JP5098015B2 - 菌体膜傷害性・抗菌性物質とその利用方法 - Google Patents

菌体膜傷害性・抗菌性物質とその利用方法 Download PDF

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Description

本発明は菌体膜傷害性・抗菌性物質とその利用方法に関する。更に詳しくは本発明は、細菌に一定の増殖能力を残存させつつその菌体膜を傷害すると言う静菌的な菌体膜傷害性を示す単量体物質(モノマー)とそのオリゴマー、細菌に対して菌体膜傷害性と強い抗菌性とを併せ持つ単量体物質とそのオリゴマー、及びこれらの利用に関する。本発明は、医療的応用、衛生的応用、工業的応用等が期待される。
化学療法剤は、ペニシリンの発見以来、たゆまなく開発されてきた。しかし近時に到り、新規な病原菌やメシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の出現に代表されるように、既存の化学療法剤に対する耐性菌が出現し、大きな問題となっている。従って、新規な化学療法剤となる抗菌性物質であって特に薬剤耐性を起こし難いものの開発が強く望まれている。
従来、薬剤耐性を起こし難い抗菌性物質として、ポリミキシンB等の膜作動型機構により抗菌性を示す物質が公知である。しかしこれらの物質は複雑な構造を有する天然物であり、人工的な大量製造は必ずしも容易ではない。叉、これらの物質に人工的な構造改変を加えて更に効果的な抗菌性を発現させるには、複雑な合成プロセスが必要であり、コスト面の問題がある。
一方、既存の抗菌性物質あるいは抗生物質の中には、本来は優れた抗菌性を持ちながら、物理的障壁としての菌体膜を通過できないために抗菌性を発揮できないものも見られる。薬剤耐性の獲得に代表されるように、継代によって多様化する病原菌に効果的に対抗するには、抗菌性物質あるいは抗生物質における本来の抗菌性を有効に発揮させることが重要であり、そのような見地から、菌体膜を傷害できる物質、とりわけ、病原菌が対応し難い膜作動型の菌体膜傷害性物質の提供が望まれる。即ち、エリスロマイシンやノボビオシンのように、優れた抗菌作用を持ちながら菌体膜非透過性である抗生物質と、上記の菌体膜傷害性物質との併用が有効であると合理的に推定することができる。
更に、物理的障壁としての菌体膜に関連して、若し、菌体膜の傷害の程度が破壊的なものでなく、細菌に一定の増殖能力を残存させる程度の静菌的ものであった場合、抗菌作用とは全く異なる、菌体内に任意の目的物質を導入するための手段として有効に利用し得る。
文献1:特開昭52−138580号公報は、ペンタ−(6−アミノ−6−デオキシ)−α−シクロデキストリン及びヘキサ−(6−アミノ−6−デオキシ)−β−シクロデキストリンが強い抗菌活性を持つことを開示している。
文献2:特開2002−302569号公報は、多糖類誘導体を主材料とする膜であって、この多糖類を構成する無水単糖ユニットの炭素原子にアミノ基又はアルキルアミノ基が結合しているものを開示し、この場合におけるアミノ基等は膜に抗菌性を付与する旨を開示している。
しかしながら、上記の文献1や文献2では、以下の(1)〜(4)のような事項についての開示や示唆は見られない。
(1)文献に開示された多糖構造体が菌体膜を傷害する可能性。
(2)殺菌的な菌体膜傷害性と静菌的な菌体膜傷害性とを区別して、これらの菌体膜傷害性の有効な利用方法を検討すると言う技術的思想。
(3)糖構造体におけるアミノ基の空間的局在化により、抗菌性と菌体膜傷害性を両立させると言う技術的思想。
(4)糖構造体に対して芳香環を含有するアミノ系官能基、とりわけベンジルアミノ基を導入した際の抗菌性と菌体膜傷害性。
本発明は、菌体膜傷害性を示す物質、とりわけ、細菌に増殖能力を残存させつつその菌体膜を傷害すると言う静菌的な菌体膜傷害性を示す物質と、その有効な利用方法とを提供することを目的とする。叉、本発明は、優れた菌体膜傷害性と強い抗菌性とを併せ示す物質と、その有効な利用方法とを提供することを目的とする。
以下に、本願の第1発明〜第26発明を、それらの最良の実施形態及び作用・効果を含めて説明する。
(第1発明)
本願の第1発明は、多量体化が可能な炭素環構造又は炭素/酸素複素環構造を有すると共に、環平面の片側においては多量体化結合に関与しない2個以上の炭素原子に対してアミノ系官能基を結合し、環平面の他の片側においてはリン脂質親和性を示す化合物であって、細菌に増殖能力を残存させつつその菌体膜を傷害すると言う静菌的な菌体膜傷害性を示す菌体膜傷害性モノマーである。
