第1の発明の空気調和機は、室内空気を浄化する空気清浄機能を有する室内機を備えた空気調和機であって、前記室内機が、室内空気を吸い込む吸込口と、吸い込んだ空気と熱交換する熱交換器と、該熱交換器で熱交換された空気を搬送する室内ファンと、該室内ファンから送風された空気を吹き出す吹出口とを備え、放電電極と、前記放電電極に対向して配設された対向電極と、高電圧電源と、空気中の水分を凝縮するペルチェ素子とを有し、前記放電電極に前記ペルチェ素子により水を供給して前記放電電極と前記対向電極との間に前記高電圧電源により高電圧を印加することによって静電ミストを発生させる静電霧化装置をさらに備え、前記対向電極の形状を、放電電極側の内側面をドーム状のリング形状として構成したものである。
これにより、対向電極の放電面積が大きくなって、より多くの静電ミストを確実に発生させることができるとともに、それに伴う放電音の増大を抑制して静音性を向上した空気調和機を提供することができる。
第2の発明の空気調和機は、第1の発明において、放電電極の先端部を球体形状又は先鋭形状として構成したものである。これにより、球体の表面で結露により生成された水分が静電気力により先端に凝集しやすいとともに、表面張力による保持が容易である。また、先鋭形状でも静電気力により先端に凝集しやすいとともに、表面張力による保持が容易である。
第3の発明の空気調和機は、第1又は2の発明において、対向電極の放電電極側の内側面は、放電電極の先端を球面中心とした球面の一部として構成したものである。これにより、対向電極の内側面は放電電極の先端からほぼ等距離になるように配設されて放電面積を大きく設定することができる。
第4の発明の空気調和機は、第1又は2の発明において、対向電極の放電電極側の内側面は、放電電極の先端より放電電極に沿って対向電極から離れた位置を球面中心とした球面の一部として構成したものである。これにより、放電電極の先端と対向電極との距離をリング内周部を最短としてリング外周部側を大きくすることになり、リング内周部側の静電気力がリング外周部側より相対的に大きくなって、放電電極の先端に円錐形状に凝集した先端水の先端の動きが絞り込まれて全体の動きも抑制されて放電音を抑制することができる。
第5の発明の空気調和機は、第1〜4の発明において、対向電極のリング内周部とリング外周部との幅は、球面中心を原点として放電電極の中心軸に対して垂直方向を0°とし、対向電極のリング外周部までをθ1、リング内周部までをθ2として角度で表した場合、θ1=0°からθ2=80°の範囲で構成したものである。これにより、放電電極側から対向電極の中央の穴を通過して流れる気流がスムーズに流れる流路を確保して、放電電極で発生した静電ミストがスムーズに流出することができる。
第6の発明の空気調和機は、第5の発明において、θ2を50°以上に構成したものである。これにより、放電電極の先端に円錐形状に凝集した先端水の先端の振れ動く状態が大きくなりすぎない。
第7の発明の空気調和機は、第1〜6の発明において、対向電極のリング内周部に立設部を放電電極と反対方向に向けて設けた形成したものである。 これにより、立設部先端に汚れ粒子が堆積したとしても、放電距離が変わることがない。さらに、端面である立設部先端の向きが気流と同じ方向となるため気流の乱れも少なくなり、堆積すること自体も少なく、時間がかかるようになり、より多くの静電ミストを長期間にわたって確実に発生させることができる。
第8の発明の空気調和機は、第7の発明において、立設部の高さは、対向電極の穴径と同等以下に形成したものである。これにより、汚れ粒子が堆積しても放電距離が短くならないという効果が確認できる。さらに、立設部の高さHを大きくするほど汚れ粒子の堆積が放電距離を短くして悪影響を来すまでの期間が長くなるが、かえって気流の流路が長くなって抵抗が増えたり、堆積物が多くなって垂れ下がったり、流路を塞ぐほどまでになったりすることがない。
第9の発明の空気調和機は、第7又は8の発明において、立設部の根元の内側をラウンド形状に形成したものである。これにより、対向電極の内側面から立設部にかけてなめらかに形成することで、気流の乱れを抑制して静電ミストの消滅を防止することができる。
第10の発明の空気調和機は、第7〜9の発明において、立設部先端を外側に曲げて形成したものである。これにより、立設部先端の端面を静電ミストと汚れ粒子の気流から完全に遠ざけることとなり、汚れ粒子の堆積を防止することができる。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<静電霧化装置を搭載した空気調和機の構成>
空気調和機は、通常冷媒配管で互いに接続された室外機と室内機とで構成されており、図1及び図2は、本発明にかかる空気調和機の室内機を示している。
図1及び図2に示されるように、室内機は、本体2に室内空気を吸い込む吸込口として前面吸込口2a及び上面吸込口2bを有し、前面吸込口2aには開閉自在の可動前面パネル(以下、単に前面パネルという)4を有しており、空気調和機停止時は、前面パネル4は本体2に密着して前面吸込口2aを閉じているのに対し、空気調和機運転時は、前面パネル4は本体2から離反する方向に移動して前面吸込口2aを開放する。
