JP5083840B2 - タンパク質リフォールディング装置 - Google Patents

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Description

本発明は、不活性タンパク質の機能賦活操作・工程に使用されるタンパク質リフォールディング装置に関するものであり、更に詳しくは、高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化し失活したタンパク質をリフォールディングさせ、該タンパク質固有の本来機能を賦活・再生させる操作・工程を行う装置、及び該装置を利用した不活性タンパク質の活性化すなわち活性タンパク質の製造・生産に関するものである。本発明は、例えば、生化学品、医薬品製造の技術分野において、大腸菌等の遺伝子発現系を利用して生産した高次構造未形成タンパク質を、リフォールディングさせ、該タンパク質の本来の機能・活性を賦活させることが可能な新しい装置、並びにそれを用いる新しい機能賦活方法を提供するものとして有用である。従来、大腸菌等の発現系で得られるタンパク質は、一般には、立体構造が無秩序であり、該タンパク質の持つ本来の機能・物性を持たず、活性を示さないという問題があったが、本発明の装置は上記タンパク質に代表される不活性タンパク質の機能・活性を賦活させ、所定の機能・活性を有するタンパク質へと再生させる革新的タンパク質製造・生産技術を提供するばかりか、その工程を従来技術に比べ大幅に簡略化するものである。
生体内で実際的に作用し、働くのは遺伝子ではなく、それらから作られるタンパク質である。したがって、タンパク質の機能・構造の解明・解析は、例えば、病気の治療や創薬に直結し、極めて重要である。このため、種々のタンパク質を様々な方法で合成・生産し、それらの構造を調べ、生体内における作用機構と役割を解明することが活発に行われている。そして、今や、タンパク質の機能は、それらを構成するアミノ酸の配列・鎖長のみならず、それらの取る秩序だった立体構造(高次構造)によって決まることは周知のこととなっている。
タンパク質の合成は、一般には、大腸菌、昆虫細胞、哺乳動物細胞等の発現系を用いて行われる。昆虫細胞や哺乳動物細胞による合成では、得られるタンパク質は、高次構造が制御され、秩序だった立体構造を取り、可溶性である場合が多い。しかし、これらの方法は、分離精製の操作が非常に煩雑であり、目的のタンパク質を得るまでに時間がかかり、コスト高となるばかりか、得られるタンパク質の量も極めて少ないという欠点がある。これに対して、大腸菌によるタンパク質合成は、操作が簡単で、目的タンパク質を得るのにさして時間を要せず、コストもさほどかからない。このため、現在は、目的タンパク質の合成を担う遺伝子コードを組み込ませた大腸菌を用いる方法が、タンパク質合成の主流となっており、生産プロセスも確立されつつある。
ところが、ヒトなど高等生物のタンパク質を大腸菌発現系で合成した場合、アミノ酸の結合順序や数、すなわちアミノ酸鎖長に関しては設計どおりのタンパク質が得られるものの、その立体構造には秩序が無く、高次構造が制御されていないタンパク質、すなわちアミノ酸鎖が縺れ絡まった、いわゆるインクルージョンボディと呼ばれる不溶性タンパク質が得られる。当然のことながら、この不溶性タンパク質のインクルージョンボディは、欲する機能・性能を持たず、活性を示さない。このため、大腸菌による生産プロセスでは、インクルージョンボディを解きほぐし、高次構造を整え、秩序だった立体構造を持つ可溶性タンパク質に変換する操作、すなわちインクルージョンボディのリフォールディング(巻き戻し)が必要である。
この種のリフォールディングは、大腸菌による生産タンパク質のみならず、熱履歴等ある種の原因で失活したタンパク質の再生にも応用でき、極めて重要な技術である。したがって、従来から、このリフォールディングは盛んに研究され、種々の方法が提案されているが、それらのほとんどはリフォールディング率が低いうえに、ある限定されたタンパク質(とくに分子量の低い特定タンパク質)に対して偶発的に好ましい結果が得られたに過ぎないことが多く、現在、このリフォールディングは、種々のタンパク質に適用可能な一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的で経済的な方法とはなっていない。また、それらの方法はバッチ式によるもので、一連のリフォールディング操作に多くの人手を要する。
かかる状況下で、本発明者らは、ゼオライト等無機酸化物によるバイオポリマーの選択吸着現象を研究し(非特許文献1参照)、この過程で、ゼオライトベータへの吸脱着で不活性タンパク質が活性化することを見出し、ゼオライトベータを用いた不活性タンパク質の機能賦活方法(特許文献1,2,3,4、及び非特許文献2参照)を発明するに至った。しかしながら、特許文献1,2,3,4、及び非特許文献2に記載の方法は、バッチ方式であるうえ、ゼオライトベータは一般にはサブミクロン以下の極めて細かい粉体粒子でしか得られないので、タンパク質のゼオライトベータへの吸脱着過程における分離工程では濾過が容易ではなく、遠心分離機を幾度となく使わなければならず、該発明のタンパク質の活性化工程は、ゼオライトベータの吸脱着のみを使うと言う極めてシンプルなものであるが、工程は複雑かつ煩雑で手間がかかるという欠点を有していた。
また、従来のリフォールディングの操作・工程においては、遠心分離器の他、クロマトグラフィーを用いることが必須であり、これにも極めて手間や時間がかかり、その結果、コスト高となるという大きな問題もあった。
特開2005−29531 特開2005−192452 特開2005−220121 特開2005−281267 Chem. Eur. J., Vol. 7(2001) 1555-1560 Anal. Biochem., Vol. 348(2006) 307-314
本発明は、大腸菌等で生産した高次構造未形成による不活性タンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化し失活したタンパク質のリフォールディングすなわち機能賦活に対して効果的であるタンパク質リフォールディング装置を提供することを解決すべき課題とした。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を行い、高次構造が無秩序なため不活性であるタンパク質の高次構造を整えて活性なタンパク質とする巻き戻し機能を有するBEA構造のゼオライト(ゼオライトベータ)であって、粒子状に造粒されているゼオライトベータをタンパク質リフォールディング用カラム充填剤として使用できることを見出し、これにより連続的な処理が可能なリフォールディング装置を開発し、本発明を完成するに至った。本発明で用いるリフォールディング用カラム充填剤は、大腸菌等の発現系で生産した高次構造未形成タンパク質あるいは熱履歴等ある種の原因で失活したタンパク質等、分子量10万を越える大型のタンパク質を含む種々の立体構造無秩序タンパク質等の巻き戻しにも、簡単な操作で、適用できる。従って、本発明によれば、一般性及び普遍性が高く、かつ簡単・簡略な操作によるタンパク質のリフォールディング装置が提供される。図1にその構成の一例を示す。
即ち、本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 粒子状に造粒されているBEA構造のゼオライト(ゼオライトベータ)を含むタンパク質リフォールディング用カラム充填剤を充填したリフォールディング用カラムを少なくとも備えている、タンパク質リフォールディング装置。
