JP5063940B2 - コンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤及びその製造方法 - Google Patents

コンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、コンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤の製造方法およびそれによって得られるコンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤に関する。
貧血などの症状を示す患者に鉄を供給するための製剤として鉄コロイド製剤が知られており、鉄コロイド製剤としてグリコサミノグリカンの一種であるコンドロイチン硫酸(以下、「CS」と略記する。)と鉄を含むCS・鉄コロイド製剤が知られていた(特許文献1〜4等)。
このようなCS・鉄コロイド製剤は、生体への投与における目的、用法等に応じ、一定の分子量特性を有するCSを原料として用いて製造され、且つ一定の粒子径特性を有することが、品質が保証された製剤を安定的に供給する観点から好ましいことが知られている。
一方で近年、牛海綿状脳症(BSE)、口蹄疫等の人畜共通感染症に対して万全を期すための配慮から、サメ等のウシ以外の生物に由来するCSを原料としたCS・鉄コロイド製剤が望まれているが、CSの由来によっては、目的とする用途において好ましいとされる粒子径特性を有するCS・鉄コロイド製剤が得られないことがあることが知られていた(特許文献2)。
CSを分解する酵素としては、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼABC(非特許文献1参照。)等が知られている。
非特許文献2には、上記の酵素によってCSから不飽和二糖を生成させ、これを検出することにより、当該酵素の活性を測定する方法が開示されている。しかし、上記のような酵素を用いて、ある程度のサイズを保持しつつ低分子化されたCS画分を製造すること、及びこのようにして得られた低分子化されたCS画分を医薬原料として利用することについては、記載も示唆もない。
特公昭36−15296号公報 特開2004−196695号公報 特開2004−263109号公報 特開2004−346038号公報 ハマイら、1997年、ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第272巻、第14号、p.9123−9130 ヤマガタら、1968年、ザ ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー、第243巻、第7号、p.1523−1535
本発明は、ろ過性及び粒子径特性に優れ、生体への投与に適したCS・鉄コロイド製剤およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討を行った。その結果、塩酸による化学的分解により低分子化したサメ由来のCSを原料として用いた場合、好ましいろ過性及び粒子径特性を有するCS・鉄コロイド製剤が得られないことがあるという新たな課題を見出した。さらに本発明者らは、上記の新たな課題を解決するため鋭意検討を行った結果、CS又はその塩にCS分解酵素を作用させることによって得られる画分を原料として用いる
ことによって、ろ過性及び粒子径特性に優れたCS・鉄コロイド製剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は、CS又はその塩にCS分解酵素を作用させることによって得られる画分に、第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を接触させる工程を少なくとも含むことを特徴とする、CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記CS分解酵素がリアーゼであることを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記CS分解酵素がコンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACI、又はコンドロイチナーゼABCであることを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記画分が、下記(1)〜(3)の性質を有することを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(1)硫黄含量が6.5〜8%である。
(2)ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が、5,000〜20,000である。
(3)ローリー法によって測定したタンパク質含量が、0.1%以下である。
本発明はまた、上記画分が、さらに、下記(4)の性質を有するものである、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(4)ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した分子量分散度が、1.5〜2.2である。
本発明はまた、上記画分が、さらに、下記(5)の性質を有することを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(5)極限粘度が0.3〜0.5(dl/g)である。
本発明はまた、上記画分が、さらに、下記(6)の性質を有することを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(6):二糖分析の結果が以下の通りである。
