以下、この発明をその実施の形態を示す図面に基づいて具体的に説明する。
<実施の形態1>
図1は、本発明の実施の形態1に係る光受信装置100の構成を示す、ブロック図である。当該光受信装置100は、位相変調方式(たとえば、DPSK方式)の光通信システムに適用可能な光受信装置である。
図1に示す光受信装置100(具体的には、非対称マッハツェンダー干渉計1)は、DPSK方式で変調された光信号(位相変調光信号と把握できる)を、受信する。なお、以下の説明では、非対称マッハツェンダー干渉計1を、単にMZI1と称する。
MZI1には、一方の光導波路と他方の光導波路とが形成されている。MZI1では、一方の光導波路に対して他方の光導波路の物理的な長さを長くすることによって、2つの光導波路間に光路長差が設けられている。
MZI1では、位相変調された光信号を、2分岐させ、上記二つの光導波路の伝播遅延時間に1シンボル分の差を持たせる。そして、1シンボル分の光位相差が生じている二つの光信号を、MZI1において干渉させる。これにより、MZI1内に入射した位相変調された光信号は、強度変調された光信号(強度変調光信号と把握できる)に変換される。MZI1は、当該変換後の光信号(強度変調光信号)を出力する。
このことから、MZI1は、位相変調光信号を強度変調光信号に変換する変調方式変換部であると、理解できる。
図2,3は、MZI1の光透過特性を示した図である。
MZI1では、1シンボル分の位相差を有する二つの光信号を干渉させる。そして、位相変化がなければ、MZI1は、ポート1から信号光を出力する。他方、位相変化があれば、MZI1は、ポート2から信号光を出力する。そのため、信号光のキャリア周波数と、MZI1の光透過特性の最大または最小になる周波数とを、一致させる必要がある。
図2の例では、光透過特性が最大となる点がキャリア周波数と一致している。この例の場合、位相反転が起きていない場合は、ポート1から信号光が出力され、ポート2からは信号光が出力されない。
また、光透過特性が最小となる点がキャリア周波数と一致している場合には、位相変化が起きている場合に、ポート1から信号光が出力される。他方、当該場合に、位相変化がおきていなければ、MZI1は、ポート2から信号光を出力する。つまり、当該場合と図2の場合とを比較すると、動作と論理が反転することになる。
また、例えば図3のように、キャリア周波数がMZI1の光透過特性の最大となる周波数と最小となる周波数の中間の周波数になった場合を、想定する。つまり、当該場合とは、MZI1の光透過特性の1周期を360度として、光透過特性の最大となる点から90度ずれた周波数と、キャリア周波数とが一致する場合である。当該場合には、位相変化が起きていても起きていなくても、ポート1およびポート2から、同時に、入力信号光の半分が各々出力されてしまう。このような2つのポートからの光信号の同時出力は、信号光の強度の低下招き、結果として受信感度が悪化する。
当該受信感度の悪化を回避するために、MZI1の光透過特性を常に制御し、光透過特性が最小または最大となる点とキャリア周波数とを一致させる必要がある。光透過特性が最小または最大となる点とキャリア周波数とを一致させる点を、最適点と称する。また、当該最適点時における制御バイアス値を、最適バイアス点と称する。
たとえば石英系のMZI1の場合には、光導波路上に形成されたヒータを加熱することにより、光導波路の屈折率を変化させ、2つの光導波路の光路長差を変化させることができる。当該光路差の変化は、MZI1の光透過特性の周波数シフトと等価である。したがって、光導波路に対して(より具体的に、当該光導波路に対して配設されているヒータについて)へ印加する電力を制御することにより、MZI1の光透過特性の最大値あるいは最小値にキャリア周波数を一致させることができる。
上記光透過特性の周波数シフトは、石英系のMZI1に限ったものではない。たとえばニオブ酸リチウム(LiNbO3)を用いたMZI1の場合には、光導波路に対して電界を加えると、光導波路の屈折率が変化する。これによっても、上記と同じ効果が得られる。
MZI1の材料や構成の違いによって、光透過特性の周波数シフト制御の動力は、電力であったり電界であったりする。本願発明では、MZI1に印加される当該動力を、総称して、バイアスと称する。
さて、MZI1から出力された強度変調光信号は、MZI1の後段のツインフォトダイオード(ツインPD)2に入力される。当該ツインPD2では、当該強度変調光信号を光電変換する。したがって、ツインPD2は、光電変換部と把握できる。ツインPD2から出力される電気信号は、ツインPD2の後段のクロック再生部10および包絡線検波部5へ、各々送信される。
クロック再生部10では、当該入力してきた電気信号に同期するクロックを生成する。そして、予め設定されている閾値レベルと当該生成されたクロックとを用いて、入力電気信号を再生する。つまり、クロック再生部10は、生成されたクロックに同期して、入力電気信号の各信号と、閾値レベルとを比較する。そして、たとえば、比較対象の信号が閾値レベル以上である場合には、当該比較対象信号を「1」としてデータ再生する。他方、比較対象の信号が閾値レベルより小さい場合には、当該比較対象信号を「0」としてデータ再生する。
当該、再生された各信号は、データとしてフレーム処理部11へと送信される。また、上記生成されたクロックをフレーム処理部11におけるデータ処理の際に用いるために、当該クロックも、フレーム処理部11へと送信される。
フレーム処理部11では、FEC(Forward Error Correction)演算により、入力データのエラー訂正が実施される。当該訂正処理後、フレーム処理部11では、一連の入力データから、フレーム同期パターンを検出する。そして、フレーム処理部11は、当該検出したフレーム同期パターンを用いて、複数の「1」、「0」信号から成る当該一連の入力データから、一塊単位である「フレーム」を検出(認識)する。
さて、前述の通り、MZI1に印加されるバイアスは、常に上記最適点に制御する必要がある。そこで、以下の回路ブロック構成3,4,5,6,7,8,9,13が必要となる。これに対して、回路ブロック構成10,11,12は、上記最適点の成否を確認する回路ブロックである。
