JP5097351B2 - 絶縁ガス及びガス絶縁電力機器 - Google Patents

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本発明は、電気絶縁性を有する絶縁ガスに関し、詳しくはガス絶縁開閉装置やガス遮断器などの電力機器において電気絶縁用として使用される絶縁ガス、及び当該絶縁ガスを使用するガス絶縁電力機器に関する。
ガス絶縁開閉装置やガス遮断器などの種々の電力機器においては、電気絶縁用の絶縁ガスが用いられている。例えば、下記特許文献1には、SF(六フッ化硫黄)ガスを絶縁ガスとして用いるガス絶縁開閉装置が開示されている。このSFガスは、優れた絶縁性能を有することから種々の電力機器において広く用いられている。しかしながら、近年、環境調和に対する意識や取り組みの高まりによって温室効果ガスの排出を規制する動きが活発化するなか、とりわけ温室効果の高いこのSFガスに代わる電力機器用の代替ガスを開発する要請が高い。
特開平6−14423号公報
そこで本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた、電力機器用の絶縁ガス、及び当該絶縁ガスを使用するガス絶縁電力機器を提供することを課題とする。
前記課題を解決するために、各請求項に記載の発明が構成される。なお、本発明における絶縁ガスは、ガス絶縁開閉装置、ガス遮断器、変圧器、変成器、コンデンサなどの電力機器(「ガス絶縁電力機器」ともいう)において電気絶縁用として好適に使用され得る。
(本発明の第1発明)
前記課題を解決する本発明の第1発明は、請求項1に記載されたとおりの絶縁ガスである。請求項1に記載のこの絶縁ガスは、電気絶縁性を有する絶縁ガスであって、N O、N 及びCO を含む混合ガスとして構成されている。
本発明の絶縁ガスに含まれるN Oは、温室効果の程度を示す値としての地球温暖化係数(GWP)が、例えば従来の絶縁ガスとして主流とされたSF ガスを大幅に下回る。具体的には、SF ガスのGWPが23900であるのに対し、N OのGWPは320であり、N のGWPは0である。また、このN Oは、低い電子エネルギー帯(0.5〜4eV)において高い電子付着性を有し、また解離性電子付着断面積が比較的大きいという性能を有する。一方、温室効果ガスでないN 中の電子エネルギー分布は、低い電子エネルギー帯(1〜3eV)に集中し、また振動励起衝突断面積が大きいという性能を有する。また、CO は、そのGWPが1であり、温室効果性能の低いガスとされる。また、CO は、N Oとは異なる電子エネルギー帯(6〜10eV)において電子付着性を有する。したがって、N OガスにN ガス及びCO ガスを混合することによって、広範囲な電子エネルギー帯にわたって電子付着性を発揮させることが可能となる。
そして、N Oが16〜38容量パーセント、N が15〜41容量パーセント、CO が29〜55容量パーセントである所定範囲の混合比率とされている。各組成ガスの混合比率が混合ガスの絶縁破壊電圧に与える影響につき検討した結果、各組成ガスの混合比率を上記所定範囲の混合比率に設定することによって、とりわけ高い電気絶縁性能を有する電力機器用の絶縁ガスが提供される。
(本発明の第2発明)
前記課題を解決する本発明の第2発明は、請求項2に記載されたとおりの絶縁ガスである。請求項2に記載のこの絶縁ガスは、電気絶縁性を有する絶縁ガスであって、N O、N 、CO 及びO を含む混合ガスとして構成されている。
Oに混合されるN のGWPは0であり、CO のGWPは1であり、O のGWPは0であり、いずれも温室効果性能の低いガスとされる。また、N Oガスは、電子エネルギー帯(0.5〜4eV)において高い電子付着性を有し、CO ガスは、N Oとは異なる電子エネルギー帯(6〜10eV)において高い電子付着性を有し、O ガスは、N Oガス及びCO ガスとは異なる電子エネルギー帯(4.5〜8eV)において高い電子付着性を有している。したがって、N OガスにN ガス、CO ガス及びO ガスを混合することによって、より広範囲な電子エネルギー帯にわたって電子付着性を発揮させることが可能となる。
そして、N Oが16〜38容量パーセント、N が24〜35容量パーセント、CO が22〜44容量パーセント、O が5〜16容量パーセントである所定範囲の混合比率とされている。各組成ガスの混合比率が混合ガスの絶縁破壊電圧に与える影響につき検討した結果、各組成ガスの混合比率を上記所定の混合比率に設定することによって、とりわけ高い電気絶縁性能を有する電力機器用の絶縁ガスが提供される。
(本発明の第3発明)
