JP5070887B2 - めっき構造体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、燃料電池等に用いられるめっき構造体に関するものである。
燃料電池用の部材としてはセパレータや金属多孔体などの種々の導電性部材が用いられる。セパレータには、耐食性、導電性、ガスバリア性、軽量性、加工性等が要求される。特に、導電性は燃料電池の出力に大きな影響を与えるため、導電性部材の導電性を高めることは重要な課題である。ガス流路部材として金属多孔体を用いる燃料電池では、セパレータと金属多孔体とは接触しており、セパレータと金属多孔体との間には接触抵抗が存在する。そのため、接触抵抗を低減させるために、両部材にめっき、例えば金めっきを施す手法が行われている。しかし、すべての構成部材に厚い金めっきを施す手法では、使用する金が大量に必要になり、製造コスト的に不利になってしまう。特に金属多孔体に金めっきを施す場合は、金属多孔体の内部まで厚くめっきされてしまい、金の必要量が膨大となる。使用する金の量を抑えつつ、導電性の確保を目的とする技術としては、セパレータ上に、金を島状に配置する手法がある。しかしこの手法では接触抵抗が高く、導電性の確保が不十分であるという問題がある。(例えば、特許文献1参照。)。
特開2006−97088号公報 特開2005−108549号公報 特開2002−237312号公報
なおこのような問題は、燃料電池用のセパレータに限らず、構成部材間の接触部の導電性を高める目的でめっきを施されている部材全般に共通する問題であった。
本発明は、上述した従来の課題を解決するためになされたものであり、導電性部材間の接触部の導電性を高めつつ、めっきの使用量を減らすことのできる技術を提供する。
上記目的を達成するために、本発明のめっき構造体は、
めっき構造体であって、
第1の導電性部材と、
第2の導電性部材と、
を備え、
前記第1の導電性部材は、第1のめっき層を有し、
前記第2の導電性部材は、前記第1のめっき層よりも薄い第2のめっき層を有し、
前記第1の導電性部材と、前記第2の導電性部材とは、前記第1と第2のめっき層が接した状態で保持されていることを特徴とする。
以上のように構成されためっき構造体によれば、第2の導電性部材に、より薄いめっき層を設けるようにしたので、導電性部材間の接触部の導電性を高めつつ、めっきの使用量を減らすことができる。
前記第1の導電性部材は、燃料電池用金属製セパレータ部材であり、
前記第2の導電性部材は、燃料電池用の流路部材であってもよい。
このように、上記めっき構造体は、燃料電池の構成部材に利用することができる。
前記燃料電池用の流路部材は、金属多孔体で形成されていることとしてもよい。
このような構成とすれば、第2の導電性部材である金属多孔体に、より薄いめっき層を設けるので、金属多孔体の内部に不要なめっきがされることがなくなり、めっきの使用量を大幅に減らすことが可能となる。
本発明によるめっき構造体の製造方法は、
(a)第1と第2の導電性部材を準備する工程と、
(b)前記第1の導電性部材の表面上に、第1のめっき層を形成する工程と、
(c)前記第2の導電性部材の表面上に、前記第1のめっき層よりも薄い第2のめっき層を形成する工程と、
(d)前記第1の導電性部材と、前記第2の導電性部材と、を前記第1と第2のめっき層を介して接触させる工程と、
(e)前記接触させた状態を保持しつつ、接触させた方向に加圧する工程と、
(f)前記加圧した状態を保持しつつ、通電させる工程と、
を備えることを特徴とする。
このような製造方法とすれば、不要な部分に余分なめっきがされることがないので、めっきの使用量を減らすことが可能となる。さらに加圧、通電工程により、第1と第2のめっき層におけるめっきの配置が最適化されるので、導電性の高いめっき構造体の製造が可能となる。
前記工程(b)は、前記第1のめっき層の形成後に、前記第1の導電性部材にベーク処理をする工程を含み、
前記工程(c)は、前記第2のめっき層の形成後に、前記第2の導電性部材にベーク処理をする工程を含まない、
こととしてもよい。
