JP5097863B1 - ロールプレス設備 - Google Patents

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Abstract

【課題】
ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、低線圧でのロールプレスの際にも、製品厚みのばらつきを抑制することが可能なロールプレス設備を提供する。
【解決手段】
例えば、ベンドシリンダー5及びベンド軸受箱6から構成されるロールのたわみ補正を行う機構を備えるロールプレス設備において、上ロール1に対し上ロール1の自重を相殺する上方向に荷重をかける機構(プレロードシリンダー7)を、たわみを補正する機構とは別に設ける。
【選択図】 図1

Description

本発明は、ロールプレス設備に係り、特に、ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備に関する。
ロールプレス設備は、リチウムイオン二次電池用電極材料の圧縮加工等に使用されている。材料の圧縮加工後の要求厚み精度は、例えば、±2μm程度と厳しく、近年さらに高精度化が望まれている(±1〜2μm)。そのため、圧縮時に材料からうける反力によるロールのたわみを補正しないと、材料の両エッジ部が中央部付近より薄くなるといった、仕上げ厚みの巾方向にばらつきが発生する。そこで、例えば、特許文献1に記載のように、ロールのたわみを補正することで、材料の巾方向の厚みばらつきを抑え、高精度に加工を行うようにしている。
特許第3937561号公報
ロールプレス設備のロール軸受には、軸受の隙間や組立部品の組立隙間の影響による構造上のガタ(例えば、200〜400μm程度)がある。このガタを放置した場合、製品厚みにばらつきが生じることから、プレロードシリンダーにより上ロールに上方向の荷重をかけて上ロールを上方に押し付けて、ガタによる製品厚みへの影響が生じないようにしている。
特許文献1に記載のような、ロールのたわみを補正する油圧シリンダーを備えるロールプレス設備においては、油圧シリンダーにより上ロールは上方向の荷重がかけられ、上ロールは上方に押し付けられており、その結果、上ロールの上下方向の位置が安定しているので、本来的には、ガタによる製品厚みのばらつきが生じない構成となっている。このため、従来、ロールのたわみを補正する油圧シリンダーを備えるロールプレス設備においては、改めてガタ防止のためにプレロードシリンダーを設ける必要がなく、従って、設備コストの上昇等を招くプレロードシリンダーは設けられていない。
しかしながら、本発明者等の検討によると、ロールのたわみを補正する油圧シリンダーを備えるロールプレス設備においても、特に、低線圧でのロールプレスの際に、ロール振れが発生し、実際に材料にかかる荷重がばらつき、製品厚みにばらつきが生じることが判明した。
このような課題は、ロールを水平に配置したロールプレス設備において低線圧でロールプレスする際にも生じ得る。
本発明の目的は、ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、低線圧でのロールプレスの際にも、製品厚みのばらつきを抑制することが可能なロールプレス設備を提供することにある。
本発明は、ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構を、ロールのたわみを補正する機構とは別に設けたことを特徴とする。
また、本発明は、ロールのたわみを補正する機構を備え、一対のロール(第一ロールと第二ロール)を水平に配置したロールプレス設備において、第一ロール及び第二ロールに対し第一ロールと第二ロールを離間させる方向に荷重をかける機構を、ロールのたわみを補正する機構とは別に設けたことを特徴とする。
本発明によれば、ロールのたわみを補正する機構を備えるロールプレス設備において、低線圧時においても製品厚みのばらつきを抑制することが可能となる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
