以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一側面としての計算機ホログラム100を説明するための図である。計算機ホログラム100は、図1に示すように、入射光の波面を変化させて、所定面PS(例えば、アパーチャの位置)に光強度分布(再生像)LIを形成する。また、計算機ホログラム100は、第1の方向の直線偏光成分としてのX偏光の波面及び第2の方向の直線偏光成分としてのY偏光の波面のそれぞれについて互いに異なる位相分布を形成する。これにより、X偏光(入射光のX軸方向の偏光成分)が形成する第1の光強度分布LI1とY偏光(入射光のY軸方向の偏光成分)が形成する第2の光強度分布LI2とを異ならせることができる。ここで、第1の方向の直線偏光成分としてのX偏光は、X軸方向を偏光方向とする直線偏光であり、第2の方向の直線偏光成分としてのY偏光は、Y軸方向を偏光方向とする直線偏光である。なお、第1の方向の直線偏光成分としてのX偏光と第2の方向の直線偏光成分としてのY偏光とは、互いに直交する偏光である。
以下、計算機ホログラム100について具体的に説明する。図2は、計算機ホログラム100を構成するセル構造を示す概略斜視図である。
入射光の波面を変化させて、X偏光の波面及びY偏光の波面のそれぞれについて互いに異なる位相分布を形成するためには、計算機ホログラム100は、各偏光方向に対して波面を独立に制御する必要がある。計算機ホログラム100として、X偏光の波面及びY偏光の波面のそれぞれについて4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムを考えると、2つの偏光方向のそれぞれに対して4値の位相を波面に与える必要がある。従って、計算機ホログラム100のセル110においては、4×4=16種類のセル構造(即ち、複数のセル)が必要となる。図2に示す複数のセル110(セル110a乃至110g)は、16種類のセル構造のうち特徴的な7種類のセル構造を示している。計算機ホログラム100は、図2に示すセル110a乃至110gを含む16種類のセルを正方格子状に配列して構成されている。
複数のセル110は、図2に示すように、X偏光に対する屈折率とY偏光に対する屈折率とが等しい等方性媒質112及びX偏光に対する屈折率とY偏光に対する屈折率とが異なる異方性媒質114で構成される。詳細には、複数のセル110は、異方性媒質114からなるセル110a及び110b(第3のセル)と、等方性媒質112と異方性媒質114とからなるセル110c乃至110f(第1のセル)と、等方性媒質112からなるセル110g(第2のセル)とを含む。但し、等方性媒質112は、異方性媒質114と比較して、入射光の偏光状態を変化させなければよく、本実施形態では、X偏光に対する屈折率とY偏光に対する屈折率との差が0以上0.001以下であれば等方性媒質とみなす。
異方性媒質114は、X偏光の波面とY偏光の波面との間に位相差を形成する媒質であって、異方性材料や構造複屈折を生じる周期構造(凹凸形状)などで構成することが可能である。異方性媒質114は、本実施形態では、0次以外の回折光の発生を防止するために、入射光の波長よりも小さい周期(ピッチ)Pを有する1次元の周期構造で構成されている。
異方性媒質114は、図2に示すように、第1の方向OA1に周期方向を有する周期構造の異方性媒質114aと、第1の方向OA1に直交する第2の方向OA2に周期方向を有する周期構造の異方性媒質114bとを含む。これにより、X偏光の波面をY偏光の波面よりも進ませるセルとX偏光の波面をY偏光の波面よりも遅らせるセルとを実現することができる。
構造複屈折を生じる周期構造は、例えば、石英を用いた回折格子として特許文献1に開示されている。特許文献1には、波長193nmに対して1.56の屈折率を有する石英で、構造複屈折領域のデューティ比(フィリングファクター)を1:1(=0.5)とする周期構造を構成した例を記載している。かかる周期構造において、周期構造の周期方向の屈折率n⊥は1.19、周期構造の周期方向に直交する方向の屈折率nIIは1.31となる。
セル110a乃至110fのそれぞれにおける異方性媒質114は、互いに異なる複数種類のフィリングファクターから選択される1つのフィリングファクターを有する周期構造(凹凸形状)で構成される。具体的には、セル110a乃至110fのそれぞれにおける異方性媒質114は、位相分布が2段よりも多い位相レベル(2種類の位相を含む位相分布)、本実施形態では、4段で形成するような周期構造で構成される。
具体的には、セル110a及び110bにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターは0.93である。また、セル110c及び110dにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターは0.83である。また、セル110e及び110fにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターは0.50である。なお、セル110gは、異方性媒質114を有していないが、0.00のフィリングファクターを有する周期構造の異方性媒質114を有しているとみなすこともできる。このように、各セルにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターを互いに異なるように選択(設定)する。これにより、異方性媒質114における周期構造の周期方向と周期方向に直交する方向との屈折率差が、セル110a及び110bと、セル110c及び110dと、セル110e及び110fと、セル110gとの間で、1:2:3:0となる。