本体2の内部には、前面吸込口2a及び上面吸込口2bの下流側に設けられ空気中に含まれる塵埃を除去するためのプレフィルタ5と、このプレフィルタ5の下流側に設けられ前面吸込口2a及び上面吸込口2bから吸い込まれた室内空気と熱交換するための熱交換器6と、熱交換器6で熱交換した空気を搬送するための室内ファン8と、室内ファン8から送風された空気を室内に吹き出す吹出口10を開閉するとともに空気の吹き出し方向を上下に変更する上下羽根12と、空気の吹き出し方向を左右に変更する左右羽根14とを備えている。また、前面パネル4の上部は、その両端部に設けられた複数のアーム(図示せず)を介して本体2の上部に連結されており、複数のアームの一つに連結された駆動モータ(図示せず)を駆動制御することで、空気調和機運転時、前面パネル4は空気調和機停止時の位置(前面吸込口2aの閉塞位置)から前方に向かって移動する。上下羽根12も同様に、その両端部に設けられた複数のアーム(図示せず)を介して本体2の下部に連結されている。
また、室内機の一方の端部(室内機正面から見て左側端部で、後述する隔壁46cのバイパス流路22側)には、室内空気を換気するための換気ファンユニット16が設けられており、換気ファンユニット16の後方には、静電ミストを発生させて室内空気を浄化する空気清浄機能を有する静電霧化装置18が設けられている。
なお、図1は前面パネル4及び本体2を覆う本体カバー(図示せず)を取り除いた状態を示しており、図2は室内機本体2と静電霧化装置18との接続位置を明確にするために本体2の内部に収容されている静電霧化装置18を本体2とは分離した状態を示している。静電霧化装置18は実際には図3に示される形状を呈し、図1あるいは図4に示されるように、本体2の左側部に取り付けられている。
図2乃至図4に示されるように、静電霧化装置18は、前面吸込口2a及び上面吸込口2bから熱交換器6、室内ファン8等を経由して吹出口10に連通する主流路20において、熱交換器6と室内ファン8とをバイパスするバイパス流路22の途中に設けられており、バイパス流路22の上流側に高電圧電源となる高電圧トランス24とバイパス送風ファン26が設けられ、バイパス流路22の下流側に静電霧化ユニット30の放熱を促進する放熱部28を有する静電霧化ユニット30とサイレンサ32が設けられている。したがって、上流側から順に高電圧トランス24、バイパス送風ファン26、放熱部28、静電霧化ユニット30、及びサイレンサ32が配置された状態で、バイパス流路22の一部を構成するケーシング34に収容されている。このようにケーシング34に収容することにより、組み立て性が向上し、ケーシング34で流路を形成するので、省スペース化を図るとともに、バイパス送風ファン26による空気の流れを、発熱部である高電圧トランス24や放熱部28に確実に当てて冷却することができるとともに、静電霧化ユニット30から発生した静電ミストを確実に空気調和機の吹出口10に導入することができ、発生した静電ミストを被空調室内に放出させることができる。
また、ケーシング34は、ケーシング34の内部を流れる空気流の方向が、主流路20を流れる空気流の方向に対して、室内機本体2の正面から見て平行にとなるように縦方向に配置されており、これにより室内機本体2の正面から見て換気ファンユニット16と重なる位置に隣接配置することができ、さらに省スペース化を達成している。
なお、高電圧トランス24は必ずしもケーシング34内に収容する必要はないが、バイパス流路の通風により冷却されるため、温度上昇の抑制あるいは省スペース化の点で、ケーシング34内に収容するのが好ましい。
ここで、従来公知の静電霧化ユニット30について図5及び図6を参照しながら説明する。
図5に示されるように、静電霧化ユニット30は、放熱面36aと冷却面36bとを有する複数のペルチェ素子36と、放熱面36aに熱的に密着して接続された上述した放熱部(例えば、放熱フィン)28と、冷却面36bに電気絶縁材(図示せず)を介して熱的に密着して立設された放電電極38と、この放電電極38に対し所定距離だけ離隔して配置された対向電極40とで構成されている。
また、図6に示されるように、換気ファンユニット16の近傍に配置された制御部42(図1参照)に、ペルチェ駆動電源44と高電圧トランス24は電気的に接続されており、ペルチェ素子36及び放電電極38はペルチェ駆動電源44及び高電圧トランス24にそれぞれ電気的に接続されている。
なお、静電霧化ユニット30として放電電極38から高電圧放電させて静電ミストを発生させるためには、対向電極40を設けなくても可能である。例えば、放電電極38に高電圧電源の一方の端子を接続し、他方の端子をフレーム接続するようにしておけば、フレーム接続された構造体の放電電極38に近接した部分と放電電極38との間で放電することとなる。そのような構成の場合には、そのフレーム接続された構造体を対向電極40と見なすことができる。
上記構成の静電霧化ユニット30において、制御部42によりペルチェ駆動電源44を制御してペルチェ素子36に電流を流すと、冷却面36bから放熱面36aに向かって熱が移動し、放電電極38の温度が低下することで放電電極38に結露する。さらに、制御部42により高電圧トランス24を制御して、結露水が付着した放電電極38に高電圧を印可すると、結露水に放電現象が発生して粒子径がナノメートルサイズの静電ミストが発生する。なお、本実施の形態においては、高電圧トランス24としてマイナス高電圧電源を用いているので、静電ミストは負に帯電している。
