JP5083399B2 - 流体噴射装置および手術器具 - Google Patents
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Description
この流体噴射装置では、流体供給手段が流体室に流体を供給し、圧電素子が流体室の容積を変更することによって、流体噴射口から脈動する流体(以下、脈動流という)を噴射することが可能となる。
即ち、流体を噴射して対象物を切断または切除する際に、確実に高精度な切断または切除を行うことが困難であった。
そこで、本発明は、流体を対象物に噴射する際に、より確実に高精度な流体噴射を行うことができる流体噴射装置、流体噴射方法および流体噴射手術器具を提供することを課題としている。
ここで、流体室としては、例えば、後述する流体室501が該当する。容積変更手段としては、例えば、後述する圧電素子401が該当する。入口流路としては、例えば、後述する入口流路503が該当する。出口流路としては、例えば、後述する出口流路511が該当する。脈動発生部としては、例えば、後述する脈動発生部100が該当する。流体噴射口としては、例えば、後述する流体噴射開口部212が該当する。流体供給手段としては、例えば、後述するポンプ20および流体容器10が該当する。制御手段としては、例えば、後述する制御手段30が該当する。色検出手段としては、例えば、後述する色センサ40が該当する。
これにより、噴射対象領域が噴射禁止領域である場合に、脈動発生部における流体の吐出を停止することができ、作業者が噴射禁止領域に過って流体を噴射するのを防止することができる。したがって、例えば、流体噴射装置を手術用のウォーターパルスメス等に適用した場合、術者が切除禁止領域を過って切断または切除してしまうのを防止することができ、より確実に高精度な切断または切除を行うことが可能となる。
これにより、噴射対象領域が噴射可能領域である場合に、噴射対象領域の色に応じて、噴射圧力や噴射周期等、噴射する脈動流の特性を変更することができ、流体噴射対象物の性質に適した特性の脈動流を噴射することが可能となり、高精度な流体噴射を行うことが可能となる。
ここで、形状データ取得手段としては、例えば、後述する3次元画像作成部801が該当する。領域設定手段としては、例えば、後述する領域設定部802が該当する。領域判定手段としては、例えば、後述する切除状態比較部807が該当する。吐出抑制手段としては、例えば、後述する切除状態比較部807が該当する。
これにより、噴射対象領域が噴射禁止領域や近傍領域に該当することを作業者に報知することができ、作業者が噴射禁止領域に過って流体を噴射するのをより確実に防止することができる。
ここで、報知手段としては、例えば、後述する青色LED100a、赤色LED100bおよびスピーカ100cが該当する。
これにより、流体噴射対象物の性質に適した特性の脈動流を噴射することが可能となり、高精度な流体噴射を行うことが可能となる。
これにより、流体を噴射して対象物を切断または切除する際に、より確実に高精度な切断または切除を行うことが可能な手術装置を実現することができる。
本発明に係る流体噴射装置は、インク等を用いた描画、細密な物体及び構造物の洗浄、物体の切断や切除、手術用メス等に適用することが可能である。
本実施形態では、本発明に係る流体噴射装置を、手術対象部位の生体組織を切開又は切除することに好適なウォーターパルスメスに適用した場合について説明する。したがって、本実施の形態で用いる流体は、水、生理食塩水、薬液等である。
(構成)
図1は、本発明の第1の実施形態に係るウォーターパルスメスを示す概略構成図である。
図1に示すウォーターパルスメス(流体噴射装置、流体噴射手術器具)1は、流体を収容する流体容器10と、一定の圧力で流体を供給するポンプ20と、ポンプ20から供給される流体を脈動流動する脈動発生部100と、脈動発生部100及びポンプ20を制御する制御手段30と、色センサ40とを備える。
流体容器10は、水、生理食塩水、薬液等の流体を収容する。
ポンプ20は、接続チューブ15を介して流体容器10に収容された流体を吸引する。また、ポンプ20は、吸引した流体を、一定の圧力で接続チューブ25を介して脈動発生部100に供給する。ポンプ20の吐出圧力は概ね3気圧(0.3MPa)以下に設定する。
脈動発生部100は、流体室501(図2、参照)と、流体室501の容積変更手段とを備えている。本実施形態では、流体室501の容積変更手段として、圧電素子401を用いている。