ΔDi−0S:1.8%以上3.5%未満
ΔDi−6S:40%以上50%未満
ΔDi−4S:25%以上33%未満
ΔDi−diSD:15%以上22%未満
ΔDi−diSE:3%以上4%未満
ΔDi−triS:0%以上4%未満
本発明はまた、上記画分が、さらに、下記(7)〜(11)の性質を有するものである、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(7)塩化物含量が0.142%以下である。
(8)無機硫酸塩含量が0.24%以下である。
(9)重金属含量が20ppm以下である。
(10)ヒ素含量が2ppm以下である。
(11)窒素含量が2〜4%である。
本発明はまた、上記画分が、さらに、下記性質(12)を有するものである、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(12)前記画分1gを100mlの水溶液としたときのpHが6〜7である。
本発明はまた、上記画分が、さらに、下記(13)〜(17)の性質を有することを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する;
(13)旋光度が−15°〜−18°である。
(14)本画分1gを100mlの水溶液としたときに、無色澄明である。
(15)粉末状態としたときに、白色である。
(16)乾燥減量が1〜7%である。
(17)強熱残分が23〜31%である。
本発明はまた、上記CS又はその塩がサメ由来であることを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記画分に、第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を、pH8〜9の溶液中で接触させることを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記画分に第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を接触させる工程によって得られた画分のpHを7〜10に調整する工程をさらに含むことを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤の製造方法を提供する。
本発明はまた、上記製造方法によって製造される、CS・鉄コロイド製剤を提供する。
本発明はまた、下記(a)および(b)から選ばれる少なくとも1つの性質を有することを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤を提供する;
(a)光散乱法によって測定されるコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径が、60〜300nmである。
(b)該製剤1リットルを、圧力ゲージ 1.0〜1.5kgf/cm2において、ポリエステル不織布にセルロースアセテートをコートした多孔質フィルター(孔径0.8μm、直径124mm)に対してろ過に供した後に、ポリビニリデンフロライド多孔質フィルター(孔径0.22μm、直径142mm)に対してろ過に供したときに、全量が通過可能である。
本発明はまた、注射液であることを特徴とする、上記CS・鉄コロイド製剤を提供する。
本発明の製造方法によって得られるCS・鉄コロイド製剤は、ろ過性及び粒子径特性に優れており、生体への投与に適している。
以下、発明を実施するための最良の形態により本発明を詳説する。なお、本出願書類での「%」表記の単位は、特にことわらない限り「重量%」を意味する。ただし二糖分析における不飽和二糖の含有率については、不飽和二糖の含有モル比を「%」で表す。
また、本出願書類において、以下に述べる性質(1)〜(17)に記載されているパラメータは、特にことわりのない場合、本明細書中の実施例に記載した分析方法によって決定されるものである。特に、性質(7)に記載されている塩化物含量は、後述する(f)塩化物含量(実施例2)の方法により決定される値である。また、性質(8)に記載されている無機硫酸塩含量は、後述する(g)無機硫酸塩含量(実施例2)に記載の方法により決定される値である。
本発明においては、CS又はその塩にCS分解酵素を作用させることによって得られる画分に、第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を接触させることによって、CS・鉄コロイド製剤を製造する。
前記画分は、CS又はその塩のどちらか一方にCS分解酵素を作用させて得られるものでもよく、CSおよびその塩の混合物にCS分解酵素を作用させて得られるものでもよい。
ここで、CSの塩としては、例えばアルカリ金属塩(ナトリウム塩、リチウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩等の無機塩基との塩や、ジエタノールアミン塩、シクロへキシルアミン塩、アミノ酸塩等の有機塩基との塩などが例示される。
CS又はその塩は、例えば天然資源から公知の方法で抽出したCS又はその塩が挙げられる。天然資源から抽出したCS又はその塩は市販のものでもよい。CS又はその塩の原料として用いることができる天然資源としては、具体的にはサメ、サケ、エイ及びイカ等の水産動物の軟骨、鯨の軟骨(特に鼻軟骨)、ウシ、豚等の哺乳動物又は鳥類の気管等が例示される。なかでも水産動物としてはサメが好ましく、哺乳動物としては、ウシが好ましい。これらの天然資源から抽出したCS又はその塩はいずれも十分に安全性が高いものであるが、人畜共通感染症(例えばウシについては牛海綿状脳症(BSE)、牛痘、偽牛痘等が挙げられる)が見出されていない動物という観点では、サメであることが好ましい。サメとしては、具体的には吉切サメ等のいわゆる水物、アオザメ及びメジロザメ等のいわゆる堅物等が例示される。また、使用するサメの部位も特に限定されないが、CS又はその塩を豊富に含有するという観点では、軟骨又はヒレであることが好ましい。