また、本実施の形態においては、図7に示されるように、主流路20は、本体2を構成する台枠46の後部壁46aと、この後部壁46aの両端部より前方に延びる両側壁(図7では左側壁のみ示す)46bと、台枠46の下方に形成されたリヤガイダ(送風ガイド)48の後部壁48aと、この後部壁48aの両端部より前方に延びる両側壁(図7では左側壁のみ示す)48bとで形成されており、台枠46の一方の側壁(左側壁)46bとリヤガイダ48の一方の側壁(左側壁)48bとでバイパス流路22を主流路20から分離する隔壁46cを構成している。さらに、台枠46の一方の側壁46bにバイパス流路22のバイパス吸入口22aが形成される一方、リヤガイダ48の一方の側壁48bにバイパス流路22のバイパス吹出口22bが形成されている。
空気調和機の場合、冷房時においては、室内機の熱交換器6を通過した低温の空気は相対湿度が高く、静電霧化装置18において、水分を補給するためにペルチェ素子36を備えた場合に、ペルチェ素子36のピン状の放電電極38のみならずペルチェ素子36全体に結露が発生しやすくなる。一方、暖房時においては、熱交換器6を通過した高温の空気は相対湿度が低いため、ペルチェ素子36の放電電極38に結露しない可能性が極めて高い。
そこで上記構成のように、主流路20とバイパス流路22を隔壁46cで分離し、静電ミストを発生させる静電霧化装置18をバイパス流路22に設けたことにより、熱交換器6を通過せず温湿度調整がなされていない空気が静電霧化装置18に供給される。これにより、冷房時においては静電霧化ユニット30のペルチェ素子36全体に結露が発生することを有効に防止することで安全性が向上する。また、暖房時においては静電ミストを確実に発生させることができる。
バイパス流路22は、バイパス吸入管22cとケーシング34とバイパス吹出管22dから構成されており、台枠側壁46bに形成されたバイパス吸入口22aに一端が接続されたバイパス吸入管22cは左方(左側壁46bに略直交し、前面パネル4に略平行な方向)に延びて、その他端はケーシング34の一端に接続され、さらにケーシング34の他端に一端が接続されたバイパス吹出管22dは下方に延びて右方に折曲され、その他端はリヤガイダ48の一方の側壁48bのバイパス吹出口22bに接続されている。このようにバイパス流路22の一部をケーシング34で構成することで、省スペース化を達成することができるとともに、これらを一連に構成することでバイパス吹出管22dを介して静電霧化ユニット18から静電ミストを主流路20に向けて確実に誘引することができ、静電ミストを被空調室内に放出させることができる。
バイパス吸入口22aはプレフィルタ5と熱交換器6との間、すなわちプレフィルタ5の下流側で熱交換器6の上流側に位置しており、前面吸込口2a及び上面吸込口2bより吸い込まれた空気に含まれる塵埃はプレフィルタ5により有効に除去されるので、静電霧化装置18に塵埃が侵入することを抑制できる。これにより、静電霧化ユニット30に塵埃が堆積することを有効に防止でき、静電ミストを安定的に放出することができる。
このように本実施の形態においては、プレフィルタ5で静電霧化装置18と主流路20のプレフィルタを兼ねる構成となっているが、これによりメンテナンスはプレフィルタ5のみを清掃すればよく、それぞれ別に手入れをする必要がないので、手入れを簡略化することができる。さらには、後述するようなプレフィルタ自動清掃装置を備えた空気調和機においては、プレフィルタ5に特別の手入れは必要なく、メンテンナンスフリー化を実現することができる。
一方、バイパス吹出口22bは熱交換器6及び室内ファン8の下流側で吹出口10の近傍に位置しており、バイパス吹出口22bから吐出された静電ミストが主流路20の空気流に乗って拡散し部屋全体に充満するように構成されている。このようにバイパス吹出口22bを熱交換器6の下流側に配置したのは、熱交換器6の上流側に配置すると、熱交換器6は金属製のため、荷電粒子である静電ミストは熱交換器6にその大部分(約8〜9割以上)が吸収されるからである。また、バイパス吹出口22bを室内ファン8の下流側に配置したのは、室内ファン8の上流側に配置すると、室内ファン8の内部には乱流が存在し、室内ファン8の内部を通過する空気が室内ファン8の様々な部位に衝突する過程で静電ミストの一部(約5割程度)が吸収されるからである。
また、バイパス吹出口22bを設けたリヤガイダ48の一方の側壁48bの主流路20側は、室内ファン8により空気流に所定の速度が付与されることで、側壁48bの主流路20側とバイパス流路22側において圧力差が生じ、バイパス流路22に対し主流路20側が相対的に低圧となる負圧部となっており、バイパス流路22から主流路20に向かって空気が誘引される。したがって、バイパス送風ファン26は小容量のもので済み、場合によってはバイパス送風ファン26を設けなくてもよい。
さらに、バイパス吹出管22dは、主流路20との合流点(バイパス吹出口22b)において主流路20内の空気流に対し略直交する方向に指向するように隔壁46c(リヤガイダ48の側壁48b)に接続されている。これは、静電霧化ユニット30は、上述したように放電現象を利用して静電ミストを発生させていることから、必然的に放電音を伴い、放電音には指向性があるからである。したがって、バイパス流路22と主流路20の合流点(バイパス吹出口22b)において、バイパス流路22を前面パネル4に略平行に接続することで、室内機の前方あるいは斜め前方にいる人に対して、放電音が極力指向しないように構成して騒音を低減することができる。
また、図8に示されるように、バイパス吹出管22dを主流路20との合流点において隔壁46cに対し傾斜させ、主流路20内の空気流に対し上流側に指向するように接続すると、より一層放電音による騒音の低減に効果がある。