ディザ信号生成部(変調信号生成部と把握できる)3では、MZI1の光透過特性を変調させる低周波の変調信号(ディザ信号と称する)を生成する。そして、加算器9において、生成されたディザ信号とバイアスとが重畳される。そして、当該重畳後の信号は、ドライバー部4を介して、MZI1に印加される。ここで、入力信号を増幅して出力することができるドライバー部4は、MZI1に必要なバイアスレベルに応じて、削除することもできる。
包絡線検波部5では、上記ツインPD2からの出力信号が入力される。包絡線検波部5は、受信した出力信号から、包絡線検波によって、重畳されたディザ信号を検出する。つまり、包絡線検波部5は、ツインPD2から出力される信号から、ディザ信号生成部3で生成されたディザ信号に対応する信号を検出する。
図4、5に、印加したディザ信号と各バイアス点における検波後のディザ信号との関係を示す。
図4に示すように、最適バイアス点の場合には、印加するディザ信号の2倍の周波数の信号が、包絡線検波部5において検出される。他方、図5に示すように、最適バイアス点からずれている場合には、印加したディザ信号と同じ周波数の信号が、包絡線検波部5において検出される。
同期検波部6では、包絡線検波部5で検出した信号を、印加されたディザ信号(ディザ信号生成部3で生成され、加算器9で重畳されたディザ信号)を用いて、同期検波する。そして、同期検波部6では、当該同期検波の結果を誤差信号として出力する。
誤差信号とは、包絡線検波部5において検出される信号の周波数において、ディザ信号生成部3で生成されたディザ信号の周波数成分の割合を示す。
したがって、図5のように最適バイアス点からずれている場合には、印加するディザ信号と包絡線検波部5において検出される信号の周波数とは、同じである。この場合には、包絡線検波部5において検出される信号の周波数は、ディザ信号生成部3で生成されたディザ信号の周波数成分のみで形成されるので、同期検波部6は、誤算信号として絶対値が最も大きな値を出力する。
これに対して、図4のように最適バイアス点の場合には、包絡線検波部5において検出される信号の周波数は、印加するディザ信号の周波数の2倍である。この場合には、包絡線検波部5において検出される信号の周波数は、ディザ信号生成部3で生成されたディザ信号の周波数成分を全く含まないので、同期検波部6は、誤算信号として零の値を出力する。
上記誤差信号は、バイアス制御部8に送信される。バイアス制御部8では、当該誤差信号を用いて、当該誤差信号が零に収束する方向のバイアスを生成する。つまり、誤差信号が零になるように、バイアス制御部8によりバイアスの制御が実施される。
当該生成されたバイアスは、回路ブロック9,4を介して、MZI1に印加される。上記回路ブロック1〜9(符号7を除く)により、同期検波によるフィードバック制御が形成されていることが分かる。当該バイアスのフィードバック制御により、MZI1の光透過特性を変化・制御することができ、最適点の調整が可能となる。
MZI1の光透過特性と誤差信号との関係を、図6に示す。
ポート1に着目し、キャリア周波数が光透過特性の最大または最小となる周波数になった時、誤差信号が負の傾きで零になっている事が分かる。同期検波部6は、このように決められた傾き(前述の場合、負の傾き)で零になる点に、バイアス制御部8で生成されたバイアスをロックさせる。なお、バイアス制御部8によるバイアスのロックは、誤差信号が下記の予め設定された所定の範囲内に収まったら、実施される。
ロック検出部7では、同期検波部6の出力である誤差信号が予め設定された所定の範囲内に収まったら(ロック状態と称する)、バイアス制御中において同期検波制御が完了したことを検出する(ロック状態を検出する)。そして、ロック検出部7は、当該ロック状態を検出したときに、ロック信号(以下、ロック完了信号と称する)を出力する。
これに対して、ロック検出部7は、誤差信号が所定の範囲内に収まっていない場合には、バイアス制御中において同期検波制御が完了していないことを検出する。当該検出の場合には、ロック検出部7は、ロック完了信号を出力しない。
論理反転信号生成部12には、フレーム処理部11からのフレーム検出に成功した旨の信号(たとえば、フレーム同期信号)と、ロック検出部7からのロック完了信号とが入力される。論理反転信号生成部12は、当該両信号に基づいて、所定の論理反転信号を生成する。当該所定の論理反転信号は、クロック再生部10とバイアス制御部8に向けて、出力される。
バイアス初期値記憶部(単に、初期値記憶部と称する)13には、複数のバイアス初期値が格納されている。当該初期値記憶部13は、バイアス制御部8と接続されている。
次に、回路ブロック1〜13から成る光受信装置100の動作について、図7のフローチャートを用いて詳しく説明する。
まず、バイアス制御部8は、初期値記憶部13から任意の一のバイアス初期値B1を選択し、当該選択したバイアス初期値B1を読み出す(ステップS1)。位相変調光信号がMZI1に入射されると、当該バイアス初期値B1からスタートして、同期検波によるバイアスのフィードバック制御を実施する(ステップS2からS4)。
つまり、誤差信号が予め設定された所定の範囲内に収まるまで、バイアス制御部8によるバイアス制御(ステップS2)、回路ブロック5,6を用いた誤差信号の検出(ステップS3)およびロック検出部7によるロック状態判定(ステップS4)から成る、同期検波によるバイアスのフィードバック制御を繰り返し実施する。当該フィードバック制御の動作は、上記参照されたい。
当該フィードバック制御により誤差信号が零に収束され、ある時点において誤差信号が予め設定された所定の範囲に内に収まったとする。当該時点において、同期検波部6は、バイアス制御部8で生成されたバイアスをロックし、ロック検出部7は上記ロック状態を検出する。そして、ロック状態を検出したロック検出部7は、上記ロック完了信号を出力する。当該出力されたロック完了信号は、論理反転信号生成部12に入力される。
論理反転信号生成部12にロック完了信号が入力されたとき、当該論理反転信号生成部12が、フレーム処理部11から、フレーム検出成功の信号(たとえば、フレーム同期信号)を受信しているとする(ステップS5)。この場合は、光受信装置100において信号が導通していることになり、バイアス制御部8は、その時点におけるロックされたバイアスが最適バイアスであるとして、当該ロックされたバイアスを維持する制御を継続する(ステップS5で「検出(同期)」)。
