JP5072257B2 - 耐熱性不織布研磨材 - Google Patents

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Description

本発明は、金属、プラスチック、及び木材のような材料を研磨するための不織布研磨材に関する。
不織布のような基材と、基材の表面上に設けられた接着剤と、その少なくとも一部が接着剤に埋没して基材の表面上に設けられている砥粒とを有する不織布研磨材は当業者に広く知られている。
特許文献1には、基材として高い空隙率を有するオープン構造の低密度不織布を用い、接着剤としてフェノール−アルデヒド樹脂溶液を使用した床磨きパッドが記載されている。特許文献2には、複数の不織布研磨材を積み重ね、使用により作業面がすり減った場合に、一層を剥離して再生することができる表面処理パッドが記載されている。
特許文献3には、低密度不織ウェブに接着剤で砥粒を固定した砥石車であって、接着剤がポリエステル、ポリウレタン及びこれらと混和性を有する重合体の混合物であるものが記載されている。特許文献4には、このような接着剤の前駆体としてポリウレタンプレポリマーとアミン官能性物質を含んでなる水分散性組成物が記載されている。特許文献5には、不織布と伸縮防止有孔補強織地と伸縮性接着剤とを有してなる表面仕上げ製品が記載されている。
特許文献6には、不織布に、硬化性樹脂、硬化剤及び揮発性溶剤を含有する溶剤系接着剤の溶液及び砥粒を塗布し、接着剤溶液を乾燥させて取扱い可能な研磨中間材を得、研磨中間材をラミネート形式、フラップ形式及び渦巻形式等に成形し、その後、成形された研磨中間材を加熱して接着剤を硬化させる不織布研磨材の製造方法が記載されている。
特許文献7には、リン系難燃剤を含有するフェノール樹脂バインダーにより不織布に砥粒を付着せしめ、円筒状に成形して成る難燃性不織布研磨材が記載されている。
特許文献8および9には、不織布、樹脂バインダー、および研磨粒子を少なくとも含む不織布研磨材が記載されている。使用しうる軟質研磨粒子および充填材の例として多くの無機物質が列挙されている。
典型的には、不織布研磨材は基材や接着剤が有機物質で形成されており、熱によって劣化しうる。そのため、構成材料の耐熱性を向上させることは重要な課題である。特に微細な表面仕上げ、又は鏡面仕上げを行う場合には摩擦熱の発生量が多く、不織布研磨材を構成している有機物質が劣化し易い。劣化した有機物質が被研磨面に接すると、そこに付着して汚れが発生することがある。この汚れは、一般にはスメアと呼ばれるものである。スメアが発生すると、被研磨面からこれを除去する工程が新たに必要となって研磨作業が煩雑になる。
潤滑剤は、研磨時の発熱を防止する手段として従来から一般的に使用されている。潤滑剤は、一方では摩擦熱の発生を低減し、他方では研磨部位から熱を持ち出す媒体として機能する。しかしながら、液体の潤滑剤は被研磨面を変性することがあり、また研磨後に被研磨面から除去する工程が必要となって煩雑である。また、固体の潤滑剤は摩擦熱の抑制効果が不充分である。
米国特許第2958593号明細書 米国特許第4437271号明細書 特公平6−71705号公報 特表平8−510175号公報 特表平10−511749号公報 特開平9−201232号公報 特開平2−269574号公報 米国特許第5919549号明細書 米国特許第6352567号明細書
本発明は上記従来の問題を解決するものであり、その目的とするところは、耐熱性に優れ、乾式研磨を行う場合にもスメアが発生しない不織布研磨材を提供することにある。
本発明は、無作為に並べられた繊維から構成される不織布と;不織布の繊維の表面に被覆された耐熱性樹脂の層と;該耐熱性樹脂の層の表面に接着された接着剤と;該接着剤によって不織布に接着された砥粒とを、有する不織布研磨材において、該耐熱性樹脂が不織布の繊維よりも高い融点又は熱分解温度を有する樹脂である、不織布研磨材を提供するものであり、そのことにより上記目的が達成される。
