しかしながら、上記従来のバブルを利用した水処理技術では、水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去できないという問題点を有している。具体的には、上記従来のバブルを利用した方法では、難分解性化合物を分解できないという問題点を有している。
また、例えば半導体製造装置のように、難分解性化合物を使用する装置から排出される廃液は、当該装置から離れた場所に設置された廃液処理装置内に集められて分解処理されていた。従って処理される廃液中の不純物が増大し、バブルと難分解性化合物との反応効率が低下することによって、十分に難分解性化合物を分解することができないという問題を有している。
さらに、難分解性化合物を使用する装置は通常クリーンルーム等のスペースの限られた場所に設置されており、廃液処理装置の設置スペースを確保することが困難である。しかしながら、省スペース化の問題から、難分解性化合物を使用する装置に隣接して設置することが可能な廃液処理装置の要求が高まっている。
本発明は、上記従来の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水溶液中の難分解性化合物を効率よく除去することが可能であり、かつ省スペース化に対応した処理技術を提供することにある。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討した結果、以下の1)〜7)を見出し、本発明を完成させるに至った。つまり、
1)難分解性化合物(例えば、有機フッ素化合物など)をナノバブルの酸化力を利用して分解すると、炭素数が少なくなった分解物(例えば、C3、C4、C5、C6、C7など)がガス化して、当該ガスが気相中に放出されること、
2)難分解性化合物をナノバブルの酸化力を利用して効率的に分解するには、ガス化した分解物を液相(水面)表面から効率よく除去する必要があること。つまり、液相(水面)表面にガス化した分解物が充満すると、難分解性化合物の分解が抑制されること、
3)ガス化した各種分解物は、活性炭などによって効率よく吸着されること、
4)処理装置の処理槽を上部と下部とに分けて構成し、下部をナノバブルによって難分解性化合物を分解する領域、上部をガス化した分解物を効率よく除去する領域とすれば、難分解性化合物の分解効率が上昇するとともに、処理槽を小型化できること、
5)難分解性化合物を含む液体を、より高濃度の難分解性化合物を含む高濃度液体と、より低濃度の難分解性化合物を含む低濃度液体とに分割し、高濃度液体を従来の燃焼方式等により処理し、低濃度液体をナノバブルを利用して処理することによって、難分解性化合物を効率よく分解できること、
6)活性炭の存在下で、低濃度廃液をナノバブルにより処理すると、ナノバブルの酸化力と活性炭の触媒作用とによって、難分解性化合物の分解が効率よく進行すること、
7)低濃度廃液中の活性炭を強い曝気で攪拌することによって、活性炭の一部が破砕された破砕微細活性炭が生じ、当該破砕微細活性炭の触媒作用とナノバブルの酸化力との相乗効果により、難分解性化合物の分解効率がさらに向上すること。
本発明に係る処理装置は、上記課題を解決するために、難分解性化合物を処理対象物の処理に使用する装置から排出される難分解性化合物を含有する液体を処理するための処理装置であって、上記難分解性化合物の使用時に排出される液体を高濃度液体として設定し、上記難分解性化合物の使用後の上記処理化合物の洗浄時に排出される液体を低濃度液体として設定し、当該高濃度液体と当該低濃度液体とを分離して処理するものであり、上記低濃度液体を処理する低濃度液体処理手段を備え、上記低濃度液体処理手段は、活性炭を内部に有し、上記低濃度液体が導入される処理槽と、上記処理槽内にナノバブル含有水を吐出するナノバブル含有水吐出手段とを備えていることを特徴としている。
本発明に係る処理方法は、上記課題を解決するために、難分解性化合物を処理対象物の処理に使用する装置から排出される難分解性化合物を含有する液体を分解するための処理方法であって、上記難分解性化合物の使用時に排出される液体を高濃度液体として設定し、上記難分解性化合物の使用後の上記処理対象物の洗浄時に排出される液体を低濃度液体として設定し、当該高濃度液体と当該低濃度液体とを分離して処理するものであり、上記低濃度液体を処理する低濃度液体処理工程とを包含し、上記低濃度液体処理工程は、さらに、上記低濃度液体を、内部に活性炭を有する処理槽内に導入する導入工程と、上記処理槽内にナノバブル含有水を吐出するナノバブル含有水吐出工程とを包含することを特徴としている。
上記構成によれば、予め低濃度液体として設定された難分解性化合物を含む低濃度液体を、活性炭を有する処理槽内で、ナノバブルによって処理する。これにより、ナノバブルによって発生するラジカルが有する酸化力と、活性炭の触媒作用とによって、低濃度液体中の難分解性化合物が分解される。なお、当該酸化力であれば、炭素原子とフッ素原子との間の結合をも分解することができる。
このように、低濃度の難分解性化合物を含む低濃度液体を、高濃度の難分解性化合物を含む高濃度液体とは分離して処理するので、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて適切に処理することが可能であり、低コストで効率よく難分解性化合物を分解することが可能である。また、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて処理することによって、難分解性化合物を処理対象物の処理に使用する装置から排出された難分解性化合物を含む液体を直接処理することが可能であり、当該装置に近接して難分解性化合物を処理することができる。その結果、処理装置の設置スペースを縮小することが可能であり、省スペース化を実現できる。
また、本発明に係る処理装置において、上記処理槽は、上記活性炭を有し、上記低濃度液体を収容する第1の処理槽と、上記低濃度液体から生じるガスを収容する第2の処理槽とを備え、第2の処理槽内に、上記低濃度液体から生じたガスを吸着する第1の吸着手段をさらに備えていることが好ましい。
上記の構成によれば、第1の処理槽内において、ナノバブルと活性炭とにより分解された低濃度液体中の難分解性化合物はガス化して、低濃度液体の液面近傍の気体中に放出され第2の処理槽に拡散する。そして、第2の処理槽に設けられた第1の吸着手段は、難分解性化合物の分解物であるガスを吸着することができるので、難分解性化合物の分解物が自然界に放出されることを防止し、難分解性化合物を合理的に処理することができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記ナノバブル含有水吐出手段は、上記低濃度液体が第1の処理槽内に導入された後、若しくは導入と同時に、第1の処理槽内にナノバブル含有水を吐出するものであることが好ましい。これにより、難分解性化合物を効率よく分解すると共に、装置の無駄な稼働を抑え、省エネルギー化を実現することができる。
また、本発明に係る処理装置において、上記難分解性化合物を含有する液体は、上記難分解性化合物を使用する装置から排出されたものであり、上記低濃度液体処理手段は、上記装置からの、上記難分解性化合物を洗浄する洗浄水の供給弁及び当該洗浄水の排出弁が開いたことを示す信号を受信する受信手段をさらに備え、上記ナノバブル含有水吐出手段は、上記信号が上記受信手段によって受信されたとき、第1の処理槽内にナノバブル含有水を吐出するものであることが好ましい。
上記の構成によれば、難分解性化合物を使用する装置からの信号に連動して、ナノバブル含有水を第1の処理槽内に吐出して、低濃度液体を処理する。ここで、難分解性化合物を使用する装置においては、難分解性化合物による処理の後、処理対象物上に残存する難分解性化合物を洗浄する処理を行う。難分解性化合物による処理時に排出される液体には、難分解性化合物が高濃度に含まれており、当該液体を高濃度液体として設定することができる。そして、洗浄処理時に排出される液体には、処理対象物に残存していた難分解性化合物が含まれるが、低濃度であるため、当該液体を低濃度液体として設定することができる。上記低濃度液体処理手段は、このようにして設定した低濃度液体を処理するものであってもよい。
これにより、難分解性化合物含有する液体をより確実に濃度に応じた処理に供することが可能であり、さらに、難分解性化合物を使用する装置と連動して低濃度液体を処理することによって、より合理的に難分解性化合物を分解することができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記低濃度液体処理手段は、第1の処理槽内を曝気する第1の曝気手段をさらに備えていることが好ましい。これにより、第1の処理槽内の活性炭を沈降させることなく流動させることができるので、活性炭の触媒作用による難分解性化合物の分解を促進することができる。
