JP5063217B2 - 水性ポリイソシアネート組成物及びそれを含む水性塗料組成物 - Google Patents
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Description
一方、近年、地球環境、安全、衛生などの観点から水性塗料が注目されており、建築外装から産業製品、例えば、食缶用、コイルコーティング用等の工業塗料に該水性塗料が使用されるようになってきた。ポリイソシアネートを硬化剤とした提案も多く、例えば、特許文献1、2では、疎水性ポリイソシアネートを主剤である水系ポリオールの水性化能を利用して、水分散し、水性塗料を形成している。また、特許文献3、4では、ポリイソシアネートの水分散性を向上させるために、カルボキシル基(特許文献3)あるいは、ノニオン系親水性基であるポリエチレングリコール(特許文献4)をポリイソシアネートに組み込むことを提案している。これらに使用されている原料ポリイソシアネートのイソシアネート基平均数は、溶剤系2液ウレタンと同様に約3であった。
更に、イソシアネート基平均数は、ポリイソシアネートの水分散性を向上させるために組み込まれたカルボキシル基やノニオン基等により消費される。このようなイソシアネート基平均数の低いポリイソシアネートから得られる塗膜物性は、従来の溶剤系2液ウレタン塗料から得られる塗膜と比較して、物性低下が防げない場合があった。
上記課題を解決するために、原料ポリイソシアネートとしてイソシアネート基平均数を高めた技術が特許文献5、6に開示されている。しかし、これらを硬化剤として使用した場合、親水基として導入したポリエチレングリコール成分の影響により、塗膜硬度が不足する場合があった。
優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現するため、ヘキサメチレンジイソシアネートとイソホロンジイソシアネートを共重合させ、かつイソシアネート基平均数が高い水性ポリイソシアネートが特許文献8で提案されている。これらを硬化剤として使用した場合、塗膜硬度低下を招くポリエチレングリコール成分を使用したにもかかわらず高い塗膜硬度を達成された。しかし、これらを硬化剤として使用した場合、塗料のポットライフが短くなる場合があった。
そのため、架橋性に優れ、高い塗膜硬度を発現し、さらに、これを使用した塗料のポットライフを確保できるポリイソシアネートが切望されていた。
すなわち本発明は、以下の通りである。
1.下記構造式(1)で示される水性ポリイソシアネート組成物であって、下記条件(1)〜(5)のすべて満たし、水に溶解又は分散し得ることを特徴とする水性ポリイソシ
アネート組成物。
Am −R−(NCO)n ・・・式(1)
(1)式中、Aは、エチレンオキサイド繰り返し単位を含有するノニオン性親水基であり、Rは、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシネート群のそれぞれの群から少なくとも1種選ばれた合計2種以上のジイソシアネートと1種以上の水酸基平均数が3〜4であるポリオールから誘導されたポリイソシアネートにおけるイソシアネート基を除く残基であり、ポリオール成分濃度が1〜30質量%、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=90/10〜60/40(質量比)であり、かつ、ジイソシアネートとポリオールとがアロファネート結合及び/又はウレタン結合を介して結合されている残基である。
(2)イソシアネート基平均数nが2.3〜4.0である。
(3)親水基平均数mとイソシアネート基平均数nが、m/(m+n)の値が0.02〜0.30である。
(4)イソシアネート基濃度:2〜20質量%である。
(5)25℃における粘度が5〜200Pa・sである。
3.R残基のポリオール成分濃度が1〜20質量%であることを特徴とする上記1.又は2.のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
4.R残基のポリオールが数平均分子量150〜500であることを特徴とする上記1.〜3.のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
5.R残基のポリオールがポリエステルポリオールであることを特徴とする上記1.〜4.のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
6.R残基の脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシネート成分が、80/20〜60/40(質量比)であることを特徴とする上記1.〜4.のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
7.上記1.〜4.のいずれか1項に記載の水性ポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物。