なお、バイパス吹出管22dの指向する方向が主流路20内の空気流の下流方向に指向して接続した場合においても、その延長線が吹出口10から外部に出ないようにしておけば、発生する放電音が吹出口10から直接外部に出る量が少なく、直接的に使用者の耳に入射することも少ないため、騒音低減効果を奏することができる。
以上説明したように、主流路20とバイパス流路22を隔壁46cで分離し、静電ミストを発生させる静電霧化装置18を熱交換器6をバイパスして主流路20に連通するバイパス流路22に設けたので、熱交換器6を通過せず温湿度調整がなされていない空気が静電霧化装置18に供給されるので、冷房時においては静電霧化ユニット30のペルチェ素子36全体に結露が発生することを有効に防止することで安全性が向上するとともに、暖房時においては静電ミストを確実に発生させることができ、空気調和機の運転モードに関わらず、すなわち、季節に関係なく静電ミストを安定的に発生させることができる。
次に、プレフィルタ5に付着した塵埃を吸引して除去する吸引装置を有するプレフィルタ自動清掃装置をさらに設けた空気調和機について説明する。図9を参照しながら換気ファンユニット16を説明すると、換気ファンユニット16は換気専用であっても、プレフィルタ自動清掃装置を有する室内機に設けられた吸引装置の給気用を兼ねるものであってもよい。図9に示される換気ファンユニット16は、隔壁46cのバイパス流路22側でプレフィルタ自動清掃装置の吸引装置58に組み込まれているが、プレフィルタ自動清掃装置は既に公知なので、図10を参照しながら簡単に説明する。プレフィルタ自動清掃装置の詳細な構造や運転方法については、特に限定されるものではない。
図10に示されるように、プレフィルタ自動清掃装置50は、プレフィルタ5の表面に沿って摺動自在の吸引ノズル52を備えており、吸引ノズル52はプレフィルタ5の上下端に設置された一対のガイドレール54により、プレフィルタ5と極めて狭い間隙を保って円滑に左右に移動することができ、プレフィルタ5に付着した塵埃は吸引ノズル52より吸引して除去される。また、吸引ノズル52には屈曲自在の吸引ダクト56の一端が連結され、吸引ダクト56の他端は吸引量可変の吸引装置58に連結されている。さらに、吸引装置58には排気ダクト60が連結され、室外へ導出されている。
また、吸引ノズル52の上下方向の周囲には吸引ノズル52に沿って摺動自在のベルト(図示せず)が巻回されており、吸引ノズル52のプレフィルタ5と対向する面には、プレフィルタ5の縦長さに略等しい長さのスリット状のノズル開口部が形成される一方、ベルトには、プレフィルタ5の縦長さの例えば1/4の長さのスリット状の吸引孔が形成されている。
上記構成のプレフィルタ自動清掃装置50は、必要に応じてプレフィルタ5の清掃範囲A,B,C,Dを順次清掃するが、範囲Aを吸引清掃する場合、ベルトを駆動してその吸引孔を範囲Aの位置に固定した状態で、吸引しながら吸引ノズル52をプレフィルタ5の右端から左端まで駆動することでプレフィルタ5の水平方向の範囲Aが吸引清掃される。
次に、ベルトを駆動してその吸引孔を範囲Bの位置に固定し、この状態で吸引しながら吸引ノズル52をプレフィルタ5の左端から右端まで駆動することで今度はプレフィルタ5の水平方向の範囲Bが吸引清掃される。同様に、プレフィルタ5の範囲C、Dも吸引清掃される。
プレフィルタ5に付着し、吸引ノズル52により吸引された塵埃は吸引ダクト56、吸引装置58、排気ダクト60を経由して室外へ排出される。
図9をさらに参照すると、吸引装置58の吸入路には開口部62が形成されるとともに、この開口部62を開閉するためのダンパ64が設けられており、換気ファンユニット16は、ダンパ64が開口部62を開いた時は換気用として、吸引清掃を行う場合はダンパ64により開口部62を閉じてベルトの吸引孔から塵埃を吸引する吸引用として使用される。すなわち、同じ吸引装置58を使用して吸引清掃機能と換気機能を実現させている。
なお、図9には排気ダクト60は図示されていないが、排気ダクト60は吸引装置58の排気口58aに接続されている。
図11はケーシング34を持たない静電霧化装置18Aを示しており、この静電霧化装置18Aは図12に示されるように室内機本体2に組み込まれる。あるいは、図12に示される破線領域18B(図9に示される静電霧化装置18においてバイパス流路22の下流側に設けられた静電霧化ユニット30とサイレンサ32と略同じ位置)に組み込まれる。これらは、静電霧化装置18Aを室内機の正面又は上面から見て換気ファンユニット16と重なる位置に配設するとともに、静電霧化装置18Aを換気ファンユニット16の開口部62及びダンパ64の近傍で、換気ファンユニット16による吸引空気が流れる部分に配置するものである。
さらに詳述すると、図11の静電霧化装置18Aは、放熱部28を有する静電霧化ユニット30とサイレンサ32が一体的に取り付けられ、放熱部28を除く静電霧化ユニット30部分とサイレンサ32はそれぞれのハウジング(ユニットハウジング66とサイレンサハウジング68)に収容され、サイレンサハウジング68にバイパス吹出管22dの一方が接続されて連通し、バイパス吹出管22dの他方が主流路20に接続されて連通している。この場合、隔壁46cにより主流路20から分離され、図示しない本体カバーの左側面との間に形成されて、換気ファンユニット16、静電霧化装置18A等が配設された収容部22eが前述したバイパス吸入管22cとケーシング34との代わりとなるとともに、バイパス吹出管22dまでも収容してバイパス流路22として構成することになる。
