以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1実施形態について説明する。
(装置構成)
図1は、第1実施形態に係る画像表示装置を適用した、液晶プロジェクタ1000の概略構成を示すブロック図である。なお、図1は液晶プロジェクタ1000における光学系構成を抜粋したものであり、図1においては、液晶プロジェクタ1000を駆動する駆動回路100(図2)については図示を省略している。
液晶プロジェクタ1000は、主に、光源1100と、ダイクロイックミラー1108a、1108bと、反射ミラー1106と、リレーレンズ1122、1123、1124と、液晶パネル14R、14G、14Bと、クロスダイクロイックプリズム1112と、投射レンズ系1114と、輝度センサ200と、を有する。なお、液晶プロジェクタ1000は、液晶ライトバルブとして機能する3つの液晶パネル14R、14G、14Bを用いた、3板式の投射型液晶装置として構成されている。
光源1100は、照明装置に相当し、メタルハライド等のランプ1102とランプ1102の光を反射するリフレクタ1101とから構成されている。青色光・緑色光反射のダイクロイックミラー1108aは、光源1100からの白色光のうちの赤色光のみを透過させると共に、青色光と緑色光とを反射する。透過した赤色光は反射ミラー1106で反射され、液晶パネル14R(以下、「赤色用液晶パネル14R」とも呼ぶ。)に入射される。
一方、ダイクロイックミラー1108aで反射された光のうち、緑色光は、緑色光反射のダイクロイックミラー1108bによって反射され、液晶パネル14G(以下、「緑色用液晶パネル14G」とも呼ぶ。)に入射される。一方、青色光は、ダイクロイックミラー1108bも透過する。青色光に対しては、光路長が緑色光、赤色光と異なるのを補償するために、入射レンズ1122、リレーレンズ1123、出射レンズ1124を含むリレーレンズ系からなる導光手段1121が設けられ、これらを介して青色光が液晶パネル14B(以下、「青色用液晶パネル14B」とも呼ぶ。)に入射される。
赤色用液晶パネル14R、緑色用液晶パネル14G、及び青色用液晶パネル14Bは、いわゆる液晶ライトバルブとして機能する。以下では、これらを区別しないで用いる場合には、単に「液晶パネル14」と呼ぶ。液晶パネル14は、一対の透明なガラス基板に電気光学物質である液晶を密閉封入したものである。液晶パネル14R,G,Bは、それぞれ供給された各色光ごとの画像信号に応じて入射光を変調する。なお、液晶パネル14R,G,Bは、それぞれが白黒表示の液晶パネルであり、共通の液晶パネルが用いられている。
各液晶パネル14により変調された3つの光はクロスダイクロイックプリズム1112に入射する。このプリズムは、4つの直角プリズムが貼り合わされ、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に形成されたものである。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成されて、カラー画像を表す光が形成される。合成された光は、投射光学系である投射レンズ系1114によってスクリーン1120上に投射され、画像が拡大されて表示される。なお、本発明における表示手段は、上記した3つの液晶ライトバルブ14(L/V:Light Valve)と、当該液晶ライトバルブ14が投射する投射光によって表示部としてのスクリーン1120に形成された投射画像とに相当する。また、以下の記述においてスクリーン1120に写し出された表示画像のことを投射画像として説明する。
また、液晶プロジェクタ1000は輝度センサ200を有する。明るさ情報収集手段としての輝度センサ200は、液晶プロジェクタ1000の前面に設置されており、液晶プロジェクタ1000による投射像のうち画面中心部の輝度を測定するように設置されている。なお、輝度の測定箇所は、画面中心部に限定するものではなく、投射画像の輝度を測定できる場所であれば、画面の周辺部位であっても良い。輝度センサ200は、例えばCCD(Charge Coupled Device)やフォトダイオードによって構成される。なお、フォトダイオードなどを用いる場合には、予めキャリブレーションしておき、輝度の絶対値が得られるようにしておくことが好ましい。
次に、図2を参照して、前述した液晶プロジェクタ1000を表示駆動する駆動回路について説明する。図2は、第1実施形態に係る駆動回路100の概略構成を示すブロック図である。