本発明の不織布研磨材は、不織布を構成する繊維が研磨時の摩擦熱によって溶解又は分解し難くなっている。そのため、微細な表面仕上げ、又は鏡面仕上げを乾式で行う場合にもスメアが発生しない。
本発明で用いる不織布は、無作為に並べられた繊維から構成される嵩高のシート材料である。不織布は不織布研磨材の基材として当業者によく知られている材料であればよい。代表的な不織布は、例えば、特公平3−55270号公報第10欄第10行から同第11欄第25行に記載されている。
好ましい不織布は、ポリアミド(例えば、ポリカプロラクタムやポリヘキサメチルアジパミドから構成されるナイロン6及びナイロン6,6)、ポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン及びポリエチレン)、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、及びポリカーボネートのような熱可塑性有機繊維から構成されたものである。ナイロン及びポリエステル繊維から構成された不織布が一般に使用される。繊維の太さは、一般に直径19〜250μm程度である。また、不織布の厚さは一般に2〜50mm程度である。
不織布の繊維の表面には耐熱性樹脂の層を被覆する。不織布の繊維は既に樹脂で被覆されたものであってもよい。その場合、耐熱性樹脂の層は予め被覆されている樹脂層の表面に被覆されることになる。被覆される耐熱性樹脂は硬化又は乾燥した状態で不織布の繊維よりも高い融点又は熱分解温度を有する樹脂であればよい。耐熱性樹脂の融点又は熱分解温度が不織布の繊維以下であると、不織布の耐熱性が向上せず、研磨時にスメアが発生し易くなる。耐熱性樹脂は不織布の繊維よりも好ましくは20℃以上、より好ましくは30℃以上、更に好ましくは50℃以上高い融点又は熱分解温度を有する。
不織布の繊維および耐熱性樹脂の融点又は熱分解温度は、例えば示差走査熱分析装置または熱重量分析装置などを用いて決定すればよい。熱可塑性樹脂のような融点を示す樹脂については、示差走査熱分析装置により融点を決定することができる。熱硬化性樹脂のように明確な融点を示さない樹脂については、熱重量分析装置により熱分解温度を決定することができる。熱分解温度は、加熱することにより樹脂が分解して、その強度などが溶融したのと同様に評価できる状態になる温度をいう。本明細書の実施例では、熱重量分析装置により加熱して、樹脂の重量が15%減少した時点の温度を熱分解温度とする。
耐熱性樹脂としては、一般にメラミン架橋アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等を用いることができる。耐熱性樹脂の種類は不織布の繊維との関係で適宜変更してよい。
耐熱性樹脂の不織布の繊維に対する被覆は、液体状態の耐熱性樹脂、つまり、耐熱性樹脂前駆体を不織布の繊維の表面に塗布し、乾燥又は硬化することにより行う。塗布はスプレー法、浸漬法等を用いればよい。塗布された耐熱性樹脂前駆体の乾燥や硬化は耐熱性樹脂の種類に応じて当業者に知られた条件で行なえばよい。
耐熱性樹脂の被覆量は、繊維の表面積当りの重量として、0.1〜2.0g/m、好ましくは0.2〜0.5g/mである。被覆量が0.1g/m未満であると不織布の耐熱性が十分に向上せず、研磨時にスメアが発生し易くなる。被覆量が2.0g/mを越えると不織布の柔軟性や自己分解性が損なわれ、表面仕上げ性能が低下する。
このように耐熱性樹脂で被覆した不織布の繊維に、接着剤で砥粒等を接着する。接着剤とは、不織布と砥粒や反応性無機吸熱物質等とを結合させる材料をいう。接着剤は研磨操作の間不織布と砥粒等との結合を維持するのに十分な強度を有する材料であればよい。一般に、接着剤はバインダー樹脂と添加剤とを成分として含有する。バインダー樹脂とは、塗着可能な液体から剛性の固体に変化するために、物質を接合する機能を奏する有機樹脂をいう。また、接着剤前駆体とは、特にバインダー樹脂が液体状態の接着剤を指していう。
バインダー樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、セラック(shellac)、エポキシ樹脂、イソシアヌレート、ポリウレタン、獣皮にかわ等を使用できる。
