JP5061146B2 - 電力計測回路の校正方法および携帯式コンピュータ - Google Patents

電力計測回路の校正方法および携帯式コンピュータ Download PDF

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Description

本発明は、携帯式コンピュータに搭載される交流電源から供給される電力を計測する簡易な電力計測回路を校正する技術に関し、さらに詳細には携帯式コンピュータの動作中に校正する技術に関する。
ノートブック型パーソナル・コンピュータ(以下、ノートPCという。)には、電池パックが搭載されており、移動先では電池から電力を供給し、オフィスではAC/DCアダプタから電力を供給して使用することができる。これまでノートPCには、電池による動作時間を長くするために電池駆動時の消費電力を低減するためのさまざまな技術が導入されてきた。昨今、ノートPCがデスクトップ型コンピュータに代わって多数使用されるようになると、交流電源で駆動している間の消費電力を低減することの重要性が叫ばれてきている。そのためには、交流電源からノートPCに供給される電力をシステムが正確に計測する必要がある。
ノートPCが消費電力を計測して、デバイスの制御に使用したり、計測値をユーザに提示したり、あるいは計測値を構内の電力管理用コンピュータに転送したりするためには、アナログ量としての電圧および電流を計測してそれらをディジタル化し、ディジタル演算を行って電力を計算する。電力を正確に計測するためには、アナログ量の処理ために複数の抵抗、演算増幅器およびトランジスタを組み合わせたアナログ回路が必要となる。そして、抵抗値には製造上の公差がありさらに抵抗値は温度により変化する。さらに演算増幅器やトランジスタには、オフセットや温度によるドリフトが発生する。これらを補整することができる精度の高いアナログ回路を設けることはノートPCにコストの増大をもたらす。
特許文献1には、アプリケーション・プログラムの実行方法を適宜選択してPCの消費電力を低減するために、ユーザに消費電力を知らせるための技術を開示する。同文献には、ACアダプタからDC/DCコンバータまでの回路の途中に2つの演算増幅器と1つのバイポーラ・トランジスタと複数の抵抗で構成されたACアダプタ電流計測回路が開示されている。また、同文献には、このACアダプタ電流計測回路に代えて、インテリジェント・バッテリィ・パックが計測した電力値を利用してディスプレイに表示する方法を開示する。この場合、PCにACアダプタからシステム・コンポーネントに電力を供給しているときには、一時的にACアダプタからの電力供給を停止してバッテリィ・パックから放電させ放電に伴う電力を計測する。
特許文献2には、ノートPCに搭載されるインテリジェント電池の劣化量を適切に取得するために、ノートPCにACアダプタから電力を供給している間にその電力供給を一旦停止して電池の放電を行い、そのときの充放電電流をインテリジェント電池からノートPCが取得することが記載されている。
特開2001−228942号公報 特開2003−92836号公報
ノートPCに搭載さる電池パックには、充放電や残容量を管理するために精度の高い電流および電圧計測回路が組み込まれているため、特許文献1に記載された発明のように、電池パックで計測したデータを使用してノートPCの電力をディスプレイに表示する場合には都合がよい。しかし、交流電源から供給される電力に基づいてノートPCをきめ細かく制御しようとすれば、高い頻度で電池パックからの電力供給に切り替える必要があり、AC/DCアダプタが接続されて充電可能な状態であるにもかかわらず電池パックの容量が低下してしまう。この問題を解消するために、特許文献1の発明では、表示間隔または取得データの更新間隔を2秒以上に設定するようにしている。したがって、消費電力をノートPCのきめ細かな制御に利用したり、建物の電力管理に使用するために外部に転送したりするには、特許文献1のような方法ではノートPCからAC/DCアダプタを取り外して使用する場合に、電池の容量が不足している事態が生ずる。
そこで本発明の目的は、簡単な電力計測回路で交流電源から供給される電力を正確に計測することができるノートPCを提供することにある。さらに本発明の目的は、電池パックの電池の電力消費を少なくしながら交流電源から供給される電力を正確に計測することができるノートPCを提供することにある。さらに本発明は、そのようなノートPCにおける電力計測回路の校正方法を提供することにある。
本発明は、交流電源が供給する電力で電池を充電しながらシステム・デバイスに電力を供給することが可能な携帯式コンピュータにおいて、交流電源から携帯式コンピュータに供給されるAC側電力を計測するAC側電力計測回路の校正に関する。本発明においては、AC側電力計測回路はコストの増大を防ぐために簡易な回路で構成するが、電池を充電する電力を計測するDC側電力計測回路は、電池の厳格な管理に供するために精度が高いものになっている。本発明においては、DC側電力計測回路を基準器として利用してAC側電力計測回路が計測した電力値を補正する。
AC側電力計測回路が計測する電力は、電池が充電されているときは充電に費やす電力とシステム・デバイスに供給する電力を含む。したがって、携帯式コンピュータ自体で校正しようとすれば、校正回路もシステム・デバイスの一部になるため、AC側電力計測回路の読み取り値であるAC側電力値とDC側電力計測回路の読み取り値であるDC側電力値を直接対比させて偏差を把握して校正することはできない。本発明では、AC側電力計測回路を校正するために携帯式コンピュータをシステム・デバイスの消費電力の変動が少ない校正モードの動作状態に移行させてAC側電力値とDC側電力値の組で構成されるデータを収集する。そして通常モードの動作状態でAC側電力計測回路から受け取ったAC側電力値を収集したデータに基づいて補正して出力する。複数のAC側電力値とDC側電力値の組は、通常モードの動作状態でコントローラによる参照が可能な校正テーブルに格納することができる。
校正テーブルを利用すれば、コントローラはAC側電力計測回路のDC側電力計測回路に対する偏差を簡単に認識することができる。したがって、通常モードの動作状態でAC側電力計測回路が計測したAC側電力値を、校正テーブルを参照して補正することができる。校正モードの動作状態をパワー・オフ状態またはサスペンド状態として選択すれば、システム・デバイスの消費電力は通常モードのパワー・オン状態における消費電力に比べて非常に小さくかつ変動も少ないため、充電を停止している間に実際に計測する電力をゼロとみなして両者の偏差を把握してAC側電力計測回路のオフセット補正をすることができる。また、DC側電力値とAC側電力値を直接対比させた複数のデータの組を校正テーブルに格納することで、AC側電力計測回路のゲイン補正をすることができる。
校正モードの動作状態をパワー・オン状態におけるシステム・デバイスの変動の少ない状態にすることで形成することもできる。パワー・オン状態においてシステム・デバイスの中で大きな電力を消費するプロセッサやハードディスク・ドライブなどをアイドル状態やスタンバイ状態に移行させると、システム負荷の消費電力を小さくし、かつ変動をなくすことができる。ただし、サスペンド状態やパワー・オフ状態とは異なり、システム・デバイスの消費電力はゼロとみなせる程度まで小さくないので、AC側電力値とDC側電力値を直接対比させて偏差を把握することはできない。パワー・オン状態における校正モードではAC側電力計測回路の充電を開始したあとの読み取り値と充電を停止したときの読み取り値との差を同一条件のDC側電力計測回路の読み取り値の差と比較してゲイン補正をすることができる。