駆動回路100は、主に、コントローラ10と、フレーム周波数判定部201と、フリッカ解析部202と、パラメータ生成部203と、ADコンバータ210と、User I/Fコントローラ212と、投射レンズドライバ213と、記憶部250と、を有する。駆動回路100は、液晶プロジェクタ1000に搭載され、液晶プロジェクタ1000の液晶パネル14や投射レンズ系1114などを制御する。本実施形態では、駆動回路100は、投射画像の明るさ情報(輝度)を解析することによって投射画像のフリッカ知覚を予測し、この結果に基づいて投射画像の発光特性を調整する処理を行う。なお、フレーム周波数判定部201、フリッカ解析部202、パラメータ生成部203、ADコンバータ210、及びUser I/Fコントローラ212、並びに記憶部250は、発光特性調整手段300を構成する。
コントローラ10は、基本的には、画像信号Dを取得し、この画像信号Dに基づいて赤色用液晶パネル14R、緑色用液晶パネル14G、及び青色用液晶パネル14Bを制御する。なお、コントローラ10は、実際には、後述する走査線駆動回路及びデータ線駆動回路を制御することによって、液晶パネル14に対する制御を実行する。
フレーム周波数判定部201は、画像信号Dに含まれる垂直同期信号(垂直走査信号)の間隔を解析することによって、画像信号Dのフレーム周波数を判定する。そして、フレーム周波数判定部201は、フレーム周波数に対応する信号s2をフリッカ解析部202に供給する。例えば、フレーム周波数判定部201は、フレーム周波数として60(Hz)や50(Hz)などを得る。
フリッカ解析部202は、液晶プロジェクタ1000による投射画像の輝度を取得し、この輝度に基づいて投射画像におけるフリッカ知覚を解析する処理を行う。具体的には、フリッカ解析部202は、フレーム周波数に対応する信号s2をフレーム周波数判定部201から取得すると共に、輝度センサ200が検出した輝度に対応する信号s3(明るさ情報に相当する情報)をADコンバータ210から取得する。この場合、フリッカ解析部202は、輝度センサ200から、輝度成分の時間変化を取得する。更に、フリッカ解析部202は、フリッカ解析の開始指示に対応するトリガ信号s1を取得すると共に、ユーザによって設定された設定値に対応する制御信号s4をUser I/Fコントローラ212から取得する。トリガ信号s1は、起動時や、モード切り替え時や、所定時間経過時や、ユーザ指定のタイミングなどでフリッカ解析部202に入力される。制御信号s4は、ユーザによってフリッカ知覚の判定を行う際に用いる演算式の定数が変更された際などにおいて、フリッカ解析部202に入力される。例えば、ユーザによって、投射画像が視聴される画面の視角を規定する視距離が変更された場合、フリッカ知覚の判定を行う際に用いる演算式の定数が変更されることとなるため、このような視距離の情報に対応する制御信号s4がフリッカ解析部202に入力される。
そして、フリッカ解析部202は、上記した各種の信号に基づいて投射画像に対してフリッカ解析を行い、この結果に対応する信号s6をパラメータ生成部203に供給する。この場合、フリッカ解析部202は、記憶部250に記憶されたルックアップテーブルなどを参照して、フリッカ解析を実行する。なお、フリッカ解析部202は、コントローラ10に対して制御信号s5を供給することによって、内蔵パターンにより全白画像などを液晶パネル14に出力させる。
パラメータ生成部203は、フリッカ解析部202によるフリッカ解析に基づいて、投射画像における発光特性を調整するための処理を行う。この場合、パラメータ生成部203は、フリッカ解析部202からフリッカ解析に対応する信号s6を取得し、投射画像における発光特性を調整するための制御信号s7をコントローラ10に供給する。具体的には、パラメータ生成部203は、フリッカ解析部202によるフリッカ解析に基づいて、黒表示用のデータを挿入(以下、単に「黒挿入」とも呼ぶ。)する領域を変化させるための制御信号s7をコントローラ10に供給する。つまり、パラメータ生成部203は、投射画像における黒挿入割合を変化させることによって、投射画像における発光特性を調整する。
より詳しくは、パラメータ生成部203は、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDY(液晶パネル14の走査の開始タイミングで出力されるパルス信号)の発生タイミングを変化させることによって、黒挿入割合を調整する。即ち、前述した制御信号s7は、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを規定する信号である。つまり、パラメータ生成部203は、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを、パラメータとして生成する。この場合、パラメータ生成部203は、フリッカ知覚が生じない範囲において、単位フレームにおける投射画像の発光期間が、予め設定された調整範囲の中で最小となるように、スタートパルスDYの発生タイミングを決定する。
User I/Fコントローラ212は、ユーザなどから各種の設定値を取得して、これに対応する信号をフリッカ解析部202及び投射レンズドライバ213に対して供給する。投射レンズドライバ213は、User I/Fコントローラ212から供給される信号に基づいて、投射レンズ系1114に対する制御を行う。
