JP5092825B2 - 硬化性組成物、硬化膜及び硬化膜の製造方法 - Google Patents

硬化性組成物、硬化膜及び硬化膜の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硬化性組成物に関する。さらに詳しくは、屈折率が低く、外観及び強度に優れた硬化膜を与える硬化性組成物に関する。
液晶表示パネル、冷陰極線管パネル、プラズマディスプレー等の各種表示パネルにおいて、外光の映りを防止し、画質を向上させるために、低屈折率性、耐擦傷性、塗工性、及び耐久性に優れた硬化膜からなる低屈折率層を含む反射防止膜が求められている。
反射防止膜は一般に、透明基材上に少なくとも高屈折率層及び最外層として低屈折率層とを有している。ここで、高屈折率層と低屈折率層との屈折率の差が大きいほど反射防止性能は優れたものとなる。そこで、低屈折率層の屈折率をより低くすることが必要となる。
透明材料の屈折率をより低減するために種々の方法が提案されているが、屈折率の低い含フッ素重合体や微粒子を含有させても、その屈折率は、マトリクス材料の屈折率と微粒子の屈折率の中間の値しかとることはできない。そこで、マトリクス材料中に微粒子の代わりに、真空、空気あるいは窒素等のガスからなる微小な空孔を分散させることにより、マトリクス材料より低い屈折率の光学材料が提案されている(特許文献1)。この光学材料は、紫外線照射又は加熱することにより窒素ガスを発生する重合開始部材、紫外線照射により分解して発泡する発泡部材等を用いている。
特開平06−003501号公報
本発明は、より屈折率が低く、外観及び強度に優れた硬化膜を与える硬化性組成物及び硬化膜の製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を行い、塗膜中で、酸により分解して揮発性を有するアルケン類が遊離し、硬化塗膜中に微細な気泡を生じさせる化合物を含有する硬化性組成物によれば、屈折率が低く、強度にも優れた硬化膜が得られることを見出し、本発明を完成させた。
即ち、本発明は、下記の硬化性組成物、硬化膜、硬化膜の製造方法及び反射防止膜を提供する。
1.下記成分(A)〜(D):
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)放射線の照射により活性種を発生する化合物
(C)下記一般式(1)
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であるか、又はR〜Rのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有する化合物
(D)(D−1)光酸発生剤及び(D−2)熱酸発生剤のいずれか一方又は両方
を含有する硬化性組成物。
2.前記成分(C)が、下記式(1−1)で示される化合物及び下記式(1−2)で示される化合物のいずれか一方又は両方である、上記1に記載の硬化性組成物。
3.さらに、(E)数平均粒径が1〜100nmの範囲内であるシリカ粒子を含有する、上記1又は2に記載の硬化性組成物。
4.上記1〜3のいずれかに記載の硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜。
5.下記成分(A)〜(D):
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)放射線の照射により活性種を発生する化合物
(C)下記一般式(1)
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であるか、又はR〜Rのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有する化合物
(D−1)光酸発生剤
を含有する硬化性組成物を基材に塗布し、光硬化させる工程を含む硬化膜の製造方法。
6.前記光硬化させる工程後に、加熱する工程を含む、上記5に記載の硬化膜の製造方法。
7.下記成分(A)〜(D):
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)放射線の照射により活性種を発生する化合物
(C)下記一般式(1)
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であるか、又はR〜Rのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有する化合物
(D−2)熱酸発生剤
を含有する硬化性組成物を基材に塗布し、光硬化させる工程及び加熱する工程を含む硬化膜の製造方法。
8.上記4に記載の硬化膜を低屈折率層として含む反射防止膜。
本発明によれば、より屈折率が低く、外観及び強度に優れた硬化膜を与える硬化性組成物を提供できる。
本発明によれば、本発明の硬化性組成物を用い、より屈折率が低く、外観及び強度に優れた硬化膜の製造方法を提供できる。
以下、本発明を具体的に説明する。
I.硬化性組成物
本発明の硬化性組成物(以下、本発明の組成物という)は、下記成分(A)〜(F)を含有し得る。下記成分のうち、成分(A)〜(D)は必須成分であり、成分(E)〜(G)は必要に応じて含有することができる成分である。
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
(B)放射線の照射により活性種を発生する化合物
(C)下記一般式(1)
(式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜6のアルキル基であるか、又はR〜Rのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有する化合物
(D−1)光酸発生剤
(D−2)熱酸発生剤
(E)数平均粒径が1〜100nmの範囲内であるシリカ粒子
(F)有機溶剤
(G)その他添加剤
以下、各成分について説明する。
(A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物(以下、化合物(A)ということがある)は、得られる硬化膜のマトリクスを形成する成分である。化合物(A)としては、(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものであれば、特に制限はなく、多官能(メタ)アクリルモノマーであってもよいし、2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合体であってもよく、また、フッ素原子やケイ素原子を含有するモノマー、重合体であってもよい。