また、第1の処理槽内において、ナノバブルと活性炭とにより分解された低濃度液体中の難分解性化合物はガス化して、低濃度液体の液面近傍の気体中に放出され第2の処理槽に拡散するが、このとき、難分解性化合物の分解物が水面近傍に滞留すれば、難分解性化合物の分解反応が抑制される。しかしながら、上記構成によれば、第1の曝気手段によって、水面近傍に滞留しようとする分解物を効率よく拡散することができるので、難分解性化合物の分解反応を促進することができる。
また、本発明に係る処理装置は、第1の処理槽内に、上記活性炭を分離する第1の分離手段をさらに備え、上記ナノバブル含有水吐出手段は、第1の分離手段を介して第1の処理槽中から取り込んだ上記低濃度液体を用いてナノバブル含有水を作製して吐き出すものであることが好ましい。
上記の構成によれば、第1の処理槽内においてナノバブル及び活性炭により分解処理された低濃度液体を用いてナノバブル含有水を作製し、第1の処理槽内に戻して再度分解処理し、ナノバブル含有水を循環させる。これにより、より効率よくナノバブルを発生させ、難分解性化合物を分解することができる。また、第1の処理槽からナノバブル含有水吐出手段に取り込まれる低濃度液体は、第1の処理槽内の第1の分離手段によってろ過され、活性炭が分離されているので、ナノバブル含有水吐出手段の閉塞を防止することができる。さらに、活性炭が第1の処理槽から排出されずに滞留することによって、活性炭の触媒作用を低下させることがなく、難分解性化合物の分解能を維持することができる。
さらに、本発明に係る処理装置は、第1の処理槽の内部に、上記活性炭よりも体積の小さい破砕微細活性炭をさらに有し、第1の処理槽内に、上記破砕微細活性炭を分離する第2の分離手段をさらに備え、上記ナノバブル含有水吐出手段は、第1の分離手段及び第2の分離手段を介して第1の処理槽中から取り込んだ上記低濃度液体を用いてナノバブル含有水を作製して吐き出すものであることが好ましい。
上記の構成によれば、活性炭よりも体積の小さい破砕微細活性炭によって、より触媒作用を高めることができるので、難分解性化合物の分解を促進することが可能である。また、第2の分離手段によって、破砕微細活性炭が第1の処理槽内から排出するのを防ぐことができるので、ナノバブル含有水吐出手段の閉塞を防止すると共に、破砕微細活性炭の触媒作用による難分解性化合物の分解能を維持することができる。
また、本発明に係る処理装置において、第1の吸着手段は、第1の処理槽内に導入された上記低濃度液体の液面に平行な位置において層状に重なるように複数設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、難分解性化合物が分解されて生じるガスが排出されるまでの間に、吸着手段とガス中に含まれる分解物とが、複数回接触することになる。その結果、より効果的にガス化した分解物を吸着手段に吸着させることができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記低濃度液体処理手段は、第1の吸着手段に気体を吹きつける手段をさらに備えていることが好ましい。すなわち、気体を吹きつける手段から第1の吸着手段に気体を吹きつけるようになっている。これにより、難分解性化合物の分解物を含有するガスを滞留させることなく、効率よく拡散することができるので、難分解性化合物の吸着を促進することができる。また、吸着手段の閉塞を防止することもできる。
また、本発明に係る処理装置は、第1の吸着手段の、第1の処理槽側の反対側に、上記低濃度液体から生じるガス中に含まれる上記活性炭の粉末を分離する第3の分離手段をさらに備えていることが好ましい。これにより、難分解性化合物の分解物を含有するガス中に活性炭が含有していたとしても、当該活性炭を吸着して分離することができるので、上記ガスと共に活性炭が排気されるのを防ぐことができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記難分解性化合物は有機フッ素化合物であることが好ましい。上記の構成によれば、ナノバブルにより酸化力の強いラジカルを多量に発生させることができるので、有機フッ素化合物含有水のような従来の方法では処理することが困難であった水溶液まで、より効果的に処理して無害化することができる。
また、本発明に係る処理装置において、上記有機フッ素化合物は、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド、及びパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体からなる群より選択される少なくとも1つの有機フッ素化合物であることが好ましい。
上記構成によれば、有機フッ素化合物の中でも特に処理が困難であったパーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロオクタン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド、及びパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体についても、より効果的に処理して無害化することができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記低濃度液体処理手段は、上記低濃度液体を溜める原水槽と、上記原水槽から第1の処理槽内に上記低濃度液体を移送する移送手段と、上記原水槽内に上記低濃度液体を加熱するヒーターとをさらに備えていることが好ましい。これにより、低濃度液体の液温を高め、難分解性化合物の分解を促進することができる。
また、本発明に係る処理装置において、上記低濃度液体処理手段は、上記低濃度液体を溜める原水槽と、上記原水槽から第1の処理槽内に上記低濃度液体を移送する移送手段と、上記原水槽内に上記活性炭よりも体積の大きい大型活性炭をさらに備えていることが好ましい。これにより、原水槽から処理水槽に移送されて行われる難分解性化合物の分解処理の効率を向上させることができる。また、体積の大きな大型活性炭を用いているので、難分解性化合物の吸着作用が大きいという利点も有している。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記ナノバブル含有水吐出手段は、下記1)〜3)、
1)液体と気体とを混合及びせん断してマイクロバブル含有水を作製する第1気体せん断部
2)上記マイクロバブル含有水を更にせん断してナノバブル含有水を作製する第2気体せん断部
3)上記ナノバブル含有水を更にせん断して多量のナノバブルを含むナノバブル含有水を作製する第3気体せん断部
を備えるものであることが好ましい。
上記構成によれば、多量のナノバブルを含むナノバブル含有水を作製することができる。換言すれば、多量のラジカルを発生させることができる。そして、多量のラジカルを発生させることができれば、より強力に難分解性化合物を酸化分解することができる。そして、その結果、上記構成によれば、より効果的に難分解性化合物を除去することができる。
また、本発明に係る処理装置は、上記第1気体せん断部に対して1.2リットル/分以下にて上記気体を供給するための気体量調節手段をさらに備えていることが好ましい。上記構成によれば、多量のナノバブルを作製することができる。なお、1.2リットル/分よりも多く気体を供給すれば、マイクロバブルの量が多くなる。そして、マイクロバブルの量が多くなれば、発生するラジカルの量が減少し、その結果、難分解性化合物の処理効果が低下する。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記第1気体せん断部の内部の横断面は、楕円形又は真円形であり、上記第1気体せん断部の内部表面には、2本以上の溝が設けられていることが好ましい。
上記構成によれば、第1気体せん断部の内部の横断面の形状が、楕円形又は真円形であるので、気体と液体との混合物は、上記第1気体せん断部の内部表面に沿って回転運動を行うことができる。つまり、旋回乱流が起こらないような状態で、上記第1気体せん断部の内部にて、気体と液体との混合物を高速にて回転運動させることができる。その結果、効率よく気体をせん断することができるので、第1気体せん断部にて、多量のマイクロバブルを作製することができる。そして、第1気体せん断部にて多量のマイクロバブルを作製することができれば、第2気体せん断部にて、当該マイクロバブルから多量のナノバブルを作製することができる。