本発明の不織布研磨材に用いるのに好ましいバインダー樹脂は、比較的剛性の有機樹脂である。例えば、硬化後に引張強度3000psi以上、好ましくは3000〜11000psiであり、伸び180%以上、好ましくは180〜800%であり;ショアーD硬度40以上、好ましくは40〜80;及び100%モジュラス1MPa以上、好ましくは10〜50MPa、を示す樹脂が好ましい。
バインダー樹脂の引張強度が3000psi未満であると硬化後の接着剤の強度、剛性が小さすぎて不織布研磨材に適さない。伸びが180%未満であると硬化後の接着剤の柔軟性が小さすぎて不織布研磨材に適さない。ショアーD硬度が40未満であると研磨中に研磨材から砥粒が脱落し易くなる。100%モジュラスが1MPa未満であると硬化後の接着剤の強度剛性が小さく研磨剤に適さない。
このような樹脂の具体例には、ポリウレタン樹脂が挙げられる。特公昭61−37064記載を参照。市販品の例には、ユニロイヤル・ケミカル(Uniroyal Chemical)社製のアジプレンLタイプ樹脂(例えば、L−42、L−83、L−100、L−167、L−200、L−213、L−300、L−315等)、旭電化社製のアデカボンタイタータイプ樹脂(例えば、HUX−232、HUX−240、HUX−260、HUX−320、HUX−350、HUX−380、HUX−381、HUX−380A、HUX−386、HUX−401、HUX−670、HUX−290H、HUX−290N、HUX−394、HUX−680等)等が挙げられる。
このようなポリウレタン樹脂の調製には、一般に、ポリオール成分とこれを硬化させる硬化剤成分とが用いられる。硬化剤には、例えば、4,4’−メチレンジス−2−クロロアニリン(MOCA)のようなイソシアネート、その末端をケトオキシムでブロックしたもの、末端を4,4’−メチレンビスアニリンで処理したフェノールであるp,p’−メチレンジアニリン、メラミンタイプ樹脂(例えば、日立化成工業社製の「メラン5100」)等が挙げられる。硬化剤の含有量が、NCO量又はメラミン量として3〜10重量%であるポリウレタン樹脂が好ましい。
接着剤前駆体は水系のものを用いてもよい。水系接着剤前駆体は溶媒として主として水を含有する接着剤前駆体をいう。一般に、水系接着剤前駆体はバインダー樹脂が水中に均一に分散した形態をとっていおり、エマルジョンやディスパージョンと呼ばれる。水中に均一に分散させることができる樹脂をここでは水分散性樹脂という。
未硬化のバインダー樹脂は水分散性であることを要し、熱硬化性であることが好ましい。成形して不織布研磨材を形成することが容易になるからである。バインダー樹脂は硬化温度100〜300℃、特に100〜200℃を示すことが好ましい。バインダー樹脂の硬化温度が100℃未満であると硬化が不十分となり研磨砥粒が脱落しやすく研剤化が低くなる。また、バインダー樹脂の硬化温度が300℃を越えるとバインダー樹脂が分解し、研磨砥粒が脱落しやすく研剤比が低くなる。
また、未硬化のバインダー樹脂は室温環境下で触っても粘着性を示さないものであることが好ましい。不織布に接着剤前駆体を塗布して乾燥した研磨中間材の取扱いが容易になるからである。
好ましいバインダー樹脂はアニオン基を有する末端イソシアネートポリマー、ヒドロキシル基を有する熱硬化性アクリルポリマー及びメラミン系架橋剤を含有し、水分散性を示す熱硬化性樹脂である。ソフトセグメントであるイソシアネートポリマーとハードセグメントであるアクリルポリマーとを組み合わせることで、バインダー樹脂の特性を、不織布に砥粒を接着するために最適に調節することができる。
その結果、本発明で用いる水系接着剤前駆体は、溶剤系接着剤前駆体と同等又はそれ以上にまで砥粒を保持する強度を有し、砥粒が不織布から脱落するのを防ぎ、常に新しい研磨面での研磨が可能となるように、不織布に適度な自生作用を付与することができる。
