JP5058851B2 - 静電型電気音響変換器、その製造方法およびコンデンサーマイクロホン - Google Patents
静電型電気音響変換器、その製造方法およびコンデンサーマイクロホン Download PDFInfo
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Description
コンデンサーマイクロホンユニットは上記静電型電気音響変換器の振動板あるいは固定極のいずれかに成極電圧を加え、振動板と固定極との間隙が変化することによって発生する静電容量の変化を電圧の変化として出力する。この出力電圧は上記振動板に当たる音波に対応しており、これによって電気音響変換されることになる。コンデンサーマイクロホンでは、上記静電型電気音響変換器がコンデンサーマイクロホンユニットを構成している。このコンデンサーマイクロホンユニットは振動板が受けた音波を静電容量の変化として電気信号に変換し出力するため、電気的にはインピーダンスが高い。そこで、コンデンサーマイクロホンユニットの出力側に、FET(電界効果トランジスタ)などの能動素子を有してなるインピーダンス変換器が接続される。
無効静電容量にはまた、電気音響変換に寄与しない浮遊容量も含まれる。図4はこれらの静電容量の等価回路で、固定極と振動板からなる静電型電気音響変換部1の出力に対し直列に有効静電容量が接続され、この直列接続に対し並列に無効静電容量が接続された形になる。
したがって、有効静電容量と無効静電容量の値が同じであれば、電気音響変換部1で変換された出力は半分に低下する。すなわち、感度が半分になることになるから、無効静電容量を極力小さくすることが好ましい。
振動板3は固定極2の片面側に対向させて配置されるが、振動板3と固定極2との間に所定幅の間隙6を保つために、振動板3と固定極2との間にスペーサ4が介在している。換言すれば、スペーサ4の厚さ寸法と同じ幅の上記間隙6が形成されている。スペーサ4は、外径が固定極2の外径と同じリング状の部材である。
前記有効静電容量は、図5(B)に示すように、振動板3が振動することができる直径bの範囲が固定極2と対向することによって生じる静電容量である。スペーサ4と振動板リング5で抑えられる振動板3の幅aで示す外周縁部は音波を受けても振動することができないので、固定極2と対向することによって生じる静電容量は無効静電容量である。前述のように、マイクロホンの感度を向上させるには、有効静電容量を大きくすることが必要であり、そのためには振動板3と固定極2との間隔を狭めて間隙6を小さくすることが必要である。また、振動板3が音波を受けて振動するとき、振動板3が固定極2に接触すると、マイクロホンとしての性能の劣化、放電による雑音の発生などの不具合を生じるので、振動板3と固定極2が対向する面が接触しないように、両者の対向面は平坦である必要がある。
振動板3は、前述のように適切な張力を持たせて振動板リング5に貼り付けることによって平坦面を保っている。固定極2の振動板3との対向面を平坦面にするには、平面研磨する必要がある。
一方、固定極板21の外周面と固定リング22の内周面とに断面V字状の周溝を形成するのを機械加工で行おうとすると、両部材がいずれも平面に近い形状であることから、旋盤などのチャッッキング装置に取り付けるとチャックからの負荷による応力が生じて変形しやすくなる虞がある。このような変形が生じると、板状であるべき部材が波打つ形状に変形してしまい、平面性が損なわれてしまうことになる。
本発明はまた、製造工程での平面性の悪化や加工効率の悪化を防止できる静電型電気音響変換器の製造方法を提供することにある。
(1) 固定極と、この固定極に間隙をおいて対向配置された振動板とを有し、振動板あるいは固定極のいずれかに成極電圧を加えてなる静電型電気音響変換器であって、
上記固定極は、固定極板と、この固定極板の外周側に位置する固定リングと、これら固定極板と固定リングの間に介在してこれらを一体に結合する絶縁部とを有してなり、
上記固定極板および固定リングとは、互いに対向する端面が厚さ方向中央部において対向する端面に向け膨出する形状とされ、最大膨出部の両側が前記絶縁部として用いる接着剤により一体接合されていることを特徴とする静電型電気音響変換器。
(2)前記固定板および固定リングは、ポリカーボネイトを用いた射出成形品を用いるとよい。
(3)前記固定極に用いられる固定極板と固定リングは、エッチング加工するとよい。
(4)前記固定極板と固定リングとの対向端面は、両面エッチングにより生じるサイドエッジを厚さの10%以内とし、該サイドエッジの突起部を境にその両側に絶縁部として用いられる接着剤を充填するとよい。
(5)接着剤として、紫外線硬化樹脂を用いるとよい。
上記接着剤として紫外線硬化樹脂を用いると、紫外線硬化樹脂を向けて膨出部に滴下させるというより簡単な作業で済ませることができる。
しかも、このような固定極板および固定リングをエッチングで形成することにより、エッチングの際に生じるサイドエッジをそのまま利用して両部材の接合部とすることができるので、機械的な負荷を掛けることがなく平面性を損ねることがない。