第1発明において、「炭素環構造」とは、炭素原子のみにより形成された、多量体化が可能な環構造であって、多量体化結合に関与しない2個以上の炭素原子に対してアミノ系官能基を結合し得るものを言う。アミノ系官能基を結合し得るためには、環平面の片側に例えば水酸基等の置換性又は結合性の基を備えている必要がある。2個以上のアミノ系官能基を結合し得る炭素環構造としては、シクロヘキサノール等の、環を構成する炭素数が4以上であり、多量体化結合に関与しない2個以上の炭素原子が水酸基を備える脂肪族環構造を例示することができるが、これに限定されない。「炭素/酸素複素環構造」とは炭素原子と酸素原子により形成された、多量体化が可能な環構造であって、多量体化結合に関与しない2個以上の炭素原子に対してアミノ系官能基を結合し得るものを言う。分子内ヘミアセタール結合を持つ5炭糖又は6炭糖の糖構造体を例示することができるが、これらに限定されない。叉、「リン脂質親和性を示す」とは、環平面の当該片側においては環構造を構成する炭素に対して主に水素が結合しているため、この片側の環平面がリン脂質親和性を示すことを言う。
一般論として、比較的高分子量で多数のアミノ基を結合させた化合物が静菌的作用ないし抗菌的作用を示すことは知られている。第1発明の菌体膜傷害性モノマーは、環平面の片側にアミノ系官能基が集中的に結合しているので、アミノ系官能基のプラス荷電に基づき菌体膜のリン脂質のマイナス荷電部に対して相互作用すると共に、一定の程度の抗菌作用を示す。同時に、環平面における他の片側にはアミノ系官能基が結合していないため、この片側面は、親油性、即ちリン脂質親和性を示す。
第1発明の菌体膜傷害性モノマーは、後述する菌体膜傷害性オリゴマーの作用・効果から類推して、菌体膜傷害性オリゴマーと同様に、菌体膜にアタックして菌体膜を傷害し、併せて一定の抗菌性を発揮すると考えられる。環構造の化合物において、その片側面にアミノ系官能基を局在化させた場合のこのような効果は、前記の文献1や文献2を含む各種の公知文献からは全く示唆されない。
(第2発明)
本願の第2発明においては、前記の第1発明に係るアミノ系官能基が一級、二級又は三級アミノ基である。
アミノ系官能基の種類には限定がなく、一級、二級又は三級アミノ基を任意に利用することができる。第16発明において後述するように、特定の種類のアミノ系官能基を導入した場合、特に抗菌性が強化されることが分かっている。
(第3発明)
本願の第3発明においては、前記の第1発明又は第2発明に係る炭素/酸素複素環構造が、分子内ヘミアセタール結合を持つ糖構造(単糖体)である。
分子内ヘミアセタール結合によって環構造となった糖構造体は、一般的に、環構造を構成する炭素原子に対する水酸基の結合数が多く、しかもこれらの水酸基が片側の環平面(6位のOH基側の環平面)に突出し、他の片側の環平面は炭素−水素結合部を主とする親油性の環平面である。従って、上記の水酸基結合部位の2ケ所以上にアミノ系官能基を導入すれば、第1発明の特徴を典型的に備えた菌体膜傷害性モノマーを容易に準備することができる。
(第4発明)
本願の第4発明においては、前記の第3発明に係る糖構造がピラノース構造又はフラノース構造である。
分子内ヘミアセタール結合を持つ糖構造(単糖体)として、ピラノース構造又はフラノース構造を好ましく挙げることができる。
(第5発明)
本願の第5発明においては、前記の第4発明に係るピラノース構造がグルコースである。
菌体膜傷害性モノマーの環構造を構成する糖構造たるピラノース構造としては、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の各種のものを例示できるが、例えばグルコースを好ましく挙げることができる。
(第6発明)
本願の第6発明は、第1発明〜第5発明のいずれかに係る菌体膜傷害性モノマーが2単位以上結合し、各モノマーにおけるアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いている化合物であって、細菌に増殖能力を残存させつつその菌体膜を傷害すると言う静菌的な菌体膜傷害性を示す菌体膜傷害性オリゴマーである。
第6発明の菌体膜傷害性オリゴマーは、前記菌体膜傷害性モノマーが、例えば水酸基の縮合反応等により複数結合したものであり、その環構造の骨格部分は、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の1種又は2種以上からなる単糖類の2量体(2糖類)、3量体(3糖類)、単糖類の多量体(オリゴサッカライド)あるいはシクロヘキサノールの2量体等から構成され得る。
本願発明者の研究により、菌体膜傷害性オリゴマーは、菌体膜傷害効果と、一定の抗菌効果とを示すことが判明した。そのメカニズムは次のようなものであると考えられる。