また、脈動発生部100には、切除あるいは切開の状態の適否を報知するための青色および赤色のLED(Light Emitting Diode)100a,100bと、音声を出力するスピーカ100cとが内蔵されている。
図2は、図1に示すウォーターパルスメスの脈動発生部を示す断面図である。なお、図2は、図4に示すA−A´線の断面図である。図3は、図2に示す脈動発生部を分解した状態の概略を示す斜視図である。
図2及び図3に示すように、脈動発生部100は、上ケース500と、下ケース301とを有する。そして、上ケース500及び下ケース301は、互いに対向する面において接合され、4本の固定螺子(図示せず)によって螺着されている。
下ケース301は、鍔部を有する筒状部材であって、一方の端部は底板311で密閉されている。この下ケース301の内部空間に圧電素子401が配設される。
ダイアフラム400は、円盤状の金属薄板からなり、下ケース301の凹部303内において周縁部が凹部303の底面に密着固着されている。容積変更手段としての圧電素子401に駆動信号を入力することで、圧電素子401の伸張、収縮に伴いダイアフラム400を介して流体室501の容積を変更する。このように、容積変更手段として圧電素子401とダイアフラム400とを採用する構造にすることにより、構造の簡素化と、それに伴う小型化を実現できる。また、流体室501の容積変化の最大周波数を1KHz以上の高い周波数にすることができ、高速脈動流の噴射に最適となる。
上ケース500は、下ケース301と対向する面の中心部に凹部を有している。そして、この凹部とダイアフラム400とから構成され流体が充填された状態の回転体形状が流体室501である。つまり、流体室501は、上ケース500の凹部の封止面505と内周側壁501aとダイアフラム400とによって囲まれた空間である。流体室501の略中央部には出口流路511が穿設されている。
出口流路511は、流体室501から、上ケース500の一方の端面に突設された出口流路管510の端部まで貫通されている。出口流路511の流体室501の封止面505との接続部は、流体抵抗を減ずるために滑らかに丸められている。
出口流路管510には接続流路管200が接続されている。接続流路管200には接続流路201が穿設されている。接続流路201の直径は、出口流路511の直径より大きく形成されている。また、接続流路管200の管部の厚さは、流体の圧力脈動を吸収しない剛性を有する範囲に形成されている。
接続流路管200の先端部には、ノズル211が挿着されている。ノズル211には、流体噴射口212が穿設されている。流体噴射口212の直径は、接続流路201の直径より小さい。
上ケース500の側面には、ポンプ20から流体を供給する接続チューブ25を挿着する入口流路管502が突設されている。入口流路管502には、入口流路側の接続流路504が穿設されている。接続流路504は入口流路503に連通している。入口流路503は、流体室501の封止面505の周縁部に溝状に形成され、流体室501に連通している。
ここで、上ケース500と下ケース301とを組立てたとき、ダイアフラム400の周縁部と補強板410の周縁部とは、上ケース500の封止面505の周縁部と下ケース301の凹部303の底面によって密接されている。この際、パッキン450は上ケース500と下ケース301によって押し圧されて、流体室501からの流体漏洩を防止している。
図2に示すようにパッキン450を配設すると、流体室501から高圧で漏洩してくる流体の圧力によってパッキン450が圧縮され、パッキンボックス304,506内の壁にさらに強く押し圧するので、流体の漏洩を一層確実に阻止することができる。このことから、駆動時において流体室501内の高い圧力上昇を維持することができる。
図4は、図2に示す脈動発生部の入口流路を示す平面図であり、上ケースを下ケースとの接合面側から視認した状態を表している。
図4に示すように、入口流路503は、一方の端部が流体室501に連通し、他方の端部が接続流路504に連通している。入口流路503と接続流路504との接続部には、流体溜り507が形成されている。入口流路503と接続流路504との接続部に流体溜り507を設けることにより、接続流路504のイナータンスが入口流路503に与える影響を抑制することができる。そして、流体溜り507と入口流路503との接続部は滑らかに丸めることによって流体抵抗を減じている。
そして、中心部に集められた気泡は、出口流路511から排除される。このことから、出口流路511は旋回流の中心近傍、つまり回転形状体の軸中心部に設けられることがより好ましい。図4では、入口流路503は平面形状が湾曲されている。入口流路503は、直線で流体室501に連通させてもよいが、狭いスペースの中で所望のイナータンスを得るために、入口流路503の流路長を長くする必要性から湾曲させている。
