JP2017145467A - 高強度鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】主相がベイニティックフェライトであり、第二相にポリゴナルフェライトおよび残留オーステナイトを含む金属組織を有する高強度鋼板を製造する方法であって、所定の化学組成を有するスラブに対して、Ar3点〜1100℃の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板とし、650℃以下の温度域で巻取る熱間圧延工程と、前記熱延鋼板を、(Ac3点-50℃)〜(Ac3点-2℃)の温度域において、[1.4×10-8×exp{26500/(T+273)}≦t≦4.0×105]を満足する時間保持する一次焼鈍工程と、前記焼鈍鋼板を、(Ac3点-40℃)以上(Ac3点+100℃)未満の温度域で保持した後、500℃〜Ms点の温度域まで冷却し、該温度域で30s以上保持する二次焼鈍工程とを備える、高強度鋼板の製造方法。
【選択図】 なし
Description
下記工程(A)〜(C)を備える、高強度鋼板の製造方法。
(A)質量%で、
C:0.04%以上0.50%未満、
Si:0.10%以上3.0%未満、
Mn:1.5〜8.0%、
P:0.10%以下、
S:0.030%以下、
sol.Al:0.01〜2.0%、
N:0.010%以下、
Ti:0〜0.20%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
Cr:0%以上1.0%未満、
Mo:0〜0.50%、
Ni:0〜1.0%、
B:0〜0.0050%、
Ca:0〜0.020%、
Mg:0〜0.020%、
REM:0〜0.020%、
Cu:0〜1.0%、
Bi:0〜0.020%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式を満足する化学組成を有するスラブに対して、
Ar3点〜1100℃の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板とし、650℃以下の温度域で巻取る熱間圧延工程。
0.5≦Si+sol.Al≦3.0 ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(B)前記工程(A)で得た熱延鋼板を、(Ac3点−50℃)〜(Ac3点−2℃)の温度域において、下記(ii)式を満足する時間保持する一次焼鈍工程。
1.4×10−8×exp{26500/(T+273)}≦t≦4.0×105 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各記号の意味は以下のとおりである。
t:一次焼鈍保持時間(秒)
T:一次焼鈍温度(℃)
(C)前記工程(B)で得た焼鈍鋼板を、(Ac3点−40℃)以上(Ac3点+100℃)未満の温度域で保持した後、500℃〜Ms点の温度域まで冷却し、該温度域で30秒以上保持する二次焼鈍工程。
Ti:0.005〜0.20%、
Nb:0.002〜0.10%、および
V:0.005〜0.50%、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)から(3)までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
Cr:0.05%以上1.0%未満、
Mo:0.02〜0.50%、
Ni:0.05〜1.0%、および
B:0.0002〜0.0050%、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)から(4)までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
Ca:0.0005〜0.020%、
Mg:0.0005〜0.020%、および
REM:0.0005〜0.020%、
から選択される1種以上を含有する、上記(1)から(5)までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
Cu:0.05〜1.0%
を含有する、上記(1)から(6)までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
Bi:0.0005〜0.020%