前記課題を解決する本発明の第3発明は、請求項3に記載されたとおりのガス絶縁電力機器である。請求項3に記載のこのガス絶縁電力機器は、絶縁ガスを用いて電気絶縁を行う電力機器であって、この絶縁ガスとして特には請求項1または2に記載の絶縁ガスを用いる構成とされる。ここでいう「ガス絶縁電力機器」としては、ガス絶縁開閉装置、ガス遮断器、変圧器、変成器、コンデンサなどの電力機器が典型例とされる。
請求項3に記載の発明によれば、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた絶縁ガスが使用される優れた性能のガス絶縁電力機器が提供される。
以上のように、本発明によれば、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた、電力機器用として有効な絶縁ガスを提供することが可能となった。また、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた絶縁ガスが使用される優れた性能のガス絶縁電力機器を提供することが可能となった。
以下に、本発明の一実施の形態を図面を参照しつつ詳細に説明する。本実施の形態は、本発明の電気絶縁性を有する絶縁ガスの一実施の形態を示すものであって、ガス絶縁開閉装置やガス遮断器などの電力機器において用いる絶縁ガスについて説明するものである。なお、本実施の形態は、本発明の好ましい一実施の形態を説明するためのものであって、これにより本発明が制限されるものではない。
本発明者らは、ガス絶縁開閉装置やガス遮断器などの電力機器において用いる絶縁ガスとして、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた絶縁ガスを提供するに際し、この種の絶縁ガスとして用いることが可能なガスを選定した。その選定にあたっては、ガスの低温室効果性能の指標としての地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)と、電子付着性に着目した。地球温暖化係数は、各種の温室効果ガス毎に定められる温室効果の程度を示す値とされ、この地球温暖化係数の低いガスが低温室効果性能のガスとして評価される。また、電子付着性の高いガスは、ガス中の電子を低減させ易いことから、高電気絶縁性能のガスとして評価される。
その検討の結果、本発明者らは、従来の絶縁ガスの主流であるSFガスよりもGWPが低く、且つ電子付着性の高いガスとしてNOガス(以下「NO」ともいう)に着目することとした。すなわち、図11に示すように、このNOガスのGWPは320であり、SFガスのGWP(=23900)を大幅に下回る。また、図12に示すように、このNOガスは、低い電子エネルギー帯(0.5〜4eV)において高い電子付着性を有し、また解離性電子付着断面積が比較的大きいという性能を有する。このことから、このNOガスを主体として絶縁ガスを構築することによって、SFガスに代わる代替ガスに成り得ると考え、NOガスを主体とした絶縁ガスの電気絶縁性能に関し更なる検討を行った。その際、温室効果ガスでないNガス(以下「N」ともいう)やOガス(以下「O」ともいう)、また温室効果ガスではあるがGWPが1のCOガス(以下「CO」ともいう)などの組成ガスを純NOガスに更に好適な比率にて混合することによって、GWPを上昇させることなく、更なる電気絶縁性能向上を図ることが確認された。
具体的には、図12に示すように、OガスはNOガスとは異なる電子エネルギー帯(4.5〜8eV)において電子付着性を有し、COガスはNOガスとは異なる電子エネルギー帯(6〜10eV)において電子付着性を有するところ、NOガスにこれらOガスやCOガスを混合することによって、より広範囲な電子エネルギー帯にわたって電子付着性を発揮させることが可能となる。また、温室効果ガスでないN中の電子エネルギー分布は低い電子エネルギー帯(1〜3eV)に集中し、また振動励起衝突断面積が大きいという性能を有することから、Nガスの混合によって被混合ガスの電子付着性をより効果的に作用させることが可能となる。
以下、純NOガス及び純COガス、またNOガスを主体とした絶縁ガスの第1〜第5実施の形態の混合ガスの電気絶縁性能につき説明する。
なお、電気絶縁性能の評価に関しては、絶縁破壊電圧(BDV:Breakdown Voltage)の測定結果を用いた。この絶縁破壊電圧の測定に際しては、特に図示しないものの、球−平板電極(球直径:φ=50mm、ギャップ長さ:g=10mm、平板:φ=170mm)により準平等電界を形成し、タンク内部に所定の混合ガスを封入した。ガス圧力は絶対圧力0.1MPa(20℃換算)とした。そして、球電極に標準雷インパルス電圧(1.2/50μs)を印加し、絶縁破壊電圧(BDV)を取得した。なお、標準雷インパルス電圧印加時には、昇降法により50%絶縁破壊電圧(BDV50)を求めた。この50%絶縁破壊電圧(「絶縁破壊電圧の平均値」ともいう)が高い場合に、電気絶縁性能が高いガスであると評価することができる。
