以下、本発明の変速制御装置の一実施形態につき図面を参照しつつ詳細に説明する。
(第1実施形態)
図1から図7を参照して、第1実施形態について説明する。本実施形態は、内燃機関の動力を車両の駆動軸に伝達する自動変速機を制御する変速制御装置に関する。
図1は、本実施形態に係る変速制御装置を適用した車両のパワートレーンおよびその制御系の概略構成図を示している。図1に示すように、内燃機関としてのエンジン10には、トルクコンバータ(発進装置)20を介して自動変速機としての無段変速機(CVT)30が連結されている。エンジン10のエンジン出力トルク(駆動力)は、トルクコンバータ20を介して無段変速機30に入力され、デファレンシャルギヤ及びドライブシャフトを介して駆動輪90に伝達される。
無段変速機30は、公知のベルト式無段変速機で構成されており、エンジン側に設けられ、トルクコンバータ20の出力軸70に連結したプライマリプーリ31と、デファレンシャルギヤに接続される出力軸(駆動軸)80に連結したセカンダリプーリ32と、これらの間に掛け渡されたベルト33とを備えている。油圧制御装置40は、ECU50から入力される変速比変更指令に応じて、無段変速機30の変速比を変更する。この油圧制御装置40は、プライマリプーリ側アクチュエータへの変速圧、及びセカンダリプーリ側アクチュエータへのライン圧を調整することにより、プーリ比を変化させて、変速比を無段階に変化させることができる。
また、無段変速機30には、プライマリプーリ31の回転数(プライマリ回転数)を検出するプライマリプーリ回転センサ34と、セカンダリプーリ32の回転数(セカンダリ回転数)を検出するセカンダリプーリ回転センサ35が設けられており、検出されたプライマリ回転数およびセカンダリ回転数は、ECU50に出力される。
トルクコンバータ20は、無段変速機30とエンジン10とを接続しており、公知のロックアップ機構が備えられており、結合及び開放が可能な動力断続手段であるロックアップクラッチ(摩擦係合装置)付きのトルクコンバータとなっている。このロックアップクラッチは、エンジン10と無段変速機30との結合(ロックアップ状態)または開放(コンバータ状態)を行う。また、トルクコンバータ20の入力軸60には、この入力軸60の回転数を検出する回転センサ21が設けられており、検出された入力軸回転数がECU50に出力される。
また、車両には、エンジン10や無段変速機30などを制御するECU(電子制御ユニット)50が設けられており、このECU50はエンジン10、トルクコンバータ20、及び無段変速機30(油圧制御装置40)の総合的な制御を行う。ECU50は、入出力装置、制御マップや制御プログラムなどを記憶する記憶手段(ROM、RAM等)、CPU(中央処理装置)、A/D変換器、D/A変換器、および通信ドライバ回路等で構成されている。ECU50は、CPUで制御プログラムを実行することにより、要素検出推定手段、燃焼状態算出手段、過渡状態判定手段、学習手段、第二の学習手段、更新手段、および変速制御手段として機能する。
さらに、車両には、アクセルペダルの操作量(アクセル開度)を検出するアクセルポジションセンサ11が設けられており、検出したアクセル開度はECU50に出力される。エンジン10の吸気管12には電子スロットルバルブ13が設けられており、この電子スロットルバルブ13はスロットルアクチュエータ14により開閉可能となっている。ECU50はこのスロットルアクチュエータ14により電子スロットルバルブ13を駆動し、スロットル開度がアクセル開度に応じたものとなるように制御する。この電子スロットルバルブ13の全閉状態(アイドル状態)及びスロットル開度を検出するアイドルスイッチ付スロットルポジションセンサ15が設けられており、検出したアイドル信号及びスロットル開度はECU50に出力される。
吸気管12において、電子スロットルバルブ13の上流側には吸入空気量を検出するエアフローセンサ16が設けられており、検出した吸入空気量はECU50に出力される。さらに、エンジン10には、エンジン回転数(エンジン回転速度)を検出するエンジン回転数センサ17、および、冷却水温を検出する水温センサ22が設けられており、検出したエンジン回転数および冷却水温はECU50に出力される。車両には、大気圧を検出する大気圧センサ18、および、外気温を検出する外気温センサ19が設けられており、検出した大気圧および外気温は、ECU50に出力される。外気温センサ19は、例えば、エアフローセンサ16に隣接して設けられ、吸入空気の温度を検出するものであることができる。
エンジン10の排気ガスは、排気管23に排出される。車両には、排気管23を流れる排気ガスを吸気管12に還流させるEGR通路(排気ガス還流通路)24が設けられている。EGR通路24は、排気管23と、吸気管12におけるスロットルバルブ13よりも下流側の部分とを連通している。EGR通路24には、EGR通路24を開閉するEGR弁25が設けられている。EGR弁25は、任意の開度に調節可能であり、EGR弁25の開閉制御により、吸気管12に還流される排気ガス(EGRガス)の流量が制御される。EGR弁25は、ECU50に接続されており、ECU50により制御される。ECU50は、エンジン10の運転条件に基づいてEGRガスの流量の目標値を決定し、実際のEGRガスの流量が目標値となるように、EGR弁25の開閉制御を行う。