なお、バイパス吹出管22dは、主流路20の空気流に対して指向する向きで騒音低減が図れることは上述したとおりであるが、必ずしも必要というものではなく、サイレンサハウジング68を直接的にバイパス吹出口22bに接続してもよい。これにより、静電霧化装置18Aの構成をより簡素化することができる。ただし、騒音低減のために向きの配慮が必要なことはバイパス吹出管22dと同様である。
これにより、プレフィルタ5を介して本体2内に吸い込まれる空気は、プレフィルタ5の下流側のバイパス吸入口22aより収容部22eに吸い込まれ、その空気流の方向は、主流路20を流れる空気流の方向に対して、室内機本体2を正面から見て平行に収容部22e内を流れることになる。このように収容部22e内を流れた空気により放熱部28は冷却されるとともに、ユニットハウジング66に形成された開口部(図示せず)より静電霧化ユニット30に取り込まれる。
このように構成することで、室内機の正面又は上面から見て換気ファンユニット16と重なる換気ファンユニット16の周囲空間がバイパス流路22となり、換気ファンユニット16、静電霧化装置18A等の収容部22eを有効に活用して省スペース化を達成することができる。なお、この構成では、高電圧トランス24は換気ファンユニット16、静電霧化装置18A等の収容部22eにおける任意の部位に配置され、バイパス送風ファン26は設けられない。
また、このようにバイパス流路22を、主流路20を通過する空気流に対して、室内機本体2を正面から見て平行に空気流が流れるように構成することにより、上で詳述したように隔壁46cという簡略な構成で主流路20とバイパス流路22を分岐することができるため、容易にバイパス流路22が形成でき、部品点数を削減することができる。
さらに、本構成とすることで、静電霧化装置18Aのプレフィルタと主流路20のプレフィルタをプレフィルタ5で共有化することができる。共有化の効果については、先述の通りであるので、ここでは詳細は省略する。
なお、換気ファンユニット16の後部にあたる台枠46の下部近傍において、室内機と室外機とを接続する配管(図示せず)を引き出せるように開口46dを形成してもよい。上述したバイパス吸入口22aは、収容部22eに空気を吸い込むために隔壁46c(台枠側壁46b)に形成された収容部22eにおける1つの開口であり、室内機の外部とはプレフィルタ5を通して連通していたが、台枠46の下部に形成された開口46dにおいては、収容部22eが室内機の外部と直接連通して周囲の空気を吸い込む開口となる。このような場合には、収容部22eはプレフィルタ5をもバイパスするバイパス流路となる。したがって、静電霧化装置18Aに吸い込まれる空気は開口46dから流入したものとなってプレフィルタ5を通過しないことになるので、必要に応じて別途静電霧化装置18A用のプレフィルタを設ければよい。また、開口46dを形成した構成でも室内機の正面又は上面から見て換気ファンユニット16と重なる位置に静電霧化装置18Aが配設されていることは変わらず、収容部22eを有効に活用して省スペース化を達成することができるのは同様である。
上述したように、バイパス吹出口22bの主流路20側は、室内ファン8により空気流に所定の速度が付与されることで圧力差が発生して誘引される負圧部となっているので、バイパス送風ファン26は設けなくても、バイパス吹出管22dを介してバイパス流路である収容部22eから主流路20に向かって誘引される空気により放熱部28は冷却され、静電霧化ユニット30により発生した静電ミストが主流路20に誘引され、被空調室内に放出させることができる。また、放熱部28は、破線領域18Bのように開口部62及びダンパ64の近傍で、開口部62に吸い込まれる空気が流れる部分に配置したことから換気ファンユニット16による吸引空気によっても冷却される。
なお、図12に示されるように、静電霧化装置18Aの放熱部28を吸引装置58に設けられた開口部62に近接して配置することで、開口部62に吸い込まれる空気により放熱部28がより冷却され、静電霧化ユニット30からの放熱が促進される。また、換気ファンユニット16として換気専用のファンを使用した場合、ダンパ64は設けられることがないので、換気ファンユニット16の吸込口に放熱部28を近接配置することで、放熱部28は効率よく冷却される。
以上説明したように、上記構成によれば、主流路20とバイパス流路となる収容部22eとを隔壁46cで分離し、静電ミストを発生させる静電霧化装置18Aを収容部22eに設けたので、熱交換器6を通過せず温湿度調整がなされていない空気が静電霧化装置18Aに供給されるので、冷房時においては静電霧化ユニット30のペルチェ素子36全体に結露が発生することを有効に防止することで安全性が向上するとともに、暖房時においては静電ミストを確実に発生させることができ、空気調和機の運転モードに関わらず、すなわち、季節に関係なく静電ミストを安定的に発生させることができる。
<静電霧化装置に起因する騒音を低減するための構成>
空気調和機において、騒音の低減は大きな課題である。放電音が大きい静電霧化装置の搭載については課題が大きく、放電音の低減が必須である。従来公知の静電霧化ユニット30の概略については図5及び図6を参照してすでに説明したが、本発明の空気調和機における放電音低減の構成について、放電現象を交えて詳細に説明する。
