JP5076041B2 - 防汚性物品および防汚性物品の製造方法 - Google Patents
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例えば、酸化チタンが樹脂バインダで固定されてなる繊維布帛が提案されている(特許文献1)。この繊維布帛は、酸化チタンの光触媒作用により高い防汚効果が得られるものである。また、特許文献2にはアルキルシリケートと光触媒とを含有するコーティング剤が示されている。特許文献3には疎水性樹脂と光触媒とを混合して含むコーティング剤とその部材が示され、これらの塗布部材には汚れが付着し難い性質があることが記されている。
(式中R1、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、0、1および2のいずれかを示す。)
また、本発明の防汚性物品は、その表面に防汚性を発揮する有機基が化学的に結合しており、従来のように有効成分を樹脂バインダで固定するものではないので、有効成分が物理的に脱落することがなく、防汚性が低下しにくい。
このような構成によれば、有機基中の両性電解質が安定な5〜7員環を形成することができるので、防汚性物品がより優れた防汚性を示す。
このような構成によれば、繊維、繊維布帛(織物、編物、不織布含む)、繊維積層体(合成皮革、塩化ビニルレザー含む)、フィルムおよびシートが、その表面に式(1)で示される有機基を有するので、タンパク質が吸着安定化しにくく、優れた防汚性を示す。
なお、本発明の防汚性物品に適用される物品の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(ポリアミド)系樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂等の一般に知られている樹脂が挙げられる。
(式中R1、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、0、1および2のいずれかを示す。Mは、水素または一価の金属イオンを示す。)
このような本製造方法により製造された防汚性物品は、表面に式(1)で示される有機基を有するので、タンパク質が吸着安定化しにくく、優れた防汚性を示す。また、本発明の防汚性物品は、その表面に防汚性を発揮する有機基が化学的に結合しており、従来のように有効成分を樹脂バインダで固定するものではないので、有効成分が物理的に脱落することがなく、防汚性が低下しにくい。
このような構成によれば、表面処理工程が、物品の表面にラジカルを発生させるラジカル発生工程と、ラジカル発生工程により得られた含ラジカル物品の表面に、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を有する重合性化合物をグラフト重合させる表面重合工程と、を含むので、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を様々な物品の表面に容易に導入することができる。
このような構成によれば、ラジカル発生工程が、プラズマ、光、電子線およびガンマ線のいずれかの照射またはオゾン処理によるラジカル発生工程によるものであるから、様々な物品の表面に容易にラジカルを発生させることができる。
このような構成によれば、重合性化合物のエポキシ基が、含ラジカル物品の表面のラジカルと容易に反応するので、表面重合工程において、含ラジカル物品の表面と重合性化合物のエポキシ基とを反応させることで、重合性化合物を効率的にグラフト重合させることができる。これにより、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を、様々な物品の表面に容易に導入することができる。
このような構成によれば、メタクリル酸グリシジルおよびアクリル酸グリシジルが、式(2)で示される化合物との反応性を有するので、含ラジカル物品の表面に、メタクリル酸グリシジルまたはアクリル酸グリシジルをグラフト重合させる表面重合工程により、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を、様々な物品の表面に容易に導入することができる。メタクリル酸グリシジルおよびアクリル酸グリシジルは、入手が容易な材料であるから、製造のコストを低く抑えることができる。
本発明によれば、繊維、繊維布帛(織物、編物、不織布含む)、繊維積層体(合成皮革、塩化ビニルレザー含む)、フィルムおよびシートが、上述の防汚性物品の製造方法により製造されるので、その表面に式(1)で示される有機基を有しており、タンパク質が吸着安定化しにくく、優れた防汚性を示す。
なお、本発明の防汚性物品に適用される物品の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(ポリアミド)系樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂等の一般に知られている樹脂が挙げられる。
本実施形態の防汚性物品は、表面に下記式(1)で示される有機基を有する。
ここで、有機基中の両性電解質が安定な5〜7員環を形成し、より優れたな防汚性が得られることから、有機基中のmは、0、1および2のいずれかであることが好ましい。特に、m=1であることが、電荷の分布が小さく、構造が安定であるため、より好ましい。
