JP7300173B2 - 酸化ケイ素を基質としたプルシアンブルー誘導体含有複合体、該複合体を用いるアンモニア吸着・脱離方法、およびアンモニア回収装置 - Google Patents
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Description
例えば、活性炭(特許文献1)、モレキュラーシーブ、ゼオライト(特許文献2)、Amberlyatとも呼ばれるスルホン酸を有する高分子等(非特許文献1)の材料等が使用されているが、それらの吸着容量は比較的低く、効率がよくない。
(1)酸化ケイ素を基質としてプルシアンブルー誘導体を含む、アンモニアの吸着と脱離のためのプルシアンブルー誘導体含有複合体であって、
前記基質である酸化ケイ素が、下記一般式(I)で表されるテトラアルコキシシランを出発原料として作製されるアモルファス状の酸化ケイ素であり、
一般式(I) (RO)4Si (Rは、アルキル基)
前記プルシアンブルー誘導体が、下記一般式(II)で表され、
一般式(II) AXM[M’(CN)6]y・ZH2O
ここで、金属原子Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であり、金属原子M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であり、Aは水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンであり、
xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表す。
前記プルシアンブルー誘導体含有複合体は、アンモニアの動的分子径よりも大きな内部空間を有し、プルシアンブルー誘導体が表面と内部に保持されていること特徴とする、プルシアンブルー誘導体含有複合体。
(2)平均直径が1μm~10cmであり、アンモニアを吸着させた後アンモニアを脱離させることができ、再利用によるアンモニアの吸着・脱離を3回以上行える、請求項1に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体。
(3)上記(1)または(2)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体を、アンモニアを含む気体、液体、もしくはそれらの混合物に接触させ、アンモニアを吸着させるアンモニアの吸着方法。
(4)圧力が1~500気圧、温度が0℃以上、および相対湿度が100%以下の条件下でアンモニアを吸着させる、上記(3)に記載のアンモニアの吸着方法。
(5)上記(1)または(2)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体を、アンモニアを含む気体、もしくは液体、もしくはそれらの混合物に接触させ、アンモニアを吸着させた後、アンモニアを吸着させた圧力より圧力低下を行う処理、アンモニアを吸着させた温度より温度上昇を行う処理、アンモニアを吸着させた相対湿度より湿度を下げて除湿条件下にさらす湿度変化の処理、およびアンモニアを吸着させた相対湿度より湿度を上げ、加湿条件下にさらす湿度変化の処理、からなる群から選択される少なくとも1種の処理を行う、アンモニアの脱離方法。
(6)上記(5)に記載のアンモニアの脱離方法によりアンモニアを回収する、アンモニアの回収方法。
(7)上記(1)または(2)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体に、アンモニアを吸着させるアンモニア吸着工程と、アンモニアを脱離させるアンモニア脱離工程を行うアンモニアの回収装置であって、
前記アンモニア脱離工程が、減圧条件下にする圧力低下の処理工程、加熱する温度上昇の処理工程、除湿条件下にする湿度変化の処理工程、および加湿条件下にする湿度変化の処理工程からなる群から選択される少なくとも1種の処理工程である、アンモニアの回収装置。
(8)前記アンモニア脱離工程の後に、気体状のアンモニアをボンベもしくはタンクに回収する工程、液化アンモニアをボンベもしくはタンクに回収する工程、またはアンモニウムイオンを含む溶液、水溶液、もしくは無機物の塩個体として回収する工程からなる群から選択される少なくとも1種の回収工程を行う、上記(7)に記載のアンモニアの回収装置。
(9)溶媒である水とアルコール、テトラアルコキシシラン、塩酸、及びプルシアンブルー誘導体とを混合攪拌した後、溶媒である水とアルコールを留出させることを特徴とする、上記(1)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体の製造方法。
