以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この実施形態の施解錠装置1を適用した収納装置2を示している。この収納装置2は、筐体21内に開閉部材である引出22を配置し、引出22にラッチ機構3を組み込んで、引出22を筐体21に係留可能かつ引出22の鏡板22aに設けた把手31によって当該係留状態を解除可能にしており、そのラッチ機構3を利用しつつ引出22の鏡板22a内において、引出22の施解錠を行う施解錠装置1を構成している。なお、引出22が複数段に亘って配置されるときは、この実施形態の施解錠装置1は個別に引出22の施解錠を実現するものであり、引出22ごとに利用者が異なる場合等に有効となるものである。
引出22は、図2に示すように、引出本体22bの前面側に鏡板22aを一体的に取り付けたものである。図2は鏡板22aを構成する前面側の化粧板を取り外した状態を示しており、鏡板22aを構成する背面板22a1に各種要素部品を取り付けている。
ラッチ機構3は、図2及び図3(a)に示すように、鏡板22aと引出本体22bとの境界部分に設けた樹脂部材32より側方に向けて弾性的にラッチ爪33を突出させており、このラッチ爪33を、図3(a)に示すように収納装置2を構成する筐体21の側板21aの内面に設けた凹所21bに引出22を押し込んだ際に係り合わせるようにしたもので、把手31に操作力が入力されると、回転軸34を含む伝達系Aを介してラッチ33を没入方向に作動させるようにしている。
伝達系Aは、図2及び図3(a)に示すように、回転軸34と、この回転軸34の端部付近に配置された逆L字状の中間体35と、回転軸34の水平軸回りの回転を中間体35の鉛直軸回りの回転に変換するアーム36と、中間体35の鉛直軸回りの正逆回転をラッチ33の鉛直軸回りの一方向の動作に変換する変換部37とを備え、把手31を上下何れの方向に操作してもラッチ33を没入方向に作動させ得るようにしている。図3(b)は変換部37の原理を例示したものであり、中間体35の回転によって天秤部材37aが何れの方向に回転しても、L字形の揺動体37bが同一方向に回転して、この揺動体37bの先端に係り合うラッチ33を没入方向に回転させるようになっている。図示の場合、揺動体37bはバネ等の弾性体37cによってラッチ33を突出させる方向に押し付けられている。
一方、本実施形態の施解錠装置1は、図2及び図4等に示す引出22の鏡板22a内において、把手31と回転軸34との間にクラッチ11を介在させ、このクラッチ11にカム12を係り合わせた上で、このカム12に施錠状態から解錠状態への切り替え動作を与えるべく、当該引出22の把手31の近傍に入力部たるダイヤル錠13を設けている。
把手31は、図5(a)、(b)に示すように回転軸34に回転自在に遊嵌され、クラッチ11は把手31の隣接位置において回転軸34に一体回転可能かつ軸方向にスライド可能に配されたもので、回転軸34の軸心から変位した位置においてクラッチ11の一部に設けた関連部11aが把手31の一部に設けた被関連部31aに係り合った図5(c)の状態(クラッチオンの状態)で把手31の回転をクラッチ11を介して回転軸34に伝えるとともに、その係り合いが解除された図5(a)の状態(クラッチオフの状態)で把手31の回転を回転軸34に伝えずに空転自在とするものである。
カム12は、図2及び図4に示すように鏡板22aの背面板22a1に水平軸m回りに取り付けた板状のもので、水平軸mから変位した先端部12aを図4及び図5に示すようにクラッチ11の一部に設けた係り合い部11bに常時係り合わせている。そして、カム12が正面視右回りに回転した図6の施錠位置で図5(a)に示すようにクラッチ11をオフにし、正面視左回りに回転した図4の解錠位置で図5(c)に示すようにクラッチ11をオンにするようにしている。この実施形態の場合、カム12はバネ等の弾性体15によって図4の解錠位置に向かって弾性付勢されている。
ダイヤル錠13は、基本的な機構自体は一般的なものであるため内部機構の主要部分は省略するが、図4に示すようにケーシング13aから一側方に回動可能にレバー13bが突出していて、このレバー13bの先端がカム12の水平軸mから変位した部位に連結軸nを介して接続してあり、図6に示す非照合時にレバー13bが下方に回動してその位置に保持され、図4に示す照合時にそのレバー13bの保持力が解除されるように構成している。すなわち、図6に示すダイヤル錠13の非照合時には、弾性体15に抗してカム12が施錠位置に保持されるので、把手31と回転軸34とが解離して、把手31を操作しても空転するだけの施錠状態をとる。一方、レバー13bの保持力が解除されると、前述したようにカム12は解錠位置に向かって弾性体15により弾性付勢されているので、これがトリガーとなってカム12が図6→図4のように解錠位置に移動して把手31と回転軸34とをクラッチ11により接続し、把手31によってラッチ解除が可能な解錠状態となる。
