JP5092908B2 - 耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板およびその製造方法 - Google Patents
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まず、成分組成について説明する。
本発明に係る高強度薄鋼板は、mass%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下で、残部が実質的に鉄からなる。さらに、Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、B:0.01%以下、Ti:0.1%以下、Nb:0.1%以下のうち1種以上を含有してもよい。
Cは、本発明において極めて重要な元素の一つである。低温変態相を生成させ、高強度化を達成するには非常に有効な元素であるが、0.05%を超えて添加した場合、加工性の著しい低下を招き、かつ溶接性も劣化させるので、C量は0.05%以下とする。特に、本発明は自動車内外板を主な対象とするため、極めて高い成形性(深絞り性、張出し性等)が必須となる。これらの成形性は、一般にC量の増加とともに低下することが知られており、C量が、0.05%を超えた場合、フェライト中の固溶C量が多くなり、上記の成形性を満足できなくなる。さらに、C量が0.05%を超えると、熱延段階でスケール性表面欠陥が発生しやすくなり、最終的な亜鉛めっき後の表面性状を劣化させ、自動車内外板レベルの表面品質を得ることができないので、C量は0.05%以下に規制する。なお、極めて高い成形性が要求される場合には0.04%以下に低減することが望ましい。しかし、一定体積率の低温変態相を形成させるためには、一定量含有することが必須である。そのため、他の元素の含有量にもよるが、C量を0.01%以上とすることが望ましい。
Siは、低温変態相を安定して得るために有効な元素であるが、含有量が高くなると、表面性状および化成処理性が著しく劣化するため、Si量を2.0%以下とする。
Mnは、低温変態相の生成に非常に重要な元素であり、本発明では焼入れ性を向上させるため、一定量、好ましくは0.5%以上添加することが必要である。しかし、過剰に添加すると、スラブコストの著しい増加とともに、加工性の劣化を招くので、Mn量を3.0%以下とする。
PはSiと同様に低温変態相を安定させるために有効な元素であるが、多量に添加すると、Pの粒界偏析によって粒界を脆化させる。また亜鉛めっきの合金化速度を遅くし、めっき不良や不めっきの原因となる。したがって、P量は0.1%以下とする。
Sは、熱間圧延時に粒界に偏析してスラブ割れを発生させ、表面疵の発生割合が高くなるため、その含有量は少ない方がよい。また、0.03%を超えると、MnSが析出し、加工性が劣化する。したがって、S量は0.03%以下とする。
Alは脱酸元素として鋼中の介在物を減少させる作用を有している。しかしながら、Al含有量が0.1%を超えると、クラスター状のアルミナ系介在物が増加し延性が低下する。したがって、Al量は0.1%以下とする。介在物を減少させる作用を発揮させるためには、0.01%以上とすることが望ましい。
Nは加工性、時効性の観点から、その含有量は少ない方がよい。0.01%を超えて添加すると、過剰な窒化物の生成により、延性、靱性が劣化する。したがって、N量は0.01%以下とする。
Cr,Mo,Vは、焼入れ向上元素であり、低温変態相を安定して生成させるために必要に応じて添加する。ただし、過剰に添加しても、その効果が飽和するばかりか、コスト面でも不利になる。したがって、Cr、Mo、Vを添加する場合はそれぞれ1%以下とする。
Bは、粒界強化に有効な元素である。また焼入れ性向上にも寄与し、低温変態相を安定して得るために必要に応じて添加する。ただし、0.01%を超えて添加しても、コストに見合う効果が得られないので、添加する場合には0.01%以下とする。
Ti,Nbは、炭窒化物を形成し、固溶C、N量を低下させ、深絞り性を向上させるために有効な元素であるから必要に応じて添加する。しかしながら、いずれも0.1%を超えて含有させても効果が飽和し、冷延後の焼鈍時の再結晶温度が高くなるため、製造性が劣化する。したがって、添加する場合はそれぞれ0.1%以下とする。