即ち、菌体膜傷害性オリゴマーに結合したアミノ系官能基はプラスにイオン化するので、これが細菌の菌体膜におけるリン脂質のマイナス荷電部と相互作用する。併せて、菌体膜傷害性オリゴマーにおけるリン脂質親和性の片側面が細菌の菌体膜にアタックして菌体膜を傷害する。しかも、菌体膜の傷害は破壊的(殺菌的)なものではなく、膜透過性を増大させる程度の部分的(静菌的)な菌体膜の傷害である。これらの菌体膜傷害作用と並び、菌体膜傷害性オリゴマーにおけるアミノ系官能基の結合した片側面により一定の抗菌性が発揮される。環構造の化合物において、その片側面にアミノ系官能基を局在化させた場合におけるこのような効果は、前記の文献1や文献2を含む各種の公知文献からは、全く示唆されない。
菌体膜傷害性オリゴマーの菌体膜傷害効果や一定の抗菌効果は、相対的に菌体膜傷害性モノマーよりも強いものと推定される。但し、有効な効果を得るためには、オリゴマーを構成する各モノマーにおいて、アミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いていることが好ましい。
(第7発明)
本願の第7発明においては、前記の第6発明に係る菌体膜傷害性オリゴマーは、菌体膜傷害性モノマーが連鎖状に6〜8単位結合したものである。
菌体膜傷害性オリゴマーにおけるモノマーの結合数は別段に限定されないが、6〜8単位程度のモノマーが連鎖状に結合したものが、より好ましい。
(第8発明)
本願の第8発明においては、前記の第7発明に係る菌体膜傷害性モノマーの連鎖状結合体が環状の連鎖結合体である。
菌体膜傷害性オリゴマーを構成するモノマーが環状の連鎖結合体を構成し、かつ、各モノマーにおいてアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いていると、オリゴマーの一方の環平面側におけるアミノ系官能基の集中密度が高いために、それらのアミノ系官能基のプラス荷電による菌体膜リン脂質のマイナス荷電部との相互作用が強まると共に、抗菌効果が相対的に強化され、同時にオリゴマーの他方の環平面側の親油性(リン脂質親和性)が高いために菌体膜傷害性が相対的に強化される。更に、オリゴマーを構成する各モノマーが環状の連鎖結合体を構成している場合は、「各モノマーにおけるアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向く」と言う構造的条件が安定的に維持される。
(第9発明)
本願の第9発明においては、前記の第8発明に係る環状の連鎖結合体が、グルコース単位の環状の連鎖結合体たるシクロデキストリンである。
周知のようにシクロデキストリンは多数のD−グルコピラノース基がグリコシド結合によって王冠状に環化した連鎖結合体(第1図参照)であり、菌体膜傷害性オリゴマーとしては、6〜8個のグルコース単位からなるシクロデキストリンが、特に好ましい。
シクロデキストリンにおいては、各グルコース単位での6位OH基側の環平面における水酸基をアミノ系官能基に置換する度合いが高い程、抗菌性及び菌体膜障害性が強化される。
(第10発明)
本願の第10発明は、第1発明〜第5発明のいずれかに係る菌体膜傷害性モノマー及び第6発明〜第9発明のいずれかに係る菌体膜傷害性オリゴマーから選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする菌体膜傷害剤をグラム陽性菌に対して用い、抗菌効果を得る抗菌的菌体膜傷害方法である。
大腸菌等のグラム陰性菌の菌体膜は外膜、細胞壁及び内膜(細胞質膜)からなり比較的に抗菌作用を受け難いが、黄色ブドウ球菌やMRSA等のグラム陽性菌の菌体膜は細胞壁及び内膜からなり、外膜を持たないため、相対的に菌体膜傷害作用を受け易い。本発明に係る菌体膜傷害性モノマーや菌体膜傷害性オリゴマーは、グラム陽性菌に対しては、菌体膜傷害作用を通じて、結果的に有効な殺菌効果に到ることが確認されている。
第10発明の菌体膜傷害剤において、有効成分たる菌体膜傷害性モノマー及び/又は菌体膜傷害性オリゴマーは、そのまま用いても良いし、効果が維持され薬学的に許容できる範囲において塩又は誘導体として用いることもできる。叉、増量剤、保存剤、あるいはpH安定剤等を含み得る。更に、菌体膜傷害剤の投与剤型は限定されず、例えば散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の剤型で投与することができる。
しかも、第10発明の菌体膜傷害剤における有効成分は膜作動型機構により抗菌性を示すため薬剤耐性を起こし難く、かつ、この種の公知の抗菌性物質であるポリミキシンB等のような複雑な構造を有する天然物ではないために、人工的な大量製造が容易であり、効果改良のための人工的な構造改変も技術的、コスト的に容易である。