一般に、水性ポリイソシアネート組成物の親水基には、イオン性親水基とノニオン性親水基がある。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の親水基としては、エチレンオキサイド繰り返し単位を含有するノニオン性親水基が挙げられ、エチレンオキサイドの繰り返し単位数としては、好ましくは、5〜50個であり、さらに好ましくは、5〜30個である。
エチレンオキサイドの繰り返し単位が5個未満の場合は、水への分散性が低下する恐れがあり、50個を越えると、親水性ポリイソシアネート組成物の結晶性が高くなり、固体となる場合があるため、好ましくない。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の親水基には、エチレンオキサイド以外の繰り返し単位を含有しても構わない。
本発明水性ポリイソシアネート組成物に用いる脂環族ジイソシアネートとしては炭素数8〜30のものが好ましく、例えば、イソホロンジイソシアネート(以下「IPDI」と言う。)、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートなどが挙げられる。なかでも、耐候性、工業的入手の容易さからIPDIが好ましい。
この中ではトリオール類が好ましく、その中でもトリメチロールプロパンがさらに好ましい。
アクリルポリオールとしては、例えば、アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸−2−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つアクリル酸エステル、またはグリセリンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステル、トリメチロールプロパンのアクリル酸モノエステルあるいはメタクリル酸モノエステルの群から選ばれた単独又は混合物とアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシルなどのアクリル酸エステル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸−2−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−2−ヒドロキシブチル、メタクリル酸−3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸−4−ヒドロキシブチル等の活性水素を持つメタクリル酸エステル、またはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−ヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステルの群から選ばれた単独又は混合物を用い、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド等の不飽和アミド、及びメタクリル酸グリシジル、スチレン、ビニルトルエン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、フマル酸ジブチル等のその他の重合性モノマーの群から選ばれた単独又は混合物の存在下、或いは非存在下において重合させて得られるアクリルポリオールが挙げられる。
その重合方法としては、乳化重合、懸濁重合、分散重合、溶液重合などが挙げられる。乳化重合では段階的に重合することもできる。
ポリエーテルポリオール類としては、多価ヒドロキシ化合物の単独又は混合物に、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどの水酸化物、アルコラート、アルキルアミンなどの強塩基性触媒を使用して、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、スチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドの単独又は混合物を付加して得られるポリエーテルポリオール類、更にエチレンジアミン類等の多官能化合物にアルキレンオキサイドを反応させて得られるポリエーテルポリオール類、及びこれらポリエーテル類を媒体としてアクリルアミド等を重合して得られる、いわゆるポリマーポリオール類等が挙げられる。
(1)例えば、ジクリセリン、ジトリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなど、
(2)例えば、エリトリトール、D−トレイトール、L−アラビニトール、、リビトール、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、ガラクチトール、ラムニトール等の糖アルコール系化合物、