また、上記構成によれば、第1気体せん断部の内部表面に溝を形成することによって、上記第1気体せん断部の内部にて気体と液体との混合物を回転運動させた場合に、旋回乱流が生じることを防止することができる。その結果、第1気体せん断部にて、多量のマイクロバブルを作製することができる。そして、第1気体せん断部にて多量のマイクロバブルを作製することができれば、第2気体せん断部にて、当該マイクロバブルから多量のナノバブルを作製することができる。
また、本発明に係る処理装置において、上記溝の深さは、0.3mm〜0.6mmであり、上記溝の幅は、0.8mm以下であることが好ましい。上記構成によれば、より確実に旋回乱流が生じることを防止することができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記第1気体せん断部では、第1配管を介して上記液体が供給されるとともに、第2配管を介して上記マイクロバブル含有水が吐出され、上記第1配管の内腔の横断面の面積は、上記第2配管の内腔の横断面の面積よりも大きいことが好ましい。
上記構成によれば、多量のマイクロバブルを作製することができるとともに、当該マイクロバブルを用いて多量のナノバブルを作製することができる。一般的に上記第1気体せん断部にて安定にマイクロバブルを作製するためには、上記第1気体せん断部からのマイクロバブル含有水の吐出圧力を高める必要がある。そこで、液体を上記第1気体せん断部に供給するための第1配管の内腔における横断面の面積を、マイクロバブル含有水を上記第1気体せん断部から吐出するための第2配管の内腔における横断面の面積よりも大きくすれば(換言すれば、上記マイクロバブル含有水の吐出口を上記液体の供給口よりも小さくすれば)、上記第1気体せん断部からのマイクロバブル含有水の吐出圧力を高めることができる。その結果、上記第1気体せん断部にて多量のマイクロバブルを作製することができる。そして、第1気体せん断部にて多量のマイクロバブルを作製することができれば、当該マイクロバブルを用いて、第2気体せん断部にて多量のナノバブルを作製することができる。
また、本発明に係る処理装置において、上記第1気体せん断部は、気体と液体とを混合するためのポンプをさらに備え、上記ポンプ内への上記気体の取り込みは、上記ポンプの出力が最大値に達した時点以降に行われることが好ましい。
上記構成によれば、上記ポンプが気体によって損傷することを防止することができる。つまり、キャビテーションの発生によるポンプの損傷を防止することができる。その結果、上記第1気体せん断部において、多量のマイクロバブルを作製することができる。そして、上記第2気体せん断部にて、当該多量のマイクロバブルから多量のナノバブルを作製することができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記第1気体せん断部は、気体と液体とを混合するためのポンプをさらに備え、上記ポンプ内への上記気体の取り込みは、上記ポンプの動作開始時から60秒後以降に行われることが好ましい。
上記構成によれば、上記ポンプの出力が確実に最大値に達しているので、上記第1気体せん断部にて多量のマイクロバブルを作製することができるとともに、上記第2気体せん断部にて多量のナノバブルを作製することができる。
また、本発明に係る処理装置において、上記第1気体せん断部の内部には、第3配管を介して上記気体が供給され、上記第3配管は、上記第1気体せん断部の内側面に対して18度の角度をなすように、上記第1気体せん断部に接続されていることが好ましい。なお、上記18度の値は入射最適角度であって、入射角度が略18度であればよい。具体的には、上記入射角度は、17度〜19度であることが好ましい。
上記構成によれば、入射角度が18度であることによって気体と液体との効率の良い高速せん断が起こり、多量のマイクロバブルを作製することができる。すなわち、上記第1気体せん断部によって多量のマイクロバブルを作製することができる。そして、当該マイクロバブルを用いれば、第2気体せん断部にて多量のナノバブルを作製することができる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記第1気体せん断部の隔壁の厚さは、6mm〜12mmであることが好ましい。
上記構成によれば、第1気体せん断部の隔壁が厚く形成されているので、第1気体せん断部が振動することがない。つまり、第1気体せん断部の内部にて気体と液体との混合物が旋回しても、それによって第1気体せん断部が振動することがない。したがって、第1気体せん断部の内部で旋回している上記混合物の運動エネルギーが、振動として外部(例えば、外部気体)に伝播して失われることがないので、上記混合物を高速で回転運動させることができる。その結果、上記第1気体せん断部にて、効率よくマイクロバブルを作製することができる。
また、本発明に係る処理装置は、予め高濃度液体として設定された上記難分解性化合物を含む上記高濃度液体を、燃焼方式又は超臨界方式により処理する高濃度液体処理手段をさらに備えていることが好ましい。
さらに、本発明に係る処理方法は、予め高濃度液体として設定された上記難分解性化合物を含む上記高濃度液体を、燃焼方式又は超臨界方式により処理する高濃度液体処理工程をさらに包含することが好ましい。
上記の構成によれば、高濃度の難分解性化合物を含む高濃度液体を、高濃度液体の処理に適した燃焼方式又は超臨界方式により処理するので、効率よく難分解性化合物を分解することができる。このように、低濃度の難分解性化合物を含む低濃度液体と高濃度の難分解性化合物を含む高濃度液体とを、それぞれの液体に適した処理方法により処理するので、低コストで効率よく難分解性化合物を分解することが可能である。
また、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて処理することによって、難分解性化合物を使用する装置から排出された難分解性化合物を含む液体を直接処理することが可能であり、当該装置に近接して難分解性化合物を処理することができる。その結果、処理装置の設置スペースを縮小することが可能であり、省スペース化を実現できる。
さらに、本発明に係る処理装置において、上記難分解性化合物を含む液体が、半導体の製造時におけるフォトレジスト又は液晶の製造時におけるフォトマスクを含む液体であることが好ましい。また、本発明に係る処理装置において、上記難分解性化合物を含む液体が、半導体の製造時に用いられる反射防止膜を含む液体であることが好ましい。さらに、本発明に係る処理装置において、上記難分解性化合物を含む液体が、プリント基板の製造におけるデスミア処理時に排出される廃液であることが好ましい。
上記の構成によれば、従来の処理方法では処理することが困難であった、半導体の製造時におけるフォトレジスト又は液晶の製造時半導体の製造時に用いられる反射防止膜を含む液体におけるフォトマスクを含む液体、並びにプリント基板の製造におけるデスミア処理時に排出される廃液についても、より効果的に処理して無害化することができる。
また、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて処理することによって、半導体製造装置又はプリント基板製造装置から排出された難分解性化合物を含む液体を直接処理することが可能であり、これらの装置に近接して難分解性化合物を処理することができる。その結果、処理装置の設置スペースを縮小することが可能であり、省スペース化を実現できる。
本発明に係る処理装置及び処理方法によれば、低濃度の難分解性化合物を含む低濃度液体をナノバブル及び活性炭を利用して処理し、高濃度の難分解性化合物を含む高濃度液体とは分離して処理するので、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて適切に処理することが可能であり、低コストで効率よく難分解性化合物を分解することが可能である。
また、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて適切に処理することによって、難分解性化合物を処理対象物の処理に使用する装置から排出された難分解性化合物を含む液体を直接処理することが可能であり、当該装置に近接して難分解性化合物を処理することができる。その結果、処理装置の設置スペースを縮小することが可能であり、省スペース化を実現できる。
〔第1の実施形態〕
本発明の第1の実施形態について、図1を参照して以下に説明する。図1は、半導体製造装置に連結された本発明に係る処理装置20の第1の実施形態を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係る処理装置20は、低濃度の難分解性化合物を含有する低濃度液体を導入して処理する分解吸着処理槽(処理槽)19と、ナノバブル含有水を作製するとともに当該ナノバブル含有水を分解吸着処理槽19内に吐出するナノバブル含有水吐出部(ナノバブル含有水吐出手段)54を備えた、低濃度液体処理手段を備えている。