多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス((メタ)アクリロイルオキシメチル)トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン(「トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート」ともいう。)、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド(以下「EO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド(以下「PO」という。)変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルの両末端(メタ)アクリル酸付加物、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、PO変性水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、EO変性ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、フェノールノボラックポリグリシジルエーテルの(メタ)アクリレート等の他、下記式(14)で示される化合物等を例示することができる。
[式(14)中、「Acryl」は、アクリロイル基またはメタクリロイル基を示す。]
これらの多官能(メタ)アクリルモノマーの市販品としては、例えば、SA1002(以上、三菱化学(株)製)、ビスコート195、ビスコート230、ビスコート260、ビスコート215、ビスコート310、ビスコート214HP、ビスコート295、ビスコート300、ビスコート360、ビスコートGPT、ビスコート400、ビスコート700、ビスコート540、ビスコート3000、ビスコート3700(以上、大阪有機化学工業(株)製)、カヤラッドR−526、HDDA、NPGDA、TPGDA、MANDA、R−551、R−712、R−604、R−684、PET−30、GPO−303、TMPTA、THE−330、DPHA、DPHA−2H、DPHA−2C、DPHA−2I、D−310、D−330、DPCA−20、DPCA−30、DPCA−60、DPCA−120、DN−0075、DN−2475、T−1420、T−2020、T−2040、TPA−320、TPA−330、RP−1040、RP−2040、R−011、R−300、R−205(以上、日本化薬(株)製)、アロニックスM−210、M−220、M−233、M−240、M−215、M−305、M−309、M−310、M−315、M−325、M−400、M−6200、M−6400(以上、東亞合成(株)製)、ライトアクリレートBP−4EA、BP−4PA、BP−2EA、BP−2PA、DCP−A(以上、共栄社化学(株)製)、ニューフロンティアBPE−4、BR−42M、GX−8345(以上、第一工業製薬(株)製)、ASF−400(以上、新日鐵化学(株)製)、リポキシSP−1506、SP−1507、SP−1509、VR−77、SP−4010、SP−4060(以上、昭和高分子(株)製)、NKエステルA−BPE−4(以上、新中村化学工業(株)製)等を挙げることができる。
尚、本発明の組成物には、これらのうち、分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好ましい。3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、上記に例示されたトリ(メタ)アクリレート化合物、テトラ(メタ)アクリレート化合物、ペンタ(メタ)アクリレート化合物、ヘキサ(メタ)アクリレート化合物等の中から選択することができ、これらのうち、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレートが特に好ましい。上記の化合物は、各々1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能(メタ)アクリルモノマーは、フッ素原子を有していてもよい。フッ素原子を有することにより、得られる硬化膜の屈折率を低減することができる。フッ素原子を有する多官能(メタ)アクリルモノマーとしては、例えば、トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール、パーフルオロ―1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタン―1,6−ジ(メタ)アクリレート、オクタフルオロオクタンジオールと2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、1,1−(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートとの付加物等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。等が挙げられる。
フッ素原子を有する多官能(メタ)アクリルモノマーの市販品としては、例えば、
共栄社化学株式会社製LINC−3A等が挙げられる。
また、化合物(A)は、公知の2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する重合体であってもよく、さらにフッ素原子、ケイ素原子等を含んでいてもよい。フッ素原子を有することにより、得られる硬化膜の屈折率を低減することができる。ケイ素原子を有することにより、熱安定性や機械強度の向上が期待できる。
このような重合体としては、例えば、特開2003−183322号公報に記載の重合体等が挙げられる。
化合物(A)の添加量は特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量を100重量部としたときに、通常20〜80重量%の範囲内であり、好ましくは25〜70重量%の範囲内である。化合物(A)の添加量が20重量%未満となると、硬化膜の耐擦傷性が得られない場合があるためであり、一方、80重量%を超えると、硬化膜の屈折率が高くなり、十分な反射防止効果が得られない場合があるためである。