また、車両には、車両の走行速度を検出する車速センサ51が設けられていると共に、運転者が操作するシフトレバーの位置を検出するシフトポジションセンサ52が設けられており、検出した車速やシフトポジションはECU50に出力される。
上記ECU50は、エンジン回転数、吸入空気量、スロットル開度などのエンジン10の運転状態に基づいて燃料噴射量、噴射時期、点火時期などを決定し、インジェクタや点火プラグなどを制御する。また、ECU50は、変速マップを有しており、スロットル開度、車速などに基づいて、無段変速機30の変速比を決定し、この決定された変速比を成立させるように油圧制御装置40を制御する。
具体的には、ECU50は、入力値としてのスロットル開度(アクセル開度)と車速(無段変速機30の出力回転数に対応)とに基づいて、運転者の要求駆動力を算出し、要求駆動力から算出される必要パワー(目標パワー)に基づいて、エンジン10の運転条件と無段変速機30の入力回転数の目標値を決定する。ECU50は、入力回転数の目標値と無段変速機30の出力回転数(車速)とから変速比を決定し、その変速比を実現するように無段変速機30を制御する。言い換えると、ECU50は、出力回転数を含む入力値と、予め定められた変速スケジュール(制御態様)とに基づいて、無段変速機30の入力回転数の目標値を決定し、その目標値を実現するように無段変速機30を制御する。図2は、車速およびスロットル開度PAPと要求駆動力との関係を示す図である。図3は、必要パワーからエンジン10の運転条件と無段変速機30の変速比を決定する方法について説明するための図である。
ECU50は、図2に示すマップを参照して、運転者の要求駆動力を算出する。図2において、横軸は車速、縦軸は駆動力を示す。所定の車速に対して、スロットル開度PAPが大きくなるほど、要求駆動力が大きな値として算出される。
ECU50は、算出された要求駆動力(目標駆動力)から、以下の式(1)により必要パワーを算出する。
必要パワー = 車速 × 目標駆動力 / 伝達効率 (1)
ここで、伝達効率とは、パワートレーンの伝達効率のことである。
次に、ECU50は、図3に示すマップを参照して、エンジン10の運転条件、および、無段変速機30の変速比(入力回転数の目標値)を決定する。
図3において、横軸はエンジン回転数、縦軸はエンジントルク(気筒への流入空気量に代わる値)を示す。符号F1,F2,F3,F4,F5は、燃費が等しくなるエンジン10の運転条件(エンジン回転数とエンジントルクとの組み合わせ、動作点)の集合である等燃費線を示す。符号100は、エンジン10を最適な燃費で運転することができる運転条件の集合として予め定められた最適燃費線を示す。最適燃費線100は、等燃費線F1,F2,F3,F4,F5に基づいて設定されている。ECU50は、基本的な制御として、最適燃費線100上の運転条件でエンジン10を運転するように、エンジン10の運転制御、および、無段変速機30の変速制御を行う。例えば、上記式(1)で求められた必要パワーに対応する等パワー線(エンジン10のパワーが等しくなる運転条件の集合)が、符号Pで示す曲線である場合、ECU50は、エンジン回転数およびエンジントルクが、それぞれ符号Ne0、Te0で示す値となるように、エンジン10の運転制御を行う。また、エンジン10の回転数がNe0となるようなトルクコンバータ20の入力軸60の回転数の目標値を決定し、この目標値と車速とに基づいて無段変速機30の変速比を決定する。
このようにエンジン10の運転制御、および、無段変速機30の変速制御が行われることにより、適切な燃費を実現可能となるものの、外気温、気圧、エンジン10の気筒温度等のエンジン10の燃焼状態に影響を与える要素の値が変化した場合には、燃費が低下してしまうことがある。すなわち、外気温、気圧、気筒温度等は、エンジン10の燃焼状態に与える影響が大きく、これらの値の変化に伴って、エンジン10を最適な燃費で運転できる運転条件が変化してしまう。これに対して、変速スケジュールが一定のままでは、環境に応じた最適なエンジン10の運転条件を実現することができないため、燃費の低下を招くこととなる。
本実施形態では、走行する環境(外気温度、エンジン水温、気圧等)に応じてエンジン10の燃焼状態を示す値を学習し、それに合わせた変速制御を行う。これにより、燃費・排気ガスの性状・ドライバビリティを向上させる。
燃焼状態の学習は、定常走行状態と過渡状態のそれぞれにおいて実行する。これにより、定常状態における燃焼状態だけでなく、加減速時等の過渡状態における燃焼状態も走行する環境に合わせて学習し、それぞれにおいて最適な変速制御を実行することが可能となる。
始めに、定常走行状態における燃焼状態の学習と変速スケジュールの設定について説明する。図4は、本実施形態の定常走行時における動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS10では、ECU50により、エンジン回転数が参照される。ECU50は、エンジン回転数センサ17から出力された信号に基づいて、エンジン回転数を検知する。
次に、ステップS20では、ECU50により、エンジン10の運転環境(走行する環境)が参照される。具体的には、ECU50は、スロットル開度、流入空気温度、EGRガス量、気圧を参照する。ECU50は、アイドルスイッチ付きスロットルポジションセンサ15、外気温センサ19、および大気圧センサ18の検出結果に基づいて、スロットル開度、流入空気温度、および気圧をそれぞれ検知する。また、ECU50は、EGR通路24を介して吸気管12に還流されるEGRガスの量であるEGRガス量を参照する。さらに、ECU50は、水温センサ22の検出結果に基づいて、エンジン10の気筒室温度を検知する。