上記の様な天然資源からCS又はその塩を抽出する方法としては、粉砕、中性塩法、アルカリ法、タンパク質分解酵素を用いる方法、オートクレーブを用いる方法、第四級アンモニウム塩を用いる方法に例示される、公知の方法を用いることが出来る。
本発明の製造方法において使用する画分は、このようにして取得したCS又はその塩にCS分解酵素を作用させて低分子化することによって得ることが出来る。CS分解酵素を用いることにより、CSが均一に低分子化され、より高い割合で硫酸基を保持したCS又はその塩の画分が得られ、且つCS・鉄コロイド製剤としたときに非常に優れた製剤学的特性(例えば、ろ過性が高い、製剤学的に問題となる異物を生じない、優れた粒子径を有するコロイドを形成する等)を発揮しうる。
CS分解酵素としては、コンドロイチナーゼACI、コンドロイチナーゼACII(コンドロイチンACリアーゼ、ともいう。)、I型及びII型のコンドロイチナーゼABC(コンドロイチンABCリアーゼ、ともいう。)が例示される。なかでも、コンドロイチナーゼABC(特に、I型のコンドロイチナーゼABC)又はコンドロイチナーゼACIIを用いることが好ましく、コンドロイチナーゼACIIを用いることが、均一に低分子化され、より高い割合で硫酸基を保持したCS又はその塩の画分が得られ、且つCS・鉄コロイド製剤としたときに非常に優れた製剤学的特性(例えば、ろ過性が高い、製剤学的に問題となる異物を生じない、優れた粒子径を有するコロイドを形成する等)を発揮しうるという観点からより好ましい。
ここで、CSまたはその塩にCS分解酵素を「作用させる」方法や条件は、上記画分の原料となる前記CS又はその塩の分子と、CS分解酵素の分子とが接触することにより、当該CS分解酵素の分子が当該CS又はその塩の分子に作用して、CS又はその塩の低分子化が惹起される限りにおいて特に限定されない。作用させる際の温度も、用いるCS分解酵素が作用しうる限りにおいて特に限定されないが、当該CS分解酵素の至適温度付近が好ましい。例えば、20〜40℃で行うことが好ましく、30℃〜40℃で行うことがより好ましく、37℃で行うことが最も好ましい。また、作用させる際のpHも、同様に
当該酵素が作用しうる限りにおいて特に限定されないが、当該酵素の至適pH付近が好ましい。例えば、pH5〜9の溶液中で行うことが好ましい。
例えばコンドロイチナーゼABCを用いる場合においては、pH7〜9の溶液中で行うことが好ましく、pH7.5〜8.5の溶液中で行うことがより好ましく、pH8で行うことが最も好ましい。例えばコンドロイチナーゼACIIを用いる場合においては、pH5〜7の溶液中で行うことが好ましく、pH5.5〜6.5の溶液中で行うことがより好ましく、pH6で行うことが最も好ましい。また、上記接触を行う際の溶液も、CS分解酵素のCS又はその塩に対する作用が発揮される限りにおいて特に限定されないが、水性溶液が好ましい。水性溶液としては、水、緩衝液、生理的塩類溶液等が例示される。また、低分子化の対象となるCS又はその塩の量も、適宜調節することが出来る。また、反応に使用するCS分解酵素のユニット数(例えば、コンドロイチナーゼABCを使用する場合、「37℃、pH8.0の条件下で、CSC(サメ軟骨由来)から1分間あたり1 μmoleの不飽和二糖を生成する酵素量」を1ユニットとし、コンドロイチナーゼACIIを使用する場合、「37℃、pH6.0の条件下で、CSC(サメ軟骨由来)から1分間あたり1 μmoleの不飽和二糖を生成する酵素量」を1ユニットとする。)並びに反応時間は、低分子化の対象となるCS又はその塩や、所望するCS又はその塩の量に応じて適宜調節することが出来る。CS分解酵素のユニット数は、例えば1gのCS又はその塩に対して、0.5〜3.0ユニットのCS分解酵素を使用することが好ましく、0.5〜1.5ユニットのCS分解酵素を使用することがより好ましい。また、使用するCS分解酵素のユニット数は、低分子化の対象となるCS又はその塩や、所望するCS又はその塩の量に応じて適宜調節することが出来る。また、反応時間は、1〜20時間であることが好ましく、1〜10時間であることがより好ましく、1〜6時間であることが最も好ましい。より具体的な方法の例示については、実施例を参照されたい。
このようにして低分子化したCS又はその塩を含む画分を本発明の製造方法に使用してもよいが、低分子化したCS又はその塩を含む画分からタンパク質等の不純物を除去した画分を本発明の製造方法における画分として使用することが好ましい。なお本出願書類において「除去」とは、ある物質を完全に除き去ることのみならず、部分的に除き去る(その物質の量を減少させる)ことをも意味する用語として用いる。
タンパク質の除去は、CS分解酵素を作用させる前のCSまたはその塩に対して行ってもよく、低分子化後のCS又はその塩を含有する画分に対して行ってもよいが、少なくとも低分子化後のCS又はその塩を含有する画分に対して行うことが好ましい。なかでも、低分子化の前後にそれぞれ行うことがより好ましい。尚、CS分解酵素は、加熱等により失活させることもできる。
また、タンパク質を除去するステップを行うことによって、同時に、塩化物、無機硫酸塩、重金属、ヒ素といった不純物を除去することも出来る。
