JP5095386B2 - プラスミド精製 - Google Patents

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Description

本発明は、バイオテクノロジーの分野、具体的には核酸、特にプラスミドの精製に関する。さらに具体的には、本発明は細胞ライセートのような液体の他の成分からプラスミドを単離する液体クロマトグラフィー法に関する。本発明には、本発明の方法を用いたプラスミドの精製が可能なキットも包含される。
バイオテクノロジーの工業的応用は、分子生物学及び遺伝学の分野における近年の進歩に基づく。周知の通り、集団内で遺伝的変異性を維持する一つの方法は組換えによるものであり、組換えは、様々なDNA分子間での遺伝情報の交換によって遺伝子の再構成をもたらすプロセスである。遺伝子工学の分野では組換えにベクターが常用される。最も一般的に用いられるベクターはDNAプラスミドであり、微生物が遺伝情報を核以外の場所に保存できるようにする小さな遺伝因子である。
このように、プラスミドは近年数多くの生物工学的用途で有用な要素となっている。例えば、組換えタンパク質の生産のための細胞の遺伝子工学は、本来の細胞では発現しないタンパク質がコードされた遺伝子を保有するプラスミドの導入によって実施される。こうして、主に医学及び診断分野で有用な多くのタンパク質が、事実上ルーチン法となった方法で容易に生産されている。
プラスミドのベクターとしてのもう一つの用途は遺伝子治療の分野であり、今後10年間で最も成長の速い領域の一つと予想されている。遺伝子治療は、嚢胞性線維症のような遺伝的欠損の治療のため核酸をヒトの細胞に導入する治療法である。最初のヒト遺伝子治療試験は1990年に始まり、エキソビボ法が用いられた。この方法では、実験室で患者の細胞を収集培養し、次にプラスミドのようなベクターとインキュベートして治療用の遺伝子を導入する。近年、ウイルスベクターを患者に直接投与するインビボ遺伝子治療に基づく遺伝子送達の代替手段が提案されているが、遺伝子治療におけるプラスミドの重要性に変わりはないと予想される。従って、かかる用途の増大に伴って、大量のプラスミドDNAが必要とされる。そのため、純度及び量的規格を満足し得る効率的な大規模精製法が必要とされている。
通常、プラスミドDNAの生産には発酵、一次精製及び高分解能分離が必要とされる。
例えば、まず発酵段階は、大腸菌のような細菌中でのプラスミドDNAの生産を含むのが通例であり、溶解として知られる細菌細胞からのプラスミドDNAの放出段階も伴う。一般に、菌体の溶解は、例えばアルカリの添加又はフレンチプレスの使用のような様々な化学的又は物理的方法で達成できる。ただし、プラスミドDNAの生産では、安全上の理由及び生成物を損なわないため、アルカリ溶解法が好ましい。通常、かかるアルカリ溶解段階では、RNA、ゲノムDNA、タンパク質、細胞及び細胞破片のような何種類かの夾雑物が放出される。
次に、一次精製段階に関しては、二相系のような方法(例えばポリエチレングリコール(PEG)と塩の使用、所定温度で二相に分離する温度分離型高分子を用いる温度誘起型相分離、又はゲル濾過とも呼ばれるサイズ排除クロマトグラフィー)が常用される。
高分解能分離段階に関しては、クロマトグラフィーが常用される技術である。周知の通り、クロマトグラフィーという用語は、密接に関連した一群の分離法を包含するもので、いずれも互いに非混和性の2つの相を接触させるという原理に基づく。具体的には、目標化合物を移動相に導入し、これを固定相と接触させる。目標化合物は移動相によって系内を運搬される際に固定相と移動相の間で一連の相互作用を受ける。相互作用には、試料中の各種成分の物理的又は化学的性質の差が利用される。イオン交換法として知られるクロマトグラフィーの根本原理は、イオン交換体として知られる反対電荷のマトリックスへの、タンパク質又は核酸のような1種類のイオンと塩イオンのような別のイオンとの間の競合的結合である。目標化合物とイオン交換体との相互作用は、目標化合物の正味電荷及び表面電荷分布、溶媒中の特定イオンのイオン強度及び種類、プロトン活量(pH)その他の幾つかの要因に依存する。
陰イオン交換クロマトグラフィーが核酸及びプラスミドの精製に提案されている。例えば、国際公開第99/63076号(The Immune Response Corp.)には、単一「混合モード」陰イオン交換段階を用いた大規模プラスミド精製が開示されている。開示された方法では、内毒素その他の不純物を除去するため厳密なエタノール洗浄が必要とされる。具体的には、洗浄段階での有機溶媒量を増加させることによって、開示された方法は純イオンモードから「混合」モードへと移行する。用いられた分離マトリックスは、例えばトリエチルアミノエチル(TMAE)フラクトゲル陰イオン交換樹脂(E.M. Science社製Fractogel TMAE樹脂)である。
米国特許第6270970号(Smithら)は、目標核酸の単離のための、2以上の異なる固相からなる混成ベッド固相に関する。いずれの相も目標核酸と結合するが、それらの結合は異なる溶液条件下で起こり、同様の溶出条件下で核酸を遊離する。各種ベッドの固相は好ましくは磁性シリカ粒子を含み、1種以上は好ましくは、担体材料の表面に共有結合した目標核酸と交換可能なイオン交換残基を有する。「表面」という用語は、固相を溶液と一緒にしたときに固相の担体材料において溶液と直接接する部分をいう。米国特許第6270970号による混成ベッド固相に使用するのに適した陰イオン交換体固相は、例えばSepharose(商標)のように市販されているという記載にみられるように、陰イオン交換リガンドは外表面だけでなく、細孔表面にも存在する。かかる市販固相の孔径は一般にプラスミド及び同様の大きさの分子がその内部に侵入できる範囲の大きさである。