次に、ステップS30では、ECU50により、状態が変化したか否かが判定される。ECU50は、ステップS10、およびステップS20における参照結果に基づいて、前回本制御フローを実行したときと比較して、エンジン10の運転状態、あるいは、運転環境の少なくともいずれか一方において変化が生じたか否かを判定する。例えば、ステップS10で参照されたエンジン回転数が変化した場合には、運転状態が変化したと判定され、ステップS20で参照されたスロットル開度、流入空気温度、EGRガス量、気圧が変化した場合には、運転環境が変化したと判定される。ステップS30の判定の結果、状態が変化したと判定された場合(ステップS30−Y)にはステップS40に進み、そうでない場合(ステップS30−N)にはステップS80へ進む。
ステップS40では、ECU50により、エンジン10の学習制御が終了したことが確認される。エンジン10の運転環境等が変化した場合、エンジン10において、運転環境に関して得られた情報に基づいて学習制御が実行される。その結果、最適化されたエンジン制御(例えば、燃料の噴射量、噴射タイミング、点火タイミング等の最適化)が施された状態となる。こうした学習制御が終了し、最適化されたエンジン制御が実行されていることを確認してから、エンジン10の燃焼状態の学習(ステップS50)へ移行する。
ステップS50では、ECU50により、エンジン10の燃焼状態の学習が行われる。ECU50は、運転環境(ここでは、気筒室温度、流入空気温度、気圧)のそれぞれに関する、燃費(燃料消費量)と排気ガスの成分濃度のマップを備えている。燃費と排気ガスの成分濃度のそれぞれについて、気筒室温度、流入空気温度、気圧による四次元マップが構成されている。例えば、気筒室温度に関する燃費マップについて説明すると、気筒室温度が20℃の場合の燃費マップ、気筒室温度が80℃の場合の燃費マップといったように、一つの運転環境の複数の値についての燃費マップが存在する。同様に、気筒室温度が20℃の場合の排気ガスの成分濃度のマップ、気筒室温度が80℃の場合の排気ガスの成分濃度のマップといったように、それぞれの気筒室温度について成分濃度のマップが存在する。ECU50は、気筒室温度、流入空気温度、および気圧の検出値に基づいて、対応する燃費マップおよび成分濃度マップを更新する。
燃費および成分濃度の算出方法については、従来公知の方法によることができる。例えば、気筒内へ流入する空気量(吸気量)と成分割合(流入空気温度・EGRガス量・気圧)と、気筒室温度と、気筒内に残存する空気量と成分割合をセンシングし、その結果から、エンジン10の燃費、および、排気ガス中のPM,NOx,SOx,CO,CO2濃度を算出することができる。ECU50は、現在のエンジン10の運転条件(エンジン回転数、エンジントルク)における燃費および成分濃度のマップデータを、ステップS50で算出された値に更新する。
次に、ステップS60では、ECU50により、ステップS50の学習により更新されたマップ(燃費マップ、成分濃度マップ)に基づいて、現在の運転環境に対応するマップが算出される。ECU50は、運転環境(気筒室温度、流入空気温度、気圧)のそれぞれについての現在の検出値に基づいて、現在の運転環境に対応する一つの燃費マップを算出する。同様に、ECU50は、運転環境(気筒室温度、流入空気温度、気圧)のそれぞれについての現在の検出値に基づいて、現在の運転環境に対応する一つの成分濃度マップを算出する。
次に、ステップS70では、ECU50により、変速スケジュールの再計算が実行される。ECU50は、ステップS60で算出されたマップに基づいて、最適燃費線100を再計算する。ECU50は、ステップS60で算出された燃費マップと成分濃度マップとに基づいて、排気ガスの成分濃度が予め定められた閾値を超えず、かつ、燃費が最良となる変速スケジュール、言い換えると、最適な燃焼状態でエンジン10を運転することができる変速スケジュールを演算し、最適燃費線100を設定する。言い換えると、更新手段としてのECU50は、学習結果に基づいて、燃焼状態を示す値が適切となるような入力値と無段変速機30の入力回転数の目標値との対応関係を算出し、算出された対応関係に基づいて制御態様としての変速スケジュールを更新する。
ステップS80では、ECU50により、変速制御ルーチンが実施される。ECU50は、最新の最適燃費線100に基づいてエンジン10の運転制御、および、無段変速機30の変速制御を実行する。ステップS80が実行されると、本制御フローはリターンされる。
運転環境と燃焼状態との関係の学習結果に基づいて変速スケジュールを変更することにより、気圧・外気温・エンジン気筒室温度等の運転環境が変化した場合であっても、燃費を向上させることができる。常に安定した燃焼状態を確保できるため、騒音や振動を低減させることが可能である。また、車両ばらつき、経時変化、走行地域の変化等があっても、適切な燃焼状態を実現することができる。
次に、エンジン10の運転条件が変化する過渡状態における燃焼状態の学習と変速スケジュールの設定について、図5を参照して説明する。図5は、本実施形態の過渡状態における動作を示すフローチャートである。
