[0031] 図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、
− 放射ビームB(例えばUV放射またはDUV放射)を調節するように構成された照明システム(照明器)ILと、
− パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するように構成され、いくつかのパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1のポジショナPMに接続されたサポート構造(例えばマスクテーブル)MTと、
− 基板(例えばレジストコートウェーハ)Wを保持するように構成され、いくつかのパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2のポジショナPWに接続された基板テーブル(例えばウェーハテーブル)WTと、
− パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wのターゲット部分C(例えば1つまたは複数のダイを備える)に投影するように構成された投影システム(例えば屈折投影レンズシステム)PSとを備える。
[0032] この照明システムは、放射を導くか、整形するか、または制御するために、屈折、反射、磁気、電磁気、静電気など様々なタイプの光学コンポーネント、または他のタイプの光学コンポーネント、あるいはそれらの任意の組合せを含んでよい。
[0033] サポート構造MTは、パターニングデバイスを保持する。サポート構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計、および例えばパターニングデバイスが真空環境中に保持されるかどうかなど他の条件によって決まる方法でパターニングデバイスを保持する。サポート構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械、真空、静電気、または他のクランプ技法を用いることができる。サポート構造は、例えば必要に応じて固定にも可動にもすることができるフレームまたはテーブルとすることができる。サポート構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して確実に所望位置にあるようにすることができる。本明細書における「レチクル」または「マスク」という用語のいかなる使用も「パターニングデバイス」というより一般的な用語と同義であると考えることができる。
[0034] 本明細書に使用される用語「パターニングデバイス」は、基板の標的部分内にパターンが生み出されるように、投影ビームにその断面でパターンを与えるために使用することができる任意のデバイスを指すものと広義に解釈されたい。例えばパターンが位相シフトフィーチャまたはいわゆるアシストフィーチャを含む場合、放射ビームに与えられたパターンが、基板のターゲット部分内の所望のパターンと正確に一致しない可能性があることに留意されたい。一般に、放射ビームに与えられたパターンは、集積回路など、ターゲット部分に作成されるデバイス内の特定の機能の層に相当することになる。
[0035] パターニングデバイスは、透過型または反射型とすることができる。パターニングデバイスの諸例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、およびプログラマブルLCDパネルが含まれる。マスクはリソグラフィで周知であり、バイナリ、レベンソン型(alternating)位相シフトおよびハーフトーン型(attenuated)位相シフトなどのマスクタイプ、ならびに様々なハイブリッドマスクタイプを含む。プログラマブルミラーアレイの一例は、小さな鏡の行列構成を使用し、鏡のそれぞれは、入来放射ビームを様々な方向で反射するように個別に傾けることができる。傾斜式鏡は、鏡行列によって反射される放射ビーム内にパターンを与える。
[0036] 本明細書に用いられる用語「投影システム」は、屈折システム、反射システム、反射屈折システム、磁気システム、電磁気システム、および静電気光学システムあるいはそれらの任意の組合せを含むあらゆるタイプの投影システムを包含し、使用される露光放射あるいは液浸液の使用または真空の使用など他の要因に適切なものとして、広義に解釈されたい。本明細書における用語「投影レンズ」のいかなる使用も、より一般的な用語「投影システム」と同義と見なされてよい。
[0037] 本明細書で記述されるように、装置は透過タイプ(例えば透過型マスクを使用するタイプ)である。あるいは、装置は反射タイプ(例えば上記で言及されたプログラマブルミラーアレイを使用するタイプまたは反射性マスクを使用するタイプ)でよい。
[0038] リソグラフィ装置は、2つの基板テーブル(デュアルステージ)またはそれより多い基板テーブル(および/または複数のパターニングデバイステーブル)を有するタイプとすることができる。そのような「マルチステージ」機械では、追加のテーブルを並列に使用することができ、あるいは1つまたは複数の他のテーブルを露光のために使用しながら、1つまたは複数のテーブルで準備ステップを実行することができる。