を含有する、上記(1)から(7)までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
工程(A)では、所定の化学組成を有するスラブに対して、Ar3点〜1100℃の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板とし、650℃以下の温度域で巻取る。各構成についてより詳細に説明する。
各元素の限定理由は下記のとおりである。なお、以下の説明において含有量についての「%」は、「質量%」を意味する。
Cは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用と残留オーステナイトを安定化させる作用とを有する。C含有量が0.04%未満では、所望の鋼板強度および残留オーステナイト面積率を確保することが困難となる。一方、C含有量が0.50%以上では、パーライトが優先的に生成してしまい目的の残留オーステナイト面積率を得ることが困難となる。したがって、C含有量は0.04%以上0.50%未満とする。C含有量は0.06%以上であるのが好ましく、0.10%以上であるのがより好ましい。また、C含有量は0.40%以下であるのが好ましい。
Siは、固溶強化により鋼板の強度を高める作用と脱酸により鋼を健全化する作用とを有する。さらにセメンタイトの析出を遅延させ、残留オーステナイトの面積率を高める作用により、延性の向上に寄与する。Si含有量が0.10%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。一方、Si含有量が3.0%以上になると、鋼板の表面性状および化成処理性の劣化、ならびに、延性および溶接性の劣化が著しくなる。また、A3変態点の著しい上昇を招き、安定した熱間圧延を困難にする。したがって、Si含有量は0.10%以上3.0%未満とする。
Mnは、鋼の焼入れ性を高めてベイニティックフェライトの生成を促進する作用を有する。Mn含有量が1.5%未満では、目的とするベイニティックフェライト量を確保することが困難である。一方、Mn含有量が8.0%を超えると、フェライト変態が過度に抑制されてしまい、目的とするポリゴナルフェライト量を確保することが困難となる。したがって、Mn含有量は1.5〜8.0%とする。Mn含有量は2.0%以上であるのが好ましく、2.3%以上であるのがより好ましい。また、Mn含有量は6.0%以下であるのが好ましい。
Pは、一般に不純物として含有される元素であるが、固溶強化により強度を高める作用を有する元素でもある。したがって、Pを積極的に含有させてもよい。しかし、Pは偏析し易い元素であり、その含有量が0.10%を超えると、粒界偏析に起因する成形性および靭性の低下が顕著となる。したがって、P含有量は0.10%以下とする。P含有量は0.050%以下であるのが好ましく、0.030%以下であるのがより好ましく、0.020%以下であるのがさらに好ましい。P含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの観点からは0.001%以上とすることが好ましい。
Sは、不純物として含有される元素であり、鋼中に硫化物系介在物を形成して鋼板の成形性を低下させる。S含有量が0.030%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、S含有量は0.030%以下とする。S含有量は0.010%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましく、0.001%以下であるのがさらに好ましい。S含有量の下限は特に規定する必要はないが、精錬コストの上昇を抑制する観点からは0.0001%以上とすることが好ましい。
Alは、Siと同様に、鋼を脱酸して鋼板を健全化する作用を有する。さらにセメンタイトの析出を遅延させ、残留オーステナイトの面積率を高める作用により、延性の向上に寄与する。sol.Al含有量が0.01%未満では上記作用による効果を得ることが困難である。一方、sol.Al含有量が2.0%を超えると、A3変態点の著しい上昇を招いて、安定した熱間圧延を困難にする。したがって、sol.Al含有量は0.01〜2.0%とする。sol.Al含有量は0.03%以上であるのが好ましい。また、sol.Al含有量は1.5%以下であるのが好ましく、1.0%以下であるのがより好ましい。
