JP5083700B2 - 全駆動型回転体付き車輪 - Google Patents

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Description

本発明は、平面上を全方向に走行する全方向移動車に使用され、車輪の直進方向に対して直交方向へ回転する複数個の回転体がホイールの周囲に配列されている回転体付き車輪に係り、特に全ての回転体を受動回転ではなく能動回転させるタイプの全駆動型回転体付き車輪に関するものである。
平面上を全方向に走行する全方向移動車は、全駆動型回転体付き車輪を備えている。全ての回転体を受動回転ではなくホイールを回転駆動するモータとは別のモータで能動回転させるタイプの全駆動型回転体付き車輪は、ホイールと、ホイールの周囲に配設される複数個の回転体と、を有し、走行駆動源として、ホイールを駆動回転する一のモータと、複数個の回転体を駆動回転する他のモータと、を有している。複数個の回転体は、ホイールの外周面のブラケットに設けられホイールの回転平面内に軸心を有する車軸に支持されている。
従って、個々の回転体は、ホイールの回転方向に直交する方向に回転するようになっている。そうして、前後方向の走行は、一のモータでホイールを前進回転又は後進回転させて行い、横方向走行は、他のモータでホイールを右回転又は左回転させて行い、斜め方向の走行は、ホイールを回転させると共に全部の回転体を回転させることにより行う。
従来の、全ての回転体を受動回転ではなく能動回転させるタイプの全駆動型回転体付き車輪としては、例えば特許文献1〜4のものが知られている。
特許文献1に記載されている固定式車輪は、車輪外周部に円形の軸を備え、この軸に車輪の回転方向と直角方向に回転するローラ及び緩衝部材を交互に連続して配置し自在に方向転換できる構成である。
特許文献2に記載されている回転体付き車輪は、車輪の直進方向に対して直交方向へ回転する複数個の回転体が車輪の周囲に配列されていて、各回転体が、車軸を中心とする半径方向に対して交差する回転軸線を中心に回転自在に支持され、車輪回転方向前側である先端部の直径を後端部の直径よりも小さくし、周面の母線を車輪外周円の円弧となるように形成され、各回転体の先端部が隣接する回転体の基端部に近接し得るように、各回転体の先端部が、隣接する回転体の基端部に形成された凹部に部分的に侵入している構成である。
特許文献3に記載されている全方向移動用車輪は、ホイールの外側に複数の樽形分割ローラを備えている。複数の樽形分割ローラは、それぞれ支持部材とローラ軸とで支持され、外面が車輪外周円に一部を構成している。複数の樽形分割ローラは、ローラ軸を介して連鎖状に連結されている。動力伝達手段は、一の樽形分割ローラに回転力を伝達する。他の樽形分割ローラは、ローラ軸を介して動力を伝達される。
特許文献4に記載されている移動搬送機構は、ホイール部材の周囲に複数の副車輪が回転自在に支持され、ホイールと固定されたホイール回転中心軸と副車輪を駆動するための出力部材とを同軸対向して備えて差動機構で連結し、さらに差動機構を副車輪に連結してなり、出力部材の自転による回転で副車輪が回転され、かつ出力部材の公転に伴ってホイール部材が回転する構成である。
特開平11−227404号公報 特開2002−137602号公報 特開2005−67334号公報 特開2009−179110号公報
特許文献1及び特許文献2に記載された技術は、回転輪を駆動する構成ではないので、車輪の回転に伴って回転輪が回転して側方への移動成分が入る走行中に、回転輪が段差に出合うとロックしてしまい、この段差を乗り越えられない場合がある。
特許文献3に記載された全方向移動用車輪は、動力伝達手段から回転力を直接に伝達される樽形分割ローラには回転力が伝わるが、樽形分割ローラにはガタやバックラッシが多く、回転力を直接に伝達される樽形分割ローラから隣接の樽形分割ローラには、回転力が伝わりにくく、反対側の樽形分割ローラにはさらに回転力が伝わりにくい。この全方向移動用車輪によれば、上記反対側の樽形分割ローラに負荷が掛かれば、この負荷は、回転力を直接に伝達される樽形分割ローラに対してロックとして作用する。このため、この全方向移動用車輪によれば、樽形分割ローラを円滑に回転駆動することができない。
特許文献4に記載された移動搬送機構は、円周方向の4等分位置の副車輪が駆動され、残りの副車輪は駆動される副車輪から軸を介して回転伝達される。このため、この移動搬送機構は、駆動される副車輪の数が4つとなるので、副車輪の駆動性が改善されるが、基本的には、特許文献3に記載された全方向移動用車輪と同様に、副車輪の駆動性が悪いという同じ問題点を残している。
