JP5087470B2 - 光学素子の製造方法及びその製造装置 - Google Patents

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Description

本発明は、光学機器等に用いられる光学素子を成形手段により成形する光学素子の製造方法及びその製造装置に関する。
従来、例えば図16に示すように、上型142、下型143、及びスリーブ144を有する型セット140内に成形素材141を収容し、この型セット140を、加熱ステージ、加圧ステージ、冷却ステージ等を有するチャンバー内を搬送してプレス成形する成形装置が知られている(特許文献1参照)。
この場合、型セット140を搬送する際に、例えば搬送速度を速めたり、或いはチャンバー内の不活性ガス置換時の減圧を急激に行った場合等の振動や衝撃その他の外的要因により、型軸中心O−Oに対し成形素材141の位置がずれるおそれがあった。
特公平7−64571号公報
しかし、成形素材141の位置がずれてしまうと、得られる成形品の面精度、転写径、対称性などに不具合が生じるおそれがある。位置ずれの原因としては、例えば成形素材141の保持力が上型142の自重のみである場合は、保持力が弱い上に上型142自体も動きやすいことが考えられる。
また、上型142の自重が軽いため、外力によって上型142が振動し、上型142が成形素材141から離れてしまうためとの見方もある。
本発明は斯かる課題を解決するためになされたもので、型セット内の密閉空間を外側よりも減圧することで型セット内の成形素材に気圧差から生じる保持力を作用させ、成形素材の位置ズレがない光学素子の製造方法及びその製造装置を提供することを目的とする。
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、
一対の上型及び下型とこれらを嵌挿するスリーブとを有する型セット内で成形素材を成形する光学素子の製造方法において、
前記型セットが収容されている空間内にて、
前記上型を持ち上げて前記型セット内を減圧し減圧状態のまま前記上型を前記スリーブに嵌合させ、次に前記型セットの外側の気圧を前記型セット内の密閉空間の気圧よりも高くし、
前記上型の自重と圧力差による荷重を前記成形素材に加え得るように、前記型セット内の密閉空間の気圧を前記型セットの外側の気圧よりも減圧する工程と、
減圧した状態で前記型セットを搬送する工程と、
搬送された前記型セットをプレスして前記成形素材を成形する工程と、を備えることを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項1に記載の光学素子の製造方法において、
前記スリーブと前記上型及び下型との相対変位により前記型セット内の密閉空間の減圧状態を開放することを特徴とする。
請求項に係る発明は、
一対の上型及び下型とこれらを嵌挿するスリーブとを有する型セット内で成形素材を成形する光学素子の製造装置において、
前記型セットが収容されている空間内にて、
前記上型を持ち上げて前記型セット内を減圧し減圧状態のまま前記上型を前記スリーブに嵌合させ、次に前記型セットの外側の気圧を前記型セット内の密閉空間の気圧よりも高くし、
前記上型の自重と圧力差による荷重を前記成形素材に加え得るように、前記型セット内の密閉空間の気圧を前記型セットの外側の気圧よりも減圧する減圧手段と、
前記型セットを搬送する搬送手段と、
前記成形素材をプレスして成形する成形手段と、を備えることを特徴とする。
請求項に係る発明は、請求項に記載の光学素子の製造装置において、
前記減圧手段は、
前記上型を前記スリーブから持ち上げる金型上下アームと、
前記型セット内の密閉空間を真空にする吸引装置と、
前記型セットの外側の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を有することを特徴とする。
本発明によれば、型セット内の密閉空間を外側よりも減圧することで型セット内の成形素材に気圧差から生じる保持力を作用させ、位置ずれをなくして成形素材を成形することができる。これにより、搬送中の成形素材や金型の位置ずれによる成形不良や成形品の品質の低下を防止することができる。
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、本実施の形態における光学素子の製造装置の概要を示す断面正面図であり、図2は、その平面図である。
この光学素子の製造装置10は、装置架台11上に配置された入口チャンバー12と成形チャンバー13とを有している。この入口チャンバー12と成形チャンバー13内を、後述する型セット40が搬送方向に順次搬送されて当該型セット40内に収容された成形素材41がプレスされて光学素子に成形される。