Nは、不純物として含有される元素であり、鋼板の成形性を低下させる作用を有する。N含有量が0.010%を超えると、成形性の低下が著しくなる。したがって、N含有量は0.010%以下とする。N含有量は0.0080%以下であるのが好ましく、0.0070%以下であるのがより好ましい。N含有量の下限は特に規定する必要はないが、後述するようにTi、NbおよびVの1種以上を含有させて鋼組織の微細化を図る場合を考慮すると、炭窒化物の析出を促進させるためにN含有量は、0.0010%以上とすることが好ましく、0.0020%以上とすることがより好ましい。
Nb:0〜0.10%
V:0〜0.50%
Ti、NbおよびVは、鋼中に炭化物または窒化物として析出し、そのピン止め効果によって鋼組織を微細化する作用を有する。したがって、これらの元素から選択される1種以上を含有させてもよい。しかし、過剰に含有させても、上記作用による効果が飽和して不経済となる。したがって、Ti含有量は0.20%以下、Nb含有量は0.10%以下、V含有量は0.50%以下とする。これらの元素の上記作用による効果をより確実に得るには、Ti:0.005%以上、Nb:0.002%以上、およびV:0.005%以上の少なくともいずれかを満足させることが好ましい。
Mo:0〜0.50%
Ni:0〜1.0%
B:0〜0.0050%
Cr、Mo、NiおよびBは、焼入性を高める作用を有する。また、Moは、鋼中に炭化物を析出して強度を高める作用を有する。さらに、Niは、後述するようにCuを含有させる場合においては、Cuに起因するスラブの粒界割れを効果的に抑制する作用を有する。したがって、これらの元素から選択される1種以上を含有させてもよい。
Mg:0〜0.020%
REM:0〜0.020%
Ca、MgおよびREMは、介在物の形状を調整することにより、成形性を高める作用を有する。したがって、これらの元素から選択される1種以上を含有させてもよい。しかし、これらの元素の含有量が上記上限値を超えると、鋼中の介在物が過剰となり、却って成形性を低下させる場合がある。したがって、Ca含有量は0.020%以下、Mg含有量は0.020%以下、REM含有量は0.020%以下とする。それぞれの元素は、0.010%以下であるのが好ましく、0.005%以下であるのがより好ましい。上記作用による効果をより確実に得るには、上記元素の少なくともいずれかを0.0005%以上含有させることが好ましい。
Cuは、低温で析出して強度を高める作用を有するので、鋼中に含有させてもよい。しかし、Cu含有量が1.0%を超えると、スラブの粒界割れが生じる場合がある。したがって、Cu含有量は1.0%以下とする。Cu含有量は0.5%未満であるのが好ましく、0.3%未満であるのがより好ましい。上記作用による効果をより確実に得るにはCu含有量は0.05%以上とすることが好ましい。
Biは、凝固組織を微細化することにより成形性を高める作用を有するので、鋼中に含有させてもよい。しかし、Bi含有量が0.020%を超えると、上記作用による効果は飽和してしまい、コスト的に不利となる。したがって、Bi含有量は0.020%以下とする。Bi含有量は0.010%以下であるのが好ましい。上記作用による効果をより確実に得るには、Bi含有量を0.0005%以上とすることが好ましい。
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
上述したように、SiおよびAlはともにセメンタイトの析出を抑制して残留オーステナイト面積率を高める作用を有し、延性を向上させることから、本発明ではSiとsol.Alとの合計含有量(Si+sol.Al)を規定する。
スラブ加熱温度:1350℃以下
熱間圧延に供するスラブの温度は、スケールロスを抑制する観点から1350℃以下とすることが好ましく、1280℃以下とすることがより好ましい。熱間圧延に供するスラブの温度の下限は特に限定する必要はなく、後述するように熱間圧延をAr3点以上で完了することが可能な温度であればよい。
熱間圧延は、圧延完了後にオーステナイトを変態させることにより熱延鋼板の金属組織を微細化するために、Ar3点以上の温度域で完了させる。圧延完了温度がAr3点未満では、熱間圧延中にフェライト変態が生じ、熱延鋼板の金属組織において、圧延方向に展伸した粗大な低温変態相が生成する。これによって焼鈍後の金属組織が粗大化し、延性および伸びフランジ性が劣化し易くなる。このため、熱間圧延の完了温度はAr3点以上とする必要がある。