そこで、本発明者は、特許文献1及び特許文献2に記載された回転体付き車輪について、回転輪が回転して横方向の移動成分を生じる走行中に、回転輪が段差に出合うと、この段差を乗り越えられるようにしたい、と考え、回転輪を駆動する構造として、特許文献3及び特許文献4の駆動を考察し、さらに検討を積み重ねた結果、本発明を完成させたものである。
そして、本発明者は、特許文献1及び特許文献2に記載された回転輪を有する回転体付き車輪について、回転輪に駆動を与えるに際して以下のような問題に着目した。特許文献1に記載された回転体は、径が両端で小さく中央で大きい樽形であり所定速度で回転すると、設置位置が異なることによって回転輪の回転速度が連続的に変化する。また、特許文献2に記載された回転体は、半紡錘形であり、設置位置が異なることによって回転輪の回転速度が連続的に変化することに加え、同時に接地する一の回転体の大径端部と他の一の回転体の小径端部との周速が相違するので、大径端部から小径端部に乗り換える状態では速度が落ちて段差を乗り越えることができない虞がある。
本発明は、上述した点に鑑みて案出されたもので、回転輪同士の連鎖による回転伝達を介さないで全ての回転輪を個々に回転駆動し、回転輪が段差に出合ったときも円滑に乗り越えることができる全駆動型回転体付き車輪を提供することを目的としている。
また本発明は、回転輪の接地位置の径の変化に応じて回転輪による移動速度が変化することがなく、回転輪による移動を安定した速度で行える全駆動型回転体付き車輪を提供することを目的としている。
上記目的を達成するため、本発明の全駆動型回転体付き車輪は、ホイールと、ホイールの周囲に配列され車輪外周円の円弧を形成する周面を有し、車輪の直進方向に対して直交方向へ回転可能である複数の回転体と、各回転体に固定された従車と、ホイール内に備えられた内歯及び外歯を持つ第1の太陽歯車を含み第1の太陽歯車の回転を複数の回転体のうち1つ置きの第1群の回転体に固定された各従車に分配伝達する第1の回転分配伝達機構と、ホイール内に備えられた内歯及び外歯を持つ第2の太陽歯車を含み第2の太陽歯車の回転を残り1つ置きの第2群の回転体に固定された各従車に分配伝達する第2の回転分配伝達機構と、車体フレームに回転可能に支持されホイールを支持する車軸と、車体フレームに備えられ車軸を回転する走行用モータと、ホイール内に備えられ第1の太陽歯車を回転する回転体駆動用第1モータと、ホイール内に備えられ第2の太陽歯車を回転する回転体駆動用第2モータと、車軸に固定された2つのスリップリング及び各スリップリングに摺接するブラシを介して回転体駆動用第1モータと回転体駆動用第2モータに給電する給電手段と、車体フレーム側に配置され走行用モータの走行制御を行うマスター制御部と、ホイール内に備えられマスター制御部との間で車体フレーム側に配置された送信部とホイール側に配置された受信部との間の電波通信又は光通信を介して制御信号を受け取り回転体駆動用第1モータと回転体駆動用第2モータの回転制御を行うスレーブ制御部と、を備えてなることを特徴とする。
要約すると、全駆動型回転体付き車輪は、ホイールの周囲の複数の回転体に従車を備え、ホイール内に第1の太陽歯車を含む第1の回転分配伝達機構及び第2の太陽歯車を含む第2の回転分配伝達機構を備え、中空の車軸で支持されたホイールを走行用モータで駆動し、第1の太陽歯車を回転体駆動用第1モータで駆動し、第2の太陽歯車を回転体駆動用第2モータで駆動する。車軸に備えたスリップリングにブラシを摺接して回転体駆動用の第1及び第2モータに電力を供給し、車軸の中心孔を通しマスター制御部とスレーブ制御部とで通信を行うことで、回転体駆動用の第1及び第2モータの駆動制御を行う。
上記構成によれば、走行用モータのみを駆動させると、全駆動型回転体付き車輪を直進走行させることができる。走行用モータの駆動に加え、回転体駆動用第1モータと回転体駆動用第2モータを駆動すると、横方向の速度成分を伴う走行ができる。走行用モータを駆動しないで、回転体駆動用第1モータと回転体駆動用第2モータを駆動すると、横方向に走行できる。横方向の速度成分を伴う走行及び横方向に走行する場合には、第1の太陽歯車及び第2の太陽歯車を同一方向にかつ平均回転数を同一にして回転するように回転体駆動用第1モータと回転体駆動用第2モータを回転制御して、回転体を同一方向にかつ平均回転数が同一となるように回転させると、全駆動型回転体付き車輪の横方向の速度成分を安定させることができる。