図1において、符号30は静電型電気音響変換器の一部を構成する円板状の固定極を示す。この固定極30には、振動板が適切な間隙をおいて対向配置されるが、振動板の構成は図6について説明した静電型電気音響変換器の例と同様であるから、図1、図2には振動板の描写は省略されている。振動板は固定極30の片面側に対向させて配置される。振動板と固定極30との間に所定幅の間隙を保つために、振動板と固定極30との間にスペーサが介在している。換言すれば、スペーサの厚さ寸法と同じ幅の間隙が振動板と固定極30との間に形成されている。
固定極板31と固定リング32とは機械的に強固に結合される必要があるため、固定極板31と固定リング32の半径方向の対向端面は次のような形に形成されている。すなわち、固定極板31の外周面と固定リング32の内周面はそれぞれ、図2および図3に示すように、厚さ方向中央部が、対向する端面に向けて膨出する形状の膨出部31A、32Aが設けられている。膨出部31A、32Aの最大膨出部分を境にして固定極板31と固定リング32の厚さ方向両側に、断面形状が矢尻状の溜まり部が形成されている。この両側の溜まり部には接着剤が充填され、絶縁部33が形成されている。上記接着剤として、例えば紫外線硬化樹脂を用いるとよい。
固定極板31および固定リング32はポリカーボネイトなどの樹脂が用いられ、両部材は、上述したように、絶縁部33を介して一体化されている。
固定極板31および固定リング32は、フォトエッチングを用いた両面エッチングで製造され、その際に発生するサイドエッジの厚さが素材の板厚さの10%以内に収まるように設定されている。上記サイドエッジが前記膨出部31A、32Aとなる。
まず、ポリカーボネイトを射出成形した素材を図示しない治具に搭載した状態で、周知のフォトエッチング処理に対する前工程であるレジスト塗布工程および露光工程に供され、この工程後に両面エッチングが行われる。
露光工程後の素材は、エッチング液に浸漬されるとフォトパターン以外の部分が除去され、その際に固定極板31の内周面と固定リング32の外周面とにサイドエッジが生じ、その部分が厚さ方向で中央部が膨出する形状に成形されて膨出部31A、32Aが生起される。
固定極板31と固定リング32をエッチング処理した後洗浄を行い、次に、固定極板31の外周側に固定リング32を配置する。固定極板31と固定リング32の厚さ方向両側に、断面形状が矢尻状の溜まり部が生じるので、この溜まり部に接着剤を充填し、接着剤を硬化させて絶縁部33を形成し、この接縁部の介在の元に固定極板31と固定リング32を一体に結合する。接着剤として紫外線硬化樹脂を用いるときは上記溜まり部に紫外線硬化樹脂を滴下し、紫外線を照射して硬化させる。
特に、絶縁部33の形状をエッチング処理工程において生成されるサイドエッジを利用するだけであるので、切削や研削などによる機械加工が不要となり、機械加工による負荷を与えないことにより両部材同士、特に固定極31の平面性を損ねることがない。
なお、同一素材を用いて固定極31と固定リング32とを成形することに限られるものではなく、異なる素材からなる固定極31と固定リング32を個々にエッチング処理し、絶縁部33を対向させて位置決めしたうえで、上記溜まり部に紫外線硬化樹脂などからなる接着剤を充填することも可能である。
31 固定極板
31A 膨出部
32 固定リング
32A 膨出部
33 絶縁部
Claims (7)
- 固定極と、この固定極に間隙をおいて対向配置された振動板とを有し、振動板あるいは固定極のいずれかに成極電圧を加えてなる静電型電気音響変換器であって、
上記固定極は、固定極板と、この固定極板の外周側に位置する固定リングと、これら固定極板と固定リングの間に介在してこれらを一体に結合する絶縁部とを有してなり、
上記固定極板および固定リングとは、互いに対向する端面が厚さ方向中央部において対向する端面に向け膨出する形状とされ、最大膨出部の両側が前記絶縁部として用いる接着剤により一体接合されていることを特徴とする静電型電気音響変換器。 - 前記固定板および固定リングはポリカーボネイトを用いた射出成形品が用いられることを特徴とする請求項1に記載の静電型電気温厚変換器。
- 前記接着剤は、紫外線硬化樹脂からなる請求項1に記載の静電型電気温厚変換器。
- 固定極と、この固定極に間隙をおいて対向配置された振動板とを有し、振動板あるいは固定極のいずれかに成極電圧を加えてなる静電型電気音響変換器をマイクロホンケースに組み込んでなるコンデンサーマイクロホンであって、前記静電型電気音響変換器は、請求項1、2または3のいずれかに記載の静電型電気温厚変換器であるコンデンサーマイクロホン。
- 請求項1、2または3に記載の静電型電気音響変換器の製造方法であって、
前記固定極に用いられる固定極板と固定リングとをエッチング加工することを特徴とする静電型電気音響変換器の製造方法。 - 前記固定極板と固定リングとの対向端面は、両面エッチングにより生じるサイドエッジを厚さの10%以内とし、該サイドエッジの突起部を境にその両側に絶縁部として用いられる接着剤を充填することを特徴とする請求項4に記載の静電型電気音響変換器の製造方法。
- 前記接着剤は、紫外線硬化樹脂からなる請求項6に記載の静電型電気音響変換器の製造方法。
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