(2) ゼオライトベータが、粒子径20μmから1000μmの範囲に造粒されていることを特徴とする、(1)に記載のタンパク質リフォールディング装置。
(3) リフォールディング用カラム充填剤が、ゼオライトベータ、およびゼオライトベータを造粒化するための糊料からなることを特徴とする、(1)又は(2)に記載のタンパク質リフォールディング装置。
(4) タンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をリフォールディング用カラムに添加するための手段をさらに備えていることを特徴とする、(1)から(3)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(5) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液するための手段を備えている、(1)から(4)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(6) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、バルブの操作により送液の順番を制御するための手段を備えている、(1)から(5)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(7) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、流量を連続的に可変できるポンプ又はバルブにより、溶液の混合比を連続的に変化するための手段を備えている、(1)から(6)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(8) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、カラムの入口出口に設置されたバルブにより、送液を止めて平衡化の処理を制御するための手段を備えている、(1)から(7)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(9) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、バルブの操作による流路変更、又はポンプにより繰り返しリフォールディング用カラムを通すための手段を備えている、(1)から(8)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(10) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプによる加圧状態または重力による常圧状態で、リフォールディング用カラムを通すための手段、並びにタンパク質のリフォールディングを行った後に巻き戻されたタンパク質溶液を分割して捕集するための手段を備えている、(1)から(9)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(11) タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプによる加圧状態または重力による常圧状態で、リフォールディング用カラムを通すことによりタンパク質のリフォールディングを行うための手段、並びにカラムの前後を通る溶液のタンパク質濃度を検出するための手段を備えている、(1)から(10)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(12) (1)リフォールディング用カラムに通される各種溶液の送液順序を任意に設定するための手段、(2)カラムの前後を通る溶液のタンパク質濃度を検出するための手段、並びに(3)上記各種溶液の送液速度、送液圧力、滞留時間、混合比、並びにそれらの数値の連続的および/または段階的な変化を行うための手段を備えている、(1)から(11)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
(13) (1)から(12)の何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置中のリフォールディング用カラムに不活性タンパク質を投入してタンパク質リフォールディング用カラム充填剤に該不活性タンパク質を接触させることを含む、不活性タンパク質の機能賦活方法。
本発明は、不活性タンパク質の機能を賦活するためのタンパク質リフォールディング装置に関するものである。本発明によれば、以下の効果が達成される。
(1)タンパク質の種類を問わず広範な不活性タンパク質に対して、それら本来の機能を賦活させる万能的リフォールディング条件を選定できる。
(2)本発明の装置を用いて前記タンパク質、例えば大腸菌等の発現系で産生された高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化して失活したタンパク質を処理することにより、それらタンパク質の本来の機能・活性をリフォールディングにより賦活させることができる。
(3)本発明の装置はインクルージョンボディのタンパク質にも効力を有し、これを用いるインクルージョンボディの効率的なリフォールディング方法として有用である。
(4)本発明の装置を用いることによる不活性タンパク質の機能賦活方法は、タンパク質を構成するアミノ酸の鎖長・配列を問わず種々の変性タンパク質に適用可能な、一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的方法として提供される。
(5)本発明の装置で用いるリフォールディング用カラム充填剤を構成するBEA構造のゼオライトすなわちゼオライトベータは、低コストである。
(6)本発明の装置を用いる不活性タンパク質の機能賦活方法は、分子量10万を越える大型のタンパク質を含む種々の立体構造無秩序タンパク質のリフォールディングに適用できる。
(7)例えば、大腸菌の発現系によるタンパク質合成プロセスと本発明の装置による不活性タンパク質の機能賦活とを組み合わせることにより、高次構造が制御されて該タンパク質固有の本来機能が備わったタンパク質を生産する新規の活性タンパク質製造プロセスを提案・確立することができる。
次に、本発明について更に詳細に説明する。
本発明のリフォールディング装置は、BEA構造のゼオライトをカラム充填剤として用いたカラムを必須構成要素としている。BEA構造のゼオライト(通称ゼオライトベータ、Zeolite Beta)は、ベータゼオライトとも呼ばれ、典型例として、例えば、通常の市販ゼオライトベータ、文献(Zeolites, Vol. 11 (1991) 202を参照)に従い自前で合成・調製したゼオライトベータ、それらを焼成して得られるゼオライトベータ、該ゼオライトの有する空間中にアンモニウムや種々の脂肪族及び/又は芳香族アンモニウムがあるゼオライトベータ、該ゼオライトを形成する骨格ケイ素の一部が他の金属に変わった骨格置換ゼオライトベータ、前記アンモニウム含有骨格置換ゼオライトベータなどが挙げられるが、ゼオライトベータの骨格構造を持つものであれば、基本的には全て該機能・能力を有しており全て使用可能であって、該リフォールディング用カラム充填剤およびカラムを構成するゼオライトベータとして、その製造方法や性状が特段に限定されるものではない。