なお、上記した駆動回路100は、本発明におけるフリッカ解析手段、及び発光特性調整手段として動作する。また、輝度センサ200と、ADコンバータ210とをセットとして明るさ情報取得手段としても良い。
次に、図3を参照して、液晶パネル14を駆動する走査線駆動回路11及びデータ線駆動回路12の構成について具体的に説明する。図3に示すように、コントローラ10は走査線駆動回路11及びデータ線駆動回路12に対する制御を行うと共に、走査線駆動回路11及びデータ線駆動回路12は液晶パネル14に対する制御を行う。
コントローラ10は、クロック信号clkと、垂直走査信号VSと、水平走査信号HSと、画像信号Dとを取得する。そして、コントローラ10は、これらの取得した信号に基づいて、スタートパルスDYと、走査側転送クロックCLYと、データ転送クロックCLXと、データ信号Dsと、を生成する。スタートパルスDYは、走査側(Y側)に対する走査の開始タイミングで出力されるパルス信号である。走査側転送クロックCLYは、走査側(Y側)の水平走査を規定する信号である。データ転送クロックCLXは、データ線駆動回路12へデータを転送するタイミングを規定する信号である。データ信号Dsは、画像信号Dに対応するデータである。なお、コントローラ10、走査線駆動回路11、及びデータ線駆動回路12は、その他にも各種の信号が入出力されるが、本実施形態と特に関係の無いものについては説明を省略する。
走査線駆動回路11は、コントローラ10から、スタートパルスDY及び走査側転送クロックCLYを取得し、液晶パネル14の走査線14aに対して走査信号G1、G2、G3、…、Gnを出力する。具体的には、走査線駆動回路11は、コントローラ10から供給されるスタートパルスDYを走査側転送クロックCLYに従って転送し、走査線14aの各々に走査信号G1、G2、G3、…、Gnとして順次排他的に供給するものである。データ線駆動回路12は、コントローラ10から、データ転送クロックCLXと、データ信号Dsとを取得し、液晶パネル14のデータ線14bに対してデータ信号d1、d2、d3、…、dmを出力する。
液晶パネル14(赤色用液晶パネル14R、緑色用液晶パネル14G、及び青色用液晶パネル14B)は、前述したように、液晶(LCD)を含んで構成され、画像信号に規定された画像を表示する。具体的には、液晶パネル14は、走査線14aと、データ線14bと、画素14cとを備える。詳しくは、液晶パネル14には、n本の走査線14aが、図3においてX(行)方向に延在して形成され、m本のデータ線14bがY(列)方向に沿って延在して形成されている。そして、画素14cは、走査線14aとデータ線14bとの各交差に対応して設けられて、マトリクス状に配列されている。
(発光特性調整処理)
以下で、第1実施形態において行われる、投射画像における発光特性を調整するための発光特性調整処理について具体的に説明する。第1実施形態では、駆動回路100は、投射画像の輝度に基づいて投射画像に対するフリッカ解析を行い、この結果に基づいて投射画像における発光特性を調整する処理を行う。こうするのは、投射画像の明るさやコントラストは視聴環境によって変化すると言えるので、投射画像の輝度により環境適応的に発光特性を調整することが望ましいからである。このような処理を実行することにより、フリッカ知覚を効果的に抑制しつつ、動画視認性を向上させることが可能となる。
なお、液晶パネル14自体は、自発光素子ではないが、光源1100から供給される光を画像信号に応じて変調し、スクリーン1120に投射(表示)画像を形成することから、ここでは投射画像における輝度態様のことを「発光特性」と称して説明している。また、例えば、表示手段が有機ELディスプレイのような表示面を備えた自発光素子であった場合には、本願における「発光特性」は、当該有機ELディスプレイの表示面における輝度態様を示すことになる。
まず、フリッカ解析部202が実行するフリッカ解析について、具体的に説明する。フリッカ解析部202は、トリガ信号s1を取得することによってフリッカ解析を開始する。トリガ信号s1は、起動時や、モード切り替え時や、所定時間経過時や、ユーザ指定のタイミングなどでフリッカ解析部202に入力される。トリガ信号s1が入力された際に、フリッカ解析部202は、コントローラ10に対して制御信号s5を供給することによって、内蔵パターンにより全白画像を液晶パネル14に出力させる。そして、フリッカ解析部202は、輝度センサ200が検出した輝度に対応する信号s3を取得し、これに基づいてフーリエ解析を行う。具体的には、輝度センサ200から出力された輝度パルスを記録し、フーリエ解析を行う。より詳しくは、フリッカ解析部202は、所定時間取得された輝度のプロファイルに対してフーリエ解析を行う。例えば、フリッカ解析部202は、10kHz以上の時間間隔でサンプリングを行い、256bit以上のデータに対してフーリエ解析を行う。