(第11発明)
本願の第11発明は、第1発明〜第5発明のいずれかに係る菌体膜傷害性モノマー又は第6発明〜第9発明のいずれかに係る菌体膜傷害性オリゴマーに任意の目的物質を結合させたもとで、これを細菌に対して用い、細菌の増殖能力を残存させつつ菌体膜を傷害することにより前記目的物質を菌体内に導入させる静菌的菌体膜傷害方法である。
第11発明は、菌体膜傷害性モノマー又は菌体膜傷害性オリゴマーが静菌的な菌体膜傷害性を示すと言う本願発明者の新規な知見に基づいて、初めて着想することが可能になった発明である。
前記のように、これらの菌体膜傷害性物質(菌体膜傷害性モノマー/オリゴマー)は、細菌に増殖能力を残存させつつその菌体膜を傷害する。即ち、菌体膜の傷害が破壊的なものではなく、膜透過性を増大させる程度の部分的な菌体膜の傷害である。従って、これらの菌体膜傷害性物質に任意の目的物質を結合させると、菌体膜傷害性物質がベクターとなって、菌体内に対するDDS(ドラッグ・デリバリー・システム)を容易に実現することができる。目的物質の種類は任意に選択することができ、限定されない。好ましい目的物質として、菌の形質転換に資する、遺伝子、蛋白質(抗体や酵素等)、無機化合物、有機化合物等を例示することができる、
(第12発明)
本願の第12発明は、第1発明〜第5発明のいずれかに係る菌体膜傷害性モノマー及び第6発明〜第9発明のいずれかに係る菌体膜傷害性オリゴマーから選ばれる1種又は2種以上と、任意の抗菌性物質あるいは抗生物質の1種又は2種以上とを有効成分とする菌体膜傷害・抗菌剤である。
第12発明は、菌体膜傷害性モノマー又は菌体膜傷害性オリゴマーが菌体膜傷害性を示すと言う本願発明者の新規な知見に基づいて、初めて着想することが可能になった発明である。
即ち、これらの菌体膜傷害性物質は、それ自体として必ずしも破壊的な菌体膜傷害作用は示さないが、細菌の菌体膜を傷害して膜透過性を増大させる。その結果、任意の抗菌性物質あるいは抗生物質を併用した場合、これらの物質の抗菌効果が障害なく発揮されるのである。
しかも、菌体膜傷害性物質が膜作動型であるため病原菌が対応し難く、菌体膜傷害性物質と併用される抗菌性物質あるいは抗生物質に対して耐性菌が出現し難いと言う利点がある。
第12発明の菌体膜傷害・抗菌剤において、有効成分たる菌体膜傷害性物質や抗菌性物質あるいは抗生物質はそのまま用いても良いし、効果が維持され薬学的に許容できる範囲において塩又は誘導体として用いることもできる。叉、増量剤、保存剤、あるいはpH安定剤等を含み得る。更に、菌体膜傷害剤の投与剤型は限定されず、例えば散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の剤型で投与することができる。
(第13発明)
本願の第13発明においては、前記の第12発明に係る抗菌性物質あるいは抗生物質が菌体膜非透過性のものである。
上記した第12発明に係る菌体膜傷害・抗菌剤において、菌体膜傷害性物質と併用する抗菌性物質あるいは抗生物質の種類は限定されないが、菌体膜非透過性の抗菌性物質あるいは抗生物質との併用が、特に効果的である。
(第14発明)
本願の第14発明においては、前記の第13発明に係る菌体膜非透過性の抗菌性物質あるいは抗生物質が、エリスロマイシン又はノボビオシンである。
エリスロマイシンやノボビオシンは、優れた抗菌作用を持ちながら、菌体膜非透過性であるために、その有用性が制約されている。従って、これらを本発明に係る菌体膜傷害性物質と併用することが、極めて好ましい。
(第15発明)
本願の第15発明は、第12発明〜第14発明のいずれかに係る菌体膜傷害・抗菌剤をグラム陽性菌又はグラム陰性菌に対して用い、抗菌効果を得る抗菌方法である。
本発明に係る菌体膜傷害性物質(菌体膜傷害性モノマー及び菌体膜傷害性オリゴマー)は、その抗菌効果においてグラム陰性菌に対しては必ずしも有効ではないが、菌体膜傷害性に関してはグラム陽性菌又はグラム陰性菌に対して有効である。従って、この物質を抗菌性物質あるいは抗生物質と併用した菌体膜傷害・抗菌剤は、グラム陽性菌又はグラム陰性菌のいずれに対しても有効に抗菌作用を発揮することができる。
とりわけ、3層からなる丈夫な菌体膜を備えるグラム陰性菌に対しては、菌体膜傷害性物質(菌体膜傷害性モノマー又は菌体膜傷害性オリゴマー)によって菌体膜を傷害し膜透過性を高めたもとで、菌体内に進入した抗菌性物質、抗生物質の抗菌作用が十分に発揮されると言う効果的な役割分担がなされるため、第15発明の抗菌方法が特に有効である。
(第16発明)
