従来より、例えば車両において、ディーゼルエンジンのコモンレール圧や、エンジンの吸気系への補助空気量等を制御するためには、コイルへの通電電流に応じて開弁量が変化するリニアソレノイド式の電磁弁が用いられている。
このような電磁弁を駆動する装置では、電磁弁のコイル(リニアソレノイド)に流す電流を制御することによって、上記コモンレール圧や補助吸気量といった物理量の調節が行われる。その制御の手法としては、一般に、リニアソレノイドに実際に流れている電流(以下「実電流」ともいう)を検出し、その実電流とリニアソレノイドに流すべき目標電流との差が無くなるようにリニアソレノイドへの通電を断続させる、といった電流フィードバック制御が行われる。
リニアソレノイド等の誘導性負荷を電流フィードバック制御する誘導性負荷駆動装置としては、マイコンから目標電流に対応したデューティ比で出力されるパルス信号と誘導性負荷に実際に流れている電流の検出値とに基づいて、抵抗とコンデンサとからなる積分回路を充放電させて、その積分回路のコンデンサの極性を上記パルス信号と同じ周期で変化させ、その極性変化を利用して、誘導性負荷の通電経路に設けられたスイッチング素子をオン・オフさせて誘導性負荷への通電を断続させることにより、誘導性負荷への通電電流を上記パルス信号のデューティ比で示される目標電流にフィードバック制御する、といった構成のものが知られている(例えば、特許文献1参照。)
また、この種の誘導性負荷駆動装置では、誘導性負荷の通電経路の断線、誘導性負荷へつながる端子の負荷駆動用電源電圧や接地電位への短絡、及び、誘導性負荷自身のレアショート(つまり、誘導性負荷の短絡)、といった駆動系の異常を検出して、スイッチング素子や誘導性負荷自身を保護するなどのフェイルセーフを行う必要がある。
そのため、上記のように電流フィードバック制御を行うよう構成された誘導性負荷駆動装置として、更に、スイッチング素子をオン・オフさせるための駆動信号をマイコンが取り込み、その取り込んだ駆動信号に基づいてマイコンが駆動系の異常を検出する、異常検出機能を備えたものが知られている。
具体的な構成例を図5に示すと、この誘導性負荷駆動装置100は、主として、電磁弁2を構成するリニアソレノイドLoに流れる電流を断続するスイッチング素子(この例ではPチャネルMOSFET。以下「上流側MOS」と略す。)10と、リニアソレノイドLoへの通電制御中は常時オン状態であるものの上述した駆動系の異常が生じた場合はオフしてフェイルセーフをかけるスイッチング素子(この例ではNチャネルMOSFET。以下「下流側MOS」と略す。)20と、リニアソレノイドLoに流れる電流(実電流)を検出する電流検出回路3と、上流側MOS10の駆動(ひいてはリニアソレノイドLoの駆動)を指示するパルス信号であって、リニアソレノイドLoに流すべき電流の目標値(目標電流)に対応したデューティ比を有する上流側駆動指令SDH(図6参照)を出力すると共に、後述する駆動回路8から入力されるモニタ信号SMに基づいて駆動系の異常の有無を判断し、その判断結果に応じて下流側MOS20をオン・オフさせるための下流側駆動指令SDLを出力するマイコン4と、マイコン4の動作を監視し、マイコン4の異常を検出した場合に上流側MOS10を強制的にオフさせるための異常時停止信号SEを出力する監視IC5と、マイコン4からの上流側駆動指令SDHを受信する受信回路6と、抵抗R1とコンデンサC1とが直列接続されてなると共に、電流検出回路3の検出する実電流と受信回路6の受信する上流側駆動指令SDHとに基づいて充放電し、更にその時定数が上流側駆動指令SDHの周期よりも大である偏差積分回路7と、上流側駆動指令SDHと同じ周期で変化する上記コンデンサC1の充電電圧の極性に応じた比較信号を出力するコンパレータCMP1と、コンパレータCMP1からの比較信号に従い、上流側MOS10へ該上流側MOS10をオン・オフさせる駆動信号を出力する駆動回路8と、リニアソレノイドLoの実電流が所定電流値以上の過電流状態となったときに上流側MOS10を強制的にオフする電流リミッタ回路9と、上流側MOS10のオン・オフに伴って発生するノイズ(ラジオノイズ)を低減するためのラジオノイズ低減回路11と、監視IC5によってマイコン4の異常が検出されたときに上流側MOS10を強制的にオフさせるための異常時強制停止回路12と、から構成されている。
そして、図5の構成において、上流側MOS10のソースは、電流リミッタ回路9の一部をなす過電流検知用の抵抗R18を介して負荷駆動用電源電圧であるバッテリ電圧+B(例えば12V)に接続され、ゲートは駆動回路8に接続され、ドレインはリニアソレノイドLoの一端(PCV+)に接続されている。よって、上流側MOS10は、駆動回路8から当該上流側MOS10のゲートに入力される駆動信号がL(Low )レベル(詳細は後述)の時にオンして、リニアソレノイドLoに電流を流し、上記駆動信号がH(High)レベル(バッテリ電圧+B)の時にオフして、リニアソレノイドLoへの通電を遮断することとなり、この上流側MOS10のオン・オフにより、リニアソレノイドLoに流れる電流が断続される。
また、電流リミッタ回路9は、上記抵抗R18と、エミッタがバッテリ電圧+Bに接続され、コレクタが上流側MOS10のゲートに接続されたPNP型のトランジスタT3と、そのトランジスタT3のベースと上流側MOS10のソースとの間に接続された抵抗R19と、トランジスタT3のベースとバッテリ電圧+Bとの間に接続された抵抗R20とから構成されている。
この電流リミッタ回路9では、上流側MOS10に流れる電流が過電流と見なされる値となって、抵抗R18での電圧降下が所定値以上になると、トランジスタT3がオンして、上流側MOS10のゲートにバッテリ電圧+Bを印加することにより、上流側MOS10をオフさせようとする。そして、上流側MOS10に流れる電流が減少すると、トランジスタT3がオフに戻り、上流側MOS10に流れる電流が再び過大になると、トランジスタT3が再度オンする、といった動作が繰り返されることとなる。よって、例えば上流側MOS10のドレイン側が接地電位に短絡して、上流側MOS10に破壊耐量以上の電流が流れてしまうような状況となっても、上流側MOS10が正常である限り、上流側MOS10に流れる電流が制限されて該上流側MOS10を保護することができる。
一方、下流側MOS20は、ソースが電流検出回路3の一部をなす電流検出用の抵抗R2に接続され、ゲートが抵抗R27を介してNPN型のトランジスタT4のコレクタに接続され、ドレインがリニアソレノイドLoの他端(PCV−)に接続されている。トランジスタT4のベースは抵抗R24を介してマイコン4に接続され、ベース−エミッタ間には抵抗R25が接続されている。
そして、トランジスタT4のベースには、抵抗R24を介してマイコン4からの下流側駆動指令SDLが供給されるよう構成されている。リニアソレノイドLoへの通電が行われる通常制御時には、この下流側駆動指令SDLがLレベルとなって、トランジスタT4はオフされる。そのため、下流側MOS20のゲートには抵抗R26,R27を介して制御用電源電圧である制御電圧Vcc(例えば5V)が供給され、該下流側MOS20はオン状態となる。よって、この場合には、上流側MOS10のオン・オフに応じてリニアソレノイドLoへの通電電流が断続されることになる。
これに対して、マイコン4からの下流側駆動指令SDLがHレベルになると、トランジスタT4がオンして、下流側MOS20のゲート電圧が接地電位になるため、該下流側MOS20がオフされることとなる。よって、この場合には、リニアソレノイドLoの他端(PCV−)と抵抗R2との間の通電経路が強制的に遮断されることとなる。
また、電流検出回路3は、リニアソレノイドLoへの通電経路における下流側MOS20のソースと接地電位との間においてその通電経路の一部として設置された電流検出用の抵抗R2と、抵抗R2の接地電位側とは反対側の端部(つまり下流側MOS20のソース)に一端が接続された抵抗R5と、その抵抗R5の他端と接地電位との間に接続された抵抗R4と、抵抗R5,R4同士の接続点に非反転入力端子(+端子)が接続されたオペアンプOP1と、オペアンプOP1の反転入力端子(−端子)と接地電位との間に接続された抵抗R3と、オペアンプOP1の反転入力端子と出力端子との間に接続された抵抗R6と、オペアンプOP1の出力端子と接地電位との間に接続された抵抗R7と、一端がオペアンプOP1の出力端子に接続され、他端が偏差積分回路7を構成するコンデンサC1の一端(抵抗R1とは反対側の端部)に接続された抵抗R8とから構成されている。
そして、この電流検出回路3では、リニアソレノイドLoに流れる電流と同じ電流が電流検出用の抵抗R2に流れ、その電流値に比例した電圧Viが、オペアンプOP1の出力端子から抵抗R8を介して、偏差積分回路7のコンデンサC1の一端へ出力される。
一方、受信回路6は、制御電圧Vccにエミッタが接続されたPNP型のトランジスタT1と、トランジスタT1のエミッタとベースとの間に接続された抵抗R9と、マイコン4における上流側駆動指令SDHの出力端子(出力ポート)とトランジスタT1のベースとの間に接続された抵抗R10と、トランジスタT1のコレクタと接地電位との間に直列に接続された2つの抵抗R11,R12とから構成されている。そして、抵抗R11,R12同士の接続点が、偏差積分回路7を構成する抵抗R1の一端(コンデンサC1とは反対側の端部)に接続されている。