なお、本実施形態の防汚性物品に適用される物品の材質は、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ナイロン(ポリアミド)系樹脂、アクリル樹脂、ビニル樹脂等の一般に知られている樹脂が挙げられる。
本発明の防汚性物品は、以下のような防汚性物品の製造方法により得ることができる。
本実施形態の防汚性物品の製造方法は、下記式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を物品の表面に導入する表面処理工程と、下記式(2)で示される化合物と表面処理工程で物品の表面に導入された官能基とを反応させる防汚処理工程と、を備える。
表面処理工程は、物品の表面にラジカルを発生させるラジカル発生工程と、ラジカル発生工程により得られた含ラジカル物品の表面に、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を有する重合性化合物をグラフト重合させる表面重合工程と、を含む。
ラジカル発生工程は、プラズマ、光、電子線およびガンマ線のいずれかの照射またはオゾン処理により、物品の表面にラジカルを発生させるものである。
例えば、電子線照射により物品の表面にラジカルを発生させる方法を適用することができる。ここで、電子線は物品の表面にラジカルを発生させる強さがあればよいが、200kGyを超えると、基材である物品の強度が弱くなるので好ましくない。
このようなラジカル発生工程により、様々な物品の表面に容易にラジカルを発生させることができる。
表面重合工程は、上述のラジカル発生工程により得られた含ラジカル物品の表面に、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を有する重合性化合物をグラフト重合させるものである。
ここで、重合性化合物は、エポキシ基を有するものであり、表面重合工程は、含ラジカル物品の表面と重合性化合物のエポキシ基とを反応させるものである。
重合性化合物のエポキシ基が、含ラジカル物品の表面のラジカルと容易に反応するので、表面重合工程において、含ラジカル物品の表面と重合性化合物のエポキシ基とを反応させることで、重合性化合物を効率的にグラフト重合させることができる。これにより、式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を、様々な物品の表面に容易に導入することができる。
表面重合工程により、基材表面積1cm2当たり、4.0×10−7g以上のメタクリル酸グリシジルがグラフト重合されることが好ましい。
なお、反応に関与しなかったメタクリル酸グリシジルは、繰り返し使用して再利用することができる。
防汚処理工程は、式(2)で示される化合物と、表面処理工程で物品の表面に導入された式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基と、を反応させ、防汚性物品を得る工程である。
ここで、防汚性物品の表面に導入される有機基中の両性電解質が安定な5〜7員環を形成し、より優れた防汚性が得られることから、式(2)中のmは、0、1および2のいずれかであることが好ましい。特に、m=1のN,N−ジメチル−γ−アミノブタン酸であることが、電荷の分布が小さく、構造が安定であるため、より好ましい。
なお、反応に関与しなかったN,N−ジメチル−γ−アミノブタン酸は、繰り返し使用して再利用することができる。
このような製造工程により得られた本実施形態の防汚性物品は、表面に式(1)で示される有機基を有するものとなる。
(1)本実施形態の防汚性物品は、表面に式(1)で示される有機基を有するので、タンパク質が吸着安定化しにくく、優れた防汚性を示す。
(2)本実施形態の防汚性物品は、その表面に防汚性を発揮する有機基が化学的に結合しており、従来のように有効成分を樹脂バインダで固定するものではないので、有効成分が物理的に脱落することがなく、防汚性が低下しにくい。
(3)有機基中のmが、0、1および2のいずれかであるから、有機基中の両性電解質が安定な5〜7員環を形成することができるので、防汚性物品がより優れた防汚性を示す。
(4)本実施形態の防汚性物品の製造方法によれば、様々な物品の表面に、式(1)で示される有機基を導入することができ、得られた防汚性物品は優れた防汚性を示す。
例えば、下記式(3)で示されるモノマーを含有するコーティング剤を用いて、防汚性物品に適用される物品の表面にコーティング層を形成することにより、防汚性物品とするものであってもよい。
ここで、式(3)の化合物中の両性電解質が安定な5〜7員環を形成し、より優れた防汚性が得られることから、式(3)の化合物中のmは、0、1および2のいずれかであることが好ましい。特に、m=1であることが、電荷の分布が小さく、構造が安定であるため、より好ましい。
このような製造方法によって形成した防汚性物品は、表面に式(3)の化合物の重合により形成されたコーティング層を有し、このコーティング層が式(1)で示される有機基を有するので、前述の実施形態の防汚性物品と同様の良好な防汚性を得ることができる。
[表面処理物品の作製]