なお、図示は省略するが、補強板410とダイアフラム400とを接合し、一体に積層固着することができる。補強板410とダイアフラム400とを積層し、一体に固着すれば、脈動発生部100の組立性を向上させることができる他、ダイアフラム400の外周縁部の補強効果もある。固着手段としては、接着剤を用いる貼着としても、固層拡散接合、溶接等を採用することが可能であるが、補強板410とダイアフラム400とが、接合面において密着されていることがより好ましい。
制御手段30は、図5に示すように、ポンプ20を制御するポンプ制御部31と、脈動発生部100の圧電素子401を制御する電圧制御部32と、電圧制御部32が参照するルックアップテーブルを格納するテーブル格納部33とを有する。また、電圧制御部32には、色センサ40の検出信号が入力される。
ポンプ制御部31は、ポンプ20が脈動発生部100に供給する流体の圧力を制御する。
本実施形態では、患部において腫瘍等が存在する領域(切除可能領域)を予め着色し、切除可能領域以外の領域(切除禁止領域)と区別しておくことで、患部の状態や種類に応じて噴射する脈動流の特性を変更するようにする。
なお、このとき切除可能領域が視覚的に明確となるように、切除禁止領域とは異なる色に設定する。また、切除可能領域の種類に応じて異なる色を設定することも可能である。
テーブル格納部33は、電圧制御部32が参照するルックアップテーブルを格納する。ルックアップテーブルは、駆動信号の電圧パルス波形を記憶している。具体的には、ルックアップテーブルには、切除対象領域の色にそれぞれ対応して電圧パルス波形ひとつ分の電圧値がデジタル値として記憶されている。
ルックアップテーブルを設計する際には、術式例、実験例等に基づいて、手術対象部位の所定の性質(状態、種類)に対して噴射される脈動流の特性が適切となるように、ルックアップテーブルに記憶される電圧信号が設定される。具体的には、術式例から得た、所定の性質の手術対象部位に対して実際に噴射された適切と考えられる脈動流の特性と、予め仮定した脈動流の特性との近似値計算を行い、任意の更新基準に基づいて、予め仮定した脈動流の特性を更新する。そして、更新した結果得られた脈動流の特性と、術式例から得た脈動流の特性との乖離が所定以内となった場合、この更新した結果得られた脈動流の特性を、手術対象部位の所定の性質に対して適切な脈動流の特性として設定する。
そして、この設定された脈動流の特性に係る電圧信号を、手術対象部位の性質に応じた色に対応付けてルックアップテーブルに記憶し、このルックアップテーブルをテーブル格納部33に格納する。
図6は、制御手段30が実行する制御処理を示すフローチャートである。
ここで、制御手段30は、術者により流体の噴射を開始するためのスイッチ(図示せず)がON状態に操作されている際、図6に示す処理を繰り返し実行する。
術者により流体の噴射を開始するためのスイッチがON状態に操作されると、図6に示すように、先ずステップS1において、制御手段30のポンプ制御部31は、ポンプ20を駆動し、脈動発生部100に一定の圧力で流体を供給する。
次に、ステップS2において、制御手段30の電圧制御部32は、色センサ40の検出信号を読み込み、ステップS3に移行する。
ステップS4では、制御手段30は、前記ステップS3で判定した色に基づいて、色判定フラグを設定する。具体的には、前記ステップS3で判定した色が予め術者が指定した色である場合は、切除対象領域が手術対象部位における切除可能領域に該当すると判定し、色判定フラグとして切除許可フラグを設定する。一方、前記ステップS3で判定した色が上記指定した色以外である場合は、切除対象領域が手術対象部位における切除禁止領域に該当すると判定し、色判定フラグとして切除禁止フラグを設定する。
次に、ステップS5において、制御手段30は、切除許可フラグおよび切除禁止フラグの設定の有無を判定し、切除許可フラグが設定されている場合、ステップS6に移行して青色のLED100aの発光を行う。
これにより、切除対象領域が切除可能領域に該当するときには、切除対象領域の色に応じた噴射圧力及び噴射周期となるように圧電素子401へ電圧パルス波形が入力される。このように、電圧制御部32から駆動信号が圧電素子401に入力されることにより、接続流路201にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。