しかしながら、本発明のリフォールディング装置が用いるリフォールディング用カラムを構成するゼオライトベータの該機能・能力は、不活性並びに変性タンパク質の該ゼオライトへの接触すなわち吸着・脱離で発揮され、この際にはゼオライトベータ表面と対象タンパク質との間の親和性が重要となる上に、また、該タンパク質の吸着・脱離はその分散溶媒、分散溶媒中の変性剤や界面活性剤並びにリフォールディング因子、更には分散溶媒のpHなどで影響される場合も多いので、対象とするタンパク質及びそれを含む溶液の成分状況等に応じて、本発明のリフォールディング装置はリフォールディング用カラムを適宜選択して用いるものである。リフォールディング用カラムのリフォールディング能は、それを構成する前述の種々のゼオライトベータによって、多少変わることも多い。総じて言えば、アンモニウム類を含むゼオライトベータより構成されるリフォールディング用カラム充填剤はそれを含まないものより高いリフォールディング能を示すので、該リフォールディング用カラム充填剤およびカラムとしては、アンモニウム類を含むゼオライトベータおよびアンモニウム類を含む骨格置換ゼオライトベータで構成されるものが好ましいことが、しばしばである。
該リフォールディング用カラムの、ゼオライトベータに含有されるべきアンモニウム類としては、該ゼオライトの有する空間中に留まり易いアンモニウム類、例えばアンモニウムイオン、アルキル基がメチル、エチル、プロピル及びブチルなどのモノ、ジ、トリ及びテトラアルキルアンモニウムイオン、更には5員環、6員環及7員環の脂肪族アミン及び芳香族アミンのアンモニウムイオン、より詳しくは、ピペリジュムイオン、アルキルピペリジュムイオン、ピリジニウムイオン、アルキルピリジウムイオン、アニリンイオン、N−アルキルアニリンイオンなどを挙げることができ、基本的には、ゼオライトベータの有する細孔中に入ることが可能なアンモニウム類であれば、いずれでもよく、ここに例示したアンモニウム類に限定されるものではない。
該リフォールディング用カラムのゼオライトベータの骨格を形成する元素は、一般にはケイ素と酸素、あるいはケイ素と酸素とアルミニウムであるが、ケイ素やアルミニウムの一部が他の元素に置換したゼオライトベータ及びその細孔中に前記アンモニウム類を含む置換ゼオライトベータも、不活性タンパク質の活性賦活機能を有する。ゼオライトベータの骨格ケイ素あるいはアルミニウムと置換可能なものの典型としては、例えば、ホウ素、燐、ガリウム、錫、チタン、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、クロム、バナジウムなどを挙げることができるが、これらに留まるものではなく、基本的にゼオライトベータの構造を破壊しないものであればいずれでも良い。また、その置換量に関しても、ゼオライトベータの構造を破壊しない量であれば、置換量はいかなる量でもかまわず、該置換ゼオライトベータは不活性、あるいは変性タンパク質のリフォールディング機能を発揮するリフォールディング用カラム充填剤となり得る。
本発明で用いるゼオライトベータは、いずれも熱安定性、化学安定性に優れており、しかも安価であるうえ環境に対する負荷が低い物質なので、本発明のリフォールディング装置は、例えば、生化学品製造、医薬品製造にとって極めて有用であり、その経済効果は計り知れないものがある。
ゼオライトベータは一般にはサブミクロン以下の極めて細かい粉体粒子でしか得られないので、ゼオライトベータそのものをリフォールディング用カラム充填剤として用いることは問題が多い。たとえば、造粒を行わないゼオライトベータをカラムに充填した場合、その粒子径から、カラムの排出口側についているフィルターを通過して装置のポンプ部分に悪影響を及ぼしたり、フィルターを容易に目詰まりさせ、カラムとしての用途をなさないことが十分予想される。また、造粒を行わないゼオライトベータをカラムに充填し、そのカラムに溶液を通過させるのには大きな圧力を必要とし、このことは送液ポンプ等にも無用な負荷をかけることになることも予想される。かかる状況を踏まえ、カラム充填剤として利用するには、ゼオライトベータの造粒化が不可欠である。本発明のリフォールディング装置においては、造粒化されたゼオライトベータを用いたリフォールディング用カラムを用いることとなる。このカラムは図1中、7に示される。
ゼオライトベータをカラム充填剤として用いる際の粒径は、カラムとして機能するよう溶液が適度な圧力で透過できれば良いため、溶液の粘度や濃度、ポンプの性能等により決まるものであり、その利用方法や使用形態によって変わるもので、適宜選定されるものであるが、実在するカラムの耐圧性やポンプの性能を考慮すると、好ましくは20〜1000μmの範囲にあることが望ましい。
本発明で用いるリフォールディング用カラム充填剤は、BEA構造のゼオライトいわゆるゼオライトベータ、及びそれを粒状化する糊料(造粒剤)とから構成されることが好ましい。一般的に言って、ゼオライトという物質は自己焼結性が乏しいため、単味単独では成形しにくいことが多いので、粒状体の作製すなわち形態・形状の設計・制御に関しては、糊料材料を用いて造粒化することが可能なため、一般に、自由度が高く、有利であることが多い。
しかしながら、造粒された粒状化ゼオライトベータの形態・形状の設計・制御法すなわち作製方法は、該造粒体の利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、該造粒体の作製には、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、該造粒体の作製法、すなわち形態・形状の設計・制御法として、強いて二、三例を挙げれば、次のようなものがある。造粒体の作製では、水に不溶の接着剤によるゼオライトベータの粒状化、ドライゲルコンバージョン方や固相変換法(Stud. Surf. Sci. Catal. Vol. 125 (1999) 1-12、及び表面、Vol. 37 (1999) 537-557を参照)による凝集状態のゼオライトベータ作製、アルミナ等無機粉体によるゼオライトベータの接着・成形、核となる物質への付着によるゼオライトベータの粒状化などが利用可能であるが、これらに限られるものではない。
一方、ゼオライトは自己焼結性が極めて乏しい物質であるため、焼結による造粒は極めて困難である。焼結を試みる場合、焼結助剤としてアルミナを用いることが多い。しかしながら、アルミナを焼結助剤として用いた場合、ゼオライトとアルミナの間で熱による反応が進行し、新しい相が形成されてしまう。この新たな相はゼオライトとは本質的に異なる物質であることが多く、リフォールディング用カラム充填剤としては適さない、あるいは該機能を有しない可能性が高い。したがって、この種の焼結によるゼオライトベータの造粒は、大いに推奨されるものではないが、排除されるものでもない。
糊料材料を用いた造粒法において好ましい一例を挙げると、一般的な造粒法である、パン型造粒機を用いた方法がよく知られている。回転軸に傾斜角が付けられたパン状の容器に原料粉末を装填し、回転攪拌する。その原料粉末に糊料材料を噴霧または滴下することにより、原料粒子の凝集・接着を促進し、造粒を行う。パンの大きさ・寸法、回転速度や傾斜角、糊料材料の添加方法・添加速度などは、該造粒体の利用方法や使用形態、作製量によって変わるものであり、適宜選定されるものである。
該造粒体の形態・形状については、球状、塊状、鱗片状、多孔質状など、該造粒体の利用方法・使用形態に応じて、適宜選定される。特に、糊料材料については、基本的には水に不溶であり、タンパク質に悪影響を及ぼさないものであればいずれも良く、好ましいものの一例を挙げれば、アセチルセルロースなどが有望であり、そのアセチルセルロースのアセトン溶液を用いることが有望である。ニトロセルロースやポリスチレン樹脂なども同様に有望である。ニトロセルロースはアセトンもしくはアセトンを主成分とする溶剤に溶解した状態で、またポリスチレン樹脂は酢酸エチルを主成分とした溶剤で溶解した状態で用いることが有望である。