一方、論理反転信号生成部12にロック完了信号が入力されたとき、当該論理反転信号生成部12が、フレーム処理部11から、フレーム検出が成功していない旨の信号を受信した(たとえば、当該信号の受信を、フレーム同期信号の不受信と考えることが可能である)を、とする(ステップS5)。つまり、当該ロック完了信号出力時において、フレーム処理部11が未だフレームを検出できなかったとする。この場合には、ステップS5で「非検出(非同期)」となり、光受信装置100は、ツインPD2から出力される信号を反転させる信号反転処理、または、バイアス制御部8によるバイアス初期値を変更する初期値変更処理を実施する(ステップS6、S7,S8)。具体的には、以下の通りである。
バイアス制御部8がバイアス初期値B1を選択した後、上記フィードバック制御によりロック検出部7がロック状態を検出し、そのときフレーム処理部11がフレームを検出しなかったとする(たとえば、フレーム同期信号の不受信の場合である)。このときには、まず、光受信装置100は、信号反転処理を実施する(ステップS6〜S8)。
つまり、ロック検出部7がロック完了信号を発報し、かつフレーム処理部11からフレーム検出の旨の信号が発報されていない場合は、論理反転信号生成部12は、1回目の論理反転信号を生成する(ステップS6)。
クロック再生部10は、当該1回目の論理反転信号を受信する(ステップS7)。当該受信した論理反転信号は、奇数回目の論理反転信号である。そこで、当該クロック再生部10は、出力の1/0の論理を反転させる上記信号反転処理を実施する(ステップS8)。その後、光受信装置100は、ステップS5の動作に戻る。つまり、ステップS8後において、フレーム処理部11がフレームの検出に成功したか否かの判断が実施される。
ここで、信号反転処理を実施する理由は、次の理由からである。つまり、図6に示すように、MZI1は光透過特性一周期の間に最適バイアス点を2つ持ち、一方のバイアス点は正相出力(例えば位相反転していたらポート1に出力)、他方のバイアス点は逆相出力(例えば位相反転していたらポート2に出力)するためである。つまり、MZI1が最適バイアス点にロックされており、光受信装置100における信号の非導通が位相反転の理由によるものであれば、少なくとも1回目の信号反転処理後には信号は導通する。
しかしながら、1回目の論理反転信号生成後、信号反転処理を実施し、それにもかかわらずフレーム処理部11がフレームの検出に成功しないこともある。このような場合には、MZI1に印加されるバイアスが誤った点でロックされていると、考えられる。このような事態の原因は、バイアス制御部8が最初に選択したバイアス初期値B1が、MZI1の最適バイアスから90度ずれた点付近であること、または、ドライバー部4を通じてMZI1に印加されるディザ信号の振幅が小さいことである。
図8に示すように、最適バイアスから90度ずれたバイアス点でも、同期検波部6が出力する誤差信号は零となる。バイアス初期値B1が上記のバイアス点であると、誤差信号は制御開始と同時に零となってしまうため、光受信装置100は、当該バイアス点が最適バイアス点と誤認識する(誤ロック状態)。
ロック状態のバイアスが最適バイアス点から90度ずれたバイアス点に完全に一致さえしていなければ、ディザ信号の振幅を大きくすることにより、バイアスを最適バイアス点に引き込むことが可能とる。つまり、ディザ信号の振幅を大きくすることにより、上記のようなバイアスの誤ロック状態は回避できる。
図9に、MZI1に印加されるバイアスに対する包絡検波後のディザ信号の振幅を示す。図9において、MZI1に印加されるディザ信号振幅は、一定である。
A値以上のディザ振幅出力があれば制御可能と仮定すると、印加されるバイアスが最適バイアスから90度ずれたバイアス点付近でなければ、ほとんどの場合、印加されるバイアスを最適バイアス点へ制御できることが、図9から分かる。なお、どれくらいのディザ信号の検波出力が必要かは、構築される制御系のゲインやノイズによって決まる。したがって、上記A値には、各制御系により異なる。
上記のことから、多くの場合において、ディザ信号の振幅を大きくすることにより、上記のようなバイアスの誤ったロック状態は回避できる。しかし、ディザ信号の振幅を大きくすると、信号の品質劣化を引き起こす。図10に、ディザ信号振幅とQペナルティとの関係を示す。
図10から、MZI1の光透過特性の一周期に対して、何%のディザ信号振幅でどれくらいのQ値劣化が生じるかが分かる。たとえば、10GbpsのDPSKの場合には、1FSRに対して3%程度のディザ振幅で、0.25dB程度のQペナルティが発生する(図10参照)。
当該図10から分かるように、ディザ信号振幅の二乗に比例して、Qペナルティが増加する。したがって、ディザ信号振幅は、より小さい方が望ましい(ただし、ディザ信号振幅が小さすぎると、包絡線検波部5は、ディザ信号に対応する信号を検出できない)。
また、MZI1に印加するバイアス初期値によって、必要なディザ信号の振幅は変化する。図9からも分かるように、印加されるバイアスが最適バイアスから45度ずれた点では、包絡線検波部5は大きな信号の振幅を検出できる。これに対して、印加されるバイアスが最適バイアスから90度ずれた点では、包絡線検波部5は検出信号振幅がほとんどゼロである。
このように、印加されるバイアスが最適バイアスから90度ずれた点付近でも制御可能とするために、大きな振幅のディザ信号を印加する必要がある。しかし前述のように、ディザ信号の振幅を大きくすると、信号品質の劣化につながる。
さらに、前述したように、最適バイアス点から90度ずれた付近にバイアス初期値B1があった場合には、検波出力が得られない。このため、同期検波部6の誤差信号が零となり、誤ったバイアス点でロック状態が成立してしまう(上記誤ロック状態)。
そこで、ディザ信号の振幅をなるべく小さくし、かつ、上記誤ロック状態を回避するため、本実施の形態に係る光受信装置100は、初期値記録部13を備えている。