また、前記ステップS5において、制御手段30が、切除禁止フラグが設定されていると判定した場合、ステップS8に移行して、スピーカ100cにより切除が禁止された旨の音声の警報を出力すると共に赤色のLED100bの発光を行う。
ステップS10では、制御手段30の電圧制御部32は、流体の噴射を開始するためのスイッチがON状態を継続しているか否かを判定し、ON状態を継続していると判定したときには前記ステップS2に移行し、ON状態からOFF状態へ変化したと判定したときにはステップS11に移行する。
ステップS11では、制御手段30のポンプ制御部31は、ポンプ20の駆動を停止すると共に、制御手段30の電圧制御部32は、脈動発生部100の圧電素子401への電圧信号の入力を停止して、一連の処理を終了する。
本実施形態に係るウォーターパルスメス1の脈動発生部100の流体吐出は、入口流路側のイナータンスL1(合成イナータンスL1と呼ぶことがある)と出口流路側のイナータンスL2(合成イナータンスL2と呼ぶことがある)の差によって行われる。
まず、イナータンスについて説明する。
イナータンスLは、流体の密度をρ、流路の断面積をS、流路の長さをhとしたとき、L=ρ×h/Sで表される。流路の圧力差をΔP、流路を流れる流体の流量をQとした場合に、イナータンスLを用いて流路内の運動方程式を変形することで、ΔP=L×dQ/dtという関係が導き出される。
また、複数の流路の並列接続や、複数の形状が異なる流路の直列接続に関する合成イナータンスは、個々の流路のイナータンスを電気回路におけるインダクタンスの並列接続、又は直列接続と同様に合成して算出することができる。
なお、入口流路側のイナータンスL1は、接続流路504が入口流路503に対して直径が十分大きく設定されているので、イナータンスL1は、入口流路503の範囲において算出される。この際、ポンプ20と入口流路を接続する接続チューブは柔軟性を有するため、イナータンスL1の算出から削除してもよい。
なお、接続流路管200の管壁の厚さは、流体の圧力伝播には十分な剛性を有している。
そして、本実施形態では、入口流路側のイナータンスL1が出口流路側のイナータンスL2よりも大きくなるように、入口流路503の流路長及び断面積、出口流路511の流路長及び断面積を設定する。
術者によりスイッチがON状態に操作され、制御手段30がポンプ20の駆動を開始すると、ポンプ20によって入口流路503には、常に一定圧力の液圧で流体が供給される。その結果、圧電素子401が動作を行わない場合、ポンプ20の吐出力と入口流路側全体の流体抵抗値の差によって、流体は流体室501内に流動する。
また、制御手段30が圧電素子401に駆動信号を入力すると、圧電素子401の伸張、収縮に伴いダイアフラム400を介して流体室501の容積が変更する。
すなわち、圧電素子401に駆動信号が入力され、急激に圧電素子401が伸張したとすると、流体室501内の圧力は、入口流路側及び出口流路側のイナータンスL1,L2が十分な大きさを有していれば急速に上昇して数十気圧に達する。
ここで、入口流路503のイナータンスL1は、出口流路511のイナータンスL2よりも大きい。したがって、入口流路503から流体が流体室501へ流入する流量の減少量よりも、出口流路から吐出される流体の増加量のほうが大きいため、接続流路201にパルス状の流体吐出、つまり、脈動流が発生する。この吐出の際の圧力変動が、接続流路管200内を伝播して、先端のノズル211の流体噴射口212から流体が噴射される。
ここで、ノズル211の流体噴射口212の直径は、出口流路511の直径よりも小さいので、流体は、さらに高圧、高速のパルス状の液滴(脈動流)として噴射される。
一方、流体室501内は、入口流路503からの流体流入量の減少と出口流路511からの流体流出の増加との相互作用で、圧力上昇直後に真空状態となる。その結果、ポンプ20の圧力と、流体室501内の真空状態の双方によって一定時間経過後、入口流路503の流体は圧電素子401の動作前と同様な速度で流体室501内に向かう流れが復帰する。
また、上述した脈動発生部100の動作において、流体室501が、略回転体形状を有し旋回流発生部としての入口流路503を備えていることと、出口流路511が略回転体形状の回転軸近傍に開設されていることから、流体室501内において旋回流が発生し、流体内に含まれる気泡は速やかに出口流路511から外部に排出される。
したがって、圧電素子401による流体室501の微小な容積変化においても、気泡によって圧力変動が阻害されることなく、十分な圧力上昇が得られる。