さらに、米国特許第6441160号(東ソー(株))には、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を陰イオン交換段階と適宜併用するプラスミド精製が開示されている。HIC段階では、プラスミドが吸着されない塩濃度でタンパク質及びRNAを吸着させ、プラスミドとDNAとを含む溶出液を得る。そこで、陰イオン交換カラムにかけられる液体は、RNAを全く含むべきでない。HICの使用の一般的な短所は、最初に高い塩濃度が必要とされることであり、そのため結晶化及び沈殿の取扱いが比較的困難となる。適当な陰イオン交換分離マトリックスは、2〜500μmの粒径及び1500〜4000Åの平均孔径を有すると記載されている。陰イオン交換分離マトリックスの具体例は、DEAE 5PW(東ソー(株))である。ただし、米国特許第6441160号には、単一の陰イオン交換段階で得られたプラスミド画分に多くの不純物が含まれていたと結論付けられている比較例1から明らかな通り、陰イオン交換相互作用クロマトグラフィー単独での清澄化ライセートからのプラスミド精製は有利でないと教示されている。この比較例では、内径7.5mm及び長さ7.5cmのクロマトグラフィーカラムが使用されている。
米国特許第6011148号(Megabios Corp.)には、ゲル層の形成に十分な条件下でプラスミド含有溶液を限外濾過ユニットに循環し、溶液を限外濾過ユニットで濾過して透過液と非透過液とを得て、核酸を非透過液中に保持することによるプラスミドDNAのような核酸の精製法が開示されている。使用する濾過装置は、剪断及び保持された核酸の収率の低下を避けるため、開口路を有するべきである。この方法の利点は、安全及び規制上の懸念を起こしかねないフェノール、クロロホルム、エーテルなどの有毒化学物質及び有機溶媒を使用しなくてよいことである。この方法のもう一つの利点は、得られる生成物の純度が高いことである。この方法は、適宜陰イオン交換段階と組合せて、特に夾雑内毒素、微量タンパク質及び残留細胞夾雑物からさらに精製することができる。
米国特許第6214586号(Genzyme Corp.)には、プラスミドDNAとゲノムDNAを含む混合物からのプラスミドDNAの精製法であって、プラスミドDNAとゲノムDNAとを含む溶液を硫安の80重量%以上の飽和溶液で処理してゲノムDNAを沈殿させ、溶液中の精製プラスミドDNAを得る方法が開示されている。この方法は逆相及び陰イオン交換クロマトグラフィーの段階と組合せてもよく、その場合の好ましい樹脂はPoros 50 DE2であり、カラムは好ましくは50mM酢酸溶液(pH 5.4)、1mM EDTA、0.5M NaCl及び9.5%エタノールで平衡化される。
米国特許第6313285号(Genentech Inc.)には、RNA消化酵素を使用せずに、原核細胞からプラスミドDNAを精製するた方法が開示されている。具体的には、この方法は、(a)細胞を消化する段階、(b)細胞を溶解及び可溶化するためのアルカリ及び界面活性剤の存在下で細胞をインキュベートする段階、(c)ライセート夾雑物を除去してプラスミドDNA溶液を得る段階、(d)溶液をクロスフロー濾過(TFF)装置で濾過してプラスミドDNAを含む非透過液を得る段階、(e)非透過液を回収する段階とを含む。この方法は、後段での陰イオン交換クロマトグラフィー段階を含んでいてもよい。
米国特許第6242220号(Qiagen GmbH)には、ゲノムDNAからのccc DNAの分離のための改良プロトコルが開示されており、このプロトコルは高純度ccc DNAを与えるだけでなく、タンパク不純物を除去する。具体的には、提案された方法は、アルコールで清澄化ライセートを沈殿させ、アルコール溶液で沈殿を洗浄し、沈殿を再懸濁し、再懸濁した沈殿をRecBCDヌクレアーゼ(EC3.1.11.5)で消化し、精製ccc DNAをイオン交換物質と接触させて得られる生成物の残余成分から分離することとを含む。RNA分解酵素を清澄化ライセートに添加してもよく、沈殿段階はRNA及びタンパク質を始めとする他の成分から細胞のDNAを分離すると記載されている。
米国特許第6498236号(Upfront Chromatography A/S)は、溶液からの免疫グロブリンの単離法であって、高効率で塩類、特に離液性塩類をほとんど或いは全く使用しない方法に関する。固相マトリックス、好ましくはエピクロロヒドリン活性アガロースマトリックスで、好ましくはカルボン酸のような酸性置換基(すなわち弱陽イオン交換基)を含む芳香族又は複素芳香族リガンドで官能化したものが使用される。或いは、マトリックス骨格はSephadex(商標)のようにデキストラン系、Perlozaセルロースのようにセルロース系、Sephacryl(商標)及びSuperdex(商標)のような複合ビーズ、Fractogel(商標)のような合成ビーズなどである。
