活性層4の結晶化を促進できる等の効果を得ることができる。
アニール処理するためには、陰極バッファ層5の材料は、耐熱性の指標であるガラス転移温度(Tg)が、80℃以上であることが好ましい。
次に、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例の記載に限定されるものではない。
[実施例1]
図3に示す構造を有する有機薄膜太陽電池を以下の方法で作製した。
透明基板1であるガラス基板の上にインジウム・スズ酸化物(ITO)透明導電膜を 145nm堆積したもの(シート抵抗8.4Ω)を通常のフォトリソグラフィ技術と塩酸エッチングを用いて 2mm幅のストライプにパターニングして透明電極2を形成した。このようにITO透明導電膜の透明電極2が形成されたガラス基板を、界面活性剤による超音波洗浄、超純水による水洗、超純水による超音波洗浄の順で洗浄後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
得られた基板に、導電性高分子であるPEDOT:PSS(スタルクヴィテック社製、品名CLEVIOS AI 4083)を30nmの膜厚でスピンコートした後、120℃で大気中10分間加熱乾燥後、窒素中180℃で3分間加熱処理して、陽極バッファ層3が形成された。
次に、上記式(17)で表されるテトラベンゾポルフィリン化合物の前駆体を、クロロベンゼンとクロロホルムの混合溶媒(重量比で2:1)に0.5重量%で溶かした溶液を用いて、陽極バッファ層3上にスピンコートによって塗布した。塗布後、ホットプレート上、180℃で20分間加熱処理を行った。この加熱処理により褐色の前駆体膜は緑色のテトラベンゾポルフィリン膜へと熱転換され、結晶性の25nmの平均膜厚を有する活性層(p-層)4aが形成された。
引き続き、テトラベンゾポルフィリン前駆体とフラーレン誘導体(SIMEF)をそれぞれ0.6重量%と1.4重量%で、クロロベンゼンとクロロホルムの混合溶媒(重量比1:1)に溶かした溶液を、上記ベンゾポリフィリンからなる活性層(p-層)4aの上に、スピンコートによって塗布した。塗布後、180℃で20分間加熱処理を行ない、活性層(i-層)4cが形成された。
上記加熱処理後、活性層4bの上に、フラーレン誘導体(SIMEF)のトルエン溶液(1.1重量%)をスピンコートによって塗布した。塗布後、65℃で10分間乾燥処理を行ない、活性層(n-層)4bが形成された。
このようにして、陽極バッファ層3上に活性層(p-層)4a、活性層(i-層)4cおよび活性層(n-層)4bからなる活性層が形成された
次に、活性層が形成された上記基板を真空蒸着装置内に設置した。上記装置の粗排気を油回転ポンプにより行った後、装置内の真空度が1.4x10-4Paまでクライオポンプを用いて排気した。上記装置内に配置されたメタルボートに、予めフェナントロリン誘導体(7)を設置しておき、真空排気後に加熱して蒸着を行った。蒸着時の真空度は1.5x10-4Pa、蒸着速度は0.03nm/秒という条件で、活性層(n-層)4bの上に膜厚5nmの膜の陰極バッファ層5を完成させた。
引き続き、上部電極用のマスクとして2mm幅のストライプ状シャドーマスクを、透明電極2のITOストライプとは直交するように素子に密着させた基板を、別の真空蒸着室内に設置して陰極バッファ層形成と同様にして装置内の真空度が2.5x10-4Paまで排気した。
陰極6として,アルミニウムを上記陰極バッファ層5上に膜厚87nm(蒸着速度0.6 nm/秒)で形成した。蒸着時の真空度は3.1x10-4Paであった。
このようにして得られた素子をグローブボックス中に取り出した後、80℃において10分間アニール処理を行なった。アニール処理後、背面ガラス板を用いて素子を光硬化樹脂に貼り合わせて封止した。
以上のようにして、2mmx2mm のサイズの受光面積部分を有する光電変換素子を作製した。
この光電変換素子に、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cm2の照射強度で照射して、電圧-電流特性を測定したところ、開放電圧(Voc)0.76V、短絡電流(Jsc)
8.0 mA/cm2、フィルファクター(FF)0.68、エネルギー変換効率(ηp)4.2 %、という光電変換特性が得られた。
[比較例1]
陰極バッファ層5として下記化合物(BCP)を用いた他は実施例1と同じようにして光電変換素子を作製した。
この光電変換素子に、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cm2の照射強度で照射して、電圧-電流特性を測定したところ、開放電圧(Voc)0.22V、短絡電流(Jsc)7.8mA/cm2、フィルファクター(FF)0.33、エネルギー変換効率(ηp)0.57%、という光電変換特性が得られた。
[比較例2]
陰極バッファ層5を設けず、活性層(n-層)4bの上に陰極6を形成した他は実施例1と同様にして光電変換素子を作製した。
この光電変換素子に、ソーラシュミレーター(AM1.5G)の光を100mW/cm2の照射強度で照射して、電圧-電流特性を測定したところ、開放電圧(Voc)0.48V、短絡電流(Jsc)8.5mA/cm2、フィルファクター(FF)0.40、エネルギー変換効率(ηp)1.61%、という光電変換特性が得られた。
本発明の光電変換素子は、たとえば有機薄膜太陽電池、光センサー等に用いることができる。
1 透明基板
2 透明陽極
3 陽極バッファ層
4 活性層
4a 活性層(p-層)
4b 活性層(n-層)
4c 活性層(i-層)
5 陰極バッファ層
6 陰極

