JP5077813B2 - 核酸の増幅方法 - Google Patents
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Description
現在、最も一般的に使用されている核酸の増幅手法としては、温度サイクルを利用して鋳型の変性、鋳型へのプライマーのアニーリング、DNAポリメラーゼ伸長反応のサイクルを数十回行い、プライマー対によって挟まれる領域の核酸を増幅するPCR法が挙げられる。しかし、温度サイクルを利用して核酸を増幅する方法では、温度サイクルを制御するための機器(サーマルサイクラーなど)が高価であることや、核酸の増幅に最適な温度サイクルの検討・設定などが必要とされる。
よって近年、温度サイクルを利用せずに一定温度条件下でDNAポリメラーゼ伸長反応を進行させる核酸増幅方法が考えられてきた。その代表的なものがLAMP(Loop-Mediated Isothermal Amplification)法である(特許文献1)。LAMP法では、標的遺伝子の6つの領域に対して、合成されるDNA鎖の3'末端が常にループを形成して次のDNA増幅反応の複製起点となるような、4つのプライマーを設計して用い、標的遺伝子の核酸分子を増幅させている。
また、特許文献2では、標的遺伝子中の2箇所の不連続な隣接領域に相補的な塩基配列を5'末端及び3'末端に有し且つ標的遺伝子に相補的でないリンカー領域を有する直鎖DNA分子をプローブとして設計し、標的遺伝子に対して前記プローブをループ状にハイブリダイズさせ並置する5'末端と3'末端との間をリガーゼで連結して環状化させ、前記リンカー領域に相補的なプライマーを用いて、環状化した前記プローブの塩基配列を増幅する方法について記載する。
しかしながら、これら既存の方法にはコスト、検出方法の設計及び操作、検出感度といった点において課題も残されており、これらの課題を充分に満足する新たな核酸増幅方法及び検出方法が必要とされている。
また本発明の目的は、前記増幅方法を利用して、試料中の標的遺伝子の存在の有無を迅速且つ明確に検出することができる、高感度な検出方法を提供することである。
また本発明の更なる目的は、これらの方法に有用な特定のプライマーと環状1本鎖DNAとの組合せを含む、核酸増幅用キット及び検出用キットを提供することである。
また本発明者は、上述する核酸の増幅方法を利用して、試料中の標的遺伝子の有無、特には、生体又は環境に由来する試料中のアレルゲン、ウイルス、病原菌等といった微生物の存在の有無を、迅速且つ高感度に検出できることを見出した。
これらの方法、及びこれらの方法に有用なキットは、具体的には以下の通りである。
(a)増幅対象の塩基配列を含むDNAを鋳型とし、前記塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマー対を用いてDNAポリメラーゼ伸長反応を行って、直鎖状DNA断片を得ること;及び
(b)前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNAを鋳型とし、(a)により得られた直鎖状DNA断片の3'末端を複製起点として、鎖置換型DNAポリメラーゼ伸長反応を連鎖的に行うこと;
を含むことを特徴とする。
(a)と(b)とは、使用する鎖置換型DNAポリメラーゼが活性を有する温度で行われるが、好ましくは、(a)と(b)とを同一温度条件下で行う。
また、好ましくは、増幅対象の塩基配列を含むDNAが、RNAを鋳型とする逆転写によって得られたDNA鎖を含むものである。
(i)増幅対象の塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマー対;
(ii)前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA;
(iii)鎖置換型DNAポリメラーゼ;
(iv)dNTP;
を含む、核酸増幅用キットである。
(a)標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー対、前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA、鎖置換型DNAポリメラーゼ及びdNTPを、検出対象の試料に添加して、前記鎖置換型DNAポリメラーゼが活性を有する温度にて酵素反応させること;
(b)酵素反応させた試料中で、核酸が増幅されたか否かを確認すること;及び
(c)核酸が増幅された場合に、検出対象の試料中に2本鎖の標的核酸分子が存在すると決定すること;
を含む。