ステップS110からステップS130については、定常走行状態(図4)のステップS10からステップS30と同様であることができる。すなわち、エンジン回転数が参照され(ステップS110)、エンジン10の運転環境が参照される(ステップS120)と、状態が変化したか否かが判定される(ステップS130)。その判定の結果、状態が変化したと判定された場合(ステップS130−Y)にはステップS140に進み、そうでない場合(ステップS130−N)にはステップS230へ進む。
ステップS140では、ECU50により、エンジン10の学習制御が終了したことが確認される。
次に、ステップS150では、ECU50により、エンジン回転数の時間当たり変化(変化速度)ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化(変化速度)ΔTAPが、予め定められた閾値Δaよりも小であるか否かが判定される。ステップS150では、定常走行状態と比較して燃費が悪化するような運転条件の変化が生じているか否かが判定される。その判定の結果、エンジン回転数の時間当たり変化ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPが、上記閾値Δaよりも小であると判定された場合(ステップS150−Y)にはステップS220へ進み、そうでない場合(ステップS150−N)にはステップS160に進む。
ステップS160では、ECU50により、エンジン回転数の時間当たり変化ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPが、算出される。
次に、ステップS170では、ECU50により、燃料消費率が参照される。ECU50は、エンジン回転数が、時間当たり変化ΔNeで変化し、スロットル開度が、時間当たり変化ΔTAPで変化する過渡状態における燃料消費率Qを算出する。
次に、ステップS180では、ECU50により、現在の運転環境に対応する定常走行状態の燃費マップが参照される。ECU50は、定常走行状態の燃費マップから、現在の運転条件(例えば、変速の開始時点の運転条件)に対応する定常走行状態の燃費Qmapを取得する。
次に、ステップS190では、ECU50により、運転条件の変化による燃費の悪化代が算出される。ECU50は、ステップS170で算出した過渡状態における燃費Qと、ステップS180で取得した定常走行状態の燃費Qmapとの差分ΔQを算出する。ECU50は、算出された差分ΔQ(燃費の悪化代)とエンジン回転数の時間当たり変化ΔNeとの関係、および、算出された差分ΔQとスロットル開度の時間当たり変化ΔTAPとの関係をそれぞれ求める。図6−1は、エンジン回転数の時間当たり変化ΔNeと燃費の差分ΔQとの関係、図6−2は、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPと燃費の差分ΔQとの関係を示す図である。
次に、ステップS200では、ECU50により、マップの学習演算が実行される。エンジン10の運転環境パラメータ(気筒室温度、流入空気温度、気圧)の現在の値と関連付けて、燃費の悪化代の学習演算が行われる。
次に、ステップS210では、ECU50により、過渡状態における燃費マップが算出される。図7は、ECU50により算出される過渡状態における燃費マップを示す図である。ECU50は、変化がない場合(定常走行状態)における燃費Qmapに、運転条件の変化による燃費の悪化代ΔQを加味した値を過渡状態における燃費として算出し、算出された燃費に基づいて過渡状態における燃費マップを算出(更新)する。
ECU50は、検出されている運転環境に基づいて、現在のエンジン10の運転環境に応じた過渡状態の燃費マップを算出する。運転環境パラメータによって異なる燃費マップが作成されるだけでなく、エンジン回転数の時間当たり変化ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPの組み合わせごとに、それぞれ異なる燃費マップが作成される。例えば、エンジン回転数の時間当たり変化ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPにおける変化速度の度合いが複数段階に分けられ、各段階についてそれぞれ燃費マップが作成される。ECU50は、それぞれの燃費マップについて、燃費が最良となる変速スケジュールを演算し、最適燃費線100を設定する。
なお、燃費マップに加えて、過渡状態における排気ガスの成分濃度マップを学習し、燃費および排気ガスの成分濃度に基づいて最適燃費線100を設定するようにしてもよい。エンジン10の運転制御、および、無段変速機30の変速制御においては、現在検出されているエンジン回転数の時間当たり変化ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPの組み合わせに対応する燃費マップ(最適燃費線100)が参照される。ステップS210が実行されると、ステップS230へ進む。
ステップS150で肯定判定がなされてステップS220へ進むと、ステップS220では、ECU50により、定常走行状態の燃費マップが参照される。ECU50は、現在のエンジン10の運転環境に対応する燃費マップを参照する。ステップS220が実行されると、ステップS230へ進む。
ステップS230では、ECU50により、変速制御ルーチンが実施される。ECU50は、現在参照している燃費マップ(過渡状態の燃費マップ、または、定常走行状態の燃費マップ)に基づいて、エンジン10の運転制御および無段変速機30の変速制御を実行する。ステップS230が実行されると、本制御フローはリターンされる。