(B)放射線の照射により活性種を発生する化合物
放射線の照射により活性種を発生する化合物(以下「光重合開始剤(B)」という。)としては、活性種として、ラジカルを発生する光ラジカル発生剤等が挙げられる。尚、放射線とは、活性種を発生する化合物を分解して活性種を発生させることのできるエネルギー線と定義される。このような放射線としては、可視光、紫外線、赤外線、X線、α線、β線、γ線等の光エネルギー線が挙げられる。ただし、一定のエネルギーレベルを有し、硬化速度が速く、しかも照射装置が比較的安価で、小型な観点から、紫外線を使用することが好ましい。
光重合開始剤(B)の例としては、例えばアセトフェノン、アセトフェノンベンジルケタール、アントラキノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、カルバゾール、キサントン、4−クロロベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、1,1−ジメトキシデオキシベンゾイン、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、チオキサントン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、トリフェニルアミン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、フルオレノン、フルオレン、ベンズアルデヒド、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、3−メチルアセトフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン(BTTB)、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、ベンジル、又はBTTBとキサンテン、チオキサンテン、クマリン、ケトクマリン、式(16)で示される化合物、その他の色素増感剤との組み合わせ等を挙げることができる。
これらの光重合開始剤のうち、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、式(16)で示される化合物等が好ましく、さらに好ましくは、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−1−〔4−(モルフォリニル)フェニル〕−2−フェニルメチル)−1−ブタノン、式(16)で示される化合物等を挙げることができる。
式(16)で示される光重合開始剤は、チバ・スペシャリティーケミカルズ製Irgacure127である。この開始剤は単独で用いた場合でも、又は他の重合開始剤と併用した場合でも、0.2J/cm以下の低照射光量で、本発明の組成物を硬化させてなる硬化物に優れた耐擦傷性を発現させることができる。
光重合開始剤(B)の添加量は特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量を100重量%としたときに、通常0.1〜10重量%の範囲内、好ましくは0.1〜5重量%の範囲内、より好ましくは1〜5重量%の範囲内である。光重合開始剤(B)の添加量が0.1重量%未満となると、硬化反応が不十分となり耐擦傷性が低下するおそれがある。一方、10重量%を超えると、硬化膜の屈折率が増加し反射防止効果が低下するおそれがある。
(C)一般式(1)で表される構造を有する化合物
下記一般式(1)で表される構造を有する化合物(C)は、酸により分解して二酸化炭素と揮発性を有するアルケン類が遊離し、硬化塗膜中に微細な気泡を生じさせることができる化合物である。この化合物(C)が塗膜中で分解することにより、マトリクスよりも屈折率の低い気泡が形成され、得られる硬化膜の屈折率を低減することができる。
従って、本発明の組成物は、少なくとも光酸発生剤及び熱酸発生剤のいずれか一方を含有している必要がある。
本発明の組成物が光酸発生剤を含有する場合には、光照射によって酸が発生し、この酸によって化合物(C)が分解され、硬化塗膜中に気泡が形成される。
本発明の組成物が光酸発生剤を含有せず、熱酸発生剤を含有する場合には、光照射後に加熱することによって酸が発生し、この酸によって化合物(C)が分解される。
式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であるか、又はR〜Rのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。アルキル基である場合には、メチル基、エチル基であることが好ましい。環を形成する場合には、炭素数4〜6のシクロアルキル基であることが好ましい。
一般式(1)で表される構造を有する化合物の具体例としては、例えば、下記式(1−1)及び(1−2)で表される化合物やその重合体が挙げられる。
化合物(C)が酸又は熱によって分解され、二酸化炭素と揮発性を有するアルケン類が生じる機構は、上記式(1−1)及び(1−2)を例にとると、下記反応式によって示される。
上記式(1−1)及び(1−2)の点線で示した箇所で開裂が生じる。
上記式(1−1)及び(1−2)の重合体を添加した場合、または、(1−1)及び(1−2)の化合物が、光照射により他成分と共に硬化した場合は、下記反応式に示される様にアルケン類が生じる。
化合物(C)の添加量は、有機溶剤以外の組成物全量を100重量%としたときに、通常5〜70重量%の範囲内である。化合物(C)の添加量が5重量%未満では、
塗膜内部に気泡または空洞が十分に形成されず、屈折率が低下しないおそれがあるためである。一方、70重量%を超えると、塗膜強度の低下のおそれがあるためである。また、このような理由から、化合物(C)の添加量を、有機溶剤以外の組成物全量に対して10〜70重量%の範囲内とすることが好ましく、10〜50重量%の範囲内とすることがより好ましい。
(D−1)光酸発生剤
(D−2)熱酸発生剤
本発明の組成物には、光酸発生剤(D−1)及び熱酸発生剤(D−2)のいずれか一方又は両方を添加する必要がある。
光酸発生剤(D−1)とは、放射線照射により酸を発生する化合物をいい、熱酸発生剤(D−2)とは、加熱により酸を発生する化合物をいう。