ここで、本発明に係る処理装置20によって処理される難分解性化合物を含む液体は特に限定されないが、例えば、工場などから排水される有機フッ素化合物含有水、河川の水、又は湖の水などを挙げることができる。また、有機塩素化合物、ダイオキシン、農薬等を含有する液体も処理装置20の処理対象とすることができる。
また、当該液体に含まれる難分解性化合物も特に限定されないが、例えば、有機フッ素化合物(例えば、パーフルオロオクンタスルホン酸(PFOS)、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロアルキルスルホン酸(PFAS)、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド、及びパーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体を挙げることができる。なお、パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリドとは、PFOS関連物質を工業的に製造する場合の前駆体であって、当該パーフルオロオクタンスルホン酸フルオリド誘導体には、2007年11月19日から23日にジュネーブにて開催された国際会議(残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約(POPs条約:Stockholm Convention on Persistent Organic Pollutants)におけるPOPs検討委員会(POPRC:Persistent Organic Pollutants Review Committee))にて定められたPFOS関連物質の全てが含まれる。なお、この会議の内容は、2007年12月17日東京で開催された電機・電子4団体主催による「PFOSを取り巻く最新状況と今後の対応に関する説明会」にて報告された。
このような有機フッ素化合物含有水は、一般に、半導体製造時のフォトレジスト工程で用いられる反射防止膜を含む廃液として排出される。また、有機フッ素化合物含有水は、プリント基板製造プロセスにおけるデスミア処理でのエッチング液を含む廃液としても排出される。
本実施形態においては、処理装置20を、有機フッ素化合物を含む廃液(有機フッ素化合物含有液)を排出する半導体製造装置1に隣接して設置し、半導体製造装置1に連結させた形態を説明するが、本発明はこの態様に限定されず、他の難分解性化合物を含む廃液を排出する装置に連結して使用することも可能である。
まず、半導体製造装置1から排出された有機フッ素化合物含有液が処理装置20に導入されるまでの段階を説明する。処理装置20は、半導体製造装置1の側に設置されている。これにより、例えば半導体製造装置1からの廃液の排出条件又は状態を表す信号に基づいて処理装置20を稼働することが容易となる。言い換えれば、半導体製造装置1と処理装置20とを、信号の送受信により連動する設備とすることができる。
半導体製造装置1と処理装置20とを、信号の送受信により連動させる態様について、以下に説明する。この態様において、半導体製造装置1は、受け容器43に処理対象物2を処理するための有機フッ素化合物含有液(レジスト液、反射防止膜液等)を供給する、有機フッ素化合物含有液配管3を開閉する有機フッ素化合物含有液供給バルブ56と、有機フッ素化合物含有液排出配管60を開閉する有機フッ素化合物含有廃液排出バルブ58とを備えている。また、半導体製造装置1は、処理対象物2上を洗浄するための洗浄超純水を供給する、洗浄超純水配管4を開閉する洗浄超純水供給バルブ(洗浄水の供給弁)57と、洗浄超純水排出配管61を開閉する洗浄超純水排出バルブ(洗浄水の排出弁)59とを備えている。
ここで、有機フッ素化合物含有液排出配管60から排出される液体には、有機フッ素化合物が多く含まれる。よって、当該液体が、有機フッ素化合物を高濃度に含む高濃度液体として予め設定され、後述の高濃度液体処理手段によって処理されることとなる。また、洗浄超純水排出配管61から排出される液体には、処理対象物2上に残存する有機フッ素化合物が微量ながら含まれる。したがって、当該液体が、有機フッ素化合物を低濃度に含む低濃度液体として予め設定され、後述の低能動液体処理手段によって処理されることとなる。より具体的にいえば、洗浄超純水排出バルブ59が開いたことを示す信号を半導体製造装置1が処理装置20に送信し、処理装置20は当該信号を受信することで、予め低濃度液体として設定された液体が導入されることを識別することができる。
このように本発明において、有機フッ素化合物等の難分解性化合物を含有する液体を、予め高濃度液体として設定するか低濃度液体として設定するかについては、洗浄超純水等のように、当該液体を希釈するものがさらに導入されるか否かによって設定されてもよいが、これに限定されるものではない。例えば、難分解性物質を含む液体の濃度を人手によって測定し、測定結果に基づいて高濃度液体および低濃度液体のいずれかに設定し、低濃度液体として設定された液体を処理装置に導入してもよい。
有機フッ素化合物含有液排出配管60は、処理装置20の高濃度液体処理手段に連結されており、高濃度液体は当該配管を介して高濃度液体処理手段に移送される。また、洗浄超純水排出配管61は、処理装置20の低濃度液体処理手段に連結されており、低濃度液体は当該配管を介して低濃度液体処理手段に移送される。
高濃度液体処理手段の入口バルブ73が、信号線44を介して送信される、半導体製造装置1の有機フッ素化合物含有液供給バルブ56及び有機フッ素化合物含有廃液排出バルブ58が開いていることを示す信号を受信したとき、入口バルブが開かれて、高濃度液体が高濃度廃液タンク45に導入される。
一方、洗浄超純水供給バルブ57及び洗浄超純水排出バルブ59が開いたとき、洗浄超純水排出配管61を介して低濃度液体が低濃度液体処理手段の低濃度廃液タンク(原水槽)5に導入される。洗浄超純水供給バルブ57及び洗浄超純水排出バルブ59が開いていることを示す信号は信号線44を介して処理装置20のシーケンサー(受信手段)53に送信され、当該信号を受信したシーケンサー53によって、低濃度液体処理手段のナノバブル含有水吐出部54、ブロワー23、排気ファン41が稼働するようになっている。また、低濃度液体が低濃度廃液タンク5に導入された後、又は導入と同時にナノバブル含有水吐出部54、ブロワー23、排気ファン41が稼働するようになっていてもよい。
有機フッ素化合物含有液供給バルブ56、洗浄超純水供給バルブ57、有機フッ素化合物含有廃液排出バルブ58、及び洗浄超純水排出バルブ59の開閉条件については、予め半導体製造装置1内に設置されたシーケンサーに設定されており、この条件に従って制御されるようになっている。すなわち、予め設定されたバルブ開閉条件によって液体が排出される配管が決まり、当該配管が連結された処理手段で処理されるようになっている。
(高濃度液体処理手段)
高濃度液体処理手段は、入口バルブ73、高濃度廃液タンク45、高濃度液体を移送するための廃液配管46、移送ポンプ47、バルブ48の開閉により高濃度液体の導入が制御される専用容器A50、及びバルブ49の開閉により高濃度液体の導入が制御される専用容器B51を備えている。半導体製造装置1から排出された高濃度の有機フッ素化合物を含む高濃度液体は、有機フッ素化合物含有液排出配管60を経て、高濃度廃液タンク45に流入して貯留される。高濃度廃液タンク45の液位が上昇すると移送ポンプ47で専用容器A50又は専用容器B51に移送される。その後、専用容器を廃液を処分する焼却場等に運び、例えば燃焼温度1000度以上で焼却することによって、高濃度液体を処理する。
(低濃度液体処理手段)
低濃度液体処理手段は、低濃度廃液タンク5、ナノバブル含有水吐出部54、分解吸着処理槽19、及びブロワー23を備えている。ナノバブル及び活性炭によって低濃度液体中の有機フッ素化合物を分解する下部分解部(第1の処理槽)22と、下部分解部22にて分解された後にガス化した分解物ガス(ガス)を吸着する上部吸着部(第2の処理槽)21とを備えている。以下に、上部吸着部21及び下部分解部22のそれぞれについて説明する。
(下部分解部22)
本実施形態において、半導体製造装置1から移送され低濃度廃液タンク5に貯留された低濃度液体は、ナノバブル含有水吐出部54を介してナノバブル発生槽55でもある下部分解部22に導入される。ナノバブル含有水吐出部54は、低濃度廃液タンク5から移送される低濃度液体を用いて、ナノバブル含有水を作製すると共に、当該ナノバブル含有水を下部分解部22に吐出する。