この受信回路6では、トランジスタT1が、マイコン4からの上流側駆動指令SDHを受けてオン・オフする。つまり、トランジスタT1は、上流側駆動指令SDHがLレベル(接地電位)の時にオンし、上流側駆動指令SDHがHレベル(制御電圧Vcc)の時にオフする。そして、トランジスタT1がオンした時には、抵抗R11,R12同士の接続点の電圧VDが、制御電圧Vccを抵抗R11,R12で分圧した値となり、トランジスタT1がオフした時には、上記電圧VDが0Vとなる。よって、抵抗R11,R12同士の接続点の電圧VDは、マイコン4からの上流側駆動指令SDHを反転させた波形のパルス信号となり、このような電圧VDが、偏差積分回路7の抵抗R1の一端に印加される。
また、受信回路6には、異常時強制停止回路12が接続されている。具体的には、エミッタが制御電圧Vccに接続され、コレクタが受信回路6のトランジスタT1のベースに接続され、ベースが抵抗R16を介して監視IC5に接続されたPNP型のトランジスタT6を備えた構成となっている。トランジスタT6のベース−エミッタ間には抵抗R17が接続されている。
そして、マイコン4の正常時は、監視IC5から異常時強制停止回路12への異常時停止信号SEがHレベルであるため、異常時強制停止回路12のトランジスタT6はオフされる。そのため、受信回路6のトランジスタT1は、マイコン4からの上流側駆動指令SDHに応じてオン・オフする。これに対し、マイコン4の異常時は、監視IC5からの異常時停止信号SEがLレベルとなり、異常時強制停止回路12のトランジスタT6はオンされる。そのため、受信回路6のトランジスタT1は、マイコン4からの上流側駆動指令SDHの状態とは無関係に強制的にオフされ、受信回路6から偏差積分回路7へ印加される電圧VDは0V(接地電位)となって、結果、上流側MOS10はオフされることとなる。
また、コンパレータCMP1は、その非反転入力端子(+端子)に偏差積分回路7のコンデンサC1の他端(抵抗R1とコンデンサC1との接続点)が接続され、反転入力端子(−端子)に上記コンデンサC1の一端が接続されることにより、コンデンサC1の充電極性に応じた比較信号を出力する。
即ち、偏差積分回路7におけるコンデンサC1の抵抗R1側の電圧(つまりコンパレータCMP1の非反転入力端子側の電圧)が、そのコンデンサC1の電流検出回路3側の電圧(つまりコンパレータCMP1の反転入力端子側の電圧)よりも高ければ、コンパレータCMP1の出力である比較信号はHレベルとなる。逆に、上記コンデンサC1の抵抗R1側の電圧が、そのコンデンサC1の電流検出回路3側の電圧以下であれば、コンパレータCMP1からの比較信号はLレベルとなる。そして、このコンパレータCMP1からの比較信号は、駆動回路8へ入力される。
駆動回路8は、コンパレータCMP1の出力端子と制御電圧Vccとの間に接続されたプルアップ用の抵抗R13と、ベースがコンパレータCMP1の出力端子に接続され、エミッタが接地電位に接続されたNPN型のトランジスタT2と、そのトランジスタT2のコレクタとバッテリ電圧+Bとの間に接続された抵抗R14と、トランジスタT2のコレクタと上流側MOS10のゲートとの間に接続されて、そのトランジスタT2のコレクタの電圧を上流側MOS10のゲートへ駆動信号として供給する抵抗R15とから構成されている。
この駆動回路8では、コンパレータCMP1からの比較信号がHレベルのときはトランジスタT2がオンし、上流側MOS10への駆動信号が該上流側MOS10をオンさせるLレベル信号となる。逆に、コンパレータCMP1からの比較信号がLレベルになると、トランジスタT2はオフし、上流側MOS10への駆動信号が該上流側MOS10をオフさせるHレベル信号(バッテリ電圧+B)となる。
更に、ラジオノイズ低減回路11は、ベースに抵抗R22を介して制御電圧Vccが印加され、コレクタが上流側MOS1のゲートに接続されると共に駆動回路8において抵抗R15を介してトランジスタT2のコレクタに接続され、エミッタが抵抗R21を介してバッテリ電圧+Bに接続されたトランジスタT5により構成されている。なお、トランジスタT5のベース−エミッタ間は抵抗R23が接続されている。
このような構成により、ラジオノイズ低減回路11のトランジスタT5は、バッテリ電圧+B及び制御電圧Vccが共に印加されている限り、常時オンされた状態となっている。そのため、駆動回路8のトランジスタT2がオンされると、上流側MOS10のゲートに入力されるLレベルの駆動信号の電圧は、仮にラジオノイズ低減回路11がなかったならばトランジスタT2のコレクタと同じほぼ0V(接地電位)となるが、ここではラジオノイズ低減回路11が設けられていることにより、接地電位ではなく、バッテリ電圧+Bが抵抗R15とラジオノイズ低減回路11の抵抗R21とによって分圧された値(例えば7V)となる。
つまり、ラジオノイズ低減回路11は、上流側MOS10がオンするときのゲート電圧をオフ時の電圧(本例では12V)から0Vまで落とさずに所定の値(本例では7V)にとどめることにより、上流側MOS10のオン時とオフ時のゲート電圧の差を小さくしている。これにより、上流側MOS10のオン・オフの変化速度を鈍らせ、オン・オフの変化時に生じるラジオノイズが低減される。なお、本駆動装置100では、ラジオノイズ対策用として、このラジオノイズ低減回路11が設けられている他、上流側MOS10のゲート−ドレイン間にコンデンサC2が接続されている。
また、上流側MOS10のドレインは、リニアソレノイドLoの一端(PCV+)と接続されるが、その上流側MOS10のドレインと接地電位との間には、アノードを接地電位側にして、リニアソレノイドLoに生じるフライバックエネルギーを吸収するためのダイオードD1が接続されている。
このような誘導性負荷駆動装置100では、マイコン4からの、リニアソレノイドLoの目標電流に対応するデューティ比を有した上流側駆動指令SDHが、受信回路6により受信され、偏差積分回路7が、その受信回路6からのパルス信号(具体的には、上記抵抗R11,R12同士の接続点の電圧VD)と、電流検出回路3により検出される検出電流(具体的には、上記オペアンプOP1の出力電圧Vi)とに基づいて、充放電動作する。そして、偏差積分回路7のコンデンサC1の充電電圧の極性は、上流側駆動指令SDHと同じ周期で反転すると共に、そのデューティ比は目標電流と検出電流との偏差に対応した値となる。このようなコンデンサC1の充電電圧の極性に応じて、コンパレータCMP1から比較信号が出力され、この比較信号に従って駆動回路8が上流側MOS10をオン・オフ制御する。これにより、リニアソレノイドLoへの通電が断続されると共に、その断続によって流れる電流が、上流側駆動指令SDHのデューティ比に応じた目標値に制御される。
より具体的に説明すると、リニアソレノイドLoに流れる実電流値を示すオペアンプOP1の出力電圧Vi(以下「電流検出値Vi」ともいう)が、リニアソレノイドLoに流すべき目標電流値を示す上記電圧VD(以下「目標値VD」ともいう)より小なら、コンデンサC1の充電電圧極性は、リニアソレノイドLoのインダクタンス分と偏差積分回路7の時定数とによる遅延時間後に、コンパレータCMP1の非反転入力端子側が反転入力端子側よりも大きい極性となる。これにより、コンパレータCMP1の出力である比較信号がHレベルとなって、トランジスタT2及び上流側MOS10がオンとなり、リニアソレノイドLoに流れる電流が増加して、電流検出値Viも増大する。
そして、電流検出値Viが増大して目標値VD以上となれば、コンデンサC1の充電電圧極性は、リニアソレノイドLoのインダクタンス分と偏差積分回路7の時定数とによる遅延時間後に、コンパレータCMP1の非反転入力端子側が反転入力端子側よりも小さい(又は同じ)極性となる。これにより、コンパレータCMP1からの比較信号がLレベルとなって、トランジスタT2及び上流側MOS10がオフとなり、リニアソレノイドLoに流れる電流が減少して電流検出値Viも減少する。
よって、図6における時刻t1よりも左側に示すように、電流検出値Vi(オペアンプOP1の出力)は、マイコン4からの上流側駆動指令SDHに対し、所定の遅延時間を伴って目標値VDに追従するように脈動することとなる。そのため、コンパレータCMP1からの出力である比較信号は、リニアソレノイドLoに流れる電流がマイコン4からの上流側駆動指令SDHのデューティ比に応じた目標電流となるようなデューティ比を有すると共に、マイコン4からの上流側駆動指令SDHと同じ周期で且つ該上流側駆動指令SDHに対して上記遅延時間分だけ位相が遅れたパルス信号となる。尚、図6の3段目における「PCV+」は、リニアソレノイドLoの一端(PCV+)の電圧(即ち、上流側MOS10のドレイン電圧)を示している。
そして、上記の動作が繰り返されることにより、リニアソレノイドLoへの通電電流がマイコン4からの上流側駆動指令SDHのデューティ比に対応した目標電流にフィードバック制御される。