さらに、本発明は、以下のプルシアンブルー誘導体含有複合体、アンモニアの吸着方法、アンモニアの脱離方法、アンモニアの回収方法、アンモニアの回収装置、プルシアンブルー誘導体含有複合体の製造方法に係るものである。
(10)酸化ケイ素を基質としてプルシアンブルー誘導体を含む、アンモニアの吸着と脱離のためのプルシアンブルー誘導体含有複合体であって、
前記基質である酸化ケイ素が、アモルファス状の酸化ケイ素であり、
前記プルシアンブルー誘導体が、下記一般式(2)で表され、
一般式(2) AxM[M’(CN) 6 ]y・zH 2 O
ここで、金属原子Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であり、金属原子M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であり、Aは水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンであり、
xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表す。
前記プルシアンブルー誘導体含有複合体は、前記基質を有し、(-Si-O-Si-O-)の1次元、2次元、3次元のネットワークを有するガラス部材であり、アンモニアの動的分子径よりも大きな内部空間を有し、プルシアンブルー誘導体が前記ガラス部材の表面と内部に保持されていることを特徴とする、プルシアンブルー誘導体含有複合体。
(11)平均直径が1μm~10cmであり、アンモニアを吸着させた後アンモニアを脱離させることができ、再利用によるアンモニアの吸着・脱離を3回以上行うことのできる、前記(10)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体。
(12)前記(10)または(11)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体を、アンモニアを含む気体、液体、もしくはそれらの混合物に接触させ、アンモニアを吸着させるアンモニアの吸着方法。
(13)圧力が1~500気圧、温度が0℃以上、および相対湿度が100%以下の条件下でアンモニアを吸着させる、前記(12)に記載のアンモニアの吸着方法。
(14)前記(10)または(11)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体を、アンモニアを含む気体、液体、もしくはそれらの混合物に接触させてアンモニアを吸着させた後、アンモニアを吸着させた圧力より圧力低下を行う処理、アンモニアを吸着させた温度より温度上昇を行う処理、アンモニアを吸着させた相対湿度より湿度を下げて除湿条件下にさらす湿度変化の処理、およびアンモニアを吸着させた相対湿度より湿度を上げ、加湿条件下にさらす湿度変化の処理、からなる群から選択される少なくとも1種の処理を行う、アンモニアの脱離方法。
(15)前記(14)に記載のアンモニアの脱離方法によりアンモニアを回収する、アンモニアの回収方法。
(16)前記(10)または(11)に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体に、アンモニアを吸着させるアンモニア吸着工程と、アンモニアを脱離させるアンモニア脱離工程を行うアンモニアの回収装置であって、前記アンモニア脱離工程が、減圧条件下にする圧力低下の処理工程、加熱する温度上昇の処理工程、除湿条件下にする湿度変化の処理工程、および加湿条件下にする湿度変化の処理工程からなる群から選択される少なくとも1種の処理工程である、アンモニアの回収装置。
(17)前記アンモニア脱離工程の後に、気体状のアンモニアをボンベもしくはタンクに回収する工程、液化アンモニアをボンベもしくはタンクに回収する工程、またはアンモニウムイオンを含む溶液、水溶液、もしくは無機物の塩個体として回収する工程からなる群から選択される少なくとも1種の回収工程を行う、前記(16)に記載のアンモニアの回収装置。
(18)溶媒である水とアルコール、下記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン、塩酸、及びプルシアンブルー誘導体とを混合攪拌した後、溶媒である水とアルコールを留出させることを特徴とする、上記請求項1に記載のアモルファス状の酸化ケイ素基質としたプルシアンブルー誘導体含有複合体の製造方法。
一般式(1) (RO) 4 Si (Rは、アルキル基)