本願の第16発明は、多量体化が可能な炭素環構造又は炭素/酸素複素環構造を有すると共に、環平面の片側においては多量体化結合に関与しない2個以上の炭素原子に対して芳香環を含有するアミノ系官能基を結合し、環平面の他の片側においてはリン脂質親和性を示す化合物であって、菌体膜傷害性と強い抗菌性とを併せ持つ菌体膜傷害・抗菌性モノマーである。
第16発明において、「炭素環構造」、「炭素/酸素複素環構造」、「リン脂質親和性を示す」の意味は第1発明の場合と同じである。
本願発明者の研究により、前記した菌体膜傷害性モノマーの内、芳香環を含有するアミノ系官能基を2個以上結合したものは、前記した菌体膜傷害性と共に、強い抗菌性を示すことが判明した。炭素環構造又は炭素/酸素複素環構造を有すると共に環平面の片側には芳香環を含有するアミノ系官能基を2個以上結合した化合物は、抗菌性物質としては今まで知られていないので、第16発明によって新規で強力な菌体膜傷害・抗菌性物質が提供される。
第16発明に係る菌体膜傷害・抗菌性モノマーが強い抗菌性を示す理由は、研究中であって解明されていないが、アミノ系官能基における芳香環が官能基に疎水性をもたらすため、菌体膜リン脂質の疎水部に強くアタックする結果、著しく菌体膜を傷害して、強い抗菌性を示すと考えられる。
(第17発明)
本願の第17発明においては、前記の第16発明に係る芳香環を含有するアミノ系官能基が、ベンジルアミノ基である。
上記した第16発明において、芳香環を含有するアミノ系官能基の種類は限定されないが、ベンジルアミノ基が特に好ましい。このベンジルアミノ基には、発明の効果を阻害しない範囲において、芳香環に任意の官能基が結合したベンジルアミノ基誘導体も包含される。
(第18発明)
本願の第18発明は、第16発明又は第17発明に係る菌体膜傷害・抗菌性モノマーが2単位以上結合し、各モノマーにおける芳香環を含有するアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いている化合物であって、菌体膜傷害性と強い抗菌性とを併せ持つ菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーである。
第18発明の菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーは、前記菌体膜傷害・抗菌性モノマーが例えば水酸基の縮合反応等により複数結合したものであり、その環構造の骨格部分は、例えば、グルコース、フルクトース、ガラクトース等の1種又は2種以上からなる単糖類の2量体(2糖類)、3量体(3糖類)、単糖類の多量体(オリゴサッカライド)あるいはシクロヘキサノールの2量体等から構成され得る。。
菌体膜傷害性オリゴマーの菌体膜傷害効果や抗菌効果は、菌体膜傷害・抗菌性モノマーよりも更に強い。但し、有効な効果を得るためには、オリゴマーを構成する各モノマーにおいて、芳香環を含有するアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いていることが好ましい。
(第19発明)
本願の第19発明においては、前記の第18発明に係る菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーが、菌体膜傷害・抗菌性モノマーが連鎖状に6〜8単位結合したものである。
菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーにおけるモノマーの結合数は別段に限定されないが、6〜8単位程度のモノマーが連鎖状に結合したものが好ましい。
(第20発明)
本願の第20発明においては、前記の第19発明に係る菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーが、菌体膜傷害・抗菌性モノマーの環状の連鎖結合体である。
菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーを構成するモノマーが環状の連鎖結合体を構成し、かつ、各モノマーにおいて芳香環を含有するアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いていると、オリゴマーの一方の環平面側における芳香環を含有するアミノ系官能基の集中密度が高いために抗菌効果が特に強化され、同時に、オリゴマーの他方の環平面側の親油性(リン脂質親和性)が高いために菌体膜傷害性が特に強化される。更に、オリゴマーを構成する各モノマーが環状の連鎖結合体を構成していると、「各モノマーにおける芳香環を含有するアミノ系官能基を結合した環平面が同じ方向を向いている」と言う構造的条件が安定的に維持される。
(第21発明)