従って、上記構成によれば、回転輪同士の連鎖による回転伝達を介さないで、全ての回転輪を個々に回転駆動する構成を実現することができるから、回転輪が段差に出会ったときも円滑に乗り越えることができる。
本発明の全駆動型回転体付き車輪は、回転体が、車輪外周円の円弧を形成する周面を有し、かつ樽形形状に形成されているか、または車輪の前進回転方向の前側端部の直径が後側端部の直径よりも小さい半紡錘形状に形成されていて、径の小さい端部の一部が隣接する回転体の径の大きい端部に入り込んだ状態に備えられ、制御部が、複数の回転体のうち1つ置きの第1群の回転体と、残り1つ置きの第2群の回転体とに分かれて別々に同一方向にかつ回転数が変化するように回転制御し、かつ、同時に接地状態となる2つの回転体のうちの、一の回転体の大径部分と他の一の回転体の小径部分とが、車輪の直進方向に対して直交方向へ同じ周速で回転するように、第1群の回転体の回転と第2群の回転体の回転とが位相を異ならせて回転制御する構成が好ましい。
この構成にすると、回転輪の接地位置の径の変化に応じて回転輪による移動速度が変化することがないので、回転輪による移動を安定した速度で行える。
本発明によれば、回転輪同士の連鎖による回転伝達を介さないで全ての回転輪を個々に回転駆動する構成を実現することができ、回転輪が段差を円滑に乗り越えることができる全駆動型回転体付き車輪を提供することができる。
本発明によれば、ホイール内に二重に回転を分配伝達する機構を備える構成であるので、樽形の回転体の数が多い構成の全駆動型回転体付き車輪であってもホイールの小さなスペースに収まり、全部の回転体の一つ一つを駆動する全駆動型回転体付き車輪を実現できる。また本発明によれば、径が相違する樽形の回転体を交互に配列し、かつホイールの回転時における大径の回転体の接地部分の周速と小径の回転体の接地部分の周速を同一になるように直径に応じて変速制御する全駆動型回転体付き車輪を実現する場合に、ホイール内に二重に回転を分配伝達する機構を備える構成が有用になる。
本発明の第1実施形態に係る全駆動型回転体付き車輪の概略の縦断面図である。 図1の全駆動型回転体付き車輪のII−II矢視図である。 図1の全駆動型回転体付き車輪のIII−III矢視図である。 図1の全駆動型回転体付き車輪の回転体の変速位相回転制御を説明するための接地位置の回転体の拡大図及び回転数の変化を示すグラフである。 本発明の第1実施形態に係る全駆動型回転体付き車輪の概略の縦断面図である。
以下、本発明の実施形態に係る全駆動型回転体付き車輪について図面を参照して説明する。
〔第1実施形態〕
図1〜図3に示すように、第1実施形態の全駆動型回転体付き車輪1は、ホイール11と、ホイール11を支持する中空の車軸16及び車軸16を駆動する走行用モータ17と、ホイール11の周囲に配列された複数の回転体12a,12bと、を備えてなる。
全駆動型回転体付き車輪1は、1つ置きの第1群の各回転体12aを個々に駆動するため、第1群の各回転体12aに固定された「従車」としての従動プーリ13aと、内歯及び外歯を有する第1のリング形太陽歯車14aの回転を複数の従動プーリ13aに分配伝達する第1の回転分配伝達機構14と、第1のリング形太陽歯車14aを駆動する回転体駆動用第1モータ18と、を備えてなる。
第1実施形態の全駆動型回転体付き車輪1は、残り1つ置きの第2群の各回転体12bを個々に駆動するため、第2群の各回転体12bに固定された「従車」としての従動プーリ13bと、内歯及び外歯を有する第2のリング形太陽歯車15aの回転を複数の従動プーリ13bに分配伝達する第2の回転分配伝達機構15と、第2のリング形太陽歯車15aを駆動する回転体駆動用第2モータ19と、を備えてなる。
そして、全駆動型回転体付き車輪1は、給電手段20と、各モータの回転制御を行うマスター制御部21と、ホイール11内に備えられたスレーブ制御部29と、車軸16に設けられたアブソリュートエンコーダ22と、を備えてなる。
以下、全駆動型回転体付き車輪1について詳細に説明する。
図2に示すように、各回転体12a,12bは、ホイール11の筒部の外側に配設された複数のブラケット23の各ブラケット間に位置され、ブラケット23により両端支持される軸24により、車軸16を中心とする半径方向に対して交差する軸線を回転中心として回転可能に支持されている。これにより、各回転体12a,12bは、車輪の直進方向に対して直交方向へ回転する。
