JP5093828B2 - フェニルデカヒドロナフタレン誘導体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規液晶性化合物である、デカヒドロナフタレン誘導体とそれを含有する液晶組成物に関するものである。これらは電気光学的液晶表示用、特に温度範囲が広いネマチック液晶材料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、各種測定機器、自動車用パネル、ワードプロセッサー、電子手帳、プリンター、コンピューター、テレビ等に用いられるようになっている。液晶表示方式としては、その代表的なものにTN(捩れネマチック)型、STN(超捩れネマチック)型、DS(動的光散乱)型、GH(ゲスト・ホスト)型あるいはFLC(強誘電性液晶)等があり、また駆動方式としても従来のスタティック駆動からマルチプレックス駆動が一般的になり、さらに単純マトリックス方式、最近ではアクティブマトリックス方式が実用化されている。
【0003】
これらの表示方式や駆動方式に応じて、液晶材料としても種々の特性が要求されている。中でも温度範囲が広いことはほとんどの場合に共通して非常に重要であるが、これにはネマチック相上限温度(TN-I)が充分高いことと、融点(TC-N)あるいはスメクチック−ネマチック転移温度(TS-N)が充分低いことを含んでいる。
【0004】
また、他の液晶化合物や汎用液晶組成物に対する相溶性も重要である。この相溶性が不良の場合には、析出や相分離の危険を避けるために非常に多数の液晶化合物を混合させる必要が生じ、組成物の調製には非常な手間がかかり、高コスト化が避けられなかった。
【0005】
また、駆動電圧が充分低いことも多くの場合に共通して重要な特性であり、そのためには閾値電圧(Vth)が低い必要がある。
【0006】
また、応答が高速であることも同様に重要な特性であり、そのために液晶の粘性はできるだけ小さいことが要求されている。
【0007】
また、屈折率異方性(Δn)も重要な特性であり、その表示方法に応じてさまざまな値が要求されるが、製造の容易なセル厚の大きい液晶素子の場合には小さい値が要求されることが多い。
【0008】
こうした要求を満たすべく、これまでにも非常に数多くの液晶化合物が合成されてきているが、問題が全て解決されたわけではなく、上記の各々の要求に対しさらに優れた特性を有する液晶化合物が求められているのが現状である。
【0009】
一般に液晶化合物は構造的に中心骨格(コア)部分と側方基(側鎖および極性基)から形成されている。コア部分を構成する環構造としては、1,4−フェニレン基(フッ素置換されていてもよい)やトランス−1,4−シクロヘキシレン基をはじめとして、ピリジン−2,5−ジイル基やピリミジン−2,5−ジイル基等の複素芳香環、ジオキサン−トランス−1,4−ジイル基やピペリジン−1,4−ジイル基等の飽和複素環等、既に多くのものが知られている。しかしながら、通常は1,4−フェニレン基(フッ素置換されていてもよい)とトランス−1,4−シクロヘキシレン基および一部の複素芳香環にほぼ限定されており、これらの環構造から構成された液晶化合物のみでは年々高度化する液晶組成物に対する要求特性には充分応えきれなくなってきているのが実情である。
【0010】
ところでこのトランス−1,4−シクロヘキシレン基をトランス−2,6−トランスデカヒドロナフチレン基に変換することにより液晶性が向上することは知られている。しかもトランス−2,6−トランスデカヒドロナフチレン基は酸素原子や窒素原子といったヘテロ原子を含まない飽和環であるため、優れた安定性が期待できる。しかしながら、これまでに報告されたトランス−2,6−トランスデカヒドロナフタレン誘導体の例は少なく、特にその特性についてはほとんど知られていなかった。
【0011】
最近、本発明者らは2−(3,5−ジフルオロ−4−シアノフェニル)−トランス−2,6−トランスデカヒドロナフタレン誘導体である(A)
【0012】
【化2】
【0013】
あるいは2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−トランス−2,6−トランスデカヒドロナフタレン誘導体である(B)
【0014】
【化3】
【0015】
等の新規フェニルデカヒドロナフタレン誘導体を開発し、これらが優れた液晶性を示し、閾値電圧(Vth)の低減や、屈折率異方性(Δn)の低減、ネマチック相温度範囲の拡大等に優れた効果を有し、さらに他の液晶化合物や汎用液晶組成物に対する相溶性にも優れており、(A)は主にSTN表示用に、(B)は主にTFT用として有用であることを報告した。しかしながら、これらの化合物は単独で液晶相を持たず、また閾値電圧の低減効果は充分と言えるほどではなかった。
【0016】
一方、液晶性、電気光学特性あるいは他の液晶材料との相溶性を向上させるためには、デカヒドロナフタレン骨格に加えて、適当な連結基を導入することが効果的であることは他のシクロヘキサン系液晶の場合から類推できる。しかしながら、そのような骨格で、連結基を有するような液晶化合物はその製造方法を含めてこれまでほとんど知られていない。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、フェニレン基とデカヒドロナフタレン基の間に連結基を有するデカヒドロナフタレン誘導体である新規液晶性化合物を提供し、さらにこれらの化合物を用いて、広いネマチック相温度範囲を有し、屈折率異方性が小さく、さらに低電圧駆動や高速応答も可能であって、STNあるいはTFT駆動用としても好適な液晶組成物を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、
1.一般式(I)
【0019】
【化4】
【0020】
(式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基あるいはシアノ基、シアナト基、水酸基またはカルボキシル基を表すが、アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基あるいはアルコキシカルボニル基は1個以上のフッ素原子または炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよく、Lは−CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−O(CH2)3−、−(CH2)3O−または−(CH2)4−を表し、Xa、XbおよびXcはそれぞれ独立的に水素またはフッ素原子を表し、Zは水素原子あるいはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子あるいは炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニル基あるいはシアノ基、シアナト基、水酸基またはカルボキシル基を表すが、アルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基あるいはアルコキシカルボニル基は1個以上のフッ素原子または炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよく、但しRがアルキル基且つZがアルキル基、アルコキシル基またはシアノ基のときは少なくともXa、XbおよびXcのうち1個はフッ素原子を表し、デカヒドロナフタレン環はトランス形であり、その2,6−位はトランス配置である。)で表されるフェニルデカヒドロナフタレン誘導体。
【0021】
2.一般式(I)においてLが−CH2CH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−または−CF=CF−を表すところの上記1記載のフェニルデカヒドロナフタレン誘導体。
【0022】
3.一般式(I)においてRがフッ素原子または炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基を表すところの上記1記載のフェニルデカヒドロナフタレン誘導体。
【0023】
4.一般式(I)においてZが水素原子あるいはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子あるいはフッ素原子または炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基またはシアノ基を表すところの上記1記載のフェニルデカヒドロナフタレン誘導体。
【0024】
5.一般式(I)においてXa、XbおよびXcのうち少なくとも1個はフッ素原子を表すところの上記1記載のフェニルデカヒドロナフタレン誘導体。
【0025】
6.上記1〜5記載の一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物。
【0026】
7.上記6記載の液晶組成物を構成要素とする液晶素子。
を上記課題を解決するための手段として見出した。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の一例について説明する。
【0028】
本発明は、上記課題を解決するために、一般式(I)
【0029】
【化5】
【0030】
で表されるフェニルデカヒドロナフタレン誘導体を提供する。
【0031】
式中、Rは炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基、アルコキシカルボニル基あるいはシアノ基、シアナト基、水酸基またはカルボキシル基を表すが、炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基が好ましく、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状アルコキシル基あるいはビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、トランス−2−プロペニルオキシ基、トランス−2−ブテニルオキシ基、トランス−4−ペンテニルオキシ基、トランス−4−ヘキセニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、2−フルオロエテニル基、2,2−ジフルオロエテニル基、メトキシエチル基またはメトキシエトキシ基がさらに好ましく、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、あるいはビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、2−フルオロエテニル基または2,2−ジフルオロエテニル基が最も好ましく、上記のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基あるいはアルコキシカルボニル基は1個以上のフッ素原子または炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい。Lは−CH2CH2−、−CH(CH3)CH2−、−CH2CH(CH3)−、−CH2O−、−OCH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−、−CH=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−O(CH2)3−、−(CH2)3O−または−(CH2)4−を表すが、−CH2CH2−、−CF2O−、−OCF2−、−COO−、−OCO−または−CF=CF−が好ましく、−COO−または−OCO−がさらに好ましい。Xa、XbおよびXcはそれぞれ独立的に水素またはフッ素原子を表し、他の液晶化合物との相溶性を向上させる場合にはその少なくとも1個がフッ素原子であることが好ましいが、液晶性および高速応答性を向上させるためにはともに水素原子であることが好ましく、XbおよびXcは負の誘電率異方性(Δε<0)が求められる場合にはフッ素原子が好ましいが、通常は水素が好ましく、XaおよびXbは誘電率異方性を増大させ閾値電圧(Vth)の低減効果を高めるためには少なくとも一方はフッ素であることが好ましく、ともにフッ素であることがさらに好ましい。Rがアルキル基且つZがアルキル基、アルコキシル基またはシアノ基のときは少なくともXa、XbおよびXcのうち1個はフッ素原子を表す。Zは水素原子あるいはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子あるいは炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基またはアルコキシカルボニル基あるいはシアノ基、シアナト基、水酸基またはカルボキシル基を表すが、水素原子あるいはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素のハロゲン原子あるいは炭素原子数1〜12のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基またはシアノ基が好ましく、フッ素原子、塩素原子、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状アルコキシル基あるいはビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、トランス−2−プロペニルオキシ基、トランス−2−ブテニルオキシ基、トランス−4−ペンテニルオキシ基、トランス−4−ヘキセニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、メトキシエチル基、メトキシエトキシ基またはシアノ基がさらに好ましく、上記のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基、アルカノイルオキシ基あるいはアルコキシカルボニル基は1個以上のフッ素原子または炭素原子数1〜7のアルコキシル基により置換されていてもよい。また、デカヒドロナフタレン環はトランス形であり、その2,6−位はトランス配置である。
【0032】
一般式(I)においては、そのR、L、Xa、Xb、XcおよびZの選択によって多種の化合物群を包含するけれども、それらの中では一般式(Iaa)〜(Ify)
【0033】
【化6】
【0034】
【化7】
【0035】
【化8】
【0036】
【化9】
【0037】
【化10】
【0038】
【化11】
【0039】
で示される化合物が好ましく、一般式(Iaa)〜(Iby)の化合物がより好ましく、一般式(Iba)〜(Iby)の化合物がさらに好ましく、一般式(Iba)〜(Ibc)、(Ibg)〜(Ibi)、(Ibm)〜(Ibp)あるいは(Ibu)の化合物が最も好ましい。式中、Raは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数1〜6の直鎖状アルコキシル基あるいはビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、トランス−2−プロペニルオキシ基、トランス−2−ブテニルオキシ基、トランス−4−ペンテニルオキシ基、トランス−4−ヘキセニルオキシ基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、2−フルオロエテニル基、2,2−ジフルオロエテニル基、2−メトキシエチル基または2−メトキシエトキシ基を表すが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基あるいはビニル基、トランス−1−プロペニル基、3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、2−フルオロエテニル基または2,2−ジフルオロエテニル基が好ましい。Rbは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基あるいは3−ブテニル基、トランス−3−ペンテニル基、トリフルオロメチル基または2−メトキシエチル基を表し、Rcは炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基あるいは2−プロペニル基、トランス−2−ブテニル基または2−メトキシエチル基を表す。
【0040】
一般式(I)の化合物はその主にLおよびZの表すところに応じて以下の工程に基づいて製造することができる。また、一般式(I)の化合物の製法は以下の製造例に限定されるものではない。
【0041】
製法イ)Lが−CH2CH2−であり、且つZが水素原子あるいはフッ素または塩素のハロゲン原子あるいはアルキル基またはアルコキシル基であり、且つRがアルキル基の場合
【0042】
一般式(IIa)
【0043】
【化12】
【0044】
(式中、Rは一般式(I)におけると同じ意味を表し、デカヒドロナフタレン環はトランス配置である。)で表される6−置換トランスデカヒドロナフタレン−2−オン(この化合物はドイツ公開特許3150312号公報に記載された製造方法に基づき製造できる。)とウィッティッヒ反応剤(IVa)
【0045】
【化13】
【0046】
を反応させ、次いで酸触媒存在下で加水分解した後、必要に応じてアルカリ触媒存在下で異性化することにより得られたアルカナール誘導体(IIb)
【0047】
【化14】
【0048】
(式中、Rおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を一般式(IIIa)
【0049】
【化15】
【0050】
(式中、Xa、XbおよびXcは一般式(I)におけるとおなじ意味を表し、Zaは水素原子あるいはフッ素または塩素のハロゲン原子あるいはアルキル基またはアルコキシル基を表す。)で表されるウィッティッヒ反応剤(これらは対応するハロゲン化ベンジルとトリフェニルホスフィンから容易に調製できる。)を反応させることにより得られたアルケニル誘導体(I−z)
【0051】
【化16】
【0052】
(式中、R、Xa、Xb、Xc、Zaおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を水素添加することにより製造することができる。
【0053】
製法ロ)Lが−CH2CH2−であり、且つZが水素原子あるいはフッ素または塩素のハロゲン原子あるいはアルキル基またはアルコキシル基であり、且つRがアルコキシル基またはアルケニルオキシ基の場合
【0054】
一般式(IIIb)
【0055】
【化17】
【0056】
(式中、Xa、XbおよびXcは一般式(I)におけるとおなじ意味を表し、WaはMgBr、MgILi、CuまたはCuLiなどの金属あるいは含金属基を表し、Zbはフッ素または塩素のハロゲン原子あるいはアルキル基またはアルコキシル基を表す。)で表される有機金属反応剤(これらは対応するハロゲン化エチルベンゼンから容易に調製できる。)を一般式(IIc)
【0057】
【化18】
【0058】
(式中、デカヒドロナフタレン環はトランス配置である。)で表されるトランスデカヒドロナフタレン−2,6−ジオンモノアセタール(この化合物は特願平10−370788号に記載された製造方法に基づき製造できる。)と反応させた後、酸触媒存在下で脱水、脱アセタール化することにより、オクタヒドロナフタレン誘導体(Va)
【0059】
【化19】
【0060】
(式中、Xa、Xb、Xc、Zbおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得て、これの水酸基を還元し、アルケンを水素添加することにより得られた2−ヒドロキシ−トランスデカヒドロナフタレン誘導体(I−y)
【0061】
【化20】
【0062】
(式中、Xa、Xb、Xc、Zbおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得て、これを塩基でアルコラートとしてから一般式(IVb)
【0063】
【化21】
【0064】
(式中、Raはアルキル基またはアルケニル基を表し、Laは塩素、臭素またヨウ素のハロゲン原子あるいはp−トルエンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの脱離基を表す。)で表される化合物とウィリアムソン合成することにより製造することができる。
【0065】
製法ハ)Lが−CH2CH2−であり、且つZが水素原子あるいはフッ素または塩素のハロゲン原子あるいはアルキル基またはアルコキシル基であり、且つRがアルケニル基の場合
【0066】
2−ヒドロキシ−トランスデカヒドロナフタレン誘導体(I−y)をハロゲン化剤と反応させるか、あるいは塩化p−トルエンスルホニルまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物などと反応させることにより
【0067】
【化22】
【0068】
(式中、Xa、Xb、Xc、Zbおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表し、Lbは塩素、臭素またヨウ素のハロゲン原子あるいはp−トルエンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの脱離基を表す。)で表される化合物を得て、これを有機金属反応剤(IVc)
【0069】
【化23】
【0070】
(式中、Rbはアルケニル基を表し、WbはMgBr、MgILi、CuまたはCuLiなどの金属あるいは含金属基を表す。)と遷移金属触媒存在下にカップリング反応させることにより製造することができる。ここで遷移金属触媒としてはパラジウム錯体あるいはニッケル錯体が好ましい。
【0071】
製法ニ)Lが−CH2CH2−であり、且つZが臭素またはヨウ素のハロゲン原子の場合
【0072】
製法イ)〜ハ)に基づいて得られた一般式(I−w)
【0073】
【化24】
【0074】
(式中、Rは一般式(I)におけるとおなじ意味を表し、Xa、Xb、Xcおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表されるフェニルデカヒドロナフタレン誘導体に直接臭素化あるいはヨウ素化するか、あるいはアルキルリチウムでリチオ化した後、臭素あるいはヨウ素と反応させることにより一般式(I)におけるZが臭素またはヨウ素のハロゲン原子である化合物を製造することができる。