上述したように、本発明の組成物に光酸発生剤(D−1)が添加されていれば、光照射によって発生した酸により化合物(C)が分解され、硬化塗膜中に気泡が形成され、硬化塗膜の屈折率が低減される。
また、熱酸発生剤(D−2)が添加されていれば、塗膜に光照射した後、加熱することにより、加熱によって生じた酸によって化合物(C)が分解される。
光酸発生剤は、可視光線、紫外線、電子線、X線などの活性光線の照射により酸を発生するものである。オニウム塩、ハロゲン含有化合物、キノンジアジド化合物、スルホン酸エステル化合物などを用いることができる。であり、その具体例としては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールホスホニウム塩、トリアルキルスルホニウム塩、ジアリールスルホニウム塩、トリアリールスルホミウム塩、ジアルキルフェナシルスルホニウム塩、ジアリールユードニウム塩、アリールジアゾニウム塩、トリクロロメチルトリアジン、ブロモアセチルベンゼン、ジアゾキノン化合物、ジアゾナフトキノン化合物、フェノール、レゾルシノール、ピロガロール、1,2−ジヒドロキシナフタレン、1,3−ジヒドロキシナフタレン、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブチルスルホン酸、カンファースルホン酸、ベンゼンスルホン酸、ナフチルスルホン酸、芳香族テトラカルボン酸エステル、芳香族スルホン酸エステル、ニトロベンジルエステル、オキシムスルホン酸エステル、芳香族N−オキシイミドスルフォネート、芳香族スルファミド、ハロアルキル基含有炭化水素系化合物、ハロアルキル基含有ヘテロ環状化合物、ナフトキノンジアジドー4−スルホン酸エステル等を挙げることができる。
熱酸発生剤(D−2)は、一般に、各種の酸類の塩やエステル化合物であり、加熱によって分解し、酸性化合物となる。また、熱酸発生剤は、当該硬化性組成物からなる塗膜を加熱して硬化させる場合に、硬化反応を促進させることができる物質であり、またその加熱条件を、より穏和なものに改善することができる物質である。この熱酸発生剤としては特に制限は無く、一般のウレア樹脂、メラミン樹脂等のための硬化剤として使用されている各種酸類やその塩類を利用することができる。酸性化合物及び熱酸発生剤の具体例としては、例えば、各種脂肪族スルホン酸とその塩、クエン酸、酢酸、マレイン酸等の各種脂肪族カルボン酸とその塩、安息香酸、フタル酸等の各種芳香族カルボン酸とその塩、p-トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸等の各種アルキルベンゼンスルホン酸とそのアンモニウム塩、各種金属塩、リン酸や有機酸のリン酸エステル等を挙げることができる。
光酸発生剤(D−1)および熱酸発生剤(D−2)の添加量の合計は、有機溶剤を除く組成物全量を100重量%としたときに、通常0.1〜20重量%の範囲内であり、好ましくは0.5〜10重量%の範囲内、より好ましくは1〜10重量%の範囲内である。光酸発生剤(D−1)および熱酸発生剤(D−2)の添加量の合計が0.1重量%未満では、(C)成分の分解が十分に進行しないおそれがあり、20重量%を超えると、屈折率上昇、機械強度が低下するおそれがある。
(E)数平均粒径が1〜100nmの範囲内であるシリカ粒子
数平均粒径が1〜100nmの範囲内であるシリカ粒子は、本発明の硬化性組成物を硬化させて得られる硬化膜の耐擦傷性、特にスチールウール耐性を改善するために好適に添加される。
シリカ粒子の数平均粒径は、透過型電子顕微鏡により測定する。シリカ粒子(E)の数平均粒径は、5〜80nmが好ましく、10〜60nmがさらに好ましい。
シリカ粒子(E)としては、公知のものを使用することができ、また、その形状も特に限定されない。球状であれば通常のコロイダルシリカに限らず中実粒子、中空粒子、多孔質粒子、コア・シェル型粒子等であっても構わない。また、球状に限らず、不定形の粒子であってもよい。固形分が10〜40重量%のコロイダルシリカが好ましい。得られる硬化膜の屈折率をより低減するためには、中空シリカ粒子を用いることが好ましい。
また、分散媒は、水あるいは有機溶媒が好ましい。有機溶媒としては、メタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、ブタノール、エチレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコール類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン等のエステル類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエ−テル類等の有機溶剤を挙げることができ、これらの中で、アルコール類及びケトン類が好ましい。これら有機溶剤は、単独で、又は2種以上混合して分散媒として使用することができる。
シリカを主成分とする粒子の市販品としては、例えば、コロイダルシリカとして、日産化学工業(株)製 商品名:メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、MEK−ST−S、MEK−ST−L、IPA−ZL、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL等を挙げることができる。
また、コロイダルシリカ表面に化学修飾等の表面処理を行ったものを使用することができ、例えば分子中に1以上のアルキル基を有する加水分解性ケイ素化合物又はその加水分解物を含有するもの等を反応させることができる。このような加水分解性ケイ素化合物としては、トリメチルメトキシシラン、トリブチルメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジブチルジメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、1,1,1−トリメトキシ−2,2,2−トリメチル−ジシラン、ヘキサメチル−1,3−ジシロキサン、1,1,1−トリメトキシ−3,3,3−トリメチル−1,3−ジシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−ジメチルメトキシシリル−ポリジメチルシロキサン、α−トリメチルシリル−ω−トリメトキシシリル−ポリジメチルシロキサンヘキサメチル−1,3−ジシラザン等を挙げることができる。