ポリエチレン製の多孔性中空糸膜5gに、照射線量が200kGyとなるように電子線を照射して含ラジカル物品を得た。この含ラジカル物品を、40℃のメタクリル酸グリシジル(GMA)のメタノール溶液(5vol%、200ml)に25分間浸漬させ、表面処理を施した物品(以下GMA膜とする)を得た。
下記の式(4)により算出したGMA膜のグラフト率Gは144%であった。
G=WG/W0×100 …(4)
(式中WGは、導入されたメタクリル酸グリシジルの重量を示し、W0は、浸漬前の多孔性中空糸膜の重量を示す。)
上述のようにして得られたGMA膜0.120gを、60℃のN,N−ジメチル−アミノブタン酸(DGABA)水溶液(0.5M、10g)に24時間浸漬させたのち、重量変化がなくなるまで真空乾燥させ、0.139gの防汚性物品(以下DGABA膜とする)を得た。
[比較例1]
N,N−ジメチル−アミノブタン酸の代わりにγアミノブタン酸(GABA)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、0.128gのGABA膜を得た。
N,N−ジメチル−アミノブタン酸の代わりにN,N−ジメチル−グリシン(DGly)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、0.136gのDGly膜を得た。
N,N−ジメチル−アミノブタン酸の代わりにグリシン(Gly)を用いた以外は、実施例1と同様の操作を行い、0.129gのGly膜を得た。
GMA膜を、80℃の硫酸水溶液(0.5M)に2時間浸漬させ、残存エポキシ基をジオール化した後、NaOH水溶液で中和した。水洗後、重量変化がなくなるまで真空乾燥させて、diol膜を得た。
[比較例5]
未加工のポリエチレン製多孔性中空糸膜である(PE膜とする)。
実施例1および比較例1〜5で得られた各種の膜に、pH9.0、50mMの炭酸緩衝液を用いて調整した0.5g/Lのリゾチーム溶液を、10ml/時の流速で膜の内側から外側に向けて透過させた。透過直後のリゾチーム溶液の濃度が、0.5g/Lになるまでリゾチーム溶液の流通を継続し、供給したリゾチームの重量と透過したリゾチームの重量の差から、膜に吸着されたリゾチームの重量(リゾチーム吸着量Wa)を求めた。
下記の式(5)により各種の膜の洗浄率aを算出した。
a=(Wa−Wl)/Wa×100 …(5)
また、下記の式(6)により各種の膜上に吸着したリゾチームの積層数bを算出した。
b=Wa/Wt …(6)
(式中、Wtは、各種の膜の表面にリゾチームが最密に充填したと仮定した場合の吸着量である理論単層吸着量を示す。)
以上の各種評価の結果を表1に示す。
表1から明らかなように、リゾチーム吸着量の多い比較例1〜5に対し、実施例1のDGABA膜ではリゾチーム吸着量が少なく、優れた防汚性を示すことがわかる。
Claims (8)
- 表面に下記式(1)で示される有機基を有することを特徴とする防汚性物品。
(式中R1、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、0、1および2のいずれかを示す。) - 請求項1に記載の防汚性物品において、
該防汚性物品は、繊維、繊維布帛、繊維積層体、フィルムおよびシートのいずれかであることを特徴とする防汚性物品。 - 下記式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を物品の表面に導入する表面処理工程と、
下記式(2)で示される化合物と前記表面処理工程で前記物品の表面に導入された前記官能基とを反応させる防汚処理工程と、を備えることを特徴とする防汚性物品の製造方法。
(式中R1、R2は、炭素数1〜4のアルキル基を示し、mは、0、1および2のいずれかを示す。Mは、水素または一価の金属イオンを示す。) - 請求項3に記載の防汚性物品の製造方法において、
前記表面処理工程は、
前記物品の表面にラジカルを発生させるラジカル発生工程と、
前記ラジカル発生工程により得られた含ラジカル物品の表面に、前記式(2)で示される化合物と化学的に反応し得る官能基を有する重合性化合物をグラフト重合させる表面重合工程と、を含むことを特徴とする防汚性物品の製造方法。 - 請求項4に記載の防汚性物品の製造方法において
前記ラジカル発生工程は、プラズマ、光、電子線およびガンマ線のいずれかの照射またはオゾン処理によるものであることを特徴とする防汚性物品の製造方法。 - 請求項4または請求項5に記載の防汚性物品の製造方法において、
前記重合性化合物は、エポキシ基を有し、
前記表面重合工程は、前記含ラジカル物品の表面と前記重合性化合物の前記エポキシ基とを反応させることを特徴とする防汚性物品の製造方法。 - 請求項4ないし請求項6のいずれかに記載の防汚性物品の製造方法において、
前記重合性化合物は、メタクリル酸グリシジルまたはアクリル酸グリシジルであることを特徴とする防汚性物品の製造方法。 - 請求項3ないし請求項7のいずれかに記載の防汚性物品の製造方法によって製造される防汚性物品であって、
繊維、繊維布帛、繊維積層体、フィルムおよびシートのいずれかであることを特徴とする防汚性物品。
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