異方性媒質でX偏光とY偏光との位相差を制御する場合、一般的には、異方性媒質の厚さを調整することでX偏光とY偏光との位相差を制御する。但し、異方性媒質を構造複屈折を生じる周期構造(凹凸形状)で構成した場合には、かかる周期構造のフィリングファクターを調整することでX偏光とY偏光との位相差を制御することができる。
また、本実施形態のように、屈折率差が1:2:3:0の関係になるフィリングファクターを選択(設定)すれば、全てのセルにおける異方性媒質の厚さを一定に維持したまま、X偏光とY偏光に1:2:3:0の位相差を付加することが可能となる。図2に示す計算機ホログラム100においては、異方性媒質114は、セル110a乃至110fにおいて、一定の厚さ(同じ厚さ)を有している。
このように、複数のセル110のそれぞれは、互いに異なる複数種類のフィリングファクターから選択される1つのフィリングファクターを有する周期構造で構成された異方性媒質114を含む。等方性媒質のみで構成される従来の計算機ホログラムにおいて、フィリングファクターによって位相を制御する場合、入射光の偏光状態を変化させてしまうため、フィリングファクターによって位相を制御することは非常に困難である。一方、本実施形態の計算機ホログラム100は、意図的に入射光の偏光状態を変化させる異方性媒質114を用いているため、フィリングファクターによって位相を制御することが可能となっている。
ここで、セル110a乃至110gにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターを上述したように選択(設定)することで、屈折率差が1:2:3:0となることについて、数値を用いて具体的に説明する。
セル110a及び110bにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターは、上述したように、0.93である。従って、異方性媒質114の周期構造の周期方向の屈折率n⊥ 0.93は1.49、異方性媒質114の周期構造の周期方向に直交する方向の屈折率nII 0.93は1.53となる。また、異方性媒質114の周期構造の周期方向と周期方向に直交する方向との屈折率差Δn0.93は0.04となる。
セル110c及び110dにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターは、上述したように、0.83である。従って、異方性媒質114の周期構造の周期方向の屈折率n⊥ 0.83は1.40、異方性媒質114の周期構造の周期方向に直交する方向の屈折率nII 0.83は1.48となる。また、異方性媒質114の周期構造の周期方向と周期方向に直交する方向との屈折率差Δn0.83は0.08となる。
セル110e及びセル110fにおける異方性媒質114の周期構造のフィリングファクターは、上述したように、0.50である。従って、異方性媒質114の周期構造の周期方向の屈折率n⊥ 0.50は1.19、異方性媒質114の周期構造の周期方向に直交する方向の屈折率nII 0.50は1.31となる。また、異方性媒質114の周期構造の周期方向と周期方向に直交する方向との屈折率差Δn0.50は0.12となる。
セル110gは、上述したように、0.00のフィリングファクターを有する周期構造の異方性媒質114を有しているとみなすことができる。従って、異方性媒質114の周期構造の周期方向の屈折率n⊥ 0.00は1.00、異方性媒質114の周期構造の周期方向に直交する方向の屈折率nII 0.00は1.00となる。また、異方性媒質114の周期構造の周期方向と周期方向に直交する方向との屈折率差Δn0.00は0.00となる。
従って、異方性媒質114における周期構造の周期方向と周期方向に直交する方向との屈折率差が、セル110a及び110bと、セル110c及び110dと、セル110e及び110fと、セル110gとの間で、1:2:3:0となることが分かる。
図3を参照して、図2に示す計算機ホログラム100のセル110を構成する異方性媒質114の厚さh0及び等方性媒質の厚さh1乃至h3について説明する。図3は、X偏光とY偏光との位相の関係を示す概念図である。図3では、入射光が−Z方向に進んでいるものとする。
図3(a)は、入射光に関する図であって、X0及びY0のそれぞれは、X偏光の位相及びY偏光の位相のそれぞれを定義(決定)するための電場ベクトルを示している。図3(a)を参照するに、X0及びY0のZ座標は、X偏光の偏光成分の波面の位置及びY偏光の偏光成分の波面の位置を示していると考えることができる。また、図3(a)では、入射光がX偏光及びY偏光を含み、X偏光の位相とY偏光の位相が揃っているため、入射光が直線偏光であることも示している。
図3(b)は、計算機ホログラム100が形成する位相分布の位相を定義するための電場ベクトルを示している。図3(b)において、X0’及びY0’のそれぞれは、X0及びY0に対応しており、Y1乃至Y3は、計算機ホログラム100によってシフトされた位相を定義するための電場ベクトルを示している。従って、Y0’のX0’に対する波面のずれは0、Y1のX0’に対する波面のずれはL、Y2のX0’に対する波面のずれは2L、Y3のX0’に対する波面のずれは3Lとなる。