電池は、携帯式コンピュータの筐体内部に組み込まれていてもよいが、内部にDC側電力計測回路を備えた筐体に着脱可能な電池パックとしてもよい。AC側電力計測回路が、被計測電流が流れるセンス抵抗と、センス抵抗の両端に接続された分圧抵抗と、分圧抵抗に接続されセンス抵抗が検出した電圧を増幅する演算増幅器を含むような場合は演算増幅器の耐電圧を下げることができるが、分圧抵抗による誤差が大きくなるので特に本発明により校正することは有益である。
校正されたAC側電力計測回路の出力はディスプレイに定期的に表示することで、ユーザにプログラムの実行状態と消費電力の関係に関する情報を提供することができる。本発明では、電池の残容量がある程度以下でないと充電中にAC側電力計測回路の計測スパン全体に渡ってAC側電力値とDC側電力値の組で構成されるデータを取得することができない。そこで、校正モードに移行する際には、データを収集する前に携帯式コンピュータに対する電力源を交流電源から一旦電池に切り換えて電池を所定の残容量まで放電させることが望ましい。
本発明により、簡単な電力計測回路で交流電源から供給される電力を正確に計測することができるノートPCを提供することができた。さらに本発明により、電池パックの電池の電力消費を少なくしながら交流電源から供給される電力を正確に計測することができるノートPCを提供することができた。さらに本発明により、そのようなノートPCにおける電力計測回路の校正方法を提供することができた。
本実施の形態にかかるノートPCの主要なハードウエア構成を示す概略ブロック図である。 電池パックとノートPCの一部の要素で構成される校正システムの概要を示すブロック図である。 校正システムの主要部を形成するエンベデッド・コントローラの機能ブロック図である。 AC側電力計測回路に存在する計測誤差を説明する図である。 システム・デバイスが校正モードに移行している間に電池ブロックを充電するときの経過時間に対してAC側電力計測回路とDC側電力計測回路がそれぞれ計測した電力が変化する様子を示す図である。 校正テーブルのデータ構造を示す図である。 校正システムを実現するソフトウエアの構成を示すブロック図である。 校正の手順を示すフローチャートである。 校正の他の手順を示すフローチャートである。
[ノートPCの主要な構成]
図1は、本実施の形態にかかるノートPC10の主要なハードウエア構成を示す概略ブロック図である。CPU11は、ノース・ブリッジ13およびノース・ブリッジ13にさまざまなバスを経由して接続された各デバイスを制御する。ノース・ブリッジ13は、メイン・メモリ15、ビデオ・コントローラ17およびサウス・ブリッジ21に接続され、メイン・メモリ15へのアクセス動作を制御するためのメモリ・コントローラ機能や、CPU11と他のデバイスとの間のデータ転送速度の差を吸収するためのデータ・バッファ機能などを含む。
ビデオ・コントローラ17は、グラフィック・アクセラレータおよびVRAMを備えており、CPU11からの描画命令を受けて描画すべきイメージを生成してVRAMに書き込み、VRAMから読み出したイメージを描画データとしてLCD19に送る。メイン・メモリ15は、CPU11が実行する各種プログラムの読み込み領域および処理データを書き込む作業領域として利用されるランダム・アクセス・メモリである。
サウス・ブリッジ21はさまざまな規格のインターフェース機能を備え、ハードディスク・ドライブ(HDD)23、光学ディスク・ドライブ(ODD)25、およびLANコントローラ27が接続されている。HDD23は、OS、BIOS、デバイス・ドライバ、アプリケーション・プログラムなどのプログラムの他に、ノートPC10の電源を管理したり本発明の校正に関する処理を行ったりする電源管理プログラム(図7参照)を格納する。LANコントローラ27は、イーサネット(登録商標)規格の有線LANに接続するための拡張カードで、サウス・ブリッジ21にPCIバスで接続され、さらにノートPC10の筐体に取り付けられたRJ45という規格のコネクタ29に接続されている。コネクタ29をネットワークに接続することで、ノートPC10は、電力情報をネットワークに出力することができる。さらにサウス・ブリッジ21は、LPCバス31を介して、従来からノートPC10に使用されているレガシー・デバイス、あるいは高速なデータ転送を要求しないデバイスに接続される。
LPCバス31には、BIOS_ROM33およびエンベデッド・コントローラ(EC)35が接続されている。BIOS_ROM33は、不揮発性で記憶内容の電気的な書き替えが可能なメモリであり、起動時にハードウエアの試験および初期化を行うPOST(Power-On Self Test)、デバイスへの基本入出力と電源および筐体内の温度などを管理するACPI BIOS、およびユーザにパスワード認証を要求するためのパスワード認証コードなどなどのプログラムを格納する。
EC35は、8〜16ビットのCPU、ROM、RAMなどで構成されたマイクロ・コンピュータであり、さらに複数チャネルのA/D入力端子、D/A出力端子、タイマ、およびディジタル入出力端子を備えている。EC35は、ノートPC10の内部の動作環境の管理にかかるプログラムをCPU11とは独立して実行することができる。EC35は後に詳しく説明するように、本実施の形態にかかる校正システムの主要な機能を担う。EC35は電池パック37に対してコマンドを送って通信を行い、電池パック37から充電電流の電流設定値、充電電圧の電圧設定値、充放電電流、充放電電圧および残存容量などのデータを受け取る。EC35は、電池パック37から受け取った充電電流の設定値および充電電圧の設定値を充電器41に設定する。
さらに、EC35はキーボード・コントローラの機能も備えておりキーボード/マウス47が接続される。EC35にはまた放熱ファン49も接続される。放熱ファン49は、筐体の内部の温度の高い空気を外部に排気して、筐体内部の温度を制御する。放熱ファン49の動作および回転速度は、筐体内部の要所に設けられた温度センサの出力に基づいてEC35が制御する。充電器41は、EC35により設定された電流設定値および電圧設定値に基づいて、定電流定電圧制御方式(CCCV)で電池パック37の電池セルを充電する。EC35にはさらに、パワー・コントローラ39が接続されている。パワー・コントローラ39はハードウエア論理回路で構成されており、EC35からの指示に基づいてDC/DCコンバータ43を制御する。