さらに、米国特許第6572766号(Amersham Biosciences)には、ミクロ細孔系を示すコアと細孔系が開口部を有する表面とを含み、ミクロ細孔系に侵入できない分子量の高分子で表面が覆われた分離マトリックスが開示されている。高分子は、マトリックス内に運搬できる液体とその標品を接触させたときに、標品中のすべて又は実質的にすべての高分子がミクロ細孔内への運搬から排除されるような分子量分布を有する。高分子は、ミクロ細孔表面とは異なるリガンドで官能基化できる。これは、高分子が外表面に固定されると、ミクロ細孔の分離特性とは異なる分離特性を表面に与えることができることを意味する。この方法は、核酸、ペプチドを含めたタンパク質、その他の有機及び無機化合物の分離に提案されている。
最後に、国際公開第01/37987号(Amersham Biosciences)は、負に荷電した核酸同士の分離、その他タンパク質のような負に荷電した成分からの分離に関する。具体的には、物質I及びIIに結合できるリガンド構造を有し、物質Iがアクセスできる内部と、リガンド構造がなく、物質IIよりも物質Iの方が侵入し易い外表面層とを呈する吸着剤の使用が開示されている。外表面層つまり外面にはリガンドが存在しないので、吸着は内部つまり細孔表面に限られる。外表面は反発構造を有していてもよい。そこで、物質Iは吸着剤の内部に吸着されるが、構造IIは吸着されずにカラムを通過する。物質I及び/又はIIは核酸構造であってもよい。この方法は、例えば環状DNAからの線状DNA、プラスミドからのRNA、ゲノムDNAからのプラスミド、内毒素からのプラスミドなどの分離に有用である。この方法に続いて適宜追加段階を加えてもよい。例えば、高度に精製された物質IIが望まれる場合、イオン交換、逆相クロマトグラフィー(RPC)、HICなどの追加の捕捉段階を追加すべきである。
国際公開第99/63076号パンフレット 米国特許第6270970号明細書 米国特許第6441160号明細書 米国特許第6011148号明細書 米国特許第6214586号明細書 米国特許第6313285号明細書 米国特許第6242220号明細書 米国特許第6498236号明細書 米国特許第6572766号明細書 国際公開第01/37987号パンフレット 米国特許第6602990号明細書 Protein Purification − Principles, High Resolution Methods and Applications, Janson and Ryden1989 VCH Publishers, Inc. "Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization" (R Arshady: Chimica e L’Industria 70(9), 70−75 (1988) S Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2), 393−398 (1964) Immobilised Affinity Ligand Techniques, Hermanson, Mallia and Smith, 1992 by Academic Press, Inc
当技術分野では、プラスミドのような大きな目標化合物を高い生産性及び選択性で単離することができる代替精製スキームに対するニーズが依然として存在する。
そこで、本発明の一態様は、プラスミドのような高分子量核酸の大規模な選択的捕捉法である。これは、特許請求の範囲に記載の通り達成できる。
本発明の別の態様は、生産性の高いプラスミド精製法である。
本発明の別の態様は、沈殿段階がなく、酵素及び/又は界面活性剤の添加を必要としないプラスミド精製法である。
本発明の別の態様は、非汚損性でオートクレイブ滅菌可能な分離マトリックスを用いたプラスミド精製法である。
以上の態様は、特許請求の範囲に記載の通り達成できる。本発明のその他の態様及び利点は以下の詳細な説明から明らかとなろう。
定義
本明細書で用いる「プラスミド」という用語は「プラスミドDNA」という用語と同義に用いられ、様々なプラスミドの形態、すなわち開環状(oc、ニックプラスミドDNAとしても知られる。)及びスーパーコイル(ccc)プラスミドDNAを包含する。
「陰イオン交換基」という用語は、正に荷電又は荷電し得る基を意味する。
本明細書で用いる「核酸分子」という用語は「ヌクレオチド」という用語と同義に用いられ、DNA(例えばプラスミドDNA及びゲノムDNAのような他のDNA)及びRNA(例えばmRNA、tRNA及びsRNA)を包含する。
「清澄化ライセート」という用語は当技術分野で周知であって、培養細胞又は単細胞生物のSDS存在下でのアルカリ溶解、細胞残渣の分離(通例、濾過又は遠心分離による)とタンパク質−SDS複合体(ミセル)の酢酸カリウム沈殿によって得られるプラスミドDNA、RNA及びタンパク質を含む水溶液をいう。
「分離マトリックス」という用語は、クロマトグラフィーの固定相として有用な材料をいう。一般に用いられるクロマトグラフィー分離マトリックスは、官能基が結合した担体からなる。
本明細書で用いる分離マトリックスの「表面」とは、マトリックスの外表面及び細孔表面を包含する。「外表面」は外側を意味し、外部細孔開口を包含するのに対して、「細孔表面」という用語は本明細書では内部にみられる細孔表面について用いられる。