そして、本実施形態は、図2及び図4に示すように引出22の一部にダイヤル錠13とともに作動体4を配し、この作動体4を、ダイヤル錠13の照合後に引出22が筐体21から離れて開放される際に図2に矢印Pで示す一方向(鏡板22aから後方に突出する方向)に作動させるとともに、引出22が筐体21に近づく際の押し込み反力により矢印Qで示す他方向(鏡板22a内に没入する方向)に作動させるようにしており、この作動体4の作動を利用してダイヤル錠13を非照合状態にリセットするようにしている。
具体的に説明すると、作動体4は、図2、図7及び図8等に示すように、鏡板22aを構成する背面板22a1の側縁近傍の裏面に配置された樹脂等によりなる円柱体状のもので、T字状の支持体41を介して背面板22aの裏面付近に鉛直軸L1を介して回転可能に取り付けられている。そして、図8(a)→(b)→(c)→(d)のように引出22が筐体21内に押し込まれた際に筐体21の側板21の前面21xに突き当たってその反力で鏡板22a内に押し込まれて没入し、逆に図8(d)→(c)→(b)→(a)のように引出22が筐体21から離れた際には押し込み力が消失して後方に突出するようにしている。この突出動作は、後述する弾性体130(図9参照)の弾性力を利用してもよいいし、別途適宜の位置に弾性体を組み込んでもよい。
そして、この作動体4の動きを連動機構5を介して、ダイヤル錠13から他側方に突出させたリセット杆13cを連動させるようにしている。連動機構5は、図2、図7及び図8等に示すように、鏡板22aの背面板22a1の前面側に支軸L2回りに回転可能に取り付けた可動ブラケット51と、この可動ブラケット51の軸心L2から変位した部位と前記T字状の支持体41の軸心L1から変位した部位との間を接続して支持体41の回転と可動ブラケット51の回転とを連動させる第1リンク52と、可動ブラケット51の回転動作とリセット杆13cのケーシング13aからの突没動作とを連動させる第2リンク53とを具備してなる。
リセット杆13cは、図9に模式的に示すように、内部に設けたバネ等の弾性体130によってダイヤル錠13のケーシング13aから外側方に突出する方向に付勢されており、弾性体130に抗して没入する際にはダイヤル錠13のダイヤル状態に影響を及ぼさず、弾性体130に付勢されてケーシング13aから突出する際にはダイヤル錠13のダイヤルをゼロリセットすべく構成されている。ゼロリセットを含めてダイヤルの非照合時には反対側から突出するレバー13bが下方回動位置に保持され、照合時にその保持力が解除されるのは既述したところである。
すなわち、引出22が図8(d)に示す閉止位置にあって作動体4が筐体21の前面21xにより鏡板22a内に押し込まれて没入位置にあるときには、連動機構5を介してリセット杆13cが押し込まれた状態にある。このときダイヤル錠13が非照合状態にあれば、図6に示すようにレバー13bには下方回動位置にて保持力が働き、カム12がクラッチ11をオフにする施錠位置に保持される。次に、ダイヤル錠13を照合させると、レバー13bの保持力が解除され、これがトリガーとなってカム12が図4に示す解錠位置に移動して把手31と回転軸34とをクラッチ11により接続し、把手31が操作可能な状態となる。把手31によりラッチ33を解除して引出22を引き出すと、図8(d)→(c)→(b)→(a)のように没入位置にあった作動体4が鏡板22aの裏面から背面側に突出し、それまで連動機構5を介して押し込まれていたリセット杆13cが図9に示す弾性体130の蓄積する弾性力によって外側方に押し出される。これにより、ダイヤル錠13はゼロリセットされる。このゼロリセットのとき、レバー13bが下方回動位置まで回動してその位置に保持されるように構成されており、これによりカム12は図4→図6のように弾性体15に抗して施錠位置に移動し、クラッチ11は再びオフの状態となる。引出22を押し込むときはクラッチ11がオフの状態にあるため、ラッチ33が一時的に没入しながら引出22は収納位置に係留される。このとき、作動体は図8(a)→(b)→(c)→(d)のように没入し、リセット杆13cは再び弾性体130に抗して押し込まれるが、このときダイヤル錠13のダイヤルはゼロリセット状態を維持する。
以上のように、本実施形態の施解錠装置は、筐体21を開閉する引出22側に把手31を含むラッチ機構3を備え、その引出22がダイヤル錠13及び作動体4を具備しており、ダイヤル錠13が照合することにより引出22のロック状態が解除されるように構成するとともに、作動体4は、ダイヤル錠13の照合後に引出22が筐体21から離れて開放される際に一方向に作動し、引出22が筐体21に近づくことにより押し込まれて他方向に作動するものであり、上記他方向に作動する際に反発力を蓄積して、その反発力を利用して上記一方向への作動がなされるように構成しており、この作動体4の作動を利用してダイヤル錠13を非照合状態にリセットするようにしている。