圧延完了後、冷却開始までの時間が10秒を超える場合、または、冷却速度が5℃未満の場合は熱延鋼板の金属組織が粗大となり、焼鈍後の金属組織が粗大となって、延性および伸びフランジ性が劣化し易くなる。このため圧延完了後の一次冷却は、10秒以内に冷却を開始し、5℃/秒以上の冷却速度にて冷却することが好ましい。
熱間圧延後に行うフェライトとオーステナイトとの二相域温度での焼鈍(一次焼鈍)によって、フェライトとオーステナイトとの間でMnの分配が促進され、その後に行う焼鈍(二次焼鈍)によって、ポリゴナルフェライト面積率およびベイニティックフェライト中のMn濃度とポリゴナルフェライト中のMn濃度との関係を所望の範囲に制御することが可能となる。その効果を得るには、熱間圧延後の巻取り温度は650℃以下とする必要がある。巻取り温度が650℃を超えるとパーライトが生成し易く、フェライトとパーライトとの間でMn分配が進行し、延性および伸びフランジ性に好適な組織を得ることができない。巻取り温度は、400℃未満とするのが好ましく、300℃未満とするのがより好ましい。
前記工程(A)で得た熱延鋼板に対して、フェライトおよびオーステナイトの二相域温度で焼鈍を行う。この焼鈍を本発明では「一次焼鈍」と呼ぶ。一次焼鈍によってフェライトとオーステナイトとの間でMnの分配を促進することで、延性および伸びフランジ性に好適な金属組織を得ることが容易となる。一次焼鈍条件について、以下に詳しく説明する。
一次焼鈍温度は、(Ac3点−50℃)〜(Ac3点−2℃)とする。この範囲の温度で焼鈍することにより、ポリゴナルフェライトの面積率と平均粒径、ベイニティックフェライト中のMn濃度とポリゴナルフェライト中のMn濃度との関係を所望の範囲に制御することが可能となる。一次焼鈍温度が(Ac3点−50℃)未満では粗大なポリゴナルフェライトが生成し易く、伸びフランジ性が劣化する。一方、一次焼鈍温度が(Ac3点−2℃)を超えると、所望のポリゴナルフェライト量を確保するのが困難となり、延性が劣化する。
一次焼鈍保持時間は、上述の一次焼鈍温度との関係において、下記(ii)式を満足する必要がある。
1.4×10−8×exp{26500/(T+273)}≦t≦4.0×105 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各記号の意味は以下のとおりである。
t:一次焼鈍保持時間(秒)
T:一次焼鈍温度(℃)
前記工程(B)で得た焼鈍鋼板を、必要に応じて公知の方法に従って脱スケール、脱脂等の処理を施した後、焼鈍する。この焼鈍を本発明では「二次焼鈍」と呼ぶ。二次焼鈍を行うことによって、ベイニティックフェライトおよび残留オーステナイトを生成させる。それによって、延性および伸びフランジ性に好適な金属組織を得ることが容易となる。二次焼鈍条件について、以下に詳しく説明する。
二次焼鈍温度は、(Ac3点−40℃)以上とする必要がある。これは、主相がベイニティックフェライトであって、第二相に残留オーステナイトを含む金属組織を得るためである。ベイニティックフェライトの面積率を増加させ、伸びフランジ性を向上させるためには、二次焼鈍温度は(Ac3点−20℃)を超える温度とすることが好ましく、Ac3点を超える温度とすることがより好ましい。しかし、二次焼鈍温度が高くなりすぎると、オーステナイトが過度に粗大化するとともに一次焼鈍で促進したMn分配が拡散により低下し、延性および伸びフランジ性が劣化する。このため、二次焼鈍温度は、(Ac3点+100℃)未満とする必要がある。二次焼鈍温度は、(Ac3点+50℃)未満とすることが好ましく、(Ac3点+20℃)未満とすることがより好ましい。
二次焼鈍温度での保持時間の下限は特に限定する必要はないが、安定した機械特性を得るために、15秒を超える時間とすることが好ましく、60秒を超える時間とすることがより好ましい。一方、保持時間が長くなりすぎると、一次焼鈍で分配したMnの拡散が生じて、延性および伸びフランジ性が劣化し易くなる。このため、保持時間は、150秒間未満とすることが好ましく、120秒間未満とすることがより好ましい。
Ms点(℃)=561−407×C−7.3×Si−37.8×Mn−20.5×Cu−19.5×Ni−19.8×Cr−4.5×Mo ・・・(iii)