ここで、ウォーターパルスメス1では、切除対象領域の色を検出し、検出した切除対象領域の色に応じて、脈動発生部100の圧電素子401に印加する電圧信号を設定する。
このように、ウォーターパルスメス1では、切除対象領域の色に応じて圧電素子401による流体室501の容積の変更を制御するため、手術対象部位の性質に適した特性の脈動流を噴射することが可能となる。
さらに、色検出手段として色センサを採用するので、簡易な構成で切除対象領域の色を検出することができる。
また、容積変更手段として圧電素子を採用し、色センサが検出した切除対象領域の色に応じて、圧電素子に印加する電圧を制御するため、簡易な構成で流路管から噴射される流体の圧力の調整が可能となる。
また、予め患者に任意の色素を含有させた対象病変の細胞選択性を有するナノカプセルを服用させるので、確実に切除すべき癌細胞等の腫瘍を任意色に着色することができ、色センサにより切除対象領域の色を判定することで、切除対象領域の性質を容易に検出することが可能となる。さらに、この色素マーキングの手法としてカテーテルを用いたり直接的に注射をしたりする一般的な手法を適用する場合と比較して、患者の負担を軽減させることができる。
第2の実施形態は、前述した第1の実施形態において、磁気センサによって検出したノズル位置や画像処理により検出した切除領域に応じて、切除状態を術者に報知する機能を追加したものである。
図7は、本発明の第2の実施形態に係るウォーターパルスメスを示す概略構成図である。
図7に示すウォーターパルスメス1は、図1に示すウォーターパルスメス1において、磁気センサ600a〜600dと、カメラ700a〜700dと、作業支援装置800と、磁石213とを追加したことを除いては、図1に示すウォーターパルスメス1と同様の構成を有する。したがって、ここでは構成の異なる部分を中心に説明する。
図7に示すように、接続流路管200のノズル211近傍位置には、ノズル211の位置を検出するために用いる磁石213が設置されている。
なお、磁気センサ600a〜600dは、手術が行われる際に、患者を囲むようにそれぞれ異なる位置に設置される。そして、手術の実施に先立ち、設置された磁気センサ600a〜600dの検出基準軸の設定、3次元位置測定の座標と患部の実際の位置との対応付けおよび磁石213を用いた検出値のキャリブレーションが行われる。
カメラ700a〜700dは、カラー画像撮影が可能なデジタルカメラであり、撮影した画像データを作業支援装置800に出力する。
作業支援装置800は、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、ハードディスク等を備えるPC(Personal Computer)によって構成され、流体噴射装置1を用いて手術等が行われる際の作業を支援する作業支援処理を制御手段30と連携しながら実行する。
具体的には、作業支援装置800は、3次元画像作成部801と、領域設定部802と、領域データ記憶部803と、A/D(Analog to Digital)変換部804と、ノズル位置検出部805と、切除領域検出部806と、切除状態比較部807とを備えている。
領域設定部802は、3次元画像作成部801から入力された3次元画像のデータに対し、手術において切除等する領域(切除可能領域)と、切除可能領域以外の領域(切除禁止領域)と、切除可能領域内であって、切除可能領域の外延から設定された閾値範囲内の領域(近傍領域)とを設定する。
図8に示すように、患部において腫瘍等が存在する領域は切除可能領域として設定され、切除可能領域外は、切除を行うことが不適切な切除禁止領域として設定されている。また、切除可能領域内において、切除禁止領域との境界に接する一定の領域は近傍領域として設定されている。
これらの領域を設定する場合、3次元画像のデータをディスプレイに表示し、医師が手動入力によって各領域を特定することや、患部の色や形をもとに、作業支援装置800が自動的に領域を設定し、医師がその領域設定を承認すること等が可能である。
領域データ記憶部803は、領域設定部802から入力された切除可能領域、禁止領域および近傍領域が設定された3次元画像のデータを記憶する。
A/D変換部804は、磁気センサ600a〜600dから入力された磁気検出値をデジタル値に変換し、変換したデジタル値をノズル位置検出部805に出力する。
ノズル位置検出部805は、磁気センサ600a〜600dの磁気検出値を示すデジタル値それぞれを基に、磁石213の3次元位置を算出する演算を行うことにより、ノズル211の位置を検出する。
切除領域検出部806は、カメラ700a〜700dから入力された画像データを基に、手術によって切除あるいは切開された領域(以下、「切除領域」と言う。)を検出する。