アニオン基を有する末端イソシアネートポリマー、ヒドロキシル基を有する熱硬化性アクリルポリマー及びメラミン系架橋剤はそれぞれエマルジョンや水分散体の形態で配合されてよい。
アニオン基を有する末端イソシアネートポリマーは、分子中にアニオン基を有する末端イソシアネートポリマー単独若しくはこれと分子中にアニオン基を有しない末端イソシアネートポリマーとの混合物であり、好ましくは樹脂分(分子中にアニオン基を有する末端イソシアネートポリマーと分子中にアニオン基を有しない末端イソシアネートポリマーとの合計量)100グラム当たり0.001〜0.5当量のアニオン基を有するものであると樹脂分の水分散性がよく、乳化剤乃至分散剤を使用しなくとも水分散液を得ることができるので好ましい。上記のアニオン基としてはカルボキシル基、スルホン基及びこれらの併用が挙げられるが、好ましくはカルボキシル基である。
上記分子中にアニオン基を有する末端イソシアネートポリマーは、従来公知の方法で得ることができ、例えばカルボキシル基の導入を例にとると、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸等のカルボキシル基含有ジオール単位を有するポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールをポリオール成分としてポリイソシアネートと反応させて得ることができる。
上記分子中にアニオン基を有する末端イソシアネートポリマー及び分子中にアニオン基を有しない末端イソシアネートポリマーに使用されるポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールのポリオール成分は平均分子量が500〜4000のものが望ましく、又、ポリイソシアネート成分としては特に限定されず、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ポリイソシアネート、トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート等が挙げられ、中でも脂肪族又は脂環族ポリイソシアネートが好ましい。
また、この末端イソシアネートポリマーはジアルキルアミン、ジアルキルヒドラジド等で鎖伸長させた末端イソシアネートポリマーであってもよく、水分散が可能な範囲内で用途により任意に選択できる。分子中にアニオン基を有するポリマーの水分散体は市販されており、例えば、上述の旭電化社製の「ボンタイター」タイプ等が挙げられる。
ヒドロキシル基を有する熱硬化性アクリルポリマーは、水中に均一に分散されたアクリルポリマーエマルジョンであることが好ましい。このアクリルポリマーは、水酸基価が40〜100である。水酸基価が40未満では反応点が少なく、反応が不充分になり本発明の目的を達成することができない。一方、水酸基価が100を超えると硬化後の接着剤の耐水性等が低下する。また、このアクリルポリマーは、酸価が1〜30である。酸価が1未満では安定なエマルジョンが得にくく、30を超えるとポリマーの親水性が高くなるため、エマルジョンが高粘度となり、また接着剤の耐水性が低下する。さらに、このアクリルポリマーは、ガラス転移点が−40〜10℃である。ガラス転移点が−40℃より低い場合には、接着剤の物理的強度、耐久性に難点があり、10℃より高い場合には、接着剤の硬度が増し、低温における可とう性が低下する。
アクリルポリマーエマルジョンは、次のような不飽和単量体から製造される。
1.水酸基含有アクリル系単量体として、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、ラクトン変性2−ヒドロキシエチルアクリレート、ラクトン変性2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどのヒドロキシル基含有エチレン性不飽和単量体。
2.アクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステルとして、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラウリルなど。