4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムは、一般的には、π/2(λ/4)、π(λ/2)、3π/2(3λ/4)及び0を使用する。Lの波面ずれに対応した位相差をπ/2(λ/4)とすると、2Lの波面ずれに対応した位相差はπ(λ/2)、3Lの波面ずれに対応した位相差は3π/2(3λ/4)となる。従って、位相差π/2(λ/4)、π(λ/2)、3π/2(3λ/4)及び0を、セル110a及び110bと、セル110c及び110dと、セル110e及び110fと、セル110gとで形成すればよい。これを実現するためには、図2に示す計算機ホログラム100を構成するセル110における異方性媒質114は、以下の数式2で示される厚さh0を有すればよい。
波長193nm及び屈折率1.56を用いて具体的に計算すると、異方性媒質114の厚さh0は、1206[nm]となる。
なお、位相差のみを考慮して周期構造のフィリングファクターを設定すると、例えば、セル110a及び110b、セル110c及び110d、セル110e及び110f、及び、セル110gによって形成される位相は、X偏光でもY偏光でも揃っていない。従って、計算機ホログラム100を構成するセル110a乃至110gにおいて、X偏光又はY偏光について位相を揃える必要がある。
位相を揃えるためには、X偏光の方向、即ち、周期構造の周期方向の屈折率n⊥ 0.93と屈折率n⊥ ff(ff=0.83、0.50、0.00)との屈折率差に起因する波面のずれをキャンセル(補正)すればよい。従って、屈折率の低い、即ち、異方性媒質114における周期構造のフィリングファクターが小さいセル110c乃至110gに等方性媒質112を付加すればよい。なお、セル110c及び110dにおける等方性媒質112は、以下の数式3で示す厚さh1を有する。
波長193nm及び屈折率1.56を用いて具体的に計算すると、セル110c及び110dにおける等方性媒質112の厚さh1は、194[nm]となる。同様にして、セル110e及び110fにおける等方性媒質112の厚さh2は、646[nm]となる。また、セル110gにおける等方性媒質112の厚さh3は、861[nm]となる。
このように、セル110a乃至110gのそれぞれは、X偏光及びY偏光に対して、(0,−π/2)、(−π/2,0)、(0,−π)、(−π,0)、(0,−3π/2)、(−3π/2,0)、(0,0)の位相変換を行うことが分かる。これで、計算機ホログラム100を構成する16種類のセル構造のうち7種類のセル構造について説明したことになる。また、16種類のセル構造のうち残りの9種類のセル構造は、セル110a乃至110gに示されるセル構造に、X偏光とY偏光に同一の位相を与える構造、即ち、等方性媒質112を組み合わせることで構成する。
2種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムだけを考えると、位相の進み及び遅れを示す位相の符号を任意に選択することができるため、符号について議論する必要はない。但し、本実施形態では、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムを考えているため、位相の符号も必要となり、位相の符号を考慮して説明した。
ここで、各セルの異方性媒質114における周期構造のフィリングファクターが異なることに起因する位相差(位相のずれ)をキャンセル(補正)する具体的な例について説明する。
セル110aは、上述したように、等方性媒質112を含まず、第1のフィリングファクターを有する周期構造で構成された異方性媒質114を含む。また、セル110cは、上述したように、厚さh1の等方性媒質112と、第2のフィリングファクターを有する周期構造で構成された異方性媒質114とを含む。この際、セル110cにおける等方性媒質112の厚さh1が第1のフィリングファクターと第2のフィリングファクターとが異なることに起因する位相差を補正する厚さとなるように、セル110cにおける等方性媒質112を構成する。
また、セル110cは、上述したように、厚さh1の等方性媒質112と、第1のフィリングファクターを有する周期構造で構成された異方性媒質114とを含む。セル110eは、上述したように、厚さh2の等方性媒質112と、第2のフィリングファクターを有する周期構造で構成された異方性媒質114とを含む。この際、等方性媒質112の厚さh2−厚さh1が第1のフィリングファクターと第2のフィリングファクターとが異なることに起因する位相差を補正する厚さとなるように、セル110c及びセル110eにおける等方性媒質112を構成する。
図4は、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラム100を構成するための16種類のセル構造の構成要素を示す図である。図4を参照するに、各ボックスにおいて、1行目はX偏光及びY偏光の位相変換を示し、2行目は各セルにおける異方性媒質114のフィリングファクター(即ち、図2に示すセル110a乃至110gのうちどれを選択するか)を示している。縦0.93、横0.93、縦0.83、横0.83、縦0.50、横0.50及び0のそれぞれは、セル110a乃至110gに対応している。3行目は、等方性媒質112によって遅らせるX偏光及びY偏光の両方の位相の量を示している。i=0、1、2、3とし、位相をiπ/2(iλ/4)遅らせるために必要な等方性媒質112の厚さHiは、以下の数式4で表される。