つまり、図5の誘導性負荷駆動装置100では、マイコン4による電流フィードバック制御が行われるのではなく、電流検出回路3、偏差積分回路7、及びコンパレータCMP1からなる、ハードウェアによる電流フィードバック回路(図5中、二点鎖線で囲まれた部分)が形成されている。この電流フィードバック回路により、リニアソレノイドLoへの通電電流が、デューティ比0%から幅広い範囲でフィードバック制御される。しかも、偏差積分回路7の充放電時定数が上流側駆動指令SDHの周期よりも大に設定されるため、偏差積分回路7の充電電圧が飽和することがなく、負荷駆動用電源電圧としてのバッテリ電圧+Bが変動しても、上流側駆動指令SDHのデューティ比に応じた高精度の電流フィードバック制御が行われる。
更に、図5の誘導性負荷駆動装置100は、上述したように、マイコン4による異常検出機能を備えている。具体的には、駆動回路8から出力される駆動信号が、上流側MOS10のゲートに印加されると共に、モニタ信号SMとしてマイコン4にも入力される。マイコン4は、駆動回路8から入力されるモニタ信号SM(駆動信号)が、自身が出力している上流側駆動指令SDHに対応したものとなっているか否かに基づき、駆動系の異常を検出する。
尚、マイコン4へ入力されるモニタ信号は、厳密には、駆動回路8から上流側MOS10のゲートへ入力される駆動信号そのものではなく、トランジスタT2のコレクタの電圧である。但し、このトランジスタT2のコレクタの電圧は、上流側MOS10のゲートに入力される駆動信号の大元となる駆動信号であり、この大元の駆動信号のHレベル・Lレベルの変化がそのまま、抵抗R15を介して上流側MOS10へ出力される駆動信号のHレベル・Lレベルの変化となる。そのため、トランジスタT2のコレクタ電圧をモニタ信号SMとして取り込んで駆動系の異常を検出することは、上流側MOS10のゲートに入力される駆動信号を取り込んで駆動系の異常を検出することと等価である。
そして、誘導性負荷駆動装置100において、例えば、リニアソレノイドLoにおける通電経路の上流側の一端(PCV+)又は下流側の他端(PCV−)にバッテリ電圧+Bが直接印加されてしまうような異常(以下「電源ショート」ともいう)が生じると、上流側MOS10のオン・オフの状態に関係なく、その電源ショートが生じている位置から下流側に常時電流が流れてしまう。
すると、電流検出回路3からの電流検出値Viは、常に、その常時流れている電流に応じた値となり、これがコンパレータCMP1の反転入力端子に入力される。これにより、たとえマイコン4が所定のデューティ比の上流側駆動指令SDHを出力していたとしても、コンパレータCMP1からの比較信号はLレベル一定となり、駆動回路8からの駆動信号、即ちマイコン4に入力されるモニタ信号SMは、常時Hレベルとなる。
そこで、マイコン4は、自身が出力している上流側駆動指令SDHとモニタ信号SMとが対応していないことから、駆動系の異常(この場合は電源ショート)を検出する。そして、マイコン4は、フェイルセーフとして、トランジスタT4へHレベルの下流側駆動指令SDLを供給して下流側MOS20をオフする、などの処理を行う。
また例えば、リニアソレノイドLoにおける一端(PCV+)又は他端(PCV−)が接地電位に短絡してしまうような異常(以下「グランドショート」ともいう)が生じると、上流側MOS10のオン・オフの状態に関係なく、下流側MOS20及び電流検出回路3の抵抗R2には常時電流が流れない状態となってしまう。
すると、電流検出回路3からの電流検出値Viは、常時0Vとなり、これがコンパレータCMP1の反転入力端子に入力される。これにより、たとえマイコン4が所定のデューティ比の上流側駆動指令SDHを出力していたとしても、コンパレータCMP1からの比較信号はHレベル一定となり、駆動回路8からの駆動信号、即ち駆動回路8からマイコン4に入力されるモニタ信号SMは、常時Lレベルとなる。
そこで、マイコン4は、自身が出力している上流側駆動指令SDHとモニタ信号SMとが対応していないことから、駆動系の異常(この場合はグランドショート)を検出する。
また例えば、リニアソレノイドLoのレアショートが生じると、負荷のインダクタンス分がなくなるため、上流側MOS10は、偏差積分回路7とは無関係に、マイコン4からの上流側駆動指令SDHがHレベル(上流側MOS10をオフさせる側のレベル)の時にオフし、マイコン4からの上流側駆動指令SDHがLレベル(上流側MOS10をオンさせる側のレベル)の時には、電流フィードバック系の遅れ分に相当する極短い周期でオン・オフを繰り返すこととなる。
これは、上流側MOS10がオンすると、即座に電流検出回路3からの電流検出値Viが大きくなって駆動回路8からの駆動信号がHレベルになり、上流側MOS10がオフされると、即座に電流検出回路3からの電流検出値Viが小さくなって駆動回路8からの駆動信号がLレベルになる、といった動作が繰り返されるからである。
この場合、たとえマイコン4が所定デューティ比の上流側駆動指令SDHを出力していたとしても、駆動回路8からの駆動信号、即ちマイコン4に入力されるモニタ信号SMは、上記のように極短い周期でHレベル・Lレベルが繰り返される信号(高周波パルス)となる。そこで、マイコン4は、自身が出力している上流側駆動指令SDHとモニタ信号SMとが対応していないことから、駆動系の異常(この場合はレアショート)を検出する。そして、マイコン4は、フェイルセーフとして、トランジスタT4へHレベルの下流側駆動指令SDLを供給して下流側MOS20をオフする、などの処理を行う。
このように、図5に示した従来の誘導性負荷駆動装置100では、ハードウェアによる電流フィードバック回路を備えていることにより、マイコン4によらずに高精度の電流フィードバック制御が実現される。また、上流側MOS10を駆動(オン・オフ)させる駆動信号をモニタ信号SMとしてマイコン4に取り込むことにより、このモニタ信号SMに基づく、マイコン4による駆動系の異常検出機能が実現される。
しかしながら、図5に示した誘導性負荷駆動装置100のように、ハードウェアによる電流フィードバック回路を備え、駆動回路8からのモニタ信号SM(駆動信号)に基づいて駆動系の異常を検出するよう構成されたものにおいては、マイコン4からの上流側駆動指令SDHのデューティ比(以下「指令DUTY」ともいう)が0%の時に、駆動系の異常が誤検出されてしまうおそれがある。
即ち、マイコン4からの指令DUTYが0%の時は、リニアソレノイドLoに流れる電流は0となって電流検出回路3における電流検出用の抵抗R2には電流が流れなくなる。そのため、理論的には、電流検出回路3のオペアンプOP1の出力である電流検出値Viは0Vとなってその0VがコンパレータCMP1の反転入力端子に入力され、また、コンパレータCMP1の非反転入力端子への入力電圧も0Vとなって、コンパレータCMP1の各入力端子の電圧は共に0Vとなり、よってコンパレータCMP1の出力はLレベル一定となるはずである。
しかし、電流検出回路3のオペアンプOP1の出力は、オペアンプOP1自身のオフセット電圧によって、リニアソレノイドLoに電流が流れておらず電流検出回路3の抵抗R2に電流が流れていない状態(即ちオペアンプOP1の各入力端子への入力電圧が共に0Vで両者間の電位差が0の状態)であっても、完全には0Vにならないのが一般的である。
コンパレータCMP1も同様であり、コンパレータCMP1自身のオフセット電圧によって、各入力端子の入力電圧が共に0Vで両者間の電位差が0であっても、コンパレータCMP1の出力は完全には0Vにならないのが一般的である。
しかも、オペアンプOP1、コンパレータCMP1のオフセット電圧にはばらつきがあり、その値は個々の部品によって異なる。
そのため、マイコン4からの指令DUTYが0%となってリニアソレノイドLoに電流が流れなくなると、理想的にはコンパレータCMP1の出力はLレベル一定となるはずであるものの、上述したオフセット電圧やそのばらつきによって、コンパレータCMP1の出力がHレベルに転じてしまう場合があるのである。
そして、そのようにコンパレータCMP1の出力がHレベルになると、駆動回路8からの駆動信号はLレベルとなって上流側MOS10がオンしてしまい、リニアソレノイドLoに電流が流れてしまう。すると、その電流によってコンパレータCMP1の反転入力端子(−端子)の電圧は上がり、これによりコンパレータCMP1の出力は再びLレベルとなって、駆動回路8からの駆動信号は再びHレベルとなり、上流側MOS10は再びオフする。上流側MOS10がオフすると、リニアソレノイドLoには再び電流が流れなくなる。そのため、コンパレータCMP1の反転入力端子の電圧は再び下がっていき、やがてまた上述したオフセット電圧の影響でコンパレータCMP1の出力はHレベルに転じてしまう。
このようにして、コンパレータCMP1からは、電流フィードバック回路の応答速度(極短い周期)でレベル変化が繰り返されるパルス信号(高周波パルス)が出力されてしまうのである。
そのため、図6に例示するように、時刻t1で指令DUTYが0%になり、電流検出回路3のオペアンプOP1から出力される電流検出値Viも0V(又はその近傍)になると、上述したオフセット電圧の影響によって、本来Lレベル一定となるはずのコンパレータCMP1からの出力は高周波パルスとなり、よって駆動回路8からマイコン4に入力されるモニタ信号SMも高周波パルスとなる。
これにより、時刻t2のダイアグ検出(異常検出)タイミングにおいて、マイコン4は、自身は指令DUTY=0%の上流側駆動指令SDHを出力しているにもかかわらずモニタ信号SMが高周波パルスとなっていることから、リニアソレノイドLoのレアショートを誤検出してしまう。