本発明のPB誘導体含有複合体は、テトラアルコキシシランを出発原料として作製されるアモルファス状の酸化ケイ素の基質の表面と内部にPB誘導体が混合されているが、本発明の作製により、基質である酸化ケイ素の構造体中に、アンモニアの動的分子径0.26nmよりも大きな内部空間が、自然に、自律的に、多数形成されており、内部までアンモニアを誘導するルートが形成され、アンモニア吸着の効率を上げる格別な効果を有する。そのため、本発明の作製において、テトラアルコキシシランを出発原料としPB誘導体含有複合体を作製することが好ましい。さらに、含有されているPB誘導体自体、その結晶構造からアンモニアの動的分子径0.26nmよりも大きなPB誘導体の結晶空間を有するため、アンモニア吸着の効率がさらに増大する格別な効果を有する。その他、元々PB誘導体が混合された酸化ケイ素(-Si-O-Si-O-)の1次元、2次元、3次元のネットワークを有するガラス塊を、粉砕機やボールミル等によりナノレベルまで細かく粉砕し、得られた細かい粉を昇温加熱し、必要な場合圧縮することで、アンモニアの動的分子径0.26nmよりも大きな内部空間を有するPB誘導体含有複合体を作製することもできる。
また、アモルファス状の酸化ケイ素基質の作製工程は、上記のPB誘導体との混合工程において同時に行ってもよく、この場合は水とアルコールの混合溶媒にテトラアルコキシシランと塩酸とPB誘導体を同時に加えて混合攪拌することもできる。
なお、基本的に前記の各比は限定されるものではなく、作製の状況、温度条件等から前記の各比からの変更は可能で、あらゆる比率の選択ができる。
回収装置には大きくわけて2つの形式があり、1つは、本発明のPB誘導体含有複合体を含む部品を、回収装置内のアンモニア吸着部とアンモニア脱離部を移動させる形式と、他方は、本発明のPB誘導体含有複合体を含む部品は回収装置内で固定化され、その部分の配管等の流入流出の切り替えを行う形式がある。
本発明のアンモニアの回収装置は、例えば、アンモニア供給源とアンモニア排出部とが、配管、パイプや溝、トレンチによって接続され、各配管は適切にポンプ及びバルブ、もしくは水門等を具備し、配管内の流入流出や圧力、温度、湿度を制御するための電子基板やデバイスを含有、接続したものである。
アンモニア脱離部において、加熱部は、アンモニアが吸着したPB誘導体含有複合体を加熱できるものであれば特に限定されず、例えば、ボイラー、電気加熱ヒーター、光加熱ヒーター、温風ヒーター等が挙げられる。減圧部は、アンモニアが吸着したPB誘導体含有複合体を減圧条件下にさらすものであれば特に限定されず、例えば、減圧ポンプを接続した、管、バルブ、アスピレーター等が挙げられる。除湿部は、アンモニアが吸着したPB誘導体含有複合体を除湿条件下にさらすものであれば特に限定されず、例えば、ペルチェ素子を組み込んだ冷却除湿器、熱力学的除湿機構を組み込んだ除湿器、シリカゲル等の乾燥剤を具備した除湿器、ナフィオン等の除湿チューブや膜を組み込んだ除湿器が挙げられる。加湿部は、アンモニアが吸着したPB誘導体含有複合体を加湿条件下にさらすものであれば特に限定されず、例えば、加湿器等が挙げられる。
PB誘導体の調製は、一般に以下のように行う。
[FeII(CN)6]4-、[FeIII(CN)6]3-、[CoIII(CN)6]3-、もしくは[MnII(CN)6]4-等のアニオンを含む水溶液と、対応する金属カチオンの塩化物、硫酸塩、もしくは硝酸塩の水溶液を混合し、振盪機(Shaking Incubator SI-300C(AsOne)により混合・振盪するか、またはY字管の2つの流路に前述の2種類の水溶液を流して混合するか、またはマグネティックスターラーにより攪拌し混合することにより、生成、沈澱したPB誘導体を得ることができる。各PB誘導体の混合量、混合条件の例は以下の実施例に記載している。なお、[FeII(CN)6]4-を「HCF(Fe=2+)」、[FeIII(CN)6]3-を「HCF(Fe=2+)」、[CoIII(CN)6]3-を「HCC」、と略称する。
PB誘導体作製の1例:ZnHCF(Fe=2+)
筒状の遠心分離用のプラスティックチューブ中、室温においてK4-HCF(Fe=2+)濃度25mM(0.25mmolを10mLの純水に溶解)の水溶液へ、ZnCl2濃度50mM(0.5mmolを10mLの純水に溶解)の水溶液を一気に混合し、振盪機により、室温にて約24時間振盪した。沈殿した懸濁液中のPB誘導体は、遠心分離機(テーブルトップ高速冷却遠心機、Sigma(R)3-3-K)により、上澄み液と分離し、上澄み液を傾けて除去し、これに超純水を加え振盪・洗浄し、これを6回繰り返した。最後の上澄み液を傾けて除去した後、得られた沈澱物をオーブン(Oven OFW-450B)、約1気圧、約60℃、約1日乾燥した。得られた白いナノ粒子ZnHCF(Fe=2+)である各PB誘導体について、X線回折装置(XRD,Phaser D2[Bruker])で評価したところ、約16.3度、19.7度、21.8度付近等にメインピークを持つ結晶であった。これらは、データベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置とは異なるので、一般的なプルシアンブルーの立方晶系型の結晶構造とは異なるNa2Zn3[FeIII(CN)6]2の結晶構造を有した。