波長193nm及び屈折率1.56を用いて具体的に計算すると、等方性媒質112の厚さHiは、H0=0[nm]、H1=86[nm]、H2=172[nm]、H3=258[nm]となる。これで、計算機ホログラム100を構成する16種類のセル構造の全てについて説明したことになる。
計算機ホログラム100を構成する複数のセル110のそれぞれにおいて、異方性媒質114における周期構造を互いに異なるフィリングファクターにすることで、異方性媒質114の段数を1段にする(異方性媒質114の厚さを同じにする)ことができる。これにより、少ない段数の計算機ホログラムで設計された位相分布を形成することが可能となり、製造誤差を低減させることができる。
これまで、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムという表現を用いて説明してきたが、4種類の位相を含む位相分布とは、あくまで設計された計算機ホログラムが形成(生成)する位相分布である。従って、計算機ホログラムの製造誤差や異方性媒質の周期構造(凹凸形状)の周期(ピッチ)が荒いことに起因する位相のずれ、即ち、計算機ホログラムが形成する1段分の位相差未満のずれは、位相の種類に含める必要はない。換言すれば、計算機ホログラムが形成する位相分布に1段分未満の位相ずれが生じていても、同一の位相であるとみなす。
また、本実施形態では、計算機ホログラム100のセル構造についてのみ説明したが、図2に示すように、構造複屈折を生じる周期構造が宙に浮いた状態となっており、この状態を保持することは難しい。そこで、実際には、セル110a乃至110gは、例えば、石英などの基板上に配置される。また、図2では、セル110a乃至110gの構成を分かり易くするために、異方性媒質(構造複屈折を生じる周期構造)を上方に、等方性媒質を下方に配置しているが、これらの配置は逆にしてもよく、製造方法に適した配置を選択することができる。
次に、計算機ホログラム100の製造方法の一例について説明する。
まず、塗布装置を用いて、計算機ホログラム100の基板に感光性樹脂(フォトレジスト)を均一に塗布する。
次いで、露光装置を用いて、所定の計算機ホログラムのパターンをフォトレジストに転写した後、現像装置を用いてフォトレジストを現像し、フォトレジストによる周期構造(凹凸形状のパターン)を形成する。
次に、反応性イオンエッチング装置を用いて、フォトレジストによる凹凸形状のパターンをエッチングマスクとしてドライエッチングを施し、所定の深さの溝を形成する。そして、溶剤又はガスを用いたアッシングによって、フォトレジストを除去する。
このような工程を経ることで、上述した計算機ホログラム100を製造することができる。なお、本実施形態で説明した計算機ホログラム100の製造方法は一例であり、上述した計算機ホログラム100を製造できるのであれば、ナノインプリントなどの他の微細加工技術を用いてもよい。
以下、計算機ホログラム100の具体的な設計例や計算機ホログラム100を適用した露光装置について説明する。
[第1の実施形態]
第1の実施形態では、S偏光による光強度分布をターゲット像とし、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムの設計例を説明する。具体的には、計算機ホログラム100が、図5に示すような照明形状の光強度分布(ターゲット像)LIを形成する場合を説明する。図5は、計算機ホログラム100が形成する光強度分布(ターゲット像)LIの一例を示す図である。
図5に示す光強度分布LIにおける偏光方向PDは、複数の偏光方向PD1及びPD2を含み、同心円方向に沿っている(即ち、S偏光になっている)。以下では、図4に示す16種類のセル構造(セル)を用いて、図5に示す光強度分布LIを形成する計算機ホログラム100をどのように設計するのかを説明する。
まず、図5に示す光強度分布LIを、強度比に応じてX偏光成分とY偏光成分とに分割する。但し、図5に示す光強度分布LIはX偏光とY偏光に分割されている分布であるため、X偏光が形成する光強度分布LI1とY偏光が形成する光強度分布LI2とに分けて考えればよい。
次いで、分割されたX偏光成分及びY偏光成分のそれぞれの位相を偏光方向PDに応じて決定する。但し、光強度分布LIにおいて、光強度分布LI1と光強度分布LI2とは独立しているため、X偏光成分及びY偏光成分のそれぞれの位相を考慮する必要はない。
次いで、X偏光成分及びY偏光成分の強度及び位相に対応した計算機ホログラムを設計する。ここで、計算機ホログラムを設計するという表現を用いたが、X偏光及びY偏光のそれぞれに対応する光強度分布LI1及びLI2は、点像を中心から1ピクセルずらしただけである。従って、X偏光成分及びY偏光成分の強度及び位相に対応した計算機ホログラムの位相分布は、図6に示すように、ブレーズド格子となる。図6(a)は、X偏光成分の強度及び位相(光強度分布LI1)に対応する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。また、図6(b)は、Y偏光成分の強度及び位相(光強度分布LI2)に対応する計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