(3)例えば、アラビノース、リボース、キシロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、ソルボース、ラムノース、フコース、リボデソース等の単糖類、
(4)例えば、トレハロース、ショ糖、マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、ラクトース、メリビオースなどの二糖類、
(5)例えば、ラフィノース、ゲンチアノース、メレチトースなどの三糖類、
(6)例えば、スタキオースなどの四糖類、
などが挙げられる。
ポリオール1分子が持つ統計的水酸基数(以下「水酸基平均数」という。)は2〜8であり、2〜5であることが好ましく、3〜4であることがさらに好ましい。水酸基平均数が2未満であると、本発明の構成要件である(2)イソシアネート基平均数n=2.3〜4.0の範囲が得られない場合があり、硬化性が低下する。また、8を超えると、得られたポリイソシアネートの粘度が非常に高くなる場合がある。
ポリオールの数平均分子量は、100〜1000であることが好ましく、100〜800であることがより好ましく、150〜500であることがさらに好ましい。数平均分子量が100よりも小さい場合は、水酸基平均数が小さくなるため、本発明のnの範囲が得られにくく、及び/又は形成した塗膜の可とう性が不足する場合があり、ポリオールの数平均分子量が1000を超える場合、形成した塗膜の硬度の低下を招く場合がある。
好ましいポリオールの例としては、前記の低分子量ポリオール及びポリエステルポリオールであり、さらに好ましくは、ポリエステルポリオールであり、その中でも最も好ましくは、低分子量ポリオールにε−カプロラクトンを開環重合して得られるポリカプロラクトンポリオールである。
また、本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、ジイソシアネートのイソシアネート基とポリオールの水酸基からウレタン基を形成するウレタン化反応、及び場合によりウレタン基とイソシアネート基から形成されるアロファネート基を生成するアロファネート化反応、及びイソシアネート基3個から構成されるイソシアヌレート基を形成するイソシアヌレート化反応により得られる。本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、ウレタン基またはアロファネート基とイソシアヌレート基を共に有することが好ましく、アロファネート基とイソシヌレート基を共に有することがより好ましい。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物のポリオール成分濃度は1〜30質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量%の範囲である。1質量%未満であると、イソシアネート基平均数が低下しやすく、30質量%を超えると、イソシアネート基濃度が低下しやすい。
イソシアネート基平均数は以下の式(2)により求められる。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物のイソシアネート基濃度は2〜20質量%が好ましく、さらに好ましくは5〜15質量%の範囲である。2質量%未満の場合には、形成された塗膜中のウレタン結合濃度が低下しやすく、可とう性が低下する場合があり、20質量%を越える場合には、イソシアネート基平均数の増加がし難く、硬化性が劣る場合がある。
本発明水性ポリイソシアネート組成物の数平均分子量は700〜4000であり、好ましくは800〜3000、より好ましくは800〜2000の範囲である。700未満ではイソシアネート基平均数が低下しやすく、4000を超えるとイソシアネート基濃度が低下しやすい。
特定のイソシアネート基平均数を有し、かつ脂肪族ジイソシアネート骨格と脂環族ジイソシアネート骨格を特定割合で有するポリイソシアネートを使用した本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、驚くべきことに、水分散性に優れ、かつ優れた架橋性と高い塗膜硬度を発現し、さらに塗料として使用した場合に、充分なポットライフを有している。
前駆体は、例えば、以下の工程により製造する。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物前駆体は、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートとポリオールを反応させ得られる。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の前駆体は、ウレタン基またはアロファネート基とイソシアヌレート基を共に有することが好ましく、アロファネート基とイソシヌレート基を共に有することがより好ましい。製造方法としては、イソシアヌレート化反応後、前記ポリオールを添加し、ウレタン化反応を行うこともできるが、好ましくはウレタン化反応後、イソシアヌレート化反応を行うことが、イソシアネート基平均数を高めるために好ましい。イソシアヌレート化反応により、その前に形成されたウレタン基の一部またはすべてはアロファネート基となる。イソシアヌレート化反応を行わず、ウレタン化反応あるいはそれに続くアロファネート化反応を行った場合もある程度の性能を得ることができるものの、得られるポリイソシネート組成物のイソシアネート基平均数、これを硬化剤とした塗膜で高い塗膜硬度を得ることが難しい場合がある。