液体クロマトグラフィーに関して「官能基」という用語は、様々な化合物の分離をもたらすのに十分な相互作用が可能な基を意味する。かかる相互作用は、吸着又は遅延である。
本明細書で用いる「精製」という用語は、他の成分からの所望成分の単離を意味する。
「捕捉」という用語は、分離操作の初期段階をいう。最も一般的には、捕捉段階には、可溶性夾雑物からの清浄化、濃縮、安定化及びかなりの精製が含まれる。捕捉段階の後に中間精製を行ってもよく、RNA、ゲノムDNA、oc DNA、ウイルス及び内毒素を始めとする有意不純物の大部分が除去される。最終精製段階は通常「ポリシング」といわれ、微量の夾雑物及び不純物が除去され、安全な活性生成物が残る。ポリシング段階で除去される夾雑物は、目標分子の配座異性体、又は漏出生成物と思われるものであることが多い。
本明細書で用いる「サイズ排除」という用語と「ゲル濾過」は同義に用いられ、分子の大きさによる篩効果に基づく化合物の分離を意味する。
「分離マトリックス」という用語は、官能基を有するリガンドが結合した担体を意味する。
粒径に関して「D50値」という用語は、粒度分布の体積メジアンを意味する。
本発明は、液体の他の成分から1種以上のプラスミドを単離する方法であって、
(a)外表面及び細孔表面に陰イオン交換基を呈し、細孔表面にプラスミドがアクセスできない孔径分布を有する1種以上の多孔性担体からなる分離マトリックスを用意する段階、
(b)上記マトリックスを上記液体と接触させてプラスミドを分離マトリックスの外表面に存在するリガンドへ吸着させる段階、及び、適宜、
(c)溶出液を上記分離マトリックスと接触させてプラスミドを遊離させ、溶出液の画分からプラスミドを回収する段階
を含ンでなる方法に関する。
担体の孔径のため、プラスミドは立体的障害によってその内部に吸着されない。本発明の方法ではプラスミドは分離マトリックスを構成する多孔性担体の外表面に吸着されるのに対して、上述の国際公開第01/37987号ではプラスミドは単にマトリックスによる篩にかけられるだけで吸着剤の中性外表面には吸着されない点で、本発明は国際公開第01/37987号とは異なる。これに関して、「プラスミドがアクセスできない」という用語は、実質的にいかなるプラスミドも細孔系に侵入できないことを意味する。
そこで、本発明は、液体の他の成分から1種以上のプラスミドを単離する方法であって、
(a)外表面及び細孔表面に陰イオン交換基を呈する1以上の多孔性担体からなる分離マトリックスを用意する段階、
(b)上記マトリックスを上記液体と接触させて分離マトリックスの外表面に存在するリガンドに限定してプラスミドを吸着させる段階、及び、適宜、
(c)溶出液を上記分離マトリックスと接触させてプラスミドを遊離させ、溶出液の画分からプラスミドを回収する段階
を含んでなる方法に関する。
これに関して、「分離マトリックスの外表面に存在するリガンドに限定して」という用語は、実質的にいかなるプラスミド吸着も細孔表面つまり担体内部では起こらないことを意味する。
一態様では、本発明は液体の他の成分から1種以上のプラスミドを単離する方法であって、
(a)外表面及び細孔表面に陰イオン交換基を呈し、DNA排除限界が約270塩基対以上である1種以上の多孔性担体からなる分離マトリックスを用意する段階、
(b)上記マトリックスを上記液体と接触させてプラスミドを分離マトリックスの外表面に存在するリガンドへ吸着させる段階、及び、適宜、
(c)溶出液を上記分離マトリックスと接触させてプラスミドを遊離させ、溶出液の画分からプラスミドを回収する段階
を含んでなる方法に関する。
特定の実施形態では、多孔性分離マトリックスのDNA排除限界は約800bp以上、又は約1000bp以上、例えば1000〜10000bpである。別の実施形態では、多孔性分離マトリックスのDNA排除限界は約20000bpである。そこで、多孔性分離マトリックスのDNA排除限界は800〜30000bp、例えば1000〜20000bpの範囲にある。当業者には自明であろうが、目標プラスミドの大きさと多孔性分離マトリックスのDNA排除限界は、本発明による分離を達成するため相対的に変更し得る。
プラスミドは一般に発酵作業に由来する。発酵細胞は真核生物でも原核生物でもよいが、好ましくは原核生物、例えば大腸菌、枯草菌のような細菌である。別の実施形態では、精製するプラスミドを生産する細胞は、サッカロミセス、ピキアなどの酵母種である。所望プラスミドの生産菌株は、分子生物学の常法で調製するか、市販品を入手する。溶解は、当技術分野で公知の通り、例えば細胞を0.2のNaOH/1.5%SDSのようなアルカリ性緩衝液に加えることによって実施できる。染色体DNA、RNA及び細胞タンパク質のような不純物を沈殿させるため、酢酸カリウムの添加を用いてもよい。溶解及び中和後、ライセートを回収し、例えば孔径約0.1〜100μmの適当なフィルターでの限外濾過などによって、清澄化すればよい。好適な実施形態では、ライセートを、限外濾過のような当技術分野で公知の技術、好ましくはホローファイバー膜を使用して濃縮する。さらに、得られた液体を、イオン強度を下げるため水で調整して、所望の特性としてから、段階(b)に規定する分離マトリックスと接触させてもよく、プラスミドの吸着は正味電荷に基づいて達成できる。本分離マトリックスに加える液体は、通常、従来技術では流速を下げるなど何らかの予防策が必要となる範囲の粘度のものである。しかし、本発明では、ビーズの剛性を維持しながら比較的速い流速が可能となる。一般に、本発明の方法では、約100cm/hを超える流速が利用される。従って、本発明の方法は従来技術の方法に比してプラスミド精製のための高度の回収が可能となり、大規模調製で特に有利である。
