JP5614936B2 - アニオン交換基が固定された多孔膜を用いた核酸の精製方法 - Google Patents

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本発明は、アニオン交換基がグラフト鎖を介して固定された多孔膜を用いた核酸の精製方法に関する。
遺伝子治療に代表されるような、医薬品への核酸の使用量が増加していることにより、大規模で高速処理が可能な核酸の精製方法が望まれている。ここで核酸とは、デオキシリボ核酸(DNA)およびリボ核酸(RNA)を指し、このうち、特にプラスミドDNAはポリヌレオチドワクチンおよび遺伝子治療プロトコルにとって、極めて重要である。ポリヌレオチドワクチンは、特定の疾病に対して防御免疫を誘導するための有効な方法であり、中和抗体を生成するとともに、より好ましい細胞媒介性免疫反応を活性化する。より詳細には、目的の抗原をコードする遺伝子と哺乳類動物細胞中で活性なプロモーターとを含むプラスミドDNAが対象動物に投与され、筋肉細胞によって細胞内部に取り込まれる。抗原DNAは転写および翻訳され、発現したタンパク質は、T細胞への提示のために細胞表面へと輸送される。疾病モデルでのポリヌクレオチドワクチンの前臨床免疫原性や有効性は、多数の感染性疾患に対して実証されている。プラスミドDNAはさらに、機能的遺伝子の体内への投与、標的細胞への前記遺伝子の送達および疾病状態を選択的に調節するための治療用産物を包含する遺伝子治療処置について効果が認められている。
通常、大腸菌(E.coli)が核酸培養の宿主として広く使われるが、酵母菌あるいは哺乳類または昆虫の細胞もまた、宿主細胞として用いることができる。これらの宿主を用いた核酸培養で得られた核酸には、宿主細胞壁およびその破片、さらにエンドトキシンなどが不純物として含まれている。このような不純物が最終製品である医薬品内に混入し、投与の際に患者の体内に取り込まれると、重大な症状、例えば発熱、血管の炎症、血液の凝固、免疫システムによる抗原の発生などが引き起こされることから、不純物を除去し、核酸を精製することは、核酸の医薬品としての使用において極めて重要となる。
核酸の精製は、実験室レベルでは一般にリボヌクレアーゼなどの酵素やリゾチウムによって宿主細胞を分解した後、有機溶剤、セシウム塩によって宿主細胞破片を凝集させ、遠心分離によって清澄化する方法が用いられている。この方法は大量の精製には不向きであり、さらに人体に有害なフェノールやセシウム塩などを用いることから、医薬品向けの核酸の精製には好ましくない。
工業的に核酸を精製する方法としては、核酸を含む宿主細胞の培養液を遠心分離によって清澄化した後、クロマトグラフィーカラムによる工程を用いることが一般的である。例えば、特許文献1にはアニオン交換クロマトグラフィーとゲルろ過クロマトグラフィーを用いたプラスミドDNAの精製法が記載されている。ここで、最初の工程でアニオン交換クロマトグラフィーによりプラスミドDNAを吸着後溶出回収し、第2の工程でサイズ分画により最終精製を行い、エンドトキシンなどのサイズの小さな不純物を除去する。特許文献2には第1工程としてアニオン交換クロマトグラフィーを、第2工程として逆相クロマトグラフィーを用いて、核酸を精製する方法が記載されている。特許文献3にはアニオン交換クロマトグラフィーのみの一工程によって、核酸を精製する方法が記載されている。このように工業的な核酸の大量精製において、カラムクロマトグラフィーを用いることは一般に行われている。
また、特許文献4はカラムクロマトグラフィーでなく、弱アニオン交換基が直接表面に固定されている多孔膜を用いて、核酸とエンドトキシンとの混合液から、核酸を高濃度で分離する方法を開示する。さらに、特許文献5には清澄化され宿主細胞破片を除去した、核酸とエンドトキシンを含む水溶液から、イオン交換基を有しない、カットオフ分子量が1〜1000kDaの限外ろ過膜を用いて、核酸を精製する方法が記載されている。この方法ではサイズの大きな核酸は限外ろ過膜を透過せず、エンドトキシンのようなサイズの小さな分子は膜を透過することにより、核酸を精製する。
米国特許第5981735号明細書 米国特許第6197553号明細書 米国特許第6242220号明細書 米国特許第6235892号明細書 欧州特許公開第0853123号明細書
上記特許文献1に開示された方法においては、十分な精製度を得るためには、核酸の溶出における高い分解能が要求されるため、処理速度が遅くなるという問題がある。上記特許文献2に開示された方法においては、第2工程において有害な有機溶剤を用いるという問題がある。上記特許文献3に開示された方法においては、高い精製度で核酸を回収するためには、高分解能での溶出条件が必要であり、さらに処理速度が低下するという問題がある。これらのカラムクロマトグラフィーを用いた方法では、核酸をアニオン交換カラムクロマトグラフィーに吸着させる際、一般にその動的吸着容量は最大でも5g/L(カラム体積)程度しか得られない。カラムクロマトグラフィーでの吸着はカラムを構成する樹脂の細孔に目的物が拡散により浸透し、吸着することに基づくが、一般に核酸の分子量は数十万から数千万と、他のタンパク質などの目的物に比べて極めて大きく、そのためビーズの細孔に吸着される量が少ないのである。さらに、カラムクロマトグラフィーでは高流速での通液ができないため、高速な精製処理が望めないという重大な問題もある。