このように、ダイヤル錠13の照合後に引出22の筐体21に対する相対動作を利用して作動体4を作動させ、これによりダイヤルを非照合状態にリセットするので、引出22を開閉する操作以外にリセットのための別段の操作を行うことを不要にして、操作をワンアクション減らすことができる。しかも、作動体4は筐体21と引出22との間にあって相手方の部材によって押し込まれるか或いは開放されるかによって作動するものであり、ダイヤル錠13及び作動体4を引出2側にともに配置しておけばよいので、引出22の開閉動作を利用しつつも、両者間に亘ってリンク等を配置するような複雑かつ収納空間の妨げになる構成も有効に回避することができる。
そして、作動体4は、他方向に作動する際に押し込まれて弾性体130に反発力を蓄積し、その反発力を利用して一方向に作動するものであるので、作動体4に弾性体130等の弾性力を作用させるだけで一方向及び他方向への動きを容易に実現することができる。
また、ダイヤル錠13が照合することにより引出22のロック状態が自動的に解除されるように構成しているために、ダイヤル錠機構でありながら照合によって即座にロックを解除させられるので、少なくとも摘みを回すといった別段の解錠操作が不要となり、操作をワンアクション減らすことができる。
さらには、引出22側に把手31を含むラッチ機構3を有し、ダイヤル錠13および作動体4も引出22側に設けているので、ダイヤル錠13の操作と把手31の操作を一連に行う配置が可能になり、操作性を格段に向上させることができる。
また、作動体4が、押し込まれることによって閉止時における引出22と筐体21との境界部分にまで没入し、開放されることによってその境界部分から突出するように配置されており、作動体4を押し込む相手方である筐体21の前面21xをそのまま利用することができ、引出22側にのみ作動体4を組み込めば足りるので、作り込みも容易なものとなる。
セキュリティの観点からすると、ダイヤル錠13は、引出22が筐体21から離れる際の作動体4の作動を利用して非照合状態にリセットされるように構成されているので、引出22を開け始めるときに照合番号がリセットされることになり、引出22を開けた状態で照合番号が周囲の者に視認されることを有効に回避することができる。
或いは、作動体4の作動を利用して、引出22を次に閉止位置に移動させただけで自動的にロックが掛かる状態に移行させるようにしているので、ダイヤル錠機構でありながら余分な操作をせずに再度のロック状態にスムーズに移行することができる。
ラッチ機構3としては、把手31に入力される操作力を回転軸を含む伝達系Aを介してラッチに伝え、当該ラッチを解除可能とするものであり、その伝達系Aの一部を断接切替する位置にクラッチ11を設け、ダイヤル錠13の非照合時にそのクラッチ11をオフにし、ダイヤル錠13の照合時にそのクラッチ11をオンにするようにダイヤル錠13とクラッチ11とを関連づけているので、ダイヤル錠13の照合によって引出22のロック状態を解除し、或いはダイヤル錠13の非照合状態へのリセットによって引出22をロック可能状態にするという作用を、既存のラッチ機構3の一部を利用して有効に実現することができ、ロック状態とロック解除状態との間の切替も極めて軽微な動作で行うことができる。しかも、ロック時には把手31を操作しても空転するだけで操作力はラッチに伝達されないので、無理な操作が加えられてラッチが破損する事態も有効に回避することができる。
そして、開閉部材が引出22であり、その引出22の鏡板22aの裏面に作動体4を設け、筐体21の前面はそのまま利用するようにしているので、作動体4を設ける位置は図示例のように鏡板22aの側縁近傍の裏面のみならず、上縁側の裏面や下縁側の裏面にも設定することができ、設計自由度の高い構成となり得る。
なお、各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
例えば、上記実施形態では開閉部材である引出22側にダイヤル錠13及び作動体4を設けたが、筐体21側にこれらのダイヤル錠13及び作動体4を設ける態様を妨げるものではない。
また、ダイヤル錠13の照合、引出後に引出22に近づく動作(すなわち閉める際の動作)を利用して作動体4を作動させ、これによりダイヤルを非照合状態にリセットするように構成しても、本発明の基本的な作用効果は奏することができる。