このように、過渡状態における燃費マップを学習する方法によれば、実用燃費で使用頻度の多い加減速時の過渡的な燃費を向上させることができる。エンジン回転数の時間当たり変化ΔNe、および、スロットル開度の時間当たり変化ΔTAPという少ない変数で過渡時の変速制御を実施可能となるため、ECU50の演算負荷を軽減することができる。
本実施形態では、燃焼状態に影響する運転環境(因子)として、外気温度、エンジン水温、気圧を例に説明したが、燃焼状態に影響する運転環境は、これには限定されない。例えば、エンジンコンパートメント内温度、インテークマニホルド内温度、空気中の酸素割合、燃料内成分割合(燃料種類)等を燃焼状態に影響する運転環境パラメータとして、燃焼状態との関係を学習し、その学習結果に基づいて変速スケジュールを変更するようにしてもよい。
また、本実施形態では、気圧を大気圧センサ18により検出したが、これに代えて、車両に搭載される情報端末等により取得される情報に基づいて気圧を推定するようにしてもよい。この場合、標高・気象情報・地域情報などに基づいて、気圧を推定することができる。また、エンジン10の気筒室温度は、水温センサ22の検出結果に代えて、エンジン10の油温の検出結果から取得してもよい。インテークマニホルド内温度は、シリンダ入り口温度やブローバイガス温度から取得することができる。
(第1実施形態の変形例)
第1実施形態の変形例について説明する。
上記第1実施形態では、自動変速機が、無段変速機30であった。本変形例では、無段変速機30に代えて、有段式の自動変速機の変速制御が行われる。
図1に示すパワートレーンにおいて、無段変速機30に代えて公知の有段式の自動変速機が搭載される場合についても、運転環境により変化する燃焼状態を学習することにより、燃費・排気ガスの性状・ドライバビリティを向上させることができる。
図9−1および図9−2は、有段式の自動変速機の変速スケジュール(変速線)を示す図である。図9−1は、自動変速機の変速スケジュールを示す図である。図9−2は、トルクコンバータ20におけるロックアップスケジュールを示す図である。
図9−1において、符号S12,S23,S34,S45は、変速線を示す。例えば、変速線S12よりも低車速側の領域R1では、自動変速機において1速変速段が選択され、変速線S12と変速線S23との間の領域R2では、自動変速機において2速変速段が選択される。
図9−2において、符号L1,L2,L3,L4,L5は、各変速段におけるロックアップ領域の境界を示す。例えば、1速変速段において、境界L1よりも高車速側、かつ、低トルク側の領域では、ロックアップクラッチが結合されてロックアップ状態とされる。本変形例では、燃費の学習結果に基づいて、有段式の自動変速機の変速スケジュール、および、ロックアップスケジュールが変更される。
図8は、本変形例の動作を示すフローチャートである。図8に示すフローチャートは、定常走行状態において実行される。
ステップS310からステップS360までについては、上記第1実施形態(図4)のステップS10からステップS60までと同様であることができる。エンジン回転数が参照され(ステップS310)、エンジン10の運転環境が参照される(ステップS320)と、状態が変化したか否かが判定される(ステップS330)。その判定の結果、状態が変化したと判定された場合(ステップS330−Y)にはステップS340に進み、そうでない場合(ステップS330−N)にはステップS380へ進む。
エンジン10の学習制御が終了したことが確認される(ステップS340)と、エンジン10の燃焼状態の学習が行われ(ステップS350)、次に、現在の運転環境に対応する燃費マップ、および、排気ガスの成分濃度マップが算出される(ステップS360)。
次に、ステップS370では、ECU50により、有段式の自動変速機の変速スケジュールが再計算される。ECU50は、ステップS360で算出されたマップに基づいて、排気ガスの成分濃度が予め定められた閾値を超えず、かつ、燃費が最良となるような運転条件でエンジン10を運転できるように、変速スケジュールおよびロックアップスケジュールを再計算する。
ステップS380では、ECU50により、変速制御ルーチンが実施される。ECU50は、最新の変速スケジュールに基づいてエンジン10の運転制御および自動変速機の変速制御を実行する。ステップS380が実行されると、本制御フローはリターンされる。
ここでは、定常走行状態における変速スケジュールの設定方法について説明したが、更に、上記第1実施形態と同様に、過渡状態における燃焼状態の学習結果に基づいて、過渡状態における変速スケジュールが設定されるようにしてもよい。
(第2実施形態)
図10から図12を参照して、第2実施形態について説明する。第2実施形態については、上記第1実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第1実施形態では、予め定められた変速スケジュールで変速制御が行われている状態で燃焼状態が学習された。設定された変速スケジュールは、ある限られた範囲でエンジン10を使用するため、その使用するエンジン10の領域以外における燃費を把握することは難しい。この場合、比較的狭い運転条件の範囲でしか学習が行われなくなり、最適な変速制御ができなくなる可能性がある。