3.α,β−エチレン性不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸など。
4.ビニル芳香族化合物として、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−クロロスチレン、ビニルピリジンなど。
5.その他のビニル化合物として、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレートなど。
これらの不飽和単量体は、水酸基含有アクリル単量体及びα,β−エチレン性不飽和カルボン酸単量体を必須成分とし、必要に応じアクリル酸又はメタクリル酸のアルキルエステル、その他のビニル化合物などを併用し、所望の樹脂物性に応じて、その種類、配合比を適宜選択して使用することができる。
また、分子量調整のための連鎖移動剤として、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、イソプロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、デシルメルカプタン、ウンデシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタンなどを用いることが好ましい。
本発明のアクリルポリマーエマルジョンに含まれる共重合体の製造は、公知の方法に従い、例えば溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法を用いて行うことができるが、乳化重合に従って行うことが好ましい。一般的には単量体を界面活性剤のような分散安定剤の存在下で、重合開始剤、例えば過硫酸アンモニウム等のラジカル重合用のラジカル開始剤の存在下に、好ましくは60〜95℃の反応温度において、好ましくは4〜8時間反応させ、三次元架橋し、アミンで中和して目的のアクリルポリマーエマルジョンを得ることができる。得られるアクリルポリマーエマルジョン中の微粒子の粒子径は、50〜200nmとなる。
このようなミクロエマルジョンは市販されており、例えば、日立化成工業社製の「ヒタロイド」タイプ、品番AE8200等が挙げられる。
メラミン系架橋剤は、合成樹脂用架橋剤として公知のメラミン系架橋剤を用いればよい。これらは、必要に応じて乳化剤乃至分散剤を用いて、若しくは用いることなく水に分散させることができる。メラミン系架橋剤としては特に限定されないが、例えば、上述の日立化成工業社製の「メラン5100」等が挙げられる。
これら接着剤前駆体の成分の配合割合は、一般に、アニオン基を有する末端イソシアネートポリマー100重量部、ヒドロキシル基を有する熱硬化性アクリルポリマー1〜50重量部、及びメラミン系架橋剤0.01〜20重量部である。ヒドロキシル基を有する熱硬化性アクリルポリマーの量が1重量部未満であるとアニオン基を有する末端イソシアネートポリマーの特性により、硬化後の接着剤の軟性が大きくなりすぎて不織布研磨材に適さず、50重量部を越えると硬化後の接着剤の柔軟性が小さくなりすぎて不織布研磨材に適さない。メラミン系架橋剤の量が0.01重量部未満であると硬化後の接着剤の軟性が大きくなりすぎて不織布研磨材に適さず、20重量部を越えると硬化後の接着剤の柔軟性が小さくなりすぎて不織布研磨材に適さない。
本発明の不織布研磨材は、反応性無機吸熱物質を含んでいることが好ましい。研磨作業時の発熱を抑制することにより、スメアの発生がより効果的に抑制されるからである。反応性無機吸熱物質は接着剤によって不織布に接着されていてよい。反応性無機吸熱物質は、研磨作業時に発生する熱によって反応して金属酸化物に変化し、反応時に熱を吸収するような固体無機物質である。反応性無機吸熱物質は300℃以下の反応温度を有するものが好ましい。不織布の繊維にはナイロン6,6のようなポリアミドが有用であり、ポリアミド繊維の耐熱温度が約300℃だからである。好ましくは、反応性無機吸熱物質の反応温度は100〜250℃、より好ましくは150〜230℃である。