また、開閉部材は引出に限られず、例えば図10、図11に示すような扉122である場合にも本発明を有効に適用することができる。図10のものは、扉122の吊元側の縁部若しくは縁部近傍の裏面に作動体4を設け、その対面位置にある筐体121の前面121xで作動体4を押し込むように構成したものである。勿論、作動体4を筐体121側に設けて扉122で押し込むように構成してもよい。或いは、図11のものは、扉122の反吊元側の縁部若しくは縁部近傍の裏面に作動体4を設け、その対面位置にある筐体121の前面121xで作動体4を押し込むように構成したものである。勿論、この場合にも作動体4を筐体121側に設けて扉122で押し込むように構成してもよい。なお、これらの図面においてダイヤル錠及びダイヤル錠と作動体4を接続する伝達系は図示省略しているが、作動体4の作動を利用してダイヤル錠を非照合状態にリセットするように構成されるのは言うまでもない。
(第2実施形態)
図12〜図14は、本発明の第2実施形態を示している。これらの図において、引出22やラッチ機構3、伝達機構A、把手31、施解錠装置1、ダイヤル錠13等、上記第1実施形態と基本的に同一部分には同一符号を付し、特に説明を要しない部分についてはこれに関する説明を省略している。
しかして、本実施形態は、引出22の一部にダイヤル錠13とともに作動体104を配し、この作動体104を、ダイヤル錠13の照合後に引出22が筐体21から離れて開放される際に図12に矢印Rで示す一方向(鏡板22aから離れて後方にスライド移動する方向)に作動させるとともに、引出22が筐体21に近づく際の押し込み反力により矢印Sで示す他方向(鏡板22aに近づく方向)に作動させるようにしており、この作動体104の作動を利用してダイヤル錠13を非照合状態にリセットするようにしている。
具体的に説明すると、作動体104は、引出2の側板22bの側面に設けたガイド孔(図示せず)等に前後スライド可能に係り合わせて配置された樹脂等によりなるもので、引出22を筐体21に向かって押し込んだ際に筐体21の側板21aの前面21xに前方から係り合う係合片104aを有している。引出22が図13(a)の状態よりも更に前方へ引き出されているときには、係合片104aは筐体21の側板21の前面21xから前方へ離反した状態をとる。そして、この状態から図13(a)→(b)→図14(a)→(b)のように引出22が筐体21内に押し込まれると、係合片104aが筐体21の側板21の前面21xに突き当たってその反力で作動体104は鏡板22aに近づく方向に側板22b上を相対移動し、逆に図14(b)→(a)→図13(b)→(a)のように引出22が筐体21から離れる際には押し込み力が消失して作動体104は鏡板22aから遠ざかる方向に側板22b上を相対移動するようにしている。そして、図13(a)の状態から更に引出22が開成すると、作動体104は再び完全に筐体2の側板21の前面21xから前方へ離反した状態をとる。この突出動作は、図9に示した弾性体130の弾性力を利用してもよいいし、別途適宜の位置に弾性体を組み込んでもよい。
そして、この作動体104の動きに連動機構105を介して、ダイヤル錠13から他側方に突出させたリセット杆13cを連動させるようにしている。連動機構105は、図12〜図14に示すように、可動ブラケット151、第3リンク152及び第2リンク153を具備する。可動ブラケット151は、鏡板22aの背面板22a1の前面側に支軸L3回りに回転可能に取り付けられ、第3リンク152は前記可動ブラケット151の軸心L3から変位した位置に設定した支軸L4と前記作動体104に設定した支軸L5との間を接続して作動体104のスライド動作と可動ブラケット151の回転動作とを連動させ、第2リンク153は前記可動ブラケット151の回転動作とリセット杆13cのケーシング13aからの突没動作とを支軸L6を介して連動させる。
リセット杆13cは、図9に基づいて既に説明したように、内部に設けたバネ等の弾性体130によってダイヤル錠13のケーシング13aから外側方に突出する方向に付勢されており、弾性体130に抗して没入する際にはダイヤル錠13のダイヤル状態に影響を及ぼさず、弾性体130に付勢されてケーシング13aから突出する際にはダイヤル錠13のダイヤルをゼロリセットすべく構成されている。ゼロリセットを含めてダイヤルの非照合時には反対側から突出するレバー13bが下方回動位置に保持され、照合時にその保持力が解除される点も既に述べたとおりである。