[0039] 図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受け取る。例えばこの放射源がエキシマレーザであるとき、放射源とリソグラフィ装置は別個の実体でよい。そのような例では、放射源がリソグラフィ装置の一部を形成するとは見なされず、放射ビームは、放射源SOからイルミネータILまで、例えば適切な誘導ミラーおよび/またはビームエキスパンダを備えるビームデリバリシステムBDを用いて通される。他の例では、例えば放射源が水銀灯であるとき、放射源はリソグラフィ装置の一体型部品でよい。放射源SOおよびイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDも一緒に、放射システムと呼ばれてよい。
[0040] イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するためのアジャスタADを備えてよい。一般に、イルミネータの瞳面内における強度分布の少なくとも外側および/または内側半径範囲(一般にそれぞれσ-outerおよびσ-innerと呼ばれている)は調節が可能である。また、イルミネータILは、インテグレータINおよびコンデンサCOなど様々な他のコンポーネントを備えることができる。このイルミネータを使用して、所望の均一性および強度分布をその断面に有するように放射ビームを調節することができる。
[0041] 放射ビームBは、サポート構造(例えばマスクテーブル)MTに保持されるパターニングデバイス(例えばマスク)MAに入射し、パターニングデバイスによってパターン付けされる。放射ビームBはパターニングデバイスMAを通過した後、投影システムPSを通過し、投影システムPSはビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦する。第2のポジショナPWおよび位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ、または容量センサ)を用いて、例えば放射ビームBの経路中に様々なターゲット部分Cを位置決めするように基板テーブルWTを正確に移動することができる。同様に、第1のポジショナPMおよび別の位置センサ(図1に明確には示されていない)を使用して、例えばマスクライブラリからの機械的抽出の後にまたはスキャン中に、パターニングデバイスMAを放射ビームBの経路に対して正確に位置決めすることができる。一般に、パターニングデバイスMTの移動は、第1のポジショナPMの一部を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)およびショートストロークモジュール(微動位置決め)を使用して実現することができる。同様に、基板テーブルWTの移動は、第2ポジショナPWの一部を形成するロングストロークモジュールおよびショートストロークモジュールを使用して実現することができる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、パターニングデバイスMTはショートストロークアクチュエータのみに接続することができ、または固定することができる。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、パターニングデバイスアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは専用のターゲット部分を占めるが、それらはターゲット部分間の空間に配置することができる(これらはスクライブレーンアライメントマークとして知られている)。同様に、1つよりも多いダイがパターニングデバイスMA上に設けられている状況では、パターニングデバイスアライメントマークはダイ間に配置することができる。
[0042] 図示された装置は、以下のモードのうち少なくとも1つで使用され得る。
[0043] 1.ステップモードでは、パターニングデバイスMTおよび基板テーブルWTが本質的に静止したままであり、一方、放射ビームに与えられたパターン全体がターゲット部分C上に1回で投影される(すなわち、1回の静止露光)。次いで、基板テーブルWTがXおよび/またはY方向でシフトされ、その結果、異なるターゲット部分Cを露光することができる。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズにより、1回の静止露光で結像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
[0044] 2.スキャンモードでは、放射ビームに与えられたパターンがターゲット部分C上に投影されている間に、パターニングデバイスMTおよび基板テーブルWTが同期してスキャンされる(すなわち、1回の動的露光)。パターニングデバイスMTに対する基板テーブルWTの速度および方向は、投影システムPSの(縮小)倍率と像反転特性によって決定される可能性がある。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズにより、1回の動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向での)幅が制限され、一方、スキャン運動の長さにより、ターゲット部分の(スキャン方向での)高さが決定される。