ここでノートPC10が動作するときの電源状態について説明する。ノートPC10は、ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)の省電力機能およびプラグ・アンド・プレイ方式に対応している。ACPIでは、パワー・オン状態であるS0ステートに対してS1〜S5の5つのスリーピング・ステートが定義されている。S1ステート〜S3ステートは、起動までの時間を短縮したステートである。S1ステートでは、システム・コンテキストが維持される。S2ステートは、CPU11およびシステム・キャッシュのコンテキストが消失する以外はS1ステートと同じである。S3ステートは、S2ステートに加えてノース・ブリッジ13およびサウス・ブリッジ21のコンテキストが消失するが、メイン・メモリ15の記憶は保持される。S3ステートはいわゆるサスペンド状態またはsuspend to RAMといわれ、ノートPC10は、メイン・メモリ15、サウス・ブリッジ21、EC35、およびLANコントローラ22以外のデバイスに対する電源をオフにする。
S4ステートはACPIでサポートされるパワー・ステートの中で最も起動までの時間が長いステートでいわゆるsuspend to diskまたはハイバネーション状態といわれる。ノートPC10は、S0ステートからS4ステートに遷移する際には、OSがHDD23にノートPC10の直前のコンテキストを格納してからパワー・コントローラ39および電源の起動に最小限必要なデバイス以外のデバイスに対する電源をオフにする。S5ステートはいわゆるソフト・オフといわれるパワー・オフ状態で、OSがコンテキストをHDD23に格納しない点を除いては電力を供給するデバイスの範囲はS4ステートと同じである。
ノートPC10では、S5ステートに対して、S5(AC)ステートおよびS5(DC)ステートを定義している。S5(DC)ステートはAC/DCアダプタ45が外されて電池パック37から一部のシステム・デバイスに電力が供給されているパワー・オフ状態を意味し、S5(AC)ステートは、AC/DCアダプタ45から一部のシステム・デバイスに電力が供給されるパワー・オフ状態を意味する。S5(DC)ステートでは、パワー・オフ状態でのバッテリィの消耗を極力少なくするために、パワー・コントローラ39などのノートPC10に電源を供給するために必要な最小限のデバイスにだけ電力が供給される。S5(AC)ステートでは、EC35、サウス・ブリッジ21、パワー・コントローラ39、LANコントローラ27に電力が供給され、LANコントローラ27がネットワークを通じてマジックパケットを受け取ってノートPC10が起動できるようになっている。さらに、S5(AC)ステートでは、AC/DCアダプタ45が充電器41に電力を供給して、電池パック37を充電することができる。
DC/DCコンバータ43は、AC/DCアダプタ45または電池パック37から供給される直流電圧を、ノートPC10内のシステム・デバイスを動作させるために必要な複数の電圧に変換してそれらに電力を供給する。DC/DCコンバータ43は、システムの電力供給範囲をS0ステート〜S5ステートにするために複数の電源系統で構成されている。ユーザがキーボード47から操作したり、ノートPCの筐体の開閉を示すセンサが差動したり、CPU11が所定時間以上アイドル状態となったり、あるいは、電池パック37の残容量が一定値以下になったりしたようなさまざまなイベントが発生すると、EC35はそのイベントを検知してパワー・コントローラ39に指示しノートPC10のパワー・ステートを遷移させる。
AC/DCアダプタ45は交流の入力電圧を一定の直流電圧(20V)に変換する。AC/DCアダプタ45は、ノートPC10に接続されると、DC/DCコンバータ43と充電器41に電力を供給する。電池パック37は、米国インテル社および米国デュラセル社によって提唱されたスマート・バッテリ・システム(SBS:Smart Battery System)と呼ばれる規格に準拠している。同規格に準拠した電池パックは、スマート・バッテリィまたはインテリジェント・バッテリィと呼ばれる。
なお、図1および図2は本実施の形態を説明するために、本実施の形態に関連する主要なハードウエアの構成および接続関係を簡略化して記載したに過ぎないものである。ここまでの説明で言及した以外にも、ノートPC10を構成するには多くのデバイスが使われる。しかしそれらは当業者には周知であるので、ここでは詳しく言及しない。図で記載した複数のブロックを1個の集積回路もしくは装置としたり、逆に1個のブロックを複数の集積回路もしくは装置に分割して構成したりすることも、当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。また、各々のデバイスの間を接続するバスおよびインターフェースなどの種類はあくまで一例に過ぎず、それら以外の接続であっても当業者が任意に選択することができる範囲においては本発明の範囲に含まれる。
[校正システムの全体構成]
図2は、電池パック37とノートPC10の一部の要素で構成される本発明の実施の形態にかかる校正システムの概要を示すブロック図である。本発明との関連では電池パック37の構成は周知である。電池パック37は、本実施の形態ではノートPC10の筐体に着脱可能な構成になっているが、本発明は電池パック37の内部の構成要素がノートPC10の筐体の内部に実装されるような場合にも適用することができる。
電池パック37は、複数の単位セルからなる電池ブロック101、電池パック37を制御すると共にEC35とコミュニケーション・ライン(CLOCKおよびDATAの2線)を介して通信を行うMPU111、電池パック37に対する充放電電流を計測する電流計測回路103、ならびに電池ブロック101およびセルの端子電圧を計測する電圧計測回路105などを備えている。電池ブロック101は、例えば2並列3直列(1.8Ah/セル)の6セルで構成されるリチウム・イオン組電池である。
MPU111は、8〜16ビット程度のCPUの他に、アナログ信号処理回路、RAM、フラッシュ・メモリ、アナログ入出力、およびディジタル入出力などを1個のパッケージの中に備えており、CPUはフラッシュ・メモリに格納されたファームウエアを実行して、電池パックの動作に関する演算および制御を行う。電流計測回路103および電圧計測回路105から出力されたアナログ信号は、MPU111のアナログ入出力に入力され、アナログ信号処理回路でA/D(Analog to Digital)変換される。ディジタル値に変換された電流および電圧に基づいて、MPU111は電池ブロック101の残容量、充放電電流、セル電圧、および充放電回数などの電池の管理に関わる管理情報を把握することができる。
MPU111は、電流計測回路103および電圧計測回路105から受け取った充電電流および充電電圧から充電時にAC/DCアダプタ45から供給された電力(以後、充電電力という。)を計算することができる。管理情報および充電電力はMPU111のレジスタに格納され、コミュニケーション・ラインを介してSBSで定められたプロトコルによってEC35が定期的に受け取る。
電流計測回路103では、充電時は電池ブロック101に流れ込む充電電流によって、センス抵抗RSの両端に電位差が発生する。この電位差は、演算増幅器AMP1によって差動増幅される。また、演算増幅器AMP2とトランジスタによって、演算増幅器AMP1の出力電圧に比例する電流が抵抗R4を流れる。最終的に電池ブロック101の充電電流の値は、抵抗R5に発生する電圧に変換することができる。この電圧はMPU111のA/D#2ポートに出力される。また、電圧計測回路105では、抵抗R6とR7で分圧された電池ブロック101の出力電圧が演算増幅器AMP3によって差動増幅された後にMPU111のA/D#1ポートに出力される。MPU111のアナログ信号処理回路は、これらの出力電圧をA/D変換することによって電池ブロック101の現在の充電電流および充電電圧を常に計測することができる。計測された現在の充電電流および充電電圧は、一定間隔ごとにMPU111内部のフラッシュ・メモリに保存される。本実施例では1000ミリ秒間隔で記録を行っている。