タンパク質を除去する方法としては、有機溶媒(例えばアルコール)による沈殿及び分画、塩析、活性炭処理、タンパク質分解酵素を用いた除タンパク質処理が例示され、またこれらの方法を組み合わせることによっても行うことが出来るが、アルコール沈殿による分画及び活性炭処理により行うことが好ましい。
以上のように、本発明における「画分」は、CS分解酵素によって低分子化されたCSまたはその塩を含むものであればよいが、CS又はその塩を含む溶液にCS分解酵素を作用させて得られる溶液に対して分画操作を行い、上記CS分解酵素及びその他の不純物を除去することにより得られる画分であることが好ましい。
また、CS又はその塩を含む溶液にCS分解酵素を作用させて得られる溶液を乾燥したり、濃縮したり、溶媒を置換したり、脱塩を行うなどして得られるものを画分として用いてもよい。
本出願書類において「画分」という場合、その状態も特に限定されず、精製水、緩衝液、生理食塩水等の適当な溶媒に溶解した溶液状態でもよく、固体の状態(粉末等や、溶液が凍結した状態等)でもよい。
本発明の製造方法に用いる上記画分は、下記性質(1)〜(3)を有することが好ましい。
性質(1):硫黄含量が、6.5〜8%である。
なかでも、硫黄含量が、6.8〜8%であることが好ましく、6.8〜7.5%であることがより好ましく、6.9〜7.5%であることがより好ましく、7〜7.5%であることがより好ましく、7.1〜7.5%であることがより好ましく、7.1〜7.3%であることがより好ましく、7.1〜7.2%であることが最も好ましい。また、硫黄含量が7〜8%であることも好ましく、なかでも7〜7.5%であることがより好ましく、7〜7.3%であることがさらに好ましい。硫黄含量の測定は、自動分析装置を用いることによって行うことが出来る。具体的な測定方法については、実施例を参照されたい。CS分解酵素を作用させることによる低分子化は、塩酸等による化学的分解と比較して、よりマイルドな条件でCS又はその塩を低分子化することができる。このような酵素を用いたマイルドな条件下での低分子化は、原料として用いるCS又はその塩の分子中に存在する硫酸基の脱離がなるべく惹起されない低分子化の実現に貢献しており、結果として本発明は上記のような高い硫黄含量を有する画分を提供することができる。
性質(2):ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が、5,000〜20,000である。
なかでも、ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が、10,000〜18,000であることが好ましく、12,000〜16,000であることがより好ましく、14,000〜15,000であることが最も好ましい。ゲル濾過クロマトグラフィーによる重量平均分子量は、後述の実施例に記載の通り、重量平均分子量が既知の標準物質をゲル濾過カラムに付して、溶出時間と重量平均分子量との関係についての検量線を作成しておき、次いで重量平均分子量測定の対象とするCS又はその塩を同一条件下でゲル濾過カラムに付して、溶出時間を測定し、この測定値と前記検量線を用いて求めることが出来る。具体的には実施例を参照されたい。
性質(3):ローリー法によって測定したタンパク質含量が、0.1%以下である。
なかでも、ローリー法によって測定したタンパク質含量が、0.05%以下であることが好ましく、0.02%以下であることがより好ましく、0.01%以下であることが最も好ましい。ローリー法によるタンパク質含量の測定は、公知の方法により行うことが出来る。具体的な測定方法については、実施例を参照されたい。
なお、ここでいうタンパク質含量とは、不純物としてのタンパク質の含量を意味し、キャリア、安定化剤又はコンドロイチン硫酸・鉄コロイド以外の有効成分などとしてタンパク質を加える場合、その含量は計算に入れない。
また、上記画分は、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した分子量分散度が、1.5〜2.2であることが好ましい(性質(4))。なかでも、ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した分子量分散度が、1.6〜2.2であることがより好ましく、1.6〜2.0であることが最も好ましい。ゲル濾過クロマトグラフィーによる、分子量分散度の測定方法については、実施例を参照されたい。
また、上記画分は、極限粘度が0.3〜0.5(dl/g)であることが好ましい(性質(5))。なかでも極限粘度が0.4〜0.5(dl/g)であるものが好ましく、0.35〜0.45(dl/g)であることがさらに好ましく、0.38〜0.42(dl/g)であることが最も好ましい。極限粘度の具体的な測定方法については、実施例を参照されたい。
また、上記画分は、二糖分析の結果が以下の通りのものであることが好ましい(性質(6))。
ΔDi−0S:1.8%以上3.5%未満
ΔDi−6S:40%以上50%未満
ΔDi−4S:25%以上33%未満
ΔDi−diSD:15%以上22%未満
ΔDi−diSE:3%以上4%未満
ΔDi−triS:0%以上4%未満
なお、本出願書類におけるΔDi−0S、ΔDi−6S、ΔDi−4S、ΔDi−diSD、ΔDi−diSE、ΔDi−triSは、Analytical Biochemistry 177, p327-332(1989)の定義に従って表記した。
なお、本出願書類における「二糖分析」の用語は、CSまたはその塩に作用して不飽和二糖を生成させる酵素(リアーゼ)でCS又はその塩を酵素処理し、該CSまたはその塩の構成二糖を反映して生成する不飽和二糖を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により、同定及び定量することを意味する。より具体的な二糖分析の方法は、実施例を参照されたい。