そして、X偏光成分及びY偏光成分のそれぞれに対応して設計された2つの計算機ホログラム(図6(a)及び図6(b)に示す計算機ホログラム)を統合する。なお、計算機ホログラムの統合は、図4に示す16種類のセル構造(セル)に基づいて行えばよい。
図7は、図6(a)に示す計算機ホログラムと図6(b)に示す計算機ホログラムとを統合させた計算機ホログラム100の各セルの厚さを示す図である。白黒の濃淡が各セルの厚さ(Z方向)を表しており、色が白に近い方が厚く、黒に近い方が薄いことを示している。図7に示す数値は、計算機ホログラム100における各セルの厚さを示しており、単位はμmである。但し、図7に示す数値は、波長193nmに対する屈折率が1.56の石英で異方性媒質114(周期構造)を構成した場合の例である。図7に示す計算機ホログラム100のセルの配置は、図4に示す16種類のセル構造の配置に一致している。
第1の実施形態では、計算機ホログラム100に入射させる入射光を直線偏光としている。但し、図5に示す光強度分布(ターゲット像)LIは、X偏光及びY偏光のみの偏光方向(例えば、偏光方向PD1及びPD2)を含むため、入射光のX偏光とY偏光とが同じ振幅であれば、X偏光とY偏光との位相差は任意に設定(選択)することが可能である。従って、X偏光とY偏光とが同じ振幅であれば、入射光は、円偏光、楕円偏光又は無偏光であってもよい。
第1の実施形態では、互いに異なる複数種類のフィリングファクターから選択される1つのフィリングファクターを有する周期構造でセル110a乃至110gにおける異方性媒質114を構成している。これにより、異方性媒質114の段数を1段にする(即ち、異方性媒質114の厚さを同じにする)ことができる。従って、少ない段数の計算機ホログラムで設計された位相分布を形成することが可能となり、製造誤差を低減させることができる。
このように、第1の実施形態によれば、照度ムラ及び光量損失を抑えると共に、所望の形状及び偏光状態の光強度分布(再生像)を形成する計算機ホログラムを提供することができる。
[第2の実施形態]
第2の実施形態では、S偏光による輪帯形状の光強度分布をターゲット像とし、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムの設計例を説明する。
第1の実施形態では、X偏光とY偏光に位相差を与える際に、図3に示す位相の関係を用いた。図3に示す位相の関係を用いて位相変換を行うと、上述したように、最大で3π/2(3λ/4)の位相差を、X偏光とY偏光に与える必要がある。しかしながら、位相は2πの周期性を有しているため、3π/2(3λ/4)の位相変換は、−π/2(―λ/4)の位相変換と同等である。従って、3π/2(3λ/4)の位相変換の代わりに、−π/2(―λ/4)の位相変換を用いることで、X偏光とY偏光に与える最大の位相差をπ(λ/2)にすることができる。
図8は、X偏光とY偏光との位相の新たな関係を示す概念図である。図8では、入射光が−Z方向に進んでいるものとする。
図8(a)は、入射光に関する図であって、X0及びY0のそれぞれは、X偏光の位相及びY偏光の位相のそれぞれを定義(決定)するための電場ベクトルを示している。図8(a)を参照するに、X0及びY0のZ座標は、X偏光の偏光成分の波面の位置及びY偏光の偏光成分の波面の位置を示していると考えることができる。
図8(b)は、図8(a)に示す入射光に対して、計算機ホログラム100が形成する位相分布の位相を定義するための電場ベクトルを示している。図3(b)において、X0’及びY0’のそれぞれは、X0及びY0に対応しており、Y1乃至Y3は、計算機ホログラム100によってシフトされた位相を定義するための電場ベクトルを示している。Y3は、位相差3π/2(3λ/4)に対応している。また、Y3’は、位相差3π/2(3λ/4)の代わりに用いた位相差−π/2(−λ/4)に対応している。X0’を基準とすると、Y2、Y1、Y0’及びY3’は、±2Lの範囲、即ち、位相にしてπ(λ/2)の範囲に入っていることがわかる。
図8(c)は、入射光に関する図であって、X0及びY0のそれぞれは、X偏光の位相及びY偏光の位相のそれぞれを定義(決定)するための電場ベクトルを示している。図8(c)を参照するに、X0は−X方向を向いているため、X偏光の偏光成分はY偏光の偏光成分より遅れていることを示している。X0及びY0のZ座標は、X偏光の偏光成分の波面の位置及びY偏光の偏光成分の波面の位置を示していると考えることができる。
図8(d)は、図8(c)に示す入射光に対して、計算機ホログラム100が形成する位相分布の位相を定義するための電場ベクトルを示している。
図8(c)では、波面のずれLの半分の波面のずれL’に相当する位相差π/4(λ/8)を入射光に与えていることを示している。その結果、図8(d)に示すように、X0’を基準とすると、Y2、Y1、Y0’及びY3’は、±3L/2Lの範囲、即ち、位相にして3π/4(3λ/8)の範囲に入っていることがわかる。これは、位相差π/4(λ/8)を与えた右回りの楕円偏光を入射光とすることで、計算機ホログラムによるX偏光とY偏光の位相差の最大値が3π/4(3λ/8)になることを意味する。