図13は、本実施の形態の空気調和機の静電霧化ユニットの断面図である。図13において、静電霧化ユニット70の基本的な構成は従来と変わらず、放熱面36aと冷却面36bとを有する複数のペルチェ素子36と、放熱面36aに熱的に密着して接続された放熱部(例えば、放熱フィン)28と、冷却面36bに電気絶縁材71を介して熱的に密着して立設された放電電極72と、この放電電極72に対し所定距離だけ離隔して配置された対向電極73とで構成されている。放電電極72と対向電極73との間には、高電圧が印加できるように高圧電源として高圧トランス24が接続されている。
放電電極72は細い棒形状で、その放電電極先端部72aは直径が1mm以下の小さな球体形状をしている。この球体形状においては、球体の表面で結露により生成された水分が静電気力により先端に凝集しやすいとともに、表面張力による保持が容易である。なお、放電電極先端部72aは球体形状に限るものではなく、先鋭形状などでもかまわないが、静電霧化するための水を適度に保持できるような形状であまり尖りすぎない形状が静電気力により先端に凝集しやすいとともに、表面張力による保持が容易であり望ましい。
対向電極73は中央に円形の穴を有する平板のリング形状をなして、リング内周部73aが放電電極72の中心軸に対して垂直に取り囲んで放電電極先端部72aからほぼ等距離になるように配設されて放電面積を大きく設定している。なお、対向電極73はリング形状ではあるが、図示はしない端子接続部や支持部を外周側に有するのは構わない。
上記構成において、静電霧化を行うときの放電現象について説明する。放電電極72にはペルチェ素子36による冷却により空気中の水分が凝縮して結露する。このようにペルチェ素子36により放電電極72に水を供給された状態で、放電電極72と対向電極73との間に高圧トランス24によって数kVの高電圧を印加すると、放電電極72に付いた結露水が静電気力により放電電極先端部72aに引き寄せられるとともに、対向電極73の方向に向けて円錐形状の先端水74を形成する。つまり、対向電極73に近づくほど尖った円錐形状となり、この先鋭度合いは放電電流を一定にするように結露水量をペルチェ素子36の能力で制御するとするならば、対向電極73に開けられた円形の穴径R、放電距離、高圧印加電圧、及び結露水量がそれぞれ関連し合って決定される。ここでいう放電距離は、先端水74を含む放電電極72側と対向電極73との距離である。
この時の放電は、先端水74とリング内周部73a、すなわち先端水74と対向電極73との最短距離となる箇所で大部分が行われ、静電ミストは基本的には先端水74の先端付近から水が分裂して発生する。しかしながら、対向電極73がリング形状となっていることもあり、放電自体は先端水74の放電電極72に近い裾部分74a(図14参照)を含めてある程度広い範囲で行われていると考えられる。
ところが、実際には、先端水74の円錐形状は対向電極73方向に向けて安定しているのではなく、放電の衝撃や放電位置の移動、周囲の気流の影響、また、静電霧化による水分の減少に対して結露水を常時安定して供給できないことなどを理由として、特に上下方向に小刻みでかなり激しく伸縮するような挙動を示し、さらに前後左右のあらゆる方向に揺れ動く。そのような変形した先端水74の形状の一例を図14(a),(b),(c),(d)に示す。このように先端水74が動きながら霧化放電を行うために、前後左右に振れたときや上方に伸び上がったときに、先端水74の裾部分74aで一時的に水膜厚Wが小さい薄水部分Xが発生することがある。この薄水部分Xが発生するのは、放電電極先端部72aが先端水74を安定して保持するために、球体形状や先鋭形状として外側に傾斜していることも薄くなりやすい原因となっている。
この薄水部分Xが発生する裾部分74aは放電電極先端部72aと対向電極73のリング内周部73aとが近接している付近である。この時の放電状態の詳細は不明であるが、本願発明者らはこの薄水部分Xが発生する状態が多く見られる時ほど放電音が増大する傾向があることを見出した。
したがって、放電音を抑制するためには、放電電極72の対向電極73に近い部分で薄水部分Xが発生することを防止すればよい。具体的には、先端水74の動きを抑制したり、先端水74の裾部分74aの水保持量を増加したりすることによって、放電音を抑制することができた。その方法の一例を以下に示す。
1.対向電極73の穴径Rを小さく(Ra)する(図15参照)。
対向電極73のリング内周部73aが放電電極72の中心軸側に移動することになり、先端水74の先端の動きが絞り込まれて全体の動きも抑制されて薄水部分Xが発生することを少なくすることができる。また、先端水74の裾部分74aとリング内周部73aとを結ぶ線の方向が放電電極72の中心軸と平行に近くなるので、見かけ上の水膜厚Wも大きくなる。
2.対向電極73を離す(図16参照)。
放電電流を一定にするようにペルチェ素子36の能力を制御して結露水を生成する場合には、放電距離自体が同等になるように対向電極73が離れた寸法dに相当する分だけ先端水74の高さが高くなるため、放電電極72の先端水74が大きくなり結露水量が増加する。この先端水74の円錐形状の裾部分74aは電界強度が小さいため、静電気力が弱まることで球状に近づいた形状で太くなる。以上のことから、放電の衝撃などによって前後左右方向及び上下方向に先端水74が動きながら霧化放電を繰り返しても、裾部分74aの水分量が確保できているため水膜厚Wが大きくなって薄水部分X自体の発生を防止することができ、放電音を抑制することができる。