また、上記画分は、塩化物含量が0.142%以下であるものが好ましい(性質(7))。
また、上記画分は、無機硫酸塩含量が0.24%以下であるものが好ましい(性質(8))。
また、上記画分は、重金属含量が20ppm以下であるものが好ましい(性質(9))。
また、上記画分は、ヒ素含量が2ppm以下であるものが好ましい(性質(10))。
また、上記画分は、窒素含量が2〜4%であるものが好ましい(性質(11))。なかでも窒素含量が2〜3%であるものが好ましく、2.5〜2.7%であるものがより好ましい。
上記塩化物含量、無機硫酸塩含量、重金属含量、ヒ素含量及び窒素含量の具体的な測定方法は、実施例を参照されたい。
さらに上記画分は、上記画分1gを100mlの水溶液としたときのpHが6〜7であるものが好ましい(性質(12))。なかでも上記画分1gを100mlの水溶液としたときのpHが6.5〜7であることがより好ましい。ここで、「画分1g」とは、乾燥状態の画分1gを意味する。pHは、公知の方法により測定することが出来る。具体的には、実施例を参照されたい。
また、上記画分は、旋光度が−15〜−18°であるものが好ましい(性質(13))。なかでも旋光度が−15.5〜−17.5°であるものがより好ましく、−16.0〜−17.0°であるものが最も好ましい。旋光度は、公知の方法により測定することが出来る。より具体的には、実施例を参照されたい。
また、上記画分は、上記画分1gを100mlの水溶液としたときに、無色澄明であるものが好ましい(性質(14))。ここで、「画分1g」とは、乾燥状態の画分1gを意味する。
また、上記画分は、粉末状態としたときに、白色であるものが好ましい(性質(15))。
また、上記画分は、乾燥減量が1〜7%であるものが好ましい(性質(16))。なか
でも乾燥減量が3〜6%であるものがより好ましく、4〜5.5%であるものが最も好ましい。
また、上記画分は、強熱残分が23〜31%であるものが好ましい(性質(17))。なかでも強熱残分が28〜30%であるものがより好ましい。上記乾燥減量及び強熱残分の具体的な測定方法については、実施例を参照されたい。
本発明においては、上記の画分に、第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を接触させることによって、CS・鉄コロイド製剤を製造する。より具体的には、例えばCSナトリウムの3〜10%水溶液に、1ml中に鉄10〜100mgを含有する第二鉄塩を攪拌下常温で滴下した後に、アルカリ金属水酸化物の水溶液を滴下し、pHを好ましくは7〜10に、より好ましくは8.5〜9.5に、最も好ましくは9に調整することにより、本発明のCS・鉄コロイド製剤を製造することができる。
ここで、第二鉄塩としては、塩化第二鉄、クエン酸第二鉄、ピロリン酸第二鉄、グルコン酸第二鉄、硫酸第二鉄などが挙げられるが、なかでも塩化第二鉄が好ましい。
アルカリ金属水酸化物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、なかでも水酸化ナトリウムが好ましい。
上記画分に第二鉄塩を接触させる際の条件は特に制限されないが、例えば、上記画分の溶液に水酸化ナトリウムに例示されるアルカリ金属水酸化物の固体または溶液(好ましくは溶液)を加えて溶液のpHを好ましくはpH8〜9のアルカリ性にし、そこに固体または溶液(好ましくは溶液)の第二鉄塩を滴下することにより接触させることが好ましい。さらに上記の滴下は、水酸化ナトリウムに例示されるアルカリ金属水酸化物を用いて、常にpHが8〜9となるように調整しながら行うことが好ましい。また第二鉄塩の接触後の溶液は、水酸化ナトリウムに例示されるアルカリ金属水酸化物を用いてpH8.5〜9.5、より好ましくはpH9に調整することが好ましい。
上記のようにして得られたCS・鉄コロイド溶液は、優れたろ過性及び粒子径特性を有しており、好ましくは以下の(a)および(b)から選ばれる少なくとも1つの性質を有する。
(a)光散乱法によって測定されるコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径が、60〜300nmである。
(b)該製剤1リットルを、圧力ゲージ 1.0〜1.5kgf/cm2において、ポリエステル不織布にセルロースアセテートをコートした多孔質フィルター(孔径0.8μm、直径124mm)に対してろ過に供した後に、ポリビニリデンフロライド多孔質フィルター(孔径0.22μm、直径142mm)に対してろ過に供したときに、全量が通過可能である。
本発明の製造方法によれば、例えば光散乱法によって測定されるコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径が約200nm又は250nmである場合のように、比較的大きい粒子径を有するコンドロイチン硫酸・鉄コロイドを含有するCS・鉄コロイド製剤であっても、上記(b)のような高いろ過性を有する製剤とすることも可能である。より具体的には、後述する実施例、特に、表4中の調整後の平均粒子径を参照されたい。
上記のようにして得られるCS・鉄コロイド溶液は、必要に応じて希釈、濃縮、溶液の置換、滅菌、ろ過等の処理を行った後にCS・鉄コロイド製剤として用いてもよい。また、本発明のCS・鉄コロイド製剤は、CS・鉄コロイド以外の成分をさらに含有していても良い。そのような成分としては、医薬、医薬原料、試薬、試薬原料、化粧品、化粧品原料、食品添加物、薬学的に許容される担体(例えば、緩衝剤や安定化剤など。)等が例示されるが、これらに限定されるものではない。
本発明のCS・鉄コロイド製剤は、これが含有する鉄の量によって限定されるべきものではないが、例えば1ml中に3〜5mgの鉄を含有することが好ましく、約4mgの鉄を含有することがより好ましい。