また、上記特許文献4に開示された方法はカラムクロマトグラフィーを用いる方法に比べると、迅速な処理が可能であるが、核酸とエンドトキシンとの多孔膜への選択的な吸着性の差が小さいために、核酸の回収率が低く、さらに核酸回収液中のエンドトキシンの残存量も高いという問題がある。弱アニオン交換基が直接表面に固定されている多孔膜への、核酸の動的吸着容量は8g/L(膜体積)程度しか得られないことも、核酸の精製度が低いことの理由と考えられる。さらに、上記特許文献5に開示された方法も高速処理には不適であり、かつ溶液交換のために大量の供給液が必要という問題がある。また核酸やエンドトキシンの分子が膜の表面に堆積し、通液速度を著しく低下させる。
このように、これまでの核酸精製方法では宿主細胞破片やエンドトキシン等を不純物として含む核酸含有溶液から、高速処理で効率的に、かつ医薬的に安全な方法で核酸を精製することは困難である。また、医薬品として有用なレベルにまで核酸を精製するためには、遠心分離工程に続いて複数のプロセスを併用することが必要である。
かかる状況から、本発明が解決しようとする課題は、簡便で、かつ高速処理が可能なプロセスによって、核酸を医薬品レベルにまで精製することが可能であり、しかもスケールアップが容易な、核酸の精製方法を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、グラフト鎖を介してアニオン交換基が表面に固定されている多孔膜を用いることが、核酸の精製において、高速処理により、工業レベルで不純物を除去することに有効であることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の工程を含む、核酸の精製方法:(p)アニオン交換基がグラフト鎖を介して表面に固定されている多孔膜に、核酸含有溶液を通液し、前記多孔膜へ前記核酸を吸着させる工程;および(q)前記多孔膜に吸着した前記核酸を、溶出液を通液して溶出回収する工程、に関する。
本発明はまた、前記核酸含有溶液が、前記多孔膜の細孔径より大きなサイズの不純物および前記多孔膜の細孔径より小さな不純物を含む、上記の核酸の精製方法に関する。
本発明はまた、前記工程(p)における核酸含有溶液の電気伝導度が20mS/cm〜60mS/cmであり、前記工程(q)における溶出液の電気伝導度が90mS/cm〜160mS/cmである、上記の核酸の精製方法に関する。
本発明はまた、前記工程(p)の後であって、前記工程(q)に先立って、さらに以下の工程:(m)前記多孔膜に不純物溶出液を通液して不純物を溶出する工程;を含む、請求項1または2に記載の核酸の精製方法であって、前記工程(m)における不純物溶出液の電気伝導度が20mS/cm〜60mS/cmであり、前記工程(q)における溶出液の電気伝導度が90mS/cm〜160mS/cmである、上記の核酸の精製方法に関する。
本発明はまた、前記アニオン交換基がジエチルアミノ基である、上記の核酸の精製方法に関する。
本発明はまた、前記グラフト鎖がグリシジルメタクリレートの重合体を含む、上記の核酸の精製方法に関する。
本発明はまた、前記多孔膜が、0.1μm〜1.0μmの最大細孔径を有する、上記の核酸の精製方法に関する。
本発明の核酸の精製方法を用いることにより、宿主細胞培養液のような、不純物を含む核酸含有溶液から核酸の回収および精製を有効にかつ迅速に実施することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施の形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の本実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
本実施の形態は、核酸とともに、宿主細胞破片、エンドトキシンなどの不純物を含む核酸含有溶液から核酸を精製する方法であって、アニオン交換基がグラフト鎖を介して表面に固定されている多孔膜を用いて、該核酸含有溶液のろ過を行って、多孔膜に核酸を吸着し、吸着した核酸を溶出液で溶出回収することによる核酸の精製方法である。核酸含有溶液中の不純物のうち、多孔膜に非吸着な不純物は透過液中に回収され、多孔膜に吸着する不純物は一旦多孔膜に吸着した後に不純物溶出液を通液することにより回収され、多孔膜の細孔径よりサイズの大きな宿主細胞破片等の不純物は細孔を透過せず、核酸含有溶液から除去される。
本実施の形態における「核酸」とは、DNA、RNA全般を示す。医薬品の工業的生産という観点からは、E.coliなどから産生されるプラスミドDNAが挙げられるがこれに限定されない。また、その分子量も特に限定されないが、本実施の形態における精製方法の行い易さという観点からは、高分子量の核酸(例えば分子量20万以上)がより好ましい場合がある。