なお、この誤検出は、指令DUTYが0%の時だけでなく、上流側MOSのオン時間が極短くなるような、指令DUTYが0%近傍のときにも、リニアソレノイドLoに電流が流れない期間が生じること等によって発生するおそれがある。
このような誤検出を防ぐ方法として、例えば、指令DUTYが0%に近い領域(0%を含む)でのマイコン4によるダイアグ検出機能をマスクするという方法がある。つまり、誤検出してしまう可能性のある、指令DUTYが0%に近い領域の間は、マイコン4がダイアグ検出を行わないようにするのである。この方法によれば、ダイアグ検出自体を行わないようにするのであるから、当然ながら、上述した誤検出の問題は解決できる。
しかしこの方法だと、ダイアグ検出の領域が狭められ、検出能力が低下してしまうという問題が生じる。即ち、指令DUTYが0%に近い領域の間、もし何らかの駆動系の異常が生じても、その間はその異常発生を検出することができない。
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、負荷の通電電流がマイコンから指令されるデューティ比に応じた値となるよう、ハードウェアによる電流フィードバック制御によって通電制御用のスイッチング素子をオン・オフすると共に、そのスイッチング素子をオン・オフさせるための信号をマイコンがモニタすることにより異常検出を行うよう構成された誘導性負荷駆動装置において、マイコンによる異常検出性能を損ねることなく、少なくとも、マイコンから指令されるデューティ比が0%のときに異常が誤検出されてしまうのを防止することを目的とする。
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の発明は、電源から誘導性負荷への通電経路上に設けられ、誘導性負荷に流れる電流を断続するスイッチング素子と、誘導性負荷に流れる電流を検出して該電流に対応した検出電圧を発生する電流検出手段と、誘導性負荷に流すべき目標電流に対応したデューティ比を有し、誘導性負荷の駆動を指示するパルス状の駆動指令を出力するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータからの駆動指令に応じたデューティ比の駆動電圧を出力する駆動電圧出力手段と、抵抗とコンデンサを有し、コンデンサが、該コンデンサの一端に入力される電流検出手段からの検出電圧を基準に、抵抗を介して該コンデンサの他端に入力される駆動電圧出力手段からの駆動電圧によって充放電され、その時定数が駆動指令の周期よりも大であって、コンデンサの充電電圧の極性が駆動指令の周期と同じ周期で変化する偏差積分回路と、偏差積分回路を構成するコンデンサの両端の電圧を比較して該比較結果に応じたパルス状の比較信号を出力する比較手段と、比較手段からの比較信号に応じて、スイッチング素子へ該スイッチング素子をオン・オフさせる駆動信号を出力する駆動手段と、を備え、マイクロコンピュータが、駆動手段からの駆動信号に基づいて通電経路の異常を検出するよう構成された誘導性負荷駆動装置である。
即ち、誘導性負荷に流れる電流を電流検出手段が検出し、その検出結果(検出電圧)を基準として駆動電圧出力手段からの駆動電圧を偏差積分回路で積分し(偏差積分回路のコンデンサを充放電させ)、そのコンデンサの両端の電圧の比較結果(充電極性)に応じた比較信号を比較手段が出力するという、マイクロコンピュータによらずハードウェア(電流検出手段、偏差積分回路、比較手段)を用いた電流フィードバック系が構成された誘導性負荷駆動装置であり、通電経路の異常を検出する機能も備えている。
そして更に、本発明(請求項1)の誘導性負荷駆動装置は、マイクロコンピュータからの駆動指令のデューティ比が0%である場合にこれを検出するゼロデューティ検出手段と、このゼロデューティ検出手段によりデューティ比が0%であることが検出された時に、駆動信号を、比較手段からの比較信号にかかわらずスイッチング素子をオフさせる方のレベルであるネガティブレベルに固定することにより、スイッチング素子を強制的にオフさせる強制オフ手段と、を備えている。
このように構成された誘導性負荷駆動装置では、駆動指令のデューティ比が0%の非通電時には、理想的には、電流検出回路が発生する検出電圧は0Vとなり、且つ、偏差積分回路のコンデンサの両端はいずれも0Vとなるため、比較手段においては、0Vと0Vの比較がなされてその出力である比較信号はネガティブレベル一定となるはずである。
しかし、電流検出手段の具体的内部構成によっては、非通電時であっても電流検出信号が完全に0Vにはならず微小ながらも電圧が発生する可能性がある。そのため、偏差積分回路のコンデンサの両端に電圧が生じ、これにより比較手段からの比較信号が、スイッチング素子をオンさせる方のレベルであるアクティブレベルに転じてしまうおそれがある。また、仮に電流検出信号が完全に0Vとなってコンデンサの両端がいずれも完全に0Vとなったとしても、比較手段の具体的内部構成によっては、比較信号がアクティブレベルになってしまうおそれがある。
このように、非通電時であるにもかかわらず比較信号がアクティブレベルに転じるようなことが生じると、それに伴って駆動信号もアクティブレベルに転じ、マイクロコンピュータは通電経路に異常が生じたものと誤検出してしまうおそれがある。
そこで請求項1に記載の誘導性負荷駆動装置では、駆動指令のデューティ比が0%である場合には、比較手段からどのようなレベルの比較信号が出力されているかに関係なく、駆動信号をネガティブレベルに固定して、スイッチング素子を強制的にオフさせる。
従って、請求項1に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、駆動指令のデューティ比が0%の時には駆動信号がネガティブレベルに固定されるため、マイクロコンピュータによる通電経路の異常検出性能を損ねることなく、マイクロコンピュータが通電経路の異常を誤検出してしまうのを防止することができる。
強制オフ手段が具体的にどのようにして駆動信号をネガティブレベルに固定するかについては種々の方法が考えられるが、例えば請求項2に記載のように、ゼロデューティ検出手段によりデューティ比が0%であることが検出されたときに、駆動手段へ入力される比較信号のレベルをネガティブレベルに固定するようにすることができる。
即ち、駆動指令のデューティ比が0%の時に仮に比較手段からアクティブレベルの比較信号が出力されていたとしても、それをそのまま駆動手段に入力させず、強制的にネガティブレベルに固定(変換等)した上で、駆動手段へ入力させるのである。
このように、駆動指令のデューティ比が0%の時に駆動手段への比較信号をネガティブレベルに固定することで、駆動手段からの駆動信号を確実にネガティブレベルに固定することができ、マイクロコンピュータによる異常の誤検出を確実に防止することができる。
また、ゼロデューティ検出手段についてもその具体的構成は種々考えられるが、例えば請求項3に記載のように、マイクロコンピュータからの駆動指令のレベル変化を検出するレベル変化検出手段と、このレベル変化検出手段によって駆動指令のレベルがスイッチング素子をオンさせる方のレベルであるアクティブレベルからネガティブレベルへ変化するタイミングが検出される度に、該ネガティブレベルの継続時間を計時し、該継続時間が予め決められた時間閾値を越えた場合に、デューティ比が0%であることを示す検出信号を出力する検出信号出力手段と、を備えた構成とすることができる。
このように構成された請求項3に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、駆動指令がネガティブレベルに変化してからの継続時間に基づいてデューティ比が0%になったことが検出されるため、デューティ比が0%になったことを確実に検出することができる。
尚、レベル変化検出手段によるレベル変化の検出対象は、必ずしも、マイクロコンピュータから出力される駆動指令そのものである必要はなく、その駆動指令に対応した信号、即ち駆動指令と同様にレベル変化する信号であれば何でもよい。そのため、例えば駆動電圧出力手段が出力する駆動信号のレベル変化を検出するようにしてもよく、その場合もマイクロコンピュータからの駆動指令のレベル変化を検出することと等価である。
次に、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の誘導性負荷駆動装置であって、電流検出手段は、通電経路上において誘導性負荷と直列に接続された電流検出抵抗と、この電流検出抵抗の両端の電圧を所定の増幅率にて増幅することにより検出電圧を発生する、オペアンプを用いた増幅回路と、を備えている。
このように構成された請求項4に記載の誘導性負荷駆動装置では、駆動指令のデューティ比が0%の非通電時に、増幅回路を構成するオペアンプのオフセット電圧の影響によってオペアンプからの出力(即ち増幅回路からの出力)がたとえ0Vより大きい値になったとしても、その値に関係なく駆動信号はネガティブレベルに固定される。そのため、オペアンプのオフセット電圧に起因してマイクロコンピュータが通電経路の異常を誤検出してしまうのを確実に防止することができる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の誘導性負荷駆動装置であって、比較手段はコンパレータである。