本発明の製造方法によって得られたCS・鉄コロイド製剤の剤型は特に制限されないが、注射剤として特に好適に使用することができる。
本発明のCS・鉄コロイド製剤は、その投与方法、投与量によって限定されるべきものではないが、本発明のCS・鉄コロイド製剤を例えば鉄欠乏性貧血の予防、緩和、治療等の目的で、あるいは増血又は貯蔵鉄の不足を補う目的で用いる場合、患者のヘモグロビン量と体重から公知の方法により必要鉄量を算出し、適当な量のCS・鉄コロイド製剤を投与することができ。より具体的には、例えば鉄として一日20〜40mgとなるように投与すること、すなわち、例えば本発明のCS・鉄コロイド製剤が、1ml中に4mgの鉄を含有する場合、一日5〜10mlの本発明のCS・鉄コロイド製剤を静脈注射することにより投与することが好ましい。上記の投与量は患者の年齢、症状等によっても適宜調整することができる。
なお、本発明のCS・鉄コロイド製剤は、鉄欠乏性貧血の治療に有用であり、ラットによる静脈内反復投与試験により安全性が確認されている。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例の態様に限定されない。
CSナトリウム画分の調製
サメ軟骨を粉砕し、これにタンパク質分解酵素(エスペラーゼ;ノボザイムズ社製)を作用させることにより、CSナトリウム137.6kgを含有する溶液を得た。この溶液を約1400Lに調整し、約10.4万ユニットのコンドロイチナーゼACII(生化学工業株式会社製)を加え、混合した後、37℃にて約6時間作用させた。得られた反応後の溶液に対して、アルコール沈殿による分画を行い、続いて活性炭処理を行った。得られた画分の脱塩を行い、低分子化した精製CSナトリウム95.3kgを含有する溶液1520リットル(濃度62.7mg/ml)を得た。このようにして得られたCSナトリウム溶液を、約60℃にて減圧乾燥し、CSナトリウム(ロット1)を得た。
上記精製ステップにおける各種パラメータは、表1(ロット1)にまとめた。また、上記の精製ステップにおける各種パラメータを、表1(ロット2〜5)の通りに変えて、精製を行い、CSナトリウム(ロット2〜5)を得た。ロット1〜5において、乾燥後のCSナトリウムは白色であり、乾燥後のCSナトリウム1.0 gに水を加えて100 mlとしたとき、無色澄明であった。
Figure 0005063940
CSナトリウム画分の分析
実施例1で得られたCSナトリウム(ロット1〜5)を、下記の方法により分析した。(a)重量平均分子量
下記の条件で測定を行い、分子量既知の標準試料と溶出時間を比較することにより、重量平均分子量を算出した。
測定試料:実施例1で得られた乾燥後のCSナトリウム 5 mgを精製水に溶解し、10 mlにメスアップした後、0.22 μmのフィルターで濾過した。測定においては、得られた上記測定試料の内、100 μlをインジェクションした。
カラム:TSK-GEL(東ソー製、TSKgel G4000PWXLとTSKgel G3000PWXLを連結して使用した。)
バッファー:0.2 mol/L NaCl溶液(0.22 μmのフィルターで濾過したもの。)
流速:0.5 ml/min
測定時間:55分
測定温度:40 ℃
検出器:RI(示差屈折計)
標準試料:分子量52200、31400、20000、10200、6570のCSナトリウム(生化学工業株式会社製)を使用した。
解析ソフトウェア:Waters ミレニアム32 Ver 3.01(日本ウォーターズ株式会社)
(b)分子量分散度(MW/MN)
(a)と同様の条件で測定した数平均分子量(MN)に対する重量平均分子量(MW)の割合を、上記(a)記載の解析ソフトウェアを用いて自動計算し、求めた。
(c)硫黄含量
実施例1で得られた乾燥後のCSナトリウムについて、堀場硫黄分析装置(EMIA-120)を使用し、硫黄含量を測定した(3回の測定により得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとにそれぞれ無水物換算し、得られた値の平均値を測定結果とした)。
(d)タンパク質含量
実施例1で得られた乾燥後のCSナトリウム(濃度既知)に対し、標準物質としてウシ血清アルブミンを用い、ローリー法によりタンパク質含量を測定した(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(e)極限粘度
第十四改正日本薬局方(45.粘度測定法 第1法 毛細管粘度計法(p.66〜67))に記載の方法に従って、測定を行った(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(f)塩化物含量
日本薬局方外医薬品規格2002(コンドロイチン硫酸ナトリウム、純度試験(2)塩化物(p.296))に記載の方法に従って測定を行った。測定試料としては、実施例1で得られた、乾燥後のCSナトリウム 0.1 gを使用した(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(g)無機硫酸塩含量
日本薬局方外医薬品規格2002(コンドロイチン硫酸ナトリウム、純度試験(3)硫酸塩(p.296))に記載の方法に従って測定を行った。(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(h)重金属含量
第十四改正日本薬局方(26.重金属試験法 (2)第2法(p.36〜37))に記載の方法に従って、測定を行った(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(i)ヒ素含量