すなわち、引出22が図14(b)に示す閉止位置にあって作動体104が筐体21の前面21xに支持されて鏡板22aの裏面22axに当接する位置までスライドしているときには、連動機構105を介してリセット杆13cが図中左方向に押し込まれた状態にある。このときダイヤル錠13が非照合状態にあれば、図6に示したようにレバー13bには下方回動位置にて保持力が働き、カム12がクラッチ11をオフにする施錠位置に保持される。次に、ダイヤル錠13を照合させると、レバー13bの保持力が解除され、これがトリガーとなってカム12が図4に示す解錠位置に移動して把手31と回転軸34とをクラッチ11により接続し、把手31が操作可能な状態となる。把手31によりラッチ33を解除して引出22を引き出すと、図14(b)→(a)→図13(b)→(a)のように前方位置にあった作動体104が図9に示した弾性体130等に付勢されて鏡板22aの裏面22axから後方にスライド移動し、それまで連動機構105を介して押し込まれていたリセット杆13cが外側方(図中右方向)に押し出される。これにより、ダイヤル錠13はゼロリセットされる。このゼロリセットのとき、レバー13bが下方回動位置まで回動してその位置に保持されるように構成されており、これによりカム12は図4→図6のように弾性体15に抗して施錠位置に移動し、クラッチ11は再びオフの状態となる。引出22を押し込むときはクラッチ11がオフの状態にあるため、ラッチ33が一時的に没入しながら引出22は収納位置に係留される。このとき、作動体104は図13(a)→(b)→図14(a)→(b)のように引出22上を前方へスライド移動し、リセット杆13cは再び弾性体130に抗して押し込まれるが、このときダイヤル錠13のダイヤルはゼロリセット状態を維持する。
以上のように、この実施形態の施解錠装置も、筐体21を開閉する引出22側に把手31を含むラッチ機構3を備え、その引出22がダイヤル錠13及び作動体104を具備しており、ダイヤル錠が照合することにより開閉部材のロック状態が解除されるように構成するとともに、作動体104は、ダイヤル錠13の照合後に引出22が筐体21から離れて開放される際に一方向に作動し、引出22が筐体21に近づくことにより押し込まれて他方向に作動するものであり、上記他方向に作動する際に反発力を蓄積して、その反発力を利用して上記一方向への作動がなされるように構成しており、この作動体104の作動を利用してダイヤル錠13を非照合状態にリセットするようにしている。
このように、ダイヤル錠13の照合後に引出22の筐体21に対する相対動作を利用して作動体104を作動させ、これによりダイヤルを非照合状態にリセットするので、引出22を開閉する操作以外にリセットのための別段の操作を行うことを不要にして、操作をワンアクション減らすことができる。しかも、作動体104は筐体21と引出22との間にあって相手方の部材によって押し込まれるか或いは開放されるかによって作動するものであり、ダイヤル錠13及び作動体104を引出2側にともに配置しておけばよいので、引出22の開閉動作を利用しつつも、両者間に亘ってリンク等を配置するような複雑かつ収納空間の妨げになる構成も有効に回避することができる。
そして、作動体104は、他方向に作動する際に押し込まれて弾性体130に反発力を蓄積し、その反発力を利用して一方向に作動するものであるので、作動体104に弾性体130等の弾性力を作用させるだけで一方向及び他方向への動きを容易に実現することができる。
また、ダイヤル錠13が照合することにより引出22のロック状態が自動的に解除されるように構成しているために、ダイヤル錠機構でありながら照合によって即座にロックを解除させられるので、少なくとも摘みを回すといった別段の解錠操作が不要となり、操作をワンアクション減らすことができる。
さらには、引出22側に把手31を含むラッチ機構3を有し、ダイヤル錠13および作動体104も引出22側に設けているので、ダイヤル錠13の操作と把手31の操作を一連に行う配置が可能になり、操作性を格段に向上させることができる。
また、作動体104が、押し込まれることによって閉止時における引出22と筐体21との境界部分にまで没入し、開放されることによってその境界部分から突出するように配置されており、作動体104を押し込む相手方である筐体21の前面21xをそのまま利用することができ、引出22側にのみ作動体104を組み込めば足りるので、作り込みも容易なものとなる。
セキュリティの観点からすると、ダイヤル錠13は、引出22が筐体21から離れる際の作動体104の作動を利用して非照合状態にリセットされるように構成されているので、引出22を開け始めるときに照合番号がリセットされることになり、引出22を開けた状態で照合番号が周囲の者に視認されることを有効に回避することができる。
或いは、作動体104の作動を利用して、引出22を次に閉止位置に移動させただけで自動的にロックが掛かる状態に移行させるようにしているので、ダイヤル錠機構でありながら余分な操作をせずに再度のロック状態にスムーズに移行することができる。