このように構成された請求項5に記載の誘導性負荷駆動装置では、駆動指令のデューティ比が0%の非通電時に、たとえコンパレータの入力電圧(即ちコンデンサ両端の電圧)がいずれも0Vであっても、コンパレータのオフセット電圧の影響によって、コンパレータからの出力(比較信号)がアクティブレベルに転じてしまう可能性があるが、そのコンパレータからの出力に関係なく駆動信号はネガティブレベルに固定される。そのため、コンパレータのオフセット電圧に起因してマイクロコンピュータが通電経路の異常を誤検出してしまうのを確実に防止することができる。
次に、請求項6に記載の発明は、電源から誘導性負荷への通電経路上に設けられ、誘導性負荷に流れる電流を断続するスイッチング素子と、誘導性負荷に流れる電流を検出して該電流に対応した検出電圧を発生する電流検出手段と、誘導性負荷に流すべき目標電流に対応したデューティ比を有し、誘導性負荷の駆動を指示するパルス状の駆動指令を出力するマイクロコンピュータと、マイクロコンピュータからの駆動指令に応じたデューティ比の駆動電圧を出力する駆動電圧出力手段と、抵抗とコンデンサを有し、コンデンサが、該コンデンサの一端に入力される電流検出手段からの検出電圧を基準に、抵抗を介して該コンデンサの他端に入力される駆動電圧出力手段からの駆動電圧によって充放電され、その時定数が駆動指令の周期よりも大であって、コンデンサの充電電圧の極性が駆動指令の周期と同じ周期で変化する偏差積分回路と、偏差積分回路を構成するコンデンサの両端の電圧を比較して該比較結果に応じたパルス状の比較信号を出力する比較手段と、比較手段からの比較信号に応じて、スイッチング素子へ該スイッチング素子をオン・オフさせる駆動信号を出力する駆動手段と、を備え、マイクロコンピュータが、駆動手段からの駆動信号に基づいて通電経路の異常を検出するよう構成された誘導性負荷駆動装置である。
そして更に、本発明(請求項6)の誘導性負荷駆動装置は、駆動指令のデューティ比が0%の非通電時における、偏差積分回路を構成するコンデンサの一端の電圧を、0Vよりも高い値に保持させる、電圧保持手段を備えている。
つまり、非通電時におけるコンデンサの一端の電圧を、意図的に0Vよりも高い値となるようにしておく。これにより、非通電時にはコンデンサの他端の電圧は0Vとなるため、一端の電圧の方が高い状態となって、比較手段から確実にネガティブレベルの比較信号が出力されるようになる。
従って、請求項6に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、非通電時の駆動信号が確実にネガティブレベルに固定されるため、デューティ比が0%に近い領域(0%を含む)であっても、マイクロコンピュータによる通電経路の異常検出性能を損ねることなく、マイクロコンピュータが通電経路の異常を誤検出してしまうのを防止することができる。
電圧保持手段の具体的構成は種々考えられ、例えば請求項7に記載のように、一端がコンデンサの一端に接続されたプルアップ抵抗と、このプルアップ抵抗の他端に接続され、該プルアップ抵抗を介してコンデンサの一端に電圧を印加するための定電圧電源と、を備えた構成とすることができる。
このように構成された請求項7に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、プルアップ抵抗を介して定電圧電源が接続されることにより、非通電時であってもコンデンサの一端の電圧を0Vよりも高い値に保持することができる。
また、請求項8に記載の発明は、請求項7に記載の誘導性負荷駆動装置であって、電流検出手段は、通電経路上において誘導性負荷と直列に接続された電流検出抵抗と、電流検出抵抗の両端の電圧を所定の増幅率にて増幅することにより検出電圧を発生する、オペアンプを用いた増幅回路と、オペアンプの出力端子に接続された出力抵抗と、を備え、オペアンプからの検出電圧が出力抵抗を介してコンデンサの一端へ入力されるよう構成されている。
このように構成された請求項8に記載の誘導性負荷駆動装置では、定電圧電源の電圧がプルアップ抵抗と出力抵抗により分圧され、その分圧値がコンデンサの一端に入力されることになる。そのため、非通電時でも、コンデンサの一端の電圧を、上記分圧値に保持することができる。また、プルアップ抵抗及び出力抵抗の各抵抗値を適宜決めることで、上記分圧値を所望の値に設定することができる。
次に、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の誘導性負荷駆動装置であって、比較手段はコンパレータであり、該コンパレータの反転入力端子にコンデンサの一端が接続されて該コンパレータの非反転入力端子にコンデンサの他端が接続されている。そして、プルアップ抵抗の抵抗値は、定電圧電源の電圧がプルアップ抵抗と出力抵抗にて分圧される分圧値がコンパレータのオフセット電圧よりも大きくなるような値に設定される。
このように構成された請求項9に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、非通電時であっても、コンデンサの一端の電圧を、コンパレータのオフセット電圧よりも大きい値に保持することができるため、コンパレータから出力される比較信号を確実にネガティブレベル(ここではローレベル)に固定することができる。
次に、請求項10に記載の発明は、請求項6に記載の誘導性負荷駆動装置であって、電流検出手段は、通電経路上における、誘導性負荷及びスイッチング素子よりも下流側において誘導性負荷と直列に接続された電流検出抵抗と、この電流検出抵抗の両端の電圧を所定の増幅率にて増幅することにより検出電圧を発生する、オペアンプを用いた増幅回路と、を備え、電圧保持手段は、前記電流検出抵抗に所定量の電流を流すことにより、前記電流検出手段からの検出電圧を、該所定量の電流に対応した値だけ昇圧させる、定電流電源を備えている。
つまり、電流検出抵抗に所定量の電流を流すための定電流電源を別途設けることで、非通電時であっても、電流検出抵抗にはその定電流電源からの電流が流れ、電流検出手段からは、その電流(所定量の電流)に対応した値の検出電圧が出力される。
従って、請求項10に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、非通電時であっても、コンデンサの一端の電圧を0Vよりも高い値(ここでは上記所定量の電流に対応した値)に保持することができる。そのため、比較手段から出力される比較信号を確実にネガティブレベルに固定することができる。
また、請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の誘導性負荷駆動装置であって、比較手段はコンパレータであり、該コンパレータの反転入力端子にコンデンサの一端が接続されて該コンパレータの非反転入力端子にコンデンサの他端が接続されており、定電流電源が電流検出抵抗に流す所定量の電流の値は、該電流を電流検出抵抗に流したときに電流検出手段から出力される検出電圧がコンパレータのオフセット電圧よりも大きくなるような値に設定される。
このように構成された請求項11に記載の誘導性負荷駆動装置によれば、駆動指令のデューティ比が0%の非通電時であっても、コンデンサの一端の電圧を、コンパレータのオフセット電圧よりも大きい値に保持することができるため、コンパレータから出力される比較信号を確実にネガティブレベル(ローレベル)に固定することができる。
以下に、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。
[第1実施形態]
図1に、本実施形態の誘導性負荷駆動装置を表す構成図である。尚、図1において、上述した図5の誘導性負荷駆動装置100及び電磁弁2と同じものについては、同一の符号を付しているため、その詳細説明は省略する。
図1に示すように、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1は、上述した図5の誘導性負荷駆動装置100と全く同様に、リニアソレノイドLoに流れる電流を断続するスイッチング素子としての上流側MOS10、下流側MOS20、電流検出回路3、マイコン4、監視IC5.受信回路6、偏差積分回路7、コンパレータCMP1、駆動回路8、電流リミッタ回路9、ラジオノイズ低減回路11、及び異常時強制停止回路12を備えている。
尚、電磁弁2は、例えばディーゼルエンジンのコモンレール圧を制御するためのリニアソレノイド式電磁弁であって、一般にPCV(プレッシャ・コントロール・バルブ)と呼ばれるものである。そして、本実施形態では、その電磁弁2におけるリニアソレノイドLoへの通電電流を制御することにより、コモンレールに圧送される燃料量(延いてはコモンレール圧)を制御している。
上記のような構成により、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1においても、図5の誘導性負荷駆動装置100と同様、電流検出回路3、偏差積分回路7、及びコンパレータCMP1からなる、ハードウェアによる電流フィードバック回路が形成されている。
そして、図5と比較して、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1には、ゼロデューティ検出回路21と、ANDゲート22とが追加されている。