本発明の一実施例であるロールプレス設備の正面図。 本発明の他の一実施例であるロールプレス設備の正面図。 本発明の他の一実施例であるロールプレス設備の正面図。 本発明の原理を説明するための上ロール軸受部の断面図。 本発明の他の一実施例であるロールプレス設備の正面図。 本発明の他の一実施例であるロールプレス設備の正面図。
先ず、本発明に至った経緯について説明する。
ロールプレス設備は、様々な線圧でのロールプレスが可能なように、高線圧(例えば2000kg/cm)仕様で構成されている。また、ロールプレス設備は、主軸受箱の両外側に設置した軸受箱を用いて、材料の加工荷重によるロールたわみと逆方向にロールへ荷重をかけてロールのたわみ補正を行う機構を備えている。このようなロールプレス設備を用いて高線圧でロールプレスする際には、ロールの振れが発生せず、従って、製品厚みにばらつきは生じていない。しかし、高線圧でのロールプレスが可能なロールプレス設備を用いて低線圧(例えば200kg/cm)でロールプレスすると、ロールの振れが発生し、製品厚みにばらつきが生じる。
本発明者等の検討によると、これは次の理由による。即ち、高線圧でのロールプレスの際には、ロールのたわみ補正を行う機構による荷重も大きくなり、従って、上ロールを上方に押し付ける力も大きく、ロール軸支部のガタつきは十分に抑えられている。しかし、ロールの自重に近い低線圧(低荷重)でのプレス条件時には、ロールのたわみ補正を行う機構による荷重が小さくなり、その結果、上ロールを上方に押し付ける力が小さくなり、ガタ(隙間)を十分に解消できなくなることから、実際にかかる荷重がばらつき、製品厚みがばらつくようになる。
また、低線圧ではロールたわみ補正を行う油圧シリンダーの油圧が例えば元圧の20〜30%となるが、低い油圧では不安定となる傾向にあり、ロール軸受のガタの影響を受けてさらに不安定な状態となり、製品厚みがばらつく要因となる。
図4は上ロール軸受部のガタを説明する概念図である。ロール軸側9と軸受箱側10との間には、軸受内部隙間等により、合計200〜400μm程度のガタが生じる。上ロールは材料からの反力やロールたわみ補正を行う機構からの荷重により、上方に押し付けられている。しかし、この押し付け荷重が弱いと、ロール軸の回転等の力により、ロール軸が軸受箱側の転がり径を転動面としてロール軸が円周方向に揺動する。仮に揺動角度が、5°,10°,15°,20°の時、上ロールが下方向に移動する寸法は、次のようになる。尚、がた(隙間)を300μmとして計算している。
揺動角度 5°の場合: 300μm/2×(1−COS 5°)= 0.6μm
揺動角度10°の場合: 300μm/2×(1−COS10°)= 2.3μm
揺動角度15°の場合: 300μm/2×(1−COS15°)= 5.1μm
揺動角度20°の場合: 300μm/2×(1−COS20°)= 9.0μm
例えば、目標加工後厚み精度を±2μm以下とする場合、ロールが軸受内部で円周方向に揺動すると、すぐに数ミクロンは、下方向にロール位置が変化してしまう。例えば15°揺動があると、上ロールが下方向に約5μm変化してしまうことになり、目標加工後厚み精度を±2μm以下を達成することができない。
従って、低線圧でのロールプレスの際には、上ロールに対して上方向に荷重をかけ、上部のガタ(隙間)を無くし、さらには、確実にロールを上方へ押し付け、揺動を抑えることが望ましい。
この上ロールの上方への押し付けを、たわみを補正する機構で行うようにした場合、たわみを補正する機構で上方向に荷重を多くかけることになり、その結果、ロールにたわみ補正が過剰にかかってしまい、巾方向の厚み精度が悪化する可能性がある。
そこで、本発明では、上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構(プレロード機構)を、たわみを補正する機構とは別に独立した機構として追加設置し、低線圧でのロールプレスの際に発生するロールの振れを抑制するようにしている。
以下、図面を用いて本発明の一実施例を説明する。