さらにMPU111は、放電保護スイッチD−FET107および充電保護スイッチC−FET109を制御する出力ポートを備えている。D−FET107は電池ブロック101の過放電を防止するトランジスタであり、C−FET109は過充電を停止するトランジスタである。充電中および放電中は、D−FET107およびC−FET109はオンに設定される。電池ブロック101の近傍には電池ブロック101の温度を監視するサーミスタ113が配置され、このサーミスタに発生する電圧はEC35に出力される。以上で述べた電池パック37の構成は、SBS規格に準拠したインテリジェント電池の構成としては一般的なもので、本発明を実現する上で電池パック37に対する特別な変更は生じない。
ノートPC10においては、AC/DCアダプタ45にセンス抵抗151の一端が接続され、センス抵抗151の他端がFET162のソースに接続され、FET162のドレインがダイオード173のアノードに接続されている。FET162のゲートはEC35に接続されている。ダイオード173のカソードは充電器41とDC/DCコンバータ43に接続されている。センス抵抗151からダイオード173までは、AC/DCアダプタ45がDC/DCコンバータ43のシステム・デバイスと充電器41に電力を供給するAC側電力ライン160を構成する。
センス抵抗151の一端とグランドとの間には、分圧抵抗153と分圧抵抗157が直列に接続され、センス抵抗151の他端とグランドとの間には、分圧抵抗155と分圧抵抗159が直列に接続されている。分圧抵抗153と分圧抵抗157の接続点は、演算増幅器161の−入力端子に接続され、分圧抵抗155と分圧抵抗159の接続点は、演算増幅器161の+入力端子に接続される。演算増幅器161の出力はEC35に接続される。
抵抗151〜159および演算増幅器161は、AC側電力ライン160に流れる電流を計測する電流計測回路179を構成する。電流計測回路179は、センス抵抗151に流れる電流に比例する電圧を増幅して演算増幅器161からEC35のA/D端子に出力する。EC35は受け取ったアナログ電圧をディジタル化して、AC/DCアダプタ45の定格出力電圧を使って、AC/DCアダプタ45が供給する電力を計算する。ノートPC10に搭載される電流計測回路179とEC35はAC側電力計測回路を構成し、電池パック37に搭載される電流計測回路103、電圧計測回路105、およびMPU111はDC側電力計測回路を構成する。
FET162はEC35により制御され、後に説明する校正モードにおいてAC/DCアダプタ45からDC/DCコンバータ43に供給する電力を一旦停止して電池ブロック101から電力を供給する際にオフになり、その他の状態ではオンになっている。充電器41は、FET163およびFET165と、これらを同期整流方式でPWM制御するスイッチング制御回路(PWM_IC)164で構成されている。FET162のドレインとグラウンドとの間には、直列接続されたFET163とFET165が接続されている。FET163とFET165の接続部とグラウンドとの間には、直列に接続されたインダクタ167とキャパシタ169が接続されている。インダクタ167とキャパシタ169の接続点は、FET109およびダイオード171のアノードに接続されている。ダイオード171のカソードは、DC/DCコンバータ43に接続されている。
インダクタ167およびキャパシタ169は充電器41に対する平滑回路を構成し、スイッチング制御回路164を駆動して生成された直流の充電電流の脈動は、インダクタ167とコンデンサ169により低減される。充電器41は、AC/DCアダプタ45から入力された直流電圧を電池ブロック101の充電に適した直流電圧に変換して出力する。図には示していないが、充電器41の電圧フィードバック入力および電流フィードバック入力には、充電器41から出力された出力電圧(充電電圧)および出力電流(充電電流)に対応した電圧がフィードバック制御のために入力される。
充電器41の電流設定値入力Isetおよび電圧設定値入力Vsetには、ノートPC10の内部で生成された一定電圧を分圧した基準電圧源175により電圧が入力される。基準電圧源175は、EC35からの指示に基づいて電圧設定値入力Vsetには設定電圧を入力し、電流設定値入力Isetには設定電流を入力する。充電器41は出力電圧または出力電流が設定電圧または設定電流のいずれかに一致するように動作する。充電器41は、充電初期には定電流制御で動作するが、充電が進行して充電電流が減少し設定電流よりも少なくなると、自動的に出力電圧を設定電圧に一致させるようにして定電圧制御で動作する。逆に、定電圧制御で動作しているときに何らかの原因で充電電圧が低下して設定電圧よりも下がると、自動的に出力電流を設定電流に一致させるようにして定電流制御で動作する。
EC35は、電源以外にもノートPC10を構成する多くのハードウエア要素を制御する集積回路である。EC35は、電池パック37と通信して、MPU111から電池ブロック101の表面温度、セル電圧、電池ブロック電圧、充放電電流、充放電電力、残容量および充電器41に設定する設定電圧および設定電流などの管理情報を取得することができる。EC35は、MPU111から受け取った設定電圧および設定電流を基準電圧源175に設定する。たとえば、MPU111が設定電圧および設定電流をゼロにするようにEC35に指示をすると、電圧設定値入力Vset、電流設定値入力Isetにゼロ電圧が設定され充電器41は動作を停止する。充電器41の動作を開始するときは、MPU111から指示を受けたEC35が基準電圧源175を経由して、電圧設定値入力Vsetおよび電流設定値入力Isetにゼロ以外の電圧を設定する。
[電力の計測誤差]
電池パック37では、安全の確保および充放電の適正化のために電圧、電流および残容量などの電池の特性を厳格に管理する必要がある。したがって、DC側電力計測回路は高い精度がでるように構成されている。たとえば、電流計測回路103では、耐電圧の高い演算増幅器を使用しているので、センス抵抗RSの両端電圧を直接演算増幅器AMP1に入力することができるため電流計測回路179のような分圧抵抗153〜159を採用することにより発生する計測誤差は少ない。さらに、演算増幅器を2段接続しさらにバイポーラ・トランジスタを使用して増幅率の精度を向上している。また、MPU111では、ΔΣA/D変換法によりA/D変換してから電力計算をしており、ディジタル処理系でも誤差の少ない計算方式を採用している。