また、分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物を使用することもできる。分子中に1以上の反応性基を有する加水分解性ケイ素化合物は、例えば反応性基としてNH基を有するものとして、尿素プロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン等、OH基を有するものとして、ビス(2−ヒドロキシエチル)−3アミノトリプロピルメトキシシラン等、イソシアネート基を有するものとして3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等、チオシアネート基を有するものとして3−チオシアネートプロピルトリメトキシシラン等、エポキシ基を有するものとして(3−グリシドキシプロピル)トリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等、チオール基を有するものとして、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等を挙げることができる。好ましい化合物として、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。
また、シリカ粒子(E)は、重合性不飽和基を含む有機化合物によって表面処理がなされたものであってもよい。かかる表面処理により、UV硬化系アクリルモノマーと共架橋化することができ、耐擦傷性がより向上する。
シリカ粒子(E)の添加量は、表面処理の有無を問わず、有機溶剤以外の組成物全量を100重量%としたときに、通常1〜80重量%の範囲内であり、10〜80重量%の範囲内が好ましい。シリカ粒子(E)の添加量が1重量%未満では、添加した効果が発現しないおそれがあり、80重量%を超えると、塗膜の表面滑り性が低下し、機械強度を招くおそれがある。尚、粒子の量は、固形分を意味し、粒子が溶剤分散ゾルの形態で用いられるときは、その添加量には分散媒の量を含まない。
(F)ポリジメチルシロキサン化合物
ポリジメチルシロキサン化合物(F)とは、ポリジメチルシロキサン骨格を有する化合物であり、表面滑り性を改善し、得られる硬化膜の耐擦傷性の向上に効果があるとともに、防汚性を付与することができるため好適に用いられる。
ポリジメチルシロキサン化合物(F)としては、反応性基を有しない化合物であってもよいが、(メタ)アクリロイル基や水酸基等の反応性基を有することが好ましい。反応性基を有するポリジメチルシロキサン化合物の具体例としては、サイラプレーンFM−4411、FM−4421、FM−4425、FM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM−DA11、FM−DA21、FM−DA26、FM0711、FM0721、FM−0725、TM−0701、TM−0701T(チッソ(株)製)、UV3500、UV3510、UV3530(ビックケミー・ジャパン(株)製)、BY16−004、SF8428(東レ・ダウコーニング・シリコーン(株)製)、VPS−1001(和光純薬製)等が挙げられる。特にサイラプレーンFM−7711、FM−7721、FM−7725、FM−0411、FM−0421、FM−0425、FM0711、FM0721、FM−0725、VPS−1001が好ましい。
ポリジメチルシロキサン化合物(F)の添加量は特に制限されるものではないが、有機溶剤以外の組成物全量に対して0.1〜10重量%の範囲内であることが好ましく、1〜10重量%の範囲内であることがより好ましい。ポリジメチルシロキサン化合物(F)の添加量が0.1重量%未満であると、得られる硬化膜の防汚性、耐擦傷性が不十分となる場合があるためであり、10重量%を超えると、塗膜の白化や硬化膜表面からのシリコン化合物剥離等の不都合が生じる場合があるためである。
(G)有機溶剤
本発明の組成物には、有機溶剤を添加することが好ましい。このように有機溶剤を添加することにより、薄膜である反射防止膜の低屈折率層を均一に形成することができ、ひいては反射防止膜の厚さも均一に形成することができる。このような有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、t−ブタノール、イソプロパノール等の一種単独又は二種以上の組み合わせが挙げられる。
有機溶剤の添加量については特に制限されるものではないが、有機溶剤を除く成分の合計100重量部に対し、100〜100,000重量部とするのが好ましい。この理由は、添加量が100重量部未満となると、組成物の粘度調整が困難となる場合があるためであり、一方、100,000重量部を超えると、組成物の保存安定性が低下したり、あるいは粘度が低下しすぎて取り扱いが困難となる場合があるためである。
(H)その他添加剤
本発明の組成物には、本発明の目的や効果を損なわない範囲において、光増感剤、重合禁止剤、重合開始助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、帯電防止剤、(E)成分以外の無機充填剤若しくは顔料、染料等の添加剤をさらに含有させることも好ましい。
本発明の組成物は、上記成分(A)〜(D)、及び必要に応じて成分(E)〜(H)を混合することによって製造することができる。
II.硬化膜
本発明の硬化膜は、上記本発明の組成物を硬化させてなることを特徴とする。
本発明の硬化膜は、屈折率が低く、外観及び強度に優れているため、反射防止膜の低屈折率層として有用である。
III.硬化膜の製造方法
(1)光酸発生剤(D−1)を含有する本発明の組成物(以下、本発明の組成物1という)を用いる場合
本発明の硬化膜の製造方法(以下、方法1という)は、光酸発生剤(D−1)を含有する本発明の組成物1を基材に塗布し、光硬化させる工程を含むことを特徴とする。
前述したように、光酸発生剤(D−1)を含有する本発明の組成物1は、光照射によって酸が発生し、この酸が化合物(C)を分解して、硬化塗膜中に気泡を発生させることができる。
さらに、光硬化後に硬化塗膜を加熱する工程を設けてもよい。さらに加熱することによって、より多くの気泡を発生させ、硬化膜の屈折率をさらに低減することができる。