ロールプレス設備は、上ロール1、下ロール2、上ロール及び下ロールをそれぞれ軸支する主軸受を内蔵保持する主軸受箱4、下ロールの主軸受箱に対して荷重を加え、上ロール1と下ロール2の間の材料11に対するプレス荷重を発生させるプレスシリンダー3を備えている。上ロールの主軸受箱はハウジング(図示省略)により支持され、また、下ロールの主軸受箱はプレスシリンダーを介してハウジングにより支持されている。上ロールと下ロールにはロール駆動機構(図示省略)がそれぞれ設けられている。また、ロールプレス設備は、ベンドシリンダー5、ベンド軸受を内蔵保持するベンド軸受箱6からなるロールのたわみ補正を行う機構を備えている。ベンド軸受箱6は主軸受箱4の両外側に設けられている。本実施例のロールのたわみ補正を行う機構は、ベンド突っ張りタイプであり、上ロールのベンド軸受箱と下ロールのベンド軸受箱の間にベンドシリンダー5が設けられ、材料への加工荷重によるロールたわみと逆方向にロールへ荷重をかけてロールのたわみの補正を行っている。また、上ロール1に対し上ロール1の自重を相殺する上方向に荷重をかける機構として、ロールのたわみ補正を行う機構とは別にプレロードシリンダー7が設けられている。本実施例では、プレロードシリンダー7を上ロールのベンド軸受箱に設置している。図中の矢印は、各シリンダーによる荷重の方向と大きさをイメージしたものである。
各シリンダーは油圧を用いている。油圧シリンダーは高い荷重に対応できること、また非圧縮性の流体(作動油)を用いることで安定した加工が行える。プレロードシリンダーについては、油圧シリンダー以外に、エアシリンダー、バネ等他の手段でもかまわない。但し、安定性から油圧が望ましい。
また、プレスシリンダーやベンドシリンダーのように荷重を変更する必要がないので、荷重を可変にする機構は不要である。
また、プレロードシリンダーによるプレロード荷重は、プレス荷重、ベンド補正荷重に比べはるかに小さく、また変化させる必要が無いため、プレロードシリンダー径を調整することにより(小さくすることにより)、油圧の不安定な低い圧力領域を外し、安定した圧力領域での運用が可能となり、また微調整も行いやすい設備となっている。
本実施例のプレロードシリンダー7は、上ロールに対して上方向に荷重をかけるようにベンド軸受箱6を引き上げている。これによって、上ロールのロール支軸を主軸受箱4の主軸受の上方に押し付け、ロール支軸と主軸受の上部のガタ(隙間)をなくしている。
上述したように、目標加工後厚み精度(例えば±2μm以下)との関係では、上ロールを確実に上方へ押し付け、揺動を抑えることが望ましい。即ち、上ロールの構造上のガタをなくし、さらに、軸受け内部での揺動も無くし、ロールの上下方向の位置を安定させ、精度の良い圧縮加工を行うために、上ロールを上方に自重に勝ち、さらにある程度しっかり押し付けることが望ましい。従って、プレロードシリンダー7によるプレロード荷重は、ロールの自重分を持ち上げるだけでなく、さらにある程度しっかり押し付けるように設定される。但し、押し付け力はロールのたわみ量に影響するので、過剰に行わないようにする必要がある。
このような観点から、プレロード荷重(押し付け力)は、ロール自重の1〜3倍程度の荷重が望ましい。3倍以上の荷重をかけると、たわみ補正効果が大きくなり、材料厚み精度に影響をあたえることとなるからである。また、1倍程度のロール自重相当であっても、材料11からの反力や、ベンドシリンダー5からの荷重を考慮すると、ガタつきや揺動を抑止することができる。プレロードシリンダーによるたわみ補正効果が大きくならないようにし、さらに揺動の抑制を確実にするためには、ロール自重の1.5〜2倍の荷重が最適である。
本実施例によれば次のような効果を有する。
従来のロールプレス設備では、ベンドシリンダー(たわみ補正シリンダー)力にて、上ロールに対して上方に荷重をかけ、上方へ押し付けている。しかし、たわみ補正荷重と材料からの反力の合計が、ロール自重と同等レベルの時にはロールのガタ分下方へ動くことや、軸の回転により軸受け部転動面での位置が若干動くことで、ロール位置が下方へ変化する不安定な運転となり、製品厚み精度が悪くなる。本実施例では、たわみ補正機構とは、別の独立した機構にて、上ロールを確実に上方へ押し付けることにより、安定した精度のよい加工を行える。