これに対して電流計測回路179はできるだけコストの低減を図るため、演算増幅器161は耐電圧の低いものを採用する。したがって、AC側電力ライン160に流れる電流値に相当するセンス抵抗151の両端電圧を演算増幅器161に入力するには、分圧抵抗153〜159で分圧する必要がある。ここで各分圧抵抗の抵抗値には製造上の公差がある。たとえば、センス抵抗を0.01Ωとして公差がゼロと仮定し、分圧抵抗153〜159の抵抗値をそれぞれ100KΩとしてそれらの公差を0.1%と仮定すれば、演算増幅器161の増幅率を200倍にしたときに、計算上では5Aの実際の電流に対して最大で9Aに相当するセンス抵抗151の両端電圧が演算増幅器161に供給されることになり、計測誤差が非常に大きくなる。また、演算増幅器を1段にしたりするなどして簡素化しているためアナログ系の計測誤差が大きくなる。さらにEC35では、ディジタル処理系の負担を軽くしたりするためにΔΣA/D変換法のような高度なディジタル演算方式を採用していないことなどもDC側電力計測回路に比べて計測誤差が大きいことの一因になっている。
[校正システムの主要な構成]
本発明においては、精度の低いAC側電力計測回路の校正を、精度の高いDC側電力計測回路を基準器とみなして行う。計測器の校正を行うためには、基準器と被校正器で同一の電力値を計測して両者間の偏差を把握する必要があるが、AC側電力計測回路がノートPC10に実装されている状態で校正をするために、2つの計測器が同一の電力値を計測することが簡単にはできない。本実施の形態では、AC側電力計測回路の計測値のDC側電力計測回路の計測値に対する偏差を把握するために、AC/DCアダプタ45からノートPC10に電力を供給しながら、AC側電力計測回路でAC側電力ライン160を通過する電力値であるAC側電力値を計測し、DC側電力計測回路でDC側電力ライン170を通過する充電電力値であるDC側電力値を計測する。このとき、DC/DCコンバータ43から電力の供給を受けるシステム・デバイスが消費する電力が変化しないようにシステム・デバイスを校正モードに移行させる。システム・デバイスの校正モードへの移行については後に説明する。
図3は、校正システムの主要部を形成するEC35の機能ブロック図である。A/D変換部201は、電流計測回路179の演算増幅器161からAC/DCアダプタ45がノートPC10に供給する電流をアナログの電圧として受け取る。この電流は、電池ブロック101が充電中であれば、DC側電力ライン170に流れる充電電流も含んでいる。A/D変換部201は、アナログの電圧値をディジタルの電圧値に変換して電力計算部203に送る。電力計算部203は、AC/DCアダプタ45の定格出力電圧とA/D変換部201から受け取った電圧値に基づいて計算した電力値を動作モード切換部205に送る。また、MPU111が出力したディジタルの充電電力値は、データ取得部213が定期的に受け取り動作モード切換部205に送る。
動作モード切換部205は、CPU11が実行する電力管理プログラム(詳細は後述する。)から指示を受けて、EC35を校正モードと通常モードのいずれかに移行させることができる。動作モード切換部205はまた、ノートPC10がS3ステートまたはS5(AC)ステートに移行したときにEC35を校正モードに移行させる。動作モード切換部205は、EC35を通常モードに設定したときは、電力計算部203から受け取ったAC側電力値をデータ出力部207に送る。データ出力部207は、後に説明するように校正テーブル211を参照して通常モードでAC側電力計測回路から受け取ったAC側電力値を補正して電源管理プログラム151を実行するCPU11に送る。また、動作モード切換部205はEC35を通常モードに設定したときは、データ取得部231がMPU111から受け取った残容量を、電源管理プログラム151を実行するCPU11に送り、さらに充電器41に対する電圧設定値および電流設定値を基準電圧源175に設定する。
動作モード切換部205はEC35を校正モードに設定したときは、電力計算部203から受け取ったAC側電力値とデータ取得部213から受け取ったDC側電力値を校正テーブル生成部209に送る。動作モード切換部205はまたEC35を校正モードに設定したときは、データ取得部213から受け取った電圧設定値および電流設定値を基準電圧源175に設定する。校正テーブル生成部209は、充電電力が変化しないとみなせる範囲のほぼ同一時刻におけるAC側電力値とDC側電力値を対比させて校正テーブル(図6参照)に格納する。
ここで図4を参照して、AC側電力計測回路に存在する計測誤差について説明する。図4において横軸はAC側電力計測回路が計測している実際の電力で縦軸はAC側電力計測回路の読み取り値を示している。ライン231は計測誤差のない理想的な特性を示し、実際の電力値と読み取り電力値は一致している。ライン233は、ゼロ点がシフトしたいわゆるオフセット誤差が存在する場合を示し、ライン235は、オフセット誤差はないが傾きがシフトしているいわゆるゲイン誤差が存在する場合を示す。AC側電力計測回路には、オフセット誤差とゲイン誤差が同時に発生している。この誤差は周囲温度の変化が少ない場合はほぼ一定している。電力計測回路179の校正はこの2つの誤差を解消するように行う必要がある。本発明においてAC側電力計測回路を校正するとは、ノートPC10の校正モードにおいて、同一の電力値に対するAC側電力計測回路の読み取り値のDC側電力計測回路の読み取り値に対する偏差を把握し、通常モードにおいてAC側電力計測回路の読み取り値をその偏差で補正して出力することをいう。したがって、AC側電力計測回路の構成要素に対して偏差を解消するような物理的な調整は行わない。
図2に示した校正システムにおいては、AC側電力値はDC側電力値とシステム・デバイスの消費電力値を合計した値に相当する。したがって、システム・デバイスが稼働している間はAC側電力値とDC側電力値を直接対比させることはできない。オフセット誤差を捕捉して補正するためには、AC側電力計測回路が計測する電力とDC側電力計測回路が計測する電力をともにゼロにして比較する必要があるが、図2、図3に示す校正システムでは校正を行うEC35が動作するための電力が必要であったり、ノートPC10の起動に必要なシステム・デバイスに電力を供給する必要があったりしてそのような条件を成立させることはできない。
本実施の形態では、電池ブロック101に対する充電を停止し、EC35に電力を供給しながらAC側電力値が最小になるようにノートPC10のシステム・デバイスを校正モードに移行させて、そのときにAC側電力計測回路が計測したAC側電力値とDC側電力値との偏差でオフセット誤差を補正する。校正モードにおけるシステム・デバイスの状態は、ノートPC10をサスペンド状態(S3ステート)またはAC/DCアダプタ45が接続されたパワー・オフ状態(S5(AC)ステート)として実現することができる。ゲイン誤差を補正するには、EC35に電力を供給しながらノートPC10を、システム・デバイスの消費電力ができるだけ小さくて変動の少ない校正モードに移行させて電池ブロック101を充電する間に充電電力が変化しないとみなせる範囲のほぼ同一時刻におけるAC側電力値とDC側電力値を対比させて格納した校正テーブルに基づいて行うことができる。このような校正モードにおけるシステム・デバイスの状態は、オフセット誤差の補正の場合と同じようにサスペンド状態(S3ステート)またはAC/DCアダプタ45が接続されたパワー・オフ状態(S5(AC)ステート)として実現してもよいが、ノートPC10をパワー・オン状態(S0ステート)に維持したまま主要なシステム・デバイスをアイドル状態、スタンバイ状態、または停止状態にすることでも実現できる。