後述する実施例8と実施例9は組成物としては同一であるが、実施例8では塗膜を光硬化のみで硬化膜を製造しており、屈折率は1.42である。これに対し、光硬化後に硬化塗膜を加熱した実施例9の硬化膜の屈折率は1.37に低減されており、硬化膜の強度も向上していることがわかる。
(2)光酸発生剤(D−1)を含有せず、熱酸発生剤(D−2)を含有する本発明の組成物(以下、本発明の組成物2という)を用いる場合
本発明の硬化膜の製造方法(以下、方法2という)は、光酸発生剤(D−1)を含有しない本発明の組成物2を基材に塗布し、光硬化させる工程及び加熱する工程を含むことを特徴とする。
前述したように、光酸発生剤(D−1)を含有しない本発明の組成物2を光硬化させても酸が発生せず、化合物(C)の分解は起こらない。それ故、硬化塗膜中に気泡を生じさせて硬化膜の屈折率を低減するためには、加熱によって熱酸発生剤(D−2)から酸を発生させて化合物(C)を分解する必要がある。
後述する実施例9と実施例13は、それぞれ光酸発生剤(D−1)及び熱酸発生剤(D−2)を含有している以外は同じ組成を有しているが、いずれも屈折率は1.37であり、強度も優れていることがわかる。
上記方法1及び2によって得られる硬化膜の構造を、それぞれ図1及び2を参照しながら説明する。
図1は、光酸発生剤(D−1)を含有する本発明の組成物1を用いる上記方法1によって硬化塗膜内に気泡が発生する様子を示す模式図である。
基材10の上に、本発明の組成物1を塗布し、塗膜20を形成する。次に、塗膜20に光照射を行うと、塗膜20が硬化するとともに、硬化した塗膜20内部に気泡30が発生し、得られる硬化膜の屈折率が低減される。さらに、硬化塗膜20を加熱することにより、より多くの気泡30が発生し、屈折率がさらに低減される。
図2は、熱酸発生剤(D−2)を含有する本発明の組成物2を用いる上記方法2によって硬化塗膜内に気泡が発生する様子を示す模式図である。
基材10の上に、本発明の組成物2を塗布し、塗膜20を形成する。次に、塗膜20に光照射を行うと、塗膜20が硬化するが、酸は発生しないため化合物(C)の分解は起こらず、この段階では気泡は発生しない。この硬化塗膜20をさらに加熱すると、熱酸発生剤(D−2)から生じる酸によって化合物(C)が分解され、硬化塗膜20内に気泡30が発生する。
IV.反射防止膜
本発明の反射防止膜は、上記本発明の硬化膜を低屈折率層として含むことを特徴とする。以下、本発明の反射防止膜に含まれる各層について説明する。
(1)低屈折率層
低屈折率層は、本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜から構成される。組成物の構成等については、上述の通りであるため、ここでの具体的な説明は省略するものとし、以下、低屈折率層の屈折率及び厚さについて説明する。
本発明の組成物を硬化して得られる硬化膜の屈折率(Na−D線の屈折率、測定温度25℃)、即ち、低屈折率膜の屈折率は、1.44以下とすることが好ましく、1.42以下とすることがより好ましい。この理由は、低屈折率膜の屈折率が1.44を超えると、高屈折率膜と組み合わせた場合に、効果的な反射防止性能が達成できない場合があるためである。
尚、低屈折率膜を複数層設ける場合には、そのうちの少なくとも一層が上述した範囲内の屈折率の値を有していればよく、従って、その他の低屈折率膜は1.44を超えた値であってもよい。
低屈折率層の厚さについては特に制限されるものではないが、例えば、50〜300nmであることが好ましい。この理由は、低屈折率層の厚さが50nm未満となると、下地としての高屈折率膜に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが300nmを超えると、光干渉が生じて反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層の厚さを50〜250nmとするのがより好ましく、60〜200nmとするのがさらに好ましい。尚、より高い反射防止性を得るために、低屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜300nmとすればよい。
(2)高屈折率層
高屈折率層を形成するための硬化性組成物は特に制限されないが、被膜形成成分として、エポキシ系樹脂、フェノ−ル系樹脂、メラミン系樹脂、アルキド系樹脂、シアネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、シロキサン樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを含むことが好ましい。これらの樹脂であれば、高屈折率層として、強固な薄膜を形成することができ、結果として、反射防止膜の耐擦傷性を著しく向上させることができるためである。
しかしながら、通常、これらの樹脂単独での屈折率は1.45〜1.62であり、高い反射防止性能を得るには十分で無い場合がある。そのため、高屈折率の無機粒子、例えば金属酸化物粒子を配合することがより好ましい。また、硬化形態としては、熱硬化、紫外線硬化、電子線硬化できる硬化性組成物を用いることができるが、より好適には生産性の良好な紫外線硬化性組成物が用いられる。
また、低屈折率層と高屈折率層との間の屈折率差は0.05以上の値であることが好ましい。低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差が0.05未満では、これらの反射防止膜層での相乗効果が得られず、却って反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、低屈折率層と、高屈折率層との間の屈折率差を0.1〜0.5の範囲内の値とするのがより好ましく、0.15〜0.5の範囲内の値とするのがさらに好ましい。
高屈折率層の厚さは特に制限されるものではないが、例えば、50〜30,000nmであることが好ましい。この理由は、高屈折率層の厚さが50nm未満となると、低屈折率層と組み合わせた場合に、反射防止効果や基材に対する密着力が低下する場合があるためであり、一方、厚さが30,000nmを超えると、光干渉が生じて逆に反射防止効果が低下する場合があるためである。
従って、高屈折率層の厚さを50〜1,000nmとするのがより好ましく、60〜500nmとするのがさらに好ましい。また、より高い反射防止性を得るために、高屈折率層を複数層設けて多層構造とする場合には、その合計した厚さを50〜30,000nmとすればよい。