図2〜図4に示すように、各回転体12a,12bは、車輪外周円の円弧を形成する周面を有し、車輪の前進回転方向の前側端部121の直径が後側端部122の直径よりも小さく、前側端部121から後側端部122に向けて連続的に大きくなる半紡錘形状に形成され、かつ前側端部121の一部が車輪の前進回転方向の前側に隣接する回転体の後側端部122の内側に入り込んだ状態に備えられている。
従動プーリ13a,13bは、回転体12a又は12bの中央部にプーリ幅の深い周溝を設けて固定されている。従動プーリの回転体に対する固定は任意の構成で良いが、回転体の成形時に同時にモールドされるのが好ましい。具体的には、従動プーリに複数の貫通孔を設けてこの貫通孔に回転体を構成する樹脂が侵入した状態にモールドする。
ホイール11は、図1では詳細が省略され、点線で示されている。ホイール11は、例えば、車軸16に固定される内側端面部と、内側端面部の外周部より一体に延在する筒部と、筒部にボルト等の締結具で固定された外側端面部(開閉蓋)と、を有してなる。ホイール11内には、第1及び第2の回転分配伝達機構14,15が収容されている。筒部には、従動プーリ13a,13bが第1及び第2の回転分配伝達機構14,15のベルトで連結されるための開口を備えている。
図1〜図3に示すように、第1の回転分配伝達機構14は、第1のリング形太陽歯車14aを含み、第1のリング形太陽歯車14aの回転を複数の回転体のうち1つ置きの第1群の回転体12aに固定された従動プーリ13aに、以下の構成により分配伝達する。
第1の回転分配伝達機構14は、第1のリング形太陽歯車14aと、第1のリング形太陽歯車14aの周囲に配設され第1のリング形太陽歯車14aの外歯と噛み合う複数の遊星平歯車14bと、各遊星平歯車14bと同軸一体に設けられた第1の中間傘歯車14cと、第1の中間傘歯車14cに噛み合う第2の中間傘歯車14dと、第2の中間傘歯車14dと同軸一体に設けられた原動プーリ14eと、原動プーリ14eと従動プーリ13aとに巻き掛けられたベルト14fとからなる。第1の回転分配伝達機構14を構成するこれらの歯車とプーリは、ホイール11に軸支されている。原動プーリ14eと従動プーリ13aにはタイミング歯車を用い、ベルト14fにはタイミングベルトを用いるのが好ましい。
第2の回転分配伝達機構15は、第2のリング形太陽歯車15aを含み、第2のリング形太陽歯車15aの回転を残り1つ置きの第2群の回転体12bに固定された従動プーリ13bに、以下の構成により分配伝達する。
第2の回転分配伝達機構15は、第2のリング形太陽歯車15aと、第2のリング形太陽歯車15aの周囲に配設され第2のリング形太陽歯車15aの外歯と噛み合う複数の遊星平歯車15bと、各遊星平歯車15bと同軸一体に設けられた第1の中間傘歯車15cと、第1の中間傘歯車15cに噛み合う第2の中間傘歯車15dと、第2の中間傘歯車15dと同軸一体に設けられた原動プーリ15eと、原動プーリ15eと従動プーリ13bとに巻き掛けられたベルト15fと、を有してなる。第2の回転分配伝達機構15を構成するこれらの歯車とプーリは、ホイール11に軸支されている。原動プーリ15eと従動プーリ13bには、タイミング歯車を用い、ベルト15fにはタイミングベルトを用いるのが好ましい。
車体フレームFに、車軸16を駆動する走行用モータ17が支持され、ホイール11内に、第1のリング形太陽歯車14aを駆動する回転体駆動用第1モータ18と、第2のリング形太陽歯車15aを駆動する回転体駆動用第2モータ19とが支持されている。
走行用モータ17は、出力軸に固定された歯車25と車軸16に固定された歯車26との噛み合いを介してホイール11を駆動する。回転体駆動用第1モータ18は、出力軸に固定され第1のリング形太陽歯車14aの内歯に噛み合う歯車27を介して第1のリング形太陽歯車14aを駆動する。回転体駆動用第2モータ19は、出力軸に固定され第2のリング形太陽歯車15aの内歯に噛み合う歯車28を介して第2のリング形太陽歯車15aを駆動する。
給電手段20は、車軸16に固定された2つのスリップリング20a,20b及び各スリップリングに摺接するブラシ20c,20dを介して、ホイール11に設けられたスレーブ制御部29に給電する。スレーブ制御部29は、モータドライバ291,291を有する。