該造粒法によりゼオライトベータを造粒した場合、アセチルセルロースの添加量にしたがって造粒が進行し、より大きな粒子径を得ることが可能であり、特にその糊料材料の添加量には制限がないが、あまりに多量の糊料材料を添加するとゼオライトベータの表面が糊料材料により覆われ、タンパク質のリフォールディング機能が失われる可能性がある。作製時の条件にも依存するものであるが、好ましくは糊料材料が乾燥した状態での重量で、0.2〜50重量%の範囲でリフォールディング用カラム充填剤として良好な粒子を得ることができる。
該リフォールディング用カラムに、ロット間の性能の差が存在することは実使用上極めて不都合である。該リフォールディング用カラムのロット間の性能の差は、充填されている充填剤の量や充填の状態、そしてその状況に大きな影響を及ぼすのは、充填剤の粒度分布や粒子形態などになる。この不都合を解消するためには、該造粒体の粒度分布や粒子形態を制御する必要があるが、その方法は該造粒体の利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、該造粒体の粒度分布や粒子形態の制御には、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、該造粒体の粒子形態の制御法としては、造粒時の条件を制御することにより可能となる。また、該造粒体の粒度分布の制御法として、一般的なものをあげれば、篩による分級や流体を用いた分級がある。篩による方法によれば、準備できた篩の規格により粒径分布を制御できる。
本発明の装置が用いる不活性タンパク質の機能賦活を行う試剤群、すなわちリフォールディング装置の対象となるタンパク質は高次構造が整っていない不活性なタンパク質全てであるが、一般には、大腸菌等の発現系で得られる立体構造が無秩序なタンパク質、いわゆるインクルージョンボディ、あるいは熱履歴等のある種の原因で失活したタンパク質である。本発明の装置は、該タンパク質の該装置中のゼオライトベータからなるリフォールディング用カラムへの吸着・脱離過程で、該タンパク質の立体構造をリフォールディングし、該タンパク質本来機能の賦活・付与を行うが、該リフォールディング用カラムの本能力は、必ずしもそれに限定されるものではないが、通常、次のような操作で発揮される。換言すれば、次のような操作で不活性タンパク質の機能賦活が行われる。まず、該タンパク質を変性剤や界面活性剤などを含む溶液に分散溶解し、この後、該リフォールディング用カラムへの注入により、該タンパク質を該リフォールディング用カラムに吸着させ、ついで該リフォールディング用カラムから該タンパク質を脱着させる手順で行われる。
該リフォールディング用カラムに吸着前のタンパク質の分散溶媒としては、一般には、それが大腸菌等の発現系で生産されることと、タンパク質は、通常、水溶液中で使われることが多く、失活した場合でも水溶液中にあることが多いことから、好ましくは、水が用いられる。しかし、必ずしもこれに限定されるものではなく、該タンパク質と反応を起こさないもの、及び該タンパク質の立体構造を不本意な形に変えるものでなければ、基本的には問題はなく、このような場合は、それら溶媒単独あるいは水と混合して用いることが可能である。この種の溶媒の典型例として、一価および多価のアルコールやポリエーテル類をあげることができるが、これらに限定されるものではない。
該タンパク質の吸脱着は、一般には、インクルージョンボディなど縺れ絡んだタンパク質鎖長を解きほぐし易くし、また巻き戻り易くするために変性剤や界面活性剤、pH調整剤、リフォールディング因子等の存在下、及び/又は、タンパク質鎖長中に不本意に生成したS−S結合(架橋)を切断するために、ある種の還元剤やレドックス試薬の存在下で行われる。したがって、本発明の装置は、ゼオライトベータからなるリフォールディング用カラムの他、変性剤やpH調整剤を必要に応じて構成要素として用い、更にはこれらの他、該リフォールディング用カラムからのタンパク質の脱着促進とリフォールディング後の再インクルージョンボディ化を防ぐためのリフォールディング因子及び/又は界面活性剤、S−S架橋形成防止(阻害)剤を必要に応じて含む溶液を用いる。
本発明の装置が用いるこの種の変性剤やpH調整剤の典型例としては、例えば、前者については塩酸グアニジンや尿素、後者についてはトリスアミノメタン塩酸塩(TrisHCl)および4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルフォン酸(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic
acid :HEPES)、2−モノホリノエタンスルホン酸(2-morpholonoethanesulfonic acid: MES)、3−モノホリノプロパンスルホン酸(3-pholinopropanesulfonic acid : MOPS)などを挙げることができるが、これらにとどまるものではなく、同様な作用を持つものはいずれも使用可能である。
また、本発明の装置が用いるリフォールディング因子や界面活性剤の典型例としては、ポリエチレングリコール(PEG20000、PEG800、 PEG200、PEG3350など)、Ficol170、Ficol1400、ポリ燐酸、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、スクロース、グルコース、グリセロール、イノシトール、シクロデキストリン、アミロース、Dextran T-500、Tween20、Tween40、Tween60、NP-40、SB3-14、SB12、CTABおよびTritonX-100などを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、同様な作用を持つものはいずれも使用可能である。
不本意に生成したS−S架橋を切断し、本来の構造に戻す還元剤としては、安価で入手し易いことから、通常は2−メルカプトエタノール、ジチオスレイトール、シスチン、グルタチオンあるいはチオフェノールが用いられるが、これに限定されるものではなく、同様な作用を行うものは全て使用可能である。
当然のことながら、タンパク質鎖長が解きほぐれやすい場合や、不本意にS−S架橋が生成しない場合は、変性剤や界面活性剤、および/または還元剤を必ずしも使う必要がないので、これらの存在は常に必須とは限らず、状況に応じ適宜選択して用いられる。また、装置に用いる溶液成分の量は、それを用いるときの状況に応じ適宜決められることになるが、本発明の装置は通常はゼオライトベータからなるリフォールディング用カラム、塩酸グアニジン(変性剤)およびTrisHClとHEPES(pH調整剤)を溶液成分として、更に2−メルカプトエタノールと前記リフォールディング因子や界面活性剤の1種あるいは2種を用いることになる。
一般に、本装置を用いてのリフォールディング操作・工程中のタンパク質の脱着過程では、通常、該装置が用いる試剤(フォールディング因子や界面活性剤)による置換吸着が用いられるが、基本的には該タンパク質の脱着後の機能賦活を阻まない操作であれば、いかなる操作も適用可能で、とくに限定されるものではない。したがって、pH変化、温度変化なども用いることができる上に、これらと置換吸着を併用することもできる。