ポリオールの水酸基の1部またはすべてが反応した後又は反応と同時に、イソシアヌレート化反応を行う。このイソシアヌレート化反応を行わない場合には、これにより得られたポリイソシアネートを使用して得られる塗膜の塗膜硬度が低下する場合がある。イソシアヌレート化反応の反応温度は、50〜200℃、より好ましくは50〜150℃の範囲である。50℃未満では、反応が進み難く、200℃を超えると製品の直色など好ましくない副反応が生じる場合がある。
この中でも4級アンモニウムの有機弱酸塩が好ましく、さらにテトラアルキルアンモニウムの有機弱酸塩がさらに好ましい。
イソシアヌレート化反応は、用いたイソシアヌレート化触媒を失活させるこにより、停止する。その失活方法としては、例えば、リン酸、酸性リン酸エステルなどの酸性物質による中和、熱分解、化学分解等が挙げられる。
前駆体の収率は、以下の式(3)により求められる。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物前駆体のイソシアネート基濃度は、3〜22質量%である。3質量%未満の場合には、形成された塗膜中のウレタン結合濃度が低下しやすく、可とう性が低下する場合があり、22質量%を超える場合には、イソシアネート基平均数が増加し難く、これを用いて得られる水性ポリイソシアネート組成物の硬化性が劣る場合がある。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物前駆体の25℃における粘度は5〜150Pa・sであり、10〜120であることが好ましく、10〜100Pa・sであることがより好ましい。5Pa・s未満の場合は、結果的にイソシアネート基平均数が低下しやすく、150Pa・sを超える場合は、作業性が低下する場合がある。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物前駆体のポリオール成分濃度は1〜35質量%であることが好ましく、より好ましくは1〜30質量%であり、さらに好ましくは1〜20質量%の範囲である。1質量%未満であると、イソシアネート基平均数が低下しやすく、35質量%を超えると、イソシアネート基濃度が低下しやすい。
親水基をポリイソシアネートに導入するために、前記で例示したポリエチレンオキサイドモノ(C1 −C20アルキル)エーテルを用いることができる。
エチレンオキサイドの繰り返し単位としては、好ましくは、5〜50個であり、さらに好ましくは、5〜30個である。
エチレンオキサイドの繰り返し単位が5個未満の場合は、水への分散性が低下する場合があり、50個を越えると、親水性ポリイソシアネート組成物の結晶性が高くなり、固体となる場合があるため、好ましくない。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物の親水基には、エチレンオキサイド以外の繰り返し単位を含有していても構わない。
上記付加反応は、一般に−20〜150℃で行うことが出来るが、好ましくは30〜100℃である。150℃を越える温度では副反応を起こす可能性があり、−20℃未満になると反応速度が小さくなり不利である。
また、この反応には、錫、亜鉛、鉛等の有機金属塩、及び、3級アミン系化合物、ナトリウムなどのアルカリ金属のアルコラート等を触媒として用いてもよい。
上記前駆体の製造前、製造中、製造後のいずれの段階においても上記に例示したポリエチレンオキサイドモノ(C1 −C20アルキル)エーテルを付加することにより、本発明の水性ポリイソシアネート組成物が得られるが、前駆体の製造後にポリエチレンオキサイドモノ(C1 −C20アルキル)エーテルを付加させることが好ましい。
得られた水性ポリイソシアネート組成物に親水基が付加されていないポリイソシアネートを混合することもできる。
上記の具体的な有機溶剤の例としては、例えば、1−メチルピロリドン、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、ペンタン、iso−ペンタン、ヘキサン、iso−ヘキサン、シクロヘキサン、ソルベントナフサ、ミネラルスピリットなどを挙げることができ、2種以上を併用できる。有機溶剤としては、水への溶解度が5質量%以上のものが好ましく、水への溶解度が5質量%未満の有機溶剤を用いると、水性ポリイソシアネート組成物の水分散性が低下する場合がある。また、沸点が100℃以上のものが好ましく、沸点が100℃未満の有機溶剤を用いると、塗膜形成時に有機溶剤の揮発が速くなり、塗膜表面外観に影響を及ぼす場合がある。溶剤の使用量は、水性ポリイソシアネート組成物の0〜20質量%であり、20質量%を超えると、塗料として使用する場合に、揮発する溶剤が多くなり、環境上好ましくない。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、ポリオールとともに水性塗料の主成分を構成する。水性ポリイソシアネート組成物中のイソシアネート基はこのポリオールの水酸基と反応して、架橋塗膜を形成することができる。