マスター制御部21は、モータドライバ211を介して走行用モータ17の走行制御を行う。また、マスター制御部21は、ホイール側に備えられたスレーブ制御部29との間で通信を行うことにより、スレーブ制御部29に備えられたモータドライバ291,291を介して回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19の回転制御を行う。
マスター制御部21とスレーブ制御部29との間の通信は、車軸16の中心孔の側車体フレーム側に配置された送信部30と、スレーブ制御部29に設けられかつ車軸16の中心孔のホイール側に配置された受信部31との間で、車軸16の中心孔を通して電波通信又は光通信を行うものである。これによって、車体フレームFに非回転に備えられたマスター制御部21が、ホイール11に備えられホイール11の走行回転とともに回転されるスレーブ制御部29に対し通信を行う。
回転体12a,12bは全てが右方向又は左方向となる同一方向に回転される必要がある。このため、マスター制御部21は、第1のリング形太陽歯車14a及び第2のリング形太陽歯車15aを同一方向に回転するように、回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19を回転制御する。
上記構成によれば、ホイール11の外周に配置した回転体12a,12bの一つ一つを駆動するための回転分配機構をホイール11内の狭い空間に備えることを実現できる。また上記構成によれば、ホイール11の外部に備える1つのモータ17とホイール11の内部に備える2つのモータ18,19で車輪の走行と回転体の右回転と左回転とを行う制御ができ、車輪の直進走行と右左進と左右斜め方向の進行とを行うことができる。さらに上記構成によれば、回転体12a,12bを駆動するから、右左進又は左右斜め方向の進行において、回転体12a,12bが段差を円滑に乗り越えることができる。
アブソリュートエンコーダ22は、車輪の角度信号をマスター制御部21に出力すると共に、車体の1回転あたり所定のパルスをマスター制御部21に出力する。これにより、マスター制御部21は、アブソリュートエンコーダ22から出力された信号を入力して車体の位相を逐次検出することができ、かつ車速を随時に得ることができる。
マスター制御部21は、CPUと、プログラムを格納しているROMと、速度演算部212と、パルス出力部213と、を有する。速度演算部212は、アブソリュートエンコーダ22から出力された信号を入力して車体の速度を逐次検出する。パルス出力部213は、アブソリュートエンコーダ22から出力された角度信号を入力して車輪の位相を演算し、この位相と速度演算部212で演算した速度に基づいてパルスを出力する。
マスター制御部21は、CPUが、ROMに格納されているプログラムをリードし、車両の走行制御を行うための図示しない入力装置(操縦ハンドル)からの走行制御信号に基づいてプログラムを実行し、パルス出力部213から、モータドライバ211,291,292のそれぞれに所要のパルスを出力させ、走行用モータ17と回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19の回転制御を行う。
マスター制御部21は、操縦ハンドルからの制御指令が直進走行であるとき、すなわち、ホイール11を回転しかつ回転体12a,12bを回転しないときは、モータドライバ211に所要のパルスを出力して走行用モータ17の回転制御を行う。ただし、モータドライバ291,292にはパルスを出力せず、回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19の回転制御を行わない。
マスター制御部21は、操縦ハンドルからの制御指令が右斜め方向又は左斜め方向の走行を指令するものであり、従って、ホイール11を回転しかつ回転体12a,12bを右回転又は左回転させる必要があるときは、回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19とを同一方向にかつ平均回転速度が同一となるように、位相を異ならせた変速回転制御を行う。
また、マスター制御部21は、操縦ハンドルからの右横方向又は左横方向の走行を指令するものであり、従って、ホイール11を回転しないで回転体12a,12bを右回転又は左回転させる必要があるときは、走行用モータ17の回転制御を行うと共に、回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19とを同一方向にかつ平均回転速度が同一となるように、位相を異ならせた変速回転制御を行う。