図1には、純NOガス及び純COガスに関する負極性絶縁破壊電圧のグラフが示される。なお、図1及び他の図面において、負極性絶縁破壊電圧の平均値(負極性50%絶縁破壊電圧)を■プロットで示し、当該プロットの上下にばらつき範囲をエラーバーとして示す。この結果、負極性絶縁破壊電圧の平均値は、純NOガスで75[kV]であり、純COガスで67[kV]であった。なお、上記測定方法においては、正・負極性50%絶縁破壊電圧の両方を得ることができるところ、後述する電気絶縁性能の評価においては、負極性50%絶縁破壊電圧に加えて、或いは負極性50%絶縁破壊電圧に代えて、正極性50%絶縁破壊電圧の測定値を用いることもできる。
(第1実施の形態)
本発明の「絶縁ガス」の第1実施の形態の絶縁ガスは、NO及びNを組成ガスとした2成分系の混合ガス(「混合ガスA」ともいう)として構成される。
この混合ガスAに関する絶縁破壊電圧の測定を行った結果として、混合ガスAに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフが図2に示される。図2に示すように、NOに更にNを混合することによって、混合前よりも絶縁破壊電圧が高くなり、しかも所定の混合比率において高い極大値を示す(「正の相乗効果(正のシナジズム効果)」ともいう)ことが確認された。具体的には、負極性絶縁破壊電圧の平均値は、純NOガスで75[kV]であるのに対し、NOが40容量パーセント、Nが60容量パーセントの混合比率とされた混合ガスAで86[kV]であり、純NOガスにNを混合することによって絶縁破壊電圧が高くなるという結果が得られた。従って、Nガスの混合によって被混合ガスの電子付着性をより効果的に作用させることが可能となることが確認された。
(第2実施の形態)
本発明の「絶縁ガス」の第2実施の形態の絶縁ガスは、NO,N及びCOを組成ガスとした3成分系の混合ガス(「混合ガスB」ともいう)として構成される。
この混合ガスBに関する絶縁破壊電圧の測定を行った結果として、混合ガスBに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフが図3に示される。図3に示すように、NOに更にN及びCOを混合することによって、或いはNO及びNに更にCOを混合することによって、混合前よりも絶縁破壊電圧が高くなり、しかも所定の混合比率において高い極大値を示す(正のシナジズム効果)ことが確認された。具体的には、負極性絶縁破壊電圧の平均値は、純NOガスで75[kV]であり、またNOが40容量パーセント、Nが60容量パーセントの混合比率とされた混合ガスAで86[kV]であるのに対し、NOが30容量パーセント、Nが35容量パーセント、COが35容量パーセントの混合比率とされた混合ガスBで97[kV]であり、純NOガスにNを混合することによって、また更にCOを混合することによって絶縁破壊電圧が高くなるという結果が得られた。従って、COの混合によってより広範囲な電子エネルギー帯にわたって電子付着性を発揮させることが可能となり、またNガスの混合によって被混合ガスの電子付着性をより効果的に作用させることが可能となることが確認された。
(第3実施の形態)
本発明の「絶縁ガス」の第3実施の形態の絶縁ガスは、NO,N,CO及びOを組成ガスとした4成分系の混合ガス(「混合ガスC」ともいう)として構成される。
この混合ガスCに関する絶縁破壊電圧の測定を行った結果として、混合ガスCに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフが図4に示される。特に図4において、図4(e)にはN及びOの混合比率を固定したときのデータが示されており、図4(d)にはNO及びCOの混合比率を固定したときのデータが示されている。
図4に示すように、NOに更にN、CO及びOを混合することによって、或いはNO及びNに更にCO及びOを混合することによって、或いはNO、N及びCOに更にOを混合することによって、混合前よりも絶縁破壊電圧が高くなり、しかも所定の混合比率において高い極大値を示す(正のシナジズム効果)ことが確認された。具体的には、負極性絶縁破壊電圧の平均値は、NOが30容量パーセント、Nが35容量パーセント、COが35容量パーセントの混合比率とされた混合ガスBで97[kV]であるのに対し、NOが30容量パーセント、Nが30容量パーセント、COが30容量パーセント、Oが10容量パーセントの混合比率とされた混合ガスCで102[kV]であり、混合ガスBに更にOを混合することによって絶縁破壊電圧が高くなるという結果が得られた。従って、CO及びOの混合によってより広範囲な電子エネルギー帯にわたって電子付着性を発揮させることが可能となることが確認された。