このように、下部分解部22には、ナノバブル含有水吐出部54によって、ナノバブルを含有する低濃度液体がナノバブル流30として吐出される。そして、下部分解部22内においてナノバブルによってラジカルが発生し、当該ラジカルによって低濃度液体中の有機フッ素化合物が酸化分解されることになる。例えば、PFOS及びPFOAなどは安定な物質であることが知られているが、本実施の形態の処理装置20であれば、これらの物質をも酸化分解することができる。
そして、本願発明者らは、酸化分解反応によって生じる分解物が、下部分解部22内の難分解性化合物含有水の水面からガス化して大気中に放出されることを見出した。つまり、図1に示すように、分解物は、分解物ガス52として水面から放出される。なお、分解物ガス52としては、例えば、CF3(CF2)nH(n=3、4、5、6)、CF3(CF2)mCOOCH3(m=5、6)などを挙げることができる。放出された分解物ガス52は、上部吸着部21に収容されて吸着処理される。分解物ガス52の吸着処理については、後述する。
ここでラジカルとは、不対電子を有する原子、分子、又はイオンを意図しており、フリーラジカルと称することある。ラジカルは、通常反応性が高いために、生成するとすぐに他の原子や分子との間で酸化還元反応を起こし、安定な分子やイオンとなる。ラジカルは、安定な分子又はイオンになる際に、強い酸化力を示す。このラジカルの酸化力によって、炭素とフッ素との強固な結合が分解され、分解物がガス化する。ナノバブル含有水吐出部54において作製されたナノバブルの酸化力は、マイクロバブルや、マイクロナノバブルの酸化力と比較して、格段に強力である。
下部分解部22内には、活性炭26が流動している。本実施形態においては、活性炭26として、粒状の液相用活性炭である、「クラレコール(登録商標)」(クラレケミカル株式会社製)を用いた。ナノバブルを含有する低濃度液体は、下部分解部22内において活性炭26と混ざりある。本発明者らは、ナノバブルのみにより低濃度液体を処理した場合に比して、活性炭の存在下でナノバブルによって低濃度液体を処理した場合には、分解ガスの発生率が向上することを見出した。
すなわち、活性炭の存在下で、低濃度廃液をナノバブルにより処理すると、ナノバブルの酸化力と活性炭の触媒作用とによって、有機フッ素化合物の分解が効率よく進行することを見出した。また、活性炭の吸着作用により、ナノバブルの酸化作用によってガス化した有機フッ素化合物の一部が吸着処理されることを見出した。したがって、下部分解部22内においては、ナノバブルの酸化作用と活性炭の触媒作用とによって、低濃度液体中の有機フッ素化合物が効率よく分解される。特に、下部分解部22内に流動する活性炭の濃度を高めることによって、活性炭の触媒作用が向上するため、より効率よく有機フッ素化合物を分解することができる。なお、下部分解部22中における活性炭の濃度は、下部分解部22の容積にの20〜40%の容積の活性炭を含むことが好ましい。すなわち、下部分解部22の容積1m3あたり0.2〜0.4m3の活性炭を含むことが好ましい。
また、本発明者らは、低濃度液体を曝気することによって、低濃度液体中の有機フッ素化合物の分解が促進されることも見出した。下部分解部22には、ブロワー23から吐出され、空気配管24を経て空気を吐出する散気管(第1の曝気手段)28が設けられている。散気管28から吐出された空気によって、下部分解部22内の低濃度液体が曝気される。そして、分解によって発生した分解ガスが低濃度液体の液相及び液面近傍から曝気空気と共に除去されることによって、有機フッ素化合物の分解が促進される。
また、下部分解部22内の活性炭26は、比重が1よりも大きいので、下部分解部22内の空気の流れが弱いと、下部分解部22の底に沈降してしまう。このため、ので、活性炭26を防ぐためにも、活性炭26が沈降しない程度に曝気する必要がある。活性炭26が沈降しない程度に曝気するのに必要な空気量は、例えば、下部分解部22の容量あたり50m3/時間/m3以上である。このような空気量で曝気することによって、活性炭26が沈降せずに流動すると同時に、低濃度液体中の有機フッ素化合物の分解物ガスを確実に、液面まで移動させて除去することができる。
さらに、散気管28から吐出される空気によって下部分解部22を曝気することによって、下部分解部22内の活性炭26が強い曝気で攪拌され、活性炭26の一部が破砕された破砕微細活性炭62が生じる。本発明者らは、このようにして生じた破砕微細活性炭62によって、さらに活性炭26の触媒作用が向上し、ナノバブルの酸化力との相乗効果により、有機フッ素化合物の分解効率がさらに向上することもまた見出した。
下部分解部22内において、ナノバブル及び活性炭によって処理され、有機フッ素化合物が分解した処理水は、処理水排水管70を経て排出される。また、下部分解部22において処理された処理水の一部は、流通配管14を経て低濃度廃液タンク5に戻される。下部分解部22において処理水排水管70に連結された処理水排出口(図示せず)近傍には、フィルター68及びスクリーン69が設けられている。また、流通配管14に連結された処理水排水口(図示せず)近傍には、フィルター(第2の分離手段)17及びスクリーン(第1の分離手段)18からなるフィルター部16が設けられている。
フィルター17及び68は、それぞれ処理水排出口により近いほうに配置され、スクリーン18及び69は、フィルター17又は68に重なるように配置されている。スクリーン18及び69によって、比較的サイズの大きな活性炭26を分離し、フィルター17及び68によって、より微細な破砕微細活性炭62を分離する。これにより、処理水から活性炭26及び破砕微細活性炭62が十分に分離され、活性炭26及び破砕微細活性炭62が下部分解部22から流出しないようになっている。フィルター17及び68並びにスクリーン18及び69に堆積した活性炭26及び破砕微細活性炭62は、散気管28から吐出された気泡27によって空気洗浄され、下部分解部22内を流動する。
本実施形態においては、フィルター17及び68として、合成樹脂製のスポンジを用い、スクリーン18及び69として、樹脂製のメッシュ状のシートを用いたが、これに限定されない。また、フィルター17及び68並びにスクリーン18及び69の交換、メンテナンス等のための、取り出し口63及び67が下部分解部22上部の両端に設けられている。
下部分解部22と低濃度廃液タンク5との間を繋ぐ流通配管14には、流通配管14の設計の自由度を上げるフランジ13及び15が設けられており、下部分解部22内の処理水を低濃度廃液タンク5に移送する。このとき下部分解部22から低濃度廃液タンク5に移送される処理水は、ナノバブルを含有している。当該処理水からは活性炭26及び破砕微細活性炭62が除去されているので、当該処理水を再度ナノバブル含有水吐出部54から下部分解部22に吐出するときに、閉塞現象が生じることはない。このように、下部分解部22内で処理された処理水は、下部分解部22と低濃度廃液タンク5との間を循環して、ナノバブル含有水が供給される。また、活性炭26及び破砕微細活性炭62が排出されずに下部分解部22に滞留することによって、これらの触媒作用による有機フッ素化合物の分解能を維持することができる。
ここで、ブロワー23としては、インバータ運転できるように、電動機の回転数制御が可能なものを用いることが好ましい。電動機を回転数制御することによって、下部分解部22内での活性炭26及び破砕微細活性炭62の流動状態を変更することが可能であり、フィルター68及びスクリーン69に活性炭26及び破砕微細活性炭62の堆積を防ぐことができる。
下部分解部22の具体的な構成は特に限定されず、適宜公知の水槽を用いることが可能である。なお、下部分解部22は、底部に向かって先細るテーパ形状を構成する傾斜部25を備えていることが好ましい。上記構成によれば、ナノバブル含有水の吐出圧のみによって、下部分解部22内の低濃度液体をより効果的に攪拌することができる。そして、その結果、低濃度液体中に含まれる有機フッ素化合物の酸化分解反応をより促進することができる。なお、下部分解部22の底面と傾斜部25とがなす角度は特に限定されないが、例えば、30度〜60度であることが好ましく、40度〜50度であることがより好ましく、45度であることが最も好ましい。
(ナノバブル含有水吐出部54)
次いで、ナノバブル含有水吐出部54について説明する。
ナノバブル含有水吐出部54は、廃液配管(第1配管、移送手段)6、気液混合循環ポンプ(ポンプ)7を有する第1気体せん断部8、廃液配管(第2配管)9、第2気体せん断部10、電動ニードルバルブ(気体量調節手段)11、空気配管(第3配管)12及び第3気体せん断部29を備えている。
第1気体せん断部8には廃液配管6及び廃液配管9が接続されている。そして、廃液配管6は低濃度廃液タンク5に連結されており、廃液配管6を介して第1気体せん断部8に液体が供給されるとともに、空気配管12を介して第1気体せん断部8に気体が供給される。そして、第1気体せん断部8の中で上記液体と上記気体とが混合及びせん断されて、その結果、マイクロバブル含有水が作製される。