(a)標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー、標的核酸分子の前記標的塩基配列の領域と別の領域の標的塩基配列を有するプライマー、これらのプライマーの少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA、逆転写酵素、鎖置換型DNAポリメラーゼ及びdNTPを、検出対象の試料に添加して、前記鎖置換型DNAポリメラーゼが活性を有する温度にて酵素反応させること;
(b)酵素反応させた試料中で、核酸が増幅されたか否かを確認すること;及び
(d)核酸が増幅された場合に、検出対象の試料中に1本鎖の標的核酸分子が存在すると決定すること;
を含む。
(i)2本鎖の標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー対;
(ii)前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA;
(iii)鎖置換型DNAポリメラーゼ;及び
(iv)dNTP;
を含む、2本鎖の標的核酸分子の検出用キットである。
(i)1本鎖の標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー
(ii)標的核酸分子の前記標的塩基配列の領域と異なる領域の標的塩基配列を有するプライマー;
(iii)(i)及び(ii)のプライマーの少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA;
(iv)鎖置換型DNAポリメラーゼ;及び
(v)dNTP;
を含む、1本鎖の標的核酸分子の検出用キットである。
好ましくは、(vi)逆転写酵素を更に含む、前記検出用キットである。
また本発明は、前記核酸増幅方法を利用して標的遺伝子の有無を検出する、簡易的且つ迅速な検出方法を提供する。この検出方法を用いることにより、病原性微生物やウイルスその他に特異的な標的遺伝子を簡易的な操作で迅速且つ明確に検出することができる。
また本発明は、これらの方法に有用な、プライマーと環状1本鎖DNAとの組合せを提供する。
本発明の増幅対象の塩基配列(本明細書中では「標的塩基配列」とも呼ぶ)を含む鋳型DNAは1本鎖又は2本鎖の直鎖状又は環状のDNAであり、この鋳型DNA中に含まれる増幅対象の塩基配列は、鋳型DNA中において特異的な領域の塩基配列である。また、本発明の方法は、逆転写酵素を用いてRNA分子に相補的な塩基配列を合成したcDNAを鋳型DNAとして行うこともできる。この場合には、本発明の増幅対象の塩基配列は、RNA分子中ウラシル(U)であった塩基がチミン(T)に置き換わった塩基配列である。
本発明の方法は、少なくとも1つのプライマー対を用いて行うことができ、複数のプライマー対を用いる場合、その数に上限はないが、例えば入れ子として設計して用いることもできる。例えば1〜5対、好ましくは1〜3対、より好ましくは2〜3対、特に好ましくは2対である。
各プライマーは、対をなすプライマーや他のプライマー対のプライマーと同一の配列や相補的な配列を有していない方が好ましい。
対をなすプライマーが結合する領域間の相対距離(塩基数)は、本発明の反応が進行するのであれば特に制限はないが、最も内側のプライマー対のプライマーが結合する領域間の相対距離はより少ない方が好ましく、その外側のプライマー対と隣接する内側のプライマー対とが結合する領域間の相対距離もより少ない方が好ましい。上記相対距離(塩基数)は、好ましくは0b〜1kbであり、より好ましくは0〜100bである。
本発明に使用するプライマーとしては、鋳型DNAと相補的な2重鎖を形成し得るのであれば特に制限はないが、8〜40merのものが好ましく、より好ましくは16〜25merのものである。また、鋳型DNA(標的塩基配列)又はプライマーのGC含量、二次構造のとり易さ等、その他プライマー設計において一般的に考慮される性質についても、当業者の技術常識の範囲内のものである。このようなプライマーの設計及び合成は、本技術分野で通常用いられている設計プログラム等の手法を用いて行うことができる。
逆転写酵素を用いてRNA分子中の塩基配列を合成したcDNAを鋳型DNAとして用いる場合も、同様に、該RNA分子が2本鎖であるか1本鎖であるかに応じて、上述のようにプライマー対を設計することができる。
環状1本鎖DNA中、プライマーと同一の塩基配列以外の領域の塩基配列は、本発明が特異的に反応するのであれば特に制限はないが、少ない方が好ましい。また、3'→5'エキソヌクレア−ゼ活性を持たない鎖置換型DNAポリメラーゼを使用する場合、プライマーと同一の塩基配列の5'側にチミン(T)を1塩基付加することが好ましい。