第十四改正日本薬局方(51.ヒ素試験法 (3)第3法(p.78〜79))に記載の方法に従っ
て、測定を行った(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(j)窒素含量
第十四改正日本薬局方(36.窒素定量法(セミミクロケルダール法)(p.53〜54))に記載の方法に従って、測定を行った(得られた実測値を、乾燥減量(下記(m)参照)をもとに無水物換算し、測定結果とした)。
(k)pH
第十四改正日本薬局方(48.pH測定法(p.69〜71))に記載の方法に従って、測定を行った。試料溶液としては、実施例1で得られた、乾燥後のCSナトリウム 1gを水に溶解し、100 ccとした溶液を使用した。
(l)旋光度
実施例1で得られた乾燥後のCSナトリウム 0.5 g((m)乾燥減量記載の方法により得た乾燥減量をもとに無水物換算した値)を水 50 mLに溶解し、100 mmセルにて測定した。
上記測定は、第十四改正日本薬局方(35.旋光度測定法(p.53))に記載の方法に従って行った。
(m)乾燥減量
第十四改正日本薬局方(10.乾燥減量試験法(p.25〜26))に記載の方法に従って、測定を行った(0.1 g、減圧 0.67 kpa以下、五酸化リン、60℃、4時間)。
(n)強熱残分
第十四改正日本薬局方(16.強熱残分試験法(p.27〜28))に記載の方法に従って、測定を行った(1g、乾燥後)。

(a)〜(n)の分析結果を、表2に示す。
Figure 0005063940
(o) 二糖分析
(測定試料の調製)
実施例1で得られた、乾燥後のCSナトリウム 100 mgを精製水に溶解させ、10 mlにメスアップした。氷浴中において、コンドロイチナーゼABC 10 ユニット/50 μlに試料溶液 100 μlを添加し、攪拌した。更にTris-HCl緩衝液(pH 7.9)200 μlを添加し、攪拌した。これを37℃において1時間インキュベーションした後、沸騰浴中において30秒間加熱処理し、酵素を失活させた。精製水 650 μlを添加し、攪拌した後、0.22 μmのフィルターで濾過した。測定においては、上記試料10 μlをインジェクションした。
(測定条件)
カラム:YMC-GEL PA-120-S5(株式会社ワイエムシィ)
標準試料:不飽和CSナトリウム HPLC用(ΔDi−0S、ΔDi−6S、ΔDi−4S、ΔDi−diSD、ΔDi−diSE、ΔDi−triS)(生化学工業株式会社)バッファー;水と0.8 mol/L NaH2PO4水溶液の濃度勾配により行った(水と0.8 mol/L NaH2PO4水溶液の割合は、45分の間に、98:2→25:75に変化させた)。
流速:1.0 ml/min
測定温度:40℃
検出器:UV(230 nm)
各二糖単位の含量(%)は、その溶出パターンの積分値(面積)を、濃度既知の上記標準試料の溶出パターンの積分値(面積)と比較することにより求めた。
二糖分析結果を表3に示す。
Figure 0005063940
以上の実施例によって、CSナトリウムをCS分解酵素を作用させて低分子化することにより、重量平均分子量(ゲル濾過クロマトグラフィー)が、5,000〜20,000の範囲に均一に低分子化され、硫黄含量が6.5〜8%に保持され、且つ高純度に精製された、非常に高品質なCSナトリウムの画分が得られることが明らかになった。
CS・鉄コロイド製剤の調製
実施例1で調製したCSナトリウムを材料として用い、CS・鉄コロイド製剤の調製を行った。
CSナトリウムの4重量%水溶液500mlを、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH8〜9に調整した。水酸化ナトリウム水溶液を用いて水溶液のpHを8〜9の間に保ちつつ、上記調整後のCSナトリウム水溶液に、1ml中に鉄 約20mgを含有する塩化第二鉄液200mlを攪拌下常温で滴下した。上記滴下後の溶液のpHを、水酸化ナトリウム水溶液を用いて9に調整し、蒸留水を加えて全量を1000mlに調整し、CS・鉄コロイド製剤を得た。本品は、1ml中に鉄4mgを含有する。
得られた製剤各1リットルを、それぞれステンレス製フィルターホルダー(ミリポア社)を用い、圧力ゲージ 1.0〜1.5kgf/cm2において、プレフィルターとしてポ
リエステル不織布にセルロースアセテートをコートした多孔質フィルター(アドバンテック社、品名:Y008A124A、孔径0.8μm、直径124mm)を用いてろ過に供した後に、ファイナルフィルターとしてポリビニリデンフロライド多孔質フィルター(ミリポア社、品名:デュラポアメンブレンフィルター、孔径0.22μm、直径142mm)を用いてろ過に供したとき、全量が通過可能であった。さらにろ過後の各製剤を、耐圧瓶に入れてオートクレーブ(102℃、90分)により滅菌した。
各CSナトリウム画分を材料として用いた場合に得られた各製剤の平均粒子径を、光散乱法濃厚系粒径アナライザー:FPAR-1000(大塚電子株式会社)によって測定した。結果を表4に示す。
Figure 0005063940
*1 実施例中、蒸留水を加えて全量を1000mlに調整し、CS・鉄コロイド製剤を得た後に測定した平均粒子径を示す。
[参考例1]
塩酸を用いたCSナトリウムの画分の調製及び分析
以下、塩酸を用いて低分子化を行う場合について、参考例を示す。
コンドロイチナーゼACIIに代えて、塩酸を用いてCSナトリウムを低分子化するという点以外は、上記実施例1と基本的に同様の方法によって、CSナトリウム画分の調製を行った。塩酸による低分子化を経て得られたCSナトリウム溶液を、約60℃にて減圧乾燥した。乾燥後のCSナトリウムは白色であった。また、乾燥後のCSナトリウム1.0 gに水を加えて100 mlとしたとき、無色澄明であった。