ゼロデューティ検出回路21は、マイコン4からの上流側駆動指令SDHのデューティ比が0%である場合にこれを検出してその旨の検出信号を出力するものであり、エッジ検出回路26とカウンタ27とを備えている。
エッジ検出回路26は、上流側駆動指令SDHのエッジ変化を検出するための回路であり、具体的には、受信回路6のトランジスタT1のコレクタ電圧を入力し、このコレクタ電圧のレベル変化を検出することで、上流側駆動指令SDHのエッジ変化を検出する。
即ち、図2の時刻t1よりも左側に示すように、上流側駆動指令SDHがHレベル(上流側MOS10をオフさせるネガティブレベル)からLレベル(上流側MOS10をオンさせるアクティブレベル)に変化すると、エッジ検出回路26への入力であるトランジスタT1のコレクタ電圧はLレベル(ネガティブレベル)からHレベル(アクティブレベル)に変化する。エッジ検出回路26は、このネガティブレベルからアクティブレベルへのレベル変化を検出することで、上流側駆動指令SDHの立ち下がりエッジ(アクティブレベルへの変化タイミング)を検出し、カウンタ27へHレベルの信号を出力する。
また、上流側駆動指令SDHがLレベル(アクティブレベル)からHレベル(ネガティブレベル)に変化すると、エッジ検出回路26への入力であるトランジスタT1のコレクタ電圧はHレベル(アクティブレベル)からLレベル(ネガティブレベル)に変化する。エッジ検出回路26は、このアクティブレベルからネガティブレベルへのレベル変化を検出することで、上流側駆動指令SDHの立ち上がりエッジ(ネガティブレベルへの変化タイミング)を検出し、カウンタ27へLレベルの信号を出力する。
カウンタ27は、図示しない基準クロックからのパルスに基づいてカウント(計時)を行う周知の構成のものであり、図2に示すように、エッジ検出回路26にて上流側駆動指令SDHの立ち上がりエッジ(ネガティブレベルへの変化タイミング)が検出されるとカウントを開始する。そして、カウント開始後、エッジ検出回路26にて上流側駆動指令SDHの立ち下がりエッジ(アクティブレベルへの変化タイミング)が検出されると、カウント値がリセットされ、上流側駆動指令SDHがアクティブレベル(Lレベル)である間は、カウント動作を停止する。そして、再びエッジ検出回路26にて上流側駆動指令SDHの立ち下がりエッジが検出されると、初期値からカウントを再開する。
このようにして、カウンタ27は、上流側駆動指令SDHがHレベル(ネガティブレベル)に変化する度に、そのHレベルの継続時間を計時する。そして、カウンタ27は、通常はHレベルの検出信号をANDゲート22へ出力しているが、上流側駆動指令SDHがHレベルに転じた後のHレベルの継続時間が予め設定された時間閾値を越えると(図2の時刻t2)、ANDゲート22へLレベルの検出信号を出力する。
つまり、上流側駆動指令SDHのデューティ比である指令DUTYが0%でない間は、カウンタ27のカウンタ値は、上流側駆動指令がLレベルに変化する度にリセットされるため、時間閾値を越えることはない。一方、指令DUTYが0%になると、上流側駆動指令SDHはHレベル一定となるため、カウンタ27のカウントはリセットされることなく進んでいき、そのカウンタ値(Hレベル継続時間)はやがて時間閾値を越える。そのため、カウンタ27のカウント値が時間閾値を越えたかどうかによって、指令DUTYが0%になったかどうかを検出することができるのであり、指令DUTYが0%になったことを検出した場合は、ANDゲートへLレベルの検出信号を出力する。
ANDゲート22は、その一方の入力端子にコンパレータCMP1からの出力である比較信号が入力され、他方の入力端子にカウンタ27からの検出信号が入力されている。そして、このANDゲート22の出力端子は、駆動回路8におけるトランジスタT2のベースに接続されている。
このような構成により、マイコン4からの指令DUTYが0%ではない間、即ちリニアソレノイドLoへの通電が行われている間は、カウンタ27からANDゲート22へ入力される検出信号はHレベル一定であるため、ANDゲート22からの出力は、コンパレータCMP1からの比較信号に応じたものとなる。つまりこの間は、実質的にコンパレータCMP1からの比較信号がそのまま駆動回路8のトランジスタT2のベースに入力される状態となる。そのため、指令DUTYが0%ではない通電期間中は、リニアソレノイドLoへの通電は、図5の誘導性負荷駆動装置100と全く同様にしてフィードバック制御される。
一方、マイコン4からの指令DUTYが0%になると(図2の時刻t1)、その後、その0%になったことがゼロデューティ検出回路21にて検出され(図2の時刻t2)、ゼロデューティ検出回路21から(詳しくはカウンタ27から)ANDゲート22にLレベルの検出信号が入力される。これにより、ANDゲート22の出力は、コンパレータCMP1からの比較信号がHレベルかLレベルかに関係なく、Lレベルに固定される。
ここで、マイコン4からの指令DUTYが0%となってリニアソレノイドLoへの通電が行われない非通電時は、本来、コンパレータCMP1の各入力端子に入力される電圧はいずれも0Vとなり、コンパレータCMP1からの出力はLレベル一定となるはずである。しかし、上述したように、電流検出回路3のオペアンプOP1のオフセット電圧の影響により、非通電時であってもオペアンプOP1の出力である電流検出値Viは完全に0Vにならない場合が多い。また、仮にこの電流検出値Viが完全に0Vになって、コンパレータCMP1の各入力端子に入力される電圧がいずれも0Vになったとしても、コンパレータCMP1のオフセット電圧の影響により、コンパレータCMP1からの出力がHレベルになってしまうこともある。
そのため、図2の時刻t1以降(及び上述した図6の時刻t1以降)に示すように、マイコン4からの指令DUTYが0%の間、コンパレータCMP1からは高周波パルスが出力されてしまうことがある。よって、仮にこのように高周波パルスが出力されている状態が続くと、やがて時刻t3のダイアグ検出タイミングにおいて、図6の時刻t2の場合と同様に、マイコン4によって駆動系の異常が誤検出されてしまう。
これに対し、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1では、ゼロデューティ検出回路21及びANDゲート22を設けたことで、指令DUTYが0%であることが検出された場合には、駆動回路8のトランジスタT2のベースにはANDゲート22からLレベル一定の信号が入力される。これにより、トランジスタT2は強制的にオフされ、上流側MOS10のゲートに入力される駆動信号もHレベル一定となって、上流側MOS10は強制的にオフされる。またこれにより、図2に示すように、駆動回路8からマイコン4へ入力されるモニタ信号(駆動信号)SMも、Hレベル一定となる。
また、図2の時刻t2でカウンタ27からの検出信号がLレベルになったことによりANDゲート22からの出力がLレベル一定になると、上流側MOS10は強制的にオフされてリニアソレノイドLoには電流が流れなくなるため、電流検出回路3のオペアンプOP1からの電流検出値Viも0Vとなる(但しオフセット電圧に起因して微少電圧が出力される可能性はある)。
そして、マイコン4によるダイアグ検出が行われる時刻t3では、モニタ信号SMは、図6のダイアグ検出タイミングである時刻t2のような高周波パルスとはなっておらず、Hレベル一定である。そのため、マイコン4は図6のように駆動系の異常(レアショート)を誤検出することはない。
ゼロデューティ検出回路21における、指令DUTYが0%になったことを検出するための時間、即ちカウンタ27における時間閾値は、適宜決めることができるが、少なくとも、上流側駆動指令SDHの周期以上(例えばその周期の2倍以上)とする必要がある。また、ダイアグ検出タイミングが到来するよりも前に指令DUTYが0%になったことが検出されるようにする必要があることから、マイコン4によるダイアグ検出タイミングに対して十分余裕がある時間にすることが望ましい。
また、監視IC5によってマイコン4の異常が検出された場合、異常時強制停止回路12が受信回路6のトランジスタT1を強制的にオフさせることにより上流側MOS10を強制的にオフさせるのだが、図5に示した従来の誘導性負荷駆動装置100では、マイコン4からの指令DUTYが0%になると、異常時強制停止回路12が上流側MOS10を強制的にオフさせようとして上記動作を行っても、上述したコンパレータCMP1及びオペアンプOP1のオフセット電圧の影響で、上流側MOS10が確実にオフされず、監視ICによる監視結果が十分に反映されないおそれがある。
しかし、本実施形態の誘導性負荷駆動装置1では、エッジ検出回路26が、マイコン4からの上流側駆動指令SDHのエッジ変化を検出するにあたり、この上流側駆動指令SDHを直接取り込むのではなく、受信回路6におけるトランジスタT1のコレクタ電圧を取り込んでいる。
そのため、マイコン4が正常に動作している通常時は、マイコン4からの上流側駆動指令SDHの変化がそのままトランジスタT1のコレクタ電圧の変化として現れ(但し論理は逆だが)、エッジ検出回路26はこのコレクタ電圧に基づいて上流側駆動指令SDHのエッジ変化を検出することができる。