次に、フリッカ解析部202は、フーリエ解析の結果を用いて以下の式(1)に示す演算を行うことによって、フリッカが知覚されるか否かの判定を行う。
F=log10(a×Lumb×AC/DC)+c 式(1)
式(1)において、「Lum」は投射画像の平均輝度を示し、「DC」はフーリエ解析の結果得られたDC成分(周波数0に対応する値)を表し、「AC」はフーリエ解析の結果得られたAC成分を表す。ここで、AC成分は、フレーム周波数判定部201で得られたフレーム周波数(例えば60(Hz))に対応する値である。また、式(1)中の「a」、「b」、「c」は定数であり、「c」はフレーム周波数に応じて決定される値である。
更に、「a」、「b」、「c」は、投射画像が視聴される画面(表示画像が投射されているスクリーン上の領域も含む)の視角も考慮に入れて設定される。例えば、「a」、「b」、「c」は、投射画像が視聴される画面の視角と、「a」、「b」、「c」とが対応付けられたルックアップテーブルより得られる。なお、このルックアップテーブルは、前述した記憶部250に記憶されている。このように画面の視角を考慮に入れるのは、フリッカ知覚は、実際に視聴される画面の視角によっても影響を受けるものと考えられるからである。例えば、投射レンズ系1114の焦点距離と拡大率とから投影像の画面サイズを推定し、これに対して視距離のファクターを加えれば、投射画像が実際に視聴される画面の視角を計算することができる。この場合、視距離は、平均的な視距離として設定された値を用いることができる。また、ユーザがこのような設定値を変更した場合には、変更後の値(フリッカ解析部202に対して入力される制御信号s4に相当する)を視距離として用いることができる。以上のように、式(1)より得られる「F」は、投射画像における白黒の振幅や、白黒の切り替えや、投射画像における絶対的な明るさや、フレーム周波数などを加味したものとなっている。つまり、「F」は、本発明の発明者らが発見したフリッカ知覚に影響を与える要因を加味した値となる。
そして、フリッカ解析部202は、上記の式(1)により得られたFと閾値Thとを比較することによって、フリッカが知覚されるか否かの判定を行う。具体的には、フリッカ解析部202は、Fが閾値Th以下である場合には(F≦Th)、フリッカが知覚されないと判定し、Fが閾値Thよりも大きい場合には(F>Th)、フリッカが知覚されると判定する。例えば、輝度が大きい場合(つまり「Lum」が大きい場合)や、白黒の振幅が大きい場合(つまり「AC/DC」が大きい場合)には、フリッカが知覚されやすくなると言える。なお、閾値Thは予め設定された値が用いられる。
次に、パラメータ生成部203が行う発光特性の調整方法について、具体的に説明する。パラメータ生成部203は、フリッカ解析部202によるフリッカ解析に基づいて、黒表示用のデータを挿入する領域を変化させる処理(つまり、黒挿入割合を調整する処理)を行う。具体的には、パラメータ生成部203は、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを変化させることによって、黒挿入割合を調整する。例えば、パラメータ生成部203は、前述した発明者らが発見した知見に基づいて、投射画像が明るい場合には黒挿入割合を下げる。これにより、フリッカ知覚を適切に抑制することができる。これに対して、投射画像の明るさが暗いときには、もともとフリッカが見えにくいため、黒挿入割合を増やす。
詳しくは、パラメータ生成部203は、フリッカ知覚が生じない範囲において、単位フレームにおける発光期間が、予め設定された調整範囲の中で最小となるようなスタートパルスDYの発生タイミングを決定する。つまり、黒挿入割合が高いほど動画のぼやけが生じにくいが、黒挿入割合が高いほどフリッカが知覚されやすいと言えるので、パラメータ生成部203は、フリッカが知覚されないような最大の黒挿入割合を決定する。また、予め調整範囲を設定することで、発光期間を小さくすることによる明るさ低下を最小限としながら、必要十分な動画視認性の向上効果を得ることができる。
詳しくは、パラメータ生成部203は、黒挿入割合「0」から徐々に黒挿入割合が増えていくように、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを変化させる制御を行う。フリッカ解析部202は、このようにパラメータ生成部203が黒挿入割合を増加させている際に、設定されている黒挿入割合ごとに表示画像に対するフリッカ解析を実行する。そして、パラメータ生成部203は、このように黒挿入割合を増加させている間において、フリッカ解析部202によってフリッカが知覚されると判定された際に(つまり、「F>Th」となった際に)、黒挿入割合を増加させる処理を中止する。そして、パラメータ生成部203は、フリッカ解析部202によってフリッカが知覚されないと最後に判定された際の黒挿入割合を、液晶パネル14に対して設定すべき黒挿入割合として決定する。つまり、パラメータ生成部203は、このような黒挿入割合が得られるスタートパルスDYの発生タイミングを、液晶パネル14に対して設定すべき値として決定する。