また、油圧の減圧弁仕様の最大圧に比べ、15〜20%以下で設定するときには、油圧が不安定となる。例えば、減圧弁仕様の最大圧21MPaのときは、3MPa程度以下は不安定な領域となるため、上方への押し付け力が不安定となり、精度の良いプレス加工が行えない。本実施例では、独立したプレロードシリンダーを適正な小径シリンダーとすることで、油圧減圧弁の安定領域を使用し、確実に上ロールを上方に押さえることが可能となる
また、高線圧荷重用のロールプレス設備では、大きな加圧力が必要なので、大径シリンダーを用い、荷重の調整をしている。低線圧(軽荷重)設定時には、若干の圧力調整で荷重が大きく変化することから調整が行いにくい。本実施例では、独立したプレロードシリンダーを適正な小径シリンダーとすることで、ロールプレス設備の設定荷重に関係なく、確実に上ロールを上方に押さえることが可能となる。
従って、本実施例によれば、高線圧仕様のロールプレス設備において、材料を高線圧から低線圧の広い範囲で厚みばらつきを低減できる。
本発明の他の実施例を図2に示す。本実施例は、プレロードシリンダー7を設置する軸受箱として専用の軸受箱であるプレロード軸受箱8を設けている。その他は、実施例1と同様である。
本実施例では、プレロード軸受箱8は、主軸受箱4とベンド軸受箱の間に設置している。このような配置により、ベンドシリンダー5によるロールたわみ補正への影響を低減して、上ロールのロール支軸を主軸受箱4の主軸受の上方に押し付け、ロール支軸と主軸受の上部のガタ(隙間)をなくすことができる。その他、実施例1と同様な作用効果を奏することができる。
本発明の他の実施例を図3に示す。本実施例は、実施例2において、ベンドシリンダーを所謂ベンド突っ張りタイプからベンド引張りタイプとしたものである。その他は実施例2と同様である。本実施例でも実施例1及び実施例2と同様な作用効果を奏することができる。
本発明の他の実施例を図5に示す。
本実施例は、ロールのたわみの補正を行うロールたわみ補正機構を備えるロールプレス設備において、上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構を、ロールたわみ補正機構とは別に独立した機構として設置するとともに、その設置位置を主軸受箱のロール胴部側としたものである。
また、本実施例は、下ロールの安定化のために、下ロールに対して下方向に荷重をかける機構を、たわみ補正機構とは別に独立した機構として設置するとともに、その設置位置を主軸受箱のロール胴部側としたものである。
すなわち、図5に示すように、本実施例では、プレロードシリンダー7を設置する軸受箱として専用の軸受箱であるプレロード軸受箱8を設け、さらに、プレロード軸受箱8を、主軸受箱4の内側(主軸受箱4のロール胴部側)に設置したものである。また、プレロード軸受箱8を、下ロール2の主軸受箱4の内側(主軸受箱のロール胴部側)にも設置している。
本実施例においても実施例1及び実施例2と同様な作用効果を奏することができる。さらに、本実施例では次の作用効果を奏することができる。
(1)本実施例では、下ロールにもプレロード軸受箱を設置している。ロールプレスの際の線圧がさらに低線圧化(例えば、100kg/cm以下)すると、下ロールの主軸受箱においても、図4で説明したような揺動が生じ得る。即ち、図4を上下反転したような状態となり、ロール軸が軸受箱側の転がり径を転動面としてロール軸が円周方向に揺動し得る。本実施例では、下ロール2にもプレロード軸受箱8を設け、プレロードシリンダー7により下ロールのロール軸側9を主軸受箱側10にしっかりと押し付けるようにしている。下ロールに対するプレロード荷重は、下ロールのロール軸が揺動しない程度の荷重である。具体的には、上ロールと同様の考え方で荷重を考えれば良いが、自重により既に下方向に荷重がかかっているため、ロール自重の0.5〜2倍程度の荷重が望ましい。2倍以上の荷重をかけると、たわみ補正効果が大きくなり、材料厚み精度に影響を与えることになるからである。プレロードシリンダーによるたわみ補正効果が大きくならないようにし、さらに揺動の抑制を確実にするためには、ロール自重の0.5〜1倍程度の荷重が最適である。このように下ロールに対してもプレロード荷重をかけることによって、下ロールのロール軸が軸受箱側の転がり径を転動面として揺動することを抑制することができ、揺動による下ロール側の振れも抑制することができる。尚、下ロールの安定化対策が特に不要な場合には、上ロールにのみプレロード軸受箱とプレロードシリンダーを設ける。