Claims (9)

  1. 基板上に、少なくとも一方が透明である2つの電極間に、電子供与体と電子受容体を含む活性層を有する光電変換素子において、
    活性層と陰極との間に、下記一般式(I)で表わされるフェナントロリン誘導体を含む陰極バッファ層を有する光電変換素子。
    (R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、置換基を有してもよい芳香族縮合環基である。)
  2. 透明基板上に、(1)透明電極、(2)陽極バッファ層、(3)活性層、(4)陰極バッファ層および(5)陰極が順に積層された構造を有する光電変換素子であって、
    陰極バッファ層が下記一般式(I)で表わされるフェナントロリン誘導体を含む光電変換素子。

    (R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、環の数が2個以上からなる置換基を有してもよい芳香族縮合環基である。)
  3. 活性層が、電子供与体として下記一般式(II)または(III)で表わされるベンゾポルフィリン化合物を含有する、請求項1または2に記載の光電変換素子。


    (式(II)および(III)中、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり、Z1aとZ1b、Z2aとZ2b、Z3aとZ3bまたはZ4aとZ4bが結合して環を形成していてもよく;
    9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり;
    Mは2価の金属原子または3価以上の金属と他の原子の結合した原子団である。)
  4. ベンゾポルフィリン化合物が溶解性前駆体からの熱転換により形成されることを特徴とする請求項に記載の光電変換素子。
  5. 溶解性前駆体が下記一般式(IV)または(V)で表される化合物である、請求項に記載の光電変換素子。

    (式(IV)および(V)中、Z1a、Z1b、Z2a、Z2b、Z3a、Z3b、Z4aおよびZ4bは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり、Z1aとZ1b、Z2aとZ2b、Z3aとZ3bまたはZ4aとZ4bが結合して環を形成していてもよく;
    9〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、水酸基または1価の有機基であり;
    Mは2価の金属原子または3価以上の金属と他の原子の結合した原子団であり;
    1〜Y4は、それぞれ独立して、1価の原子または原子団である。)
  6. 基板上に、少なくとも一方が透明である2つの電極間に存在する電子供与体と電子受容体とからなる活性層を有する光電変換素子において、該活性層が、電子供与体として共役系高分子を含有し、電子受容体としてフラーレンまたはフラーレン誘導体を含有することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の光電変換素子。
  7. 請求項1〜のいずれかに記載の光電変換素子を含む太陽電池。
  8. 透明基板上に透明電極を設ける工程、透明電極上に陽極バッファ層を設ける工程、陽極バッファ層上に活性層を設ける工程、活性層上に陰極バッファ層を設ける工程および陰極バッファ層上に陰極6を設ける工程を含み、
    陰極バッファ層が下記一般式(I)で表わされるフェナントロリン誘導体を含む、光電変換素子の製造方法。
    (R1〜R8はそれぞれ独立して水素原子、置換基を有してもよいC〜C30脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよいC〜C30アルコキシ基、置換基を有してもよい芳香族環基であり、R1〜R8の少なくとも一つは、置換基を有してもよい芳香族縮合環基である。)
  9. 活性層上に陰極バッファ層を設ける工程以降に、基板を50〜250℃の温度範囲で、アニール処理する工程を含む、請求項に記載の光電変換素子の製造方法。
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