上記第1気体せん断部8に供給される液体は、半導体製造装置1から排出され低濃度廃液タンク5に貯留された低濃度液体、又は当該低濃度液体と、下部分解部22内で処理され、下部分解部22と低濃度廃液タンク5との間を循環する処理液との混合液であることができる。これにより、処理装置20を小さく設計し、省スペース化を実現できる。
また、第1気体せん断部8に供給される気体としては、特に限定されないが、例えば、空気、オゾン又は酸素であることが好ましい。また、上記気体は、オゾン又は酸素であることが更に好ましい。上記構成であれば空気よりも多量のラジカルを発生させることができるので、より効果的に難分解性化合物を酸化分解することができる。なお、この場合には、空気配管12の電動ニードルバルブ11側の末端に、各気体を貯蔵し得るタンク(気体選択手段)を設けることが好ましい。なお、上記タンクの具体的な構成としては特に限定されず、適宜公知のタンクを用いることが可能である。
第1気体せん断部8内への低濃度液体の供給は、気液混合循環ポンプ7を動作させることによって行われる。また、第1気体せん断部8内への気体の供給、及び気体の供給量の調節は、電動ニードルバルブ11の開閉動作によって調節され得る。
電動ニードルバルブ11の開閉動作のタイミングは特に限定されない。例えば、まず気液混合循環ポンプ7の運転を開始することによって第1気体せん断部8内に低濃度液体を導入するとともに当該低濃度液体を攪拌させる。その後、気液混合循環ポンプ7の出力が最大値に達した時点以降に電動ニードルバルブ11を開いて、これによって第1気体せん断部8内に気体を供給することが好ましい。また、気液混合循環ポンプ7の運転を開始してから60秒後以降に電動ニードルバルブ11を開いて、これによって第1気体せん断部8内に気体を供給することが、より好ましい。
気液混合循環ポンプ7の運転開始時に電動ニードルバルブ11を開くことも可能であるが、この場合、気液混合循環ポンプ7がキャビテーション現象を起し、その結果、気液混合循環ポンプ7が損傷する恐れがある。しかしながら、上記構成であれば、気液混合循環ポンプ7がキャビテーション現象を起すことを防止することができるので、その結果、気液混合循環ポンプ7が破損することを防ぐことができる。
電動ニードルバルブ11を開くことによって第1気体せん断部8内に供給される気体の量は特に限定されない。例えば、第1気体せん断部8に対して、1.2リットル/分以下にて気体を供給することが好ましい。上記構成であれば、効率よく多量のナノバブル含有水を作製することができる。
図1に示すように、第1気体せん断部8には空気配管12を介して気体が供給される。空気配管12を第1気体せん断部8に接続させる場合、第1気体せん断部8上における空気配管12の接続位置、及び第1気体せん断部8に対する空気配管12の接続角度等は特に限定されない。
例えば、空気配管12は第1気体せん断部8の側面に接続されるとともに、第1気体せん断部8の内側面(換言すれば、第1気体せん断部8の内面に対する接線)に対して略18度の角度をなすように接続されることが好ましい。換言すれば、空気配管12の接続箇所における局所を考えた場合、空気配管12は、気体と低濃度液体との混合物の運動方向に対して18度の角度をなすように第1気体せん断部8の内側面に接続されることが好ましい。
マイクロバブルを効率的に作製するためには、効率的に気体をせん断する必要がある。このとき、低濃度液体を超高速回転させて負圧部を形成し、当該負圧部に気体を導入する。そして、気体と低濃度液体との回転速度の差により、効率的に気体をせん断させている。この場合、上記入射角度が18度であるときが、最も気体のせん断効率が高く、それゆえ、最も多くのマイクロバブルを作製することができる。
次いで、ナノバブル含有水吐出部54によってナノバブル含有水が作製される工程について更に詳細に説明する。なお、ナノバブル含有水は、大まかに言えば2つの工程(第1気体せん断工程及び第2気体せん断工程)を経て製造される。以下に、第1気体せん断工程及び第2気体せん断工程について説明する。
<第1気体せん断工程>
第1気体せん断工程では、気体と低濃度液体とから、マイクロバブル含有水が作製される。
第1気体せん断工程では、第1気体せん断部8において、気液混合循環ポンプ7を用いて気体と低濃度液体との混合物の圧力が流体力学的に制御されるとともに、負圧部に対して気体が吸入される。なお、「負圧部」とは、気体と低濃度液体との混合物の中で周りと比較して圧力が小さな領域を意図する。そして、上記混合物を高速流体運動させて負圧部を形成しながら気体をせん断することによって、微細なマイクロバブルを発生させる。換言すれば、低濃度液体と気体とを効果的に自給混合するとともに、圧送する。これによって、より微細なマイクロバブルを含有するマイクロバブル含有水を形成することができる。
気液混合循環ポンプ7としては特に限定されないが、揚程40m以上(4kg/cm2の圧力)の高揚程のポンプであることが好ましい。また、気液混合循環ポンプ7としてはトルクが安定している2ポールのポンプを用いることが好ましい。上記構成によれば、第1気体せん断部8内のマイクロバブル含有水に対して所望の圧力を加えることが可能であり、その結果、マイクロバブル含有水に含まれるマイクロバブルをより微細にせん断することができる。
また、気液混合循環ポンプ7では、ポンプの圧力が制御されていることが好ましい。例えば、気液混合循環ポンプ7の回転数が、インバーター等の回転制御部(図示せず)によって制御されていることが好ましい。なお、上記回転制御部は、更にシーケンサー(図示せず)によって制御され得る。上記構成によれば、上記第1気体せん断部8の中のマイクロバブル含有水に対して所望の圧力を加えることが可能となり、その結果、マイクロバブル含有水に含まれるマイクロバブルを所望のサイズに揃えることができる。
第1気体せん断部8の材料は特に限定されないが、ステンレス、プラスチック、又は樹脂であることが好ましい。上記材料の中では、ステンレスが最も好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル含有水中に不純物が混入することを防止することができるとともに、第1気体せん断部8が振動することを防止することができる。
また、第1気体せん断部8の厚さ(隔壁の厚さ)は特に限定されないが、6mm〜12mmであることが好ましい。一般的に、第1気体せん断部8の厚さが薄ければ、第1気体せん断部8中のマイクロバブル含有水の運動によって、第1気体せん断部8が振動する。つまり、マイクロバブル含有水の運動エネルギーが振動として外部に伝播して失われるので、マイクロバブル含有水の高速流動運動が低下し、その結果、せん断エネルギーが低下する。しかしながら、上記構成によれば、第1気体せん断部8の振動を防ぐことかできるので、効率よくマイクロバブルを作製することができる。
次いで、気液混合循環ポンプ7を有する第1気体せん断部8がマイクロバブルを発生させるメカニズムについて更に詳細に説明する。
まず、第1気体せん断部8において、マイクロバブル含有水の構成成分である低濃度液体と気体とからなる混相旋回流を発生させる。具体的には、インペラと呼ばれる羽を超高速で回転させて、低濃度液体と気体とからなる混相旋回流を発生させる。このとき、第1気体せん断部8の中心部には、高速旋回する気体空洞部が形成される。
次いで、上記気体空洞部を圧力によって竜巻状に細くして、より高速で旋回する回転せん断流を発生させる。このとき、上記気体空洞部に対しては、当該気体空洞部の負圧を利用して、気体を自動的に供給させる。そして、さらにマイクロバブルを切断・粉砕しながら混相旋回流を回転させる。なお、上記切断・粉砕は、第1気体せん断部8の出口内外における気液二相流体の回転速度の差によって生じる。なお、上記回転速度の差は、500〜600回転/秒であることが好ましい。
すなわち、第1気体せん断部8において、気液混合循環ポンプ7によってマイクロバブル含有水を高速流体運動させることによって負圧部を形成するとともに、流体力学的にマイクロバブル含有水の圧力を制御することによって上記負圧部に対して気体を供給している。その結果、第1気体せん断部8では、マイクロバブルを発生させることができる。換言すれば、気液混合循環ポンプ7を用いて低濃度液体と気体とを効果的に自給混合しながら圧送することによりマイクロバブル含有水を製造することができる。
第1気体せん断部8の内腔の横断面の形状は特に限定されないが、楕円形であることが好ましく、真円形であることが最も好ましい。また、第1気体せん断部8の内腔表面は、鏡面仕上げによって形成されていることが好ましい。上記構成によれば、第1気体せん断部8の内部表面の摩擦が小さいので、気体と低濃度液体との混合物を高速旋回させることができるとともに、気体を効率良くせん断することができる。その結果、多くの微細なマイクロバブルを発生させることができるとともに、最終的に多くのナノバブルを発生させることができる。