図8(a)及び(c)では、入射光の位相差について説明したが、これは、ターゲット像がX偏光又はY偏光の偏光方向と異なる偏光方向を含む場合(例えば、輪帯照明など)には、必要となる条件である。上述したように、ターゲット像がX偏光及びY偏光のみの偏光方向を含む場合、入射光のX偏光とY偏光とが同じ振幅であれば、X偏光とY偏光との位相差は任意に設定(選択)することが可能である。従って、X偏光とY偏光とが同じ振幅であれば、入射光は、円偏光、楕円偏光又は無偏光であってもよい。この場合であっても、計算機ホログラムによるX偏光とY偏光の位相差の最大値は3π/4(3λ/8)となる。
図9は、計算機ホログラム100を構成する16種類のセル構造のうち4種類のセル構造を示す概略斜視図である。図9に示すセル110a1乃至110d1は、図8(c)及び(d)に示す位相の関係に対応した4種類のセル構造を示している。
セル110a1及び110c1における異方性媒質114は、フィリングファクターが0.93の周期構造(凹凸形状)で構成されている。また、セル110b1及び110d1における異方性媒質114は、フィリングファクターが0.50の周期構造(凹凸形状)で構成されている。
セル110a1乃至110d1における異方性媒質114の厚さh0’は、全て同じである。従って、セル110a1及び110c1が形成するX偏光とY偏光の位相差とセル110b1及び110d1が形成するX偏光とY偏光の位相差との比は、1:3となる。なお、セル110a1及び110b1における異方性媒質114の周期構造の周期方向OA1’とセル110c1及び110d1における異方性媒質114の周期構造の周期方向OA2’とは、互いに直交する。
異方性媒質114の厚さh0’は、位相差3π/4(3λ/8)を形成する位相板の厚さであって、以下の数式5で表される。
波長193nm及び屈折率1.56を用いて具体的に計算すると、異方性媒質114の厚さh0’は、603[nm]となる。
なお、位相差のみを考慮して異方性媒質114における周期構造のフィリングファクターを設定すると、例えば、セル110a1及び110b1によって形成される位相は、X偏光でもY偏光でも揃っていない。従って、計算機ホログラム100を構成するセル110a1乃至110d1において、X偏光又はY偏光について位相を揃える必要がある。ここでは、X偏光について位相を揃える場合について説明する。
X偏光について位相を揃えるためには、X偏光の方向、即ち、異方性媒質114における周期構造の周期方向の屈折率n⊥ 0.50と屈折率n⊥ 0.93との屈折率差に起因する波面のずれをキャンセル(補正)すればよい。従って、屈折率の低い、即ち、異方性媒質114における周期構造のフィリングファクターが0.5であるセル110b1及び110d1に等方性媒質112を付加すればよい。なお、セル110b1及び110d1における等方性媒質112の厚さh1’は、数式3から求めることができる。波長193nm及び屈折率1.56を用いて具体的に計算すると、等方性媒質112の厚さh1’は、43[nm]となる。
図10は、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムを構成するための16種類のセルの構成要素を示す図である。図10を参照するに、各ボックスにおいて、1行目はX偏光及びY偏光の位相変換を示し、2行目は各セルにおける異方性媒質114のフィリングファクター(即ち、図9に示すセル110a1乃至110d1のうちどれを選択するか)を示している。縦0.93、縦0.50、横0.93及び横0.50のそれぞれは、セル110a1乃至110d1に対応している。3行目は、等方性媒質112によって遅らせるX偏光及びY偏光の両方の位相の量を示している。i=0、1、2、・・・とし、位相をiπ/4(iλ/8)遅らせるために必要な等方性媒質112の厚さHi ’は、以下の数式6で表される。
波長193nm及び屈折率1.56を用いて具体的に計算すると、等方性媒質112の厚さHiは、H0=0[nm]、H1=43[nm]、H2=86[nm]、・・・となる。なお、4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムの16種類のセル構造の構成要素を示す図10の配置は、図4の配置と一致している。
以下、図11に示すような輪帯形状の光強度分布(ターゲット像)LIを形成する計算機ホログラムの設計例を具体的に説明する。図11は、計算機ホログラム100が形成する輪帯形状の光強度分布(ターゲット像)LIの一例を示す図である。
図11に示す光強度分布LIにおける偏光方向PDは、複数の偏光方向PD1乃至PD4を含み、同心円方向に沿っている(即ち、S偏光になっている)。以下では、図10に示す16種類のセル構造(セル)を用いて、図11に示す光強度分布LIを形成する計算機ホログラム100をどのように設計するのかを説明する。
まず、図11に示す光強度分布LIを、図12(a)及び(b)に示すように、強度比に応じてX偏光成分とY偏光成分とに分割する。図12(a)及び(b)は、図11に示す光強度分布LIを強度比に応じて分割した場合のX偏光成分の強度及びY偏光成分の強度を示す図である。図11に示す光強度分布LIのように、ターゲット像がX偏光又はY偏光以外の偏光方向を含む場合、例えば、偏光方向PD3やPD4を含んでいる場合には、ターゲット像の強度(即ち、振幅)だけではなく、位相も考慮する必要がある。