つまり、上記ステップS8の信号反転処理の後、当該信号反転処理後のデータにおいて、フレーム処理部11はフレーム検出成功の有無を判断する。依然として、フレーム処理部11がフレームを検出しなかったときには(ステップS5で「非検出(非同期)」)、前述のロック完了信号受信した論理反転信号生成部12は、2回目の論理反転信号を生成する(ステップS6)。
当該論理反転信号の生成は、誤ロック状態の維持を意味する。また、当該生成された論理反転信号は2回目のものである(ステップS7)。そこで、バイアス制御部8はバイアスのロック状態を解消し、ロック検出部7は、ロック完了信号の送出を停止する。さらに、バイアス制御部8は、初期値記憶部13に格納されている他のバイアス初期値B2を任意に読み出す(ステップS1に戻る)。そして、バイアス制御部8は、バイアス初期値B1からバイアス初期値B2に変更する上記初期値変更処理を実施する。
その後、当該バイアス初期値B2からスタートして、同期検波によるバイアスのフィードバック制御を再度実施する(ステップS2からS4)。そして、当該フィードバック制御により誤差信号が零に収束され、ある時点において誤差信号が予め設定された所定の範囲に内に収まったとする。当該時点において、同期検波部6は、バイアス制御部8で生成されたバイアスを再度ロックし、ロック検出部7は上記ロック状態を再度検出する。そして、ロック状態を検出したロック検出部7は、上記ロック完了信号の出力を再度開始する。その後、ステップS5からS8の動作を、実施する。
つまり、当該再度のロック完了信号出力後、未だフレーム処理部11がフレームの検出に成功しない場合には、論理反転信号生成部12は、3回目の論理反転信号を生成する。そして、当該論理反転信号を受信したクロック再生部10は、出力の1/0論理を反転させる(ステップS8の信号反転処理を実施する)。
また、当該信号反転処理後においても、未だフレーム処理部11がフレームの検出に成功しない場合には、論理反転信号生成部12は、4回目の論理反転信号を生成する。そして、バイアスのロック状態の解消、ロック完了信号の送出停止を行い、当該論理反転信号を受信したバイアス制御部8は、さらに異なるバイアス初期値B3を初期値記憶部13から読み出し、バイアス初期値B2をバイアス初期値B3に置換する(ステップS1の初期値変更処理を実施する)。
本実施の形態に係る光受信装置100では、フレーム処理部11がフレーム検出に成功するまで(たとえば、フレーム同期信号を受信するまで)、前記信号反転処理と前記初期値変更処理とを、当該順に繰り返し実施する(図7参照)。つまり、論理反転信号生成部12が、ロック検出部7からロック完了信号を受信すると共に、フレーム処理部11からフレーム検出成功の旨の信号を受信するまで、前記信号反転処理と前記初期値変更処理とを、当該順に繰り返し実施する。
ここで、図7のフローでは、論理反転信号の生成回数が奇数である場合には、クロック再生部10が信号反転処理を実施している。他方、論理反転信号の生成回数が偶数である場合には、バイアス制御部8が初期値変更処理を実施している。光受信装置100における信号反転処理と初期値変更処理の順序は、これに限る必要は無い。
たとえば、1回目の論理反転信号の生成で信号反転処理を行い、2回目の論理反転信号の生成でさらに信号反転処理を行い、3回目の論理反転信号生成で初期値変更処理を実施する態様も想定できる。
しかしながら、図7のフローのように、論理反転信号の生成回数が奇数である場合に、クロック再生部10が信号反転処理を実施し、論理反転信号の生成回数が偶数である場合に、バイアス制御部8が初期値変更処理を実施する態様が、最も効率的に信号の導通に至ることができる。
以上のように、本実施の形態に係る光受信装置100では、バイアス初期値を任意に選択し、フレーム処理部11は、フレーム検出の成功という形で、当該選択されたバイアス初期値の妥当性を検討している。そして、当該選択されたバイアス初期値が妥当なものでない場合には、ステップS8により信号反転処理またはステップS1による初期値変更処理を実施している。
したがって、光受信装置100における信号の非導通が位相反転の理由によるものであれば、信号反転処理後により信号の導通を確立できる。また、その他の誤ロック状態である場合には、初期値変更処理を実施することで、小さい振幅のディザ信号であっても、当該誤ロック状態を回避することができる。このように、最適バイアスの制御のために、ディザ信号の振幅を大きくする必要が無いので、信号の品質劣化を抑えることができる。つまり、MZI1の初期状態がどんな状態であっても、信号の品質を劣化する事無く、信号の導通を確立できる。
また、本実施の形態に係る光受信装置100は、上記のように構成し動作するので、特許文献1のように信号光のスペクトルを削る必要がない。
ここで、初期値記憶部13に格納されるバイアス初期値の数は、任意で良い。しかしながら、制御開始から正常ロックまでの時間を考えると、初期値記憶部13に格納されるバイアス初期値の数は、5つ程度が望ましい。
<実施の形態2>
本実施の形態2では、実施の形態1において、論理反転信号生成部12に入力され、論理反転信号の生成判断時に使用される、フレーム処理部11からの信号について言及する。つまり、本実施の形態では、図7のステップS5の判定処理において使用される、フレーム処理部11から送信される、フレーム検出の成功の有無を示す信号について言及する。
なお、実施の形態1と実施の形態2とでは、物理的ブロック構成は、図1で示す構成において同じである。
実施の形態1では、フレーム処理部11がフレーム検出の成功の有無を示す信号として、一例として、フレーム処理部11が送信するフレーム同期信号の場合に言及した。当該フレーム同期信号としては、様々な種類の信号が考えられる。
フレーム同期信号として、たとえば、受信した1/0信号の全てについてエラーがない場合に発報するエラーフリー信号を採用できる。または、フレーム同期信号として、FECを用いたエラー訂正後に発報するエラー訂正完了信号を用いても良い。フレーム同期信号としては、その他種々の信号が考えられる。
本実施の形態では、フレーム処理部11がフレーム検出の成功の有無を示す信号として、フレーム処理部が発報するLOF(Loss Of Flame)信号またはOOF(Out Of Flame)信号を採用する。