一方、監視IC5によってマイコン4の異常が検出されると、異常時強制停止回路12によって、受信回路6のトランジスタT1は強制的にオフされる。そのため、マイコン4からの上流側駆動指令SDHの状態にかかわらず、エッジ検出回路26に入力されるトランジスタT1のコレクタ電圧はLレベル一定となる。
そのため、カウンタ27からはやがてLレベルの検出信号が出力され、ANDゲート22からの出力がLレベル一定となって、駆動回路8からの駆動信号がHレベル一定になると共に上流側MOS10は強制的にオフされる。
つまり、ゼロデューティ検出回路21は、受信回路6におけるトランジスタT1のコレクタ電圧を取り込むことで、マイコン4が正常である間はその指令DUTYが0%になった場合にこれを検出して、上流側MOS10を強制的にオフさせるためのLレベルの検出信号をANDゲート22に出力するという、基本的な動作を行う。そして、監視IC5によりマイコン4の異常が検出された場合は、トランジスタT1が強制的にオフされることに伴い、マイコン4からの指令DUTYがたとえ0%でなくても上流側MOS10を強制的にオフさせるためのLレベルの検出信号をANDゲート22に出力するという、拡張的な動作を行う。
以上説明した本実施形態の誘導性負荷駆動装置1では、コンパレータCMP1やオペアンプOP1のオフセット電圧の影響によって指令DUTYが0%になってもコンパレータCMP1の出力がHレベルに転じてしまうようなことが生じても、指令DUTYが0%の間は、ANDゲート22からの出力がLレベルに固定されるため、駆動回路8からの駆動信号はHレベルに固定されて上流側MOS10は強制的にオフされる。
そのため、従来のような、指令デューティが0%のときにはマイコン4によるダイアグ検出機能をマスクするといった、マイコン4のダイアグ検出機能を低下させるようなことをすることなく、指令DUTYが0%の間は上流側MOS10を確実にオフに固定でき、マイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを確実に防止することができる。
また、監視IC5によってマイコン4の異常が検出された場合も、異常時強制停止回路12によって受信回路6のトランジスタT1が強制的にオフされ、これによりゼロデューティ検出回路21の動作によってANDゲート22からの出力がLレベルに固定される。そのため、マイコン4の異常が検出された場合も上流側MOS10を確実にオフさせることができる。
また、後述する第2、第3実施形態の誘導性負荷駆動装置30,40(図3,図4参照)では、コンパレータCMP1やオペアンプOP1のオフセット電圧に起因してマイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを防止するために、指令DUTYが0%の非通電時におけるコンパレータCMP1の反転入力端子の電圧を、0Vよりも高い所定の保持値に保持させるようにしている。しかし、このような方法では、指令DUTYと実際の電流との関係に若干の影響が出たり(第2実施形態)、指令DUTYにオフセット(詳細は後述)をつける必要性が生じたりして(第3実施形態)、若干ではあるが、電流フィードバック制御の制御性、即ちリニアソレノイドLoの電流特性に影響を及ぼしてしまう。
しかし、第1実施形態の誘導性負荷駆動装置1では、第2、第3実施形態のようにコンパレータCMP1の反転入力端子の電圧を持ち上げるといったことはしていない。そのため、リニアソレノイドLoの電流特性に影響を与えることなく、指令DUTYが0%のときにマイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを防止することができる。
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素の対応関係を明らかにする。本実施形態において、電流検出回路3は本発明の電流検出手段に相当し、抵抗R2は本発明の電流検出抵抗に相当し、受信回路6は本発明の駆動電圧出力手段に相当し、駆動回路8は本発明の駆動手段に相当し、ゼロデューティ検出回路21は本発明のゼロデューティ検出手段に相当し、エッジ検出回路26は本発明のレベル変化検出手段に相当し、カウンタ27は本発明の検出信号出力手段に相当し、ANDゲート22は本発明の強制オフ手段に相当し、マイコン4が出力する上流側駆動指令SDHは本発明の駆動指令に相当する。また、マイコン4が検出する「駆動系の異常」は本発明の「通電経路の異常」に相当するものである。
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の誘導性負荷駆動装置について、図3を用いて説明する。図3は、本実施形態の誘導性負荷駆動装置30を表す構成図である。尚、図3においても、上述した図5の誘導性負荷駆動装置100及び電磁弁2と同じものについては、同一の符号を付しているため、その詳細説明は省略する。
上述した第1実施形態の誘導性負荷駆動装置1(図1)では、コンパレータCMP1やオペアンプOP1のオフセット電圧に起因してマイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを防止するために、ゼロデューティ検出回路21及びANDゲート22を設けたが、本実施形態の誘導性負荷駆動装置30では、偏差積分回路7のコンデンサC1の一端(即ちコンパレータCMP1の反転入力端子)に別途所定の値(保持値)の電圧を印加することにより、指令DUTYが0%の非通電時であってもコンパレータCMP1の反転入力端子の電圧が0Vよりも高くなるようにすることで、上記問題の解決を図っている。
即ち、本実施形態の誘導性負荷駆動装置30は、図5の誘導性負荷駆動装置100と比較して、コンデンサC1の一端に、プルアップ抵抗R30を介して制御用電源(制御電圧Vcc)が接続されている。
これにより、コンパレータCMP1の反転入力端子に入力される電圧は、オペアンプOP1が出力する電流検出値Viに、制御電圧Vccと電流検出値Viとの差をプルアップ抵抗R30と抵抗R8とで分圧した分圧値を加えた値となる。そのため、指令DUTYが0%の非通電時でオペアンプOP1からの電流検出値Viが0Vの時は、制御電圧Vccをプルアップ抵抗R30と抵抗R8とで分圧した分圧値が、保持値として、コンパレータCMP1の反転入力端子に入力されることとなる。
つまり、プルアップ抵抗R30を介してコンパレータCMP1の反転入力端子に電圧を印加することで、リニアソレノイドLoに電流が流れていない時でも、コンパレータCMP1からみればあたかも電流が流れているように見えるようにする。このようにして、指令DUTYが0%の時の、コンパレータCMP1からの比較信号を、確実にLレベルにさせ、上流側MOS10を確実にオフさせるようにしているのである。
プルアップ抵抗R30の抵抗値は、制御電圧Vccがプルアップ抵抗R30と抵抗R8とで分圧される分圧値(保持値)がコンパレータCMP1のオフセット電圧(詳しくはその公差の最大値)よりも大きくなるような値に設定すればよい。
但し、電流検出回路3のオペアンプOP1が出力する電流検出値Viと実際にコンパレータCMP1の反転入力端子に入力される電圧値とが大きくずれると、指令DUTYと実際の電流との関係に影響が出て、電流フィードバック制御の制御性に影響を及ぼすおそれがある。即ち、コンパレータCMP1の反転入力端子の電圧をプルアップ抵抗R30を介して持ち上げた分、図5の誘導性負荷駆動装置100よりも上流側MOS10がオンするタイミングが遅れ、逆にオフするタイミングは早くなる。そのため、指令DUTYと実際の上流側MOS10がオン・オフされるデューティ比とが若干ずれ、その分、制御性に影響を及ぼすおそれがある。
そのため、上記影響をできる限り抑えるために、プルアップ抵抗R30の抵抗値は、オペアンプOP1の出力端子に接続されている抵抗R8の抵抗値よりも十分に大きな値となるように設定するのが望ましい。
例えば、制御電圧Vccが5Vであって抵抗R8が1kΩである場合、プルアップ抵抗R30として例えばその100倍の100kΩのものを用いれば、分圧値は約50mVとなり、指令DUTYが0%の時のコンパレータCMP1の反転入力端子の電圧を約50mV持ち上げることができる。
このように構成された本実施形態の誘導性負荷駆動装置30によれば、コンパレータCMP1の反転入力端子の電圧をプルアップ抵抗R30を介して持ち上げることで、指令DUTYが0%の非通電時にコンパレータCMP1からの比較信号を確実にLレベルとすることができる。
そのため、従来のような、指令DUTYが0%に近い領域のときにはマイコン4によるダイアグ検出機能をマスクするといった、マイコン4のダイアグ検出機能を低下させるようなことをすることなく、指令DUTYが0%に近い領域の間は上流側MOS10を確実にオフに固定でき、マイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを確実に防止することができる。
また、監視IC5によってマイコン4の異常が検出され、受信回路6のトランジスタT1が強制的にオフされた場合、コンパレータCMP1の非反転入力端子の電圧は0Vとなるが、この場合も、反転入力端子の電圧が0Vよりも高い値に保持されていることから、コンパレータCMP1からの比較信号を確実にLレベルにして、上流側MOS10を確実にオフさせることができる。