ラッチ機構3としては、把手31に入力される操作力を回転軸34を含む伝達系Aを介してラッチ33に伝え、当該ラッチ33を解除可能とするものであり、その伝達系Aの一部を断接切替する位置にクラッチ11を設け、ダイヤル錠13の非照合時にそのクラッチ11をオフにし、ダイヤル錠13の照合時にそのクラッチ11をオンにするようにダイヤル錠13とクラッチ11とを関連づけているので、ダイヤル錠13の照合によって引出22のロック状態を解除し、或いはダイヤル錠13の非照合状態へのリセットによって引出22をロック可能状態にするという作用を、既存のラッチ機構3の一部を利用して有効に実現することができ、ロック状態とロック解除状態との間の切替も極めて軽微な動作で行うことができる。しかも、ロック時には把手31を操作しても空転するだけで操作力はラッチ33に伝達されないので、無理な操作が加えられてラッチ33が破損する事態も有効に回避することができる。
そして、開閉部材が引出22であり、その引出22の鏡板22aの裏面に作動体104を設け、筐体21の前面はそのまま利用するようにしているので、作動体104を設ける位置は図示例のように鏡板22aの側縁近傍の裏面のみならず、上縁側の裏面や下縁側の裏面にも設定することができ、設計自由度の高い構成となり得る。また、作動体104は、引出22の閉止時に押し込まれることによって筐体21と引出22の鏡板22aとによって閉成される空間内に収容されるようにしているので、閉止時における見栄えを有効に向上させることができる。
(第3実施形態)
以下、本発明の第3実施形態を、図15〜図17を参照して説明する。
これらの図は、本実施形態の施解錠装置201を適用した収納装置202を示している。この収納装置202は、筐体221の収納空間を開閉する位置に開閉部材である扉222を配置し、扉222にラッチ機構203を組み込んで、扉222を筐体221に係留可能かつ扉222に設けた把手231によって当該係留状態を解除可能にしており、そのラッチ機構203を利用しつつ扉222内において、扉222の施解錠を行う施解錠装置201を構成している。
扉222は、筐体221の側板221bにヒンジ機構Hを介して一端側を取り付けられたもので、ヒンジ機構Hは扉222を開くにつれてヒンジ軸を前方に持ち出す、いわゆる持出し兆番と称されるものである。側板221bの前面には前方に向かって凹となる段部221xが形成されており、扉222を閉止した際に、図17(b)に示すようにその凹となる段部221x内に扉222の側縁222bの厚み部分が収まるようになっている。
ラッチ機構203は、図15に示すように、扉222の上下両縁から背面に突出させて設けた樹脂部材232より側方に向けて弾性的にラッチ爪233を突出させており、このラッチ爪233を、収納装置202を構成する筐体221の前面の図示しない部位に設けた凹所に扉222を押し込んだ際に係り合わせるようにしたもので、把手231に操作力が入力されると、回転軸234を含む伝達系を介してラッチ233を没入方向に作動させるようにしている。
伝達系は、図3(b)に示した変換部37と同様の原理によって、把手231を左右何れの方向に操作してもラッチ233を没入方向に作動させることができるものである。この場合も、ラッチ233はバネ等によって突出方向に押し付けられている。
一方、本実施形態の施解錠装置201は、扉222内において、把手231と回転軸234との間にクラッチ211を介在させ、このクラッチ211にリンク212を係り合わせた上で、このリンク212に施錠状態から解錠状態への切り替え動作を与えるべく、当該扉222の把手231の近傍に入力部たるダイヤル錠213を設けている。
把手231は、図5と同様の構造により、回転軸234に回転自在に遊嵌され、クラッチ211は把手231の隣接位置において回転軸234に一体回転可能かつ軸方向にスライド可能に配されたもので、回転軸234の軸心から変位した位置においてクラッチ211の一部に設けた関連部211aが把手231の一部に設けた被関連部(図15では図示省略)に係り合った図5(c)と同様の状態(クラッチオンの状態)で把手231の回転をクラッチ211を介して回転軸234に伝えるとともに、その係り合いが解除された図5(a)と同様の状態(クラッチオフの状態)で把手231の回転を回転軸234に伝えずに空転自在とするものである。
リンク212は、一端を前記クラッチ211に軸fを介して接続され他端を次に述べるレバー213bに軸gを介し接続して昇降可能に配されたもので、リンク212が降下した図6と同様の施錠位置で図5(a)に示したと同様にしてクラッチ211をオフにし、リンク212が上昇した図4と同様の解錠位置で図5(c)に示したと同様にしてクラッチ211をオンにするようにしている。
