JP5098111B2 - ガラスプレス用モールドの作製方法 - Google Patents

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Description

この出願の発明は、ガラスプレス用モールドの作製方法に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は、表面粗さがきわめて小さく、微細構造を有するガラスプレス用モールド等を、より簡便に作製することのできるガラスプレス用モールドの作製方法に関するものである。
ガラスは、光学特性、温度安定性、耐久性等において優れた特性を示す。このため、高性能光学部品はその多くがガラス製とされている。ガラス製光学部品を大量生産するためのガラスプレスは高温で行われるため、モールド用の材料には、高温強度及び化学的安定性に優れる結晶化ガラスや超硬合金が候補として挙げられ、たとえば、ガラスプレス用モールドとして、結晶化ガラスや超硬合金からなる金型のプレス面に貴金属からなる保護膜が設けられた、ガラス成形用の金型が提案されている(たとえば、特許文献1および2参照)。
しかしながら、金型の材料として結晶化ガラスを用いる場合には、微細構造を有する金型の作成は困難であるという問題がある。また、超硬合金は加工が難しく、一般には研削によってしか加工することができない。しかしながら、研削は、ある程度の大きさの球面若しくは非球面を加工するのに適用されるものの、微細構造の形成には工具の大きさ、磨耗等の問題があり、適さない手法である。さらにこれらの方法においては、貴金属からなる保護膜の膜厚を均一に制御する必要があり、高度な制御技術が要求されるものであった。
一方で、樹脂の成形法としては、フォトリソグラフィとエッチングによりシリコンに微細構造を形成し、これをモールドとしてホットプレス又は射出成形等により転写する方法が知られている。しかしながら、シリコンは、600℃以上でクリープし、かつ反応性に富んでいるため、ガラスプレスのモールド材料としては適さない。
このような状況下、この出願の発明の発明者は、先に、炭化珪素を用いたガラスプレス用モールドの作製方法を提案している(たとえば、特許文献3参照)。この方法は、シリコンモールドの表面に炭化珪素を堆積させた後、堆積させた炭化珪素と炭化珪素基板とを接合し、次いでシリコンモールドをエッチングにより除去するものである。この方法によると、たとえば石英ガラスのプレス成形用など、1400℃以上の高温高圧が必要なガラスプレスにおいて極めて有用なモールドを作製することができる。
特開2002−226221号公報 特開2003−26429号公報 特開2004−345897号公報
しかしながら、上記の炭化珪素を用いたガラスプレス用モールドの作製方法では、炭化珪素のヤング率(700GPa程度)がシリコンモールドのヤング率(190GPa)より大幅に高いため、シリコンモールドの変形を防止するための制御に高度な技術を要し、また、炭化珪素同士の接合にも困難さを伴うという問題があった。
さらに、炭化珪素を堆積させるためには、気相化学成長(CVD)法が必須であるが、そのための装置が大掛かりになること、堆積速度が遅いこと、特殊ガスや可燃性ガスの取
り扱いに注意が必要であることなども、課題として挙げられていた。
加えて、炭化珪素は、高温では極表層が酸化し、この酸化層が非成形物であるガラスと融着する恐れがあるため、モールド表面に炭素や貴金属のコーティングを行うことが欠かせないものでもあった。
この出願の発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、表面粗さの極めて小さい、微細構造を有するガラスプレス用モールドを、より簡便に作製することのできるガラスプレス用モールドの作製方法を提供することを解決すべき課題としている。