本発明に係る高強度薄鋼板は、上記成分組成を有する他、ミクロ組織がフェライトと体積率10%未満の低温変態相からなり、かつフェライト粒径d(μm)と低温変態相分率Vm(%)がd<−0.5×Vm+16(Vm<10%)の関係を満たす。
低温変態相はクラック発生起点となるので、低温変態相の分率を低減する必要がある。さらに本発明は、高い成形性が要求される自動車外板等を主対象としているため、可能な限り低温変態相分率を下げ、加工性を確保することが非常に重要である。従って、低温変態相分率を10%未満と規定する。さらに耐二次加工脆性、成形性を改善するには、低温変態相分率を7%未満とすることが望ましい。一方、所望の強度を確保するためには、低温変態相分率を2%以上とすることが望ましい。ここで、低温変態相とは、マルテンサイト相を主体とするが、これ以外に、残留γ相、ベイナイト相、炭化物が含まれていても良い。
優れた耐二次加工脆性を得るためには、フェライト粒径dと低温変態相分率Vmが最適な範囲にあることが極めて重要である。すなわち、低温変態相分率が大きい場合、よりフェライト粒径を微細化させる必要がある。上述のようにVm<10%の範囲内において、フェライト粒径が−0.5×Vm+16より大きい場合、低温変態相に対して、フェライト粒径が十分に小さくないので、優れた耐二次加工脆性が得られない。したがって、フェライト粒径dは、Vm<10%において、d<−0.5×Vm+16の関係式を満足する範囲に規定する。耐二次加工脆性をさらに改善するには、フェライト粒径をd<−0.5×Vm+11とすることがより望ましい。
本発明では、上述の耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板を得ることが可能な製造方法として、上述の成分組成を有する鋼を溶製した後、熱間圧延し、得られた熱延鋼板を冷間圧延後、Ac1点以上Ac3点以下の温度範囲で焼鈍し、引き続き3℃/s超の速度で450〜700℃の温度範囲に一次冷却し、その後10℃/s以上の速度でMs点以下の温度まで2次冷却する。
Claims (3)
- mass%で、C:0.05%以下、Si:2.0%以下、Mn:3.0%以下、P:0.1%以下、S:0.03%以下、Al:0.1%以下、N:0.01%以下を含有し、さらにTi:0.1%以下およびNb:0.1%以下のうち1種以上を含有し、残部が鉄および不可避的不純物からなり(ただし、C:0.002〜0.010%、Si≦1.0%、Mn:0.2〜2.0%、P≦0.20%、Al:0.005〜0.10%を含有し、さらに、Ti≦0.1%、Nb≦0.1%で、かつ、{(C/12)+(N/14)+(S/32)}<{(Ti/48)+(Nb/93)}となる量のTiおよびNbを含有する範囲を除く)、ミクロ組織がフェライトと体積率2%以上10%未満の低温変態相からなり、かつフェライト粒径d(μm)と低温変態相分率Vm(%)がd<−0.5×Vm+16(Vm<10%)の関係を満たすことを特徴とする耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板。
- さらに、mass%で、Cr:1%以下、Mo:1%以下、V:1%以下、B:0.01%以下のうち1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板。
- 請求項1または2記載の成分組成を有する鋼を溶製した後、熱間圧延し、得られた熱延鋼板を冷間圧延後、Ac1点以上Ac3点以下の温度範囲で焼鈍し、引き続き3℃/s超の速度で450〜700℃の温度範囲に一次冷却し、その後10℃/s以上の速度でMs点以下の温度まで2次冷却し、ミクロ組織がフェライトと体積率2%以上10%未満の低温変態相からなり、かつフェライト粒径d(μm)と低温変態相分率Vm(%)がd<−0.5×Vm+16(Vm<10%)の関係を満たす高強度薄鋼板を製造することを特徴とする耐二次加工脆性に優れた高強度薄鋼板の製造方法。
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