そこで、一実施形態では本発明の方法は大規模プロセスであって、約1g以上のプラスミドが回収される。大規模調製は一般にクロマトグラフィーカラムで実施され、その直径は約10cm以上である。例えば、大規模調製には15cmのベッド高が使用でき、約1.2リットルの量の分離マトリックスが必要とされる。ただし、当業者には自明であろうが、調製規模としても知られる大規模調製にはさらに大量のマトリックスも有用である。かかる方法は特に治療用プラスミドの調製に有利であり、かかるプラスミドは組換えDNA技術のベクターとして従来使用されてきたプラスミドに比して、比較的大きい。従って、一実施形態では、本発明で単離されるプラスミドの大きさは約3000塩基対以上、例えば約5000又は6000塩基対であり、約10000塩基対まででもよい。
本発明の方法は、液体中の夾雑物のような1種以上の他の成分からのプラスミドの分離を可能にする。本発明の最も好適な実施形態では、本発明の方法はRNAからプラスミドを分離する捕捉段階である。特定の実施形態では、RNAは分離マトリックスの細孔表面に存在するリガンドに吸着される。本発明の一実施形態では、プラスミドはもっぱら分離マトリックスの外表面だけに吸着される。別の実施形態では、マトリックスのDNA排除限界は、プラスミドが細孔表面にも吸着するように選択される。特定の実施形態では、分離マトリックスは、プラスミドが表面及び外表面近傍の細孔表面(例えば外表面のごく近傍)に吸着するが、RNAほど分離マトリックスの内部奥深くには吸着しないように、選択される。この実施形態では、プラスミドは担体の外層に吸着される。
一実施形態では、本発明の方法は、段階(c)で得られたプラスミド含有溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)にかける段階(d)も含む。かかるHIC段階は、周知の吸着及び溶出原理によって、いかなる種類の慣用HICマトリックスでも実施できる。HIC段階は内毒素を除去するので有益であり、閉環状プラスミド(ccc)からの開環状プラスミド(oc)の分離にも利用できる。陰イオン交換後にHICを行う利点は、HIC吸着が概して高い導電率で起こることである。具体的には、プラスミドは一般に塩の添加によってイオン交換体から溶出されるが、HIC段階はかかる塩濃度又はさらに高い濃度で好適に実施でき、体積を要する希釈の必要がない。さらに、本発明の最も好適な実施形態では、陰イオン交換段階の前に濾過を行う。
上述の通り、本分離マトリックスは、リガンドを結合させた担体からなる。担体は、好適には、サイズ排除媒体でよく知られた範囲の粒径及び空隙率のものである。従って、本発明の分離媒体は、正に荷電又は荷電し得る陰イオン交換基が固定化されたサイズ排除媒体と定義することができる。
さらに、本発明の方法で使用される分離マトリックスは適当ないかなる形態のものでもよく、例えば略球形の粒子、モノリス又は膜でよい。最も好適な実施形態では、マトリックスは乾燥状態での平均粒径が約10〜60μm、例えば約10〜50μmの粒子の形態にある。特定の実施形態では、平均粒径は約30〜50μmである。背圧を低く保ち、低圧装置が使用できるように、分離マトリックスの粒径分布はできるだけ均一に保つべきである。これに関して、「低圧」とは約3バール未満の圧力を意味する。さらに、本明細書に記載の粒径はD50値をいう。
担体に固定化されるイオン交換基は、弱及び強陰イオン交換体として知られる公知の荷電又は荷電性基でよい。当業者には自明であろうが、陰イオン交換基の密度又は置換度は変更し得る。ただし、密度が高すぎると、不必要に強く吸着して選択性が失われかねないので、不都合を生じる可能性がある。
本発明の分離マトリックスに適した陰イオン交換基の具体例は、モノ−、ジ−及びトリ−アルキルアミン、例えばトリメチルアミン(Q)、ジメチルアミン、ジエチルアミン(ANX)及びtert−ブチルアミン;ヒドロキシル含有アミン、例えばエタノールアミン、ジ−及びトリ−エタノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(TRIS);混成アルキル/ヒドロキシル含有アミン、例えばヒドロキシエチルアミン、ヒドロキシメチルジメチルアミノメタン、N−エチル−N−ヒドロキシエチルアミン;芳香族基を有するアミン、例えばアニリン、ジメチルアニリン及びヒドロキシエチルアニリン;芳香族基、脂肪族基及びヒドロキシル含有基の組合せを有するアミン;正の正味電荷を有することを条件として、アミノ官能基と酸性官能基、例えばカルボキシル、スルホネート及びリン酸基との組合せを有するリガンド、例えばアルギニン及びリジン;ピリジン;モルホリン、ピペラジン、ピラジン、グアニジン、及び数個の窒素原子を含むアミンである。
一実施形態では、陰イオン交換基は第4級アミン(Q)基及びジエチルアミン基からなる群から選択される。かかる基は周知である。例えば、Protein Purification − Principles, High Resolution Methods and Applications, Janson and Ryden1989 VCH Publishers, Inc.参照。特定の実施形態では、かかる基はイオン交換基に加えて1以上の追加の官能基を含む二相(bimodal)又は多相(multimodal)基である。