尚、高屈折率層と基材との間にハードコート層を設ける場合には、高屈折率層の厚さを50〜300nmとすることができる。
(3)ハードコート層
本発明の反射防止膜に用いるハードコート層の構成材料は特に制限されるものでないが、例えば、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂等の一種単独又は二種以上の組み合わせを挙げることができる。
また、ハードコート層の厚さについても特に制限されるものではないが、1〜50μmとするのが好ましく、5〜10μmとするのがより好ましい。この理由は、ハードコート層の厚さが1μm未満となると、反射防止膜の基材に対する密着力を向上させることができない場合があるためであり、一方、厚さが50μmを超えると、均一に形成するのが困難となる場合があるためである。
(4)基材
本発明の反射防止膜に用いる基材の種類は特に制限されるものではないが、例えば、ガラス、ポリカーボネート系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、トリアセチルセルロース樹脂(TAC)等からなる基材を挙げることができる。これらの基材を含む反射防止膜とすることにより、カメラのレンズ部、テレビ(CRT)の画面表示部、あるいは液晶表示装置におけるカラーフィルター等の広範な反射防止膜の利用分野において、優れた反射防止効果を得ることができる。
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
製造例1
エチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体A−1(メタアクリル変性フッ素重合体)の合成
まず、水酸基含有含フッ素重合体の合成を行った。内容積2.0リットルの電磁攪拌機付きステンレス製オートクレーブを窒素ガスで十分置換した後、酢酸エチル400g、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)53.2g、エチルビニルエーテル36.1g、ヒドロキシエチルビニルエーテル44.0g、過酸化ラウロイル1.00g、アゾ基含有ポリジメチルシロキサン(VPS1001(商品名)、和光純薬工業(株)製)6.0g及びノニオン性反応性乳化剤(NE−30(商品名)、旭電化工業(株)製)20.0gを仕込み、ドライアイス−メタノールで−50℃まで冷却した後、再度窒素ガスで系内の酸素を除去した。
次いでヘキサフルオロプロピレン120.0gを仕込み、昇温を開始した。オートクレーブ内の温度が60℃に達した時点での圧力は5.3×105Paを示した。その後、70℃で20時間攪拌下に反応を継続し、圧力が1.7×105Paに低下した時点でオートクレーブを水冷し、反応を停止させた。室温に達した後、未反応モノマーを放出してオートクレーブを開放し、固形分濃度26.4%のポリマー溶液を得た。得られたポリマー溶液をメタノールに投入しポリマーを析出させた後、メタノールにて洗浄し、50℃にて真空乾燥を行い220gの水酸基含有含フッ素重合体を得た。これを水酸基含有含フッ素重合体とする。使用した単量体と溶剤を表1に示す。
得られた水酸基含有含フッ素重合体に付き、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによるポリスチレン換算数平均分子量を測定した。また、1H−NMR、13C−NMRの両NMR分析結果及び元素分析結果から、水酸基含有含フッ素重合体を構成する各単量体成分の割合を決定した。結果を表2に示す。
尚、VPS1001は、数平均分子量が約60,000、ポリシロキサン部分の分子量が約10,000の、下記式(7)で表されるアゾ基含有ポリジメチルシロキサンである。NE−30は、下記式(10)において、nが9、mが1、uが30であるノニオン性反応性乳化剤である。
さらに、表2において、単量体と構造単位との対応関係は以下の通りである。
単量体 構造単位
ヘキサフルオロプロピレン (a)
パーフルオロ(プロピルビニルエーテル) (a)
エチルビニルエーテル (b)
ヒドロキシエチルビニルエーテル (c)
NE−30 (f)
ポリジメチルシロキサン骨格 (d)
続いて、得られた水酸基含有含フッ素重合体を用いてエチレン性不飽和基含有フッ素重合体A−1を合成した。電磁攪拌機、ガラス製冷却管及び温度計を備えた容量1リットルのセパラブルフラスコに、製造例1で得られた水酸基含有含フッ素重合体を50.0g、重合禁止剤として2,6−ジ−t−ブチルメチルフェノール0.01g及びメチルイソブチルケトン(MIBK)370gを仕込み、20℃で水酸基含有含フッ素重合体がMIBKに溶解して、溶液が透明、均一になるまで攪拌を行った。
次いで、この系に、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネートを15.1g添加し、溶液が均一になるまで攪拌した後、ジブチルチンジラウレート0.1gを添加して反応を開始し、系の温度を55〜65℃に保持し5時間攪拌を継続することにより、エチレン性不飽和基を有する含フッ素重合体A−1のMIBK溶液を得た。
この溶液をアルミ皿に2g秤量後、150℃のホットプレート上で5分間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、15.2重量%であった。使用した化合物、溶剤及び固形分含量を表3に示す。
製造例2
式(1−2)の重合体の製造
攪拌機、還流冷却管をつけたガラス製セパラブルフラスコを窒素ガスで十分置換した後、メチルエチルケトン(MEK)100g、(1−2)のモノマー50g、アゾビスイソブチロニトリル0.9gを仕込み、80℃にて6時間加熱攪拌した。反応を停止させた後、反応液が30℃以下に冷却したことを確認し、1Lのメタノールで再沈殿操作を行い、50℃で真空乾燥を行い、44gの重合体(1−2’)を得た。
製造例3
ハードコート層用組成物の調製
紫外線を遮蔽した容器中において、ペンタエリスリトールヒドロキシトリアクリレート95重量部、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン−1−オン5重量部、MIBK100重量部を50℃で2時間攪拌することで均一な溶液のハードコート層用組成物を得た。この組成物をアルミ皿に2g秤量後、120℃のホットプレート上で1時間乾燥、秤量して固形分含量を求めたところ、50重量%であった。