反応性無機吸熱物質の具体例としては、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、カルシウムアルミネート、水酸化マグネシウム、繊維状水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ホウ酸亜鉛、ポリリン酸アンモニウム、ドーソナイト、ハイドロタルサイト類等が挙げられる。好ましい反応性無機吸熱物質は水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、カルシウムアルミネート及び塩基性炭酸マグネシウムであり、特に好ましいものは水酸化アルミニウムおよびハイドロタルサイトである。
反応性無機吸熱物質は接着剤100重量部に対して10〜300重量部、好ましくは10〜200重量部、より好ましくは30〜100重量部の量使用する。反応性無機吸熱物質の使用量が少量(例えば10重量部以下)すぎると吸熱効果が低下し、300重量部を越えると接着剤の強度が不足して不織布研磨材に適しなくなる。
本発明の不織布研磨材には、用途に応じて砥粒を用いてもよい。砥粒は当業界で通常用いられるものである。典型的には、平均直径が4〜2000μm、好ましくは20〜1000μm、及びモース硬度が4〜10Mohs、好ましくは6〜9Mohsの粒子であればよい。具体的には、パーミス、トパーズ、ガーネット、アルミナ、コランダム、炭化ケイ素、ジルコニア、及びダイヤモンド等でなる粒子を使用できる。これらの粒子は異なるサイズのものを混ぜてよく、異なる材質のものを混ぜてもよい。
本発明の不織布研磨材は、当業者に知られている方法に準じて作製することができる。例えば、まず、液状のバインダー樹脂に反応性無機吸熱物質を加えて十分均一に分散させて接着剤前駆体を作製する。液状のバインダー樹脂は溶液であっても水分散体であってもよい。
次いで、耐熱性樹脂で被覆した不織布の繊維に、接着剤前駆体を塗布する。塗布された接着剤前駆体の上に砥粒を散布して付着させる。そして、接着剤前駆体から有機溶媒や水を蒸発させて乾燥させる。バインダー樹脂として熱硬化性樹脂を使用する場合は、接着剤前駆体を一定時間加熱して硬化させる。一般に、接着剤前駆体は、100〜300℃に10〜30分間に維持して硬化させる。但し、加熱温度は使用する反応性無機吸熱物質が反応を実質的に開始しない温度に維持する必要がある。
接着剤前駆体を調製する際に予め砥粒も加えておき、接着剤前駆体と砥粒とを同時に塗布してもよい。また、接着剤前駆体の乾燥と熱硬化性樹脂の硬化とは同一の加熱工程で行なってもよく、別々の加熱工程で行なってもよい。接着剤前駆体の乾燥と熱硬化性樹脂の硬化とを別々の加熱工程で行なう場合であっても、乾燥工程で熱硬化性樹脂を一部硬化させることは差し支えない。
上述のとおり、基材として使用する不織布は嵩高の繊維材料であり、弾性に富むため、容易に変形及び復元することができる。それゆえ、不織布を複数重ねた積層体は変形性に富み、圧力を加えて比較的自由に成形することができる。本発明の好ましい一実施態様では、不織布の容易な成形性を利用して、立体形状の不織布研磨材を製造する。立体形状の不織布研磨材の典型例は、中心孔を有する円筒状の研磨ブラシである。図1は中心孔を有する円筒状の研磨ブラシの典型的な構成形式を示す斜視図である。(a)はラミネート形式、(b)はフラップ形式、(c)は渦巻形式を示している。
図2は立体形状の不織布研磨材を製造するのに用いる研磨中間材を製造する工程を示した模式図である。まず、不織布のロール100から耐熱性樹脂で被覆した不織布10を送り出し、これに耐熱性樹脂前駆体をスプレー塗布した後、乾燥させる。ついで、不織布10を接着剤前駆体と砥粒との混合物に含浸させる。含浸不織布を加熱して不織布の繊維の表面に熱硬化性樹脂及び砥粒を固定させる。その上から接着剤前駆体をスプレー塗布する。