(2)また、本実施例では、主軸受箱の両側に主軸受箱とは独立して軸受箱を設け、外側の軸受箱とロール胴部側の軸受箱にそれぞれ独立して荷重が加えられる構成となっている。このような構成は低線圧化に有効である。即ち、ロールプレスの際の線圧がさらに低線圧化(例えば、100kg/cm以下)すると、加工材料からの反力が小さく、加工材料からの反力によるロールのたわみが小さくなる。そうすると、サーマルクラウン等によるロール自身の形状が製品厚み精度に顕著に影響を与えることになる。サーマルクラウンは、ロールを温間で使用する(ロール内部を加熱した状態でプレス加工する)場合に発生する。このようなサーマルクラウンはロール中央部が太くなる凸形状(凸クラウン)となる。
ロール自身のクラウン形状が凸形状であっても、線圧が大きい場合には、材料からの反力により生じるロールのたわみによって凸形状が相殺され、さらに、ロールが凹形状にたわむ(ロールに凹クラウンが発生する)。この凹形状のロールのたわみは主軸受箱の外側にベンダー力を付与するロールたわみ補正機構によって補正することができる。
しかし、線圧が小さくなってくると、材料からの反力が小さくなり、材料の反力によるロールのたわみが小さくなる。そうすると、ロール自身のクラウン形状が凸形状(凸クラウン)のままとなる。この凸クラウンは、主軸受箱の外側にベンダー力(上下ロール間を離間させる方向の力)を付与するロールたわみ補正機構では補正することができない。プレロード軸受箱8が図2や図3のように主軸受箱4の外側にある場合には、プレロードシリンダーによるプレロード荷重がさらにロールを凸形状に形状変化させることになってしまい、材料を幅方向に所定の厚み範囲内にプレスすることが困難になってしまう。
本実施例では、プレロード軸受箱8が主軸受箱4のロール胴部側に設置されているので、プレロードシリンダーによる力は、主軸受箱4の位置を支点として、ロールの凸形状(凸クラウン)を低減する方向に働く。従って、プレロード軸受箱8を主軸受箱4のロール胴部側に設置することによって、低線圧時にも材料を幅方向に所定の厚み範囲内にプレスすることが容易となる。サーマルクラウンは上下ロールに生じ得るので、プレロード軸受箱8を上下ロールの主軸受箱4のロール胴部側にそれぞれ設置することは有効である。
また、ロールの凸形状が大きい場合には、プレロードシリンダー7を、凸クラウンを低減する方向(ロールが凹クラウンになる方向)のたわみ補正機構として用いれば、凸クラウンを補正することができる。即ち、プレロードシリンダー7にも、プレスシリンダーやベンドシリンダーのように荷重を可変にする機構を持たせ、主軸受箱4の位置を支点として、材料からの反力と同じ方向の荷重をプレロードシリンダー7により調整して与える。上述したように、ロールが凸形状のままとなるのは、材料の反力が小さい低線圧時である。従って、凸クラウンを補正するのに必要なベンダー力は、従来のたわみ補正機構のベンダー力(高線圧時のたわみ補正機構のベンダー力)よりもはるかに小さくてすむので、プレロードシリンダー7のシリンダー径を大きくする必要がない。従って、油圧の不安定な低い圧力領域を外し、安定した圧力領域での運用が可能で、微調整も行いやすいプレロードシリンダーをたわみ補正機構として用いることができ、低線圧時の微妙なたわみ補正を精度良く行うことが可能となる。プレロードシリンダーのシリンダー径を小さなものとするために、可能な範囲でプレロード軸受箱4を主軸受箱から離間して設置するのが望ましい。
プレロード軸受箱とプレロードシリンダーをロールが凹クラウンになる方向のたわみ補正機構として用いる場合、ベンド軸受箱6とベンドシリンダー5を、主軸受箱4とロール軸との間のがたを解消するプレロード荷重付与手段(プレロード荷重付与機構)として機能させることになる。ロールプレス設備を低線圧用の設備として構成することができれば(用途を低線圧用と限定できれば)、ベンドシリンダー5のシリンダー径を小さなものを用いることができ、そして、プレロード荷重付与機構としてもより効果的に用いることができる。従って、この場合、言い換えれば(機能的に見れば)、ベンド軸受箱を主軸受箱のロール胴部側に設置し、プレロード軸受箱を主軸受箱の外側に設置したということもできる。