なお、COやOの混合によって被混合ガスの電子付着性をより効果的に作用させる効果は、下記の第4及び第5実施の形態の絶縁ガスに関する絶縁破壊電圧の測定結果によっても確認された。
(第4実施の形態)
第4実施の形態の絶縁ガスは、NO及びCOを組成ガスとした2成分系の混合ガス(「混合ガスD」ともいう)として構成される。
この混合ガスDに関する絶縁破壊電圧の測定を行った結果として、混合ガスDに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフが図5に示される。図5に示すように、NOにCOを混合することによって、混合前よりも絶縁破壊電圧が高くなり、しかも所定の混合比率において高い極大値を示す(正のシナジズム効果)ことが確認された。具体的には、負極性絶縁破壊電圧の平均値は、純NOガスで75[kV]であり、純COガスで67[kV]であるのに対し、NOが30容量パーセント、COが70容量パーセントの混合比率とされた混合ガスDで91[kV](図3及び図4を参照)であり、COの混合によって被混合ガスの電子付着性をより効果的に作用させることが可能となることが確認された。
(第5実施の形態)
第5実施の形態の絶縁ガスは、NO,CO及びOを組成ガスとした3成分系の混合ガス(「混合ガスE」ともいう)として構成される。
この混合ガスEに関する絶縁破壊電圧の測定を行った結果として、混合ガスEに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフが図6に示される。図6に示すように、NOにCO及びOを混合することによって、混合前よりも絶縁破壊電圧が高くなり、しかも所定の混合比率において高い極大値を示す(正のシナジズム効果)ことが確認された。具体的には、負極性絶縁破壊電圧の平均値は、純NOガスで75[kV]であり、純COガスで67[kV]であるのに対し、NOが30容量パーセント、COが50容量パーセント、Oが20容量パーセントの混合比率とされた混合ガスEで94[kV]であり、CO及びOの混合によって被混合ガスの電子付着性をより効果的に作用させることが可能となることが確認された。
ここで、上記混合ガスA〜Eに関し、最適混合比率における負極性絶縁破壊電圧の平均値が図7に示される。図7に示すように、本実施の形態の混合ガスA〜Eのような、NOを主体とした混合ガスを絶縁ガスとして用いることによって、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた、電力機器用として有効な絶縁ガスを提供することができる。このような絶縁ガスは、SFガスを主成分とした絶縁ガスに代わる電力機器用の代替ガスとして有効である。
上記混合ガスA〜Eは、最も絶縁破壊電圧が高くなる最適混合比率にて使用されるのが好ましいが、所望の絶縁破壊電圧を上回る性能を得ることができれば、必要に応じて混合比率を調節することも可能である。以下、混合ガスA〜Eのうち、混合ガスA、混合ガスB及び混合ガスCにおける好適な混合比率の設定に関し、図2、図8及び図9を参照しつつ説明する。
混合ガスAに関しては、純NOガスに関する負極性絶縁破壊電圧の平均値に基づいて好適な混合比率を設定した。具体的には、純NOガスに関する負極性絶縁破壊電圧の平均値である75[kV]を基準値(基準値S0)とし、図2中のグラフにおいて当該基準値を上回る混合ガスAの好適な混合比率を求めた。すなわち、この基準値S0を用いることによって、純NOガスよりも高い電気絶縁性能が得られる混合比率が定まることとなる。その結果、混合ガスAの好適な混合比率として、NOが15容量パーセント以上、Nが85容量パーセント以下の混合比率を用いることができる。