【0075】
製法ホ)Lが−CH2CH2−であり、且つZがアルケニルオキシ基の場合
【0076】
製法イ)〜ハ)に基づいて得られた一般式(I−v)
【0077】
【化25】
【0078】
(式中、Rcはメチル基またはメトキシエトキシエチル基などの水酸基の保護基を表し、R、Xa、Xb、Xcおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表されるフェニルデカヒドロナフタレン誘導体を臭化水素酸などにより脱保護して、フェノール誘導体(I−u)
【0079】
【化26】
【0080】
(式中、R、Xa、Xb、Xcおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)とし、これをアルコラートとした後、一般式(IVd)
【0081】
【化27】
【0082】
(式中、Rdはアルケニル基を表し、Lcは塩素、臭素またヨウ素のハロゲン原子あるいはp−トルエンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの脱離基を表す。)で表される化合物とウィリアムソン合成することにより一般式(I)におけるZがアルケニルオキシ基である化合物を製造することができる。
【0083】
製法ヘ)Lが−CH2CH2−であり、且つZがアルケニル基の場合
【0084】
製法イ)〜ハ)で得られた一般式(I)においてZが水素原子あるいは臭素またはヨウ素のハロゲン原子である化合物から調製された有機金属反応剤(I−t)
【0085】
【化28】
【0086】
(式中、R、Xa、Xb、Xcおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表し、WcはMgBr、MgILi、CuまたはCuLiなどの金属あるいは含金属基を表す。)を一般式(IVd)で表される化合物と遷移金属触媒存在下にカップリング反応させることにより一般式(I)におけるZがアルケニル基である化合物を製造することができる。遷移金属触媒としてはパラジウム錯体あるいはニッケル錯体が好ましい。
【0087】
製法ト)Lが−CH2CH2−であり、且つZがシアノ基の場合
【0088】
一般式(I)においてZが水素原子あるいは臭素またはヨウ素のハロゲン原子である化合物から調製された有機金属反応剤(I−t)を二酸化炭素と反応させることにより、安息香酸誘導体(I−s)
【0089】
【化29】
【0090】
(式中、R、Xa、Xb、Xcおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表される安息香酸誘導体を得る。これをハロゲン化チオニル等のハロゲン化剤で酸ハロゲン化物とした後、アンモニアを反応させて酸アミドとし、次いで脱水することにより一般式(I)におけるZがシアノ基である化合物を製造することができる。
【0091】
あるいは、一般式(I)においてZが臭素またはヨウ素のハロゲン原子である化合物を直接シアン化銅(I)と反応させるか、あるいはシアン化ナトリウムまたはシアン化カリウムなどのシアン化物を遷移金属触媒存在下にカップリング反応させることにより、一般式(I)におけるZがシアノ基である化合物を製造することもできる。
【0092】
製法チ)Lが−COO−であり、且つRがアルキル基の場合
【0093】
6−置換トランスデカヒドロナフタレン−2−オンから誘導したアルカナール誘導体(IIb)をクロム酸などの酸化剤により酸化することによりカルボン酸誘導体(IId)
【0094】
【化30】
【0095】
(式中、Rおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これをハロゲン化剤と反応させて酸塩化物とした後、塩基存在下フェノール誘導体(IIIc)
【0096】
【化31】
【0097】
(式中、Xa、Xb、XcおよびZは一般式(I)におけるとおなじ意味を表す。)とエステル化することにより一般式(I)におけるRがアルキル基である化合物を製造することができる。あるいは、(IId)と(IIIe)をN,N−ジアルキルカルボジイミドなどの脱水縮合剤を用いて直接エステル化して製造することもできる。
【0098】
製法リ)Lが−COO−であり、且つRがアルコキシル基またはアルケニルオキシ基の場合
【0099】
トランスデカヒドロナフタレン−2,6−ジオンモノアセタール(IIc)を還元し、アルコール誘導体(IIe)
【0100】
【化32】
【0101】
(式中、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)とした後、これを塩基でアルコラートとしてから一般式(IVb)で表される化合物とウィリアムソン合成し、脱アセタール化することにより
【0102】
【化33】
【0103】
(式中、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表し、Raはアルキル基またはアルケニル基を表す。)で表されるデカヒドロナフタレン−2−オン誘導体(IIf)を得る。これをウィッティッヒ反応剤(IVa)と反応させ、次いで酸触媒存在下で加水分解した後、必要に応じてアルカリ触媒存在下で異性化することによりアルカナール誘導体(IIg)
【0104】
【化34】
【0105】
(式中、Raおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得て、これをクロム酸などの酸化剤により酸化することによりカルボン酸誘導体(IIh)
【0106】
【化35】
【0107】
(式中、Raおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これを製法チ)と同様にフェノール誘導体(IIIc)とエステル化することにより一般式(I)におけるRがアルコキシル基またはアルケニルオキシ基である化合物を製造することができる。
【0108】
製法ヌ)Lが−COO−であり、且つRがアルケニル基の場合
【0109】
トランスデカヒドロナフタレン−2,6−ジオンモノアセタール(IIc)をウィッティッヒ反応剤(IVa)と反応させ、次いで酸触媒存在下で加水分解することによりアルカナール誘導体(IIi)
【0110】
【化36】
【0111】
(式中、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得て、これをクロム酸などの酸化剤により酸化することによりカルボン酸誘導体(IIj)
【0112】
【化37】
【0113】
(式中、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これを必要に応じてエステル化などしてカルボン酸を保護した後、必要に応じてウィッティッヒ反応剤(IVa)と反応させ、次いで酸触媒存在下で加水分解した後、必要に応じてアルカリ触媒存在下で異性化することによりアルカナール誘導体(IIk)
【0114】
【化38】
【0115】
(式中、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これを必要に応じてエステル化などしてカルボン酸を保護した後、必要に応じて1回〜数回ウィッティッヒ反応剤(IVa)と反応させた後(IVe)
【0116】
【化39】
【0117】
(式中、Raはフッ素原子またはアルコキシル基に置換されてもよいアルキル基を表す。)で表されるウィッティッヒ反応剤と反応させることによりカルボン酸誘導体(IIl)
【0118】
【化40】
【0119】
(式中、Rfはアルケニル基を表し、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これを製法チ)と同様に、フェノール誘導体(IIIc)とエステル化することにより一般式(I)におけるRがアルケニル基である化合物を製造することができる。
【0120】
製法ル)Lが−OCO−であり、且つRがアルキル基、アルコキシル基またはアルケニルオキシ基の場合
【0121】
6−置換トランスデカヒドロナフタレン−2−オン(IIa)または(IIf)を水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元することにより
【0122】
【化41】
【0123】
(式中、Rgはアルキル基、アルコキシル基またはアルケニルオキシ基を表し、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表される6−置換トランスデカヒドロナフタレン−2−オールを得る。これを安息香酸誘導体(IIId)
【0124】
【化42】
【0125】
(式中、Xa、Xb、XcおよびZは一般式(I)におけるとおなじ意味を表す。)の酸塩化物を塩基存在下エステル化することにより一般式(I)におけるRがアルキル基、アルコキシル基またはアルケニルオキシ基である化合物を製造することができる。あるいは、(IIm)と(IIId)をN,N−ジアルキルカルボジイミドなどの脱水縮合剤を用いて直接エステル化して製造することもできる。
【0126】
製法ヲ)Lが−OCO−であり、且つRがアルケニル基の場合
【0127】
トランスデカヒドロナフタレン−2,6−ジオンモノアセタール(IIc)を還元したアルコール誘導体(IIe)をハロゲン化剤と反応させるか、あるいは塩化p−トルエンスルホニルまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物などと反応させることにより
【0128】
【化43】
【0129】
(式中、Ldは塩素、臭素またヨウ素のハロゲン原子あるいはp−トルエンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの脱離基を表し、デカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表される化合物(IIn)を得て、これを有機金属反応剤(IVc)と遷移金属触媒存在下にカップリング反応させた後、脱アセタール化することによりデカヒドロナフタレン−2−オン誘導体(IIo)
【0130】
【化44】
【0131】
(式中、Ldおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。ここで遷移金属触媒としてはパラジウム錯体あるいはニッケル錯体が好ましい。これを水素化ホウ素ナトリウムなどの還元剤で還元することにより6−置換トランスデカヒドロナフタレン−2−オール(IIp)
【0132】
【化45】
【0133】
(式中、Rbおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これを製法ル)と同様に安息香酸誘導体(IIId)とエステル化することにより一般式(I)におけるRがアルケニル基である化合物を製造することができる。
【0134】
製法ワ)Lが−CF2O−の場合
【0135】
製法チ)〜ヌ)により製造された一般式(I)においてLが−COO−である化合物(I−r)
【0136】
【化46】