本実施の形態における「核酸含有溶液」に含まれる不純物としては、核酸以外の成分であれば特に限定されない。例えば核酸が前記プラスミドDNAの場合には、宿主細胞破片およびそれに由来する不純物、例えば、HCP(宿主細胞タンパク質)を含む各種タンパク質、ウイルスおよびエンドトキシンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
本実施の形態において用いられる「アニオン交換基がグラフト鎖を介して表面に固定されている多孔膜」とは、基材となる多孔質体およびその細孔の表面に、グラフト鎖が固定され、さらに該グラフト鎖にアニオン交換基が固定されている多孔膜である。アニオン交換基がグラフト鎖を介して、多孔膜表面に固定されていることで、核酸の吸着量が著しく増加する。
多孔膜の基材は、特に限定されないが、機械的性質の保持という観点から、ポリオレフィン系重合体から構成されていることが好ましい。ポリオレフィン系重合体の例としては、例えば、エチレン、プロピレン、ブチレンおよびフッ化ビニリデンなどのオレフィンの単独重合体、前記オレフィンの2種以上の共重合体、または1種もしくは2種以上の前記オレフィンとパーハロゲン化オレフィンとの共重合体などが挙げられる。これらの重合体の2種以上の混合物であってもよい。パーハロゲン化オレフィンの例としては、テトラフルオロエチレンおよびクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられる。
これらの中でも、機械的強度に特に優れ、かつ高い吸着容量が得られる素材であるという観点から、多孔膜の基材として、ポリエチレンまたはポリフッ化ビニリデンが好ましく、ポリエチレンがより好ましい。
本実施の形態において、「グラフト鎖」とは、上記の多孔質の基材表面に結合した、基材と同種または異種の分子鎖である。多孔膜の表面および細孔に、グラフト鎖を導入し、さらに、該グラフト鎖にアニオン交換基を固定する方法としては、限定されるものではないが、例えば、特開平2−132132号公報に開示される方法が挙げられる。
グラフト鎖としては、例えば、グリシジルメタクリレート、酢酸ビニル、ヒドロキシプロピルアセテートまたはこれらのいずれか2種以上の重合体を含む分子鎖が挙げられるが、アニオン交換基を導入しやすいことから、グリシジルメタクリレートまたは酢酸ビニルの重合体が好ましく、グリシジルメタクリレートの重合体がより好ましい。多孔膜に対するグラフト鎖の結合率(グラフト率)は、後述の実施例等に記載の手法を用いて測定することができ、より高い吸着容量および多孔膜の耐久性をともに確保するという観点から、好ましくは20%〜200%、より好ましくは20%〜150%、更に好ましくは30%〜70%である。
アニオン交換基は、核酸含有溶液中の核酸を吸着することができれば特に制限されない。例えば、アニオン交換基としては、特に限定されないが、ジエチルアミノ基(DEA、Et2N−)、四級アンモニウム基(Q、R3+−)、四級アミノエチル基(QAE、R3+−(CH22−)、ジエチルアミノエチル基(DEAE、Et2N−(CH22−)、ジエチルアミノプロピル基(DEAP、Et2N−(CH23−)などが挙げられる。ここで、Rは、特に限定されず、同一のNに結合するRが同一または異なっていてもよく、好適には、アルキル基、フェニル基、アラルキル基などの炭化水素基を表す。四級アンモニウム基としては、例えば、トリメチルアミノ基(グラフト鎖に導入されたトリメチルアンモニウム基、Me3+−)などが挙げられる。多孔膜に導入されたグラフト鎖への化学的な固定が容易であり、高い吸着容量が得られるという観点からは、アニオン交換基としてはDEAおよびQが好ましく、DEAがより好ましい。
アニオン交換基のグラフト鎖への固定の例として、グラフト鎖がグリシジルメタクリレートの重合体である場合、この重合体が有するエポキシ基を開環し、ジエチルアミンなどのアミンおよびジエチルアンモニウムまたはトリメチルアンモニウムなどのアンモニウム塩を付加することにより、アニオン交換基をグラフト鎖に固定することができる。グラフト鎖に対するアニオン交換基の置換率は、後述の実施例等に記載の手法を用いて測定することができ、より高い吸着容量を得るという観点から、好ましくは20%〜100%、より好ましくは50%〜100%、更に好ましくは70%〜100%である。
多孔膜の最大細孔径は、核酸含有溶液中の不純物を除去し、かつ高い透過流速を得るために、好ましくは0.1μm〜1.0μmであり、より好ましくは0.1μm〜0.8μmであり、さらに好ましくは0.2μm〜0.6μmである。
多孔膜中の細孔の占める体積である空孔率は、多孔膜の形状を保持しかつ通液時の圧損が実用上問題のない程度であれば、特に限定されないが、好ましくは5%〜99%であり、より好ましくは10%〜95%であり、さらに好ましくは30%〜90%である。
上記細孔径および空孔率の測定は、Marcel Mulder著「膜技術」(株式会社アイピーシー)などに記載されているような、当業者にとって公知の方法により行うことができる。例えば、電子顕微鏡による観察、バブルポイント法、水銀圧入法、透過率法などの測定方法が挙げられる。
多孔膜の形態は、溶液を通液することが可能な形態であれば特に限定されず、例えば、平膜、不織布、中空糸膜、モノリス、キャピラリー、円板または円筒状などの形態が挙げられる。これらの形態の中でも、製造のし易さ、スケールアップ性、モジュール成型した際の膜のパッキング性などの観点からは、中空糸膜が好ましい。