環状1本鎖DNAの鎖長は、本発明が特異的に反応するのであれば特に制限はないが、16b〜10kbのものが好ましく、より好ましくは20〜100bである。このような環状1本鎖DNAの設計及び合成は、本技術分野で通常用いられている設計プログラム等の手法を用いて行うことができる。
本発明の方法で使用するDNAポリメラーゼは鎖置換型5'-3'DNAポリメラーゼ活性を有するものであり、塩基対の相補鎖を正しく合成するものが好ましい。また3'→5'エキソヌクレア−ゼ活性は持っていても良いが持っていないものが好ましく、5'→3'エキソヌクレア−ゼ活性は持たないものが好ましい。DNAポリメラーゼの至適温度は、50〜90℃であるのが好ましく、より好ましくは60〜72℃である。このようなDNAポリメラーゼとしては、例えばBacillus stearothermophilus由来のBst DNA Polymerase large fragment、Pyrococcus属細菌由来のDeep VentR (R) (exo-) DNA polymerase(New England Biolabs Incorporation製)、Herculase(R)II Fusion DNA polumerase(STRATAGENE社製)、Thermococcus属由来のVentR (R) (exo-) DNA Polymerase、TherminatorTM DNA Polymerase 、TherminatorTMII DNA Polymerase (New England Biolabs Incorporation製)、KOD Dash DNA polymerase (東洋紡社製)といったものが、単独で、あるいはキットの形態で入手可能である。互いの酵素活性を妨げない限りは、2種類以上のDNAポリメラーゼを併用することもできる。
上述するような適切なバッファーに、鋳型DNA、本発明のプライマー対、本発明の環状1本鎖DNA、鎖置換型DNAポリメラーゼ及び基質となる4種のデオキシリボヌクレオシド3リン酸(dNTP:dATP、dCTP、dGTP、dTTP)を添加し、この反応溶液を鎖置換型DNAポリメラーゼが該酵素活性を有する温度、例えば50〜90℃、好ましくは60〜72℃に保つことによって、温度サイクル制御なしに同一容器内で1回の操作にて核酸を効率的に増幅することができる。また、複数のプライマー対を用いる場合は、本発明の反応温度条件をさらに低い条件、例えば30〜50℃に設定することができる。DNAポリメラーゼ伸長反応の温度条件は、用いる鎖置換型DNAポリメラーゼの活性を有する温度に依存する。使用する鎖置換型DNAポリメラーゼが該酵素活性を有する温度の範囲内であれば、必ずしも増幅反応全体を通して同一温度(等温)を保たなくてもよいが、増幅反応全体を通して同一温度(等温)に保つこと(同一温度条件下)が好ましい。
核酸の増幅は、DNAポリメラーゼ伸長反応で核酸が増幅される際に反応溶液中で生成するピロリン酸マグネシウムの沈殿によって確認することができる(国際公開第2001/083817号パンフレット)。また、本技術分野で通常使用される核酸染色蛍光色素など、例えばエチジウムブロミドやSYBR Green I(CAMBREX社製)等を常法に従って用いて、蛍光の有無や強度により、核酸の増幅を確認することもできる。
まず、第一段階で、増幅対象の特異的な塩基配列を含む鋳型DNAとプライマー対とのDNAポリメラーゼ伸長反応によって、直鎖状DNA断片が得られる(図1)。
2本鎖の鋳型DNA中の2つの特異的な塩基配列の領域A、Bを増幅対象とする場合、各領域の一方の鎖上の配列をA1及びB1、他方の鎖上の配列をA2及びB2と規定する。プライマー対のうち、一方のプライマーはA1と相補的な塩基配列、すなわちA2の塩基配列を有するように設計し、他方のプライマーはB2と相補的な塩基配列、すなわちB1を有するように設計する(図1、(i))。
このプライマー対と前記鋳型DNAとのDNAポリメラーゼ伸長反応によって、5'末端にA2と同一の塩基配列を有し3'末端にB2と同一の塩基配列を有する直鎖状DNA断片と、5'末端にB1と同一の塩基配列を有し3'末端にA1と同一の塩基配列を有する直鎖状DNA断片との組合せが得られる。この得られた直鎖状DNA断片が、第二段階が開始される際の複製起点となる(図1、(ii))。