【0137】
(式中、R、Xa、Xb、Xc、Zおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)をローソン反応剤と反応させることにより
【0138】
【化47】
【0139】
(式中、R、Xa、Xb、Xc、Zおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表されるチオカルボン酸O−エステル誘導体(I−q)を得る。これを四フッ化硫黄、DAST(三フッ化硫黄ジメチルアミン錯体)またはDeoxo−Fluor(三フッ化硫黄ジ(メトキシメチル)アミン)などのフッ素化剤と反応させることにより、一般式(I)においてLが−CF2O−である化合物を製造することができる。
【0140】
製法カ)Lが−OCF2−の場合
【0141】
製法ル)〜ヲ)により製造された一般式(I)においてLが−OCO−である化合物(I−p)
【0142】
【化48】
【0143】
(式中、R、Xa、Xb、Xc、Zおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を製法ワ)と同様にローソン反応剤と反応させることにより
【0144】
【化49】
【0145】
(式中、R、Xa、Xb、Xc、Zおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表されるチオカルボン酸O−エステル誘導体(I−o)を得る。これを製法ワ)と同様にDASTまたはDeoxo−Fluorなどのフッ素化剤と反応させることにより、一般式(I)においてLが−OCF2−である化合物を製造することができる。
【0146】
製法ヨ)Lが−CF=CF−の場合
【0147】
デカヒドロナフタレン−2−オール誘導体(IIm)あるいは(IIp)をハロゲン化剤と反応させるか、あるいは塩化p−トルエンスルホニルまたはトリフルオロメタンスルホン酸無水物などと反応させることにより
【0148】
【化50】
【0149】
(式中、Leは塩素、臭素またヨウ素のハロゲン原子あるいはp−トルエンスルホニルオキシ基またはトリフルオロメタンスルホニルオキシ基などの脱離基を表し、Rおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)で表される化合物(IIq)を得る。これをアルキルリチウムまたはリチウム金属と反応させることによりフェニルリチウム誘導体一般式(IIr)
【0150】
【化51】
【0151】
(式中、Rおよびデカヒドロナフタレン環は前述におけるとおなじ意味を表す。)を得る。これをフェニルトリフルオロエチレン誘導体(IIIe)(これらは対応するハロゲン化ベンゼンと1,1,2,2−テトラフルオロエチレン、1−ヨード−1,2,2−トリフルオロエチレンあるいは1−ブロモ−1,2,2−トリフルオロエチレンから調製できる。)
【0152】
【化52】
【0153】
(式中、Xa、Xb、XcおよびZは一般式(I)におけるとおなじ意味を表す。)と反応させることにより、一般式(I)におけるLが−CF=CF−である化合物を製造することができる。
【0154】
斯くして製造される本発明の代表的な化合物(I)の具体例をその相転移温度とともに第1表にまとめて示す。
【0155】
【表1】
【0156】
(表中、Crは結晶相を、Nはネマチック相をまたIは等方性液体をそれぞれ示す。)
【0157】
一般式(I)の化合物を液晶組成物中に添加することにより得られる優れた効果は以下のとおりである。
【0158】
第1表中に表された(I−5)
【0159】
【化53】
【0160】
の化合物を、汎用のn型ホスト液晶(H)
【0161】
【化54】
【0162】
に20%添加してネマチック液晶組成物(H−5)を調製したところ、そのネマチック相上限温度(TN-I)は68.5℃であった。この(H−5)を−20℃で2週間放置したが結晶の析出や相分離は観察されなかった。また、−60℃に冷却して結晶化させ、その融点(TC-N)を測定したところ6.0℃であった。
【0163】
次に、(H−5)をセル厚8.0μmのTNセルに充填して液晶素子を作成し、20℃でその電気光学特性を測定したところ、以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε) 4.3
閾値電圧(Vth) 1.50V
応答時間(τ) 42.0m秒
屈折率異方性(Δn) 0.086
【0164】
一方、ホスト液晶(H)単独での物性値は以下のとおりである。
ネマチック相上限温度(TN-I) 72.5℃
誘電率異方性(Δε) -1.3
屈折率異方性(Δn) 0.085
【0165】
ここで、応答時間は立ち上がり時間(τr)と立ち下がり時間(τd)が等しくなる電圧印加時の応答時間である。ホスト液晶(H)はn型であるために電場応答しないが、(H−5)では(I−5)を20%添加することにより誘電率異方性(Δε)が4.3と大きくなり、42.0m秒という高速応答が可能となった。しかもネマチック相上限温度(TN-I)の低下も約4℃程度に抑えることができた。
【0166】
これに対して、一般式(I)においてLが単結合であるところのフェニルデカヒドロナフタレン誘導体(R−1)
【0167】
【化55】
【0168】
を(H)に20%添加してネマチック液晶組成物(H−R1)を調製した。同様にして液晶素子を作成し、その電気光学特性を測定したところ、以下のとおりであった。
ネマチック相上限温度(TN-I) 65.3℃
融点(TC-N) 2.0℃
誘電率異方性(Δε) 4.0
閾値電圧(Vth) 1.68V
応答時間(τ) 41.5m秒
屈折率異方性(Δn) 0.084
【0169】
(H−R1)はTN-Iが(H−5)より低く、ホスト液晶(H)に対しても約7℃低下しており、Vthが(H−5)より大きく、また応答時間が(H−5)よりやや改善されている。
【0170】
以上のように、本発明の(I−5)の化合物は、ネマチック液晶性に優れ、その添加により誘電率異方性を大きく増大させてその閾値電圧を低減することが可能であり、且つ高速応答が可能であるといった特長を併せ有する点で、類似した(R−1)と比較して同等に優れていることがわかり、またネマチック液晶性に優れているという特長を有する点で類似した(R−1)よりも優れている。
【0171】
次に、第1表中に示された(I−1)
【0172】
【化56】
【0173】
の化合物を、温度範囲が広く低粘性でアクティブマトリックス駆動にも使用可能なホスト液晶組成物(J)
【0174】
【化57】
【0175】
に20重量%添加して液晶組成物(J−1)を調製した。ここで(J)の物性値ならびにそれを用いて作成した液晶素子の電気光学的特性値は以下のとおりである。
ネマチック相上限温度(TN-I) :116.7℃
閾値電圧(Vth) :2.14V
誘電率異方性(Δε) :4.8
屈折率異方性(Δn) :0.090
ここで、閾値電圧(Vth)は厚さ6.0μmのTNセルに封入して20℃で測定した値である。
【0176】
これに対して(J−1)の物性値ならびにそれを用いて同様に作成した液晶素子の電気光学的特性値は以下のとおりとなった。
ネマチック相上限温度(TN-I) :89.2℃
融点(TC-N) :4.0℃
閾値電圧(Vth) :1.74V
誘電率異方性(Δε) :5.8
屈折率異方性(Δn) :0.078
応答時間(τ) :44.0m秒
【0177】
従って、(I−1)を20%添加することにより、誘電率異方性を増大させ、その閾値電圧(Vth)を0.38Vも低減することができた。この値から外挿により計算した(I−1)単独での誘電率異方性は8.8と大きな値となった。
また、(I−1)は分子内にフェニル骨格を有しているにもかかわらず、(J−1)の屈折率異方性は比較的小さい値にとどまった。
【0178】
これに対して、一般式(I)においてLが単結合であるところのフェニルデカヒドロナフタレン誘導体(R−2)
【0179】
【化58】
【0180】
を(J)に同量(20重量%)添加して液晶組成物(J−R2)を調製したところ、ネマチック相上限温度(TN-I)は88.7℃と(I−1)と比べて降下した。また融点(TC-N)は13.0℃と(I−1)と比べて上昇した。従って、(I−1)と比較すると(R−2)のホスト液晶に対する溶解性はあまり優れていないことがわかる。
【0181】
この組成物の他の物性値ならびに同様にして作成した素子の電気光学特性値は以下のとおりである。
閾値電圧(Vth) :1.69V
誘電率異方性(Δε) :5.7
屈折率異方性(Δn) :0.080
応答時間(τ) :41.5m秒
従って、(R−1)は(H−1)とほぼ同等の電気光学特性を有していることがわかる。
【0182】
以上のように、本発明の(I−1)の化合物は、その添加により誘電率異方性を大きく増大させてその閾値電圧を低減することが可能であり、且つ高速応答が可能であるといった特長を併せ有する点で、類似した(R−2)と比較して同等に優れており、またネマチック液晶性や相溶性に優れているという特長を有する点で類似した(R−2)よりも優れている。
【0183】
以上のように、本発明の一般式(I)の化合物は、温度範囲が広く且つ閾値電圧が低く低電圧駆動が可能な液晶組成物を調製する上において、類似したデカヒドロナフタレン誘導体と比較して同等に優れており、特にネマチック液晶性に優れているという特長を有する点で類似したデカヒドロナフタレン誘導体よりも優れている。
【0184】
従って、一般式(I)の化合物は、他のネマチック液晶化合物との混合物の状態で、TN型あるいはSTN型等の電界効果型表示セル用として、特に温度範囲が広く低電圧駆動が可能な液晶材料として好適に使用することができる。また(I)の化合物はその一般式においてL、MおよびZの選択によっては、分子内に強い極性基を有さず、大きい比抵抗と高い電圧保持率を得ることも容易であり、アクティブマトリックス駆動用液晶材料の構成成分として使用することも可能である。本発明はこのように一般式(I)で表される化合物の少なくとも1種類をその構成成分として含有する液晶組成物をも提供するものである。
【0185】
本発明の提供する組成物においては、その第一成分として一般式(I)で表される化合物を少なくとも1種含有するが、その他の成分として特に以下の第二〜第四成分から少なくとも1種含有することが好ましい。
【0186】
即ち、第二成分はいわゆるフッ素系(ハロゲン系)のp型液晶化合物であって、以下の一般式(A1)〜(A3)で示される化合物からなるものである。
【0187】
【化59】
【0188】
上式中、Rbは炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチルまたはエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−または−C≡C−により交換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子またはトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましい。また、分岐により不斉炭素が生じる場合には、化合物として光学活性であってもラセミ体であってもよい。