但し、上記(iii)式中の各元素記号は、鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(D−1)鋳造工程
上記工程(A)の熱間圧延の素材として用いられるスラブを製造する方法については特に制限は設けない。上述した化学組成を有する鋼は、公知の手段により溶製された後に、連続鋳造法により鋼塊とされるか、または、任意の鋳造法により鋼塊とした後に分塊圧延する方法等により鋼片とされる。連続鋳造工程では、介在物に起因する表面欠陥の発生を抑制するために、鋳型内にて電磁攪拌等の外部付加的な流動を溶鋼に生じさせることが好ましい。
冷圧率:30%以上80%未満
前記工程(B)後の焼鈍鋼板および/または前記工程(A)後の熱延鋼板に対して、常法に従い冷間圧延を施してもよい。また、冷間圧延の前に酸洗等により焼鈍鋼板および/または熱延鋼板に脱スケールを行ってもよい。冷間圧延は、再結晶を促進して冷間圧延および焼鈍後の金属組織を均一化し、伸びフランジ性をさらに向上させるために、冷圧率(冷間圧延における総圧下率)を30%以上とすることが好ましい。冷圧率は40%以上とすることがより好ましい。これにより焼鈍後の金属組織がさらに細粒化するとともに集合組織が改善され、延性および伸びフランジ性が一層向上する。この観点からは、冷圧率は50%を超える値とすることがさらに好ましく、60%を超える値とすることが特に好ましい。一方、冷圧率が高すぎると、圧延荷重が増大して圧延が困難となるため、冷圧率は80%未満とすることが好ましく、70%未満とすることがより好ましい。
電気めっき鋼板を製造する場合には、上述した方法で製造された焼鈍鋼板に、必要に応じて表面の清浄化および調整のための周知の前処理を施した後、常法に従って電気めっきを行えばよく、めっき被膜の化学組成および付着量は限定されない。電気めっきの種類として、電気亜鉛めっき、電気Zn−Ni合金めっき等が例示される。
ベイニティックフェライトは硬質かつ均質な組織であり、高い強度と優れた伸びフランジ性とを兼備させるのに適した組織である。したがって、本発明に係る鋼板においては、主相をベイニティックフェライトとする必要がある。なお、本発明においてベイニティックフェライトが主相であるとは、ベイニティックフェライトの面積率が60.0%以上であることを意味する。
軟質なポリゴナルフェライトを含有させることにより延性を向上させるため、ポリゴナルフェライトの面積率は2.0〜25.0%とすることが好ましい。ポリゴナルフェライトの面積率が2.0%未満では延性向上の効果が得られ難い。一方、25.0%を超えると伸びフランジ性が低下するばかりでなく、所望の強度確保が困難となる。ポリゴナルフェライトの面積率は5.0%以上とすることがより好ましく、6.0%以上とすることがさらに好ましい。また、上記面積率は20.0%以下とすることがより好ましく、15.0%以下とすることがさらに好ましい。
残留オーステナイトは、変態誘起塑性(TRIP)により延性を高める作用を有する。残留オーステナイト面積率が3.0%未満では、上記作用による効果を得ることが困難である。一方、残留オーステナイトの面積率が35.0%を超えると、加工誘起変態により生じた硬質なマルテンサイトにより伸びフランジ性が劣化するおそれがある。したがって、残留オーステナイト面積率は3.0〜35.0%とすることが好ましい。残留オーステナイト面積率は4.0%以上とすることがより好ましく、6.0%以上とすることがさらに好ましい。
ポリゴナルフェライトの平均粒径が0.3μm未満になると延性が劣化するおそれがあるため、0.3μm以上とすることが好ましい。一方、平均粒径が10.0μmを超えると、ポリゴナルフェライトとベイニティックフェライトとの界面で粗大なボイドが生成し、伸びフランジ性が劣化する場合がある。細粒化強化によりベイニティックフェライトとの硬度差を軽減し、伸びフランジ性を向上させる観点から、ポリゴナルフェライトの平均粒径は10.0μm以下とすることが好ましい。
残留オーステナイトの平均粒径が1.0μmを超えると、加工誘起変態により生じたマルテンサイトにより伸びフランジ性が劣化するおそれがある。したがって、残留オーステナイトの平均粒径は1.0μm以下とすることが好ましい。残留オーステナイトの平均粒径は0.8μm以下とすることがより好ましく、0.6μm以下とすることがさらに好ましい。