図5は、システム・デバイスが校正モードに移行している間に電池ブロック101を充電するときに、経過時間に対して電力が変化する様子を示す図である。図5(A)は、AC側電力計測回路が出力する電力を示し、図5(B)は、DC側電力計測回路が出力する電力を示している。図5(A)には、図5(B)のライン255で示された電池ブロック101の充電に費やすDC側電力と、ライン253で示されたシステム・デバイスの消費電力L(W)が合成された電力がライン251として示されている。システム・デバイスは、校正モードで動作しており消費電力は小さく、かつ変動しない一定の値になっている。図5(A)において、システム・デバイスは校正モードに移行してライン253に示すようにL(W)の電力を消費している。校正モードに入ったEC35では、動作モード切換部205がデータ取得部213を通じてMPU111から受け取った電流設定値および電圧設定値を、データ出力部207を通じて基準電圧源175に設定する。
充電器41は時刻t0で充電を開始すると、電池ブロック101の端子電圧が低い間は定電流動作をし、充電が進行して時刻txで電池ブロック101の端子電圧が所定値に達すると定電圧動作に移行する。そして、AC/DCアダプタ45が供給する電力(AC側電力)はライン251に示すように、電池ブロック101に対する充電電圧または充電電流の変化に応じて変化する。このときt1、t2といった時刻で電流計測回路179の演算増幅器161は、AC側電力ライン160の電流を計測してEC35に送る。AC/DCアダプタ45の出力電圧は、ほぼ一定のDC20Vといった値に制御されているため、EC35はAC/DCアダプタ45の出力電圧と電流計測回路179から受け取った電流から、AC/DCアダプタ45がノートPC10に供給するAC側電力を計算することができる。
電池パック37の内部では、DC側電力計測回路が充電電力の計測を行い、EC35のデータ取得部213は、図5(A)の時刻とほぼ同一のタイミングで充電電力値を取得する。この充電電力値には、システム・デバイスの消費電力Lは含まれていない。図5(A)、図5(B)に示すように、校正テーブル生成部209は、ほぼ同一時刻に電力計算部203からAC側電力値を受け取り、データ取得部213からDC側電力値を受け取ることができる。
電池ブロック101の充電が完了するまでには、校正テーブル生成部209は複数の時刻において、異なる充電電力に対するAC側電力値とDC側電力値の組を得ることができる。このときの様子を図6(A)に示す。図6(A)では、x0〜x6までの7個のDC側電力値と、これに対応するy0〜y6までの7個のAC側電力値の7個のデータの組が示されている。x0とy0は、充電が開始される前に取得されたデータの組である。校正テーブル生成部209は、それぞれほぼ同一時刻において収集された複数のAC側電力値とDC側電力値の組を格納した校正テーブル211を作成する。データ出力部207は、校正テーブル211を参照することで、AC側電力の読み取り値を補正しAC側電力計測回路を校正することができる。
このとき、校正モードでのシステム・デバイスの消費電力がS5(AC)ステートまたはS3ステートのように無視できる場合(L=0)と、S0ステートのように無視できない場合(L≠0)で校正テーブル生成部209は異なる方法で校正テーブルを作成する。校正モードにおいてL=0の状態の場合は、AC側電力計測回路の読み取り値に対する校正値を基準値であるDC側電力値とすることができる。そして充電を開始する前のDC側電力値x0とAC側電力値y0との差はオフセット誤差に相当する。また、充電を開始した以降のDC側電力値であるx1〜x6とこれに対応するAC側電力値y1〜y6との差はゲイン誤差とみなすことができる。通常モードにおいては、データ出力部207は、電力計算部203からy0〜y6のAC側電力値を受け取ったときに、校正テーブル211を参照して校正されたAC側電力値としてx0〜x6の校正値をCPU11に送る。
校正モードにおいてL≠0の状態の場合は、AC側電力値にはシステム・デバイスの消費電力Lが含まれているため、AC側電力値y0〜y6に対してDC側電力値x0〜x6を校正値として直接データ出力部207に送ることはできない。ここでは、システム・デバイスの消費電力Lが一定である場合には、充電を停止している間にFET162を操作してAC側電力計測回路とDC側電力計測回路を交互に切り換えて同一の消費電力Lを計測してデータの組(x0,y0)を取得し、これを校正テーブル211に格納する。そして、それ以後充電を開始して充電電力が増大したときのAC側電力値に対して、y0にDC側電力値の増加分(xn−x0)を加えることで補正する。たとえば、AC側電力値がynのときにDC側電力値がxnである場合は、yn=y0+xn−x0の式で校正値を計算してゲイン誤差を解消することができる。
校正値に対応付けられたAC側電力値の数は有限であるが、校正テーブルに格納された校正値の間は一次補完式で任意の校正値を得ることができる。データ出力部207は、そのような一次補完式を含んでいる。図6(C)は、一次補完式を説明するための図である。図の横軸はAC側電力で縦軸はAC側電力およびDC側電力を示す。ライン261は、AC側電力計測回路の読み取り値で形成され、ライン263はDC側電力計測回路の読み取り値で形成されている。図6(C)より、AC側電力値ynとyn+1の間を補完して、AC側電力の読み取り値yを計算する一次補完式fは式(1)で計算することができる。
Figure 0005061146
図7は、電力計測回路校正システムを実現するソフトウエアの構成を示すブロック図である。図7において、電源管理プログラム291はS0ステートにおいて動作し、ユーザに入力画面を提供して、ユーザの指示によりノートPC10を校正モードと通常モードとの間で遷移させたり、下位のプログラムから受け取ったAC側電力値を定期的にLCD19に表示させたり、LANコントローラ27を通じて外部のコンピュータに転送したりするためのOS293上で動作するアプリケーション・プログラムである。なお本実施の形態では、S3ステートまたはS5(AC)ステートに入るときは、毎回オフセット補正を行って校正テーブルを更新し、さらに電池ブロックの残容量に基づいて校正モードに移行するか否かを決定するようにEC35のファームウエアが構成されている。なお、この手順については図8のフローチャートに基づいて説明する。
電源管理プログラム291は、キーボード/マウス47を通じてユーザから校正モードへの移行の指示があると、ビデオ・コントローラ17およびLANコントローラ27のドライバに指示を出してLCD19の輝度の変化を停止させLANコントローラ27の動作を停止させる。電源管理プログラム291はさらに、電源ドライバ295を通じて下位のプログラムおよびEC35に校正モードへの移行の指示をする。電源ドライバ295は、電源管理プログラム291とACPI BIOS297との情報転送を中継する。EC35は、AC側電力計測回路が計測したAC側電力値を校正テーブル211で校正してデータ出力部207に確保しその値を所定の周期で更新する。
ACPI BIOS297は、EC35が保有しているAC側電力値を定期的にポーリングして、電源ドライバ295を経由して電源管理プログラム291に転送する。電源管理プログラム291は、電源ドライバ295から受け取ったAC側電力値を、定期的にLCD19に表示する。ACPI BIOS297はまた、ノートPC10がS0ステートにおいて校正モードに移行するときにCPU11に対してすべてのプロセスの実行を待機させてクロックが停止したアイドル状態に移行させる。