実施の形態1で説明したように、フレーム処理部11は、フレームに関するエラーの計測を行っている。当該エラー計測の結果として、フレーム処理部11は、LOF信号および/またはOOF信号を生成し、出力する。
したがって、本実施の形態では以下の動作が実施される。
ロック完了信号を受信した論理反転信号生成部12が、フレーム処理部11からLOF信号またはOOF信号を受信したとする(ステップS5で「非検出(非同期)」)。当該場合には、論理反転信号生成部12は、論理反転信号を生成する(ステップS6)。そして、光受信装置100は、ステップS8の信号反転処理またはステップS1の初期値変更処理を実施する。
これに対して、ロック完了信号を受信した論理反転信号生成部12が、LOF信号またはOOF信号を受信しないとする(ステップS5で「検出(同期)」)。当該場合には、論理反転信号生成部12は、論理反転信号を生成しない。したがって、光受信装置100における信号の導通が成立しているので、現在の制御バイアス値のロック状態が維持される。
ここで、OOF信号は、フレーム処理部11においてフレーム同期が外れたと判断された場合に発生される、警報信号である。フレーム処理部11は、受信されるデータ上の特定パターンを常に監視している。任意回数連続して特定パターンが確認できない場合に、当該フレーム処理部11は、OOF信号を生成・出力する。
なお、OOF信号を生成・出力したフレーム処理部11は、受信されるデータにおけるフレーム同期パターンを監視している。そして、2回連続でフレーム同期パターンを検知した場合には、フレーム処理部11は、OOF信号の生成・出力を停止することが一般的である。
またLOF信号は、OOF信号の生成・出力を3ms継続したフレーム処理部11が発報する警報である。なお、OOF信号の生成・出力が3ms連続で停止(解除)になったとき、フレーム処理部11は、当該LOF信号の生成・出力を停止する。
なお、本実施の形態で説明した以外の構成・動作は、実施の形態1で説明した構成・動作と同じである。
以上のように、本実施の形態では、フレーム処理部11から送信されるOOF信号またはLOF信号を用いて、論理反転信号生成部12は、論理反転信号の生成の有無を判断する。つまり、OOF信号またはLOF信号を用いて、光受信装置100は、信号反転処理または初期値変更処理の実施の有無を判断する。
したがって、本実施の形態に係る光受信装置100は、MZI1に印加されるバイアスの誤ロック状態で信号が導通していないのか、当該バイアスは正常値でロックされているが、信号光のS/N比(Signal to Noise ratio)劣化によって信号が導通していないのかを、判断することができる。なお、後者の場合(つまり、信号光のS/N比の劣化のためにビットエラーが生じている場合、またはMZI1に印加されるバイアスがロックされていない制御中の場合)には、光受信装置100は、MZI1に印加されるバイアスの制御には問題ないと、判断することができる。また、フレーム同期信号の一例として、LOM(Loss Of Multi−flame)も考えられる。しかし、LOMは64のフレーム同期が取れなければ回復しないため、LOSやOOFよりも64倍の時間がかかる。そのため、LOMよりもLOSおよびOOFを採用する方が望ましい。
<実施の形態3>
実施の形態1,2に係る光受信装置100では、MZI1に印加するディザ信号の振幅を最小限に抑えるために、複数のバイアス初期値を格納する初期値記憶部13を設けていた。そして、実施の形態1,2に係る光受信装置100では、フレーム処理部11におけるフレーム検出の有無に応じて、初期値変更処理等を行っていた。
これに対して、本実施の形態では、より簡易な構成で、信号導通時において、ディザ信号の振幅を最小限に抑えることができることを特徴とする。図11は、本実施の形態に係る光受信装置300の構成を示すブロック図である。
本実施の形態に係る光受信装置300では、ロック検出部7とドライバー部4とが接続されている。したがって、ドライバー部4には、ロック検出部7から発報されるロック完了信号が伝送される。ドライバー部4がロック完了信号を受信すると、増幅率を減少させる動作を行う。
つまり、ドライバー部4は、バイアスおよびディザ信号が重畳された信号を受信する。ドライバー部4は、受信した信号を所定の増幅率で増幅した後、当該増幅後の信号をMZI1に出力する。ここで、本実施の形態に係るドライバー部4は、受信した信号の増幅率を変化させる機能を有している。ここで、当該ドライバー部4は、バイアスのロック状態を検出するまで第一の増幅率で動作しており、バイアスのロック状態検出後は、第二の増幅率で動作する。なお、第二の増幅率は、第一の増幅率よりも小さい。
当該増幅率減少の動作により、ロック完了信号受信後において、MZI1に印加されるディザ信号の振幅を小さく抑えることができる。
ここで、ディザ信号を用いてMZI1に印加するバイアス値を最適バイアスに制御する
バイアスのフィードバック制御や、ロック検出部7におけるロック状態判定動作およびロック完了信号の生成動作等は、実施の形態1で説明内容と同じである。つまり、図7に示したステップS1からステップS5の手前までの動作(回路ブロック1〜9の動作)は、本実施の形態と実施の形態1とで同じである。
本実施の形態では、図7のステップS4でロック状態と判定した場合には、ロック検出部7は、ドライバー部4にロック完了信号を出力する。当該ロック完了信号を受信したドライバー部4は、上記の通り、増幅率を減少する処理を実行する。これにより、ロック状態判定後においては、MZI1に印加するディザ信号の振幅を減少することができる。つまり、光受信装置300における信号の導通後には、ディザ信号の振幅を小さく抑制できる。
なお、実施の形態1で説明したように、バイアスが、論理が反転する方の最適バイアスの位置でロックされている場合に備えて、回路ブロック10,11,12による信号反転処理は、回路ブロック1〜9の動作(図7に示したステップS1からステップS5の手前までの動作)から独立して実施される。つまり、本実施の形態では、フレーム処理部11は受信データを常に監視し、フレームの検出に成功しない場合には、その通知が論理反転信号生成部12に送信される。当該通知を受信した論理反転信号生成部12は、論理反転信号をクロック再生部10に送信する。そして、当該論理反転信号を受信したクロック再生部10は、出力されるデータの1/0論理を反転させる処理(論理反転処理)を実行する。