ダイヤル錠213は、図4に示したと同様、ケーシング213aから一側方に回動可能にレバー213bが突出していて、このレバー213bの先端が前述したリンク212に軸gを介して接続してあり、図6に示したと同様の非照合時にレバー213bが下方に降下してその位置に保持され、図4に示したと同様の照合時にそのレバー213bの保持力が解除されるように構成している。すなわち、ダイヤル錠13の非照合時には、リンク212が下方の施錠位置に保持されるので、把手231と回転軸234とが解離して、把手231を操作しても空転するだけの施錠状態をとる。一方、レバー213bの保持力が解除されると、これがトリガーとなってリンク212が図6→図4と同様に解錠位置に向かって上昇して、把手231と回転軸234とをクラッチ211により接続し、把手231によってラッチ解除が可能な解錠状態となる。
そして、本実施形態は、扉222の吊元側にダイヤル錠213とともに作動体204を配し、この作動体204を、ダイヤル錠213の照合後に扉222が筐体221から離れて開放される際に図16に矢印Tで示す一方向(扉222から後側方に突出する方向)に作動させるとともに、扉222が筐体221に近づく際の押し込み反力により矢印Uで示す他方向(扉222内に没入する方向)に作動させるようにしており、この作動体204の作動を利用してダイヤル錠213を非照合状態にリセットするようにしている。
具体的に説明すると、作動体204は、扉222の裏面近傍において当該扉222の巾方向に沿って進退する作動杆204aの先端に取り付けられ、先端を筐体201の側板221の内側面221bに臨む位置に配置した樹脂製のもので、受圧面204bを凹状の段部221xと内側面221bとのコーナー部分Cに臨んで配置している。そして、図16(a)→(b)→図17(a)→(b)のように扉222が閉止動作を行った際に、作動体204は筐体221の側板221のコーナー部C(最終位置では内側面221b)に突き当たってその反力で扉222の側縁222bから没入する方向に押し込まれ、逆に図17(b)→(a)→図16(b)→(a)のように扉222が開成動作を行った際にはコーナー部Cが遠ざかるため作動体204は当該コーナー部Cに向かって扉222から斜め後方に突出するようにしている。図16(a)から更に扉222が開成すると、作動体204は完全にコーナー部Cから斜め前方に離れることになる。この突出動作は、後述する弾性体130(図9参照)の弾性力を利用してもよいし、別途適宜の位置に弾性体を組み込んでもよい。
そして、作動杆204の基端204aをダイヤル錠213から他側方に突出させたリセット杆213cに連動部5において接続して、作動体204の動きとリセット杆213cとを連動させるようにしている。
リセット杆213cは、図9に示したと同様に、内部に設けたバネ等の弾性体130によってダイヤル錠213のケーシング213aから外側方に突出する方向に付勢されており、弾性体130に抗して没入する際にはダイヤル錠213のダイヤル状態に影響を及ぼさず、弾性体130に付勢されてケーシング213aから突出する際にはダイヤル錠213のダイヤルをゼロリセットすべく構成されている。ゼロリセットを含めてダイヤルの非照合時には反対側から突出するレバー213bが下方回動位置に保持され、照合時にその保持力が解除されるのは既述したところである。
すなわち、扉222が図17(b)に示す閉止位置にあって作動体204が筐体221のコーナー部C(若しくは内側面221b)により扉222の内側に押し込まれて没入位置にあるときには、連動部5を介してリセット杆213cが押し込まれた状態にある。このときダイヤル錠213が非照合状態にあれば、図6に示したと同様にレバー213bには下方回動位置にて保持力が働き、リンク212がクラッチ211をオフにする施錠位置(降下位置)に保持される。次に、ダイヤル錠213を照合させると、レバー213bの保持力が解除され、これがトリガーとなってリンク212が図4に示したと同様に解錠位置(上昇位置)に移動して把手231と回転軸234とをクラッチ211により接続し、把手231が操作可能な状態となる。把手231によりラッチ233を解除して扉222を開成させると、図17(b)→(a)→図16(b)→(a)のように没入位置にあった作動体204が扉222の吊元側において筐体202のコーナー部Cに向かって突出し、それまで連動部5を介して押し込まれていたリセット杆213cが図9に示す弾性体130の蓄積する弾性力によって外側方に押し出される。これにより、ダイヤル錠213はゼロリセットされる。このゼロリセットのとき、レバー213bが下方回動位置まで回動してその位置に保持されるように構成されており、これによりリンク212は降下して図4→図6の状態変化と同様に施錠位置に移動し、クラッチ211は再びオフの状態となる。扉222を閉止するときはクラッチ211がオフの状態にあるため、ラッチ233が一時的に没入しながら扉222は収納位置に係留される。このとき、作動体は図16(a)→(b)→図17(a)→(b)のように没入し、リセット杆213cは再び弾性体130に抗して押し込まれるが、このときダイヤル錠213のダイヤルはゼロリセット状態を維持する。