このように、主軸受箱のロール胴部側のプレロード軸受箱とプレロードシリンダーをロールが凹方向に形状変更するようなたわみ補正機構としても用い、そして、ベンド軸受箱とベンドシリンダーをプレロード荷重付与機構としても用いる場合には、ベンド補正機構とプレロード荷重付与機構の両方の機能を兼用する軸受箱と油圧シリンダーを、主軸受箱の両側に独立して設けたということができる(第1の軸受箱を主軸受箱の外側に、第2の軸受箱を主軸受箱のロール胴部側にそれぞれ独立して設ける)。従って、この観点では、本実施例において、ベンド軸受箱などやプレロード軸受箱などの呼称は発明を限定するものではないということができる。そして、低線圧時にロールの振れ(ガタ)を抑制して、さらに、凸凹両方向に自在にたわみが補正できるという効果を奏することができる。
なお、本実施例において、ベンドシリンダーとして、実施例2と同様に所謂ベンド突っ張りタイプのものを用いているが、実施例3と同様にベンド引張りタイプとしても良い。また、設置スペースの関係で配置する困難性があるが、プレロードシリンダーを突っ張りタイプのものにすることもあり得る。
本発明の他の実施例を図6に示す。
本実施例は、実施例4の変形例であり、さらに、主軸受箱の外側にも、上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構を、ロールたわみ補正機構とは別に独立した機構として設置したものである。
すなわち、図6に示すように、本実施例では、従来のたわみ補正機構とは別に独立して、プレロード軸受箱(プレロードシリンダーを設置する軸受箱として専用の軸受箱)を、主軸受箱4の両側に設置したものである。また、下ロール2についても、プレロード軸受箱を、主軸受箱4の両側にも設置している。
本実施例においても実施例4と同様な作用効果を奏することができる。さらに、本実施例では次の作用効果を奏することができる。
本実施例では、主軸受箱のロール胴部側に設置したプレロード軸受箱8とプレロードシリンダー7を、ロールが凹方向に形状変化する方向のたわみ補正機構としても用いることを前提としている(プレロード荷重付与機構とたわみ補正機構の兼用)。
即ち、本実施例では、主軸受箱の外側にもプレロード軸受箱13とプレロードシリンダー12を設けているので、主軸受箱4のロール胴部側に設置したプレロード軸受箱8とプレロードシリンダー7を、ロールが凹方向に形状変化する方向のたわみ補正機構として用いる場合、ベンド軸受箱6とベンドシリンダー5をプレロード荷重付与機構として用いる必要がない。
ベンドシリンダー5としては高線圧時にも使用できるベンダー力を発生できるシリンダー径が大きなものが用いられる。主軸受箱の外側のプレロード軸受箱13にプレロード荷重を加えるプレロードシリンダー12はシリンダー径が小さいものが用いられる。従って、本実施例によれば、高線圧仕様のロールプレス設備において、材料を高線圧からより低線圧(ロールが凸クラウンのままとなるような線圧)の広い範囲で厚みばらつきを低減できる。
なお、ベンド軸受箱とベンドシリンダーによるたわみ補正機構によりロールが凸方向に形状変化する方向のたわみ補正を行う場合には、主軸受箱のいずれか一方の側のプレロード軸受箱とプレロードシリンダーによりプレロード荷重を与えるようにする。
また、プレロードシリンダー12に荷重調整機構を持たせ、低線圧時、プレロード軸受箱13とプレロードシリンダー12によりロールが凸クラウンとなる方向のたわみ補正を行えるようにすることもできる。そして、低線圧時に、主軸受箱4のロール胴部側に設置したプレロード軸受箱8とプレロードシリンダー7によるロールが凹クラウンとなる方向のたわみ補正と、主軸受箱4の外側に設置したプレロード軸受箱13とプレロードシリンダー12によるロールが凸クラウンとなる方向のたわみ補正を組み合わせてたわみ補正を行えば、低線圧時のたわみ補正をより的確に行うことが可能となる。