【0189】
環A、環Bおよび環Cはそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基を表すが、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基または1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基が好ましい。特に環Bがトランス−1,4−シクロヘキシレン基またはトランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基である場合に、環Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましく、環Cがトランス−1,4−シクロヘキシレン基またはトランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基である場合に環Bおよび環Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい。また、(A3)において環Aはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0190】
La、LbおよびLcは連結基であって、それぞれ独立的に単結合、エチレン基(−CH2CH2−)、1,2−プロピレン基(−CH(CH3)CH2−および−CH2CH(CH3)−)、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF2−、−CF2O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−または−CH=NN=CH−を表すが、単結合、エチレン基、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCF2−、−CF2O−、−CF=CF−または−C≡C−が好ましく、単結合またはエチレン基が特に好ましい。また、(A2)においてはその少なくとも1個が、(A3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0191】
環Zは芳香環であり以下の一般式(IXa)〜(IXc)で表すことができる。
【0192】
【化60】
【0193】
式中、Ya〜Yjはそれぞれ独立的に水素原子あるいはフッ素原子を表すが、(IXa)において、YaおよびYbの少なくとも1個はフッ素原子であることが好ましく、(IXb)において、Yd〜Yfの少なくとも1個はフッ素原子であることが好ましく、特にYdはフッ素原子であることがさらに好ましい。
【0194】
末端基Paはフッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメチル基またはジフルオロメチル基あるいは2個以上のフッ素原子により置換された炭素原子数2または3のアルコキシル基、アルキル基、アルケニル基またはアルケニルオキシ基を表すが、フッ素原子、トリフルオロメトキシ基またはジフルオロメトキシ基が好ましく、フッ素原子が特に好ましい。
【0195】
また、(A2)においては本発明の一般式(I)の化合物は除く。
【0196】
第三成分はいわゆるシアノ系のp型液晶化合物であって、以下の一般式(B1)〜(B3)で示される化合物からなるものである。
【0197】
【化61】
【0198】
上式中、Rcは炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチルまたはエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−または−C≡C−により交換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子またはトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数2〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5のアルキル基が好ましい。また、分岐により不斉炭素が生じる場合には、化合物として光学活性であってもラセミ体であってもよい。
【0199】
環D、環Eおよび環Fはそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基を表すが、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基または1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−フェニレン基が好ましい。特に環Eがトランス−1,4−シクロヘキシレン基またはトランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基である場合に、環Dはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましく、環Fがトランス−1,4−シクロヘキシレン基またはトランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基である場合に環Dおよび環Eはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい。また、(B3)において環Dはトランス−1,4−シクロヘキシレン基であることが好ましい。
【0200】
Ld、LeおよびLfは連結基であって、それぞれ独立的に単結合、エチレン基(−CH2CH2−)、1,2−プロピレン基(−CH(CH3)CH2−および−CH2CH(CH3)−)、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF2−、−CF2O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−、−OCH2−、−CH2O−、または−CH=NN=CH−を表すが、単結合、エチレン基、−COO−、−OCF2−、−CF2O−、−CF=CF−または−C≡C−が好ましく、単結合、エチレン基または−COO−が特に好ましい。また、(B2)においてはその少なくとも1個が、(B3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0201】
環Yは芳香環であり以下の一般式(IXd)〜(IXf)で表すことができる。
【0202】
【化62】
【0203】
式中、Yh〜Ynはそれぞれ独立的に水素原子あるいはフッ素原子を表すが、(IXe)において、YnおよびYoは水素原子であることが好ましい。
末端基Paはシアノ基(−CN)、シアナト基(−OCN)または−C≡CCNを表すが、シアノ基が好ましい。
【0204】
また、(B2)においては本発明の一般式(I)の化合物は除く。
【0205】
第四成分は誘電率異方性が0程度である、いわゆるn型液晶であり、以下の一般式(C1)〜(C3)で示される化合物からなるものである。
【0206】
【化63】
【0207】
上式中、RdおよびReはそれぞれ独立的に炭素原子数1〜12のアルキル基を表し、これらは直鎖状であってもメチルまたはエチル分岐を有していてもよく、3〜6員環の環状構造を有していてもよく、基内に存在する任意の−CH2−は−O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−または−C≡C−により交換されていてもよく、基内に存在する任意の水素原子はフッ素原子またはトリフルオロメトキシ基により置換されていてもよいが、炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基または末端が炭素原子数1〜3アルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基が好ましく、さらに少なくとも一方は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基または炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基であることが特に好ましい。
【0208】
環G、環H、環Iおよび環Jはそれぞれ独立的に、トランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基を表すが、各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、他の環はトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子またはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基であることが好ましい。
【0209】
Lg、LhおよびLiは連結基であって、それぞれ独立的に単結合、エチレン基(−CH2CH2−)、1,2−プロピレン基(−CH(CH3)CH2−および−CH2CH(CH3)−)、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF2−、−CF2O−、−CH=CH−、−CH=CF−、−CF=CH−、−CF=CF−、−C≡C−または−CH=NN=CH−を表すが、単結合、エチレン基、1,4−ブチレン基、−COO−、−OCO−、−OCF2−、−CF2O−、−CF=CF−、−C≡C−または−CH=NN=CH−が好ましく、(C2)においてはその少なくとも1個が、(C3)においてはその少なくとも2個が単結合を表すことが好ましい。
【0210】
また、(C2)においては本発明の一般式(I)の化合物は除く。
【0211】
(C1)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C1a)〜(C1h)で表すことができる。
【0212】
【化64】
【0213】
上記各式中、RfおよびRgはそれぞれ独立的に炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基、炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基、炭素原子数1〜3の直鎖状アルコキシル基または末端が炭素原子数1〜3のアルコキシル基により置換された炭素原子数1〜5の直鎖状アルキル基を表すが、少なくとも一方は炭素原子数1〜7の直鎖状アルキル基、炭素原子数2〜7の直鎖状1−アルケニル基または炭素原子数4〜7の直鎖状3−アルケニル基を表す。ただし、環G1〜環G8が芳香環の場合、対応するRfは1−アルケニル基およびアルコキシル基を除き、環H1〜環H8が芳香環の場合、対応するRgは1−アルケニル基およびアルコキシル基を除く。
【0214】