このような工程とすれば、第2の導電性部材のためのベーク処理を省略できるので、製造工程を簡略化することができ、製造コストや製造期間等において有益となる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能である。例えば、めっき構造体、めっき構造体を備えた燃料電池、それらの製造方法等の形態で実現することができる。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
図1は、本発明の一実施例としての燃料電池の概略構成を表す図である。本実施例の燃料電池は固体高分子型燃料電池であり、MEA(膜電極接合体)60と、ガス拡散層10と、金属多孔体20と、セパレータ30と、を積層することによって構成されている。MEA60はガス拡散層10に挟持されている。金属多孔体20は、ガス拡散層10の両側に設けられ、セパレータ30は、金属多孔体20の両側に設けられている。MEA60は、電解質膜40と、その両側の表面に形成された触媒電極層50によって構成されている。セパレータ30は、アノード側プレート31と、中間プレート32と、カソード側プレート33とによって構成されている三層構造セパレータである。本実施例では、セパレータ30の各部材31〜33は金属製である。金属多孔体20は、アノードガス又はカソードガスのための流路部材として用いられている。
図2は、図1におけるX領域を拡大した図である。説明のため、拡大図は右に90°回転させてある。以下ではカソード側プレート33を単に「セパレータ部材33」とも呼ぶ。金属多孔体20と、セパレータ部材33の表面には、それぞれ金めっき層70、80が形成されている。金属多孔体20側の金めっき層70は、セパレータ部材33側の金めっき層80よりも厚みが小さい。セパレータ部材33および金属多孔体20は、例えばチタンやステンレスで形成されている。なお、アノード側のセパレータ部材31と金属多孔体20にも同様に金めっき層が形成されているが、以下では主にカソード側のセパレータ部材33と金属多孔体20とに関して説明を行う。
図3は、図2におけるY領域を拡大した模式図である。金属多孔体20の表面を拡大すると、無数の小さな突起部100が存在することがわかる。なお図3では突起部100が一定の大きさの平行四辺形の形状を有するものとして描かれているが、これは図示の便宜上、簡略化して描かれたものである。実際には、種々の形状の突起がランダムに突出している。
突起部100の存在により、金属多孔体20の表面積は、平らな表面を持つ部材の表面積に比べて、大きい。したがって、金属多孔体20の表面すべてに金めっきを施そうとすると、平らな表面を持つ部材に金めっきを施す場合に比べて、大量の金を必要としてしまう。さらに、セパレータ部材33側の金めっき層80と、金属多孔体20側の金めっき層70とは、突起部100の先端部分のみで接している。したがって、金属多孔体20に金めっきをする場合において、突起部100の先端部分以外に金めっきを施しても、導電性改善の効果は小さい。
そこで本実施例では、セパレータ部材33側では、金めっき層80を厚く形成させ、金属多孔体20においては、表面に存在する突起部100の先端付近にのみ金めっき層70を形成させることによって、十分な導電性を確保しつつ、金の使用量を減らしている。
図4は、本実施例におけるめっき構造体を製造する工程を示すフローチャートである。図5は、その製造工程を表す図である。図4のステップS10では、まず金めっきが施されていないセパレータ部材33と金属多孔体20とを準備する(図5(A))。ステップS20では、このセパレータ部材33と金属多孔体20にそれぞれめっき処理を施す。
図6は、図4のステップS20の工程の内容を詳しく示したフローチャートである。ステップS21では、セパレータ部材33と金属多孔体20の表面に付着した油脂や、表面に形成された不動態皮膜を除去するために、脱脂および酸洗を行う。脱脂および酸洗の処理は、油脂や不動態皮膜が金めっきと部材の間に存在することによって、金めっきがはがれやすくなってしまうのを防ぐために行う。
ステップS22では、脱脂、酸洗を行ったら直ちに、セパレータ部材33と、金属多孔体20とをめっき液に漬ける。チタンの表面に不動態皮膜が形成されてしまう前にめっき処理を行うためである。