第二段階で鋳型となる環状1本鎖DNAは、プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列(A2及び/又はB1)を含むように設計する(図2、(i))。図2では、A2及びB1の各々と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNAを示している。上述するように、得られる直鎖状DNA断片は各々3'末端にプライマー対と相補的な塩基配列(A1又はB2)を有するため、その直鎖状DNA断片の3'末端領域(A1、B2)が、環状1本鎖DNA中のプライマー対と同一の塩基配列(A2、B1)領域に対してアニールして複製起点となり、環状1本鎖DNAを鋳型としてDNAポリメラーゼ伸長反応が起こる(図2、(i))。合成されたDNA鎖は、鎖置換型DNAポリメラーゼによって剥されながらローリングサークル様に伸長する(図2、(ii))。その剥されて伸長するDNA鎖に対して、反応溶液中に存在するプライマーがアニールして複製起点となってDNAポリメラーゼ伸長反応が起こり(図2、(iii))、前記プライマーを複製起点として合成し剥されたDNA鎖は、反応溶液中に存在するプライマー又は環状1本鎖DNAに対してアニールしてDNAポリメラーゼ伸長反応が起こる(図2、(iv))。
上で説明する第一段階の過程と第二段階の過程は、一旦、第二段階を開始する引き金となる直鎖状DNA断片が合成された後は並列して同時進行する。また、このように連鎖的な増幅反応が進行し、結果として、増幅対象の特異的な塩基配列を1回又は複数回反復して含む、多様な鎖長のDNA鎖が合成される。
標的遺伝子が検出される試料としては、例えば、ヒトその他動物由来の体液や組織片から調製したものであってもよく、環境由来の土壌や海水、植物から調製したものであってもよく、工場で製造・加工された飲料や食料品、医薬品などであってもよい。これらは、直接、あるいは必要に応じて、適当な操作を用いて核酸(DNA,RNA)抽出液として調製して、検出対象の試料として本発明の検出方法に用いることができる。このような試料の調製は、一般的な核酸検出方法に使用される通常の手法に従って行うことができる。
標的遺伝子は、微生物(細菌、カビなど)、アレルゲン(例えばダニ、花粉など)、ウイルスに特異的なものでもよく、またヒトその他動物のゲノム中の野生型又は変異型の遺伝子であってもよい。
2本鎖の標的核酸分子を検出する場合には、
(a)標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー対、前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA、鎖置換型DNAポリメラーゼ及びdNTPを、検出対象の試料に添加して、前記鎖置換型DNAポリメラーゼが活性を有する温度にて酵素反応させること;
(b)酵素反応させた試料中で、核酸が増幅されたか否かを確認すること;及び
(c)核酸が増幅された場合に、検出対象の試料中に2本鎖の標的核酸分子が存在すると決定すること;によって、標的核酸分子を検出することができる。
1本鎖の標的核酸分子を検出する場合には、2本鎖の標的核酸分子を検出する場合における「標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー対」及び「前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA」は、それぞれ「標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマーと、標的核酸分子の前記標的塩基配列の領域と異なる領域の標的塩基配列を有するプライマーとの組合せ」及び「これらのプライマーの少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA」に置き換えて、標的核酸分子が2本鎖の場合と同様の操作により1本鎖の標的核酸分子を検出することができる。
核酸の増幅は、上述と同様に、ピロリン酸マグネシウムの沈殿や、本技術分野で通常使用される核酸染色蛍光色素などを用いて、沈殿や蛍光の有無を指標として確認することができる。また、ピロリン酸マグネシウムの生成量や蛍光の強度を指標として、検出対象の試料中に存在する標的遺伝子の核酸量の多少について比較することもできる。
このようにして、本検出方法を用いることにより、試料中に存在する標的遺伝子の核酸がごく微量であっても、同一の反応容器内で1回の操作にて、標的遺伝子中の特異的塩基配列を効率的に増幅して検出することができる。本検出方法は、例えばマイクロチューブ、マイクロウェルプレート、マイクロチップなどの反応容器内で行ってもよく、またHTS(High-Throughput Screening)などの技術を用いてもよい。
以下、本発明を実施例により具体的に説明する。
(TEバッファー組成)