なお、本発明は上記した実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加,削除,置換をすることが可能である。
例えば、上述の各実施例は、ロールを上下に配置したものであるが、一対のロール(第一ロールと第二ロール)を水平方向に配置したロールプレス設備にも本発明を同様に適用できる。なお、この変形例では、上述の各実施例における上ロールが第一ロール、下ロールが第二ロールと読み替えられる。そして、この変形例の場合のプレロード荷重(押し付け力)は、第一ロールと第二ロールの両方に対して、第一ロールと第二ロールを離間させる方向に与えられる。プレロード荷重の大きさは、上述の実施例における上ロールへのプレロード荷重と同様に、自重に勝ち、さらにある程度しっかりと押し付けることできるものであることが望ましい。即ち、第一ロール又は第二ロールに対するプレロード荷重は、上ロールへのプレロード荷重と同様に、ロール自重の1〜3倍程度の荷重が望ましい。3倍以上の荷重をかけると、たわみ補正効果が大きくなり、材料厚み精度に影響をあたえることとなるからである。また、1倍程度のロール自重相当であっても、材料からの反力や、ベンドシリンダーからの荷重を考慮すると、ガタつきや揺動を抑止することができる。プレロードシリンダーによるたわみ補正効果が大きくならないようにし、さらに揺動の抑制を確実にするためには、ロール自重の1.5〜2倍の荷重が最適である。
また、例えば、図2や図3に示す実施例において、下ロールにもプレロード軸受箱とプレロードシリンダーを設け、下ロールの振れを抑制する機能を持たせるようにしても良い。
また、例えば、各軸受箱に荷重を付与する機構として、実施例の油圧シリンダー方式よりも操作性などが劣るが、ねじ機構を用いた荷重付与機構も適用し得る。
1…上ロール、2…下ロール、3…プレスシリンダー、4…主軸受箱、5…ベンドシリンダー、6…ベンド軸受箱、7…プレロードシリンダー、8…プレロード軸受箱、9…ロール軸側、10…軸受箱側、11…材料、12…プレロードシリンダー、13…プレロード軸受箱。

Claims (11)

  1. 上ロールと、下ロールと、前記上下ロールをそれぞれ軸支する主軸受箱を備え、前記主軸受箱に対して荷重を加えて、前記上下ロール間の材料にプレス荷重を加えるようにしたロールプレス設備において、
    前記材料への加工荷重によるロールたわみと逆方向に前記上下ロールへ荷重をかけてロールのたわみの補正を行うロールたわみ補正機構を備えるロールプレス設備であって、
    前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構を、前記ロールたわみ補正機構とは別に設けたことを特徴とするロールプレス設備。
  2. 請求項1において、前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構による荷重は、上ロールの自重の1〜3倍の荷重であることを特徴とするロールプレス設備。
  3. 請求項1において、前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構による荷重は、上ロールの自重の1.5〜2倍の荷重であることを特徴とするロールプレス設備。
  4. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記ロールを軸支する主軸受箱の両外側に前記ロールたわみ補正機構による荷重を受けるベンド軸受箱が設けられ、前記主軸受箱と前記ベンド軸受箱と間に前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構による荷重を受けるプレロード軸受箱を設けたことを特徴とするロールプレス設備。
  5. 請求項1〜3の何れかにおいて、前記ロールを軸支する主軸受箱の両外側に前記ロールたわみ補正機構による荷重を受けるベンド軸受箱が設けられ、前記主軸受箱のロール胴部側に前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構による荷重を受けるプレロード軸受箱を設けたことを特徴とするロールプレス設備。