ところで、置換吸着の際、該タンパク質の脱着を促す物質として、従来からカラムクロマトグラフィーの溶離では、ハロゲン化アルカリなどの塩が頻繁に用いられており、これらの併用で顕著な効果が得られる場合も多い。また、本発明の装置を用いる時に、試剤間の反応など特に問題や支障が起きない場合は、構成試剤の幾つかをあらかじめ合わせておき一つの試剤としておくこともできる。例を挙げれば、HEPES、ハロゲン化アルカリ(例えば塩化ナトリウム)、2−メルカプトエタノール、リフォールディング因子(例えばポリエチレングリコールのPEG20000、PEG800、 PEG200、PEG3350のうちの1種や、Ficol170あるいはβ−シクロデキストリン)および界面活性剤(例えばTween20、 Tween40、Tween60、NP-40あるいはTritonX-100)からなる溶液をリフォールディングバッファーとして一纏めにし、本発明の装置が用いる構成試剤の一つにすることも可能である。これはリフォールディング操作・工程でしばしば大きな利便となる。
該タンパク質が巻き戻された状態で該リフォールディング用カラムから脱着した場合、その濃度や溶液の組成・状態により、該タンパク質が凝集を起こし沈澱してしまうことがある。そのような不本意に生成する凝集・沈澱を避けるため、その効果がよく知られたアルギニンが用いられるが、これに限定されるものではなく、同様な作用を行うものは全て使用可能である。当然のことながら、該タンパク質が巻き戻された状態で凝集を起こしにくい場合や、不本意に凝集・沈澱が生成しない場合は、凝集防止剤を必ずしも使う必要がないので、これらの存在は常に必須とは限らず、状況に応じ適宜選択して用いられる。また、それらを用いる場合も、それらの量は状況に応じ適宜決められることになる。
これらの溶液群は、図1中、4,9,10に示される。タンパク質変性剤、pH調整剤、更にタンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子を含む溶液群は図1中、4に対応する。pH調整剤を含む溶液は、図1中、9に対応する。タンパク質溶液(変性剤や界面活性剤を含む場合がある)は、図1中、10に対応する。
更に言えば、該タンパク質の該装置中の該リフォールディング用カラムへの吸着あるいはそれからの脱着を促すために、上記操作と併用して種々の付加的操作を行うこともできる。このような操作の典型例には、例えば、超音波やマイクロ波の照射や、磁場や電場の印加がある。これらの操作は、図1中、8に示される部位により行われる。以上述べてきた本発明の装置を用いての手順・操作により、該リフォールディング用カラムの持つタンパク質巻き戻し能が高度に発揮されることになり、大腸菌等の発現系を用い生産した高次構造未形成タンパク質並びにある種の原因で失活したタンパク質にリフォールディングが起き、それらタンパク質が本来持つはずの機能が速やかに賦活される。
該装置では、該タンパク質を変性剤や界面活性剤などを含む溶液に分散溶解し、この後、該リフォールディング用カラムへの注入により、該タンパク質を該リフォールディング用カラムに吸着させ、ついで該リフォールディング用カラムから該タンパク質を脱着させる手順で行われ、不活性タンパク質の機能賦活が行われる。この操作を連続的に行うため、該装置は、溶液を吸引・送液するためのポンプ、溶液の種類や流れを切り替えるバルブを必須構成要素として用いる。これらの機能を有する部位は、図1中、1にて示される。一般的にこのような操作を行える装置として液体クロマトグラフィーの装置がある。該装置は、リフォールディング用カラムを必須構成要素として装備しており、そのリフォールディング用カラムを最適な条件で作動させることを目的とした装置である。
ポンプとしては、リフォールディング用カラムの利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、ポンプの種類・形式としては、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、その適用が好ましいものを、強いて二、三例を挙げれば、オープンカラム形式のリフォールディング用カラムを用いる場合には、ペリスタポンプのような単純な構造のものでも適用可能であり、インライン用カラム形式のリフォールディング用カラムの場合には、脈流が生じにくい点で、制御機構の装置された2連プランジャ往復方式のポンプなどがある。これらは、図1中、2に示される。
切り替えバルブについても、その仕様はリフォールディング用カラムの利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、切り替えバルブの種類・形式としては、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、その適用が好ましいものを、強いて挙げれば、デッドボリュームが少なく、迅速に流路を変更することが容易である、三方弁や六方弁などの多方弁形式のバルブなどがある。いうまでもなく、電力により駆動し、バルブ位置を電気的信号等で検知できる形式が好ましい。これらの機能を有する部位は、図1中、3にて示される。
該リフォールディング装置によりリフォールドされたタンパク質を含む溶液は、適宜分取されることで、好ましいことがしばしばである。タンパク質リフォールディング用カラムからリフォールドされて出てくるタンパク質溶液の濃度は、リフォールディング用カラムを流れる溶液組成の連続的または非連続的な変化に対応して変化することが容易に予想される。従って、一定容量ずつ別々の容器に注入されることが望ましい。溶液の分取装置もしくは分取機構は、タンパク質の種類や該リフォールディング装置の利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、分取装置もしくは分取機構の種類・形式としては、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、その適用が好ましいものを、強いて挙げれば、多数のチューブがセットされたテーブルを自動的に駆動させ、その個々のチューブの上部から一定量の溶液を滴下することで、一定容量ずつの分取を行う装置がある。これらの機能を有する部位は、図1中の11,12に相当する。
該リフォールディング装置によりリフォールドされたタンパク質を含む溶液のタンパク質濃度が、実時間で計測されていることが好ましいことがしばしばである。タンパク質リフォールディング用カラムからリフォールドされて出てくるタンパク質溶液の濃度は、リフォールディング用カラムを流れる溶液組成の連続的または非連続的な変化に対応して変化することが容易に予想される。従って、バルブの操作や溶液の分取の時期を適切に行うために、実時間で溶液中のタンパク質濃度が計測されている機構が、該リフォールディング装置に装備されていることが望ましい。この検出系としては、該リフォールディング装置の利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、検出器の種類・形式としては、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、その適用が好ましいものを、強いて挙げれば、280nmの紫外光の吸収を計測する方式のものをあげることができる。これらの機能を有する部位は、図1中、5にて示される。