次に、図4を参照して、黒挿入割合の設定方法について説明する。図4(a)は1垂直期間における垂直走査信号VSを示し、図4(b)はスタートパルスDYを示し、図4(c)は走査側転送クロックCLYを示し、図4(d)は時刻T1における表示画像の一例を示している。
この例では、スタートパルスはDY1→DY3→DY2→DY4の順で発生し、スタートパルスDY1、DY2は画像表示用のスタートパルスに対応し、スタートパルスDY3、DY4は黒表示用のスタートパルスに対応する(図4(b)参照)。また、図4(d)において、符号B1〜B4で示す位置は、時刻T1において、スタートパルスDY1〜DY4によって走査線14aの走査が行われている位置を示している。更に、図4(d)において、領域R1、R2はスタートパルスDY1、DY2によってデータが書き込まれた画像表示領域を示し、領域R3、R4はスタートパルスDY3、DY4によってデータが書き込まれた黒表示領域を示している。なお、この例では、液晶パネル14に対して印加する電圧(駆動電圧)の極性を、スタートパルスDY1〜DY4のタイミングで切り替えている。そのため、領域R1、R2は正極性の電圧によってデータが書き込まれた領域に対応し、領域R3、R4は負極性の電圧によってデータが書き込まれた領域に対応する。
図4(d)から明らかなように、画像表示領域は黒表示用のデータで適宜書き換えられていると共に、黒表示領域は画像表示用のデータで適宜書き換えられていることがわかる。この場合、スタートパルスの発生タイミングによって前のデータ(以前に走査されることによって書き込まれたデータ)が書き換えられるタイミングが変わることによって、画像表示領域若しくは黒表示領域のそれぞれが占める割合が変わってくると言える。したがって、スタートパルスDY3、DY4の発生タイミングを変えることにより、表示画像において黒表示領域が占める割合を変えることが可能となる。つまり、図4(b)において、矢印A1、A2に示す方向にスタートパルスDY3の発生タイミングを変えたり、矢印B1、B2に示す方向にスタートパルスDY4の発生タイミングを変えたりすることにより、黒挿入割合を変化させることができる。よって、前述したように、パラメータ生成部203は、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを変化させることによって、黒挿入割合を調整する。
次に、図5を参照して、発光特性調整処理を具体的に説明する。図5は、第1実施形態に係る発光特性調整処理を示すフローチャートである。この処理は、駆動回路100によって実行される。なお、発光特性調整処理は、フリッカ解析部202にトリガ信号s1が入力された際に実行される。具体的には、起動時や、モード切り替え時や、所定時間経過時や、ユーザ指定のタイミングなどで、発光特性調整処理が実行される。
まず、ステップS101では、駆動回路100のフリッカ解析部202が、コントローラ10を介して、内蔵パターンにより全白画像を液晶パネル14に出力させる。そして、処理はステップS102に進む。
ステップS102では、駆動回路100のパラメータ生成部203が、表示画像における黒挿入割合を設定する。ステップS102の処理を行うのが1回目である場合には、パラメータ生成部203は黒挿入割合を「0」に設定する。これに対して、ステップS102の処理を行うのが2回目以降である場合には、パラメータ生成部203は、前回ステップS102の処理を実行したときよりも黒挿入割合を増やす。この場合、パラメータ生成部203は、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを調整することによって、所望の黒挿入割合に設定する。以上の処理が終了すると、処理はステップS103に進む。
ステップS103では、フリッカ解析部202は、輝度センサ200より所定時間取得された輝度のプロファイルを記録する。例えば、フリッカ解析部202は、10kHz以上の時間間隔でサンプリングを行い、256bit以上のデータを記録する。そして、処理はステップS104に進む。
ステップS104では、フリッカ解析部202は、輝度のプロファイルに対してフーリエ解析を行う。この場合、フリッカ解析部202は、フーリエ解析を行うことによって、周波数0に対応するDC成分(式(1)中の「DC」)や、フレーム周波数に対応するAC成分(式(1)中の「AC」)などを得る。そして、処理はステップS105に進む。
ステップS105では、フリッカ解析部202は、現在の投射画像においてフリッカが知覚されるか否かを判定する。具体的には、フリッカ解析部202は、フーリエ解析の結果(DC成分やAC成分)などを式(1)に代入することによって「F」を得て、このFと閾値Thとを比較することによって、フリッカが知覚されるか否かの判定を行う。