ついで、乾燥炉で接着剤前駆体から有機溶媒や水を蒸発させて乾燥させる。乾燥は、接着剤前駆体が、室温において非粘着性であるが、熱硬化性樹脂が完全に硬化しない温度及び時間行う。乾燥工程後に接着剤前駆体が室温で未だ粘着性を保っていると、得られる研磨中間材の取扱い及び加工が困難となり、乾燥工程後に熱硬化性樹脂が完全に硬化していると、研磨中間材をその後成形することが困難となるからである。好ましい態様では、乾燥工程は100〜120℃で1〜10分間行われる。乾燥工程の後、得られた研磨中間材20は粘着性が無くなって取扱うことが可能になっている。従ってこれは巻き上げてロール200として保存することができる。
図3は研磨中間材を用いて立体形状の不織布研磨材を製造する工程を示した模式図である。まず、研磨中間材のロール200から研磨中間材20を送り出す。そして研磨中間材20を適当な形状に打ち抜いて中間部材25を得る。治具6、7及び8を用いて中間部材25を複数枚重ね、圧縮して高密度化する。そして、圧縮したまま加熱して接着剤前駆体を完全に硬化させ、形状を固定する。好ましい態様では、加熱硬化工程は100〜200℃で10〜60分間行われる。そのことにより中心孔を有する円筒状の研磨ブラシが得られる(図1(a)参照)。
本発明の不織布研磨材は研磨力よりも微細な仕上げが要求される用途に適している。かかる用途としては、例えば、鏡面仕上げのような微細な表面処理が挙げられる。また、本発明の不織布研磨材は耐熱性に劣っている材料を研磨する用途にも適している。かかる材料としては、例えば、樹脂、特に熱可塑性樹脂およびプラスチック材料が挙げられる。
本発明の不織布研磨材の使用方法は従来の不織布研磨材と同様である。つまり、被研磨物の表面に不織布研磨材を接触させ、圧力をかけながら、両者を相対的に動かせばよい。研磨は潤滑剤を用いないで、即ち乾式で行うことが好ましい。通常は、不織布研磨材の主要面を被研磨物の表面に押し当てて回転させることにより、研磨が行われる。研磨荷重、研磨速度および研磨時間などの研磨条件は容易に決定される。
以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中特に明示しない限り「部」は固形分の重量基準である。
実施例1
繊維径17.5μm、長さ51mmのポリエステル繊維(東レ社製「テトロンT201」)をエアーレイドニードルパンチ処理して厚さ10mm、目付250g/mの不織布を調製した。
他方、このポリエステル繊維をリガク社製示差走査熱量計(DSC)「Thermo Plus DSC8230」にセットした。そして加熱速度10℃/分の条件で測定してこのポリエステル繊維の融点を決定した。
水性アクリル樹脂(日立化成工業社製「AE8200」)95部にメラミン樹脂(日立化成工業社製「メラン5100」)5部を加えて樹脂溶液を得、この樹脂溶液を上述の不織布にスプレー塗布し、110℃のオーブンに入れて20分間乾燥させて、不織布の繊維を耐熱性樹脂で被覆した。尚、樹脂溶液の塗布量は、樹脂の被覆量が以下の表に示す値になるように適宜調節した。
他方、このメラミン架橋アクリル樹脂をリガク社製熱重量分析装置(TG)「Thermo Plus TG8120」にセットした。そして10℃/分の速度で加熱しながらメラミン架橋アクリル樹脂の重量を測定し、重量が15%減少した温度を熱分解温度とした。
旭電化社製ウレタン樹脂エマルジョン「ボンタイターHUX−386」100部、メラミン樹脂(日立化成工業社製「メラン5100」)10部、および平均粒径2μmの酸化アルミニウム(フジミインコーポレーテッド製「WA6000」)300部を混練して研磨スラリーを得た。また、必要に応じて、研磨スラリーには更に、反応性無機吸熱物質としてハイドロタルサイト(協和化学工業社製「DHT−6」)を含有させた。尚、反応性無機吸熱物質の含有量は、接着剤に対する量が以下の表に示す値になるように適宜調節した。
この研磨スラリーを、耐熱性樹脂で被覆した不織布の両面にスプレー方式を用いて塗布した。研磨スラリーの不織布の面積に対する乾燥塗布量は7.6g/100cmとした。その後、この材料をオーブンに入れ、110℃で20分間加熱して接着剤前駆体を硬化させ、円形に打ち抜いて、不織布研磨ディスクを得た。