筒状の遠心分離用のプラスティックチューブ中、室温においてK3-HCF(Fe=3+)濃度1.125mM (15mmolを20mLの純水に溶解)の水溶液へ、硫酸亜鉛 濃度0.5mM (0.5mmolを30mLの純水に溶解)の水溶液を一気に混合し、振盪機により、室温にて約18時間振盪した。沈殿した懸濁液中のPB誘導体は、遠心分離機(テーブルトップ高速冷却遠心機、Sigma(R)3-3-K)により、上澄み液と分離し、上澄み液を傾けて除去し、これに超純水を加え振盪・洗浄し、これを6回繰り返した。最後の上澄み液を傾けて除去した後、得られた沈澱物をオーブン(Oven OFW-450B)、約1気圧、約60℃、約1日乾燥した。得られた橙色のナノ粒子ZnHCF(Fe=3+)である各PB誘導体について、X線回折装置(XRD,Phaser D2[Bruker])で評価したところ、約17.5度、25度、36度付近等にメインピークを持つ結晶である。これらは、データベース中のFe[Fe(CN)6]0.75ピーク位置と一致し、一般的なプルシアンブルーの立方晶系型の結晶構造と同一の結晶構造を有する。
以下、酸化ケイ素を基質とするPB誘導体含有複合体を、1例としてPB誘導体ZnHCF(Fe=3+)を用いて作製した。
テトラエトキシシラン(オルトケイ酸テトラエチル(TEOS)ともいう。)を水とエタノールの混合溶媒に溶かし、塩酸を微量加えて、得られた混合液を約80℃で90分加熱する。そこPB誘導体ZnHCF(Fe=3+)の橙色の粉を、TEOSのSiとZnHCF(Fe=3+)のZnのモル比が約1:1になるように直接加え、よく混合した。PB誘導体の粉がTEOSの溶液によく分散された後、それを約110℃に加熱し、水とエタノールを留去した。留去する水とエタノールは、蒸留塔や冷却トラップに回収し再利用できる。110℃で留去してゆくと、粒状のガラス部材が自然と形成され、得られたものを、約200℃、約10分焼結すると、大きさが0.1~3mm程度の粒状の酸化ケイ素を基質とするPB誘導体含有複合体が得られた。
得られた粒状のるPB誘導体含有複合体は、目的に応じて、さらに磨り潰したり、篩により振り分ける等の工程により、その大きさや分布を調整し使用することができる。必要であれば、得られた粒状のるPB誘導体含有複合体を、水で洗浄し細かいパウダーを篩により除去し、約200℃以上の高温で再度焼結してから使用する。
得られたPB誘導体含有複合体の流体の流れやすさ、すなわち流体の透過性について、原料であるPB誘導体との比較実験を行った。本実施例では、実施例3で作製したPB誘導体含有複合体と、対照として原料のPB誘導体との比較を示す。
流体として室内空気を用いた。ダイヤフラムポンプを直流電源に接続し、ダイヤフラムポンプ排出口にシリコンチューブを繋ぎ、その先へミニカラムであるオムニフィット細径カラム(内径:3mm,長さ:25mm)を接続、出口側にシリコンチューブ、流量計とさらに繋いで設置した。ミニカラム内を空にして、流量計の空気流速の値が120mL/分となるように直流電源の出力を調整し、ダイヤフラムポンプが同じ力で空気を押し出す条件とした。そこに、PB誘導体含有複合体やPB誘導体が漏れ出ないようにするためのガラスウールを、ミニカラム内部の両端にそれぞれ3mgずつ、合計6mgセットし、同条件にてダイヤフラムポンプを動作したところ、空気流速は110mL/分であった。この110mL/分を比較基準とし、以下の実験を行った。
次に、原料であるPB誘導体ZnHCF(Fe=3+)を20mg、ミニカラム内部にセットし、その両端をそれぞれ3mgずつのガラスウールにておさえ、同条件にてダイヤフラムポンプを動作したところ、空気流速は55mL/分であった。一方、実施例3で作製したPB誘導体含有複合体を同じ20mg、ミニカラム内部にセットして、その両端をそれぞれ3mgずつのガラスウールにておさえ、同条件にてダイヤフラムポンプを動作したところ、空気流速は90mL/分であった。
まず、原料であるPB誘導体ZnHCF(Fe=2+)を3mg、ミニカラム内部にセットした場合の空気流速は60mL/分であった。一方、PB誘導体含有複合体ZnHCF(Fe=2+)の粒を3mg、ミニカラム内部にセットした場合の空気流速は100mL/分であった。