入口チャンバー12の入口側(搬送方向の上流側)には、入口シャッタ16が設けられている。また、成形チャンバー13の入口側には中間シャッタ17が設けられ、出口側には出口シャッタ18が設けられている。
なお、入口シャッタ16よりも搬送方向の上流側には、型セット40の投入部19が設けられている。この投入部19にはプッシャ23により駆動する移動ステージ24が設けられている。なお、プッシャ23と移動ステージ24とは一体となっており、一緒に移動するようになっている。型セット40は、移動ステージ24に載置された状態で、入口シャッタ16から入口チャンバー12に搬送される。
入口チャンバー12には、置換室14を形成可能な筐枠15が上下移動自在(矢印方向)に収容されている。この置換室14内で、減圧手段としての金型上下アーム46、吸引装置37、及び不活性ガス供給装置38により、型セット40内の密閉空間の気圧が型セット40の外側の気圧よりも減圧される。
すなわち、入口チャンバー12内の筐枠15には、上部の吸排気口34を介してホース35が接続されている。このホース35は、切り替えバルブ36を介して吸引装置37と不活性ガス供給装置38とに連通されている。そして、切り替えバルブ36の操作により、置換室14内を真空状態と不活性ガスで充満した状態とに切り替えることができる。
なお、前述した金型上下アーム46は、型セット40内の密閉空間を減圧する時に、型セット40を構成する上型42をスリーブ44から持ち上げる役目をなす。
また、成形チャンバー13内には、型セット40の搬送方向に沿って列状に加熱ステージ20、プレスステージ21、冷却ステージ22が設けられている。この成形チャンバー13内には、型セット40を搬送方向に移送する搬送手段としての搬送アーム48が設けられている。この搬送アーム48には、型セット40を押圧すべく各ステージ20、21,22に対応して3個の受け部49が設けられている。
次に、各ステージ20、21,22の構成について説明する。
加熱ステージ20は、上下に対向する上成形プレート25及び下成形プレート25を備えている。
上成形プレート25及び下成形プレート25には、夫々カートリッジヒータ26、26が内蔵されている。また、上成形プレート25を上下(対向)方向に駆動するエアシリンダ27が設けられている。このエアシリンダ27による上成形プレート25の昇降動作により、型セット40の挟持、挟圧等の動作が行われる。
また、プレスステージ21は、上下に対向する上成形プレート28及び下成形プレート28を備えている。
上成形プレート28及び下成形プレート28には、夫々カートリッジヒータ29、29が内蔵されている。また、上成形プレート28を上下(対向)方向に駆動する成形手段としてのエアシリンダ30が設けられている。このエアシリンダ30による上成形プレート28の昇降動作により、型セット40の挟持、挟圧(プレス)等の動作が行われる。
さらに、冷却ステージ22は、上下に対向する上成形プレート31及び下成形プレート31を備えている。
上成形プレート31及び下成形プレート31には、夫々カートリッジヒータ32、32が内蔵されている。また、上成形プレート31を上下(対向)方向に駆動するエアシリンダ33が設けられている。このエアシリンダ33による上成形プレート31の昇降動作により、型セット40の挟持、挟圧等の動作が行われる。
次に、図3に基づき型セット40の構成について説明する。
型セット40は、上型42、下型43、及びスリーブ44を有している。上型42及び下型43は、スリーブ44の内部で、それぞれの成形面42a,43aが対向するようにスリーブ44の両端側から嵌挿されている。上型42は段付き円柱状をなし、その先端部に凸球面状の成形面42aが形成されている。
また、下型43も段付き円柱状をなし、その先端部に凹球面状の成形面43aが形成されている。また、成形面42a,43aの形状は球面に限らない。例えば、非球面等であってもよい。
上型42は、スリーブ44の軸方向に摺動可能となっている。また、上型42の成形面42aと下型43の成形面43aとの間には、所定形状の成形素材41が配置されている。本実施形態では、この成形素材41としてボール形状(球状)のガラス素材が用いられている。
なお、上型42及び下型43は、タングステンカーバイド(WC)等の超硬合金を研磨して仕上げられている。また、型セット40内に収容される成形素材41は、φ18.8mmの市販のボール形状の硝材が用いられている。この成形素材41の転移点はTg=506℃であり、成形される光学素子は、図示しないがφ30mmの凹メニスカスレンズである。