上記構成によれば、第1群の回転体12aの一つ一つを駆動するための回転分配機構と第2群の回転体12bの一つ一つを駆動するための回転分配機構とをホイール11内に備えた構成であるので、ホイール11の外周に配置した回転体12a,12bの数が多い場合でも、回転分配機構をホイール11内の狭い空間に備えることを実現できる。そして、上記構成によれば、ホイール11の外部に備える2つのモータ18,19により、第1群の回転体12aと第2群の回転体12bとを同一方向にかつ平均回転速度が同一となるように、位相を異ならせて回転制御することができ、これによって、車輪の直進走行と右左進と左右斜め方向の進行とを行うことができる。さらに上記構成によれば、右左進又は左右斜め方向の進行において、回転体12a,12bが段差に当接しても円滑に乗り越えることができる。
この実施形態の回転体12a,12bは、車輪の前進回転方向の前側端部の直径が後側端部の直径よりも小さい半紡錘形状に形成されている。このため、車輪を回転させると共に、回転体12a,12bを回転させるときは、回転体12a,12bの接地位置の直径が変化する。回転体12a,12bを駆動する構造では、回転体12a,12bの回転数が一定であっても、回転体12a,12bの接地位置の直径の変化によって、回転体12a,12bの周速度が変化するから、車輪の右方向又は左方向の速度成分が不安定に変化することになる。
そこで、走行用モータ17の回転制御と関連させて、回転体駆動用第1モータ18及び回転体駆動用第2モータ19の変速制御と位相制御を、図4に示すように行う必要がある。マスター制御部21は、回転体12a,12bの回転数を変化させかつ位相を異ならせた制御を行う。
図4において、Aグループの速度グラフは第1群の回転体12aの回転数の変化を示しており、Bグループの速度グラフは第2群の回転体12bの回転数の変化を示している。図4から分かるように、第1群の回転体12aの回転数の変化と第2群の回転体12bの回転数の変化について、いずれも、接地位置の径の変化に関わらず周速が所定速度になるように、大きい径で回転数が小さく、小さい径で回転数が大きくなる、第1群の回転体12a及び第2群の回転体12bを変速制御する。
さらに、マスター制御部21は、回転体駆動用第1モータ18に対する変速回転と、回転体駆動用第2モータ19に対する変速回転とを同じパターンでかつ1つの回転体の位置ずれ分だけの位相を持たせて回転制御する。
マスター制御部21は、ROMに、回転体駆動用第1モータ18に関する1回転分の回転数の変化のパターンを有していると共に、回転体駆動用第2モータ19に関する1回転分の回転数の変化のパターンを有している。マスター制御部21は、アブソリュートエンコーダ22の角度信号と関係させてROMからリードした変化のパターンに対応したモータ駆動用信号を作り出して、モータドライバ291,292のそれぞれに出力する。
上記のように、マスター制御部21は、車輪の右方向又は左方向の速度成分を安定させるために、複数の回転体12a,12bについて、回転伝達系が分かれた、1つ置きの第1群の回転体12aと、残り1つ置きの第2群の回転体12bとを同一方向に変速回転するように、回転体駆動用第1モータ18と回転体駆動用第2モータ19の回転制御を行う。
さらに、マスター制御部21は、同時に接地状態となる2つの回転体12a,12bのうちの、一の回転体の大径部分と他の一の回転体の小径部分とが同じ周速になるように、第1群の回転体12aの回転と第2群の回転体12bの回転とが位相を異なるように、回転体駆動用第1モータ18の回転と回転体駆動用第2モータ19の回転について位相制御を行う。
全駆動型回転体付き車輪1は、上記のように、マスター制御部21が、回転体駆動用第1モータ18の回転と回転体駆動用第2モータ19の回転について変速制御と位相制御を行うことにより、回転体12a,12bの周速を走行指令に応じた所定速度に保つことができ、車輪の右方向又は左方向の速度を安定させて走行することができる。
〔第2実施形態〕
図5に示すように、第2実施形態の全駆動型回転体付き車輪2は、第1実施形態の全駆動型回転体付き車輪1と比較して、ホイール11A内の、回転体駆動用第1モータ18が駆動する第1の回転伝達機構及び回転体駆動用第2モータ19が駆動する第2の回転伝達機構が相違する。
従って、第2実施形態の全駆動型回転体付き車輪2の構成要素について、第1実施形態の全駆動型回転体付き車輪1の構成要素と同一のものについては同一符号を付して説明は省略する。