アイドル状態にあるCPU11は、ノートPC10が通常モードに戻ったときに短時間で実行状態に遷移することができる。ACPI BIOS297はさらに校正モードに移行する際に、HDD23の磁気ヘッドをディスク上からディスク周辺に退避させ、ディスクの回転を停止して電気回路だけが動作するいわゆるスタンバイ状態に移行させる。スタンバイ状態におけるHDD23は、ノートPC10が通常モードに戻ったときにCPU11が実行するプログラムからリード/ライト・コマンドを受け取ると、ディスクを始動してコマンドの処理を行うことができる。ACPI BIOS297はさらに校正モードに移行する際にODD25の動作を停止させる。
電源管理プログラム291から校正モードへの移行の指示を受け取ったEC35は、放熱ファン49およびキーボード/マウス47の動作を停止させる。ノートPC10は、パワー・オン状態における校正モードにおいて主要なシステム・デバイスが停止したりアイドル状態に移行したりするので、筐体内部の温度上昇は小さくなっており、放熱ファン49の動作を停止しても温度上昇の問題は生じない。
[校正の手順]
図8は、本実施の形態にかかる校正の手順を示すフローチャートである。図8の手順は、サスペンド状態(S3ステート)または、AC/DCアダプタ45が接続されたパワー・オフ状態(S5(AC)ステート)で行われる。ここではS3ステートに移行するときの例を説明するが、S5(AC)ステートに移行するときも同様の手順で行うことができる。ブロック301ではノートPC10がパワー・オン状態で動作している。ブロック303では、ノートPC10においてサスペンド・イベントが発行される。サスペンド・イベントは、キーボード/マウス47からの入力、筐体に取り付けられたリッド・センサの動作、または電池ブロック101の残容量の低下などによりOS293に対して発行され、OS293の指示でEC35は所定のデバイスの電源を停止する。
ブロック305では、EC35が校正モードに移行し、動作モード切換部205がMPU111から電池ブロック101の残容量を取得し校正を行うか否かを判断する。電池ブロック101が満充電に近いような状態では充電器41が定電圧動作をするため図5に示したように充電電力が小さく、AC側電力計測回路の計測スパン全体に渡っての校正をすることができない。よって残容量が多い場合は校正を行わないでブロック307に移行し、EC35は基準電圧源175を設定して一旦充電を停止する。そして、校正テーブル生成部209がオフセット補正のための校正値(x0,y0)を取得して校正テーブル211に格納する。このときAC側電力ライン160を通過する電力は、サスペンド状態で動作するシステム・デバイスの消費電力だけであるため、AC側電力計測回路の計測スパンからみたときにはほぼゼロとみなすことができる。したがって、この状態で取得した図6(B)のAC側電力値y0に対応する校正値として、DC側電力値x0を校正テーブルに格納することでオフセット補正を完了する。オフセット補正をより正確に行うためには、パワー・オフ状態のほうが望ましい。あるいは、EC35がFET162を操作して、AC側電力値y0とDC側電力値x0を交互に取得して校正テーブル211に格納してもよい。その後、ブロック308で通常のサスペンド状態に移行する。通常のサスペンド状態では、MPU111は電池ブロック101の残容量が低下したときにEC35に充電要求をだすことができる。
電池ブロック101の残容量が少ないために、ブロック305で動作モード切換部205が校正を行うと判断したときはブロック309に移行する。ブロック309では、その時点で充電が継続している場合には一旦充電を停止してブロック307と同様にオフセット補正をする。ブロック307とブロック309から明らかなように、オフセット補正は、ノートPC10がサスペンド状態に移行するたびに行われる。ブロック311では、動作モード切換部205がMPU111から受け取った電流設定値および電圧設定値を、データ出力部207を経由して基準電圧源175に送る。そして充電器41は、基準電圧源175により設定されたパラメータに基づいて電池ブロック101に対する充電動作を開始する。
ブロック313では、電力計算部203およびデータ取得部213は充電電力が同一とみなせるほぼ同一の時刻で動作モード切換部205にそれぞれAC側電力値およびDC側電力値を送る。ブロック315では、校正テーブル生成部209が図6(B)に示した校正テーブル211の更新を行う。ブロック317で動作モード切換部205は、計測スパンの全範囲に渡って所定の数のAC側電力値に対する校正値が得られたときには、ブロック319に移行して校正動作を停止する。そしてつぎにノートPC10がパワー・オン状態になったときには、データ出力部207は、校正テーブル211と式(1)に基づいて校正されたAC側電力値をCPU11が実行する電源管理プログラム291に送る。
[校正の他の手順]
図8に示した手順では、日常的にAC/DCアダプタ45を接続してオフィスで使用するユーザにおいては、ブロック305の条件が成立しないためにオフセット補正のための校正値以外では長期間校正テーブル211の更新が行われないことも予想される。図9は、システム・オン状態においてユーザが強制的にノートPC10に校正を開始させる手順を示すフローチャートである。ブロック401においてノートPC10がパワー・オン状態にあるときに、ブロック403でユーザは電源管理プログラム291が提供する画面に対してキーボード/マウス47から校正開始の指示をする。
ブロック405でEC35は電源管理プログラム291の指示に基づいて充電器41の動作を停止し、さらにAC側電力ライン160に挿入されたFET162をオフにして、AC/DCアダプタ45からの電力供給を停止する。FET162がオフになるとダイオード173とダイオード171のアノード側の電位差により、DC/DCコンバータ43に対する電力供給源が電池パック37に切り替わる。ノートPC10は、電力供給源が切りかわってもパワー・オン状態を維持して通常の動作を継続するので、電池ブロック101の残容量は短時間で低減する。
電源管理プログラム291は、電池ブロック101の残容量が校正に適した所定値まで低下したことの通知をEC35から受け取ると、ブロック407に移行してOS293以下のプログラムおよびEC35に対して校正開始の指示をする。ブロック407では、電源管理プログラム291、ACPI BIOS297、およびEC35が所定のシステム・デバイスをアイドル状態、スタンバイ状態または停止状態にして校正モードに移行させる。電源管理プログラム291は、ブロック409で予定されたシステム・デバイスが校正モードに移行したと判断すると、ブロック410では、充電を開始する前のAC側電力値およびDC側電力値からなるデータの組(x0,y0)を、FET162を操作して取得してオフセット補正をするようにEC35に指示する。つづいて、電源管理プログラム291はEC35に指示してブロック411でFET162をオンにして充電器41に充電を開始させる。