3.放電電圧を低くする(図17参照)。
静電気力が小さくなるため、先端水74の円錐形状の先鋭度合いが減少して裾部分74aが太くなることで水膜厚Wを大きくすることができる。また、先端水74の動き自体も小さくなり薄水部分Xが発生することを少なくすることができる。ただし、この場合は静電ミストの発生も減少してしまう。
以上の説明は、対向電極73が平板のリング形状として説明してきたが、図18に示すように、対向電極75が放電電極72側を内側面75bとするドーム状のリング形状としてもよい。図18では薄板をドーム形状に成形したものを示しているが、対向電極75を固まりをくり抜き加工により成形したようなものを考慮すると、要は、放電電極72側の内側面75bをドーム状のリング形状としたものであればよい。
図18において、対向電極75のドーム形状は、放電電極先端部72aを中心とした球面の一部であり、放電電極先端部72aからは対向電極75のリング内周部75a及び内側面75bのどこにおいてもほぼ同じ距離である。なお、球面中心Oは、放電電極先端部72aが球体形状でその直径が小さい場合には、図18のように放電電極72の先端球面位置と合わせてもよいし、放電電極72が先鋭形状の場合はその先端を中心としてもよい。
対向電極75のリング内周部75aとリング外周部75cとの幅Lは、長さ寸法で表すのではなく、球面中心Oを原点として放電電極の中心軸に対して垂直方向を0°とし、対向電極75のリング外周部75cまでをθ1、リング内周部75aまでをθ2として角度で表した場合、およそθ1=30°±10°からθ2=65°±10°の範囲で構成するのが望ましい。これは、静電ミストが発生して流出してゆくために、放電電極72側から対向電極75の穴を通過して流れる気流がスムーズに流れる流路を確保することを考慮したものである。したがって、気流がスムーズに流れるように構成できればθ1=0°からθ2=80°程度の範囲で任意に構成することも可能である。なお、θ2を小さくしてリング内周径を大きくするほど先端水74が振れ動く状態が大きくなるので、リング内周部75aは最小でもθ2=50°までにしておくことが望ましい。
上記のように構成したドーム状の対向電極75を用いた空気調和機の静電霧化装置においては、放電電極先端部72aから対向電極75のリング内周部75a及び内側面75bのどこにおいてもほぼ同じ距離であることから、平板の対向電極73ではリング内周部73aが最短距離であったものに対して、リング内周部75a及び内側面75bのどこにおいても最短距離となる。したがって、放電方向が放射状になって広範囲になり、静電ミストの静電量を多くすることができる。
それとともに、先端水74の円錐形状も変化が見られる。すなわち、静電気力が放電電極先端部72aの広い範囲に及ぶことから、先端水74の円錐形状の裾部分74aが広がるとともに、動きは前後左右方向に激しくなる。そして、放電量も増加することから静電ミストの発生量も増加するが、その分、放電音も増大する。
以上のことから、あらためてドーム状の対向電極75において放電音を抑制するために放電電極72における薄水部分Xが発生することを防止する方法の一例を以下に示す。
1.対向電極75を離す(図19参照)。
対向電極75の内側面の曲率は同じままで放電電極72から寸法dだけ離すことにより、対向電極75のリング外周部75cがリング内周部75aと比較して相対的に放電電極72に近くなり、先端水74の裾部分74aの静電気力も相対的に大きくなる。これにより先端水74の裾部分74aの水膜厚Wも大きくなる。また、平板と同様に、放電電流を一定にするようにペルチェ素子36の能力を制御して結露水を生成する場合には、対向電極75が離れた寸法dに相当する分だけ先端水74が高くなるため、放電電極72の先端水74が大きくなり結露水量が増加する。この先端水74の円錐形状の裾部分74aは電界強度が小さいため、静電気力が弱まることで球状に近づいた形状で太くなる。以上のことから、放電の衝撃などによって前後左右方向及び上下方向に先端水74が揺れ動きながら霧化放電を繰り返しても、裾部分74aの水分量が確保できているため水膜厚Wが大きくなって薄水部分X自体の発生を防止することができ、放電音を抑制することができる。
2.放電電圧を低くする(図20参照)。
静電気力が小さくなるため、先端水74の円錐形状の先鋭度合いが減少して裾部分74aが太くなることで水膜厚Wを大きくすることができる。また、先端水74の動き自体も小さくなり薄水部分Xが発生することを少なくすることができる。
3.放電電極先端部72aと対向電極75との距離をリング内周部75aを最短としてリング外周部75c側を大きくする(図21参照)。
例えば、対向電極75の球面中心Oを放電電極72の棒形状側に移動するようにして、放電電極72の先端より放電電極に沿って対向電極75から離れた位置を球面中心Oとした球面の一部として構成するものである。これにより、リング内周部75a側の静電気力がリング外周部75c側より相対的に大きくなって先端水74の先端の動きが絞り込まれて全体の動きも抑制されて薄水部分Xが発生することを抑制するとともに、もし薄水部分Xが発生したとしてもリング外周部75c側の放電が相対的に弱くなっているので放電音を抑制することができる。なお、リング形状の幅Lは、放電電極先端部72aから対向電極75までの距離が同じ場合と同様の角度範囲である。