また、本実施形態では、成形チャンバー13内に加熱ステージ20、プレスステージ21、冷却ステージ22の3つのステージを有する場合について説明したが、ステージの個数や種類などはこれに限定されない。
以上において、図1に示したように、型セット40は、移動ステージ24に載置された状態で、搬送方向の上流側の投入部19から入口チャンバー12内に搬入される。入口チャンバー12に搬入された型セット40は、次に成形チャンバー13に送られて加熱、プレス成形等される。この場合、例えば型セット40の搬送速度を速めた場合は、振動や衝撃によって成形素材41や上型42が位置ずれを起こしやすい。
そこで、本実施形態では、入口チャンバー12に搬入された型セット40の内部を置換室14内で減圧し、成形素材41の位置ずれを防止した状態で成形チャンバー13に送り込むようにしたものである。
こうして、成形チャンバー13内に送り込まれた型セット40は、加熱ステージ20で所定温度に加熱され、次いで、プレスステージ21で加熱・プレスされた後、冷却ステージ22で冷却されて成形素材41が形状安定化された後に、搬送方向の下流側の出口シャッタ18から搬出される。搬出された型セット40は、分解されて製品としての光学素子(図示せず)が取り出される。
次に、型セット40の入口チャンバー12への搬入と減圧工程について説明する。
前述した図3に示すように、光学素子の製造装置10の外で、上型42及び下型43間に球状の成形素材41を挟持して型セット40を組み立てる。この場合、型軸中心O−Oに対し上型42及び成形素材41の中心が一致するように正確にセットする。このとき、型セット40の内側と外側の圧力は、いずれも大気圧P0となっている。次に、組み立てた型セット40を、光学素子の製造装置10の投入部19の移動ステージ24上に載置する。
さらに、入口チャンバー12の入口シャッタ16を開いて移動ステージ24をプッシャ23で押し、型セット40を入口チャンバー12内に搬入する(図1の矢印方向)。このとき、型セット40は移動の際に外力を受けないので、位置ずれは生じない。こうして、型セット40を搬入したら入口シャッタ16を閉じる。
次いで、図4に示すように、上方に待機していた筐枠15を下降させて(図1の矢印下方向)、型セット40の周囲を包囲する。こうして、筐枠15内には置換室14が形成される。なお、図4には図示しないが、置換室14には、前述したように上型42を昇降自在な金型上下アーム46が配置されている。
次いで、図5A及び図5Bに示すように、金型上下アーム46を図5Bの矢印方向に差し込み、さらに上型42をスリーブ44の上方(図5Aの矢印方向)に持ち上げる。上型42を持ち上げた状態で、切り替えバルブ36を操作して置換室14と吸引装置37とをホース35で連通された状態とする。そして、置換室14内が所定の気圧P1に減圧(例えば10−2Pa)されたら、切り替えバルブ36を閉める。
なお、置換室14内は比較的小さい空間になっているので、入口チャンバー12の全体を減圧する場合に比較して減圧に要する時間は少なくて済む。
次いで、金型上下アーム46により、持ち上げた上型42を再びスリーブ44内に嵌挿して組み込む。これにより、型セット40内(及び置換室14内)は気圧P1に減圧された状態が維持されている。
この状態で、図6に示すように、切り替えバルブ36を操作して、次に置換室14と不活性ガス供給装置38とがホース35で連通されるようにする。こうして、置換室14内に不活性ガス(例えば窒素ガス)を多量流入させる。このとき、置換室14内は気圧P1に減圧されているが、この置換室14内に不活性ガスを流入させると置換室14内の減圧状態が解消されるため、筐枠15を小さい力で上昇移動させることができる。
なお、前述したように、筐枠15により置換室14を形成することなく、最初から入口チャンバー12内を減圧しても良い。この場合は、入口チャンバー12内の全体を減圧した後、次に入口チャンバー12内の全体に不活性ガスを供給することになる。
こうして、筐枠15を上昇させた後も不活性ガスを供給し続け、入口チャンバー12内を不活性ガスで充満させる。そして、入口チャンバー12内を大気圧P0よりも高い圧力P2に設定する。このとき、型セット40内の圧力P1と入口チャンバー12内の圧力P2とは所定の圧力差(P1<P2)が生じている。
以上により、型セット40に収容された成形素材41には上型42の自重と圧力差(P1<P2)の荷重とが加わる。こうして、成形素材41は位置決めされるに十分な荷重で上型42と下型43との間に確実に保持される。このため、型セット40内の密閉空間が減圧された後は、型セット40を搬送する時の多少の振動等によっても上型42や成形素材41が位置ずれを起こすことはなくなる。