ブロック413〜ブロック417は、図8の313〜317とほぼ同様である。ただし、校正テーブル211に対してはシステム・デバイスの消費電力がゼロとみなせない場合(L≠0)の校正値を記録する。更新テーブル211には、図8の手順で更新された校正値と図9の手順で更新された校正値が格納されるが、いずれか後に作成された値で先に作成された値を上書きするようにしてもよい。ブロック419では、EC205の動作モード切換部205がデータ出力部207を通じて電源管理プログラム291に校正テーブルの更新が終了したことを通知すると、電源管理プログラム291はOS293以下のプログラムおよびEC35に指示して、システム・デバイスを通常モードに移行させる。
その後はブロック421で、データ出力部207は校正テーブル211と一次補完式を用いて電力計算部203から受け取ったAC側電力値を校正してCPU11に出力する。CPU11は、電力管理プログラム291を実行して受け取ったAC側電力値をLCD19に表示したり、LANコントローラ27を通じて構内の電力を管理するコンピュータに送ったりすることができる。図8の手順では、ブロック305で電池ブロック101の残容量が多い場合は、長期間ゲイン誤差に対する校正を行うためのデータで校正テーブル211が更新されないことになる。そこで、図9のブロック405の校正開始操作をサスペンド・イベントに加えて、図9のブロック405の手順に続いて図8のブロック303の手順に移行するようにすれば、図8の手順でも必ずブロック309に移行してサスペンド状態で校正テーブルの更新をすることができる。本発明にかかる校正システムでは、精度の低い簡易なAC側電力計測回路であってもノートPC10の動作の過程でダイナミックに校正され、かつ、通常モードで動作するときには電池ブロック101を消耗することがない。
これまで本発明について図面に示した特定の実施の形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の効果を奏する限り、これまで知られたいかなる構成であっても採用することができることはいうまでもないことである。
35…エンベデッド・コントローラ
41…充電器
103、179…電流計測回路
105…電圧計測回路
160…AC側電力ライン
170…DC側電力ライン
175…基準電圧源
211…更新テーブル

Claims (10)

  1. 交流電源が供給する電力で電池を充電しながらシステム・デバイスに電力を供給することが可能な携帯式コンピュータであって、
    前記電池を充電する充電器と、
    前記交流電源から前記携帯式コンピュータに供給されるAC側電力を計測するAC側電力計測回路と、
    前記電池を充電する電力を計測するDC側電力計測回路が計測したDC側電力値と前記AC側電力計測回路が計測したAC側電力値を受け取るコントローラとを有し、
    前記コントローラは、前記携帯式コンピュータが前記システム・デバイスの消費電力の変動が少ない校正モードの動作状態に移行したときにAC側電力値とDC側電力値の組で構成されるデータを収集し、通常モードの動作状態で前記AC側電力計測回路から受け取ったAC側電力値を前記収集したデータに基づいて補正して出力する携帯式コンピュータ。
  2. 前記コントローラは、複数の前記AC側電力値とDC側電力値の組を、通常モードの動作状態で前記AC側電力計測回路から受け取ったAC側電力値を校正して出力するときに参照可能な校正テーブルに格納する請求項1に記載の携帯式コンピュータ。
  3. 前記校正モードの動作状態がパワー・オフ状態またはサスペンド状態である請求項1または請求項2に記載の携帯式コンピュータ。
  4. 前記校正モードの動作状態が、パワー・オン状態において前記携帯式コンピュータに搭載されるシステム・デバイスがアイドル状態またはスタンバイ状態に移行している状態である請求項1または請求項2に記載の携帯式コンピュータ。
  5. 前記電池が、前記DC側電力計測回路を備えた電池パックに収納されている請求項1から請求項4のいずれかに記載の携帯式コンピュータ。
  6. 前記AC側電力計測回路が、被計測電流が流れるセンス抵抗と、該センス抵抗の両端に接続された分圧抵抗と、該分圧抵抗に接続され前記センス抵抗が検出した電圧を増幅する演算増幅器と、該演算増幅器の出力をディジタル値に変換して電力値を計算するディジタル演算回路で構成されている請求項1から請求項5のいずれかに記載の携帯式コンピュータ。
  7. 電池を搭載し該電池または交流電源の電力で駆動することが可能な携帯式コンピュータにおいて、前記交流電源から前記携帯式コンピュータに供給される電力を計測するAC側電力計測回路を前記携帯式コンピュータが校正する方法であって、
    前記交流電源からシステム・デバイスに電力を供給して前記携帯式コンピュータをパワー・オン状態で動作させるステップと、
    前記携帯式コンピュータをサスペンド状態またはパワー・オフ状態に移行させて前記システム・デバイスに電力を供給するステップと、
    前記電池に対する充電を停止するステップと、
    前記交流電源から前記携帯式コンピュータに供給される電力を計測するAC側電力計測回路がAC側電力値を生成するステップと、
    前記電池を充電する電力を計測するDC側電力計測回路がDC側電力値を生成するステップと、
    パワー・オン状態において前記AC側電力計測回路が計測したAC側電力値を前記DC側電力値に基づいて補正するステップと
    を有する校正方法。
  8. 前記交流電源から供給される電力で前記電池の充電をするステップと、
    充電中に前記AC側電力計測回路がAC側電力値を生成するステップと、
    前記AC側電力値が生成されたのとほぼ同一時刻に前記DC側電力計測回路がDC側電力値を生成するステップと、
    複数のほぼ同一時刻に生成されたAC側電力値とDC側電力値の組を校正テーブルに格納するステップと
    を有する請求項7に記載の校正方法。
  9. 前記充電を停止するステップに続いて、前記電池から前記システム・デバイスに電力を供給して所定の残容量まで放電させるステップを含む請求項7または請求項8に記載の校正方法。
  10. 電池を搭載し該電池または交流電源の電力で駆動することが可能な携帯式コンピュータにおいて、前記交流電源から前記携帯式コンピュータに供給される電力を計測するAC側電力計測回路を校正する方法であって、
    前記交流電源からシステム・デバイスに電力を供給して前記携帯式コンピュータをパワー・オン状態で動作させるステップと、
    前記電池に対する充電を停止するステップと、
    前記電池から前記システム・デバイスに電力を供給し、前記電池を所定の残容量まで放電させるステップと、
    前記システム・デバイスをアイドル状態またはスタンバイ状態に移行させるステップと、
    前記電池に対する充電を開始するステップと、
    前記交流電源から前記携帯式コンピュータに供給される電力を計測するAC側電力計測回路がAC側電力値を生成するステップと、
    前記AC側電力値が生成されたのとほぼ同一時刻に前記電池を充電する電力を計測するDC側電力計測回路がDC側電力値を生成するステップと、
    パワー・オン状態において前記AC側電力計測回路が計測したAC側電力値を前記DC側電力値に基づいて補正するステップと
    を有する校正方法。
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