本実施の形態において、中空糸多孔膜とは、中空部分を有する円筒状または繊維状の多孔膜であり、中空糸の内層と外層が貫通孔である細孔によって連続しており、その細孔によって内層から外層、あるいは外層から内層に、液体または気体が透過する性質を有する多孔膜を意味する。中空糸の外径および内径は、物理的に多孔膜が形状を保持することができ、かつモジュール成型可能であれば、特に限定されない。
本実施の形態による核酸の精製方法は、上記の多孔膜に核酸含有溶液を通液し、多孔膜に核酸を吸着する工程(p)を含む。該工程(p)においては、核酸含有溶液中の不純物であって多孔膜の孔径より大きな不純物の除去も行われる。ここで、核酸含有溶液のpHは4〜9.5が好ましく、pH5〜9がより好ましい。
核酸の等電位点(pI)は通常3以下であるため、広いpH範囲および比較的高い塩濃度(電気伝導度)の核酸含有溶液を上記多孔膜に通液すると、多孔膜のアニオン交換基に核酸が吸着する。これに対し、宿主細胞破片に代表される不純物のpIは3〜8の範囲にあるため、核酸に比べて、上記多孔膜のアニオン交換基に不純物が吸着するための、通液させる溶液のpHおよび塩濃度(電気伝導度)の範囲はより限定される。これは不純物がアルブミン、グロブリンなどの一般的な生体タンパク質の場合も同様である。
また、核酸はその分子量が数十万から数千万と極めて高いために、アニオン交換基に吸着する際の吸着点が、分子量の小さな不純物(例えばエンドトキシン)よりも多い。このため、核酸とエンドトキシンのpIが同程度であっても、核酸の方がより高い塩濃度(電気伝導度)の核酸含有溶液の通液で、多孔膜のアニオン交換基に吸着可能であるという性質がある。
さらに、アニオン交換基への吸着は、カラムクロマトグラフィーの樹脂への吸着のような、微細孔への拡散浸透による吸着ではないため、核酸のような分子サイズの大きな目的物を吸着する場合には、アニオン交換基が固定された多孔膜は、より優れた吸着性を示す。
これらの特性は、アニオン交換基がグラフト鎖を介して、多孔膜の細孔表面に固定されている場合に特に顕著となり、核酸の多孔膜への動的吸着容量は30g/L(膜体積)を超える値が得られる。これはグラフト鎖により、核酸分子へのアニオン交換基の吸着点の数がより増加することによると考えられる。
上記の工程(p)において多孔膜に吸着した核酸を、溶出液を通液して溶出回収する工程(q)を行うことにより、核酸を精製することができる。溶出液は、不純物を含まないものであればその組成は特に制限されず、技術分野で通常用いられる組成の溶出液を用いることができる。例えば高塩濃度の溶液や、水酸化ナトリウム溶液のような高pHの溶液を用いることもできる。溶出液の電気伝導度は、好ましくは90mS/cm〜160mS/cm(NaClでは約1.0M〜2.2M)であり、より好ましくは100mS/cm〜150mS/cm(NaClでは約1.2M〜2.0M)である。
上記の工程(p)および(q)を含む核酸の精製方法は、大別すれば:
(a)核酸含有溶液の塩濃度(電気伝導度)を、不純物が多孔膜に吸着しない程度にまで増加させ、多孔膜へ核酸を吸着させると同時に、ろ液に含まれる非吸着成分として不純物を除去する工程(p)の後、溶出液を通液して核酸を溶出回収する工程(q)を行う方法;および
(b)核酸含有溶液の塩濃度(電気伝導度)を、不純物の少なくとも一部および核酸がともに多孔膜に吸着する濃度として、不純物および核酸をともに多孔膜に吸着させ、吸着しない不純物成分をろ液として除去する工程(p)の後、工程(p)で多孔膜に吸着した不純物のみが溶出する塩濃度(電気伝導度)の不純物溶出液を通液することにより、不純物を溶出し、ろ液として除去する工程(m)を行い、その後、核酸が溶出する塩濃度(電気伝導度)の溶出液を通液して核酸を溶出回収する工程(q)を行う方法;
の2種類に分けられる。(a)の方法は、例えば核酸よりも大きな等電位点を有する宿主細胞破片などの除去に特に有効であり得る。(b)の方法は、例えば核酸とより近い等電位点を有するエンドトキシンなどの除去に特に有効であり得る。
(a)の方法の場合、工程(p)における核酸含有溶液の塩濃度は、好ましくは電気伝導度で20mS/cm〜60mS/cmの範囲(NaClでは約0.2M〜0.6Mの範囲)であり、より好ましくは電気伝導度で30mS/cm〜50mS/cmの範囲(NaClでは約0.3M〜0.5Mの範囲)である。
(b)の方法の場合、工程(p)における核酸含有溶液の塩濃度は、好ましくは電気伝導度で0mS/cm〜30mS/cmの範囲(NaClでは約0Mから0.3Mの範囲)であり、より好ましくは電気伝導度で1mS/cm〜20mS/cmの範囲(NaClでは約0Mから0.2Mの範囲)である。また、工程(m)における不純物溶出液の塩濃度は、好ましくは電気伝導度で20mS/cm〜60mS/cmの範囲(NaClでは約0.2M〜0.6Mの範囲)であり、より好ましくは電気伝導度で30mS/cm〜50mS/cmの範囲(NaClでは約0.3M〜0.5Mの範囲)である。工程(m)における不純物溶出液の組成は特に制限されず、技術分野で通常用いられる組成の溶出液を用いることができる。