エポキシポリオールとしては、ビスフェノール型エポキシ樹脂をアミン変性、または、アミノアルコール変性したものが挙げられる。
フッ素ポリオールとしては、フッ素化エチレンと共重合可能なモノマーからなる樹脂が挙げられる。
好ましいポリオールは、アクリルポリオール、ポリエステルポリオールである。
前記のポリオールは、水に乳化、分散あるいは溶解することが必須となる。そのために、ポリオールに含まれるカルボキシル基、スルホン基などを中和することができる。
ポリオールの水酸基価が1mgKOH/g未満の場合、イソシアネート基との反応による架橋性が劣る場合があり、水酸基価が300mgKOH/gを超えると、逆に架橋密度が増大し、塗膜の伸び等の物性が低下する場合がある。また、酸価が1mgKOH/g未満の場合、水分散性が低下する場合があり、100mgKOH/gを超える場合、得られた塗膜の耐水性等の物性が低下する場合がある。
必要に応じて、本発明の塗料組成物にメラミン系硬化剤、ウレタンディスパージョンなどの樹脂を併用することができる。
上記のメラミン系硬化剤としては、例えば、完全アルキルエーテル化メラミン樹脂、イミノ型メラミン樹脂、メチロール型メラミン樹脂などが挙げられる。完全アルキルエーテル化メラミン樹脂はメチロール基の全てがアルキルエーテル化されており、アルキル基の種類としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブなどの基であり、2種以上を用いても良い。好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチルなどの基である。イミノ型メラミン樹脂は、イミノ基を有するメラミン樹脂であり、アルキルエーテル基、メチロール基を有してもよい。また、メチロール型メラミン樹脂はメチロール基を有するメラミン樹脂であり、アルキルエーテル基、アミノ基を有していてもよい。
メラミン系硬化剤を用いる場合、本発明の水性ポリイソシアネート組成物Cとメラミン系硬化剤Dの混合質量比率「C/(C+D)」は、0.01〜0.99であり、好ましくは0.17〜0.83の範囲である。前記比率が0.01未満であると塗膜の可とう性が低下する場合があり、0.99を越えると、メラミン系硬化剤を添加する目的である例えば塗膜硬度向上、を達成することが難しい。
前記酸性化合物の具体例としては、例えば、カルボン酸類として例えば、酢酸、乳酸、コハク酸、シュウ酸、マレイン酸、デカンジカルボン酸などが挙げられ、スルホン酸類としては、例えば、パラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸などが挙げられ、リン酸エステル類としては、例えば、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジラウリルホスフェート、モノメチルホスフェート、モノエチルホスフェート、モノブチルホスフェート、モノオクチルホスフェートなどの酸性リン酸エステル、例えば、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジオクチルホスファイト、ジラウリルホスファイト、モノエチルホスファイト、モノブチルホスファイト、モノオクチルホスファイト、モノラウリルホスファイトなどが挙げられる。
これらの酸性化合物はアミン化合物と反応させ、貯蔵安定性を向上させることができる。そのアミン化合物としては、例えば、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、1−ブチルアミン、ジ−1−ブチルアミンなどのアルキルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミンなどが挙げられる。
硬化促進剤の添加量は、配合される塗料樹脂分に対して、0.1〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。
また、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、例えば、アルミ等の金属粉顔料、酸化チタン、カーボンブラックなどの無機顔料、レオロジーコントロール剤、レベリング剤、溶剤等を添加してもよい。
通常は、水性ポリイソシアネート組成物、ポリオール、添加剤等を混合し、水を主成分とする媒体を添加し、塗装方法に応じた塗料粘度に調整することにより水性塗料組成物となる。