4mmol/l Tris−HCl(トリス-ヒドロキシメチル-アミノメタン)塩酸
1mmol/l エチレンジアミン四酢酸2ナトリウム2水和物(EDTA)
pH8.0に調整
(1.2%TAE電気泳動用ゲル)
1.2%アガロース
4mmol/l Tris−HCl
1mmol/l EDTA
1mmol/l 酢酸
(2.0%TAE電気泳動用ゲル)
2.0%アガロース
4mmol/l Tris−HCl
1mmol/l EDTA
1mmol/l 酢酸
[標的の調製方法]
下記に示す酵素製品、Kit製品は、特別に記さない限り取扱説明書に従った。
pUC19(タカラバイオ社)を制限酵素DraI(タカラバイオ社)処理後、1.2%TAE電気泳動用ゲルを使用し、電気泳動漕であるMupid-ex(アドバンス社)を用いて電気泳動(100V、50分)を行った。
その後、核酸染色試薬SYBR GreenI(CAMBREX社製)で染色、ゲルからの目的DNA断片(約2kb)の切り出し、DNA抽出キットNucleoSpin Extract Kit(MACHEREY-NAGEL社)を用いて回収し、標的調製液(10mmol/l)とした。
表1のプライマー2本(43C:75nmol/l、Bind:1.6nmol/l)と耐熱性のDNA連結酵素(耐熱性リガーゼ)を混合し、下記に示した温度で酵素反応を行った。
95℃、2分間 −工程1
95℃、10秒間 −工程2
60℃、10秒間 −工程3 工程2〜4を25サイクル
70℃、10分間 −工程4
98℃、2分間 −工程5
4℃、∞ −工程6
反応終了後、Genとるくん(タカラバイオ社)を添加し、エタノール沈殿を行った。その後、得られたDNAのペレットを75%エタノールで2回、99.5%エタノールで1回洗浄し、65℃で乾燥させた後に、超純水で30μlに溶解した。
その溶解液にExonucleaseI(タカラバイオ社)を添加し、37℃、60分反応させた後、エタノール沈殿を行った。得られたDNAのペレットを75%エタノールで2回、99.5%エタノールで1回洗浄し、65℃で乾燥させた後に、TEバッファーで30μlに溶解し、環状1本鎖DNA調製液とした。
遺伝子検出に用いたプライマーを表2に記す。共にHPLC精製を行っている(Invitrogen社製)。
遺伝子検出反応には、下記を使用した。
酵素:Bst DNA ポリメラーゼ(New England Biolabs Incorporation製)4U/25μl
標的:標的調製液 0.5μl/25μl
λゲノム:λゲノム(タカラバイオ社) 0.5ng/μl
(反応バッファー組成)
1/10量 Bst DNA ポリメラーゼ付属のバッファー
1μmol/l 表2のプライマー(Forward-in、Reverse-in)
0.5mmol/l each dNTP
1μmol/l 環状1本鎖DNA調製液
5% Dimethylsulfoxide
各試薬を表3の条件で混合し、95℃にて5分間インキュベーションした後、4℃に急冷し、酵素を添加後、63℃にて60分間インキュベーションした。
核酸染色試薬SYBR GreenIを1/10に希釈し、サンプル25μlに対して1μlを混合し、302nmの波長を当て高感度フィルターで観察した。結果を表3と図3、4に示す。
以上の実験1〜6の結果から、酵素+標的を含むもの(実験3および実験6)では迅速な核酸の増幅が確認された。一方、酵素は存在するが標的を含まないもの(実験2および実験5)では、核酸の増幅は確認されなかった。また、標的配列以外のDNAを含んでいても核酸の増幅は確認されなかった(実験5)ことから、配列を特異的に認識していることが確認された。尚、酵素を含んでいないもの(実験1および実験4)については核酸の増幅は起こっていない。
[特異的遺伝子増幅]
例1と同様に調製した環状1本鎖DNA調製液を用いて特異的遺伝子増幅を行った。
遺伝子検出に用いたプライマーを表4に記す。共にHPLC精製を行っている(Invitrogen社製)。
遺伝子検出反応には、下記を使用した。
酵素:Bst DNA ポリメラーゼ(New England Biolabs Incorporation製)4U/25μl
標的:標的調製液 0.5μl/25μl
λゲノム:λゲノム(タカラバイオ社) 0.5ng/μl
(反応バッファー組成)
1/10量 Bst DNA ポリメラーゼ付属のバッファー
1μmol/l 表4のプライマー(Forward-in、Reverse-in)
0.2μmol/l 表4のプライマー(Forward-out、Reverse-out)
0.5mmol/l each dNTP
1μmol/l 環状1本鎖DNA調製液
5% Dimethylsulfoxide