本願の第21発明においては、前記の第20発明に係る菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーにおける環状の連鎖結合体がシクロデキストリンである。
シクロデキストリンは前記した通りのものであるが、菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーとしては、環状の連鎖結合体がシクロデキストリンであるものが、特に好ましい。
シクロデキストリンを構成する各グルコースにおける6位OH基側の水酸基の大部分ないし全部を前記のベンジルアミノ基で置換したものは、非常に優れた菌体膜傷害・抗菌性を示し、グラム陽性菌に対してはもちろん有効であるが、グラム陰性菌に対しても有効な抗菌性を示す場合がある。
(第22発明)
本願の第22発明は、第16発明又は第17発明に係る菌体膜傷害・抗菌性モノマー及び第18発明〜第21発明のいずれかに係る菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーから選ばれる1種又は2種以上を有効成分とする菌体膜傷害・抗菌剤である。
第22発明によって、優れた菌体膜傷害性と強い抗菌性を併せ持つ、新規な菌体膜傷害・抗菌剤が提供される。この菌体膜傷害・抗菌剤において、有効成分たる菌体膜傷害・抗菌性モノマー及び/又は菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーは、そのまま用いても良いし、効果が維持され薬学的に許容できる範囲において塩又は誘導体として用いることもできる。叉、増量剤、保存剤、あるいはpH安定剤等を含み得る。更に、菌体膜傷害剤の投与剤型は限定されず、例えば散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の剤型で投与することができる。
しかも、第22発明の菌体膜傷害剤における有効成分は膜作動型機構により抗菌性を示すため薬剤耐性を起こし難く、かつ、この種の公知の抗菌性物質であるポリミキシンB等のような複雑な構造を有する天然物ではないために、人工的な大量製造が容易であり、効果改良のための人工的な構造改変も技術的、コスト的に容易である。
(第23発明)
本願の第23発明は、第16発明又は第17発明に係る菌体膜傷害・抗菌性モノマー及び第18発明〜第21発明のいずれかに係る菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーから選ばれる1種又は2種以上と、任意の抗菌性物質あるいは抗生物質の1種又は2種以上とを有効成分とする菌体膜傷害・抗菌剤である。
第23発明は、菌体膜傷害・抗菌性モノマー又は菌体膜傷害・抗菌性オリゴマーが強い抗菌性と共に優れた菌体膜傷害性を示すと言う本願発明者の新規な知見に基づいて、初めて着想することが可能になった発明である。
即ち、これらの菌体膜傷害・抗菌性物質(菌体膜傷害・抗菌性モノマー及び/又は菌体膜傷害・抗菌性オリゴマー)は、それ自体として優れた抗菌作用を示すと共に、細菌の菌体膜を傷害して膜透過性を増大させる。その結果、任意の抗菌性物質あるいは抗生物質を併用した場合、これらの抗菌効果も有効に働くため、両者の抗菌作用が相乗的に発揮され、全体として極めて強力な抗菌作用を期待できる。
しかも、菌体膜傷害・抗菌性物質が膜作動型であるため病原菌が対応し難く、菌体膜傷害・抗菌性物質と併用される抗菌性物質あるいは抗生物質に対して耐性菌が出現し難いと言う利点がある。
第23発明の菌体膜傷害・抗菌剤において、有効成分たる菌体膜傷害・抗菌性物質や抗菌性物質あるいは抗生物質はそのまま用いても良いし、効果が維持され薬学的に許容できる範囲において塩又は誘導体として用いることもできる。叉、増量剤、保存剤、あるいはpH安定剤等を含み得る。更に、菌体膜傷害剤の投与剤型は限定されず、例えば散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、乳剤、懸濁剤等の剤型で投与することができる。
(第24発明)
本願の第24発明においては、前記の第23発明に係る抗菌性物質あるいは抗生物質が菌体膜非透過性のものである。
上記した第23発明に係る菌体膜傷害・抗菌剤において、菌体膜傷害・抗菌性物質と併用する抗菌性物質あるいは抗生物質の種類は限定されないが、菌体膜非透過性の抗菌性物質あるいは抗生物質との併用が、特に効果的である。
(第25発明)
本願の第25発明においては、前記の第24発明に係る菌体膜非透過性の抗菌性物質あるいは抗生物質が、エリスロマイシン又はノボビオシンである。