以上のように、本実施形態の施解錠装置は、筐体221を開閉する扉222側に把手231を含むラッチ機構203を備え、その扉222がダイヤル錠213及び作動体204を具備しており、ダイヤル錠213が照合することにより扉222のロック状態が解除されるように構成するとともに、作動体204は、ダイヤル錠213の照合後に扉222が筐体221から離れて開放される際に一方向に作動し、扉222が筐体221に近づくことにより押し込まれて他方向に作動するものであり、上記他方向に作動する際に反発力を蓄積して、その反発力を利用して上記一方向への作動がなされるように構成しており、この作動体204の作動を利用してダイヤル錠213を非照合状態にリセットするようにしている。
このように、ダイヤル錠213の照合後に扉222の筐体221に対する相対動作を利用して作動体204を作動させ、これによりダイヤルを非照合状態にリセットするので、扉222を開閉する操作以外にリセットのための別段の操作を行うことを不要にして、操作をワンアクション減らすことができる。しかも、作動体204は筐体221と扉222との間にあって相手方の部材によって押し込まれるか或いは開放されるかによって作動するものであり、ダイヤル錠213及び作動体204を扉222側にともに配置しておけばよいので、扉222の開閉動作を利用しつつも、両者間に亘ってリンク等を配置するような複雑かつ収納空間の妨げになる構成も有効に回避することができる。
そして、作動体204は、他方向に作動する際に押し込まれて弾性体130に反発力を蓄積し、その反発力を利用して一方向に作動するものであるので、作動体204に弾性体130等の弾性力を作用させるだけで一方向及び他方向への動きを容易に実現することができる。
また、ダイヤル錠213が照合することにより扉222のロック状態が自動的に解除されるように構成しており、ダイヤル錠機構でありながら照合によって即座にロックを解除させられるので、少なくとも摘みを回すといった別段の解錠操作が不要となり、操作をワンアクション減らすことができる。
さらには、扉222側に把手231を含むラッチ機構203を有し、ダイヤル錠213および作動体204も扉222側に設けているので、ダイヤル錠213の操作と把手231の操作を一連に行う配置が可能になり、操作性を格段に向上させることができる。
また、作動体204が、扉222の閉止時に押し込まれることによって筐体221と扉222とによって閉成される空間内に収容され、扉222の開成時に押し込み時とは逆方向に作動しながらその空間から開放されるように配置されるものであるため、所要の機能を損なうことなく、閉止時における収納装置202の外観を良好に保つことができる。しかも、作動体204を押し込む相手方である筐体221のコーナー部Cや内側面221b等の収納空間の内壁をそのまま利用することができ、扉222側にのみ作動体204を組み込めば足りるので、作り込みも容易なものとなる。
セキュリティの観点からすると、ダイヤル錠213は、扉222が筐体221から離れる際の作動体204の作動を利用して非照合状態にリセットされるように構成されているので、扉222を開け始めるときに照合番号がリセットされることになり、扉222を開けた状態で照合番号が周囲の者に視認されることを有効に回避することができる。
或いは、作動体204の作動を利用して、扉222を次に閉止位置に移動させただけで自動的にロックが掛かる状態に移行させるようにしているので、ダイヤル錠機構でありながら余分な操作をせずに再度のロック状態にスムーズに移行することができる。
ラッチ機構203としては、把手231に入力される操作力を回転軸234を介してラッチ233に伝え、当該ラッチ233を解除可能とするものであり、その伝達系の一部を断接切替する位置にクラッチ211を設け、ダイヤル錠213の非照合時にそのクラッチ211をオフにし、ダイヤル錠213の照合時にそのクラッチ211をオンにするようにダイヤル錠213とクラッチ211とを関連づけているので、ダイヤル錠213の照合によって扉222のロック状態を解除し、或いはダイヤル錠213の非照合状態へのリセットによって扉222をロック可能状態にするという作用を、既存のラッチ機構203の一部を利用して有効に実現することができ、ロック状態とロック解除状態との間の切替も極めて軽微な動作で行うことができる。しかも、ロック時には把手231を操作しても空転するだけで操作力はラッチに伝達されないので、無理な操作が加えられてラッチが破損する事態も有効に回避することができる。
特に、開閉部材が扉222であり、その扉222の吊元側の縁部近傍の裏面側に作動体204を突没可能に設けるようにしており、扉222の閉止には外部から視認されない位置に隠蔽され、扉222の開成時にも扉222の吊元側の縁部222bに位置して極力目立たない状態で配されるので、収納装置の外観も良好に保つことができる。