担体は無機でも有機でもよく、担体表面に結合したヒドロキシル含有層のようなコーティングを含んでいてもよい。
一実施形態では、担体は合成高分子、好ましくは、スチレン又はスチレン誘導体、ジビニルベンゼン、アクリルアミド、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、ビニルエステル、ビニルアミド、ビニルエーテルなどの架橋合成高分子である。かかる高分子は、常法で容易に製造することができる。例えば、“Styrene based polymer supports developed by suspension polymerization” (R Arshady: Chimica e L’Industria 70(9), 70−75 (1988))参照。
別の実施形態では、担体は、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、キトサン、コンニャク、カラゲナン、ジェラン、アルギン酸塩のような架橋炭水化物である。一実施形態では、マトリックスは多孔性架橋アガロースである。かかる炭水化物担体は、逆懸濁ゲル化法(S Hjerten: Biochim Biophys Acta 79(2), 393−398 (1964))のような常法で当業者が容易に製造できる。マトリックスの剛性を高めるために、マトリックスを米国特許第6602990号(Bergら)に記載の通り調製してもよい。
さらに別の実施形態では、担体はシリカのような無機材料である。
或いは、分離マトリックスはサイズ排除用の市販製品、例えばSephacryl(商標)(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ)から市販)の官能基化によって調製できる。かかる市販製品は、官能基を有するリガンドで当業者が容易に修飾できる(総説については、例えばImmobilised Affinity Ligand Techniques, Hermanson, Mallia and Smith, 1992 by Academic Press, Inc参照)。そこで、特定の実施形態では、担体はビスアクリルアミドで架橋したアリルデキストランから調製される。例示的な実施形態では、担体はSephacryl S−500 HR又はSephacryl S−1000 SF(Amersham Biosciences)である。
好適な実施形態では、本発明の方法は常法を用いてマトリックスを充填したクロマトグラフィーカラムで実施され、重力又はポンプのような慣用手段で液体をマトリックスに流す。段階(b)の至適流速及び接触時間は、例えばイオン交換基の種類及び担体の種類に依存する。各々の事例に適した条件及び緩衝液は、当業者が技術常識又は標準教科書に基づいて容易に調整できる。さらに、適宜、1以上の慣用洗浄段階を含めてもよい。段階(c)の溶出は段階的又は直線濃度勾配を含んでいてもよく、適当な条件及び緩衝液は当業者が技術常識又は標準教科書に基づいて容易に選択できる。
第二の態様では、本発明は、外表面及び細孔表面に陰イオン交換基を呈し、細孔表面にプラスミドがアクセスできない孔径分布を有する1種以上の多孔性担体からなる分離マトリックスの、プラスミド精製のための使用に関する。一実施形態では、本発明は陰イオン交換基が表面に固定化された担体からなり、約270塩基対以上のDNA排除限界を示す多孔性分離マトリックスの、プラスミド精製のための使用に関する。一実施形態では、分離マトリックスは、RNA及び内毒素のような夾雑物からプラスミドを単離するための液体クロマトグラフィーで捕捉媒体として使用される。本使用の好適な実施形態では、単離すなわち精製したプラスミドは共有結合で閉環した(ccc)DNAを含む。この実施形態では、cccプラスミドは、上述の夾雑物だけでなく他のプラスミドアイソフォームからも分離される。プラスミドDNAは、遺伝子治療のためのベクターの生産のような治療分野での使用が増している。そこで、一実施形態では、プラスミドDNAは、特定の個人の治療のために設計された薬剤を提供するため、パーソナライズドメディスン用に単離される。本発明によって単離されるプラスミドのその他の用途は、例えば研究用及び診断分野である。
この態様で使用される分離マトリックスは、上述のいずれでもよく、本発明の方法に関する詳細な説明は上記の使用にも当てはまる。分離マトリックスの定義に孔径ではなくDNA排除限界を用いる理由は、本明細書に開示した担体の大半がゲル、つまり湿潤状態であるためある。孔径の標準測定法は水銀圧入法によるが、それには乾燥試料が必要とされる。多孔性ゲルは乾燥に伴って多孔構造が変化し、次第に崩壊する。そのため、多孔性ゲルについて孔径を定義する場合、カラムにサイズ排除ゲルを充填して、実験を行い、分子量既知のモデル化合物での保持データを記録することによって間接的に孔径を推定するのが一般的である。しかし、多孔性ゲルの孔分布は依然として多種多様な孔径を呈することがあるので、ゲルの多孔性を定義するには所定の分子のKav又はK及びDNA排除限界の方が信頼性の高い方法である。これらの用語は当技術分野で公知であり、本明細書ではそれらの通常の意味で用いられる。