エリスロマイシンやノボビオシンは、優れた抗菌作用を持ちながら、菌体膜非透過性であるために、その有用性が制約されている。従って、これらを本発明に係る菌体膜傷害・抗菌性物質と併用することが、極めて好ましい。
(第26発明)
本願の第26発明は、第22発明〜第25発明のいずれかに係る菌体膜傷害・抗菌剤をグラム陽性菌又はグラム陰性菌に対して用い、抗菌効果を得る抗菌方法である。
本発明に係る菌体膜傷害・抗菌性物質(菌体膜傷害・抗菌性モノマー及び菌体膜傷害・抗菌性オリゴマー)は、グラム陽性菌に対して有効なことはもちろんであるが、グラム陰性菌にも有効に抗菌作用を発揮する場合がある。
叉、この菌体膜傷害・抗菌性物質に加えて、グラム陽性菌及び/又はグラム陰性菌に対して有効な任意の抗菌性物質あるいは抗生物質と併用すれば、グラム陽性菌又はグラム陰性菌に対して更に有利な抗菌効果を得ることができる。
第1図はシクロデキストリンの立体構造を簡略化して示す。第2図は実施例の効果を示す一覧表である。第3図は実施例の効果を示す一覧表である。
[実施例1]
本実施例は、オクタキス(6−ベンジルアミノ)−γ−シクロデキストリンの合成に関するものである。
オクタキス(6−O−トシル)−γ−シクロデキストリン(150mg,5.93×10−5mol)に減圧蒸留したベンジルアミン(24ml)を加え、90°Cにて45時間撹拌した。その後、反応溶液を減圧留去し、生じた残渣に水(1ml)を加えた。これを1mol/l塩酸水溶液にて中和後、生じた沈殿をろ去して得られた溶液をゲルろ過クロマトグラフィー処理することにより、オクタキス(6−ベンジルアミノ)−γ−シクロデキストリンの白色固体(11.8mg)を得た。この構造は、300MHzプロトン−核磁気共鳴スペクトルにより決定した。
[実施例2]
本実施例は、オクタキス(6−アミノ)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ)−β−シクロデキストリン、ヘキサキス(6−アミノ)−α−シクロデキストリン、オクタキス(6−ベンジルアミノ)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−ベンジルアミノ)−β−シクロデキストリン、及び、ヘキサキス(6−ベンジルアミノ)−α−シクロデキストリンによる抗菌性に関するものである。
大腸菌K12,W3110株は1%ポリペプトンを含む最小塩培地中で37°C、好気的条件で培養した。黄色ブドウ球菌209P株は、0.5%肉エキス、1.5%ポリペプトン、0.5%塩化ナトリウムおよび0.5%リン酸水素二カリウムを含む液体培地で培養した。菌は生理食塩水で希釈し測定に用いた。MICは微量液体希釈による方法で測定した。また、このとき薬剤は精製水で2倍希釈系列を作製したものを用いた。1×10コ(「コ」は、菌の個数を意味する)に希釈した菌は、Mueller−Hinton培地(Difco)で、37度C、20時間インキュベーションした。MICは菌が増殖できなかった最も低い薬剤濃度で定めた。
その結果、前の三者の大腸菌(グラム陰性菌)及び黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)に対する最小生育阻止濃度(MIC)は128μg/ml以上であった。これに対し、後三者の最小生育阻止濃度は順に、大腸菌(グラム陰性菌)に対して64、64、32μg/ml、黄色ブドウ球菌(グラム陽性菌)に対して4、4、8μg/mlと、グラム陽性菌に対して顕著な抗菌性を示した。
[実施例3]
本実施例は、オクタキス(6−アミノ)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ)−β−シクロデキストリン、及びヘキサキス(6−アミノ)−α−シクロデキストリンによる細菌の細胞膜透過性増大作用に関するものである。
大腸菌はK12,W3110株を、黄色ブドウ球菌は209P株をそれぞれ用いた。大腸菌K12,W3110株は1%ポリペプトンを含む最小塩培地中で37°C、好気的条件で培養した。黄色ブドウ球菌209P株は、0.5%肉エキス、1.5%ポリペプトン、0.5%塩化ナトリウムおよび0.5%リン酸水素二カリウムを含む液体培地で培養した。対数増殖期で集菌した菌は、緩衝液(100mM塩化コリン、50mM MOPS−TRIS(pH7.2))で二回洗浄後、同じ緩衝液でタンパク濃度10mg/mlとなるように懸濁させた。大腸菌及び黄色ブドウ球菌は、最終タンパク濃度でそれぞれ0.5及び0.2mg/mlになるように、緩衝液(100mM塩化コリン、10mM TRIS−乳酸、50mM MOPS−TRIS(pH7.2))に懸濁させた。