この出願の発明の発明者らは、上記の問題点を解決するため、シリコンモールドの表面に第1の耐熱金属材料のI r‐P t合金を堆積させた後、更に、Niを50μm以上電気メッキし、前記メッキ層上に第2の耐熱金属材料のNi、Coあるいはそれらの合金からなるブロックを圧力を印加しながら加熱することにより、Niメッキ層と第2の耐熱金属材料とを拡散接合し、次いでシリコンモールドを除去することを特徴とするガラスプレス用モールドの作製方法を提供する。
第2には、シリコンモールドの表面に第1の耐熱金属材料のI r‐P t合金を堆積させた後、シリコンモールドを除去するとともに、除去面を保護材料で保護し、更に、Niを50μm以上電気メッキし、前記メッキ層上に第2の耐熱金属材料のNi、Coあるいはそれらの合金からなるブロックを圧力を印加しながら加熱することにより、Niメッキ層と第2の耐熱金属材料とを拡散接合することを特徴とするガラスプレス用モールドの作製方法を提供する。
また第には、上記の方法において、I r - P t合金中のP tが10〜80at%であることを特徴とするラスプレス用モールドの作製方法を提供する。
以上のとおりのこの出願の発明により、一般的な光学ガラス製造のためのガラスプレス用モールドはもちろんのこと、微細構造を転写するためのガラスプレス用モールド等をも、より簡便に作製できる方法が提供される。
また、Pt-Ir合金を代表とする耐熱性合金でガラスプレス用モールドを構成することで
、800℃程度の高温でのプレス成形が可能なガラスプレス用モールドとされる。これらの耐熱性合金は、CVD法に比べて簡便な、電気めっきやスパッタ法などにより堆積させることができ、特殊な制御技術等を必要とせずにガラスプレス用モールドを製造することができる。
この出願の発明は上記のとおりの特徴をもつものであるが、以下に、この出願の発明の実施の形態について詳しく説明する。
図1は、この出願の発明のガラスプレス用モールドの作製方法の概要を例示した工程図である。図中の工程(a)〜(c)は断面図および平面図を、工程(d)〜(g)は断面図を示している。
図1(a)に示したように、シリコンモールド(1)を用意する。シリコンモールド(1)は、単結晶シリコン等の表面に所望の表面形状を作製することにより得ることができる。たとえば、フォトリソグラフィ、エッチング等の手法により、単結晶シリコン上に所
望の微細構造を作製することができる。このシリコンモールド(1)の作製に際し、IC加工技術を応用することにより、より高分解能かつ高精度であり、また、自由度の高い微細加工が可能となる。例えば、具体的には、シリコンの加工に際し、LSI/MEMS微細加工技術を利用することで、数十nmの水準の微細性を有する表面形状を作製することが可能となる。このシリコンモールド(1)は、このガラスプレス用モールドの作製方法において雌型となる。
次いで、図1(b)〜(c)に示したように、この出願の発明のガラスプレス用モールドの作製方法では、シリコンモールド(1)上に、耐熱金属材料(2)(3)を堆積させる。耐熱金属材料(2)(3)の堆積には、気相化学成長(CVD)法、スパッタリング法、電気めっき法等の各種の堆積手法を用いることができるが、たとえば、装置が比較的簡便で、堆積速度が速く、特殊ガスや可燃性ガスを扱う必要がないという点で、スパッタリング法、電気めっき法等の手法を採用することが好ましい形態として示される。
また、耐熱金属材料(2)(3)としては、たとえば、800℃以上の高温強度及び耐酸化特性等の化学的安定性に優れたWC−Co系超硬合金、Ni及びNi基耐熱合金、Co及びCo基耐熱合金、白金族金属、白金族金属基合金などの金属、合金を用いることができるが、この出願の発明の方法においてより好ましくは、スパッタリング法、電気めっき法等の手法により堆積可能で、800℃以上の高温でも酸化による表面の形状変化が無く、また転写の際ガラスと融着しないIr-Pt合金を用いることである。この場合のIr-Pt合金の組成は特に限定されるものではないが、高温強度と耐酸化特性を保つという観点からPtが10〜80at%程度含有されたIr-Pt合金とするのが好適な例として示される。