該リフォールディング装置は、用いる各種溶液の送液順序を任意に設定できるとともに、各種溶液の送液速度、送液圧力、滞留時間、混合比、さらにはそれらの数値の連続的および/または段階的な変化を行うことで、タンパク質を効率よくリフォールディングさせ回収することができる特徴を有している。この特徴をより効率的に発揮するため、上述の各種条件を設定することができる機能を有していることが好ましい。その方式や機構は該リフォールディング装置の利用方法や使用形態によって変わるものであり、適宜選定されるものである。したがって、制御の方式や機構としては、公知の方法が全て利用可能であり、適宜選定され、あるいは組み合わされて使用されることになるので、特に限定されるものでも無く、また、特に詳しい説明や言及を必要とするものではないが、その適用が好ましいものを、強いて挙げれば、コンピューターによるポンプ、バルブ、タンパク質濃度検出、分取装置の自動制御などがあげられる。これらの機能を有する部位は、図1中、13にて示される。
以下の実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例等によって何ら制約を受けるものではない。
以下の実施例では、大腸菌発現系生産タンパク質及び変性タンパク質の機能賦活を説明するが、本発明は実施例によって限定・制限されるものではない。
(1)カラム充填剤およびカラムの調製
(a)リフォールディング用カラム充填剤の作製(造粒)
ゼオライトベータ粉末をパン型造粒機もしくはパン型部分を円筒状に交換した造粒機に投入し、1〜2重量%アセチルセルロースのアセトン溶液を噴霧器もしくはエアブラシ等を用いて噴霧し、造粒化を行った。造粒機の回転速度は60回転/分、パンおよび円筒容器の傾斜角は45℃、但しこれらの条件は装填する原料粉末の量などにより適宜調節する。アセチルセルロースの濃度は、1〜2重量%が適切であり、これ以上の濃度になると溶液の粘度が高くなり、噴霧が困難になる。原料粉末重量に対して、最終的なアセチルセルロースが3〜20%の範囲で、好ましい顆粒状の粉体が得られる。当然のことながらアセチルセルロース含有量が増えることにより、粒子径は増大する傾向がある。
(b)リフォールディング用カラム充填剤の分級
造粒されたゼオライトベータは粒度分布を有するため、分級する。ふるいを用いたりする一般的な方法が適用可能である。しかしながら、ゼオライトベータはその一次粒子径が小さいことや空気中の水分等を吸収しやすいため、凝集を起こしやすい。通常のふるいによる分級では困難な場合が多く、造粒物を超純水で懸濁させ、スラリー状態でふるいにかけることにより分級が容易になることが多い。この方法では50μm以上の粒径であれば、容易に分級が可能であり、準備できた篩の規格により粒径分布を制御できる。たとえば100μmの篩を通過し、75μmの篩は通過しない粉体を集めれば、その粒径分布は75〜100μmの範囲に入ることになる。同様な方法で、粒径分布を制御できる。
(c)リフォールディング用カラム充填剤のカラムへの充填
作製された顆粒状のゼオライトベータを超純水で懸濁させ、重力による自然沈降を用いてカラムに充填する。さらに真空デシケーターなどに入れ減圧処理を施すことにより脱気を行い、空隙の存在しない充填状態を確保する。乾燥状態での充填も可能であるが、その後の利用の利便性を考慮すると超純水と共存状態であることの方が有利である。オープンカラムおよびインライン用のカラム、双方共に同様な方法により充填する。重力による自然沈降を用いることにより、粒度分布が揃っていれば同様な充填状態を実現し、カラムとしてのロット間の特性差を揃えることができる。
オープンカラムへの充填は、代表的なカラムとしてBio−Rad Laboratories製ポリプレップ クロマトグラフィカラムを用いて、超純水との混合状態でスラリー状になっている充填剤を1〜2g(1〜2ml)程度注入する。重力による自然沈降を待ち、充填剤を安定させる。その後、カラム下部の排出口を開け、余分な超純水を廃棄する。超純水による湿潤状態のままカラムを保存、もしくは利用する。
インラインカラムへの充填は、代表的なカラムとしてGEヘルスケア社製のTriconカラムセットを用いる。アダプターを介して同じ径のガラスチューブを接続し、超純水との懸濁状態でスラリー状になっている充填剤を注入する。重力による自然沈降を待ち、充填剤を安定させる。アダプターを取り除いた後、超純水を満たした状態で減圧処理を施すことにより脱気を行う。超純水による湿潤状態のままカラムを保存、もしくは利用する。
比較のため、造粒を行わないゼオライトベータをカラムに充填してみた。結果、カラムの排出口側についているフィルターが容易に目詰まりを起こし、カラムとしての用途をなさないことが明らかとなった。また、造粒を行わないゼオライトベータをカラムに充填し、そのカラムに溶液を通過させるのに大きな圧力を必要とし、このことは送液ポンプ等にも無用な負荷をかけるとことになり、カラム充填剤として利用するには、ゼオライトベータの造粒化が不可欠であることが示された。
(2)試料等の調整
(a)変性タンパク質溶液
活性賦活対象タンパク質として、試薬として入手可能なRNaseA、リゾチームを使用した。また、大腸菌から発現させたインクルージョンボディとしては、GFP(緑色蛍光タンパク質)やLDH(乳酸脱水素酵素)を用いた。これらのタンパク質は試薬およびインクルージョンボディ共に6M塩酸グアニジン溶液に溶解し、濃度を測定しつつ1mg/mlの溶液を作成する。
(b)リフォールディングバッファー
一例として一般には、リフォールディングバッファーとして、50mM HEPES pH7.5 / 0.5M NaCl / 20mM 2−メルカプトエタノール / 0.5(w/v)% ポリエチレングリコール 20000(リフォールディング因子) / 1(v/v)% Tween20(界面活性剤)の組成の液を用いた。
(3)タンパク質の濃度測定法
タンパク質の濃度測定は、ブラッドフォード法およびBCA法を適宜用いた。1.5mlチューブやマイクロプレートを用いて、所定の操作の後、検量線を用いた比色分析により濃度を決定した。
(4)タンパク質の活性測定法
(a)リゾチームの活性評価
リゾチームの活性は、Micrococcus lysodeikticus の溶菌活性を指標にして評価した。Micrococcus lysodeikticusの凍結乾燥菌体を、0.1Mリン酸緩衝液(pH7.0)に懸濁し、波長450nmにおける吸光度が1.0となるように調整したものを反応溶液とした。反応溶液を25℃でプレインキュベーションした後、リゾチームを含むサンプルを反応溶液に添加し、波長450nmにおける吸光度の減少を測定した。活性値は、波長450nmにおける吸光度を、1分間に 0.001減少させる活性を1unitとして算出した。
(b)RNaseAの活性評価
RNaseAの活性は以下のようにして評価した。Cytidine 2’,3’-cyclic monophosphateを、その濃度が0.5mg/mlとなるように20mMのリン酸緩衝液(pH7.5)に溶解したものを反応溶液とした。反応溶液を25℃でプレインキュベーションした後、RNaseAを含むサンプルを反応溶液に添加し、波長286nmにおける吸光度の増加を測定した。活性値は、波長280nmにおける吸光度を、1秒間に0.001増加させる活性を1unitとして算出した。
(c)GFPの活性評価
GFP(緑色蛍光タンパク質)の活性は、GFPが発する蛍光強度に基づき評価した。50mM Tris-HCl緩衝液(pH7.5)中のGFPを、波長490nmで励起し、波長510nmに観察される蛍光の強度を蛍光分光光度計により測定した。リフォールドしたGFPが発する蛍光の強度を、同じ濃度の変性していないGFPを対照とした相対値として算出し、その活性を評価した。
(d)LDHの活性評価