好適な実施形態では、分離マトリックスは平均粒径10〜60μm、例えば10〜50μm、例えば30〜50μmの略球形の粒子である。
本発明の使用は、約1g以上の量の量なプラスミドの大規模精製を含んでいてもよい。
第三の態様では、本発明は、外表面及び細孔表面に陰イオン交換基を呈し、細孔表面にプラスミドがアクセスできない孔径分布を有する1種以上の多孔性担体からなる分離マトリックスと、1種以上の緩衝液と、そのキットを使用して液体の他の成分からプラスミドをどのように精製するかについて記載した使用説明書とを、別々の区画に備えたキットに関する。一実施形態では、本発明は、陰イオン交換基が表面に固定化された担体からなり、約270塩基対以上のDNA排除限界を示す多孔性の分離マトリックスと、1種以上の緩衝液と、プラスミドを液体の他の成分から精製するための使用説明書とを、別々の区画に備えたキットである。キットの分離マトリックスは、略球形の粒子、モノリス、膜等の形態のものでよく、上述の通り定義することができる。好適な実施形態では、マトリックスはクロマトグラフィーカラムに充填された略球形の粒子の形態である。カラムは、例えばポリプロピレンのような生体適合性プラスチックや、ガラスのような慣用材料からなるものでよい。カラムは好ましくはプラスミドの大規模精製に適した大きさのものであり、好ましくは10cm以上の直径を有する。特定の実施形態では、本発明に係るカラムは、ルアーアダプタ、チューブコネクタ及びドームナットを備える。
図面の詳細な説明
図1は、第4級陰イオン交換基を結合させたアリルデキストラン/N,N′−メチレンビスアクリルアミド系に基づく分離マトリックスつまり以下の実施例1に記載の通り調製したQ−Sephacryl 500での本発明によるプラスミドの単離例を示すクロマトグラムを示す。用いた導電率は48mS/cmであり、分離マトリックスは約1078塩基対のDNA排除限界を示す。
図2は、図1に開示したプラスミドの単離を、導電率を38mS/cmに調整して行った例を示すクロマトグラムである。
図3は、排除限界が20000塩基対である点を除いては図1に開示した分離マトリックスと同様の分離マトリックスでの本発明によるプラスミドの単離例を示すクロマトグラムである。
図4は、図3で使用したものと同じ分離マトリックスでの清澄化ライセートからのプラスミドの単離例を示すクロマトグラムである。
図5は、上半分の周囲が明るいものが本発明によってプラスミドが吸着した分離マトリックスの粒子を示す共焦顕微鏡画像である。粒子の孔径は200nmであった。下半分は、培養細胞に用いたミクロ担体(Cytodex(商標)、Amersham Biosciences)の細孔にプラスミドがどのように入るか示す対照図である。結論としては、表面はその直径と逆相関するので、粒径を減少させることによって、プラスミドに対するクロマトグラフィーマトリックスの容量を増大させることができるというものである。
以下の実施例は本発明を例示するためのものであり、特許請求の範囲で規定される本発明の技術的範囲を限定するものではない。本明細書で引用した文献の開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
実施例1:ビスアクリルアミドで架橋したアリルデキストランを含む担体の4級アンモニウム(Q)基での官能基化
Sephacryl(商標)S−500 HR(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ)製)をガラス濾過器上で吸引して水抜きし、ビーズ200gを反応容器に加えた。水酸化ナトリウム8.0g及び水素化ホウ素ナトリウム0.2gを40ml蒸留水と透明溶液が得られるまで攪拌して、容器に仕込んだ。400mlの塩化グリシジルトリメチルアンモニウム(GMAC)を、反応容器に2時間かけて送入した。温度を25℃に維持して、一晩(18時間)反応を続けた。生成物(本明細書ではQ−Sephacrylという。)を60%酢酸で中和し、蒸留水で洗浄した。
イオン交換リガンドの量は以下の方法で求めた。1.0mlゲルの体積をテフロン(登録商標)キューブで測定した。サンプルを0.5M塩酸で溶出し、1mM塩酸で洗浄した。ゲルを蒸留水10mlと共に滴定カップへ移し、濃硝酸を1滴加えた。滴定は最終的に0.1M硝酸銀で行った。結果は34μmolCl/mlゲルであった。
実施例2:ビスアクリルアミドで架橋したアリルデキストランのアミン基での官能基化
実施例2a:ジエチルアミンカップリング
常法によってアリルグリシジルエーテル(AGE)とNaOHでアリル化して、アリル含量140μmol/mlとしたSephacryl(商標)S500 HR(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ)製)ゲル25mlを減圧下で水抜きし、400mlの水と共に600mlビーカーに入れた。懸濁液で黄色が現れ続けるまで、臭素を滴下した。臭素化ゲルを次いでガラス濾過器上で500mlを超える量の蒸留水で洗浄した。
上述の通り臭素化し、減圧下で水抜きしたゲル25gを、蒸留水4g及びジエチルアミン7gと共に100ml丸底フラスコに入れた。室温で一晩反応させた。ゲルを約2ベッド体積の水で洗浄し、次に約50mlの水で再懸濁することによって反応を停止させた。水:濃塩酸の1:1溶液の添加によってpHを5〜6に調整した。500mlを超える量の水でさらに洗浄した。