このように、多孔膜に通液する溶液の電気伝導度を制御し、また、異なる電気伝導度の溶液を通液する順序を制御することによって、核酸を簡便かつ高い精製度で精製することができる。本実施の形態において、溶液の電気伝導度の調節方法は当業者に公知の手法を用いて行うことができ、典型的には溶液中の塩濃度を変化させることにより行うことができる。電気伝導度の測定方法は例えば市販の導電率計を用いて、当業者に公知の手法を用いて行うことができる。
上記に記載した方法で核酸を溶出回収することにより、精製された目的の核酸を得ることができる。また、動物細胞培養液からの抗体の精製プロセスのような、核酸が不純物となるプロセスにおいても、本実施の形態の方法および多孔膜を用い、本明細書の記載を参照することにより、容易に核酸のみを除去することが可能である。
以下、参考例、実施例および比較例(本明細書中において、単に「実施例等」ともいう。)に基づいて本実施の形態をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は以下の実施例のみに限定されない。
[参考例1] アニオン交換基がグラフト鎖を介して表面に固定された多孔膜モジュールの作成
(i)中空糸多孔膜へのグラフト鎖の導入
外径3.0mm、内径2.0mm、下記(iv)に記載のバブルポイント法で測定した最大細孔径が0.3μmのポリエチレン製中空糸多孔膜を密閉容器に入れて、容器内の空気を窒素で置換した。その後、容器の外側からドライアイスで冷却しながら、γ線200kGyを照射し、ラジカルを発生させた。得られたラジカルを有するポリエチレン製中空糸多孔膜をガラス反応管に入れて、200Pa以下に減圧することにより、反応管内の酸素を除いた。ここに40℃に調整したグリシジルメタクリレート(GMA)3体積部、メタノール97体積部よりなる反応液を、中空糸多孔膜の20質量部に注入した後、12分間密閉状態で静置してグラフト重合反応を施し、中空糸多孔膜にグラフト鎖を導入した。なお、GMAおよびメタノールよりなる反応液は予め窒素でバブリングして、反応液内の酸素を窒素置換した。
グラフト重合反応後、反応管内の反応液を捨てた。次いで、反応管内にジメチルスルホキシドを入れて中空糸多孔膜を洗浄することにより、残存したグリシジルメタクリレート、そのオリゴマーおよび中空糸多孔膜に固定されなかったグラフト鎖を除去した。洗浄液を捨てた後、さらにジメチルスルホキシドを入れて2回洗浄を行った。次いでメタノールを用いて同様にして洗浄を3回行った。洗浄後の中空糸多孔膜を乾燥し、重量を測定したところ、中空糸多孔膜の重量はグラフト鎖導入前の138%であり、基材重量に対するグラフト鎖の重量の比として定義されるグラフト率は38%であった。
このグラフト率から、下記式(III)を用いて、基材ポリエチレンの骨格単位であるCH2基(分子量14)のモル数に対する導入されたGMA(分子量142)のモル数は3.75%であると算出された。
導入GMAのモル数%=(グラフト率/142)/(100/14)×100
・・・(III)
固体NMR法により、グラフト反応後の中空糸多孔膜中のポリエチレン骨格単位CH2基のモル数と、グラフト鎖を構成するGMAに特有なエステル基(COO基)のモル数の比を測定した。測定は、グラフト反応後の中空糸多孔膜を凍結粉砕した粉末サンプル0.5gを用いて、Bruker Biospin社製DSX400を使用し、核種を13Cとして、High Power Decoupling法(HPDEC法)の定量モードにより、待ち時間100s、積算1000回の条件で、室温下で行った。
得られたNMRスペクトルのエステル基に対応するピーク面積と、CH2基に対応するピーク面積との比が、GMAとCH2基のモル数の比に対応することから、測定結果よりCH2基のモル数に対する導入されたGMAのモル数を算出したところ、3.8%の値が得られた。これは上記グラフト率38.5%に相当し、グラフト反応後のサンプルを固体NMR法で測定することにより、グラフト率が得られることが示された。
(ii)アニオン交換基(3級アミノ基)のグラフト鎖への固定
乾燥したグラフト鎖を導入した中空糸多孔膜をメタノールに10分以上浸漬して膨潤させた後、純水に浸漬して水置換した。ジエチルアミン50体積部、純水50体積部の混合溶液よりなる反応液を、グラフト反応後の中空糸多孔膜に対して20質量部、ガラス反応管に入れ、30℃に調整した。ここにグラフト鎖を導入した中空糸多孔膜を挿入し、210分間静置して、グラフト鎖のエポキシ基をジエチルアミノ基に置換することにより、アニオン交換基としてジエチルアミノ基を有する中空糸多孔膜を得た。得られた中空糸多孔膜は外径3.3mm、内径2.1mmであり、中空糸多孔膜においてグラフト鎖の有するエポキシ基の80%がジエチルアミノ基によって置換されていた。
置換率Tはエポキシ基のモル数N2のうち、ジエチルアミノ基に置換されたモル数N1として下記式(IV)を用いて算出した。
T=100×N1/N2
=100×{(w2−w1)/M1}/{w1(dg/(dg+100))/M2
・・・(IV)