また、第1気体せん断部8の内部表面(内腔表面)には、溝が設けられていることが好ましい。また、上記溝の数は特に限定されないが、2本以上設けられていることが好ましい。また、上記溝は、第1気体せん断部8の内部表面上に形成された凹形状を有するものであればよく、その形状は特に限定されない。例えば、上記溝は、深さ略0.3mm〜0.6mm、幅略0.8mm以下であることが好ましい。上記構成によれば、第1気体せん断部8内の低濃度液体と気体との混合物の旋回乱流の発生を制御することができるので、多くの微細なマイクロバブルを発生させることができるとともに、最終的に多くのナノバブルを発生させることができる。
また、上記第1気体せん断部8へは、廃液配管6を介して低濃度液体が供給され、廃液配管9を介してマイクロバブル含有水が吐出されている。このとき、上記低濃度液体を供給する廃液配管6の内腔の横断面の面積は、マイクロバブル含有水を吐出する廃液配管9の内腔の横断面の面積よりも大きいことが好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル含有水の吐出圧力を高めることができるので、安定的にマイクロバブルを発生させることができる。
<第2気体せん断工程>
第2気体せん断工程では、上記第1気体せん断工程にて作製されたマイクロバブル含有水からナノバブル含有水が作製される。更に詳細には、第1気体せん断部8によって作製されたマイクロバブル含有水を第2気体せん断部10にて更にせん断して、これによって、ナノバブル含有水を作製している。
なお、必要に応じて第3気体せん断部29を更に備えることができる。第3気体せん断部29を備えれば、第2気体せん断部10によって作製されたナノバブルの大きさを更に小さくすることができるとともに、ナノバブルの量を増加させることができる。
上記気液混合循環ポンプ7によって、マイクロバブル含有水が第1気体せん断部8から第2気体せん断部10へ、さらには第3気体せん断部29へ圧送される。マイクロバブル含有水が第1気体せん断部8から第2気体せん断部10へ、さらには第3気体せん断部29へと配管を介して圧送される場合には、マイクロバブル含有水が圧送される方向に向かって、徐々に又は段階的に配管の直径が小さくなることが好ましい。上記構成によれば、マイクロバブル含有水をより高速で流体運動しながら竜巻状に細くすることができる。換言すれば、より高速で旋回する回転せん断流を発生させることができる。その結果、マイクロバブルからナノバブルを効率よく発生させることができるとともに、ナノバブル含有水中に超高温の極限反応場を形成することができる。
上記極限反応場が形成されると、ナノバブル含有水が局部的に高温高圧状態となり、当該局所にて不安定なフリーラジカルができるとともに、同時に熱が発生される。フリーラジカルは不対電子を有する原子又は分子であって、他の原子又は分子から電子を奪い取って安定化しようとする。それゆえ、フリーラジカルを含むナノバブル含有水は、強い酸化力を示すことになる。したがって上記構成によれば、フリーラジカルの作用によって、有機物などを酸化分解することができる。
また、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29は、ステンレス、プラスチック、又は樹脂によって形成されていることが好ましい。
また、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29の内腔の横断面の形状は、楕円形であることが好ましく、真円形であることが最も好ましい。上記構成によれば、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29の内部表面の抵抗(摩擦)が小さいので、マイクロバブル含有水を高速旋回させることができるとともに、マイクロバブル含有水を効率良くせん断することができ、その結果、多くのナノバブルを発生させることができる。
また、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29には、小孔が開いていることが好ましい。上記小孔の開口の直径は特に限定されないが、4mm〜9mmであることが好ましい。上記構成によれば、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29の内部におけるバブル含有水の旋回運動を制御することができる。つまり、上記構成によれば、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29の内部の旋回乱流の発生を制御することができる。その結果、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29によって、安定にナノバブルを発生させることができる。なお、上記小孔の具体的なサイズは、ポンプの吸引最大値、モーター出力値、及びポンプ吐出圧力値によって決定することも可能である。
上述した気液混合循環ポンプ7、第1気体せん断部8、第2気体せん断部10及び第3気体せん断部29などの具体的な構成としては特に限定しないが、例えば市販のものを用いることが可能である。例えば、株式会社 協和機設社製のバビダスHYK型を用いることが可能であるが、これに限定されない。
以上のようにして作製されたナノバブル含有水はナノバブル流30となって、下部分解部22内に吐出されることになる。そして、下部分解部22内では有機フッ素化合物の酸化分解反応が進行する。そして、当該反応によって生じる分解物はガス化して後述する上部吸着部21内へと拡散するとともに、上部吸着部21内で吸着・除去されることになる。以下に、上部吸着部21について説明する。
(上部吸着部21)
上記吸着部21は、有機フッ素化合物が分解されて生じる分解物ガス52を吸着するための2つの吸着部(吸着手段)を備えている。上側の吸着部は、上部穴あき支持板32と、上部散気管(第2の曝気手段)38及び上部散気管38上に設けられた上部活性炭39が収容された上部穴あき活性炭収容容器37とにより構成されている。上部穴あき活性炭収容容器37は上部穴あき支持板32上に設けられている。同様に、下側の吸着部は、下部穴あき支持板33と、下部散気管(第2の曝気手段)35及び下部散気管35上に設けられた下部活性炭36が収容された下部穴あき活性炭収容容器34とにより構成されている。下部穴あき活性炭収容容器34は下部穴あき支持板33上に設けられている。
上部散気管38及び下部散気管35は、空気配管24によってブロワー23に連結されており、ブロワーが稼働すると、上部活性炭39及び下部活性炭36に気体を吹きつけるようになっている。上部散気管38及び下部散気管35としては、市販の送風機等を用いることが可能であるが、これに限定されない。下部分解部22内の低濃度液体の液面近傍の気相が、蒸気にて飽和している状態に近ければ、低濃度液体中の有機フッ素化合物の分解反応が抑制されてしまうは、しかしながら、上記のように、ブロワー23に連結された散気管28、上部散気管38及び下部散気管35によって、下部分解部22及び上部吸着部21内の気体を流動化させることができるので、有機フッ素化合物の分解反応が抑制されることを防止することができる。また、上部活性炭39又は下部活性炭36の閉塞を防止する効果も得られる。
本実施形態においては、2つの吸着部にそれぞれ上部活性炭39又は下部活性炭36を設けて分解物ガス52を吸着する態様を説明するが、吸着部には分解物ガス52中の分解物を吸着できるものが設けられていればよく、その具体的な構成は特に限定されない。例えば、上部活性炭39又は下部活性炭36の替わりに、キレート樹脂、イオン交換樹脂、又はゼオライトを用いることが好ましい。なお、上部活性炭39又は下部活性炭36としては、例えば、「クラレコール(登録商標)」(クラレケミカル株式会社製)を用いることが好ましい。
上部穴あき支持板32及び下部穴あき支持板33は上部穴あき活性炭収容容器37又は下部穴あき活性炭収容容器34を支持できるものであり、上部穴あき活性炭収容容器37及び下部穴あき活性炭収容容器34は、上部活性炭39又は下部活性炭36を収容できるものであればよく、具体的な構成は特に限定されないが、穴が設けられたものであることが好ましい。上記構成であれば、気流の流れを妨げることがないので、上部活性炭39又は下部活性炭36と分解物ガス52とが効率よく接触することができる。そして、その結果、分解物をより効果的に吸着することができる。