4.対向電極75の穴径Rについて
対向電極75に開けられた円形の穴径Rについては、平板と違って条件により異なる。すなわち、元々放電範囲が広いので穴径Rが大きくなっても先端水74の動きが大きくなる割合が少なく、むしろ先端水74の先鋭度合いが低くなって裾部分74aが太くなって水膜厚Wが大きくなる傾向があり、穴径Rが大きくなっても放電音を抑制できることもある。
以上説明したように、対向電極が平板又はドーム状のいずれであっても、上記のように構成して放電電極先端部72aで薄水部分Xの発生を抑制することができ、さらに、薄水部分Xでの放電を抑制することで放電音を大きく抑制することができる。
なお、対向電極の形状は上記の平板又はドーム状だけに限定するものではなく、ドーム状に近いもので、多角錐台形の側面部の形状としたものでも上記説明の考え方に沿って適用することができる。特に、対向電極75の幅Lがθ2−θ1=40°程度までで、長さ寸法としても数mm程度の小さな構成であれば、ドーム状でない直線状であっても放電の状態は大きくは変わらない。
<静電霧化装置の電極汚れに起因する静電ミスト発生量低下を防止するための構成>
空気調和機においては室内環境によって、例えば居住者の喫煙量が多かったり、空気中に多くの埃が舞っていたり、調理器具が近くにあって油煙が舞っていたりすることがあり、静電霧化ユニットの電極にこれらの汚れが付着することによって静電ミストの発生量が大きく低下する。特に、静電ミストを発生させるために高電圧を印加していることが、ヤニや油分や埃等の汚れ粒子にも帯電させることになり、帯電した汚れ粒子は対向電極に付着しやすくなる。
中でも、静電ミストや汚れ粒子が気流に乗って通過する流路となる対向電極のリング内周部の端面に集中的に付着する傾向がある。これは、端面が切断などによる凹凸やバリがある上に、端面の向きが気流の向きに対して直角方向に近いために気流が大きく乱れて巻き込むような流れが発生したりしていることが原因と考えられる。
このようにして対向電極の一部に集中的に汚れ粒子が堆積すると、放電電極72とリング内周部との放電距離が変わるのはもちろんのこと、前述したドーム状の対向電極では汚れ粒子が堆積したリング内周部が放電電極ともっとも近接した部分となってしまい、そこで放電が行われることになる。このようにして、当初設計した放電電極と対向電極との放電距離が小さくなることで、放電音が増大したり、静電ミストの発生量が低下したり、放電電流が過大となることで運転率が低下したりすることとなる。特に、たばこのヤニや調理油等の堆積物は垂れ下がったりすることもあり、放電距離を大きく変化させてしまうものである。
このような課題に対して、本発明の空気調和機における静電霧化ユニットの放電距離の変化を防止し、静電ミストの発生量が低下することを抑制する構成について説明する。
図22は、本実施の形態の空気調和機の静電霧化ユニットの要部断面図である。図18に示す構成に対して、放電電極72と対向電極76との位置関係は変わらないが、対向電極76のリング内周部76aに円筒形の立設部77が放電電極72の反対方向に向けて設けてある。この構成により、対向電極76の端面がリング内周部76aから立設部先端77aに移動する。
すなわち、立設部先端77aに汚れ粒子が堆積したとしても、放電距離が変わることがない。さらに、端面である立設部先端77aの向きが気流と同じ方向となるため気流の乱れも少なくなり、堆積すること自体も少なく、時間がかかるようになる。
立設部77の高さHは、対向電極76の形状や板厚にもよるが、平板の場合で板厚の少なくとも2倍程度あればよく、薄板をドーム形状に成型した場合で気流方向の直線部が少なくとも板厚と同程度あればよい。この程度でも少しくらい汚れ粒子が堆積しても放電距離が短くならないという効果が確認できる。したがって、立設部77の高さHは少しでもあればよい。逆に、立設部77の高さHを大きくするほど汚れ粒子の堆積が放電距離を短くして悪影響を来すまでの期間が長くなるが、かえって気流の流路が長くなって抵抗が増えたり、堆積物が多くなって垂れ下がったり、流路を塞ぐほどまでになったりする可能性を考えると、立設部77の高さHは立設部77の円筒状の穴径r、すなわち対向電極76の穴径Rと同等程度までが望ましい。
以上説明した構成によれば、静電霧化ユニットの対向電極に汚れが付着しても放電距離が短くなることを防止することができ、静電ミストの発生量が大きく低下したり、放電音が増大したり、放電電流が過大となることで運転率が低下したりすることを抑制することができる。
なお、図23に示すように、立設部77の根元の内側、すなわちリング内周部76aをラウンド形状として対向電極76の内側面76bから立設部77にかけてなめらかに形成することで、気流の乱れを抑制して静電ミストの消滅を防止することができる。
また、立設部先端77aをさらに外側に曲げれば、端面を静電ミストと汚れ粒子の気流から完全に遠ざけることとなり、汚れ粒子の堆積をほとんど防止することができる。
さらに、この立設部77による静電霧化装置の電極汚れに起因する静電ミスト発生量の低下を防止するための構成は、前述した静電霧化装置に起因する騒音を低減するための構成と合わせて構成することができるのはもちろんのことで、これらの構成を有する静電霧化装置を空気調和機に搭載することにより、より多くの静電ミストを長期間にわたって確実に発生させることができるとともに、それに伴う放電音の増大を抑制して静音性を向上した空気調和機を提供することができる。