次に、成形チャンバー13の入口の中間シャッタ17を開いて、型セット40を成形チャンバー13内に搬入する。この場合、必要に応じて、移動ステージ24を加熱ステージ20と同じ高さに持ち上げてから搬送方向にスライドさせ、型セット40を下成形プレート25上に載置するとよい。
このとき、型セット40内は減圧されているので、型セット40を入口チャンバー12から成形チャンバー13内に搬入するときの振動や衝撃によっても、型セット40内の上型42や成形素材41が位置ずれを起こすことはない。その後、搬送を終えた移動ステージ24は投入部19に移動され、中間シャッタ17が閉じられる。
こうして、図7に示すように、加熱ステージ20で型セット40を所定温度にまで加熱し、プレスステージ21で成形素材41を所望の中心肉厚まで加圧する。さらに、冷却ステージ22で所定温度に冷却して、成形された光学素子の歪の除去や形状安定化を図る。
なお、図6及び図7における矢印⇒は、気圧の圧力差による荷重が上型42と下型43に作用している状態を示している。
以上説明したように、本実施形態によれば、型セット40内の密閉空間の気圧を型セット40の外側の気圧よりも減圧し、この減圧した状態で型セット40を搬送し、型セット40内の成形素材41を成形するようにしたので、成形素材41は上型42の自重と気圧の圧力差の荷重をもって型軸中心O−Oの方向に押圧される。このため、成形素材41は十分な保持圧で保持され、位置ずれを起こすことがない。
すなわち、本実施形態では、型セット40内を減圧する時に、上型42を持ち上げて型セット40内を減圧し、次いで減圧状態のまま上型42をスリーブ44に嵌合させ、さらに型セット40の外側の気圧を型セット40内の密閉空間の気圧よりも高くするようにしたので、成形素材41は上型42の自重と気圧の圧力差の荷重をもって型軸中心O−Oの方向に押圧されるため、位置ずれを防止することができる。
これに対し、例えば、図8A及び図8Bは、スリーブ44と上型42との嵌合ストロークが短い場合に、上型42と成形素材41が位置ずれを起こす状態を示している。
すなわち、図8A及び図8Bにおいて、スリーブ44と上型42との嵌合ストロークが短いと、上型42がスリーブ44に対して図8Bの矢印A方向に傾斜して嵌挿される。このとき、上型42の先端の成形面42aは矢印B方向に移動する。このため、上型42の成形面42aは、これに接している成形素材41を矢印B方向に付勢する結果、成形素材41は型軸中心に対して位置ずれした状態で保持される。
しかし、本実施形態によれば、スリーブ44と上型42との嵌合ストロークが短い場合であっても、セット時に上型42と成形素材41とを型軸中心O−Oに一致するように設定すれば、その後は上型42の自重と気圧の圧力差により上型42は型軸中心O−Oに沿って吸引される。このため、成形素材41は上型42の自重と圧力差の荷重をもって型軸中心方向に押圧され、位置ずれを起こすことがない。
本実施形態によれば、位置ずれによる偏りのない良好な光学素子を得ることができる。また、本実施形態によれば、搬送途中での成形素材41や金型の位置ずれが生じないので、搬送中に自由な姿勢で搬送することができる。
[第2の実施の形態]
図9〜図11は、第2の実施の形態における型セット40内の減圧手段の概要を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
図9は、型セット40に、減圧手段としての一方向弁51と吸引装置58を取り付けた状態を示している。
すなわち、スリーブ44に取り付けられた一方向弁51が、一端に弁収容部56を有するホース57を介して吸引装置58に接続されている。この一方向弁51は、型セット40の内外の圧力差を維持するためのものである。この一方向弁51は、スリーブ44に孔45(図10A等参照)を形成して取り付けられている。
図10A及び図10Bは一方向弁51の作用を示している。
一方向弁51は、円筒状の本体フレーム52と、本体フレーム52の内側に突出する支持片53と、この支持片53にバネ55を介して支持された開閉板54と、を有している。そして、開閉板54はバネ55の付勢圧によりスリーブ44に密着する方向に常時付勢されている。
本実施形態では、光学素子の製造装置10の外において、一方向弁51を組み込んだスリーブ44を用い、上型42及び下型43間に成形素材41を配置して型セット40を組み立てる。
以上により、スリーブ44に取り付けた一方向弁51により、吸引装置58を用いて型セット40内の密閉空間の気体を吸引して減圧する。すなわち、吸引装置58によりホース57内の気体を吸引すると、負圧により開閉板54はバネ55の付勢圧よりも大きな力でスリーブ44から離れる方向に引っ張られる。