次いで、分割されたX偏光成分及びY偏光成分のそれぞれの位相を偏光方向PDに応じて決定する。第2の実施形態では、所定面PSにおいてX偏光の位相とY偏光の位相とが揃っている場合を基準に考えるため、+X方向と+Y方向とを含む偏光方向(例えば、偏光方向PD4)では、X偏光とY偏光との位相を等しくする必要がある。また、+X方向と−Y方向とを含む偏光方向(例えば、偏光方向PD3)では、X偏光とY偏光との位相をπずらす必要がある。
図13(a)及び(b)は、図11に示す光強度分布LIを強度比に応じて分割した場合のX偏光成分(図12(a))の位相及びY偏光成分(図12(b))の位相を示す図である。なお、図13(a)及び(b)は、所定面PSの各領域(ピクセル)における組み合わせの一例を示している。
次いで、X偏光成分及びY偏光成分の強度及び位相に対応した計算機ホログラムを設計する。図14(a)は、図12(a)及び図13(a)のそれぞれに示すX偏光成分の強度及び位相に対応するように、ダイレクト・バイナリー・サーチ(DBS)で設計された計算機ホログラムの位相分布を示す図である。また、図14(b)は、図12(b)及び図13(b)のそれぞれに示すY偏光成分の強度及び位相に対応するように、DBSで設計された計算機ホログラムの位相分布を示す図である。
そして、X偏光成分及びY偏光成分のそれぞれに対応して設計された2つの計算機ホログラム(図14(a)及び(b)に示す計算機ホログラム)を統合する。なお、計算機ホログラムの統合は、図10に示す16種類のセル構造(セル)に基づいて行えばよい。
図15は、図9に示すセル110a1乃至110d1を選択して、図14(a)に示す計算機ホログラムと図14(b)に示す計算機ホログラムとを統合させた計算機ホログラム100の各セルの厚さを示す図である。白黒の濃淡が各セルの厚さ(Z方向)を表しており、色が白に近い方が厚く、黒に近い方が薄いことを示している。図15に示す数値は、計算機ホログラム100における各セルの厚さを示しており、単位はμmである。但し、図15に示す数値は、波長193nmに対する屈折率が1.56の石英で異方性媒質114(周期構造)を構成した場合の例である。
図15に示す計算機ホログラム100は、X偏光がY偏光より位相にしてπ/4(λ/8)遅れている右回りの楕円偏光が入射された場合に、4種類の位相を含む位相分布を形成し、図11に示す光強度分布LIを再生像として形成する。
第2の実施形態では、入射光のX偏光とY偏光に適切な位相差を与えることで、計算機ホログラムの厚さをλ/2位相板よりも薄くすることができる。
このように、第2の実施形態によれば、照度ムラ及び光量損失を抑えると共に、所望の形状及び偏光状態の光強度分布(再生像)を形成する計算機ホログラムを提供することができる。
また、第1の本実施形態及び第2の実施形態では、計算機ホログラムを構成するセルの数が少ない場合を例に説明したが、計算機ホログラムのセルの数を増加させても所望の形状及び偏光状態の光強度分布を形成することができる。計算機ホログラムを構成するセルの数を増加させることで、光強度分布(ターゲット像)を分割するピクセルサイズが小さくなり、なめらかな形状の光強度分布を形成することが可能となる。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、2種類又は4種類の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムについて説明した。但し、2種類又は4種類以外(例えば、3種類、8種類又は16種類など)の位相を含む位相分布を形成する計算機ホログラムも同様にして構成することができることは言うまでもない。
また、第1の実施形態及び第2の実施形態では、異方性媒質として周期構造(凹凸形状)という表現を用いたが、これは媒質と空気とが入射光の波長以下の周期(ピッチ)で交互に並んでいる構造のことである。空気を他の媒質に置換し、互いに異なる2つの媒質を入射光の波長以下の周期で交互に並べた構造であっても、素子の厚さを変更することで上述した周期構造と同等の機能を得ることが可能となる。従って、異方性媒質における周期構造は、空気と媒質に限らず、互いに異なる2つの媒質で構成されていてもよい。
[第3の実施形態]
第3の実施形態では、図16を参照して、本発明に係る計算機ホログラム100を適用した露光装置1について説明する。図16は、本発明の一側面としての露光装置1の構成を示す図である。
露光装置1は、本実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式でレチクル20のパターンをウエハ40に露光する投影露光装置である。但し、露光装置1は、ステップ・アンド・リピート方式やその他の露光方式も適用することができる。
露光装置1は、図16に示すように、照明装置10と、レチクル20を支持するレチクルステージ(不図示)と、投影光学系30と、ウエハ40を支持するウエハステージ(不図示)とを有する。
照明装置10は、転写用の回路パターンが形成されたレチクル20を照明し、光源16と、照明光学系18とを有する。
光源16は、例えば、波長約193nmのArFエキシマレーザー、波長約248nmのKrFエキシマレーザーなどのエキシマレーザーを使用する。但し、光源16は、エキシマレーザーに限定されず、波長約157nmのF2レーザーや狭帯域化した水銀ランプなどを使用してもよい。