LDH(乳酸脱水素酵素)の活性は、LDHが触媒する反応(ピルビン酸+NADH→乳酸+NAD)におけるNADHの減少によって評価した。NADHは波長 340nmに吸収をもつため、吸光度の減少を測定することで、酵素活性を測定することができる。0.1mM NADHと、100mM ピルビン酸を含む100mM MES緩衝液を反応溶液とし、30℃で10分間プレインキュベーションした。その後、LDHを含むサンプルを反応溶液と混合し、波長340nmにおける吸光度の減少を測定した。活性値は、波長340nmにおける吸光度を、1秒間に0.001減少させる活性を1unitとして算出した。
(5)オープンカラムによるリフォールディング
(a)GFPのリフォールディング例
カラム有効部0.8×4cmのオープンカラムに充填剤20mgを充填する。この場合、75〜150μmの粒度分布を有する充填剤を用いた。各溶液の注入または滴下には、流量および流速を制御できるペリスタポンプを用いて加えた。まず、カラム下部の排出口を開けた後、1mの6M塩酸グアニジン溶液でこのオープンカラムを洗浄する。その後、GFP3mgを溶解させた6M塩酸グアニジン溶液1mlを加え、溶液を滴下する。本操作により、変性状態のGFPが充填剤に吸着される。10mlの1mM Tris−HCl pH7.5を加え、カラムを通して充填剤を洗浄する。これらの操作は、コンピュータによるポンプおよびバルブの操作により行うことで、自動化が可能である。リフォールディングバッファーは全量で2ml加えるが、カラムを通ってきた溶液を、同じく自動的にチューブを変更させることにより、0.2mlずつ分取する。回収した溶液を一晩放置した後、蛋白質濃度、および活性を評価した。
図2に分取したタンパク質溶液の活性と濃度の測定結果を示した。2mlのリフォールディングバッファーをカラムに通すことにより、図中フラクションNo.1〜10がそれぞれ分取された0.2ml毎のオープンカラムを通ってきたリフォールディングバッファーに相当する。各フラクションのタンパク質の活性と3番目から6番目までの分取したタンパク質溶液の濃度を示した。分取された各溶液のGFP濃度から、3〜6番目に分取された溶液のみでも20%程度のGFPが充填剤から回収されていることがわかる。この画分にてリフォールド後回収されたGFPはタンパク質濃度が比較的高く、評価の精度を確保することが出来るため、蛍光発光の強度により活性を評価した。リフォールドしたGFPが発する蛍光の強度は600〜1100LU(LU:蛍光の相対強度を示す単位)程度の数値を示しており、同じ濃度の変性していないGFPの数値、およそ5000LUに対して、20%前後の活性の回復を示していることがわかる。当該カラム充填剤によりリフォールディング操作を施されたGFPが良好な活性の回復をしていることがわかる。
(b)リゾチームのリフォールディング例
カラム有効部0.8×4cmのオープンカラムに超純水にてスラリー状となった充填剤500mgを充填する。この場合300〜500μmの粒度分布を有する充填剤を用いた。各溶液の注入または滴下には、流量および流速を制御できるペリスタポンプを用いて加えることが可能である。まず、カラム下部の排出口を開けた後、超純水を注入しこのオープンカラムを洗浄する。その後、リゾチーム5mgを溶解させた6M塩酸グアニジン溶液5mlを加え、溶液を滴下する。超純水がリゾチーム溶液と置換することになり、変性状態のリゾチームが充填剤に吸着される。6M塩酸グアニジン溶液1mlを加え、カラムを通して充填剤を洗浄する。さらに超純水2mlをカラムに通して充填剤を洗浄する。その後、リフォールディングバッファーをカラムに加える。これらの操作は、コンピュータによるポンプおよびバルブの操作により行うことで、自動化が可能である。リフォールディングバッファーは全量で5mlを加えるが、カラムを通ってきた溶液を、同じく自動的にチューブを変更させることにより、1mlずつ分取する。回収した溶液の蛋白質濃度、および活性を評価した。
分取したタンパク質溶液の濃度を測定した。溶液のカラムを通す速度にも依存するが、1mlの滴下に15分程度をかけた場合、70%以上のリゾチームが充填剤に吸着保持された。滴下の速度を早めると、未吸着量が増加する傾向があった。リフォールディングバッファーをカラムに通すことにより、吸着タンパク質のほとんどが回収された。このリフォールドされたリゾチームの活性を溶菌特性から評価した。結果、リゾチームの溶菌活性を確認した。
図3に回収された液中のリゾチームの比活性測定結果と濃度を示す。図中F1〜F5がリフォールディングされ回収されたリゾチームの数値になる。60〜100unit/mgの比活性を示していることがわかる。リフォールディング操作により活性が回復していることが認められる。リゾチーム5mgを溶解させた6M塩酸グアニジン溶液5mlの内、一部のリゾチームはそのままオープンカラムを通り抜けてきているが(図中FTに相当)、これらは量の割に活性の回復が悪く、当該カラム充填剤によりリフォールディング操作を施されたリゾチームの方が活性の回復が良好であることがわかる。
(6)インラインカラムによるリフォールディング
(a)標準的操作法
両端をシールにより密閉され、なおかつチューブへの接続機能を有したガラス製カラム等を用いる。代表的なものとしてGEヘルスケア社製のTriconカラムセット、Tricon5/20カラムを用いた。造粒により75〜100μmの範囲に分級された充填剤150mgが、超純水によりスラリー状にして充填されている。このカラムをFPLC、たとえばGEヘルスケア社製のAKTA10Sに装着する。FPLC装置のポンプによりタンパク質溶液を所定の流速でカラムに通す。タンパク質を吸着させた後、超純水等でカラムを洗浄する。さらにリフォールディングバッファーを通すことにより、タンパク質を回収する。カラムを通ってきた溶液は、フラクションコレクターで分画して回収するのが一般的である。回収された溶液のタンパク質濃度および活性の評価を行う。
(b)LDHのリフォールディング例
大腸菌により発現させたインクルージョンボディのLDHを変性バッファーであるところの適当な緩衝剤を含んだ6M塩酸グアニジン溶液に溶解し、1mg/mlのタンパク質溶液とする。カラムにまず、タンパク質を含まない変性バッファーを通し、平衡化を行う。次に当該タンパク質溶液10mlを流速0.3ml/min.でカラムに通し、タンパク質を吸着させる。その後、変性バッファーでカラムを洗浄し、さらに、塩酸グアニジンを含まない洗浄バッファーにて、カラムを洗浄し、変性バッファーを洗い流すと共に、未吸着のタンパク質などの不純な成分を洗い流す。次にリフォールディングバッファーをカラムに通し、タンパク質を回収する。
図4に一連の操作に対応したグラフを示す。実線はカラムから出てくる溶液について、波長280nmの紫外光の吸収からタンパク質濃度を計測したものになる。破線は回収されたタンパク質溶液を分取したものの活性測定結果である。はじめにタンパク質溶液をカラムに通すことにより、吸着の飽和が起こり、徐々にタンパク質が通り抜けてきていることが分かる。次に洗浄の過程になると、未吸着や不純な物質の溶出が確認されるが、これらは活性を示さないことが分かる。リフォールディングバッファーを流すことにより、タンパク質が回収されており、さらにそのタンパク質は活性を回復していることも確認できる。すなわち、変性バッファーにより溶解しているタンパク質はカラム充填剤に吸着し、洗浄の後、置換して流されるリフォールディングバッファーにより、リフォールドされた活性タンパク質が回収されることが確認された。RNaseAやGFPについても、同様な操作により、タンパク質の回収が可能である。条件の設定や扱う総量にもよるが、これらの操作は数十分から数時間で完了する。