式(IV)中、M1はジエチルアンモニウムの分子量(73.14)、w1はグラフト重合反応後の中空糸多孔膜の重量、w2はジエチルアミノ基置換反応後の中空糸多孔膜の重量、dgはグラフト率、M2はGMAの分子量(142)である。
固体NMR法により、上記と同様の方法で、ジエチルアミノ基を導入した中空糸多孔膜中の、ポリエチレン骨格単位CH2基のモル数に対する、GMAに特有なエステル基のモル数の比を測定したところ、3.75%という値が得られた。これはグラフト率38.5%に対応し、この結果よりジエチルアミノ基の導入によるグラフト率の変化はないことが確認された。
(iii)アニオン交換基がグラフト鎖を介して固定された中空糸多孔膜モジュールの作製
(ii)で得られた、アニオン交換基としてジエチルアミノ基をグラフト鎖を介して固定した中空糸多孔膜3本を束ね、中空糸多孔膜の中空部を閉塞しないようにエポキシ系ポッティング剤で両末端をポリスルホン酸製モジュールケースに固定して、アニオン交換基がグラフト鎖を介して固定された中空糸多孔膜モジュールを作製した。得られたモジュールの内径は0.9cm、長さは約3.3cm、モジュールの内容積は約2mL、モジュール内に占める中空糸多孔膜の有効体積は0.85mL、中空部分を除いた中空糸多孔膜のみの体積は0.53mLであった。これを、以下の実施例等において、評価モジュールとして用いた。
(iv)バブルポイント法
基材としての中空糸多孔膜の最大細孔径を、バブルポイント法を用いて測定した。長さ8cmの中空糸多孔膜の一方の末端を閉塞し、他方の末端に圧力計を介して窒素ガス供給ラインを接続した。この状態で窒素ガスを供給してライン内部を窒素に置換した後、中空糸多孔膜をエタノールに浸漬した。この時、エタノールがライン内に逆流しないように極僅かに窒素で圧力をかけた状態で、中空糸多孔膜を浸漬した。中空糸多孔膜を浸漬した状態で、窒素ガスの圧力をゆっくりと増加させ、中空糸多孔膜から窒素ガスの泡が安定して出始めた圧力Pを記録した。これより、最大細孔径をd、表面張力をγとして、下記式(V)に従って、中空糸多孔膜の最大細孔径を算出した。
d=C1γ/P・・・(V)
式(V)中、C1は定数である。エタノールを浸漬液としたときのC1γ=0.632(kg/cm)であり、上式にP(kg/cm2)を代入することにより、最大細孔径d(μm)を求めた。
[参考例2] 電気伝導度の異なるDNA溶液の調製
和光純薬製DNA(デオキシリボ核酸ナトリウム、サケ精巣由来、粉末、分子量30万〜900万)0.2gを2000mLの20mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液に溶解し、0.1g/Lの塩を含まないpH8.0のDNA溶液2000mLを調整した。この溶液の電気伝導度は1.15mS/cmであった。このDNA溶液200mLを小分けし、ここにNaCl(和光純薬製)17.53gを添加して塩濃度1.5MのDNA溶液を調整した。この溶液の電気伝導度は114.1mS/cmであった。同様にして、200mLに小分けした塩を含まないDNA溶液を5本用意し、そのうち4本にはNaClを14.02g、10.52g、7.01gまたは3.51gを添加して、それぞれ塩濃度が1.2M、0.9M、0.6Mおよび0.3Mの溶液を調整した。これらの電気伝導度はそれぞれ95.2mS/cm、74.95mS/cm、62.7mS/cmおよび28.5mS/cmであった。このようにして電気伝導度が1.15mS/cm〜114.1mS/cmの0.1g/LのDNA溶液を得た。
[参考例3] pHの異なるDNA溶液の調整
上記参考例2で調製した20mM Tris−HCl(pH8.0)、0.1g/LのDNA溶液を200mLに小分けしたものを2本用意し、これらに1N NaOH水溶液を攪拌しながら滴下して、それぞれpH9.0およびpH8.5に調整した。同様にして200mLに小分けしたDNA溶液を更に2本用意し、それぞれここに塩酸を攪拌しながら滴下して、pH7.5およびpH7.0に調整した。
和光純薬製DNA(デオキシリボ核酸ナトリウム、サケ精巣由来、粉末)0.1gを1000mLの25mM Citrate−NaOH(pH5.0)緩衝液に溶解し、0.1g/Lの塩を含まないpH5.0のDNA溶液2000mLを調整した。この溶液を200mL小分けしたものを2本用意し、これらに1N NaOH水溶液を攪拌しながら滴下して、それぞれpH5.5およびpH6.0に調整した。
このようにしてpH5.0〜pH9.0の0.1g/LのDNA溶液を得た。
[参考例4] DNA動的吸着容量の測定
上記の参考例2および3で得られた、電気伝導度およびpHの異なる、0.1g/LのDNA溶液を、参考例1で作成した評価モジュールにそれぞれ透過させた。DNA溶液の濃度Q、評価モジュールが破過した時点までに透過させたDNA溶液の体積VD、および評価モジュール内の中空糸多孔膜VMの体積から、下記式(VI)を用いて動的吸着容量Aを算出した。
A=Q×VB/VM ・・・(VI)
なお、中空糸多孔膜の体積とは、中空部分を除いた膜体積であり、モジュール内の中空糸多孔膜の体積VMは、中空糸多孔膜の外径をOD、内径をID、有効長をL、モジュール内の中空糸多孔膜の本数をnとしたとき、以下の式(VII)で算出される。