本実施形態では、学習範囲を広げるために、予め定められた変速スケジュールに基づいて選択される運転条件だけでなく、その周辺の運転条件において燃焼状態を学習できるような変速制御が行われる。より具体的には、必要パワーに対応する等パワー線上において、予め定められた変速スケジュールに基づいて選択される運転条件の近傍に燃焼状態を未学習の運転条件がある場合には、その未学習の運転条件を実現するようにエンジン10の変速制御および無段変速機30の変速制御を実行し、燃焼状態を学習していく。これにより、幅広い運転条件の範囲で燃焼状態を把握することができる。その結果、より確実に最適な燃費で走行できる変速スケジュールを算出することができる。
学習範囲を広げるための変速制御を実行した場合、一時的に燃費が低下することとなる。本実施形態では、学習範囲を広げるための変速制御による燃費の低下が一定以下となるように、エンジン回転数の変化許容値が設定される。これにより、必要以上に燃費を低下させることなく、広い範囲の燃費を学習することができる。なお、本実施形態は、定常走行状態における燃費の学習、および、過渡状態における燃費の学習のいずれに適用されてもよい。本実施形態のECU50は、回転数制御手段としての機能を有する。
図10は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS410では、ECU50により、目標回転数(第一回転数)Ne0が算出される。ECU50は、図3に示す動作線図を参照し、最適燃費線100と、必要パワーに対応する等パワー線Pとの交点に基づいて、エンジン10の目標回転数Ne0を算出する。ステップS410で算出される目標回転数Ne0は、予め定められた変速スケジュールに基づく無段変速機30の入力回転数の目標値に対応している。
次に、ステップS420では、ECU50により、回転数変化許容値ΔNemax、および、最終目標回転数(第二回転数)Ne1が算出される。図11は、回転数変化許容値ΔNemaxについて説明するための図であり、等パワー運転状態においてエンジン回転数を変化させた場合のエンジン回転数と、燃料消費率の悪化代との関係を示している。回転数変化許容値ΔNemaxは、等パワー運転状態でエンジン回転数を目標回転数Ne0から変化させる場合に許容される最大の変化幅である。
ステップS410で算出される目標回転数Ne0は、その時点で最新の燃料消費率マップより算出されるものであり、必要パワーを達成する際の燃費が最適となるエンジン回転数である。図11に示すように、目標回転数Ne0よりも高回転側の領域、および、低回転側の領域のいずれの領域においても、目標回転数Ne0でエンジン10を運転する場合と比較して燃料消費率が悪化する。回転数変化許容値ΔNemaxは、等パワー運転状態において目標回転数Ne0から回転変化させた場合の燃料消費率の悪化代が、予め定められた閾値(例えば、5%)以下となる最大のエンジン回転数の変化幅として決定される。燃料消費率の悪化代の閾値は、例えば、燃費を学習することによる効果の見込みに基づいて設定することができる。燃費の学習範囲を広げることによる燃費向上の効果がある程度見積もれる場合に、その効果が、学習のためのエンジン回転数制御による一時的な燃費の悪化を上回るように、上記閾値が設定される。
図12は、本実施形態における燃焼状態の学習範囲について説明するための図である。目標回転数Ne0よりも高回転側および低回転側のそれぞれにおいて、回転数変化許容値ΔNemaxの範囲内の運転条件で燃焼状態の学習が行われる。上記範囲内の運転条件において、燃焼状態を未学習の点(エンジン回転数)が存在する場合には、運転条件をその未学習の点に振って燃焼状態を学習する。すなわち、最終目標回転数Ne1は、目標回転数Ne0よりも高回転または低回転の回転数に設定される。例えば、目標回転数Ne0よりも回転数変化許容値ΔNemaxだけ高回転のエンジン回転数に未学習点が存在する場合には、最終目標回転数Ne1を下記式(2)により算出する。
Ne1 = Ne0 + ΔNemax (2)
これにより、エンジン回転数を目標回転数Ne0よりも高回転または低回転の最終目標回転数Ne1に制御する第二制御が実行される。
一方、未学習点が存在しない場合には、最終目標回転数Ne1は、ステップS410で算出された目標回転数Ne0のままとする。この場合、エンジン回転数を目標回転数Ne0に制御する第一制御が実行される。
次に、ステップS430では、ECU50により、変速制御が実施される。ECU50は、ステップS420で設定された最終目標回転数Ne1を実現するように、エンジン10の運転制御および無段変速機30の変速制御(変速比の変更)を実行する。ECU50は、無段変速機30の入力回転数の目標値を最終目標回転数Ne1に対応する値に設定する。このとき、等パワー運転状態でエンジン回転数を変化させる。すなわち、入力値から算出された目標パワーに対応する等パワー線P上で、かつ、最終目標回転数Ne1に対応する運転条件でエンジン10を運転するように、エンジン10の運転制御を行う。また、燃焼状態を学習し、未学習点の燃費データを算出された新しい燃費データに更新する。ステップS430が実行されると、本制御フローは終了される。
本実施形態によれば、未学習点の燃費データを取得する際に、等パワー運転状態においてエンジン回転数を変化させる。この場合に、エンジン回転数を変化させることによる燃料消費率の悪化代が、予め定められた閾値を超えないように回転数変化許容値ΔNemaxが設定されている。よって、著しく燃費を悪化させることなく、エンジン10の運転領域の多くについて、運転環境と燃焼状態との関係を学習することができる。広範囲の運転領域について学習することが可能で、どのような運転環境に対しても燃費を最大化することが可能となる。また、等パワーに対して、異なるエンジン回転数における燃料消費量を把握できるため、学習ばらつきを軽減することができる。