実施例2に記載の(a)〜(n)の分析を行った。結果を表2(ロット6)に示す。
[参考例2]
CS・鉄コロイド製剤の調製
参考例1で調製したCSナトリウムを材料として用いることの他、実施例3と同様の方法により、CS・鉄コロイド製剤の調製を行った。
得られた製剤1リットルを、実施例3と同様の方法によりろ過に供したところ、200mlが通過可能であり、残りの800mlは通過しなかった。また、調製した各製剤の平均粒子径を、実施例3と同様の方法によって測定した。結果を表4(ロット6)に示す。

Claims (14)

  1. サメ由来のコンドロイチン硫酸又はその塩にコンドロイチン硫酸分解酵素を作用させることによって得られる画分に、第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を接触させる工程を少なくとも含むことを特徴とする、コンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤の製造方法。
  2. コンドロイチン硫酸分解酵素がリアーゼである、請求項1に記載の製造方法。
  3. コンドロイチン硫酸分解酵素が、コンドロイチナーゼACII、コンドロイチナーゼACI、又はコンドロイチナーゼABCである、請求項1に記載の製造方法。
  4. 前記画分が、下記(1)〜(3)の性質を有するものである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法;
    (1)硫黄含量が6.5〜8%である。
    (2)ゲル濾過クロマトグラフィーにより測定した重量平均分子量が、5,000〜20,000である。
    (3)ローリー法によって測定したタンパク質含量が、0.1%以下である。
  5. 前記画分が、さらに、下記(4)の性質を有するものである、請求項4に記載の製造方法;
    (4)ゲル濾過クロマトグラフィーで測定した分子量分散度が、1.5〜2.2である。
  6. 前記画分が、さらに、下記(5)の性質を有するものである、請求項4または5に記載の製造方法;
    (5)極限粘度が0.3〜0.5(dl/g)である。
  7. 前記画分が、さらに、下記(6)の性質を有するものである、請求項4〜6のいずれか一項に記載の製造方法;
    (6):二糖分析の結果が以下の通りである。
    ΔDi−0S:1.8%以上3.5%未満
    ΔDi−6S:40%以上50%未満
    ΔDi−4S:25%以上33%未満
    ΔDi−diSD:15%以上22%未満
    ΔDi−diSE:3%以上4%未満
    ΔDi−triS:0%以上4%未満
  8. 前記画分が、さらに、下記(7)〜(11)の性質を有するものである、請求項4〜7のいずれか一項に記載の製造方法;
    (7)塩化物含量が0.142%以下である。
    (8)無機硫酸塩含量が0.24%以下である。
    (9)重金属含量が20ppm以下である。
    (10)ヒ素含量が2ppm以下である。
    (11)窒素含量が2〜4%である。
  9. 前記画分が、さらに、下記性質(12)を有するものである、請求項4〜8のいずれか一項に記載の製造方法;
    (12)前記画分1gを100mlの水溶液としたときのpHが6〜7である。
  10. 前記画分が、さらに、下記(13)〜(17)の性質を有するものである、請求項4〜9のいずれか一項に記載の製造方法;
    (13)旋光度が−15°〜−18°である。
    (14)本画分1gを100mlの水溶液としたときに、無色澄明である。
    (15)粉末状態としたときに、白色である。
    (16)乾燥減量が1〜7%である。
    (17)強熱残分が23〜31%である。
  11. 前記画分に、第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を、pH8〜9の溶液中で接触させることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の製造方法。
  12. 前記画分に第二鉄塩及びアルカリ金属水酸化物を接触させる工程によって得られた画分のpHを8.59.5に調整する工程をさらに含むことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の製造方法。
  13. コンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤が、下記(a)および(b)から選ばれる少なくとも1つの性質を有する、請求項1〜12のいずれか一項に記載のコンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤の製造方法
    (a)光散乱法によって測定されるコンドロイチン硫酸・鉄コロイドの平均粒子径が、60〜300nmである。
    (b)該製剤1リットルを、圧力ゲージ 1.0〜1.5kgf/cm2において、ポリエステル不織布にセルロースアセテートをコートした多孔質フィルター(孔径0.8μm、直径124mm)に対してろ過に供した後に、ポリビニリデンフロライド多孔質フィルター(孔径0.22μm、直径142mm)に対してろ過に供したときに、全量が通過可能である。
  14. コンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤が、注射液である、請求項13に記載のコンドロイチン硫酸・鉄コロイド製剤の製造方法
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