例えば、切除領域検出部806は、手術前に撮影された各カメラ700a〜700dの画像において、エッジの抽出を行い、手術中に撮影された画像におけるエッジの変化を検出したり、エッジに囲まれた領域の色の変化を検出したりすることによって、切除あるいは切開された領域を検出することができる。
切除状態比較部807は、切除領域検出部806から入力された切除領域データと、領域データ記憶部803に記憶された3次元画像のデータとを基に、手術における切除あるいは切開の状態を示すフラグ(画像判定フラグ)を設定する。
また、切除状態比較部807は、ノズル位置検出部805から入力されたノズル位置信号と、領域データ記憶部803に記憶された3次元画像のデータとを基に、ノズル位置の状態を示すフラグ(ノズル位置判定フラグ)を設定する。
そして、切除状態比較部807は、画像判定フラグおよびノズル位置判定フラグを基に手術の適切性を判定し、判定結果を示す信号を制御手段30に出力する。
ここで、制御手段30は、術者により流体の噴射を開始するためのスイッチ(図示せず)がON状態に操作されている際、図9に示す処理を繰り返し実行する。
この図9に示す制御処理において、前述した第1の実施形態における図6の制御処理と同一処理を行うステップには同一ステップ番号を付し、処理の異なる部分を中心に説明する。
前記ステップS1の処理後、ステップS21で、作業支援装置800は、領域データ記憶部803に記憶されている3次元画像データを読み出し、前記ステップS2に移行する。
次に、ステップS24において、作業支援装置800は、切除状態比較部807によって、切除流域およびノズル211の位置それぞれが切除可能領域、切除禁止領域あるいは近傍領域のいずれに該当するかを判定し、判定結果に応じたフラグ(画像判定フラグおよびノズル位置フラグ)を設定する。
具体的には、切除状態比較部807は、切除領域データが示す切除領域が、領域データ記憶部803に記憶された3次元画像のデータにおいて、切除可能領域、切除禁止領域あるいは近傍領域のいずれに該当するかを判定する。
また、切除状態比較部807は、ノズル位置検出部805から入力されたノズル位置信号と、領域データ記憶部803に記憶された3次元画像のデータとを基に、ノズル位置が切除可能領域、切除禁止領域あるいは近傍領域のいずれに該当するかを判定する。
次に、ステップS25において、作業支援装置800は、切除状態比較部807によって、画像判定フラグおよびノズル位置判定フラグを参照し、手術の適切性を示す信号を制御部30に出力する。
具体的には、切除状態比較部807は、画像判定フラグおよびノズル位置判定フラグを参照し、まず、切除状態不適切フラグあるいはノズル位置不適切フラグのいずれかが設定されている場合、制御部30に対して切除・切開の状態が不適切である旨を示す信号(以下、「切除禁止信号」と言う。)を出力する。
さらに、切除状態比較部807は、切除状態不適切フラグおよびノズル位置不適切フラグのいずれも設定されておらず、かつ、切除状態注意フラグおよびノズル位置注意フラグのいずれも設定されていない場合に、切除状態適切フラグあるいはノズル位置適切フラグのいずれかが設定されている場合、制御部30に対して切除・切開の状態が適切である旨を示す信号(以下、「切除許可信号」と言う。)を出力する。
次に、ステップS26において、制御手段30は、前記ステップS4で設定された色判定フラグと、前記ステップS25で切除状態比較部807から入力された手術の適切性を示す信号とに基づいて、フラグ判定を行う。
ステップS27では、制御手段30は、注意を促す音声の警報および青色のLED100aと赤色のLED100bの点滅発光を行い、前記ステップS7に移行する。
このような構成により、色センサ40で検出した切除対象領域の色に基づいて切除許可フラグが設定された場合であっても、画像データ解析に基づいて切除注意信号や切除禁止信号が出力された場合には音声による警報や発光が行われるので、術者の注意を促すことができる。
このように、上記第2の実施形態におけるウォーターパルスメス1では、脈動発生部(ノズル211)に設置された磁石(磁石213)と、脈動発生部に設置された磁石の磁気を検出する磁気検出手段(磁気センサ600a〜600d)とを備え、磁気検出手段によって検出された磁気に基づいて脈動発生部の位置を検出し、検出した脈動発生部の位置に基づいて、噴射可能領域および噴射禁止領域のいずれが脈動発生部による噴射対象領域となっているかを判定する。