環G1および環H1はそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基を表すが、各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子またはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。環G2および環H2はそれぞれ独立的にトランス−1,4−シクロヘキシレン基、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子またはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。環G3および環H3はそれぞれ独立的に1〜2個のフッ素原子あるいはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基を表すが、各化合物において1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基は1個以内であることが好ましい。
【0215】
(C2)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C2a)〜(C2m)で表すことができる。
【0216】
【化65】
【0217】
上式中、環G1、環G2、環G3、環H1、環H2および環H3は前述の意味を表し、環I1は環G1と、環I2は環G2と、環I3は環G3とそれぞれおなじ意味を表す。また、上記各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子またはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0218】
次に(C3)におけるより好ましい形態は以下の一般式(C3a)〜(C3f)で表すことができる。
【0219】
【化66】
【0220】
上式中、環G1、環G2、環H1、環H2、環I1および環I2は前述の意味を表し、環J1は環G1また環J2は環G2とそれぞれおなじ意味を表す。また、上記各化合物において、トランスデカヒドロナフタレン−トランス−2,6−ジイル基、1個以上のフッ素原子により置換されていてもよいナフタレン−2,6−ジイル基、1〜2個のフッ素原子により置換されていてもよいテトラヒドロナフタレン−2,6−ジイル基、フッ素原子により置換されていてもよい1,4−シクロヘキセニレン基、1,3−ジオキサン−トランス−2,5−ジイル基、ピリミジン−2,5−ジイル基またはピリジン−2,5−ジイル基は1個以内であることが好ましく、その場合の他方の環はトランス−1,4−シクロヘキシレン基あるいは1〜2個のフッ素原子またはメチル基により置換されていてもよい1,4−フェニレン基である。
【0221】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明をさらに説明する。しかし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0222】
(実施例1)2−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エチル]−6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン(I−1)の合成
【0223】
【化67】
【0224】
(1−a)6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒドの合成
6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−オン24gのテトラヒドロフラン(THF)100mL溶液を、塩化メトキシメチルトリフェニルホスホニウム38g、t−ブトキシカリウム14gからTHF200mL中で調製したウィッティッヒ反応剤中に、10℃以下に冷却しながら滴下した。室温に戻して4時間撹拌後、水とヘキサンを加え、有機層を分離し、水で洗滌し、溶媒を溜去した。得られた淡黄色油状物をTHF180mLに溶解し、10%塩酸180mLを加えて、3時間加熱還流した。室温に戻し、有機層を分離し、水層を酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗滌し、溶媒を溜去した。得られた淡黄色固体をメタノール160mLに溶解し、10℃以下に冷却しながら、10%水酸化ナトリウム水溶液20mLを加えた。2時間攪拌後室温に戻し、溶媒を溜去し、得られた淡黄色固体を水で洗滌し、ヘキサンから再結晶し、6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒドの白色固体18gを得た。
【0225】
(1−b)2−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エテニル]−6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレンの合成
(1−a)で得られた6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒド18gのTHF90mL溶液を、臭化3,4,5−トリフルオロベンジルトリフェニルホスホニウム49gとt−ブトキシカリウム12gからTHF250mL中で調製したウィッティッヒ反応剤中に、10℃以下に冷却しながら滴下した。室温に戻して4時間撹拌後、水とヘキサンを加え、有機層を分離し、水で洗滌し、溶媒を溜去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製して、2−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エテニル]−6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレンの無色油状物22gを得た。
【0226】
(1−c)2−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エチル]−6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレンの合成
(1−b)で得られた2−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エテニル]−6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン22gを酢酸エチル120mLに溶解し、5%パラジウム−炭素5gを加えて、室温で6時間水素添加した。触媒をセライト濾過し、溶媒を溜去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、−70℃以下でエタノールから再結晶して2−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エチル]−6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレンの白色固体6gを得た。
【0227】
(実施例2)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−6−(3−ブテニル)−トランスデカヒドロナフタレン(I−2)の合成
【0228】
【化68】
【0229】
(2−a)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスオクタヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの合成
金属マグネシウム3gをTHF15mL中で懸濁している中に、臭化2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル24gのTHF120mL溶液を滴下し、グリニヤール反応剤を調製した。溶液を10℃以下に冷却しながらトランスデカヒドロナフタレン−2,6−ジオンモノエチレンアセタール21gのTHF110mL溶液を滴下し、室温に戻して1時間攪拌した。飽和塩化アンモニウム水溶液を加えた後に、有機層を分離して、飽和食塩水で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を溜去した。得られた油状物をトルエン190mLに溶解し、p−トルエンスルホン酸一水和物2gを加え、水分離器を取り付けた装置で、溜出水がなくなるまで4時間加熱還流した後、エチレングリコール10mLを加え、さらに溜出水がなくなるまで4時間加熱還流した。室温まで冷却して水を加え、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を溜去し、2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスオクタヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの淡黄色油状物30gを得た。
【0230】
(2−b)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの合成
(2−a)で得られた2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスオクタヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタール30gを(1−c)と同様に接触水素還元することにより、2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの淡黄色油状物29gを得た。
【0231】
(2−c)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンの合成
(2−b)で得られた2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタール29gをトルエン150mLに溶解し、ギ酸80mLを加え、室温で1時間攪拌した。水を加え、有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を溜去し、2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンの淡黄色固体19gを得た。
【0232】
(2−d)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒドの合成
(2−c)で得られた2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オン19gを(1−a)と同様にウィッティッヒ反応させることにより、2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒドの白色固体19gを得た。
【0233】
(2−e)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−6−(3−オキソプロピル)−トランスデカヒドロナフタレンの合成