M=π×(OD2−ID2)×L×n/4・・・(VII)
評価モジュールが破過した時点とは、モジュール透過後の透過液中のDNA濃度が、モジュール透過前のDNA溶液の濃度の10%である0.01g/Lを超えた時点のことをいう。溶液の透過は評価モジュール内の中空糸多孔膜の内側から外側に向かって流速2mL/minにて通液した。評価はGEヘルスケアバイオサイエンス製AKTAexplorer100を用い、評価液のUV吸光度および電気伝導度を測定した。
[参考例5] 不純物を含むDNA溶液の作成
上記参考例2で得られたpH8.0、電気伝導度1.15mS/cm、濃度0.1g/LのDNA溶液200mLに、不純物としてBSA(SIGMA製、Albumin from bovine serum)を0.2g添加し、DNA濃度が0.1g/L、不純物であるBSA濃度が1g/Lの溶液を作成した。BSAの通常の分子量は、67500である。
[参考例6] SDS−PAGEによるタンパク質の分析
溶液中のタンパク質を分析するためにSDS−PAGEを用いた。分析に用いる溶液10μLを同量のサンプル処理液(第一化学薬品株式会社製、トリスSDSサンプル処理液またはトリスSDSβMEサンプル処理液)と混合し、100℃で5分間熱処理した。得られたサンプルを、マイクロピペットを用いて電気泳動用ゲルプレート(第一化学薬品株式会社製、マルチゲルIIミニ)に1ウェルにつき10μL適用し、泳動用バッファー(第一化学薬品株式会社製、SDS−トリス−グリシン泳動バッファーを10倍希釈して使用)を満たした電気泳動槽(和光純薬株式会社製、EasySeparatorTM)に挿入した。30mAの定電流で1時間泳動させて、溶液中のタンパク質を分離した。泳動後のゲルプレートは染色試薬(フナコシ株式会社製、InstantBlue、または第一化学薬品株式会社製、2D−銀染色試薬−II)を用いて染色し、タンパク質のバンドを確認した。
[実施例1]
参考例2で得られたpH8.0、電気伝導度1.15mS/cm、濃度0.1g/LのDNA溶液を、参考例4の方法に従って、参考例1の評価モジュールに通液してチャージした。189mL通液したところでDNAの破過が確認されたため通液を停止した。これより得られた動的吸着容量は36mg/mLであった。DNA溶液の通液停止後、20mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液20mLを評価モジュールに通液して非吸着のDNAを洗浄した後、電気伝導度148mS/cmの2M NaCl水溶液10mLを通液して、吸着したDNAを溶出回収した。溶出液中のDNA濃度をinvitrogen製、Quant−iTTM dsDNA HS Assay Kitを用いて処理した後、QubitTMフルオロメーターを用いて測定したところ、2.0mg/mLであり、核酸が高濃度で回収された。
[実施例2]
参考例5で得られたpH8.0、電気伝導度1.15mS/cm、濃度0.1g/LのDNAと濃度1.0g/LのBSAを含む溶液に、NaClを3.51g添加して、塩濃度0.3M、電気伝導度28.5mS/cmの溶液を調整し、これを実施例1と同様に評価モジュールに150mL通液してチャージした。通液中のろ過液のUV吸光度の値は150mAUであり、これは1.0g/LのBSA溶液の吸光度に等しいことから、BSAはモジュールに非吸着でろ液中に含まれ、DNAはモジュールに全吸着していると考えることができる。溶液の通液停止後、20mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液20mLを評価モジュールに通液して洗浄した後、電気伝導度148mS/cmの2M NaCl水溶液10mLを通液して、吸着したDNAを溶出回収した。得られた溶出液を参考例6に従ってSDS−PAGEにより評価したところ、BSAのバンドは見られなかったことから、溶出液中のDNAが精製されていることが確認された。溶出液中のDNA濃度を実施例1と同様にして測定したところ、1.4mg/mLであり、核酸が高濃度で回収され、回収率は93%だったことが示された。
[実施例3]
参考例5で得られたpH8.0、電気伝導度1.15mS/cm、濃度0.1g/LのDNAと濃度1.0g/LのBSAを含む溶液を実施例2と同様にして評価モジュールに150mL通液してチャージした。通液中のろ過液のUV吸光度の値は通液約50mLまでは0mAUであったが、その後150mAUにまで上昇した。150mAUの値は1.0g/LのBSA溶液の吸光度に等しいことから、通液約50mLまではBSAおよびDNA共に評価モジュールに全吸着し、その後破過したBSAが非吸着でろ液中に含まれ、DNAは全吸着していると考えることができる。通液50mLから150mLまでのろ過液を採集し、ろ過液サンプルとした。溶液の通液停止後、20mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液20mLを評価モジュールに通液して洗浄した後、電気伝導度29mS/cmの0.3M NaCl水溶液20mLを通液して、溶出液1を回収した。