全駆動型回転体付き車輪2は、ホイール11Aと、ホイール11Aの周囲に配列された複数の回転体12a,12bと、1つ置きの第1群の各回転体12aに固定された「従車」としての従動歯車32aと、残り1つ置きの第2群の各回転体12bに固定された「従車」としての従動歯車32bと、第1の太陽傘歯車33aの回転を複数の従動歯車32aに分配伝達する第1の回転分配伝達機構33と、第2の太陽傘歯車34aの回転を複数の従動歯車32bに分配伝達する第2の回転分配伝達機構34と、ホイール11を支持する中空の車軸16及びこの車軸16を駆動する走行用モータ17と、第1の太陽傘歯車33aを駆動する回転体駆動用第1モータ18と、第2の太陽傘歯車34aを駆動する回転体駆動用第2モータ18と、各モータの回転制御を行うマスター制御部21と、ホイール11A内に備えられたスレーブ制御部29と、車軸16に設けられたアブソリュートエンコーダ22と、を備えてなる。
回転体駆動用第1モータ18は、ホイール11内に備えられ、第1の太陽傘歯車33cを回転可能に支持している筒状の第1の回転体駆動軸33hを、平歯車33aと平歯車33bとの噛み合いを介して駆動する。また、回転体駆動用第2モータ19は、ホイール11内に備えられ、第2の太陽傘歯車34cを回転可能に支持している第2の回転体駆動軸34hを平歯車34aと平歯車34bとの噛み合いを介して駆動する。
第1の回転分配伝達機構33は、第1の太陽傘歯車33cを含み、第1の太陽傘歯車33cの回転を複数の回転体のうち1つ置きの第1群の回転体12aに固定された従動歯車32aに、以下の構成により分配伝達する。
第1の回転分配伝達機構33は、第1の太陽傘歯車33cと、第1の太陽傘歯車33cの周囲に配設され第1の太陽傘歯車33cと噛み合う複数の遊星傘歯車33dと、各遊星傘歯車33dと同軸一体に設けられた第1の中間傘歯車33eと、第1の中間傘歯車33eに噛み合う第2の中間傘歯車33fと、第2の中間傘歯車33fと同軸一体に設けられた原動平歯車33gとからなり、原動平歯車33gが従動歯車32aと噛み合っている。第1の回転分配伝達機構33を構成するこれらの歯車は、ホイール11Aに軸支されている。
第2の回転分配伝達機構34は、第2の太陽傘歯車34cを含み、第2の太陽傘歯車34cの回転を残り1つ置きの第2群の回転体12bに固定された従動歯車32bに、以下の構成により分配伝達する。
第2の回転分配伝達機構34は、第2の太陽傘歯車34cと、第2の太陽傘歯車34cの周囲に配設され第2の太陽傘歯車34cと噛み合う複数の遊星傘歯車34dと、各遊星傘歯車34dと同軸一体に設けられた第2の中間傘歯車34eと、第2の中間傘歯車34eに噛み合う第2の中間傘歯車34fと、第2の中間傘歯車34fと同軸一体に設けられた原動平歯車34gとからなり、原動平歯車34gが従動歯車32bと噛み合っている。第2の回転分配伝達機構34を構成するこれらの歯車は、ホイール11Aに軸支されている。
第2実施形態においても、図4を用いて説明したマスター制御部21による各制御が適用される。すなわち、回転体駆動用の第1、第2モータ18,19の変速制御と位相制御は、走行用モータ17の回転制御と関連させて行う。また、回転体12a,12bの変速制御と位相制御についても、走行用モータ17の回転制御と関連させて行う。
〔その他の実施形態〕
本発明は、上記の実施形態に限定されるものでなく、発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々、設計変更した形態が含まれる。
(1)上記実施形態では、1輪の全駆動型回転体付き車輪について説明したが、本発明は、前輪、後輪が各2輪の4輪車において、前輪又は後輪の2輪を駆動輪として、本発明の全駆動型回転体付き車輪を適用する場合も本発明に含まれる。
また、前輪、後輪が各2輪の4輪車において、後輪の2輪を別々のモータで直結駆動すると共に、モータの回転を巻掛機構を介して動力分岐し各側の前輪に伝達する構造の4輪駆動車を構成し、前輪に本発明の全駆動型回転体付き車輪を適用する場合も本発明に含まれる。この場合には、図1の走行用モータ17は後輪に直結したモータが該当する。
(2)上記実施形態では、従動プーリ13a,13bが回転体12a又は12bの中央部に固定されているが、従動プーリ13a,13bが回転体12a又は12bの端部に固定されている場合も本発明に含まれる。