図12に、検波後のディザ信号の振幅が一定になるために必要なディザ信号の振幅の関係を示す。図12に示す関係は、図8に示した、印加するディザ信号の振幅を一定にした時の包絡検波後のディザ信号の関係と、上下対称の関係となっていることが分かる。
たとえば、本実施の形態に係るドライバー部4では、ロック完了信号送出前においては、MIZ1に印加されるディザ信号の振幅を、図12に示すA値まで増幅させる。図8を用いて説明したように、当該A値と大きな振幅を有するディザ信号を用いることにより、バイアスを最適バイアスに引き込むことができる。具体的に、最適バイアスから90度ずれた点でバイアスが制御されていても、当該バイアスを最適バイアスに引き込むことができる。
また、本実施の形態に係るドライバー部4では、ロック完了信号を送出後においては、MIZ1に印加されるディザ信号の振幅を、図12に示すB値まで減少させる。これにより、不必要にディザ信号の振幅を増大させることが抑制される。なお、ロック完了信号送出前において、大きな振幅(=A値)を有するディザ信号を用いてバイアスのフィードバック制御が実行されている。したがって、ロック完了信号送出後においては、ディザ信号の振幅はB値程度で十分である。つまり、図12に示すように、一度バイアスが最適バイアスにロックされれば、バイアスを最適バイアス点で継続するためには、ディザ信号の振幅はB値程度でよく、信号光のQペナルティを最小限に抑えることができる。
なお、本実施の形態では、ドライバー部4の増幅率を下げると、ディザ信号の振幅が下がると同時に、バイアス制御部8で生成したバイアス値も変化してしまう。増幅率低下に伴う当該バイアス値の変化により、誤差信号が所定の範囲外に外れ、ロック検出部7がロック状態の解消(ロック完了信号の送出停止)が起こり得る。この場合には、バイアスのフィードバック制御が再び開始される。
このような事態を回避するためには、ドライバー部4の増幅率を遅く変化させれば良い。つまり、ロック完了信号受信後において、ドライバー部4は、緩やかに増幅率を減少すれば良い。
また、ドライバー部4の増幅率減少に伴うバイアスのフィードバック制御の再開を回避するために、図13に示す構成を採用することもできる。図13の構成では、ドライバー部4を二つのドライバー部4a,4bに分離している。したがって、図13の構成では、光受信装置350は、バイアスを増幅する第一のドライバー部4aと、ディザ信号を増幅する第二のドライバー部4bとを有する。また、加算器9は、ドライバー部4a,4bとMZI1との間に配設される。
第一のドライバー部4aは、バイアス制御部8から送信されるバイアスのみを受信し、当該バイアスを増幅し、出力する。なお、第一のドライバー部4aの増幅率は一定である。他方、第二のドライバー部4bは、ディザ信号生成部3から送信されるディザ信号のみを受信し、当該ディザ信号を増幅し、出力する。ここで、第二のドライバー部4aは、ロック完了信号受信に伴う増幅率の変化(減少)処理を実現する。
第一のドライバー部4aから出力された信号および第二のドライバー部4bから出力された信号は、MZI1に印加される前において、加算器9において重畳される。したがって、MZI1には、当該重畳後の信号が印加される。
当該図13の構成を採用することにより、ロック完了信号送出後にドライバー部4bの増幅率が減少したとしても、バイアスの振幅は変動しない。よって、上記バイアスのフィードバック制御の再開を回避することができる。
以上のように、本実施の形態に係る光受信装置300,350では、ロック完了信号を用いてMZI1に印加するディザ信号の振幅を制御している。具体的に、当該光受信装置300,350は、ロック完了信号送出後に、ディザ信号の振幅を減少させている。
したがって、ロック完了信号送出前においては、大きな振幅を有するディザ信号をMZI1に印加でき、簡易な回路構成でバイアスを最適バイアスに設定できる。さらに、ロック完了信号送出後においては、ディザ信号の振幅を減少させるので、信号導通後には、信号の品質劣化を防止することができる。
なお、実施の形態1,2に係る光受信装置100に、本実施の形態の構成(つまり、ディザ信号の振幅をロック完了信号送出後に減少させる構成)を、加えても良い(図14参照)。
<実施の形態4>
本発明の実施の形態4に係る光受信装置400の構成を、図15のブロック図に示す。当該光受信装置400では、光電流モニター部14が設置されている。光電流モニター部14は、ツインPD2に流れる光電流を検知する。換言すれば、光電流モニター部14は、外部から送信されてくる信号光の光入力レベル検知することができる。
ここで、光受信装置400では、ロック検出部7が省略されている。ディザ信号を用いてMZI1に印加するバイアス値を最適バイアスに制御するバイアスのフィードバック制御については、実施の形態1で説明内容と同じである。つまり、図7に示したステップS1からステップS4までの動作(回路ブロック1〜9の動作、ただしロック検出部7に関する動作は除く)は、本実施の形態と実施の形態1とで同じである。
なお、実施の形態1で説明したように、バイアスが、論理が反転する方の最適バイアスの位置でロックされている場合に備えて、回路ブロック10,11,12による信号反転処理は、回路ブロック1〜9(回路ブロック7を除く)の動作(バイアスのフィードバック制御)から独立して実施される。つまり、本実施の形態では、フレーム処理部11は受信データを常に監視し、フレームの検出に成功しない場合には、その通知が論理反転信号生成部12に送信される。当該通知を受信した論理反転信号生成部12は、論理反転信号をクロック再生部10に送信する。そして、当該論理反転信号を受信したクロック再生部10は、出力されるデータの1/0論理を反転させる処理(論理反転処理)を実行する。
また、後述する光電流モニター部14に関する動作においても、回路ブロック1〜9(回路ブロック7を除く)の動作(バイアスのフィードバック制御)、および上記信号反転処理の動作から独立して実施される。
以下、本実施の形態に係る光受信装置400(より具体的に、光電流モニター部14)の構成・動作について説明する。