イオン交換容量(イオン交換体の量)は常法で63μmolと測定された。
実施例2b:ヒドロキシエチルアミンカップリング
実施例2aに記載の通り、140μmol/mlのアリル含量にアリル化したSephacryl(商標)S500(Amersham Biosciences社(スウェーデン、ウプサラ)製)ゲル25mlを減圧下で水抜きし、400mlの水と共に600mlビーカーに入れた。懸濁液で黄色が現れ続けるまで、臭素を滴下した。臭素化ゲルを次いでガラス濾過器上で500mlを超える量の蒸留水で洗浄した。
上述の通り臭素化し、減圧下で水抜きしたゲル25gを、蒸留水4g及びヒドロキシエチルアミン5.85gと共に100ml丸底フラスコに入れた。室温で一晩反応させた。ゲルを約2ベッド体積の水で洗浄し、次に約50mlの水で再懸濁することによって反応を停止させた。水:濃塩酸の1:1溶液の添加によってpHを5〜6に調整した。500mlを超える量の水でさらに洗浄した。
イオン交換容量は常法で54μmolと測定された。
実施例3:クロマトグラフィー
試料は7kbプラスミドを含む35gの細菌細胞(湿重量)から得たもので、清澄化ライセートは標準プロトコルによって調製した。得られた上清は、中空糸モジュール(300kDa MWCO)での限外濾過(UF)によって最終体積250ml及び導電率48mS/cm(図1参照)に濃縮/透析濾過した。2回目の実験では、試料は水の添加によって導電率38mS/cmに調整した(図2参照)。
2つの試料を、それぞれQ−Sephacryl S 500 HR又はQ−Sephacryl S 1000 HRを充填したPEEKカラム(4.6/150mm、2.5ml体積)に、それぞれ10及び25mlの量で加えた。Q−Sephacryl S 500 HRは実施例1に記載の通り調製したものであり、Q−Sephacryl S 1000 HRはSephacryl(商標)S 1000 HRを出発材料として実施例1に記載の通り調製したものである。
流速は0.4ml/min(〜130cm/h)であり、未結合試料を洗浄した後の勾配は、10カラム体積(CV)の0.4M NaCl〜1M NaClであった。これを2つの試料調製に用いた。
緩衝液A:0.4M NaCl、100mM Tris/Cl、10mM EDTA、pH7。
緩衝液B:1M NaCl、100mM Tris/Cl、10mM EDTA、pH7。
第4級陰イオン交換基を結合させたアリルデキストラン/N,N′−メチレンビスアクリルアミド系分離マトリックスでの本発明によるプラスミドの単離例を示すクロマトグラム。 図1に開示したプラスミドの単離を調整した導電率を用いて行った例を示すクロマトグラム。 排除限界が高い点を除いては図1に開示した分離マトリックスと同様の分離マトリックスでの本発明による清澄化ライセートからのプラスミドの単離例を示すクロマトグラム。 図3に開示したプラスミドの単離例を示すクロマトグラム。 共焦点顕微鏡写真であり、上半分の周囲が明るいものが本発明によってプラスミドが吸着した分離マトリックスの粒子を示し、下半分は培養細胞に用いたミクロ担体の細孔にプラスミドがどのように入るかを示した対照図である。

Claims (8)

  1. 液体中のRNAから1種以上のプラスミドを単離する方法であって、
    (a)外表面及び細孔表面に陰イオン交換基を呈し、DNA排除限界が1000塩基対以上である架橋炭水化物材料からなる分離マトリックスを用意する段階、及び
    (b)上記マトリックスを上記液体と接触させて、RNAを分離マトリックスの細孔表面に吸着させるとともにプラスミドを分離マトリックスの外表面に存在するリガンドだけに吸着させる段階
    を含んでなる方法。
  2. 前記工程(b)の後に、
    (c)溶出液を上記分離マトリックスと接触させてプラスミドを遊離させ、溶出液の画分からプラスミドを回収する段階
    をさらに含む、請求項1記載の方法。
  3. 前記分離マトリックスのDNA排除限界が20000塩基対ある、請求項1又は請求項2記載の方法。
  4. 前記分離マトリックスが平均直径30〜50μmの略球形の粒子である、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
  5. 前記プラスミドの大きさが3000塩基対を超える、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
  6. 1g以上のプラスミドを回収する大規模プロセスである、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
  7. (d)段階(c)で得られるプラスミド含有溶出液を疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)にかける追加の段階をさらに含む、請求項2乃至請求項6のいずれか1項記載の方法。
  8. 前記陰イオン交換基が、第4級アミン(Q)基及びジエチルアミン基からなる群から選択される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
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