次に、原料であるPB誘導体ZnHCF(Fe=2+)を20mg、ミニカラム内部にセッした場合の空気流速は、ほぼ0mL/分で空気を流すことが困難であった。一方、PB誘導体含有複合体ZnHCF(Fe=2+)の粒を同じ20mg、ミニカラム内部にセットした場合の空気流速は90mL/分であった。
PB誘導体含有複合体の方が原料であるPB誘導体より、流体である気体(空気)を流しやすく透過性がよいことが、PB誘導体を変えても確認された。
実施例3で作製したPB誘導体含有複合体ZnHCF(Fe=3+)の粒について、アンモニアの吸着特性を、ガス吸脱着装置(BelsorpMax [マイクロトラックベル社])により調べた。サンプルの質量は150℃乾燥を十分に行い電子天秤により秤量した。PB誘導体含有複合体ZnHCF(Fe=3+)の粒を50mg、BelsorpMax装置用のサンプル管に入れて測定した。測定温度は150℃の一定とした。
次に、純アンモニアガスボンベから供給されるアンモニアガスを用い、サンプル管内のアンモニアガスの圧力を少しずつ変化させ、その直後から管内のアンモニアガスの圧力変化の測定を行い、該粒のアンモニア吸着容量を測定した。結果を図1(○:白丸点線)に示す。
PB誘導体含有複合体は、高温の150℃にもかかわらず、アンモニアの吸着容量が約5mmol/g程度であり、アンモニアの吸着を十分行えることがわかった。
テトラアルコキシシランの一種であるTEOSを原料に用いて基質となる酸化ケイ素を作製すると、その酸化ケイ素はアンモニアの動的分子径よりも大きな内部空間を有し、アンモニアの吸着と脱離を行うための部分が表面と内部に保持されガラス部材の表面積を上げ、内部までアンモニア分子が侵入できるルートが形成され、利用可能なガラス部材とすることができ、加えて、さらに酸化ケイ素を基質とする表面と内部空間にPB誘導体が存在する効果により、本実施例の高温150℃におけるアンモニアの吸着容量を飛躍的に増大できた。
以上の結果から、PB誘導体含有複合体は、液中のアンモニアを効率よく吸着できることが示された。
図1に示すように、測定温度は、室温(25℃、△)と150℃(○)と300℃(●)の3通りで行った。それぞれの温度において、純アンモニアガスボンベから供給されるアンモニアガスを用い、サンプル管内のアンモニアガスの圧力を少しずつ変化させ、その直後からサンプル管内のアンモニアガスの圧力変化の測定を行い、該粒のアンモニア吸着容量を測定した。
その結果、PB誘導体含有複合体は、温度が上昇するにつれ、アンモニアの吸着容量が減少することがわかった。この結果は、本発明のPB誘導体含有複合体は、比較的低い温度で吸着させた後、吸着させた温度より高い温度にすることで、アンモニアを脱離でき、脱離されたアンモニアを回収できることを示された。
ビニール袋の中、実施例3で作製したPB誘導体含有複合体ZnHCF(Fe=3+)の粒に、純アンモニアガスを導入し数分接触させた。次にPB誘導体含有複合体の粒を電気炉中、200℃にて約10分間加熱した。この操作を3回繰り返したものを実験に用いた。サンプルの質量は150℃乾燥を十分に行い電子天秤により秤量し、該粒を50mg、BelsorpMax装置用のサンプル管に入れ、アンモニアガスの脱離測定を行った。
測定温度は150℃で行い、始めに0kPaから約100kPaへアンモニアの圧力を増加させて、アンモニアを吸着させ、その後、約100kPaから0kPa近くへアンモニアの圧力を低下させて、アンモニア脱離量を測定した。
その結果、該PB誘導体含有複合体は、アンモニアを吸着させた該酸化ケイ素を基質とするPB誘導体含有複合体から、1kPa近くに減圧すると、吸着したアンモニアの約53%が脱離することがわかり、圧力低下により、PB誘導体含有複合体は、吸着したアンモニアを圧力低下により脱離でき、脱離したアンモニアを回収できることが示された。
本実施例では、セラミック管状炉(ARF-30KC)内のガラス管の中、PB誘導体含有複合体ZnHCF(Fe=3+)の粒に空気ベースの約1%アンモニアガスを150℃にて導入し10~15分程度接触させる。次に温度を300℃に昇温し、空気を約10分間流しながら加熱する。この操作を3回繰り返したものを実験に用いた。サンプルの質量は150℃乾燥を十分に行い電子天秤により秤量し、約50mgの粒をガス吸脱着装置(BelsorpMax [マイクロトラックベル社])用のサンプル管に入れ、アンモニアガス吸脱着の繰り返し測定を行った。
測定温度は、まず、1回目の吸脱着測定において、150℃にて前処理乾燥を行った後、そのままの150℃にて圧力を0kPaから約100kPaの間で変化させ、アンモニアの吸脱着測定を行った。1回目の吸脱着測定後、次に300℃にて前処理乾燥を行った後、測定温度150℃にし、同様に圧力を変化させながら、2回目のアンモニアの吸脱着測定を行った。3回目以降のアンモニアの吸脱着測定は、2回目と同じ操作により行った。その結果、以下のことが明らかとなった。