再度20mM Tris−HCl(pH8.0)緩衝液20mLを評価モジュールに通液して洗浄した後、電気伝導度148mS/cmの2M NaCl水溶液10mLを通液して、溶出液2を回収した。得られたろ過液サンプルおよび溶出液1を参考例6に従ってSDS−PAGEにより評価したところ、BSAのバンドのみが見られた。これより、チャージ中にはDNAは全吸着し、BSAは破過後にろ液中に排出されていること、および溶出液1中にはBSAのみが含まれていることが確認された。また、同様にして参考例6に従って溶出液2をSDS−PAGEにより評価したところ、BSAのバンドは見られず、DNAのバンドのみが見られた。これより、溶出液2中には精製されたDNAのみが含まれることが確認された。溶出液2中のDNA濃度を実施例1と同様にして測定したところ、1.35mg/mLであり、核酸が高濃度で回収され、回収率は90%であったことが示された。
[実施例4]
(2)で得られた異なる電気伝導度の、pH8.0、濃度0.1g/LのDNA溶液を実施例1と同様にして評価モジュールに通液してチャージした。電気伝導度が95.2mS/cm、74.95mS/cm、62.7mS/cmおよび28.5mS/cmのDNA溶液を通液して、破過した際の通液量はそれぞれ、1.6mL、3.5mL、152.4mLおよび175.1mLであった。これより、電気伝導度が95.2mS/cmおよび74.95mS/cmの溶液では、DNAは殆ど吸着しておらず、62.7mS/cmおよび28.5mS/cmの溶液でのDNAの動的吸着容量は、それぞれ29mg/mLおよび33mg/mLであることが示された。これらの結果から、電気伝導度が約60mS/cm以下の溶液であれば、DNAは評価モジュールに動的吸着容量が約30mg/mLで吸着することが確認された。
[実施例5]
参考例3で得られた異なるpHの、濃度0.1g/LのDNA溶液を実施例1と同様にして、評価モジュールに通液してチャージした。pHがpH5.0、pH5.5、pH6.0、pH7.0、pH7.5、pH8.5およびpH9.0のDNA溶液を通液して、破過した際の通液量はそれぞれ、172mL、173mL、198mL、177mL、157mL、182.6mLおよび142.5mLであった。これより、それぞれのpH値の溶液でのDNAの動的吸着容量は、それぞれ32mg/mL、32mg/mL、35mg/mL、31mg/mL、29mg/mL、34mg/mLおよび27mg/mLであることが示された。これらの結果から、少なくともpH値が5〜9の範囲の溶液であれば、DNAは評価モジュールに動的吸着容量が約30mg/mLで吸着することが確認された。
[比較例1]
カラムクロマトグラフィーによるDNAのカラムへの吸着量を評価するために、GEヘルスケアバイオサイエンス製のアニオン交換カラム、HiTrapQ FF1mLを用い、これに参考例2で得られたpH8.0、電気伝導度1.15mS/cm、濃度0.1g/LのDNA溶液を、流速1mL/minで実施例1と同様にしてカラムに通液してチャージした。その結果、5.0mLまで通液したところで破過が確認され、動的吸着容量は0.5mg/mL以下であった。この結果から、カラムクロマトグラフィーを用いた場合のDNAのカラムへの吸着量は、実施例のアニオン交換基がグラフト鎖を介して中空糸多孔膜を用いた場合に比べて極めて低く、大量の核酸精製プロセスには不向きであることが示された。
アニオン交換基がグラフト鎖を介して固定した多孔膜に、核酸を含む溶液を通液する方法によって、容易に核酸を精製することができる。この方法は、従来のカラムクロマトグラフィーを用いる方法に比べて、より高い核酸の吸着量と高流速での溶液の通液が可能なため、高速での処理が可能であり、スケールアップも容易であることから、工業レベルで医薬品を製造する際の核酸の精製にも適するという産業上の利用可能性を有する。

Claims (4)

  1. (p)アニオン交換基がグラフト鎖を介して表面に固定されている多孔膜に、前記多孔膜の細孔径より大きなサイズの不純物および前記多孔膜の細孔径より小さな不純物を含む核酸含有溶液を通液し、前記多孔膜へ前記核酸を吸着させる工程と、
    (m)前記多孔膜に不純物溶出液を通液して前記不純物を溶出する工程と、
    (q)前記多孔膜に吸着した前記核酸を、溶出液を通液して溶出回収する工程と、
    を含む、核酸の精製方法であって、
    前記工程(p)における核酸含有溶液の電気伝導度が0mS/cm〜30mS/cmであり、
    前記工程(m)における不純物溶出液の電気伝導度が20mS/cm〜60mS/cmであり、
    前記工程(m)は、前記工程(p)の後であって、前記工程(q)に先立って行われる、核酸の精製方法。
  2. 記工程(q)における溶出液の電気伝導度が90mS/cm〜160mS/cmである、請求項に記載の核酸の精製方法。
  3. 前記アニオン交換基がジエチルアミノ基である、請求項1または2に記載の核酸の精製方法。
  4. 前記グラフト鎖がグリシジルメタクリレートの重合体を含む、請求項1〜のいずれかに記載の核酸の精製方法。
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