耐熱金属材料(2)(3)の堆積量(厚み)は、シリコンモールド(1)に設けられた表面形状にもよるため一概には言えないが、シリコンモールド(1)表面の凹凸の影響が無くなり、堆積後表面研磨しても平滑面が得られる程度、すなわち50〜150μm程堆積させることが例示される。
なお、この出願の発明の方法においては、耐熱金属材料(2)(3)の堆積を2段階で行い、図1(b)に示したように、第1の耐熱金属材料(2)をシリコンモールドの全表面に堆積させた後、図1(c)に示したように、第1の耐熱金属材料(2)の表面に第2の耐熱金属材料(3)を堆積させるようにしてもよい。この場合、第1の耐熱金属材料(2)はガラスモールド作製時には下地となる第2の耐熱金属材料(3)の影響が出ない程度の厚さ、すなわち10〜30μm以上、第2の耐熱金属材料(3)はシリコンモールド(1)表面の凹凸の影響が無くなり、堆積後表面研磨しても平滑面が得られる程度、すなわち50〜100μm程度以上となるようにそれぞれ堆積させることが好ましい例として示される。ここで、第1と第2の耐熱金属材料(2)(3)およびその堆積方法(堆積条件)は、同一もしくは異なるものとすることができ、たとえば上記に例示した中からそれぞれ自由に選択することができる。より詳しくは、たとえば、シリコンモールド(1)の表面形状を品質良く転写し、また耐熱、耐酸化の観点からも耐久性の良いIr−Pt合金を第1の耐熱金属材料(2)としてスパッタリング法、あるいは電気めっき法にて堆積させた後、Ir-Pt合金との密着性が良く、またスパッタ法や電気めっき法等の手段により堆
積可能で、比較的安価であるNi,Co或いはその合金を第2の耐熱金属材料(3)として堆積させることなどが可能である。
堆積させた耐熱金属材料(2)(3)は、図1(c)に示したように、表面を研磨し、平坦化させることができる。この表面は、所定の曲面とすることもできる。この操作は、後述の耐熱金属材料からなるブロックとの接合性を高めるのに有効となる。
この後、図1(d)に示したように、耐熱金属材料からなるブロック(4)を、堆積さ
せた耐熱金属材料(2)(3)と接合し、図1(e)に示したように、シリコンモールド(1)を除去する。
ブロック(4)を構成する耐熱金属材料としては、たとえば上記の中から適宜選択することができ、耐熱金属材料(2)(3)と同一または異なるものとすることができる。より好ましくは、第1の耐熱金属材料(2)をIr−Pt合金とし、ブロック(4)を耐酸化性に優れ比較的安価なNi基合金やCo基合金等の耐熱金属材料とし、第2の耐熱金属材料(3)は第1の耐熱金属材料(2)およびブロック(4)との接合性が良いものとすることである。またブロック(4)の大きさは特に限定されないが、金型として扱いやすい厚さ5〜10mm程度が好ましい。
接合には、拡散接合等の固相接合や、レーザー溶接などを採用することができる。また、シリコンモールド(1)の除去には、機械的剥離やエッチング等を採用することができる。エッチングには、各種の溶液等を用いることができ、たとえばフッ酸と硝酸の混合液等が示される。
なお、この出願の発明の方法においては、シリコンモールド(1)の表面に耐熱金属材料(2)(3)を堆積させた後に、図1(f)〜(g)に示したように、シリコンモールド(1)を除去するとともに、除去面を保護材料で保護し、次いで堆積された耐熱金属材料(2)(3)と耐熱金属材料からなるブロック(4)とを接合してもよい。保護材料としては、接合時に除去面、すなわち転写面を保護するための条件を備えているもの、すなわち接合時に転写面と反応を起こさず、また転写面より柔らかいカーボンシートや、BNシートなどの材料を用いることができる。
このようにして耐熱金属材料製のガラスプレス用モールドが製造され、モールドの表面にはシリコンモールド(1)に形成された微細構造が正確に転写され、表面粗さのきわめて小さいガラスプレス用モールドが作製される。光学素子に求められる形状精度は、一般的にはλ/4,λ/16等とグレードによって異なってくる。例えばλが500nmのオーダーの場合には、サブミクロン以下の形状精度が求められ、それに応じて表面粗さは数nmのオーダーが必要とされる。この出願の発明のガラスプレス用モールドは、各種のグレードに対応可能なため表面粗さにより規定されることはないが、数nm表面粗さを十分に実現することが可能と考えられる。