なお、本実施形態では、変速制御の対象の自動変速機が無段変速機30である場合について説明したが、本実施形態を適用可能な自動変速機の種類は、これには限定されない。例えば、有段式の自動変速機に対して、本実施形態の燃焼状態の学習方法を適用することができる。
(第2実施形態の変形例)
第2実施形態の変形例について説明する。
上記第2実施形態では、幅広い運転条件において燃焼状態を学習するために、等パワー運転状態において無段変速機30の変速比を変化させることでエンジン回転数を変化させた。本変形例では、これに代えて、スリップ制御を利用してエンジン回転数を変化させる。
本変形例のトルクコンバータ20は、スリップ制御を実行可能に構成されている。トルクコンバータ20には、ロックアップクラッチに供給する油圧(係合油圧)を制御することでロックアップクラッチのスリップ量(係合状態)を制御するスリップ制御弁が設けられている。ECU50は、スリップ制御弁を制御してロックアップクラッチのスリップ量を任意に制御するスリップ制御を実行する。
図13は、本変形例の動作を示すフローチャートである。図14は、本変形例に係る動作線図を示す。本変形例では、燃焼状態の学習のためにエンジン回転数を変化させる場合、スリップ制御により等トルクの状態でエンジン回転数を変化させる。符号101は、スリップ制御を実行する場合の動作線(以下、「スリップ時動作線」とする)を示す。ECU50は、ロックアップクラッチのスリップ量を制御し、エンジントルクは変化させずにエンジン回転数を目標の回転数に変化させる。
まず、ステップS510では、ECU50により、目標回転数Ne0が算出される。ECU50は、図14に示す動作線図を参照し、最適燃費線100と、必要パワーとに基づいて、エンジン10の目標回転数Ne0を算出する。
次に、ステップS520では、ECU50により、回転数変化許容値ΔNemax、および、最終目標回転数Ne1が算出される。図15は、等トルク運転状態においてスリップ制御によりエンジン回転数を変化させた場合のエンジン回転数と、燃料消費率の悪化代との関係を示している。本変形例では、スリップ制御によりエンジン回転数を変化させるため、エンジン回転数は、目標回転数Ne0から高回転側にシフトする(上昇する)。ECU50は、最新の燃料消費率マップに基づいて、スリップ制御による燃費の悪化代が、予め定められた閾値(例えば、5%)以下となるように回転数変化許容値ΔNemaxを設定する。
図16は、本変形例における燃焼状態の学習範囲について説明するための図である。目標回転数Ne0よりも高回転側の領域において、回転数変化許容値ΔNemaxの範囲内で燃焼状態の学習が行われる。上記範囲内の運転条件において、燃焼状態を未学習の点(エンジン回転数)が存在する場合には、運転条件をその未学習の点に振って燃焼状態を学習する。例えば、目標回転数Ne0よりも回転数変化許容値ΔNemaxだけ高回転のエンジン回転数に未学習点が存在する場合には、最終目標回転数Ne1を上記式(2)により算出する。一方、未学習点が存在しない場合には、最終目標回転数Ne1は、ステップS510で算出された目標回転数Ne0のままとする。
次に、ステップS530では、ECU50により、スリップ制御が実施される。ECU50は、エンジン回転数を、目標回転数Ne0よりも回転数変化許容値ΔNemaxだけ増加させるスリップ制御を実行する。言い換えると、ECU50は、エンジン回転数を、最終目標回転数Ne1とするスリップ制御を実行する。また、ECU50は、燃焼状態を学習し、未学習点の燃費データを算出された新しい燃費データに更新する。ステップS530が実行されると、本制御フローは終了される。
本変形例では、燃焼状態を学習する場合に、スリップ制御によりエンジン回転数を変化させる。スリップ制御の実施中は、エンジントルクの変動が小さいため、安定した学習ができる。変速比を変化させてエンジン回転数を変化させる場合と比較して、イナーシャ等の影響を受けにくく、応答性を低下させることなくエンジン回転数の制御を実現可能である。スリップ制御によりエンジン回転数を変化させる方法によれば、変速に伴う回転数変化が大きくなりやすい有段変速機においても、運転者に違和感を与えることなく、幅広い運転条件の燃焼状態を学習することができる。
本変形例では、トルクコンバータのロックアップクラッチでスリップ制御を実行したが、スリップ制御を実行する方法(装置)は、これには限定されない。有段式の自動変速機において、変速段を形成するクラッチ(またはブレーキ)のスリップ量を制御することで、エンジン回転数を目標値とするためのスリップ制御を実行するようにしてもよい。
(第3実施形態)
図17を参照して第3実施形態について説明する。第3実施形態については、上記各実施形態と異なる点についてのみ説明する。
上記第2実施形態では、燃焼状態の学習範囲を広げるためにエンジン回転数を変化させる制御(変速制御、スリップ制御)を実行する条件に制限は設けられていなかったが、本実施形態では、エンジン回転数を変化させる制御は、運転者によるスロットル開度(アクセル開度)の変化速度が大きい場合に実行される。また、エンジン回転数を変化させる場合の変化方向は、回転増加方向とする。本実施形態によれば、効率的な演算ができる。
図17は、本実施形態の動作を示すフローチャートである。