ステップS23では、めっきの膜厚を、電流の積算値によって制御する(図5(B))。すなわち、セパレータ部材33のめっき処理では比較的大きな電流積算値まで処理を継続し、金属多孔体20のめっき処理では比較的小さな電流積算値で処理を停止する。なお、金属多孔体20をめっき処理する場合には、めっき液に水流が起こらないようにすることが好ましい。この理由は、金属多孔体20の突起部100(図3)の先端付近のみに金めっきを付着させるためである。こうすれば、突起部100の先端以外の部分、すなわち突起部100の根元部分には、めっき液が入り込まず、金めっきが付着しないこととなる。
金めっき層の形成後、ステップS25において、セパレータ部材33にベーク処理を施し、金の密着性を高める。なお、金属多孔体20の場合は、ベーク処理を施さなくてもよい(ステップS24)。この理由は、後で詳述するように、金属多孔体20の金めっき層70は、燃料電池の組み立て後の加圧・通電工程によって金の密着性が高まるからである。
これらの金めっき処理の後、図4のステップS30において、めっき処理後のセパレータ部材33や金属多孔体20を用いて、燃料電池を組み立てる(図5(C))。この後、ステップS40において、燃料電池を発電させると、セパレータ部材33と金属多孔体20の間のめっき層70、80が一体化する。
図7は、図5のステップS30、S40における金めっき層70、80の変化の様子を示す説明図である。図7(A)は燃料電池の組み立て前の状態を示し、図7(B)は燃料電池の組み立て後の状態を示している。図7(C)は燃料電池の発電後の状態を示している。燃料電池スタックを組み立てた状態では、燃料電池スタックの締結部材(図示せず)によって図7(B)に示す矢印の方向に圧力が印加される。このとき、セパレータ部材33と金属多孔体20とは、金めっき層70、80を介して、金属多孔体20の突起部100の先端で接する。突起部100の先端部分の表面積のうち、セパレータ部材33との接点を構成している表面積は、金属多孔体20の見かけの表面積よりも10倍ほど小さい。従って、燃料電池スタックの組み立て時の公称面圧が1Mpaほどであったとしても、実際の先端の面圧は10Mpaほどとなる。ここで「見かけの表面積」とは、金属多孔体20の表面には突起部が無数に存在するのが実際であるが、便宜的に金属多孔体20の表面は凹凸のない平坦なものであると仮定した場合に、その仮定した表面形状から算出された表面積である。同様に、金属多孔体の見かけの表面積を用いて算出した面圧を公称面圧、見かけの表面積を用いて算出した電流密度を、公称電流密度と呼ぶこととする。
上記のように組み立てた燃料電池スタックを発電させると、セパレータ部材33と金属多孔体20に電気が流れる(図7(C))。公称電流密度が2A/cm2であった場合、実際は金属多孔体20の突起部100の先端部分のみが接点を構成しているため、実際の突起部100の先端の電流密度は、公称電流密度の約10倍の20A/cm2程度となる。
以上のように、突起部100の先端の実際の面圧、電流密度は、公称面圧、公称電流密度の約10倍となる。したがって、突起部100の先端の金めっき層70は、大きな面圧と発電によるジュール熱とにより、接点における金めっきの配置が図7(C)に模式的に示すように最適化される。なお図7(C)では、金めっき層70と金めっき層80には境界があるように描かれているが、これは説明の便宜上描かれたものである。実際には、金めっき層70と金めっき層80とは結合し、境界は消失している。この過程で、金属多孔体20と金めっき層70との密着性が高まるため、金属多孔体20は、上述したベーク処理をしなくてもよいこととなる。
以上のように、第1実施例では金属多孔体20にセパレータ部材33よりも薄い金めっき層70を形成したので、めっきに用いる金の量を減らすことができ、金属多孔体20とセパレータ部材33の間の導電性を十分に高めることができる。
B.第2実施例:
図8は、第2実施例における燃料電池の概略構成を表す図である。本実施例の燃料電池は固体高分子型燃料電池であり、MEA(膜電極接合体)60と、ガス拡散層110と、金属製のセパレータ部材120、130とを積層することによって構成されている。MEA60はガス拡散層110に挟持されている。図1に示した第1実施例の燃料電池では、水素や空気等が通過する流路部材として金属多孔体20が用いられていたが、本実施例ではセパレータ部材120又は130によって形成される通路部170が、水素や空気等の流路として用いられている。
図9は、図8におけるZ領域を拡大した図である。説明のため、拡大図は右に90°回転させてある。セパレータ部材120と130の表面には、それぞれ金めっき層150、140が形成されている。セパレータ部材130の金めっき層140は、もう一方のセパレータ部材120の金めっき層150よりも厚みが小さい。
第2実施例における製造工程は、図4及び図6で説明したものとほぼ同じである。但し、第2実施例では、2つのセパレータ部材120、130のそれぞれにベーク処理(図6のステップS25)を行うことが好ましい。セパレータ部材130の金めっき層140が十分に薄く、燃料電池スタックの組み立て前に金めっき層140がセパレータ部材130から剥離しないような場合には、セパレータ部材130にベーク処理を行わなくてもよい。
以上のように、第2実施例でも、セパレータ部材130には、もう一方のセパレータ部材120よりも薄い金めっき層140を形成したので、めっきに用いる金の量を減らすごとができ、セパレータ部材130と120の間の導電性を十分に高めることができる。
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
C1.変形例1:
上記実施例では、燃料電池用部材としての金属製のセパレータ部材33や、金属多孔体20に対して、上記実施例の手法で金めっきを施していたが、この代わりに、一般的な導電性部材に対して上記実施例の手法で金めっきを施して、めっきに用いる金の量を減らし、導電性を十分に高めることも可能である。
C2.変形例2:
上記実施例では、めっき処理に金を使用していたが、金の代わりに銀や銅等の一般的なめっき用材料を使用することとしてもよい。
第1実施例における燃料電池の概略構成を表す図である。 図1におけるX領域を拡大した図である。 図2におけるY領域を拡大した模式図である。 第1実施例におけるめっき構造体を製造する工程を示すフローチャートである。 図4の製造工程を表す図である。 図4のステップS20の工程の内容を詳しく示したフローチャートである。 図5のステップS30、S40における金めっき層70、80の変化の様子を示す説明図である。 第2実施例における燃料電池の概略構成を表す図である。 図8におけるZ領域を拡大した図である。
符号の説明
10…ガス拡散層
20…金属多孔体
30…セパレータ
31…アノード側プレート
32…中間プレート
33…カソード側プレート
40…電解質膜
50…触媒電極層
60…MEA(膜電極接合体)
70…金めっき層
80…金めっき層
100…突起部
110…ガス拡散層
120…セパレータ部材
130…セパレータ部材
140…金めっき層
150…金めっき層
170…通路部

Claims (1)

  1. めっき構造体の製造方法であって、
    (a)金属製セパレータ部材と、流路部材としての金属多孔体とを準備する工程と、
    (b)前記金属製セパレータ部材の表面上に、第1のめっき層を形成する工程と、
    (c)前記金属多孔体の表面上に、前記第1のめっき層よりも薄い第2のめっき層を形成する工程と、
    (d)前記第1の導電性部材と、前記金属多孔体と、を前記第1と第2のめっき層を介して接触させる工程と、
    (e)前記接触させた状態を保持しつつ、接触させた方向に加圧する工程と、
    (f)前記加圧した状態を保持しつつ、通電させる工程と、
    を備え、
    前記工程(b)は、前記第1のめっき層の形成後に、前記金属製セパレータ部材にベーク処理をする工程を含み、
    前記工程(c)は、前記第2のめっき層の形成後に、前記金属多孔体にベーク処理をする工程を含まない、
    めっき構造体の製造方法。
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