さて、外部から送信されてくる光信号の光入力レベル(光電流)は、図16に示すように、MZI1の光透過特性の状態には、依存しない。図17は、光入力レベルに対する、包絡線検波部5による包絡線検波後のディザ信号の振幅を示す。ここで、図17のデータにおいて、MZI1に印加するディザ信号振幅およびバイアスは一定である。
光入力レベルに応じて、包絡線検波部5が検波できるディザ信号の振幅が異なることが、図17から分かる。つまり,光入力レベルにおいて、同期検波制御のループゲインが異なる。光入力レベルが高い場合には、包絡線検波部5が検波できるディザ信号の振幅の大きさは大きいので、MZI1に印加するディザ信号の振幅は小さくても良いことが、図17の関係により分かる。
実使用においては、ユーザが規定する全ての光入力レベルにおいて制御を可能とすることが要される。そのために、入力光のレベルが最小の場合でも制御可能なように、大きな振幅のディザ信号をMZI1に印加する構成が想定される。しかし、ユーザが規定する全ての光入力レベルに関して、当該ディザ信号の振幅を大きな定常値とした場合には、上記の通り、光入力レベルが大きいときに、余分なQペナルティを付加することにつながってしまう。
そこで、本実施の形態では、ドライバー部4における増幅率は可変とし、光電流モニター部14の検知結果に応じて、当該ドライバー部4の増幅率は調整される。これにより、ユーザが規定する全ての光入力レベルに応じて、ディザ信号の振幅を可変とすることができ。つまり、光入力レベルに応じて、ディザ信号の振幅を常に、最小に設定することができる。
図17の関係から分かるように、光電流モニター部14の検知結果(光電流値、光入力レベル)が高い場合には、包絡線検波部5による包絡線検波後のディザ信号の振幅は、高くなる。したがって、当該場合には、ドライバー部4は、ディザ信号の増幅率を低く抑える。
これに対して、図17の関係から分かるように、光電流モニター部14の検知結果(光電流値、光入力レベル)が低い場合には、包絡線検波部5による包絡線検波後のディザ信号の振幅は、低くなる。したがって、当該場合には、ドライバー部4は、ディザ信号の増幅率を大きくする。
ドライバー部4に入力される信号(バイアス+ディザ信号)は、光電流モニター部14の検知結果に応じて調整された増幅率で増幅され、増幅後、MZI1に向けて出力される。
なお、光受信装置400は、上記光電流モニター部14の検知結果に応じた増幅率の調整を実現できるように、予め実験等でテーブルが設定されていることが必要である。ここで、当該テーブルとは、光入力レベル(光電流)と、当該光入力レベル時に要されるMZI1に印加するディザ信号の振幅との関係を、複数の光入力レベル毎に表記されたものである。ドライバー部4は、当該テーブルと光電流モニター部14の検知結果とに基づいて、増幅率の調整を行う。
以上のように、本実施の形態に係る光受信装置400では、光電流モニター部14が配設されている。そして、光電流モニター部14の検知結果に応じて、ドライバー部14の増幅率は調整される。
したがって、それぞれの光入力レベルで必要最低限のディザ信号振幅を設定することが可能となる。よって、不必要にディザ信号の振幅を大きくしなく済む。よって、光受信装置400は、信号の品質劣化を最小限に抑えることができる。
なお、図13と同様に、ドライバー部4を二つのドライバー部4a,4bに分離し、一方のドライバー部4aにバイアスを入力させ、他方のドライバー部4bにディザ信号を入力させる構成も有効である(図18参照)。図18に示す光受信装置420では、ドライバー部4aの増幅率は変化せず、ドライバー部4bの増幅率は、上記のように光電流モニター部14の検知結果に応じて調整される。また、図18の構成では、加算器9は、ドライバー部4a,4bとMZI1との間に配設される。したがって、図18の構成では、各ドライバー部4a,4bからの出力信号は、MZI1に印加される前に、加算器9により重畳される。
当該図18の構成を採用することにより、光電流モニター部14の検知結果に応じて増幅率を変化させたとしても、バイアスの振幅は変動しない。よって、実施の形態3で説召したような、バイアスのフィードバック制御の再開を回避することができる。
なお、実施の形態1,2に係る光受信装置100に、本実施の形態の構成(つまり、光電流モニター部14の検知結果に応じて増幅率を変化させる構成)を、加えても良い(図19参照)。
さらに、実施の形態3に係る光受信装置300に、本実施の形態の構成(つまり、光電流モニター部14の検知結果に応じて増幅率を変化させる構成)を、加えても良い(図20参照)。図20に示す光受信装置440では、ドライバー部4は、ロック完了信号の送出により増幅率を減少させる制御、および、光電流モニター部14の検知結果に応じて増幅率を変化させる制御を、実施する。
<実施の形態5>
本発明の実施の形態5に係る光受信装置について説明する。本実施の形態に係る光受信装置は、MZI1へのバイアスの印加方法に関して特徴を有する。
実施の形態1で説明したように、MZI1は、二つの光導波路が設けられている。そして、MZI1では、位相変調された光信号を2分岐させ、上記二つの光導波路の伝播遅延時間に1シンボル分の差を持たせている。また、上記各実施の形態1〜4では、いずれか一方の光導波路に対してのみ、バイアスとディザ信号とが印加されていた(図1,11,13,14,15,18,19,20のMZI1参照)。
ところで、石英系のMZI1の場合には、光導波路上に設置したヒータを発熱することで、二つの光導波路の光路差を調整している。ここで、バイアス(電圧)を用いてヒータの発熱を制御した場合には、当該光路差の調整は、当該バイアス(電圧)の2乗に比例する影響を受ける。このため、いずれか一方の光導波路に対してのみバイアスとディザ信号とを印加した場合には、次の問題が発生する。当該場合には、生成されるディザ信号の振幅が一定であるのに関わらず、当該2乗の影響により、印加されるバイアス(電圧)が変化すると、実際に印加されるディザ信号の振幅も変化してしまう。つまり、生成されるディザ信号の振幅が一定であるのに関わらず、印加されるバイアス(電圧)が変化すると、光路差の変化振幅が変化してしまう。
上記を換言すると、生成されるディザ信号の振幅は一定であるが、バイアスが変化すると、MZI1より後段で検出されるディザ信号に対応する信号の振幅は、変化してしまう。