また、用途としては、上中塗り、下塗り用として、建築外装塗料、バンパー等のプラスチック部品用塗料、自動車補修用塗料、プレコートメタル等の有機被覆用塗料等として有用である。
塗装方法としては、ベル塗装、スプレー塗装、ロール塗装、シャワー塗装、浸漬塗装等が挙げられる。
本発明の水性ポリイソシアネート組成物は、塗料以外に、インキ、接着剤、繊維・フィルム・セラミック等の無機材料・紙・木材・樹脂等の改質剤または表面処理剤としても有用である。
(数平均分子量の測定)
数平均分子量は下記の装置を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフ(以下「GPC」という。)測定によるポリスチレン基準の数平均分子量である。
装置 :東ソー(株)HLC−8120GPC
カラム :東ソー(株)TSKgel、superH1000×1本
TSKgel、superH2000×1本
TSKgel、superH3000×1本
キャリアー:テトラハイドロフラン
検出方法 :示差屈折計
前記GPC測定で得られる未反応ジイソシアネート相当の分子量(例えば、HDIであれば168)のピーク面積%をその質量濃度として表した。
(ウレタン結合量、アロファネート結合量、イソシアヌレート結合量の測定)
ウレタン結合量、アロファネート結合量、イソシアヌレート結合量は、水性ポリイソシアネート組成物の 1H−NMR測定で求めた。
装置:日本電子社製;JNM−LA400
溶剤:重クロロホルム
(粘度の測定)
E型粘度計(東機産業株式会社製;RE−80U)を用いて、25℃で測定した。
水性ポリイソシアネート組成物と純水を質量比2:10で混合し、その後の状態を肉眼で観察した。乳化、分散あるいは溶解状態で沈降物のない状態を○とし、沈降物がある場合を×とした。結果を表2に示した。
(ゲル分率)
硬化塗膜を、アセトン中に20℃、24時間浸漬後、未溶解部質量の浸漬前質量に対する割合を計算し、60質量%未満の場合を×、60質量%以上の場合を〇で表した。結果を表3に示した。
ケーニッヒ硬度計(BYK Garder社のPendulum hardness tester(商品名))を用いて、測定温度20℃、塗膜膜厚40μmで測定した。塗膜硬度が40以上を○、40未満を×とした。結果を表3に示した。
(ポットライフ)
ジメチルエタノールアミンでカルボン酸/アミンのモル比1.0で中和された水溶性ポリエステルポリオール(ニュープレックス社の商品名「SETAL6306」、樹脂分濃度60質量%、水酸基価89mgKOH/樹脂g、酸価42mgKOH/樹脂g)と実施例1〜5、比較例1、2で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いて、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で混合した。更に蒸留水を添加し塗料粘度が、フォードカップNo.4で30秒になるように調整した。上記塗料組成物の粘度を23℃で放置した場合に、2hrの粘度が40秒以下のものを○とし、40秒を越えた場合に×とした。
(水性ポリイソシアネート組成物前駆体の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI;700部、IPDI;300部、3価アルコールであるポリカプロラクトン系ポリエステルポリオール「プラクセル303」(ダイセル化学社製の商品名、分子量300)32部を仕込み、攪拌下反応器内温度を90℃、1時間保持しウレタン化を行った。その後反応器内温度を80℃に保持し、イソシアヌレート化触媒テトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、収率が32%になった時点で燐酸を添加し反応を停止した。その後、反応液を濾過した後、未反応のHDI、IPDIを薄膜蒸留装置により除去した。
得られたポリイソシアネートの25℃における粘度は19Pa・s、イソシアネート基基含有量は19.0質量%、ジイソシアネートモノマー濃度は0.3質量%、数平均分子量は900、イソシアネート基平均数は4.1、HDI成分/IPDI成分の質量比は77/23、ポリオール成分濃度は9.7質量%であった。アロファネート基、イソシアヌレート基の存在を確認した。結果は表1に示した。
表1に示す以外は製造例1と同様に行った。得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
(比較製造例1)
表1に示す以外は製造例1と同様に行った。得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
(比較製造例2)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、HDI;600部を仕込み、60℃で2時間保持した。その後、イソシアヌレート化触媒としてテトラメチルアンモニウムカプリエートを加え、イソシアヌレート化反応を行い、6時間後、収率が40%になった時点で、リン酸を添加して反応を停止した。