上記の化合物それぞれを細菌に投与し、細菌からのカリウムイオンの流出をイオン選択性電極を用いて調べた。第2図として示す表に、大腸菌及び黄色ブドウ球菌に対するカリウムイオン流出率(%表示)の結果を示す。
観察されたカリウムイオンの流出から、これらの化合物が細菌の外膜を侵し、更には細胞質膜(内膜)を攻撃し、内膜の乱れ・不安定化・破壊等を引き起こして細胞内のカリウムイオンが細胞外に放出されたことが分かる。特に、ベンジルアミノ化誘導体の黄色ブドウ球菌に対する活性は顕著であり、これがゆえに抗菌活性を示したと結論した。
[実施例4]
本実施例は、オクタキス(6−アミノ)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ)−β−シクロデキストリン、及びヘキサキス(6−アミノ)−α−シクロデキストリンと、他の抗生物質との併用における効果に関する。
実施例3の結果より、これらの化合物は大腸菌の細胞質膜を障害してカリウムイオン放出を引き起こしていることは明らかである。そこで、外膜透過性が低いために本来の抗菌性が発揮できない抗生物質であるノボビオシン及びエリスロマイシンとの併用効果を検討した。第3図として示す表にその結果を示す。
ノボビオシン及びエリスロマイシン単独での大腸菌に対する最小生育阻止濃度(MIC)は、それぞれ128μg/ml及び64μg/mlであり、それらの作用は弱い。これに対して、当該シクロデキストリン誘導体併用投与下での上記抗生物質のMICは著しく低下し、顕著な抗菌活性を示した。以上の結果より、これらシクロデキストリン誘導体は細菌外膜を傷害して、その透過性を著しく増大させる作用を持ち、その結果、非膜貫通型抗生物質本来の抗菌活性を発現せしめると言う、他の抗生物質との併用での有用性が明らかとなった。
本発明によって、製造が容易な化合物であって、菌体膜傷害性、とりわけ、細菌に増殖能力を残存させつつその菌体膜を傷害すると言う静菌的な菌体膜傷害性を示す物質と、優れた菌体膜傷害性と強い抗菌性とを併せ示す物質と、それらの有効な利用方法とが提供される。

Claims (11)

  1. オクタキス(6−ベンジルアミノ)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−ベンジルアミノ)−β−シクロデキストリン及びヘキサキス(6−ベンジルアミノ)−α−シクロデキストリンから選ばれる1種以上のシクロデキストリン誘導体を含有する抗菌剤。
  2. 前記抗菌剤がグラム陰性菌用である請求項1に記載の抗菌剤。
  3. 前記抗菌剤がグラム陽性菌用又はグラム陰性菌用であって、前記の各シクロデキストリン誘導体を、グラム陽性菌用/グラム陰性菌用の用途に応じてそれぞれ下記(a)〜(c)の濃度で含有する請求項1に記載の抗菌剤。
    (a)オクタキス(6−ベンジルアミノ)−γ−シクロデキストリンを、グラム陽性菌用としては4μg/ml以上含有し、グラム陰性菌用としては64μg/ml以上含有する。
    (b)ヘプタキス(6−ベンジルアミノ)−β−シクロデキストリンを、グラム陽性菌用としては4μg/ml以上含有し、グラム陰性菌用としては64μg/ml以上含有する。
    (c)ヘキサキス(6−ベンジルアミノ)−α−シクロデキストリンを、グラム陽性菌用としては8μg/ml以上含有し、グラム陰性菌用としては32μg/ml以上含有する。
  4. 前記抗菌剤がグラム陽性菌に対する菌体膜傷害剤である請求項1に記載の抗菌剤。
  5. 前記抗菌剤が、更に菌体膜非透過性の抗菌性物質又は抗生物質を含有するものであり、あるいはこれらの抗菌性物質又は抗生物質と併用されるものである請求項4に記載の抗菌剤。
  6. 前記菌体膜非透過性の抗菌性物質あるいは抗生物質がノボビオシン又はエリスロマイシンである請求項5に記載の抗菌剤。
  7. オクタキス(6−アミノ)−γ−シクロデキストリン、ヘプタキス(6−アミノ)−β−シクロデキストリン及びヘキサキス(6−アミノ)−α−シクロデキストリンから選ばれる1種以上のシクロデキストリン誘導体を含有するグラム陰性菌用の抗菌剤。
  8. 前記抗菌剤が菌体膜傷害剤である請求項7に記載の抗菌剤。
  9. 前記抗菌剤が、更に菌体膜非透過性の抗菌性物質又は抗生物質を含有するものであり、あるいはこれらの抗菌性物質又は抗生物質と併用されるものである請求項8に記載の抗菌剤。
  10. 前記菌体膜非透過性の抗菌性物質あるいは抗生物質がノボビオシン又はエリスロマイシンである請求項9に記載の抗菌剤。
  11. 生物体外又は非ヒト生物体内において請求項1〜請求項10のいずれかに記載の抗菌剤を用い、抗菌効果を得る抗菌方法。
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