Claims (9)
- 酸化ケイ素を基質としてプルシアンブルー誘導体を含む、アンモニアの吸着と脱離のためのプルシアンブルー誘導体含有複合体であって、
前記基質である酸化ケイ素が、アモルファス状の酸化ケイ素であり、
前記プルシアンブルー誘導体が、下記一般式(2)で表され、
一般式(2) AxM[M’(CN)6]y・zH2O
ここで、金属原子Mは、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ロジウム、ニッケル、パラジウム、白金、銅、銀、亜鉛、ランタン、ユーロピウム、ガドリニウム、ルテチウム、バリウム、ストロンチウム、及びカルシウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であり、金属原子M’は、バナジウム、クロム、モリブデン、タングステン、マンガン、鉄、ルテニウム、コバルト、ニッケル、白金、及び銅からなる群より選ばれる一種または二種以上の金属原子であり、Aは水素、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、カルシウム、マグネシウム、バリウムからなる群より選ばれる一種または二種以上の陽イオンであり、
xは0~3、yは0.1~1.5、zは0~6の数値を表す。
前記プルシアンブルー誘導体含有複合体は、前記基質を有し、(-Si-O-Si-O-)の1次元、2次元、3次元のネットワークを有するガラス部材であり、アンモニアの動的分子径よりも大きな内部空間を有し、プルシアンブルー誘導体が前記ガラス部材の表面と内部に保持されていることを特徴とする、プルシアンブルー誘導体含有複合体。 - 平均直径が1μm~10cmであり、アンモニアを吸着させた後アンモニアを脱離させることができ、再利用によるアンモニアの吸着・脱離を3回以上行うことのできる、請求項1に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体。
- 請求項1または2に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体を、アンモニアを含む気体、液体、もしくはそれらの混合物に接触させ、アンモニアを吸着させるアンモニアの吸着方法。
- 圧力が1~500気圧、温度が0℃以上、および相対湿度が100%以下の条件下でアンモニアを吸着させる、請求項3に記載のアンモニアの吸着方法。
- 請求項1または2に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体を、アンモニアを含む気体、液体、もしくはそれらの混合物に接触させてアンモニアを吸着させた後、アンモニアを吸着させた圧力より圧力低下を行う処理、アンモニアを吸着させた温度より温度上昇を行う処理、アンモニアを吸着させた相対湿度より湿度を下げて除湿条件下にさらす湿度変化の処理、およびアンモニアを吸着させた相対湿度より湿度を上げ、加湿条件下にさらす湿度変化の処理、からなる群から選択される少なくとも1種の処理を行う、アンモニアの脱離方法。
- 請求項5に記載のアンモニアの脱離方法によりアンモニアを回収する、アンモニアの回収方法。
- 請求項1または2に記載のプルシアンブルー誘導体含有複合体に、アンモニアを吸着させるアンモニア吸着工程と、アンモニアを脱離させるアンモニア脱離工程を行うアンモニアの回収装置であって、
前記アンモニア脱離工程が、減圧条件下にする圧力低下の処理工程、加熱する温度上昇の処理工程、除湿条件下にする湿度変化の処理工程、および加湿条件下にする湿度変化の処理工程からなる群から選択される少なくとも1種の処理工程である、アンモニアの回収装置。 - 前記アンモニア脱離工程の後に、気体状のアンモニアをボンベもしくはタンクに回収する工程、液化アンモニアをボンベもしくはタンクに回収する工程、またはアンモニウムイオンを含む溶液、水溶液、もしくは無機物の塩個体として回収する工程からなる群から選択される少なくとも1種の回収工程を行う、請求項7に記載のアンモニアの回収装置。
- 溶媒である水とアルコール、下記一般式(1)で表されるテトラアルコキシシラン、塩酸、及びプルシアンブルー誘導体とを混合攪拌した後、溶媒である水とアルコールを留出させることを特徴とする、上記請求項1に記載のアモルファス状の酸化ケイ素基質としたプルシアンブルー誘導体含有複合体の製造方法。
一般式(1) (RO) 4 Si (Rは、アルキル基)
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