  6. 上ロールと、下ロールと、前記上下ロールをそれぞれ軸支する主軸受箱とを備えるロールプレス設備であって、
    前記上下ロールの主軸受箱の両外側にそれぞれ前記主軸受箱と独立して設けられた第1の軸受箱と、前記上下ロールの主軸受箱のロール胴部側にそれぞれ前記主軸受箱と独立して設けられた第2の軸受箱と、前記上ロールの第1の軸受箱に対して上方向に荷重をかける油圧シリンダーと、前記下ロールの第1の軸受箱に対して下方向に荷重をかける油圧シリンダーと、前記上ロールの第2の軸受箱に対して上方向に荷重をかける油圧シリンダーと、前記下ロールの第2の軸受箱に対して下方向に荷重をかける油圧シリンダーを備えることを特徴とするロールプレス設備。
  7. 請求項6において、前記上下ロールに対して凸クラウン方向にロールのたわみ補正を行う場合には、前記上ロールの第2の軸受箱に対して上方向に荷重をかける前記油圧シリンダーと前記下ロールの第2の軸受箱に対して下方向に荷重をかける前記油圧シリンダーは、前記第2の軸受箱に対してロールの振れを抑制するプレロード荷重をかけ、前記上ロールの第1の軸受箱に対して上方向に荷重をかける油圧シリンダーと前記下ロールの第1の軸受箱に対して下方向に荷重をかける油圧シリンダーは、前記第1の軸受箱に対してロールのたわみ補正を行う荷重を加えることを特徴とするロールプレス設備。
  8. 請求項6において、前記上下ロールに対して凹クラウン方向にロールのたわみ補正を行う場合には、前記上ロールの第1の軸受箱に対して上方向に荷重をかける前記油圧シリンダーと前記下ロールの第1の軸受箱に対して下方向に荷重をかける前記油圧シリンダーは、前記第1の軸受箱に対してロールの振れを抑制するプレロード荷重をかけ、前記上ロールの第2の軸受箱に対して上方向に荷重をかける油圧シリンダーと前記下ロールの第2の軸受箱に対して下方向に荷重をかける油圧シリンダーは、前記第2の軸受箱に対してロールのたわみ補正を行う荷重を加えることを特徴とするロールプレス設備。
  9. 材料への加工荷重によるロールたわみと逆方向にロールへ荷重をかけてロールのたわみの補正を行うロールたわみ補正機構を備えるロールプレス設備であって、
    上下ロールをそれぞれ軸支する主軸受箱の両外側に前記ロールたわみ補正機構による荷重を受けるベンド軸受箱が設けられ、
    前記上下ロールの前記主軸受箱と前記ベンド軸受箱の間にそれぞれ前記主軸受箱と独立して設けられた第1の軸受箱と、前記上下ロールの主軸受箱のロール胴部側にそれぞれ前記主軸受箱と独立して設けられた第2の軸受箱と、前記上ロールの第1の軸受箱に対して上方向に荷重をかける油圧シリンダーと、前記下ロールの第1の軸受箱に対して下方向に荷重をかける油圧シリンダーと、前記上ロールの第2の軸受箱に対して上方向に荷重をかける油圧シリンダーと、前記下ロールの第2の軸受箱に対して下方向に荷重をかける油圧シリンダーを備えることを特徴とするロールプレス設備。
  10. 対のロール(第一ロールと第二ロール)を水平に配置し、前記一対のロールのそれぞれを軸支する主軸受箱を備え、前記主軸受箱に対して荷重を加えて、前記一対のロール間の材料にプレス荷重を加えるようにしたロールプレス設備であって、前記材料への加工荷重によるロールたわみと逆方向にロールへ荷重をかけてロールのたわみの補正を行うロールたわみ補正機構を備え、
    前記第一ロール及び前記第二ロールに対し前記第一ロールと前記第二ロールを離間させる方向に荷重をかける機構を、前記ロールのたわみを補正する機構とは別に設けたことを特徴とするロールプレス設備。
  11. 請求項1〜5の何れかにおいて、前記ロールたわみ補正機構、及び、前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構は、油圧シリンダー方式であり、前記ロールたわみ補正機構の油圧シリンダーを大径とし、前記上ロールに対し上ロールの自重を相殺する上方向に荷重をかける機構の油圧シリンダーを小径としたことを特徴とするロールプレス設備。
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