単結晶シリコン表面に幅20μm、深さ20μmの微細な三角溝を複数本平行に隣接して加工した領域、また一辺が20μm、高さ約17μmの正四角錐を30μm間隔に加工した領域等を作製し、シリコンモールドとした。このシリコンモールドの全表面に、I r ‐10at%Ptを、スパッタリング法により30μmの厚さで堆積させた。次いで、Niを、電気めっき法により訳100μmの厚さで堆積させた。このNiの表面を研磨するとともに、シリコンモールドを機械的に剥離して除去した。次いで、このようにして得られた膜状の堆積物に、厚さ5mmのNiブロックを拡散接合させた。接合条件は、600℃、10MPa圧力を20分間印加するようにした。
これによって得られたガラスプレス用モールドの成形面を、走査型電子顕微鏡により観察した結果を図2〜4に例示した。この実施例においては、拡散接合時に炭素箔を用いてガラスプレス用モールドの成形面を保護したため、成形面にわずかにカーボンの汚れが付着しているが、シリコンモールドに施した微細加工の各種形状に合致する微細な形状が精密に転写されていることが確認された。
さらに、このガラスプレス用モールド表面にパイレックス(登録商標)ガラスを置き、
800℃に加熱した後、23MPaの圧力を印加してパイレックス(登録商標)表面にモールドの成型面を転写した。その一部を走査型電子顕微鏡によって観察した結果を図5に示す。ガラスプレス用モールドの表面形状が正確に転写されており、またモールドとパイレックス(登録商標)ガラスとの融着は全く認められなかった。さらに、プレス後のガラスプレス用モールドの表面形状に変化はほとんど無く、ガラス製光学部品の作製に十分使用できるモールドであることも示された。
もちろん、この出願の発明は、以上の実施の形態及び実施例によって限定されるものではなく、各耐熱金属材料の選択、堆積条件、接合条件、プレス条件等の細部については、様々な態様が可能であることはいうまでもない。
この出願の発明のガラスプレス用モールドの作製を例示した工程図である。 実施例において作製したガラスプレス用モールドの表面を例示した図である。 実施例において作製したガラスプレス用モールドの表面を例示した図である。 実施例において作製したガラスプレス用モールドの表面を例示した図である。 実施例において作製したガラスプレス用モールドを用いて転写したパイレックス(登録商標)ガラスの表面を例示した図である。
符号の説明
1 シリコンモールド
2 耐熱金属材料(第1の耐熱金属材料)
3 耐熱金属材料(第2の耐熱金属材料)
4 ブロック

Claims (3)

  1. ガラスプレス用モールドの作製方法であって、所望の表面形状が備えられたシリコンモールドの表面に第1の耐熱金属材料のI r‐P t合金を10μm以上堆積させた後、更に、Niを50μm以上電気メッキし、前記メッキ層上に第2の耐熱金属材料のNi、Coあるいはそれらの合金からなるブロックとを圧力を印加しながら加熱することにより、Niメッキ層と第2の耐熱金属材料とを拡散接合し、次いでシリコンモールドを除去することを特徴とするガラスプレス用モールドの作製方法。
  2. ガラスプレス用モールドの作製方法であって、所望の表面形状が備えられたシリコンモールドの表面に第1の耐熱金属材料のI r‐P t合金を10μm以上堆積させた後、シリコンモールドを除去するとともに、除去面を保護材料で保護し、更に、第1の耐熱金属材料上にNiを50μm以上電気メッキし、前記メッキ層上に第2の耐熱金属材料のNi、Coあるいはそれらの合金からなるブロックとを圧力を印加しながら加熱することにより、Niメッキ層と第2の耐熱金属材料とを拡散接合することを特徴とするガラスプレス用モールドの作製方法。
  3. 請求項1又は2に記載のI r‐Pt合金中のPtが10〜80at%であることを特徴とするガラスプレス用モールドの作製方法。
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