また、本実施形態においては、2段の吸着部を用いているが、吸着部の数はこれに限定されない。吸着部の数は1つであってもよいし、複数であってもよい。換言すれば、複数の吸着層を形成するように吸着部を設けることも可能である。なお、ここでいう吸着層とは複数の吸着部の集団によってなる吸着性を有する層を意図する。なお、分解物ガス52をより確実に吸着することを考慮すれば、吸着部は複数設けられていることが好ましい。
また、上部吸着部21には、下部穴あき活性炭収容容器34及び上部穴あき活性炭収容容器37を必要に応じて取り出すためのマンホール72が設置されている。収容されている活性炭が破過した場合には、マンホール72を開けて取り出し、新しい活性炭と交換することができる。
以上のように、上部吸着部21に拡散した分解物ガス52中の分解物は、上部活性炭39及び下部活性炭36に吸着され、分解物が除去された処理ガス74は、排気ダクト40を経て、排気ファン41に導入されて排気される。
本実施形態に係る処理装置20によれば、まず下部分解部22において、ナノバブルの酸化力により、低濃度液体中の有機フッ素化合物の強固な炭素とフッ素の結合を切断して、有機フッ素化合物を分解する。次に第2段階の処理として、低濃度液体中に残存する低分子化した分解物を、ガス化して吸着除去する。これにより、低濃度液体中の有機フッ素化合物を効率よく分解することができる。
〔第2の実施形態〕
本発明の第2の実施形態について、図2を参照して以下に説明する。図2は、半導体製造装置に連結された本発明に係る処理装置20の第2の実施形態を示す模式図である。第2の実施形態においては、低濃度廃液タンク5内にヒーター64が設けられている点が異なるのみで、他は第1の実施形態と同様に構成されているので、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態において、低濃度廃液タンク5内にはヒーター64が設けられているので、低濃度廃液タンク5内の低濃度液体の温度を調節することができる。一般に、液体温度が上昇すると化合物の分解が促進されるため、温度が上昇した低濃度液体を下部分解部22内でナノバブル及び活性炭により処理することによって、有機フッ素化合物の分解効率が向上する。しかしながら、低濃度液体の温度設定は、低濃度液体の基質の種類、ナノバブル含有水吐出部54の仕様、及び下部分解部22内の活性炭26の量、散気管28からの吐出される空気量等によって異なるので、予め得た実験データに基づいて、総合的な観点(省エネ、コスト、分解性能等)から決定すればよい。
〔第3の実施形態〕
本発明の第3の実施形態について、図3を参照して以下に説明する。図3は、半導体製造装置に連結された本発明に係る処理装置20の第3の実施形態を示す模式図である。第3の実施形態においては、低濃度廃液タンク5内に、大型活性炭65が収容された大型活性炭収容容器66が設けられている点が異なるのみで、他は第1の実施形態と同様に構成されているので、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態において、低濃度廃液タンク5内には、大型活性炭65が収容された大型活性炭収容容器66が設けられているので、低濃度廃液タンク5に貯留されている低濃度液体中の有機フッ素化合物を、大型活性炭65の触媒作用及び吸着作用により分解除去することができる。これにより、低濃度廃液タンク5から分解吸着処理槽19に移送されて行われる分解処理の効率を向上させることができる。また、大型活性炭はサイズが大きいため、有機フッ素化合物の吸着作用が大きいという利点も有している。
また、流通配管14を介して低濃度廃液タンク5に戻されるナノバブル含有液中のナノバブルの酸化作用と大型活性炭65の触媒作用との相互作用によって、有機フッ素化合物を分解することができる。さらに、大型活性炭65は、大型活性炭収容容器66に充填されているので、ナノバブル含有水吐出部54の吸い込み配管に吸い込まれることがない。
〔第4の実施形態〕
本発明の第4の実施形態について、図4を参照して以下に説明する。図4は、半導体製造装置に連結された本発明に係る処理装置20の第4の実施形態を示す模式図である。第4の実施形態においては、上部吸着部21に設けられた上部活性炭39の上部に微粉末活性炭セパレータ(第3の分離手段)71が設けられている点が異なるのみで、他は第1の実施形態と同様に構成されているので、異なる点についてのみ説明する。
本実施形態において、上部吸着部21には、上部活性炭39の上部に微粉末活性炭セパレータ71が設けられているので、散気管28から吐出される空気量が多く、微粉末状の活性炭が上部吸着部21内に飛散した場合であっても、当該微粉末状の活性炭を除去することができる、これにより微粉末状の活性炭の排気を防止することができる。
本実施形態においては、微粉末活性炭セパレータ71として、合成樹脂製のスポンジ状のものを用いたが、これに限定されず、例えば繊維状等のセパレータも好適に使用可能である。最適な材料を、予め実験により選定すればよい。
〔実験例〕
図1に基づいて、有機フッ素化合物(PFOS)含有水を処理する処理装置20を作製した。
本実施例で用いた処理装置20において、低濃度廃液タンク5の容量は0.5m3、分解吸着処理槽19の上部吸着部21の容量は約1m3、下部分解部22の容量は約1m3、高濃度廃液タンク45の容量は0.2m3、専用容器Aの容量は0.1m3、専用容器Bの容量は0.1m3とした。
ナノバブル含有水吐出部54としては、3.7kwの気液混合循環ポンプ7を有するもの(株式会社協和機設製のHYK型)を用いた。また、下部分解部22には、「水処理用活性炭クラレコールGW(液相用)(登録商標)」(クラレケミカル株式会社社製)を導入した。
このようにして構成した処理装置20の低濃度廃液タンク5に低濃度の有機フッ素化合物を含有する低濃度液体を導入して、低濃度液体の処理に関する一連の設備を全て稼働した。試運転を開始して、12日後の低濃度廃液タンク5及び処理水排水管70から得られた液体中の各化合物濃度を比較した。結果を表1に示す。
次に、排気ダクト40内の処理ガス中の化合物濃度を測定した。結果を表2に示す。
表1及び2に示す結果から、以下のa)〜e)が明らかになった。
a)低濃度廃液タンク5内の液体中のPFOS濃度と比較して、処理水排水管70から得られる液体中のPFOS濃度は格段に低く、PFOSが十分に分解されていた。PFOSの分解率は92%であった。
b)液体中に含まれる総フッ素量も、低濃度廃液タンク5内の液体と比較して、処理水排水管70から得られた液体中の濃度が格段に低く、フッ素が分解されて十分に気相に拡散していた。
c)液体中のPFOSが分解されて生じる硫酸イオンが検出された。
d)排気ダクト40内のガス中のPFOS濃度が極端に低く、PFOSがミストとして飛散しているのではなく、分解されていた。
e)排気ダクト40内のガスから、パーフルオロカーボン等分解物が検出されず、上部吸着部21の活性炭(上部活性炭39と下部活性炭36)に吸着されていた。
以上のように、本発明に係る処理装置及び処理方法によれば、低濃度の難分解性化合物を含む低濃度液体をナノバブル及び活性炭を利用して処理し、高濃度の難分解性化合物を含む高濃度液体とは分離して処理するので、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて適切に処理することが可能であり、低コストで効率よく難分解性化合物を分解することが可能である。
また、処理の対象となる液体を難分解性化合物の濃度に応じて処理することによって、難分解性化合物を使用する装置から排出された難分解性化合物を含む液体を直接処理することが可能であり、当該装置に近接して難分解性化合物を処理することができる。その結果、処理装置の設置スペースを縮小することが可能であり、省スペース化を実現できる。
さらに、本発明に係る処理装置及び処理方法によれば、ナノバブルによって多量のラジカルを発生させ、当該ラジカルによって、強力に難分解性化合物を酸化分解することができるという効果を奏する。
また、酸化分解によって生じた分解物はガス化するが、当該ガス化した分解物を効果的に除去することができるので、酸化分解反応の進行が抑制されることを防ぐことができるという効果を奏する。換言すれば、酸化分解反応を促進することができるという効果を奏する。
また、除去された分解物は吸着手段によって回収されるので、分解物が自然界に放出されて環境汚染を生じることを防ぐことができるという効果を奏する。
なお本発明は、以上説示した各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態や実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態や実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。