(2−d)で得られた2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒド19gを(1−a)と同様のウィッティッヒ反応剤との反応をさらに2回繰り返して、2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−6−(3−オキソプロピル)−トランスデカヒドロナフタレンの白色固体18gを得た。
【0234】
(2−f)2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−6−(3−ブテニル)−トランスデカヒドロナフタレンの合成
(2−e)で得られた2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−6−(3−オキソプロピル)−トランスデカヒドロナフタレン18gのTHF55mL溶液を、ヨウ化メチルトリフェニルホスホニウム28gおよびt−ブトキシカリウム11gからTHF160mL溶液中で調製したウィッティッヒ反応剤中に、10℃以下に冷却しながら滴下した。室温に戻して4時間撹拌後、水とヘキサンを加え、有機層を分離し、水で洗滌し、溶媒を溜去した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、−70℃以下でエタノールから再結晶して2−[2−(3,4−ジフルオロフェニル)エチル]−6−(3−ブテニル)−トランスデカヒドロナフタレンの白色固体4gを得た。
【0235】
(実施例3)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−6−(トランス−2−ブテニルオキシ)−トランスデカヒドロナフタレン(I−3)の合成
【0236】
【化69】
【0237】
(3−a)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスオクタヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの合成
(2−a)と同様に、トランスデカヒドロナフタレン−2,6−ジオンモノエチレンアセタール21gと臭化2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチルから調製したグリニヤール反応剤を反応させることにより2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスオクタヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの白色固体31gを得た。
【0238】
(3−b)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの合成
(3−a)で得られた2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスオクタヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタール31gを(1−c)と同様に接触水素還元することにより、2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタールの淡黄色固体29gを得た。
【0239】
(3−c)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンの合成
(3−b)で得られた2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンエチレンアセタール29gを(2−c)と同様に脱アセタール化することにより、2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オンの白色固体20gを得た。
【0240】
(3−d)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オールの合成
(3−c)で得られた2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オン20gをメタノール100mLに溶解し、10℃以下に冷却しながら、水素化ホウ素ナトリウム2gを少量ずつ加え、室温で1時間攪拌した。水を加え、酢酸エチルで抽出し、水、飽和食塩水の順で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を溜去し、2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オールの淡黄色固体18gを得た。
【0241】
(3−e)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−6−(トランス−2−ブテニルオキシ)−トランスデカヒドロナフタレンの合成
(3−d)2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−トランスデカヒドロナフタレン−2−オール18gのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)90mL溶液を、DMF20mL中に60%水素化ナトリウム4gを懸濁した中に、10℃以下に冷却しながら滴下した。室温に戻して30分間撹拌後、10℃以下に冷却しながら塩化トランス−2−ブテニル11gのDMF40mL溶液を滴下した。50℃で8時間加熱攪拌後、水と酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水、飽和食塩水で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、エタノールから再結晶して2−[2−(4−トリフルオロメトキシフェニル)エチル]−6−(トランス−2−ブテニルオキシ)−トランスデカヒドロナフタレンの白色固体2gを得た。
【0242】
(実施例4)6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸4−シアノ−3−フルオロフェニル(I−4)の合成
【0243】
【化70】
【0244】
(4−a)6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒドの合成
6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−オン28gを(1−a)と同様のウィッティッヒ反応剤と反応して6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒドの白色固体19gを得た。
【0245】
(4−b)6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸の合成
(4−a)で得られた6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒド19gを濃硫酸12g、過マンガン酸カリウム6gの水60mL溶液中に10℃以下に冷却しながら滴下した。室温で30分攪拌後、水と酢酸エチルを加え、有機層を分離し、水、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、水、飽和食塩水の順で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を溜去し、ヘキサンから再結晶して6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸の白色固体8gを得た。
【0246】
(4−c)6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸4−シアノ−3−フルオロフェニルの合成
(4−b)で得られた6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸8gを1,2−ジクロロエタン40mLに溶解し、塩化チオニル5g、ピリジン0.1mL、DMF5mLを加え、1時間加熱還流した。過剰の塩化チオニルを溜去後、ジクロロメタン50mLを加え、3−フルオロ−4−シアノフェノール4gおよびピリジン3gを加え、8時間室温で攪拌した。10%塩酸を加え、有機層を分離し、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水の順で洗滌し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を溜去後、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、エタノールから再結晶して6−ペンチル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸4−シアノ−3−フルオロフェニルの白色結晶3gを得た。
【0247】
(実施例5)6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニル(I−5)の合成
【0248】
【化71】
【0249】
(5−a)6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸の合成
(1−a)で得られた6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルバルデヒド37gを(4−b)と同様の酸化反応を行うことにより6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸の白色固体15gを得た。
【0250】
(5−b)6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニルの合成
(5−a)で得られた6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸15gと3,5−ジフルオロ−4−シアノフェノール11gを(4−c)と同様のエステル化反応を行うことにより6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−カルボン酸4−シアノ−3,5−ジフルオロフェニルの白色固体6gを得た。
【0251】
(実施例6)4−メトキシ安息香酸6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−イル(I−6)の合成
【0252】
【化72】
【0253】
(6−a)6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−オールの合成
6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−オン12gを(3−d)と同様の還元を行うことにより6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−オール8gを得た。
【0254】
(6−b)4−メトキシ安息香酸6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−イルの合成