これにより、型セット40内の密閉空間の気体は矢印方向に吸引されて型セット40内の気体は減圧される。やがて、型セット40内の圧力が所定気圧P1に減圧されると吸引装置58による吸引を停止する。すると、開閉板54はバネ55の付勢圧と型セット40内の負圧によってスリーブ44に形成された孔45を閉じる。
図11は、型セット40の内外の圧力差を維持した状態を示す図である。
この型セット40が入口チャンバー12内に搬入されると、型セット40内の圧力P1と入口チャンバー12内の圧力P2には圧力差(P1<P2)が生じている。
この状態で、型セット40を光学素子の製造装置10の成形チャンバー13内に投入する。投入された型セット40は、成形チャンバー13内において加熱ステージ20、プレスステージ21、冷却ステージ22を順次搬送されて光学素子が得られる。
本実施形態によれば、型セット40内の密閉空間の気圧をスリーブ44に取り付けた一方向弁51を用いて減圧することにより、位置ずれによる偏りのない良好な光学素子を得ることができる。これにより、成形素材41は上型42の自重と圧力差の荷重をもって型軸中心方向に押圧されるので、搬送途中での成形素材41や金型の位置ずれが生じない。
さらに、本実施形態によれば、製造装置10の入口に入口チャンバー12を設ける必要がなくなり、装置構成を簡素化することができる。
[第3の実施の形態]
図12及び図13は、第3の実施の形態における型セット40内の減圧手段の概要を示している。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
本実施形態では、型セット40に、成形チャンバー13内のプレスステージ21において圧力差を解消する機構を設けたものである。すなわち、型セット40の内部を減圧したままでは、スリーブ44から上型42を開放するときに強い力が必要となる。
そこで、図12に示すように、プレス工程で気圧差を解消する構成を用いるようにした。この図12において、型セット40は、上型42に形成された排気孔60とスリーブ44に形成されたリーク孔61とを有している。
図13に示すように、この排気孔60とリーク孔61とは、プレス工程において上型42が下型43に接近移動することにより、成形素材41の中心肉厚が所定厚さになった時点で、破線のように連通可能に形成されている。
このように、上型42の移動により排気孔60とリーク孔61とが連通して不活性ガスが型セット40内に浸入する。これにより、型セット40の内外の圧力を平衡させて上型42を開くときに弱い力で持ち上げることができる。
すなわち、図13に示すように、上型42が下型43に近接する過程で上型42の排気孔60とスリーブ44のリーク孔61とが周囲と連通し、型セット40の外側の気体が型セット40内に流入する。
本実施形態によれば、スリーブ44と上型42及び下型43との相対変位により型セット40内の密閉空間の減圧状態を開放することで、成形素材41や上型42の位置ずれを防止しつつ、成形素材41の中心肉厚が所定厚さになったら排気孔60とリーク孔61とを連通させて、小さい力で上型42を開放することができる。
[第4の実施の形態]
図14及び図15は、本実施形態における成形素材41の位置決め状態を示す図である。なお、第1の実施の形態と同一又は相当する部材には同一の符号を付して説明する。
本実施形態では、型セット40内の圧力差を利用して成形素材41を位置決めするための位置決め部材としての位置決めピン62を設けたものである。この位置決めピン62は、型軸中心を通るように複数本が対向して配置されている。
図14において、型セット40内の密閉空間が気圧P1に減圧された状況では、型軸中心に寄せられた成形素材41に当接する位置決めピン62に、負圧による吸引力が作用する。この吸引力により、位置決めピン62の先端に当接する成形素材41は対向方向から付勢力を受けて型軸中心に位置決めされる。
次いで、成形を開始すると、成形素材41の変形によりその接触圧で位置決めピン62が外側に押し出される。なお、位置決めピン62には、スリーブ44から完全に抜け出ないように、抜け防止片62aが形成されている。また、この抜け防止片62aを設けないで、位置決めピン62が型セット40から抜け出ることで型セット40内の雰囲気と外気とをリークさせることも可能である。
なお、図14及び図15における矢印⇒は、気圧の圧力差による荷重が上型42と下型43に作用している状態を示している。
本実施形態によれば、型セット40の内側と外側との気圧差を利用してスリーブ44に挿通した位置決めピン62を型セット40内で移動自在とし、成形素材41を型軸中心に位置決めすることができる。