まず、ステップS610では、ECU50により、目標回転数Ne0が算出される。ECU50は、最適燃費線100と、必要パワーとに基づいて、エンジン10の目標回転数Ne0を算出する。
次に、ステップS620では、ECU50により、回転数変化許容値ΔNemax、および、最終目標回転数Ne1が算出される。回転数変化許容値ΔNemaxは、等パワー運転状態でエンジン回転数を目標回転数Ne0から変化させる場合に許容される最大の変化幅として算出される。目標回転数Ne0よりも低回転側および高回転側のそれぞれの領域において、回転数変化許容値ΔNemaxの範囲内の運転条件で燃焼状態の学習が行われる。上記範囲内の運転条件において、燃焼状態を未学習の点(エンジン回転数)が存在する場合(後述するステップS630−Y)には、運転条件をその未学習の点に振って燃焼状態を学習する。
次に、ステップS630では、ECU50により、未学習領域が存在するか否かが判定される。ECU50は、目標回転数Ne0よりも高回転側で、かつ、回転数変化許容値ΔNemaxの範囲内の回転数で、燃焼状態を未学習の領域が存在するか否かを判定する。その判定の結果、未学習領域が存在すると判定された場合(ステップS630−Y)にはステップS640に進み、そうでない場合(ステップS630−N)にはステップS680に進む。
ステップS640では、ECU50により、スロットル開度の時間当たり変化(変化速度)ΔPAPが、予め定められた閾値Δaより大きいか否かが判定される。上記閾値Δaは、例えば、10(%/sec)とすることができる。スロットル開度の時間当たり変化ΔPAPが大きいときには、従来の制御においてエンジン回転数の変化が発生するため、学習範囲を広げるためにエンジン回転数を変化させる制御を実行したとしても、運転者は違和感を覚えない。ステップS640の判定の結果、スロットル開度の時間当たり変化ΔPAPが、上記閾値Δaより大きいと判定された場合(ステップS640−Y)にはステップS650に進み、そうでない場合(ステップS640−N)にはステップS670へ進む。
ステップS650では、ECU50により、実行フラグiの値が1にセットされる。
次に、ステップS660では、ECU50により、最終目標回転数Ne1の値が、ステップS610で算出された目標回転数Ne0に、代えて、未学習領域の回転数に設定される。例えば、目標回転数Ne0よりも回転数変化許容値ΔNemaxだけ高回転のエンジン回転数に未学習点が存在する場合には、目標回転数Ne0にステップS620で算出された回転数変化許容値ΔNemaxを加算した値が最終目標回転数Ne1として設定される。本実施形態では、最終目標回転数Ne1をステップS610で算出される目標回転数Ne0と異なる値に設定する場合、エンジン回転数の変化方向は、回転増加方向とする。言い換えると、最終目標回転数Ne1は、目標回転数Ne0よりも大きな値に設定される。これは、加速前(スロットル開度変化前)の定常走行時には、最低回転でエンジン10を運転するため、目標回転数Ne0よりも低回転側の領域でエンジン10が運転されることは少ないためである。目標回転数Ne0よりも高回転側の領域に限って燃費を学習することにより、効率的な演算ができる。また、最終目標回転数Ne1が目標回転数Ne0よりも高回転側の値に設定されることで、エンジン10の駆動力余裕が増加するため、再加速性能が向上する。
次に、ステップS720では、ECU50により、変速制御が実施される。ECU50は、必要パワーを実現でき、かつ、エンジン回転数が最終目標回転数Ne1となるように、無段変速機30の変速制御、および、エンジン10の運転制御を行う。また、ECU50は、燃焼状態を学習し、未学習点の燃費データを算出された新しい燃費データに更新する。ステップS720が実行されると、本制御フローはリターンされる。
ステップS630で否定判定がなされてステップS680に進むと、ステップS680では、ECU50により、実行フラグiの値が1にセットされているか否かが判定される。その判定の結果、実行フラグiが1であると判定された場合(ステップS680−Y)には、ステップS690に進み、そうでない場合(ステップS680−N)にはステップS710に進む。
ステップS690では、ECU50により、スロットル開度の時間当たり変化ΔPAPの絶対値が、上記閾値Δaより大きいか否かが判定される。ステップS690の判定では、スロットル開度が大きく増加する場合のみならず、スロットル開度が大きく減少する場合にも、燃焼状態の学習範囲を広げるための変速制御および学習制御(ステップS660,S720)へ移行する。ステップS690の判定の結果、スロットル開度の時間当たり変化ΔPAPの絶対値が、上記閾値Δaより大きいと判定された場合(ステップS690−Y)にはステップS660へ進み、そうでない場合(ステップS690−N)には、ステップS700へ進む。
ステップS700では、ECU50により、実行フラグiの値が0にリセットされる。次に、ステップS710では、ECU50により、最終目標回転数Ne1の値として、ステップS610で算出された目標回転数Ne0が設定される。ステップS710が実行されると、ステップS720へ進む。
また、ステップS640で否定判定がなされてステップS670へ進むと、ステップS670では、ECU50により、最終目標回転数Ne1の値として、ステップS610で算出された目標回転数Ne0が設定される。ステップS670が実行されると、ステップS720へ進む。