(3)上記実施形態では、半紡錘形状に形成された回転体12a,12bを用いたが、樽形の回転体を用いた場合も本発明に含まれる。特許文献1に示された固定式車輪の樽形の回転体を駆動する改造では、回転体の数が多いので、ホイール11内の小さなスペースに収まる、二重に回転を分配伝達する機構が必要であり、本発明が適用可能である。同一径の樽形の回転体を複数用いた場合には、制御部は、回転体が上記ホイールの回転時に接地部分の周速が所定速度になるように、接地位置の直径に応じて変速制御する。接地部分の周速を所定速度にすると、回転体は、直径の大きさから、両端で高速回転、中央で低速回転になる。特許文献4の図22に示された固定式車輪の樽形の回転体を駆動する改造についても、本発明が適用可能である。この場合は、1つ置きの樽形の回転体が小径、残り1つ置きの樽形の回転体が大径であり、小径の樽形の回転体の端部の一部が大径の樽形の回転体の端部に入り込んでいる。このため、小径の樽形の回転体と大径の樽形の回転体の端部とでは、同一の変速回転で駆動すると周速が相違するので、本発明に係る二重に回転を分配伝達する機構で変速回転制御と位相制御を行う。
1,2…全駆動型回転体付き車輪、
11…ホイール、
12a,12b…回転体、
13a,13b…従動プーリ(従車)、
14…第1の回転分配伝達機構、
14a…第1のリング形太陽歯車(第1の太陽歯車)、
15…第2の回転分配伝達機構、
15a…第2のリング形太陽歯車(第2の太陽歯車)、
16…車軸、
17…走行用モータ、
18…回転体駆動用第1モータ、
19…回転体駆動用第2モータ、
20…給電手段、
20a,20b…スリップリング、
20c,20d…ブラシ、
21…マスター制御部、
22…アブソリュートエンコーダ、
29…スレーブ制御部、
30…送信部、
31…受信部、
32a,32b…従動歯車(従車)、
33…第1の回転分配伝達機構、
33c…第1の太陽傘歯車(第1の太陽歯車)、
34…第2の回転分配伝達機構、
34c…第2の太陽傘歯車(第2の太陽歯車)、
F…車体フレーム、

Claims (4)

  1. ホイールと、
    上記ホイールの周囲に配列され車輪外周円の円弧を形成する周面を有し、車輪の直進方向に対して直交方向へ回転可能である複数の回転体と、
    各回転体に固定された従車と、
    上記ホイール内に備えられた内歯及び外歯を持つ第1の太陽歯車を含み上記第1の太陽歯車の回転を上記複数の回転体のうち1つ置きの第1群の回転体に固定された各従車に分配伝達する第1の回転分配伝達機構と、
    上記ホイール内に備えられた内歯及び外歯を持つ第2の太陽歯車を含み上記第2の太陽歯車の回転を残り1つ置きの第2群の回転体に固定された各従車に分配伝達する第2の回転分配伝達機構と、
    車体フレームに回転可能に支持され上記ホイールを支持する車軸と、
    上記車体フレームに備えられ上記車軸を回転する走行用モータと、
    上記ホイール内に備えられ上記第1の太陽歯車を回転する回転体駆動用第1モータと、
    上記ホイール内に備えられ上記第2の太陽歯車を回転する回転体駆動用第2モータと、
    上記車軸に固定された2つのスリップリング及び各スリップリングに摺接するブラシを介して上記回転体駆動用第1モータと上記回転体駆動用第2モータに給電する給電手段と、
    上記車体フレーム側に配置され上記走行用モータの走行制御を行うマスター制御部と、
    上記ホイール内に備えられ上記マスター制御部との間で上記車体フレーム側に配置された送信部と上記ホイール側に配置された受信部との間の電波通信又は光通信を介して制御信号を受け取り上記回転体駆動用第1モータと上記回転体駆動用第2モータの回転制御を行うスレーブ制御部と、
    を備えてなる、全駆動型回転体付き車輪。
  2. 前記第1の太陽歯車及び第2の太陽歯車を同一方向に回転するように、前記回転体駆動用第1モータと前記回転体駆動用第2モータを回転制御する構成である、請求項1記載の全駆動型回転体付き車輪。
  3. 前記回転体は、前進回転方向の前側端部の直径が後側端部の直径よりも小さい半紡錘形状に形成されていて、径の小さい端部の一部が隣接する回転体の径の大きい端部に入り込んだ状態に備えられているか、又は樽形形状に形成されている構成である、請求項1又は2記載の全駆動型回転体付き車輪。
  4. 前記回転体の径の変化に関わらず、車輪の直進方向に対して直交方向へ同じ周速で回転するように前記回転体駆動用第1モータと前記回転体駆動用第2モータを変速回転制御する構成である、請求項1乃至3の何れかに記載の全駆動型回転体付き車輪。
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