上記実施例に示されるように、タンパク質リフォールディング用を用いた本発明のタンパク質リフォールディング装置の使用により、複数のタンパク質本来の活性が、極めて簡単な操作で迅速に得られることが分かった。本発明のタンパク質リフォールディング装置は、種々の高次構造未形成並びに変性・失活タンパク質に適用できる、一般性、普遍性の高いタンパク質リフォールディング装置として有用であり、その適用は、実施例に示されたタンパク質に限定されるものではなく、任意のタンパク質に適用し得るものである。
本発明は、不活性タンパク質の機能賦活に有用なタンパク質リフォールディング装置に関するものである。本発明によれば、大腸菌等の発現系で産生された高次構造が未形成なために不活性なタンパク質、あるいはある種の原因で立体構造が変化して失活したタンパク質の本来の機能・活性をリフォールディングにより賦活させることができる。この方法は、インクルージョンボディを効率よく、手軽にリフォールディングする方法として有用である。また、本発明によれば、種々のタンパク質に適用可能な、一般性、普遍性のある、しかもリフォールディング率の高い効率的なリフォールディング装置を提供できる。本発明で用いるタンパク質リフォールディング用カラム充填剤を構成するゼオライトベータは、低コストであり、しかも、環境に対する負荷が低い物質である。本発明で用いるタンパク質リフォールディング用カラム充填剤は、分子量10万を越える大型のタンパク質を含む種々の立体構造無秩序タンパク質のリフオールディングに効力を有する。したがって、更なる展開、例えば、大腸菌の発現系によるタンパク質合成プロセスと、本発明のタンパク質リフォールディング装置とを組み合わせることにより、高次構造の制御された該タンパク質固有の本来機能が備わったタンパク質を生産する新規の活性タンパク質製造プロセス・システムを構築することができる。
図1は、本発明に係るタンパク質リフォールディング装置の機構を示す構成図である。 図2は、オープンカラムでのGFPのリフォールディングを示す。 図3は、オープンカラムでのリゾチームのリフォールディングを示す。 図4は、フロー系でのリフォールディングを示す。
符号の説明
1 流量可変可能な切り替えバルブ
2 流量可変可能な送液ポンプ
3 切り替えバルブ
4 タンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子を含む溶液群
5 タンパク質濃度検出器
6 ストップバルブ
7 タンパク質リフォールディング用カラム
8 超音波、マイクロ波、磁場、電場の印加装置
9 pH調整剤等洗浄液
10 タンパク質溶液
11 分注装置
12 分注された溶液の捕集容器群
13 制御用コンピュータ

Claims (10)

  1. 粒子状に造粒されているBEA構造のゼオライト(ゼオライトベータ)を含むタンパク質リフォールディング用カラム充填剤を充填したリフォールディング用カラムを少なくとも備えている、タンパク質リフォールディング装置であって、
    リフォールディング用カラム充填剤が、ゼオライトベータ、およびゼオライトベータを造粒化するための水に不溶の糊料からなり、
    ゼオライトベータは、粒子径20μmから1000μmの範囲に造粒されており、
    タンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をリフォールディング用カラムに添加するための手段をさらに備えていることを特徴とする、タンパク質リフォールディング装置。
  2. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液するための手段を備えている、請求項に記載のタンパク質リフォールディング装置。
  3. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、バルブの操作により送液の順番を制御するための手段を備えている、請求項1または2に記載のタンパク質リフォールディング装置。
  4. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、流量を連続的に可変できるポンプ又はバルブにより、溶液の混合比を連続的に変化するための手段を備えている、請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
  5. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、カラムの入口出口に設置されたバルブにより、送液を止めて平衡化の処理を制御するための手段を備えている、請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
  6. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプまたは自然重力下でリフォールディング用カラムに送液する際に、バルブの操作による流路変更、又はポンプにより繰り返しリフォールディング用カラムを通すための手段を備えている、請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
  7. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプによる加圧状態または重力による常圧状態で、リフォールディング用カラムを通すための手段、並びにタンパク質のリフォールディングを行った後に巻き戻されたタンパク質溶液を分割して捕集するための手段を備えている、請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
  8. タンパク質溶液、並びにタンパク質変性剤、pH調整剤、タンパク質S−S架橋形成防止剤、凝集・沈澱防止剤、界面活性剤およびリフォールディング因子から選択される少なくとも1種以上をポンプによる加圧状態または重力による常圧状態で、リフォールディング用カラムを通すことによりタンパク質のリフォールディングを行うための手段、並びにカラムの前後を通る溶液のタンパク質濃度を検出するための手段を備えている、請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
  9. (1)リフォールディング用カラムに通される各種溶液の送液順序を任意に設定するための手段、(2)カラムの前後を通る溶液のタンパク質濃度を検出するための手段、並びに(3)上記各種溶液の送液速度、送液圧力、滞留時間、混合比、並びにそれらの数値の連続的および/または段階的な変化を行うための手段を備えている、請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置。
  10. 請求項1からの何れかに記載のタンパク質リフォールディング装置中のリフォールディング用カラムに不活性タンパク質を投入してタンパク質リフォールディング用カラム充填剤に該不活性タンパク質を接触させることを含む、不活性タンパク質の機能賦活方法であって、
    不活性タンパク質を変性剤を含む溶液に分散溶解した後、リフォールディング用カラムに吸着させ、ついでリフォールディング因子、界面活性剤及び変性剤を含まない溶液により該リフォールディング用カラムを洗浄した後、少なくともリフォールディング因子または界面活性剤を含み変性剤を含まない溶液により該リフォールディング用カラムから該タンパク質を脱着させる手順により、不活性タンパク質の機能賦活を行うことを特徴とする、不活性タンパク質の機能賦活方法。
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