(6−a)で得られた6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−オール8gと塩化4−メトキシベンゾイル7gを(4−c)と同様のエステル化反応を行うことにより4−メトキシ安息香酸6−プロピル−トランスデカヒドロナフタレン−2−イルの白色固体2gを得た。
【0255】
(実施例7)液晶組成物の調製(1)
汎用のn型ホスト液晶組成物(H)
【0256】
【化73】
【0257】
を調製した。この(H)は72.5℃以下でネマチック相を示し、その融点は17℃である。この組成物の物性値は以下のとおりであった。
誘電率異方性(Δε) −1.3
屈折率異方性(Δn) 0.085
【0258】
次に、この(H)の80重量%と実施例4で得られた本発明の化合物(I−5)
【0259】
【化74】
【0260】
の20重量%からなる液晶組成物(H−5)を調製した。この組成物の液晶(ネマチック)相上限温度(TN-I)は68.5℃であり、(H)に対する低下を4℃に抑えることができた。この(H−5)を−20℃で2週間放置したが結晶の析出や相分離は観察されなかった。また、−60℃に冷却して結晶化させ、その融点(TC-N)を測定したところ6.0℃であった。これから、(I−5)の化合物は汎用液晶との相溶性にも優れていることがわかる。
【0261】
次に、この(H−5)をセル厚8.0μmのTNセルに充填して液晶素子を作成し、20℃でその電気光学特性を測定したところ、以下のとおりであった。
閾値電圧(Vth) 1.50V
応答時間(τ) 42.0m秒
誘電率異方性(Δε) 4.3
屈折率異方性(Δn) 0.086
【0262】
ホスト液晶(H)はn型であるために電場応答しないが、(H−5)では(I−5)を20%添加することにより誘電率異方性(Δε)が4.3と大きくなり、閾値電圧が1.50Vと低電圧駆動が可能となり、さらに42.0m秒という高速応答も可能となった。しかもネマチック相上限温度(TN-I)の低下も約4℃程度に抑えることができた。
【0263】
(比較例1)
実施例7において、(I−5)に換えて、類似の構造を有するが、Lが単結合であるところのフェニルデカヒドロナフタレン誘導体(R−1)
【0264】
【化75】
【0265】
を(H)に同量(20重量%)添加してネマチック液晶組成物(H−R1)を調製した。同様にして液晶素子を作成し、その電気光学特性を測定したところ、以下のとおりであった。
ネマチック相上限温度(TN-I) 65.3℃
融点(TC-N) 2.0℃
閾値電圧(Vth) 1.68V
応答時間(τ) 41.5m秒
誘電率異方性(Δε) 4.0
屈折率異方性(Δn) 0.084
【0266】
(H−R1)はTN-Iが(H−5)より低くホスト液晶(H)に対しても約7℃低下しており、またVthが(H−5)より大きく、応答時間が(H−5)よりやや改善されている。
【0267】
以上のように、本発明の(I−5)の化合物は、ネマチック相温度範囲を改善した液晶組成物を調製する上において非常に有用である。
【0268】
(実施例8)液晶組成物の調製(2)
汎用のp型ホスト液晶組成物(J)
【0269】
【化76】
【0270】
を調製した。この(J)は116.7℃以下でネマチック相を示し、その融点は11.0℃である。(J)をセル厚6.0μmのTNセルに充填して液晶素子を作成し、20℃での電気光学特性は以下のとおりであった。
閾値電圧(Vth) 2.14V
応答時間(τ) 25.3m秒
急峻性(γ) 1.23
誘電率異方性(Δε) 4.8
屈折率異方性(Δn) 0.090
【0271】
次に、この(J)の80重量%と実施例4で得られた本発明の化合物(I−1)
【0272】
【化77】
【0273】
の20重量%からなる液晶組成物(J−1)を調製した。この組成物のTN-Iは89.2℃であった。この(J−1)を−20℃で4週間放置したが結晶の析出や相分離は観察されなかった。また、−60℃に冷却して放置し結晶化させて、そのTC-Nを測定したところ4.0℃であり、(J)よりも大幅に降下させることができ、(I−1)がホスト液晶によく溶解していることがわかる。
【0274】
次に、(J−1)をセル厚6.0μmのTNセルに充填して液晶素子を作成し、20℃でその電気光学特性を測定したところ、以下のとおりであった。
閾値電圧(Vth) 1.74V
応答時間(τ) 44.0m秒
誘電率異方性(Δε) 5.8
屈折率異方性(Δn) 0.078
従って、(J)は(I−1)を20重量%添加することにより、誘電率異方性を増大させ、その閾値電圧(Vth)を0.38Vも低減することができた。
【0275】
また、この素子の室温および80℃における電圧保持率を測定したが、いずれも極めて良好でアクティブマトリックス駆動用としても充分使用可能であることがわかった。
【0276】
(比較例2)
実施例7において、(I−1)に換えて、類似の構造を有するが、Lが単結合であるところのフェニルデカヒドロナフタレン誘導体(R−2)
【0277】
【化78】
【0278】
を(J)に同量(20重量%)添加してネマチック液晶組成物(J−R2)を調製した。同様にして液晶素子を作成し、その電気光学特性を測定したところ、以下のとおりであった。
ネマチック相上限温度(TN-I) 88.7℃
融点(TC-N) 13.0℃
閾値電圧(Vth) 1.69V
応答時間(τ) 41.5m秒
誘電率異方性(Δε) 5.7
屈折率異方性(Δn) 0.080
【0279】
(J−R2)はTN-Iが(J−1)より低く、ネマチック相温度範囲が縮小している。また、(J−1)と比較して(J−R2)は電気光学特性に殆ど変化がないが、応答時間がやや改善されている。
【0280】
以上のように、本発明の(I−1)の化合物は、ネマチック相温度範囲を改善した液晶組成物を調製する上において非常に有用である。
【0281】
また、一般式(I−1)の化合物は分子内に強い極性基を持たず、大きい比抵抗と高い電圧保持率を得ることが容易であり、アクティブマトリックス駆動用液晶材料の構成成分として使用することも可能である。
【0282】
(実施例9)液晶組成物の調製(3)
以下の組成からなる液晶組成物(M)を調製した。
【0283】
4重量%の4−エトキシ−1−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン
3重量%のトランス−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸4−メチルフェニル
3重量%のトランス−4−プロピルシクロヘキサンカルボン酸4−エトキシフェニル
3重量%のトランス−4−(4−メチルフェニル)−トランス−4’−ビニルビシクロヘキサン
3重量%のトランス−4−ブチル−トランス−4’−プロピルビシクロヘキサン
4重量%のトランス−4−ペンチル−トランス−4’−ビニルビシクロヘキサン
3重量%の4,4’−ビス(3−ブテニル)ビシクロヘキサン
4重量%の1−(4−プロピルフェニル)−2−(4−メチルフェニル)エチン
3重量%の1−(4−エトキシフェニル)−2−(4−ペンチルフェニル)エチン
3重量%の1,2−ビス[4−(3−ブテニル)フェニル]エチン
4重量%の1−(4−エチルフェニル)エチニル−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン
3重量%の4−(トランス−4−ペンチルシクロヘキシル)−4’−エチルビフェニル
3重量%の4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−1−シアノベンゼン
4重量%の4−[トランス−4−(トランス−1−プロペニル)シクロヘキシル]−1−シアノベンゼン
3重量%の4−[トランス−4−(3−ブテニル)シクロヘキシル]−1−シアノベンゼン
3重量%の4’−ペンチル−4−シアノビフェニル
4重量%の2−(4−シアノフェニル)−5−ペンチルピリミジン
3重量%の4−エチル安息香酸4−シアノフェニル
3重量%のトランス−4−ペンチルシクロヘキサンカルボン酸3,4−ジフルオロフェニル
4重量%の4−ブチル安息香酸3−フルオロ−4−シアノフェニル
3重量%の4−(トランス−3−ペンテン−1−イル)安息香酸3,5−ジフルオロ−4−シアノフェニル
3重量%のトランス−4−(3−フルオロ−4−シアノフェニル)−トランス−4’−(3−メトキシプロピル)ビシクロヘキサン
3重量%のトランス−4−(3,4−ジフルオロフェニル)−トランス−4’−エチルビシクロヘキサン
4重量%のトランス−4−(3,4−ジフルオロフェニル)−トランス−4’−ビニルビシクロヘキサン
4重量%のトランス−4−(3,4,5−トリフルオロフェニル)−トランス−4’−プロピルビシクロヘキサン
3重量%のトランス−4−[2−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エチル]−トランス−4’−プロピルビシクロヘキサン
3重量%の4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−4’−シアノビフェニル
4重量%の4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)安息香酸3−フルオロ−4−シアノフェニル
3重量%の4’−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)−3,4,5−トリフルオロビフェニル
3重量%の1−(3,4,5−トリフルオロフェニル)エチニル−4−(トランス−4−プロピルシクロヘキシル)ベンゼン
この(M)のTN-Iは75.0℃であり、Δnは0.142であった。この(M)の90%と実施例5で得られた(I−5)
【0284】
【化79】
【0285】
の7%および実施例1で得られた(I−1)
【0286】
【化80】
【0287】
の3%からなる液晶組成物(M−I)を調製した。この(M−I)のTN-Iは70.6℃であり、Δnは0.135であった。
【0288】
【発明の効果】
本発明の新規化合物であるフェニレン基とデカヒドロナフタレン基の間に連結基を有するデカヒドロナフタレン誘導体は、従来のフェニレン基とデカヒドロナフタレン基が直結したデカヒドロナフタレン誘導体と比較して、同等に現在汎用の液晶化合物あるいは組成物との相溶性に優れ、特にネマチック液晶性に優れており、その添加によりネマチック相温度範囲を改善した液晶組成物を得ることができる。従って、これを含有する液晶組成物は実用的液晶として、特にネマチック液晶温度範囲が広い液晶表示材料を必要とする液晶表示用として極めて有用である。
Claims (4)
- 一般式(I)においてZが水素原子、フッ素、塩素、炭素原子数1〜7のアルキル基、アルコキシル基、アルケニル基、アルケニルオキシ基またはシアノ基を表すところの請求項1記載のフェニルデカヒドロナフタレン誘導体。
- 請求項1又は2記載の一般式(I)で表される化合物を含有する液晶組成物。
- 請求項3記載の液晶組成物を構成要素とする液晶素子。
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