また、噴射対象部位を撮影する撮影手段(カメラ700a〜700d)を備え、撮影手段によって撮影された噴射対象部位の画像に基づいて、噴射可能領域および噴射禁止領域のいずれが脈動発生部による噴射対象領域となっているかを判定する。
このような構成により、一般に用いられているデジタルカメラ等のカメラによって、脈動発生部による噴射対象領域を容易に判定することができる。
したがって、フェイルセーフ機能を付加することが可能となり、より高精度な切断または切除を行うことが可能となる。
この場合、色判定フラグおよび手術の適切性を示す信号の少なくとも一方が切除禁止を示すものであるときには、ステップS8で音声による警報および赤色LED100bの発光が行われると共に、ステップS9で圧電素子401への電圧パルス波形の入力が停止されるので、噴射可能領域以外の領域に流体を噴射してしまうのをより確実に防止することができる。
さらに、上記第2の実施形態においては、レーザを照射して物体の形状を検出する形状検出手段を設け、該形状検出手段によって撮影された噴射対象部位の形状に基づいて、噴射可能領域および噴射禁止領域のいずれが脈動発生部による噴射対象領域となっているかを判定することもできる。このような構成により、簡単かつ正確に物体の形状を検出して、脈動発生部による噴射対象領域を判定することができる。
また、脈動発生部に、脈動発生部の位置および姿勢を検出するジャイロセンサを設け、該ジャイロセンサによって検出された脈動発生部の位置および姿勢に基づいて、噴射可能領域および噴射禁止領域のいずれが脈動発生部による噴射対象領域となっているかを判定することもできる。このような構成により、脈動発生部自体に位置および姿勢を検出する機能を備えることができるため、装置構成を簡単なものとすることができる。
また、上記各実施形態においては、色センサで検出した切除対象領域の色に応じて、その切除対象領域が切除可能領域であるか切除禁止領域であるかを判定する場合について説明したが、色センサで検出した色に加えてカメラで撮影した画像データを用いて上記判定を行うこともできる。これにより、より切除対象領域の性質に適した制御が可能となる。
さらに、上記各実施形態においては、本発明を手術用のウォーターパルスメスに適用する場合について説明したが、前述したように、細密な物体及び構造物の洗浄、物体の切断や切除にも本発明を適用可能である。例えば、物体に付着した汚れや錆を洗浄する洗浄装置に本発明を適用した場合、背景色(物体本来の色)以外の色を検出した場合に、汚れの種類に応じた異なる特性で水や洗剤等を噴射するようにすることができ、作業効率を向上させることができる。
Claims (4)
- 流体が流入する流体室と、前記流体室の容積を変更する容積変更手段と、前記流体室に連通する入口流路および出口流路と、を有する脈動発生部と、
前記出口流路から流出した流体を噴射する流体噴射口と、
前記入口流路に流体を供給する流体供給手段と、
前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御する制御手段と、
前記流体噴射口に対向する流体噴射対象領域の色を検出する色検出手段と、
流体の噴射対象部位の形状を示すデータを取得する形状データ取得手段と、
前記形状データ取得手段によって取得された噴射対象部位の形状を示すデータを基に、噴射対象部位における噴射可能領域および噴射禁止領域を設定する領域設定手段と、
前記流体噴射対象領域が前記噴射可能領域および前記噴射禁止領域の何れかに該当するかを判定する領域判定手段と、
前記領域判定手段によって、前記流体噴射対象領域が前記噴射禁止領域に該当していると判定された場合に、前記脈動発生部における流体の吐出を抑制させる吐出抑制手段と、を備え、
前記制御手段は、前記色検出手段が検出した色に応じて、前記容積変更手段による前記
流体室の容積の変更を制御することを特徴とする流体噴射装置。 - 前記制御手段は、前記色検出手段が検出した色が、噴射対象部位における噴射禁止領域を示す色であるとき、前記脈動発生部における流体の吐出を停止するように、前記容積変更手段による前記流体室の容積の変更を制御することを特徴とする請求項1に記載の流体噴射装置。
- 音声および光の少なくとも一方によって報知を行う報知手段をさらに備え、
前記報知手段は、前記流体噴射対象領域が、前記噴射禁止領域および当該噴射禁止領域近傍の領域である近傍領域の何れかに該当するとき、前記報知を行うことを特徴とする請求項1〜2の何れか1項に記載の流体噴射装置。 - 請求項1〜3の何れか1項に記載の流体噴射装置を用いた手術器具。
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