したがって、いずれか一方の光導波路に対してのみバイアスとディザ信号とを印加した場合において、バイアスを増大させたときを想定する。この場合には、生成されるディザ信号の振幅は変化しないのに関わらず、実際に印加されるディザ信号の振幅が大きくなる方向に変化する。実際に印加されるディザ信号振幅のこのような変化は、余分なQペナルティに発生に繋がる。
図21は、MZI1に対して印加するバイアス(電圧:V)の変化に対する、実際にMZI1に印加されるディザ信号の振幅(Wpp)の変化を示す図である。ここで、図21は、生成されるディザ信号の振幅は常に一定である。
図21に示すように、印加されるバイアス(電圧)が上昇すると、生成されるディザ信号振幅が一定であるにも関わらず、実際に印加されるディザ信号の振幅は上昇してしまう。
バイアス変化に対するQペナルティの発生を回避する手段としては、ドライバー部4に開閉回路を用いる方法が考えられる。しかし、当該方法では、回路構成が非常に複雑になるという問題点がある。
また別の回避手段として、MZI1のバイアスを差動動作させる方法も考えられる。ここで、差動動作とは、MZI1の一方の光導波路に加えたバイアスの反転したバイアスを、他方の光導波路に加える動作で、プッシュプル動作とも呼ばれる。
図22は、当該プッシュプル動作で駆動させた場合における、バイアス(電圧:V)と実際に印加されるディザ信号振幅(Wpp)の関係を示す図である。ここで、図22において、生成されるディザ信号の振幅は常に一定である。図22に示すように、当該プッシュプル動作を採用することにより、バイアス(電圧)の値が変化したとしても、実際に印加されるディザ信号の振幅の値は、一定である。
しかし、上記プッシュプル動作を成立させるためには、2つの光導波路に設置したヒータの抵抗値が等しくなければならない。もし、抵抗値が等しくなければ、バイアス(電圧)の値が変化したとしても、実際に印加されるディザ信号の振幅の値は、一定とはならない。このことを、図23に示す。
図23は、プッシュプル動作を採用し、両抵抗値のずれ量が10%の場合における、バイアス(電圧:V)と実際に印加されるディザ信号振幅(Wpp)の関係を示す図である。ここで、図23においても、生成されるディザ信号の振幅は常に一定である。図23より、両抵抗値が等しくない場合には、バイアス(電圧)の値が変化すると、実際に印加されるディザ振幅の値が変化してしまうことが分かる。したがって、プッシュプル動作を採用する場合には、ヒータ抵抗の精度を高める必要がある。
そこで、本実施の形態に係る光受信装置として、図24の構成が創作された。図24は、本実施の形態5による光受信装置500の構成を示すブロック図である。
図24に示すように、各実施の形態1〜4と同様に、MZI1は、二つの光導波路1a,1bを有している。第一の光導波路1aのバイアス調整端子に対しては、ドライバー部4aを介して、ディザ信号生成部3から送信されたディザ信号が印加される。他方、第二の光導波路1bのバイアス調整端子に対しては、ドライバー部4bを介して、バイアス制御部8から送信されたバイアスが印加される。
なお、バイアスとディザ信号とが異なる光導波路1a,1bに対して各々印加され、バイアス制御部8からMZI1までの経路とディザ信号生成部3からMZI1までの経路とが別経路になっており、加算器9が省略されている等を除けば、回路ブロック1,2,3,4a,4b,5,6,8によるバイアスフィードバック制御の動作は、各実施の形態1〜4と同様である。したがって、回路ブロック1,2,3,4a,4b,5,6,8の動作については、各実施の形態同様、実施の形態1の動作を参照されたい。
また、実施の形態1で説明したように、バイアスが、論理が反転する方の最適バイアスの位置でロックされている場合に備えて、回路ブロック10,11,12による信号反転処理は、バイアスのフィードバック制御動作と独立して実施される。つまり、本実施の形態では、フレーム処理部11は受信データを常に監視し、フレームの検出に成功しない場合には、その通知が論理反転信号生成部12に送信される。当該通知を受信した論理反転信号生成部12は、論理反転信号をクロック再生部10に送信する。そして、当該論理反転信号を受信したクロック再生部10は、出力されるデータの1/0論理を反転させる処理(論理反転処理)を実行する。
以上のように、本実施の形態では、第一の光導波路1aのバイアス調整端子にディザ信号が印加され、第二の光導波路1bのバイアス調整端子にはバイアスが印加される。
したがって、第二の光導波路1bに印加されるバイアスが変化したとしても、当該変化の影響は、第一の光導波路1aに印加されるディザ信号には影響が無い(MZI1が石英系で、光透過特性調整にヒータが採用されている場合には、第一の光導波路1aに与える発熱量の変化に影響が無い)。よって、簡単な回路構成にて、バイアスの値が変化したとしても、実際に印加されるディザ信号の振幅の値が変化しない光受信装置500を提供できる。換言すれば、バイアスがどのような値に制御されたとしても、Qペナルティの発生(つまり、信号の品質劣化)を防止することができる。
なお、実施の形態1,2に係る光受信装置100に、本実施の形態の構成(つまり、第一の光導波路1aに対してディザ信号を印加し、第二の光導波路1bに対してバイアスを印加する構成)を、加えても良い(図25参照)。図25の構成では、MZI1に対するバイアス印加経路とMZI1に対するディザ信号印加経路とは別なので、加算器9は省略される。
また、実施の形態3に係る光受信装置300に、本実施の形態の構成(つまり、第一の光導波路1aに対してディザ信号を印加し、第二の光導波路1bに対してバイアスを印加する構成)を、加えても良い(図26参照)。図26の構成では、MZI1に対するバイアス印加経路とMZI1に対するディザ信号印加経路とは別なので、加算器9は省略される。
さらに、実施の形態4に係る光受信装置400に、本実施の形態の構成(つまり、第一の光導波路1aに対してディザ信号を印加し、第二の光導波路1bに対してバイアスを印加する構成)を、加えても良い(図27参照)。図27の構成では、MZI1に対するバイアス印加経路とMZI1に対するディザ信号印加経路とは別なので、加算器9は省略される。