各試薬を表5の条件で混合し、95℃にて5分間インキュベーションした後、4℃に急冷し、酵素を添加後、63℃にて60分間インキュベーションした。
核酸染色試薬SYBR GreenIを1/10に希釈し、サンプル25μlに対して1μlを混合し、302nmの波長を当て高感度フィルターで観察した。結果を表5に示す。
以上の実験7〜12の結果から、酵素+標的を含むもの(実験9および実験12)では迅速な核酸の増幅が確認された。一方、酵素は存在するが標的を含まないもの(実験8および実験11)では、核酸の増幅は確認されなかった。また、標的配列以外のDNAを含んでいても核酸の増幅は確認されなかった(実験11)ことから、配列を特異的に認識していることが確認された。尚、酵素を含んでいないもの(実験7および実験10)については核酸の増幅は起こっていない。
上記実施例のように、本発明により核酸配列を特異的に認識し、かつ迅速な核酸増幅が可能であることが示された。
Claims (9)
- (a)増幅対象の塩基配列を含む鋳型DNAと、前記塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマー対とを用いてDNAポリメラーゼ伸長反応を行って、直鎖状DNA断片を得ること;及び
(b)前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNAを鋳型とし、(a)により得られた直鎖状DNA断片の3'末端を複製起点として、鎖置換型DNAポリメラーゼ伸長反応を行うこと;
を含むことを特徴とする、核酸の増幅方法。 - (a)と(b)とを同一温度条件下で行う、請求項1記載の方法。
- 増幅対象の塩基配列を含む鋳型DNAが、RNAを鋳型とする逆転写によって得られたDNA鎖を含むものである、請求項1又は2に記載の方法。
- (i)増幅対象の塩基配列に相補的な塩基配列を有するプライマー対;
(ii)前記プライマー対と同一の塩基配列を同一分子上に含む環状1本鎖DNA;
(iii)鎖置換型DNAポリメラーゼ;
(iv)dNTP;
を含む、核酸増幅用キット。 - 2本鎖の標的核酸分子を検出する方法であって、
(a)標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー対、前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA、鎖置換型DNAポリメラーゼ及びdNTPを、検出対象の試料に添加して、前記鎖置換型DNAポリメラーゼが活性を有する温度にて酵素反応させること;
(b)酵素反応させた試料中で、核酸が増幅されたか否かを確認すること;及び
(c)核酸が増幅された場合に、検出対象の試料中に2本鎖の標的核酸分子が存在すると決定すること;
を含む前記方法。 - 1本鎖の標的核酸分子を検出する方法であって、
(a)標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー、標的核酸分子の前記標的塩基配列の領域と異なる領域の標的塩基配列を有するプライマー、これらのプライマーの少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA、鎖置換型DNAポリメラーゼ及びdNTPを、検出対象の試料に添加して、前記鎖置換型DNAポリメラーゼが活性を有する温度にて酵素反応させること;
(b)酵素反応させた試料中で、核酸が増幅されたか否かを確認すること;及び
(d)核酸が増幅された場合に、検出対象の試料中に1本鎖の標的核酸分子が存在すると決定すること;
を含む前記方法。 - (i)2本鎖の標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー対;
(ii)前記プライマー対の少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA;
(iii)鎖置換型DNAポリメラーゼ;及び
(iv)dNTP;
を含む、2本鎖の標的核酸分子の検出用キット。 - (i)1本鎖の標的核酸分子の標的塩基配列に対して相補的な塩基配列を有するプライマー
(ii)標的核酸分子の前記標的塩基配列の領域と異なる領域の標的塩基配列を有するプライマー;
(iii)(i)及び(ii)のプライマーの少なくとも一方と同一の塩基配列を含む環状1本鎖DNA;
(iv)鎖置換型DNAポリメラーゼ;及び
(v)dNTP;
を含む、1本鎖の標的核酸分子の検出用キット。 - (vi)逆転写酵素を更に含む、請求項8記載の検出用キット。
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