但し、上記(iv)式中の各記号の意味は以下のとおりである。
[Mn]PF:ポリゴナルフェライト中の平均Mn濃度(質量%)
[Mn]BF:ベイニティックフェライト中の平均Mn濃度(質量%)
ベイニティックフェライトとポリゴナルフェライトの硬度差を制御して延性と伸びフランジ性とを高いレベルで兼備させるため、ベイニティックフェライト中のMn濃度とポリゴナルフェライト中のMn濃度とが、上記(iv)式を満足することが好ましい。
Claims (8)
- 主相がベイニティックフェライトであり、第二相にポリゴナルフェライトおよび残留オーステナイトを含む金属組織を有する高強度鋼板を製造する方法であって、
下記工程(A)〜(C)を備える、高強度鋼板の製造方法。
(A)質量%で、
C:0.04%以上0.50%未満、
Si:0.10%以上3.0%未満、
Mn:1.5〜8.0%、
P:0.10%以下、
S:0.030%以下、
sol.Al:0.01〜2.0%、
N:0.010%以下、
Ti:0〜0.20%、
Nb:0〜0.10%、
V:0〜0.50%、
Cr:0%以上1.0%未満、
Mo:0〜0.50%、
Ni:0〜1.0%、
B:0〜0.0050%、
Ca:0〜0.020%、
Mg:0〜0.020%、
REM:0〜0.020%、
Cu:0〜1.0%、
Bi:0〜0.020%、
残部:Feおよび不純物であり、
下記(i)式を満足する化学組成を有するスラブに対して、
Ar3点〜1100℃の温度域で圧延を完了する熱間圧延を施して熱延鋼板とし、650℃以下の温度域で巻取る熱間圧延工程。
0.5≦Si+sol.Al≦3.0 ・・・(i)
但し、上記(i)式中の各元素記号は、鋼板中に含まれる各元素の含有量(質量%)を表す。
(B)前記工程(A)で得た熱延鋼板を、(Ac3点−50℃)〜(Ac3点−2℃)の温度域において、下記(ii)式を満足する時間保持する一次焼鈍工程。
1.4×10−8×exp{26500/(T+273)}≦t≦4.0×105 ・・・(ii)
但し、上記(ii)式中の各記号の意味は以下のとおりである。
t:一次焼鈍保持時間(秒)
T:一次焼鈍温度(℃)
(C)前記工程(B)で得た焼鈍鋼板を、(Ac3点−40℃)以上(Ac3点+100℃)未満の温度域で保持した後、500℃〜Ms点の温度域まで冷却し、該温度域で30秒以上保持する二次焼鈍工程。 - 前記工程(B)の後に、前記焼鈍鋼板に対して、総圧下率が30%以上80%未満の冷間圧延を施す、請求項1に記載の高強度鋼板の製造方法。
- 前記工程(A)の後に、前記熱延鋼板に対して、総圧下率が30%以上80%未満の冷間圧延を施す、請求項1または請求項2に記載の高強度鋼板の製造方法。
- 前記化学組成が、質量%で、
Ti:0.005〜0.20%、
Nb:0.002〜0.10%、および
V:0.005〜0.50%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1から請求項3までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、質量%で、
Cr:0.05%以上1.0%未満、
Mo:0.02〜0.50%、
Ni:0.05〜1.0%、および
B:0.0002〜0.0050%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1から請求項4までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、質量%で、
Ca:0.0005〜0.020%、
Mg:0.0005〜0.020%、および
REM:0.0005〜0.020%、
から選択される1種以上を含有する、請求項1から請求項5までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、質量%で、
Cu:0.05〜1.0%
を含有する、請求項1から請求項6までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。 - 前記化学組成が、質量%で、
Bi:0.0005〜0.020%
を含有する、請求項1から請求項7までのいずれかに記載の高強度鋼板の製造方法。
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