その後、反応液を濾過した後、未反応のHDIモノマーを薄膜蒸留装置により除去した。
得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体の物性を表1に示す。
(水性ポリイソシアネート組成物の製造)
攪拌器、温度計、還流冷却管、窒素吹き込み管、滴下ロートを取り付けた4ツ口フラスコ内を窒素雰囲気にし、製造例1で得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体を100部、分子量550のポリエチレングリコールモノメチルエーテル(日本油脂の商品名「ユニオックスM550」)25部(水性ポリイソシアネート組成物前駆体の全イソシアネート基の10モル%と反応する)を仕込み、80℃で6時間保持した。得られた水性ポリイソシアネート組成物の物性及び水分散性評価結果を表2に示す。
(水性ポリイソシアネート組成物の製造)
表2に示す以外は実施例1と同様に行った。得られた水性ポリイソシアネート組成物の物性を表2に示す。
[比較例1]
比較製造例1で得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体を用い、表2に示したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
比較製造例2で得られた水性ポリイソシアネート組成物前駆体を用い、表2に示したこと以外は、実施例1と同様に行った。結果を表2に示す。
(水性塗料組成物の調整)
ジメチルエタノールアミンでカルボン酸/アミンのモル比1.0で中和された水分散性ポリエステルポリオール(ニュープレックス社の商品名「SETAL6306」、樹脂分濃度60質量%、水酸基価89mgKOH/樹脂g、酸価42mgKOH/樹脂g)と実施例1〜5で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いて、イソシアネート基/水酸基の当量比1.0で混合した。更に蒸留水を添加し塗料粘度が、フォードカップNo.4で30秒になるように調整した。この塗料をアプリケーター塗装し、80℃、30分で硬化させた。塗膜評価結果を表3に示す。
[比較例3、4]
比較例1、2で得られた水性ポリイソシアネート組成物を用いた以外は、実施例6と同様に行った。結果を表3に示す。
Claims (7)
- 下記構造式(1)で示される水性ポリイソシアネート組成物であって、下記条件(1)〜(5)のすべて満たし、水に溶解又は分散し得ることを特徴とする水性ポリイソシアネート組成物。
Am −R−(NCO)n ・・・式(1)
(1)式中、Aは、エチレンオキサイド繰り返し単位を含有するノニオン性親水基であり、Rは、脂肪族ジイソシアネート群、脂環族ジイソシネート群のそれぞれの群から少なくとも1種選ばれた合計2種以上のジイソシアネートと1種以上の水酸基平均数が3〜4であるポリオールから誘導されたポリイソシアネートにおけるイソシアネート基を除く残基であり、ポリオール成分濃度が1〜30質量%、脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシアネート成分=90/10〜60/40(質量比)であり、かつ、ジイソシアネートとポリオールとがアロファネート結合及び/又はウレタン結合を介して結合されている残基である。
(2)イソシアネート基平均数nが2.3〜4.0である。
(3)親水基平均数mとイソシアネート基平均数nが、m/(m+n)の値が0.02〜0.30である。
(4)イソシアネート基濃度:2〜20質量%である。
(5)25℃における粘度が5〜200Pa・sである。 - 25℃における粘度が5〜100Pa・sであることを特徴とする請求項1記載の水性ポリイソシアネート組成物。
- R残基のポリオール成分濃度が1〜20質量%であることを特徴とする請求項1又は2いずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
- R残基のポリオールが数平均分子量150〜500であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
- R残基のポリオールがポリエステルポリオールであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
- R残基の脂肪族ジイソシアネート成分/脂環族ジイソシネート成分が、80/20〜60/40(質量比)であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリイソシアネート組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の水性ポリイソシアネート組成物を含む水性塗料組成物。
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