第1の実施の形態における光学素子の製造装置の概要を示す断面図である。 同上の平面図である。 型セットの構成を示す断面図である。 置換室内に型セットが搬入された状態の断面図である。 金型上下アームにより上型を持ち上げた状態を示す断面図である。 同上の平面図である。 置換室内に不活性ガスを流入させた状態を示す図である。 プレスステージにおいて型セット内の成形素材をプレスする状態を示す断面図である。 スリーブと上型との嵌合ストロークが短い型セットの断面図である。 同上の上型がスリーブに対し傾斜した状態を示す図である。 第2の実施の形態の減圧手段の概要を示す図である。 同上の弁の構造を示す断面図である。 同上の弁の構造を示す断面図である。 同上の型セット内を減圧した状態の断面図である。 第3の実施の形態の減圧手段の概要を示す図である。 同上の型セット内で成形素材をプレスした状態の断面図である。 第4の実施形態の位置決め状態を示す図である。 同上の型セット内で成形素材をプレスした状態の断面図である。 従来の型セットの断面図である。
符号の説明
10 光学素子の製造装置
11 装置架台
12 入口チャンバー
13 成形チャンバー
14 置換室
15 筐枠
16 入口シャッタ
17 中間シャッタ
18 出口シャッタ
19 投入部
20 加熱ステージ
21 プレスステージ
22 冷却ステージ
23 プッシャ
24 移動ステージ
25 上成形プレート
25 下成形プレート
26 カートリッジヒータ
26 カートリッジヒータ
27 エアシリンダ
28 上成形プレート
28 下成形プレート
29 カートリッジヒータ
29 カートリッジヒータ
30 エアシリンダ
31 上成形プレート
31 下成形プレート
32 カートリッジヒータ
32 カートリッジヒータ
33 エアシリンダ
34 吸排気口
35 ホース
36 切り替えバルブ
37 吸引装置
38 不活性ガス供給装置
40 型セット
41 成形素材
42 上型
42a 成形面
43 下型
43a 成形面
44 スリーブ
45 孔
46 金型リフトアーム
48 搬送アーム
49 受け部
51 一方向弁
52 本体フレーム
53 支持片
54 開閉板
55 バネ
56 弁収容部
57 ホース
58 吸引装置
60 排気孔
61 リーク孔
62 位置決めピン
62a 抜け防止片
140 型セット
141 成形素材
142 上型
143 下型
144 スリーブ

Claims (4)

  1. 一対の上型及び下型とこれらを嵌挿するスリーブとを有する型セット内で成形素材を成形する光学素子の製造方法において、
    前記型セットが収容されている空間内にて、
    前記上型を持ち上げて前記型セット内を減圧し減圧状態のまま前記上型を前記スリーブに嵌合させ、次に前記型セットの外側の気圧を前記型セット内の密閉空間の気圧よりも高くし、
    前記上型の自重と圧力差による荷重を前記成形素材に加え得るように、前記型セット内の密閉空間の気圧を前記型セットの外側の気圧よりも減圧する工程と、
    減圧した状態で前記型セットを搬送する工程と、
    搬送された前記型セットをプレスして前記成形素材を成形する工程と、を備える
    ことを特徴とする光学素子の製造方法。
  2. 前記スリーブと前記上型及び下型との相対変位により前記型セット内の密閉空間の減圧状態を開放する
    ことを特徴とする請求項1に記載の光学素子の製造方法。
  3. 一対の上型及び下型とこれらを嵌挿するスリーブとを有する型セット内で成形素材を成形する光学素子の製造装置において、
    前記型セットが収容されている空間内にて、
    前記上型を持ち上げて前記型セット内を減圧し減圧状態のまま前記上型を前記スリーブに嵌合させ、次に前記型セットの外側の気圧を前記型セット内の密閉空間の気圧よりも高くし、
    前記上型の自重と圧力差による荷重を前記成形素材に加え得るように、前記型セット内の密閉空間の気圧を前記型セットの外側の気圧よりも減圧する減圧手段と、
    前記型セットを搬送する搬送手段と、
    前記成形素材をプレスして成形する成形手段と、を備える
    ことを特徴とする光学素子の製造装置。
  4. 前記減圧手段は、
    前記上型を前記スリーブから持ち上げる金型上下アームと、
    前記型セット内の密閉空間を真空にする吸引装置と、
    前記型セットの外側の空間に不活性ガスを供給する不活性ガス供給装置と、を有する
    ことを特徴とする請求項に記載の光学素子の製造装置。
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