また、プルアップ抵抗R30の抵抗値を適宜決めることで、上記分圧値を、電流フィードバック制御の制御性への影響を考慮したより適切な(所望の)値に設定することができる。
なお、本実施形態において、制御電圧Vccを発生する制御用電源が本発明の定電圧電源に相当し、電流検出回路3の抵抗R8は本発明の出力抵抗に相当する。
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の誘導性負荷駆動装置について、図4を用いて説明する。図4は、本実施形態の誘導性負荷駆動装置40を表す構成図である。尚、図4においても、上述した図5の誘導性負荷駆動装置100及び電磁弁2と同じものについては、同一の符号を付しているため、その詳細説明は省略する。
本実施形態の誘導性負荷駆動装置40も、図3に示した第2実施形態の誘導性負荷駆動装置30と同様、指令DUTYが0%の非通電時であってもコンパレータCMP1の反転入力端子の電圧が0Vよりも高くなるようにすることで、指令DUTYが0%に近い領域のときにコンパレータCMP1やオペアンプOP1のオフセット電圧に起因してマイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを防止するようにしている。
即ち、本実施形態の誘導性負荷駆動装置40は、図5の誘導性負荷駆動装置100と比較して、所定量の電流を出力する定電流回路41が設けられている。そして、この定電流回路41からの電流が、電流検出回路3における電流検出用の抵抗R2に供給される。具体的には、定電流回路41における電流出力端子が、抵抗R2における通電経路の上流側(即ち抵抗R5との接続点)に接続されている。
このような構成により、電流検出回路3の抵抗R2には、常時、定電流回路41から所定量の電流が供給される。そのため、オペアンプOP1から出力される電流検出値Viは、リニアソレノイドLoに流れている実際の電流に対応した値に対し、定電流回路41からの所定量の電流に対応した値だけ昇圧された値となる。
このように、電流検出用の抵抗R2に定電流回路41からの電流を重畳させることで、オペアンプOP1から出力される電流検出値Viの値を、実際にリニアソレノイドLoに流れる電流に対応した値よりも上げておくことにより、指令DUTYが0%の非通電時においても、定電流回路41からの電流に対応した、0Vよりも大きい値の電流検出値Vi(保持値)が、偏差積分回路7のコンデンサC1の一端及びコンパレータCMP1の反転入力端子に入力される。
つまり、リニアソレノイドLoに電流が流れていない時でも、抵抗R2に常時電流を流しておくことで、コンパレータCMP1からみればあたかも電流が流れているように見えるようにする。このようにして、指令DUTYが0%の時の、コンパレータCMP1からの比較信号を、確実にLレベルにさせ、上流側MOS10を確実にオフさせるようにしているのである。
定電流回路41が抵抗R2に供給する所定量の電流の値は、リニアソレノイドLoの非通電時に該電流を抵抗R2供給したときにオペアンプOP1から出力される電流検出値Viが、コンパレータCMP1のオフセット電圧(詳しくはその公差の最大値)よりも大きくなるような値に設定するとよい。そのため、その電流値の設定にあたっては、コンパレータCMP1のオフセット電圧、オペアンプOP1からなる電流検出回路3の増幅率、さらにはオペアンプOP1のオフセット電圧などを考慮して、結果として、指令DUTYが0%の非通電時にコンパレータCMP1からの比較信号が確実にLレベル一定となるように設定するのが望ましい。
なお、本実施形態の誘導性負荷駆動装置40では、電流検出回路3の抵抗R2に定電流回路41からの電流を常時流すようにしていることから、電流検出回路3によって検出される電流検出値Viは、常に、リニアソレノイドLoに実際に流れている電流に対応した値よりも大きい値となる。つまり、常時、リニアソレノイドLoに実際に流れている電流よりも大きな電流が流れているものとして検出されてしまうことになる。
そのため、好ましくは、マイコン4からの指令DUTYを、目標電流に対応した本来のデューティ比に対してオフセットさせるとよい。つまり、目標電流に対応した本来のデューティ比よりも若干大きいデューティ比の上流側駆動指令SDHを出力するのである。このように指令DUTYにオフセットを付けることで、定電流回路41からの電流が電流フィードバック制御の制御性に与える影響を抑制することができ、リニアソレノイドLoに流れる電流を目標電流に制御することができる。
このように構成された本実施形態の誘導性負荷駆動装置40によれば、指令DUTYが0%の非通電時であっても、コンパレータCMP1の反転入力端子の電圧を0Vよりも高い状態に保持させ、コンパレータCMP1からの比較信号を確実にLレベルとすることができる。
そのため、従来のような、指令DUTYが0%に近い領域のときにはマイコン4によるダイアグ検出機能をマスクするといった、マイコン4のダイアグ検出機能を低下させるようなことをすることなく、指令DUTYが0%に近い領域の間は上流側MOS10を確実にオフに固定でき、マイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを確実に防止することができる。
また、監視IC5によってマイコン4の異常が検出され、受信回路6のトランジスタT1が強制的にオフされた場合、コンパレータCMP1の非反転入力端子の電圧は0Vとなるが、この場合も、反転入力端子の電圧が0Vよりも高い値に保持されていることから、コンパレータCMP1からの比較信号を確実にLレベルにして、上流側MOS10を確実にオフさせることができる。
なお、本実施形態において、定電流回路41は本発明の定電流電源に相当する。
[変形例]
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の実施の形態は、上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の形態を採り得ることはいうまでもない。
例えば、上記第1実施形態では、受信回路6におけるトランジスタT1のコレクタの電圧をエッジ検出回路26に取り込んだが、マイコン4からの上流側駆動指令SDHを直接取り込んでも良いし、また、受信回路6における抵抗R11、R12の接続点の電圧VDを取り込んでも良い。つまり、マイコン4からの上流側駆動指令SDHのエッジ変化を検出できる限り、必ずしも上流側駆動指令SDHそのものを取り込む必要はない。
また、上記第1実施形態では、ゼロデューティ検出回路21によって指令DUTYの0%が検出されたとき、ANDゲート22によって、コンパレータCMP1から駆動回路8へ入力される比較信号を強制的にLレベルに固定することにより、駆動信号をHレベルに固定して上流側MOS10をオフさせるようにしたが、このようにANDゲート22を設けるのはあくまでも一例である。このANDゲート22に代えて、例えば、駆動回路8におけるトランジスタT2のコレクタを強制的にHレベルに固定するような回路を設けるようにしてもよい。
また、上記第1実施形態では、指令DUTYが0%となった場合にこれを検出して、コンパレータCMP1からの比較信号を強制的にLレベルに固定するようにしたが、既述の通り、オペアンプOP1やコンパレータCMP1のオフセット等に起因してマイコン4が駆動系の異常を誤検出するおそれがあるのは、指令DUTYが0%の場合に限らず、0%に近い領域であっても誤検出が生じるおそれがある。
そこで、上記第1実施形態において、ゼロデューティ検出手段21を、指令DUTYが0%に近い領域(0%から所定のデューティ比の領域。例えば0〜1%。)の場合にこれを検出してANDゲート22へLレベル信号を入力するものとして構成してもよい。具体的には、例えばエッジ検出回路26においてその入力段にフィルタを設け、指令DUTYが0%に近い領域のときのエッジが入力されないようにする構成が考えられる。勿論これは一例であり、指令DUTYが所定の領域の場合にこれを検出してANDゲート22へ確実にLレベルの信号を出力できる限り、種々の構成が考えられる。
このように、指令DUTYが0%に近い領域の場合にこれを検出して、その間、コンパレータCMP1からの比較信号を強制的にLレベルに固定する(延いては上流側MOS10を強制的にオフさせる)ようにすれば、指令DUTYが0%に近い領域の間は上流側MOS10を確実にオフに固定でき、マイコン4が駆動系の異常を誤検出してしまうのを確実に防止することができる。
また、上記第2実施形態及び第3実施形態では、非通電時でもコンパレータCMP1の反転入力端子が0Vより高くなるための具体的構成として、プルアップ抵抗R30を設ける構成(第2実施形態)や、定電流回路41から電流検出用の抵抗R2に常時電流を流す構成(第3実施形態)を示したが、これらの構成以外にも、非通電時のコンパレータCMP1の反転入力端子を0Vより高く保持できる限り、種々の構成を採ることができる。
また、上記各実施形態では、本発明の誘導性負荷駆動装置をディーゼルエンジンのコモンレール式燃料噴射システムに適用した場合について説明したが、これに限らず、本発明は、ハードウェアによる電流フィードバック回路によって誘導性負荷への通電を制御し、且つその通電制御用のスイッチング素子への駆動信号に基づいて駆動系の異常を検出する異常検出機能を備えた、あらゆる誘導性負荷駆動装置に対して適用することができる。