得られた不織布研磨ディスクの主要面を板状の被研磨物に押し当てて回転させることにより、研磨試験を行った。被研磨物としてSUS板(SUS304)を用いた。
研磨終了後被研磨面を観察して、スメアの有無を確認した。結果を表1に示す。
[表1]
Figure 0005072257
接着剤の固形分100部に対する量
不織布の繊維の融点:256℃
耐熱性樹脂の熱分解温度:310℃
研磨条件:荷重2000g/cm2、研磨速度10000rpm、研磨時間5秒
実施例2
繊維径25μm、長さ51mmのポリエステル繊維(東レ社製「テトロンT201」)をエアーレイドニードルパンチ処理して厚さ10mm、目付250g/mの不織布を調製した。
得られた不織布を用いること以外は実施例1と同様にして不織布研磨材を調製し、試験した。結果を表2および表3に示す。
[表2]
Figure 0005072257
接着剤の固形分100部に対する量
不織布の繊維の融点:254℃
耐熱性樹脂の熱分解温度:310℃
研磨条件:荷重2000g/cm2、研磨速度10000rpm、研磨時間5秒
[表3]
Figure 0005072257
接着剤の固形分100部に対する量
不織布の繊維の融点:254℃
耐熱性樹脂の熱分解温度:310℃
研磨条件1:荷重2000g/cm2、研磨速度10000rpm、研磨時間5秒
研磨条件2:荷重4000g/cm2、研磨速度10000rpm、研磨時間5秒
実施例3
繊維径55.5μm、長さ76mmのポリエステル繊維(ユニチカ社製「H38F」)をエアーレイドニードルパンチ処理して厚さ10mm、目付250g/mの不織布を調製した。
得られた不織布を用いること以外は実施例1と同様にして不織布研磨材を調製し、試験した。結果を表4に示す。
[表4]
Figure 0005072257
接着剤の固形分100部に対する量
不織布の繊維の融点:254℃
耐熱性樹脂の熱分解温度:310℃
研磨条件:荷重2000g/cm2、研磨速度10000rpm、研磨時間5秒
実施例の結果から、不織布の繊維の表面に耐熱性樹脂を被覆すると、乾式研磨時にスメアが発生し難くなり、また、反応性無機吸熱物質を含有させるとその効果が増強されることが示された。
かかる特性の向上は、上記単層の研磨ディスクばかりでなく、ラミネート形式の研磨ディスク、渦巻形式及びフラップ形式のような研磨ブラシ等においても確認される。
中心孔を有する円筒状の研磨ブラシの典型的な構成形式を示す斜視図である。 立体形状の不織布研磨材を製造するのに用いる研磨中間材を製造する工程を示した模式図である。 研磨中間材を用いて立体形状の不織布研磨材を製造する工程を示した模式図である。
符号の説明
10…不織布、
100…不織布のロール、
20…研磨中間材、
200…研磨中間材のロール、
25…中間部材、
6、7、8…治具。

Claims (4)

  1. 無作為に並べられた繊維から構成される不織布と;不織布の繊維の表面に被覆された耐熱性樹脂の層と;該耐熱性樹脂の層の表面に接着された接着剤と;該接着剤によって不織布に接着された砥粒とを、有する不織布研磨材であって
    該耐熱性樹脂が不織布の繊維よりも少なくとも20℃高い融点又は熱分解温度を有する樹脂であり、
    該耐熱性樹脂がメラミン架橋アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂及びウレタン樹脂からなる群から選択される少なくとも1種である、不織布研磨材。
  2. 反応性無機吸熱物質を更に有する請求項1に記載の研磨材。
  3. 前記反応性無機吸熱物質が水酸化アルミニウム、ハイドロタルサイト、カルシウムアルミネート及び塩基性炭酸マグネシウムからなる群から選択される少なくとも一種である請求項1又は2に記載の研磨材。
  4. 被研磨物の表面に請求項1〜のいずれか一項に記載の不織布研磨材を接触させ、圧力をかけながら両者を相対的に動かす工程を包含する研磨方法。
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