フリッカ解析部202は、Fが閾値Th以下である場合、つまり「F≦Th」である場合、フリッカが知覚されないと判定する。この場合には(ステップS105;No)、処理はステップS102に戻り、パラメータ生成部203が、表示画像における黒挿入割合を再度設定する。具体的には、現在の黒挿入割合ではフリッカが知覚されないため、パラメータ生成部203は、黒挿入割合を更に増加させる処理を行う。そして、ステップS103〜ステップS105の処理を再度行う。これにより、フリッカが知覚されるまで、黒挿入割合を増加させる処理が繰り返し実行されることとなる。こうすることにより、フリッカ知覚が生じない範囲において、単位フレームにおける発光期間が、予め設定された調整範囲の中で最小となる黒挿入割合を決定することが可能となる。
これに対して、フリッカ解析部202は、Fが閾値Thよりも大きい場合、つまり「F>Th」である場合、フリッカが知覚されると判定する。この場合には(ステップS105;Yes)、処理はステップS106に進む。ステップS106では、パラメータ生成部203は、黒挿入割合を増加させる処理を中止し、フリッカ解析部202によってフリッカが知覚されないと最後に判定された際の黒挿入割合を、液晶パネル14に対して設定すべき黒挿入割合として決定する。つまり、パラメータ生成部203は、このような黒挿入割合が得られるスタートパルスDYの発生タイミングを、液晶パネル14に対して設定すべき値として決定する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
以上説明した発光特性調整処理によれば、視聴環境を適切に考慮に入れて、環境適応的に投射画像の発光特性を調整することができる。これにより、環境適応的にインパルス型表示を最適化することができ、フリッカフリーを実現することが可能となる。よって、フリッカ知覚を効果的に抑制しつつ、動画視認性を向上させることが可能となる。
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態でも、フリッカ知覚を考慮して発光特性を調整する処理を行う点で、前述した第1実施形態と同様である。しかしながら、第2実施形態では、輝度のデータと黒挿入割合を規定するスタートパルスDYの発生タイミングとが対応付けられて予め記憶されたルックアップテーブルを参照して、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを決定する点で、第1実施形態と異なる。具体的には、第2実施形態では、黒挿入割合を種々に変更した投射画像に対するフリッカ知覚の判定を実際に行うことなく、全白画像の輝度及び全黒画像の輝度から予測されるフリッカ知覚に基づいて黒挿入割合を決定する。詳しくは、第2実施形態では、全白画像の輝度、全黒画像の輝度、及びスタートパルスDYの発生タイミングが対応付けられて記憶されたルックアップテーブルを参照することによって、測定された全白画像及び全黒画像の輝度に対応するスタートパルスDYの発生タイミングを決定する。これにより、簡便な処理によって、視聴環境に最適化されたインパルス型表示を実現することが可能となる。
図6は、第2実施形態に係る駆動回路100aを示すブロック図である。駆動回路100aは、主に、コントローラ10と、フレーム周波数判定部201と、フリッカ解析部202aと、ADコンバータ210と、User I/Fコントローラ212と、投射レンズドライバ213と、記憶部251と、を有する。駆動回路100aも、前述した液晶プロジェクタ1000(図1参照)に搭載され、液晶プロジェクタ1000の液晶パネル14や投射レンズ系1114などを制御する。なお、駆動回路100と同一の構成要素及び信号に対しては同一の符号を付し、その説明を省略するものとする。また、フレーム周波数判定部201、フリッカ解析部202a、ADコンバータ210、及びUser I/Fコントローラ212、並びに記憶部251は、発光特性調整手段301を構成する。
フリッカ解析部202aは、コントローラ10に対して制御信号s8を供給することによって、内蔵パターンにより全白画像及び全黒画像(インパルス型表示の黒画像)を液晶パネル14に出力させる。そして、フリッカ解析部202aは、このような表示画像を表示した際に、輝度センサ200が検出した輝度に対応する信号s3をADコンバータ210から取得する。次に、フリッカ解析部202aは、記憶部251に予め記憶されたルックアップテーブルを参照して、取得された全白画像及び全黒画像の輝度に対応する、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを決定する。そして、フリッカ解析部202aは、決定されたスタートパルスDYの発生タイミングに対応する制御信号s8をコントローラ10に供給する。