次に、混合ガスB及び混合ガスCに関し、図8及び図9中に記載の基準値S1については、混合ガスEの最適混合比率(NOが30容量パーセント、COが50容量パーセント、Oが20容量パーセントの混合比率)における負極性絶縁破壊電圧の平均値を基準値として規定した。この基準値S1は、混合ガスB及び混合ガスCに関し、いずれも94[kV]となる。また、図8及び図9中に記載の基準値S2については、当該混合ガスの最適混合比率での負極性絶縁破壊電圧のばらつきの下限値(平均値−標準偏差(例えば1σ))を基準値として規定した。この基準値S2は、混合ガスBに関しては95[kV]となり、混合ガスCに関しては99[kV]となる。また、図8及び図9中に記載の基準値S3としては、混合ガスAの最適混合比率(NOが40容量パーセント、Nが60容量パーセントの混合比率)における負極性絶縁破壊電圧の平均値を基準値として規定した。すなわち、この基準値S3を用いることによって、混合ガスAよりも高い電気絶縁性能が得られる混合比率が定まることとなる。この基準値S3は、混合ガスB及び混合ガスCに関し、いずれも86[kV]となる。なお、本発明における基準値の設定に関しては、これら基準値S1〜S3に限定されるものではなく別の手法によって適宜行うこともできる。その際、基準値となる値は必要に応じて設定され得る。
まず、図8には、本実施の形態の混合ガスCに関し、予め規定された基準値とその基準値に対応した混合比率との関係が示される。
図8に示すように、混合ガスCに関し基準値S1(=94)を採用した場合には、N及びOの混合比率を固定したときのデータ(図8(b))に基づいて、NOの設定範囲を16〜38容量パーセントとし、COの設定範囲を22〜44容量パーセントとすることができる。同様に、NO及びCOの混合比率を固定したときのデータ(図8(a))に基づいて、Oの設定範囲を5〜16容量パーセントとし、Nの設定範囲を24〜35容量パーセントとすることができる。
また、混合ガスCに関し基準値S2(=99)を採用した場合には、N及びOの混合比率を固定したときのデータ(図8(b))に基づいて、NOの設定範囲を23〜33容量パーセントとし、COの設定範囲を27〜37容量パーセントとすることができる。同様に、NO及びCOの混合比率を固定したときのデータ(図8(a))に基づいて、Oの設定範囲を8〜13容量パーセントとし、Nの設定範囲を27〜32容量パーセントとすることができる。
また、混合ガスCに関し基準値S3(=86)を採用した場合には、N及びOの混合比率を固定したときのデータ(図8(b))に基づいて、NOの設定範囲を43容量パーセント以下とし、COの設定範囲を17容量パーセント以上とすることができる。同様に、NO及びCOの混合比率を固定したときのデータ(図8(a))に基づいて、Oの設定範囲を20容量パーセント以下とし、Nの設定範囲を20容量パーセント以上とすることができる。
また、図9には、本実施の形態の混合ガスBに関し、予め規定された基準値とその基準値に対応した混合比率との関係が示される。
図9に示すように、混合ガスBに関し基準値S1(=94)を採用した場合には、NOの設定範囲を16〜38容量パーセントとし、COの設定範囲を29〜55容量パーセントとし、Nの設定範囲を15〜41容量パーセントとすることができる。
また、混合ガスBに関し基準値S2(=95)を採用した場合には、NOの設定範囲を23〜33容量パーセントとし、COの設定範囲を31〜52容量パーセントとし、Nの設定範囲を18〜39容量パーセントとすることができる。
また、混合ガスBに関し基準値S3(=86)を採用した場合には、NOの設定範囲を43容量パーセント以下とし、COの設定範囲を16容量パーセント以上とし、Nの設定範囲を54容量パーセント以下とすることができる。
上記混合ガスA〜Eに関し、最も高い電気絶縁性を示すときの混合比率、或いは基準値に基づく好適な混合比率範囲の一例が図10に示される。図10に示すように、特に混合ガスB及び混合ガスCに関しては、組成ガスの混合比率を所定範囲にて調節した場合であっても所望レベルの高い電気絶縁性能が得られることとなる。
ところで、絶縁ガスにより電気絶縁がなされる電力機器にあっては、通常、各電力機器の定格電圧のレベルに応じて必要となる電気絶縁性能が異なる。すなわち、定格電圧が相対的に高い電力機器は、定格電圧が相対的に低い電力機器よりも高い電気絶縁性能が要求される。そこで、本実施の形態の混合ガスA〜Cを電力機器の絶縁に使用する際には、当該電力機器の定格電圧のレベルに応じて混合ガスの種類を変えたり、また混合ガス中の各組成ガスの混合比率を変更したりするのが好ましい。
ここで、定格電圧が低レベルの電力機器、定格電圧が中レベルの電力機器、定格電圧が高レベルの電力機器のための絶縁ガスとして混合ガスA〜Cを適用した場合の一例を説明する。例えば、定格電圧が低レベルの電力機器のための絶縁ガスとしては、基準値S0をクリアしている混合比率の混合ガスA、或いは混合ガスB、或いは混合ガスCを用いることができる。この場合の混合ガスB及び混合ガスCの混合比率は適宜設定可能である。また、定格電圧が中レベルの電力機器のための絶縁ガスとしては、基準値S3をクリアしている混合比率の混合ガスB、或いは基準値S3をクリアしている混合比率の混合ガスCを用いることができる。また、定格電圧が高レベルの電力機器のための絶縁ガスとしては、基準値S1またはS2をクリアしている混合比率の混合ガスB、或いは基準値S1またはS2をクリアしている混合比率の混合ガスCを用いることができる。