照明光学系18は、光源16からの光を用いてレチクル20を照明する光学系であり、本実施形態では、所定の照度を確保しながら所定の偏光状態でレチクル20を変形照明する。照明光学系18は、引き回し光学系181と、ビーム整形光学系182と、偏光制御部183と、位相制御部184と、射出角度保存光学素子185と、リレー光学系186と、多光束発生部187と、計算機ホログラム100とを含む。また、照明光学系18は、リレー光学系188と、アパーチャ189と、ズーム光学系190と、多光束発生部191と、開口絞り192と、照射部193とを含む。
引き回し光学系181は、光源16からの光を偏向してビーム整形光学系182に導光する。ビーム整形光学系182は、光源16からの光の断面形状の寸法の縦横比率を所望の値に変換して(例えば、断面形状を長方形から正方形にして)、光源16からの光の断面形状を所望の形状に整形する。ビーム整形光学系182は、多光束発生部187を照明するために必要な大きさ及び発散角を有する光束を形成する。
偏光制御部183は、直線偏光子などで構成され、不要な偏光成分を除去する機能を有する。偏光制御部183で除去(遮光)される偏光成分を最小限にすることで、光源16からの光を効率よく所望の直線偏光にすることができる。
位相制御部184は、偏光制御部183によって直線偏光となった光を、計算機ホログラム100に適した光(入射光)に変換する。位相制御部184は、例えば、λ/4の位相差を与えて円偏光に変換したり、λ/4未満の位相差を与えて楕円偏光に変換したり、位相差を与えずに直線偏光を維持したりする。
射出角度保存光学素子185は、例えば、オプティカルインテグレータ(複数の微小レンズより構成されるハエの目レンズやファイバー束等)で構成され、一定の発散角度で光を射出する。
リレー光学系186は、射出角度保存光学素子185から射出した光を多光束発生部187に集光する。射出角度保存光学素子185の射出面と多光束発生部187の入射面は、リレー光学系186によって、互いにフーリエ変換の関係(物体面と瞳面又は瞳面と像面の関係)になっている。
多光束発生部187は、計算機ホログラム100を均一に照明するためのオプティカルインテグレータ(複数の微小レンズより構成されるハエの目レンズやファイバー束等)で構成される。多光束発生部187の射出面は、複数の点光源からなる光源面を形成する。多光束発生部187から射出された光は、計算機ホログラム100に入射する。
計算機ホログラム100は、リレー光学系188を介して、アパーチャ189の位置に、所望の光強度分布(例えば、図5や図11に示すような光強度分布IL)を形成する。計算機ホログラム100は、上述した通りのいかなる形態をも適用可能であり、ここでの詳細な説明は省略する。
アパーチャ189は、計算機ホログラム100によって形成される光強度分布のみを通過させる機能を有する。計算機ホログラム100とアパーチャ189とは、互いにフーリエ変換面の関係になるように配置されている。
ズーム光学系190は、計算機ホログラム100によって形成される光強度分布を所定の倍率で拡大して多光束発生部191に投影する。
多光束発生部191は、照明光学系18の瞳面に配置され、アパーチャ189の位置に形成された光強度分布に対応した光源像(有効光源分布)を射出面に形成する。多光束発生部191は、本実施形態では、ハエの目レンズやシリンドリカルレンズアレイなどのオプティカルインテグレータで構成される。なお、多光束発生部191の射出面近傍には、開口絞り192が配置される。
照射部193は、コンデンサー光学系等を有し、多光束発生部191の射出面に形成される有効光源分布でレチクル20を照明する。
レチクル20は、回路パターンを有し、図示しないレチクルステージに支持及び駆動される。レチクル20から発せされた回折光は、投影光学系30を介して、ウエハ40に投影される。露光装置1は、ステップ・アンド・スキャン方式の露光装置であるため、レチクル20とウエハ40とを走査することによって、レチクル20のパターンをウエハ40に転写する。
投影光学系30は、レチクル20のパターンをウエハ40に投影する光学系である。投影光学系30は、屈折系、反射屈折系、或いは、反射系を使用することができる。
ウエハ40は、レチクル20のパターンが投影(転写)される基板であり、図示しないウエハステージに支持及び駆動される。但し、ウエハ40の代わりにガラスプレートやその他の基板を用いることもできる。ウエハ40には、フォトレジストが塗布されている。
計算機ホログラム100は、1つの偏光方向の波面だけではなく、全面にわたってX偏光の波面及びY偏光の波面のそれぞれについて互いに異なる位相分布を形成するため、光量損失を実質的に発生させることなく、光強度分布を形成することができる。
露光において、光源16から発せられた光は、照明光学系18によってレチクル20を照明する。レチクル20のパターンを反映する光は、投影光学系30によってウエハ40上に結像する。露光装置1が使用する照明光学系18は、計算機ホログラム100によって、照明ムラ及び光量損失を抑えると共に、所望の形状及び偏光状態の光強度分布を形成することができる。従って、露光装置1は、高いスループットで経済性よく高品位なデバイス(半導体素子、LCD素子、撮像素子(CCDなど)、薄膜磁気ヘッドなど)を提供することができる。かかるデバイスは、露光装置を用いてフォトレジスト(感光剤)が塗布された基板(ウエハ、ガラスプレート等)を露光する工程と、露光された基板を現像する工程と、その他の周知の工程と、を経ることによって製造される。
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。