上記したルックアップテーブルには、全白画像の輝度、全黒画像の輝度、及び黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングが対応付けられて、記憶部251に記憶されている。つまり、ルックアップテーブルによれば、全白画像の輝度及び全黒画像の輝度の2次元入力として、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングが得られる。また、ルックアップテーブルは、前述した第1実施形態に示したように、黒挿入割合を種々に変更した投射画像に対してフリッカ知覚を判定することにより、種々の白画像及び黒画像の輝度に対して最適な黒挿入割合を決定することによって作成される。更に、記憶部251にはフレーム周波数や投射画像が視聴される画面の視角などに応じて複数のルックアップテーブルが記憶されており、フリッカ解析部202aは、これらの複数のルックアップテーブルを切り替え用いることができる。
なお、全白画像の輝度及び全黒画像の輝度より、前述したような輝度プロファイルをフーリエ解析した結果やこれをフリッカ解析した結果などを予測することができるので、第1実施形態で示したような式(1)を用いてフリッカ解析などを行わずとも、これらの輝度によって規定されたルックアップテーブルを用いることによって、黒挿入割合を適切に決定することができると言える。
図7は、第2実施形態に係る発光特性調整処理を示すフローチャートである。この処理は、駆動回路100aによって実行される。なお、発光特性調整処理は、フリッカ解析部202aにトリガ信号s1が入力された際に実行される。具体的には、起動時や、モード切り替え時や、所定時間経過時や、ユーザ指定のタイミングなどで、発光特性調整処理が実行される。
まず、ステップS201では、駆動回路100aは、表示画像における黒挿入割合が「0」になるように制御を行う。つまり、黒挿入をオフにする。そして、処理はステップS202に進む。
ステップS202では、駆動回路100aのフリッカ解析部202aが、コントローラ10に対して制御信号s8を供給することによって、内蔵パターンにより全白画像を液晶パネル14に出力させる。そして、処理はステップS203に進む。ステップS203では、フリッカ解析部202aは、全白画像における輝度を輝度センサ200より取得する。そして、処理はステップS204に進む。
ステップS204では、フリッカ解析部202aは、コントローラ10に対して制御信号s8を供給することによって、内蔵パターンにより全黒画像(インパルス型表示の黒画像)を液晶パネル14に出力させる。そして、処理はステップS205に進む。ステップS205では、フリッカ解析部202aは、全黒画像における輝度を輝度センサ200より取得する。そして、処理はステップS206に進む。
ステップS206では、フリッカ解析部202aは、記憶部251に記憶されたルックアップテーブルを参照して、得られた輝度に対応するスタートパルスDYの発生タイミングを得る。つまり、ルックアップテーブルを参照することによって、全白画像の輝度(ステップS203で取得される)及び全黒画像の輝度(ステップS205で取得される)を2次元入力として、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを得る。そして、処理はステップS207に進む。
ステップS207では、フリッカ解析部202aは、ステップS206で得られたスタートパルスDYの発生タイミングを、液晶パネル14に対して設定すべき値として決定する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
以上説明した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態よりも簡便な処理によって、視聴環境に最適化されたインパルス型表示を実現することが可能となる。これにより、フリッカ知覚を効果的に抑制しつつ、動画視認性を向上させることが可能となる。
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態でも、フリッカ知覚を考慮して発光特性を調整する処理を行う点で、前述した第1実施形態及び第2実施形態と同様である。しかしながら、第3実施形態では、投射画像の輝度の代わりに、液晶パネル14が設置された環境光(明るさ情報に相当する情報)に基づいて投射画像における発光特性を調整する点で、第1実施形態及び第2実施形態と異なる。具体的には、第3実施形態では、第1実施形態に示したように黒挿入割合を種々に変更した投射画像に対するフリッカ知覚の判定を実際に行うことなく、環境光から予測されるフリッカ知覚に基づいて黒挿入割合を決定する。詳しくは、第3実施形態では、環境光のデータと黒挿入割合を規定するスタートパルスDYの発生タイミングとが対応付けられて予め記憶されたルックアップテーブルを参照して、測定された環境光に対応するスタートパルスDYの発生タイミングを決定する。