以上のように、本実施の形態によれば、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた、電力機器用として有効な絶縁ガスが提供される。
本実施の形態のこの絶縁ガスが使用されるガス絶縁開閉装置、ガス遮断器、変圧器、変成器、コンデンサなどのガス絶縁電力機器は、例えば、絶縁ガスによってガス絶縁がなされるガス絶縁対象と、このガス絶縁対象を収容する収容体と、この収容体の内部に絶縁ガスを供給するガス供給装置を少なくとも備える構成とされる。収容体は、絶縁ガスに対する密閉性が向上された容器として構成されるのが好ましい。ガス供給装置は、例えば据付タイプの充填タンクを用いた構成や、可搬式の供給手段を用いた構成とされる。絶縁ガスが収容体の内部に、常時、間欠或いは循環式に供給され、収容体の内圧を所定圧力に設定することによって、収容体の内部がガス絶縁雰囲気とされる。このガス絶縁雰囲気下においてガス絶縁対象を使用する場合に、高い電気絶縁性能が得られることとなる。また、この絶縁ガスは温室効果性能が低いため、環境に与える影響が少なく、特にSFガスに代わる代替ガスとして効果的である。従って、本実施の形態によれば、低温室効果性能と高電気絶縁性能を兼ね備えた絶縁ガスが使用される優れた性能のガス絶縁電力機器が提供される。
(他の実施の形態)
なお、本発明は、上記各実施の形態のみに限定されるものではなく、必要に応じて種々の変更や修正が可能である。
上記実施の形態では、NOにN,CO,Oを混合した混合ガスを絶縁ガスとして用いる場合について記載したが、NOに混合するガスとしては、N,CO,O以外のガス、例えば電子付着性を有する電気的負性ガスを用いることもできる。また、必要に応じてはNOにN,CO,O以外のガス、例えばパーフルオロカーボン(PFC)やSFガスを微量混合した混合ガスを絶縁ガスとして用いてもよい。
純NOガス及び純COガスに関する負極性絶縁破壊電圧のグラフである。 本発明の絶縁ガスの第1実施の形態である混合ガスAに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフである。 本発明の絶縁ガスの第2実施の形態である混合ガスBに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフである。 本発明の絶縁ガスの第3実施の形態である混合ガスCに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフである。 第4実施の形態である混合ガスDに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフである。 第5実施の形態である混合ガスEに関する負極性絶縁破壊電圧のガス混合比率依存性のグラフである。 本実施の形態の混合ガスA〜Eに関し、最適混合比率における負極性絶縁破壊電圧の平均値を示す図である。 本実施の形態の混合ガスCに関し、予め規定された基準値とその基準値に対応した混合比率との関係を示す図である。 本実施の形態の混合ガスBに関し、予め規定された基準値とその基準値に対応した混合比率との関係を示す図である。 本実施の形態の混合ガスA〜Eに関し、最も高い電気絶縁性を示すときの混合比率、或いは基準値に基づく好適な混合比率範囲を示す図である。 各種ガスの絶縁耐力と地球温暖化係数(GWP)との関係を示す図である。 各種ガスの電子エネルギーと解離性電子付着断面積との相関を示す図である。

Claims (3)

  1. 電気絶縁性を有する絶縁ガスであって、
    Oが16〜38容量パーセント、N が15〜41容量パーセント、CO が29〜55容量パーセントの混合比率で混合されている混合ガスとして構成されていることを特徴とする絶縁ガス。
  2. 電気絶縁性を有する絶縁ガスであって、
    Oが16〜38容量パーセント、N が24〜35容量パーセント、CO が22〜44容量パーセント、O が5〜16容量パーセントの混合比率で混合されている混合ガスとして構成されていることを特徴とする絶縁ガス。
  3. 絶縁ガスを用いて電気絶縁を行うガス絶縁電力機器であって、
    前記絶縁ガスとして請求項1または2に記載の絶縁ガスを用いた構成であることを特徴とするガス絶縁電力機器。
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