製造例4
硬化性組成物塗工用基材の作製
TACフィルム(厚さ50μm)に、製造例3で調製したハードコート層用組成物をワイヤーバーコータで膜厚6μmとなるように塗工し、オーブン中、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、空気下、高圧水銀ランプを用いて、300mJ/cm2の光照射条件で紫外線を照射し、硬化性樹脂組成物塗工用基材を作製した。
実施例1
(1)硬化性組成物の製造
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを80g、製造例2で得られた重合体(1−2’)20g、光重合開始剤として、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(イルガキュア127、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)3g、ポリジメチルシロキサンH−1(FM0725、チッソ製)3g及び光酸発生剤としてトリス(4-メチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタスルフォネート(TS-01、三和ケミカル製)3g、MIBK2922gを、攪拌機をつけたガラス製セパラブルフラスコに仕込み、室温にて1時間攪拌し均一な硬化性樹脂組成物を得た。また、固形分濃度を求めたところ3.5重量%であった。
(2)硬化膜の作製
硬化性組成物を、ワイヤーバーコータを用いて製造例4で得られた硬化性組成物塗工用基材のハードコート上に膜厚0.1μmとなるように塗工し、80℃で1分間乾燥し、塗膜を形成した。次いで、窒素気流下、高圧水銀ランプを用いて、照射光量300mJ/cmで紫外線を照射し、その後、空気雰囲気の100℃のオーブン中で2分間加熱した。
実施例2〜13及び比較例1〜5
(1)硬化性組成物の製造
下記表4−1及び4−2に示す組成とした以外は実施例1と同様にして各硬化性組成物を製造した。
(2)硬化膜の作製
上記(1)で得られた各硬化性組成物を用い、表4−1及び4−2に示す露光後加熱条件とした以外は実施例1と同様にして各硬化膜を製造した。
<硬化膜の特性評価>
実施例1〜13及び比較例1〜5で得られた硬化膜について、下記特性を測定、評価し、結果を表4−1及び4−2に示す。
(1)屈折率
各硬化性組成物をスピンコーターによりシリコンウェハー上に、乾燥後の厚さが約0.1μmとなるように塗布後、窒素下、高圧水銀ランプを用いて、0.3J/cmの光照射条件で紫外線を照射して硬化させた。得られた硬化膜について、エリプソメーターを用いて25℃での波長589nmにおける屈折率(n 25)を測定した。
(2)外観
TAC基材上に作製した硬化膜を目視で観察し、下記の基準で評価した。
(評価基準)
○:塗布ムラなし
×:塗布ムラあり
(3)強度
TAC基材上に作製した硬化膜を、スチールウール(ボンスターNo.0000、日本スチールウール(株)製)を取り付けた学振型摩擦堅牢度試験機(AB-301、テスター産業(株)製)で、硬化膜の表面を荷重100gの条件で3回繰り返し擦過し、当該硬化膜の表面における傷の発生の有無を目視で確認し、以下の基準により評価した。
(評価基準)
◎:傷なし
○:僅かな傷あり
×:全面に傷あり
表4−1及び4−2中の成分は下記のものを表す。
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート:日本化薬製、カヤラッドDPHA
エチレン性不飽和基含有含フッ素重合体A−1:製造例1で合成
トリアクリロイルヘプタデカフルオロノネニルペンタエリスリトール:共栄社化学社製、LINC−3A
イルガキュア127:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製光重合開始剤、前記式(16)で示される化合物
重合体(1−2’):製造例2で合成
中空シリカ粒子:触媒化成社製、MIBKゾル、数平均粒径50nm
中実シリカ粒子:日産化学社製、MEKゾル、数平均粒径50nm
光酸発生剤:トリス(4−メチルフェニル)スルホニウムトリフルオロメタスルフォネート、三和ケミカル社製、TS−01
熱酸発生剤:p-トルエンスルホン酸アミン塩、日本サイテック社製、キャタリスト4050
ポリジメチルシロキサン:チッソ社製、FM0725、分子量1万
表4−1、4−2の結果から、化合物(C)と光酸発生剤(D−1)を含有している実施例の硬化性組成物を光硬化してなる硬化膜は低い屈折率と優れた強度とをバランス良く有していることがわかる。
さらに、光硬化後の硬化膜を加熱することにより、より屈折率が低減され、強度も向上していることがわかる。
本発明の硬化性組成物は、屈折率が従来より低減されており、かつ外観及び強度に優れた硬化膜を与えることができるため、特に反射防止膜の低屈折率層を形成するために有用である。
光酸発生剤(D−1)を含有する本発明の組成物1を用いる本発明の方法1によって硬化塗膜内に気泡が発生する様子を示す模式図である。 熱酸発生剤(D−2)を含有する本発明の組成物2を用いる本発明の方法2によって硬化塗膜内に気泡が発生する様子を示す模式図である。
符号の説明
10 基材
20 塗膜
30 気泡

Claims (2)

  1. 下記成分(A)〜(D):
    (A)2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物
    (B)放射線の照射により活性種を発生する化合物
    (C)下記一般式(1)
    (式中、R〜Rは、それぞれ独立して炭素数1〜5のアルキル基であるか、又はR〜Rのうちの2個以上が互いに結合して環を形成していてもよい。)で表される構造を有する化合物
    (D)(D−1)光酸発生剤及び(D−2)熱酸発生剤のいずれか一方又は両方
    を含有する硬化性組成物を硬化させてなる硬化膜を低屈折率層として含む反射防止膜であって、
    前記成分(C)が、下記式(1−1)で示される化合物及び下記式(1−2)で示される化合物のいずれか一方又は両方である反射防止膜
  2. 前記硬化性組成物が、さらに、(E)数平均粒径が1〜100nmの範囲内であるシリカ粒子を含有する、請求項に記載の反射防止膜。
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