第3実施形態で用いるルックアップテーブルも、前述した第1実施形態に示したように、黒挿入割合を種々に変更した投射画像に対してフリッカ知覚を判定することにより、種々の環境光に対して最適な黒挿入割合を決定することによって作成される。詳しくは、このルックアップテーブルは、予め液晶パネル14における全白画像及び全黒画像の階調を決めておき、これに対して、環境光の値の分をオフセット加えることによって得られた値に基づいて作成される。こうしているのは、環境光の値の分をオフセット加えることによって、液晶パネル14の全白画像及び全黒画像の値を測定しなくても予測することができるからである。なお、第3実施形態でも、フレーム周波数や投射画像が視聴される画面の視角などに応じて設定された複数のルックアップテーブルを用いることができる。
図8は、第3実施形態に係る発光特性調整処理を示すフローチャートである。この処理は、前述した駆動回路100a(図6参照)によって実行される。なお、発光特性調整処理は、フリッカ解析部202aにトリガ信号s1が入力された際に実行される。具体的には、起動時や、モード切り替え時や、所定時間経過時や、ユーザ指定のタイミングなどで、発光特性調整処理が実行される。また、第3実施形態では、記憶部251(図6参照)には、環境光の強度と、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングとが対応付けられたルックアップテーブルが記憶されている。
まず、ステップS301では、フリッカ解析部202aは、環境光を取得する。具体的には、フリッカ解析部202aは、前述した輝度センサ200等から環境光の強度(輝度)を取得する。そして、処理はステップS302に進む。
ステップS302では、フリッカ解析部202aは、記憶部251に記憶されたルックアップテーブルを参照して、ステップS301で取得された環境光の強度に対応する、黒表示用のデータを書き込むスタートパルスDYの発生タイミングを得る。そして、処理はステップS303に進む。
ステップS303では、フリッカ解析部202aは、ステップS302で得られたスタートパルスDYの発生タイミングを、液晶パネル14に対して設定すべき値として決定する。以上の処理が終了すると、処理は当該フローを抜ける。
以上説明した第3実施形態によれば、前述した第2実施形態よりも更に簡便な処理によって、視聴環境に最適化されたインパルス型表示を実現することが可能となる。
[変形例]
以下、本発明の変形例について説明する。
前述した第1〜3実施形態においては、画像表示装置であるプロジェクタ1000は、3枚の液晶パネル14を備えた3板式プロジェクタであるものとして説明したが、例えば、1枚の透過式液晶パネルによってカラー画像を投射する単板式のプロジェクタであっても良い。
また、プロジェクタ1000の光変調素子である液晶パネル14は、透過式の液晶ライトバルブであるものとして説明したが、これに限定するものではない。例えば、反射式液晶パネルの一種であるLCOS(Liquid Crystal On Silicon)を光変調素子として用いる構成であっても良い。なお、この場合、プロジェクタ1000の光学系は、LCOSに合わせた構成とする必要がある。
本発明は、液晶プロジェクタに対する適用に限定はされず、液晶テレビのような表示面を備えた画像表示装置に対しても適用することができる。この場合、明るさ情報(輝度)を取得するセンサは、例えば、液晶テレビの画面の下に突出して配置されたり、或いは、テレビのリモコンに設置されていて、使用者による操作があった場合にパラメータ設定がなされる。
また、本発明は、黒挿入駆動によってインパルス型表示を実現する画像表示部に対する適用に限定はされず、光源を点消灯するスキャンバックライト方式の画像表示部に対しても適用することができる。この場合には、前述したようにしてフリッカ知覚を考慮に入れて、照明のオン/オフを変えることによって、表示画像における発光特性が調整される。
更に、本発明は、照度センサを備えた直視型ディスプレイにも適用することができる。この場合、環境照度に対するディスプレイ輝度のフーリエ解析を予め行っておくことが望ましい。
また、上記では、本発明を液晶プロジェクタ1000に適用した実施形態を示したが、これに限定はされない。つまり、他の電子機器に対しても、本発明を適用することができる。例えば、液晶テレビや、携帯電話や、パーソナルコンピュータ(いわゆるノート型パソコン)などのホールド表示型の電子機器に適用することができる。
これらの変形例における構成であっても、第1〜3実施形態における作用効果と同等の作用および効果を得ることができる。
10 コントローラ、 11 走査線駆動回路、 12 データ線駆動回路、 14 液晶パネル、 14a 走査線、 14b データ線、 14c 画素、 100 駆動回路、 200 輝度センサ、 202 フリッカ解析部、 203 パラメータ生成部、 1000 液晶プロジェクタ