[0045] 3.その他のモードでは、プログラマブルパターニングデバイスを保持してパターニングデバイスMTが基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWTが移動またはスキャンされ、一方、放射ビームに付与されたパターンがターゲット部分Cに投影される。このモードでは、通常、パルス放射源が使用され、スキャン中、基板テーブルWTが移動する毎に、あるいは連続する放射パルスと放射パルスの間に、必要に応じてプログラマブルパターニングデバイスが更新される。この動作モードは、上記で参照したタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを利用しているマスクレスリソグラフィに容易に適用することができる。
[0046] 前述の各使用モードの組合せおよび/または変種、あるいは全く異なる使用モードもまた使用することができる。
[0047] 投影システムPSの最終エレメントと基板との間に液体を供給するための機構は、3つの一般的なカテゴリに分類することができる。これらは槽タイプの機構であり、いわゆる局所的液浸システムおよびオールウェット液浸システムである。槽タイプの機構では、基板Wの実質的に全体および任意選択により基板テーブルWTの一部分が、液体の槽の中に沈んでいる。
[0048] 局所的液浸システムは、液体が基板の局所的領域へのみ供給される液体供給システムを使用する。液体で満たされた空間は、平面図では基板の頂面より小さく、液体で満たされた領域は、この領域の下で基板Wが移動している間中、投影システムPSに対して実質的に静止したままである。図2〜図5は、そのようなシステムで使用することができる様々な供給デバイスを示す。シーリング機構は、局所的領域に対して液体を封止するために存在する。これを構成するために提案されている1つの方法が、PCT特許出願公開の国際公開第99/49504号に開示されている。
[0049] オールウェット機構では、液体は閉じ込められていない。基板の頂面全体および基板テーブルの全体または一部分が液浸液で覆われている。少なくとも基板を覆う液体の深さは小さい。液体は、基板上の液体の薄膜などの膜でよい。液浸液は、投影システムの領域および投影システムに対向する対向面(そのような対向面は基板および/または基板テーブルの面であり得る)の領域に供給されてよく、あるいはその領域に存在してよい。図2〜図5の給液デバイスのうちの任意のものも、そのようなシステムで使用することができる。しかし、シーリング機構が存在しないもの、作動しないもの、通常ほど効率的でないもの、またはその他、液体を局所的領域だけに封止するのに効果がないものである。
[0050] 図2および図3に示されるように、液体は、少なくとも1つの流入口により、基板に対して、好ましくは基板の最終エレメントに対する移動方向に沿って供給される。液体は、投影システムの下を通過した後に少なくとも1つの流出口によって除去される。すなわち、基板がエレメントの下を−X方向にスキャンされるとき、液体はエレメントの+X側で供給されて−X側に吸収される。図2は、液体が、流入口を介して供給され、低圧源に接続された流出口によってエレメントのもう一方の側に吸収される機構を概略的に示す。図2の説明では、液体は最終エレメントに対する基板の移動方向に沿って供給されるが、必ずしもこの通りでなくてよい。様々な、方向ならびに最終エレメントのまわりに配置される流入口および流出口の数が可能であり、図3に示された一実施例では、流入口の両側に流出口がある組の4つが最終エレメントのまわりに規則的パターンで設けられている。図2および図3では、液体の流れ方向が矢印によって示されていることに留意されたい。
[0051] 局所的液体供給システムを有するさらなる液浸リソグラフィの解決策が、図4に示されている。液体は、投影システムPSの両側の2つの溝流入口によって供給され、流入口の半径方向の外側に配置された複数の個別の流出口によって除去される。流入口は、その中心に穴を有してプレートに配置され得て、この穴を通して投影ビームが投影される。液体は、投影システムPSの片側の1つの溝流入口によって供給され、投影システムPSのもう一方の側の複数の個別の流出口によって除去され、その結果、投影システムPSと基板Wとの間に液体の薄い膜の流れをもたらす。流入口と流出口との組合せのどちらを使用するかという選択は、基板Wの移動方向次第であり得る(流入口と流出口とのもう一方の組合せは非活動状態である)。図4では、流体の流れ方向および基板の方向が矢印によって示されていることに留意されたい。
[0052] 提案されている別の機構に、投影システムの最終エレメントと基板テーブルとの間の空間の境界の少なくとも一部分に沿って広がる液体閉じ込め構造体を、液体供給システムに設けるものがある。そのような機構が図5に示されている。
[0053] 図5は、投影システムの最終エレメントと基板テーブルWTまたは基板Wとの間の空間の境界の少なくとも一部分に沿って広がる液体閉じ込め構造体12を有する局所的液体供給システムすなわち流体ハンドリング構造体を概略的に示す。(以下の本文では、基板Wの面への言及は、別様に明白に述べるのでなければ、基板テーブルの面に加えて、あるいは基板テーブルの面の代わりに、ということも指すことに留意されたい)。液体閉じ込め構造体12は、Z方向(光学軸の方向)のいくらかの相対運動はあり得るが、XY平面では投影システムに対して実質的に静止している。一実施形態では、液体閉じ込め構造体と基板Wの面との間にシールが形成され、これはガスシール(ガスシールを有するそのようなシステムは欧州特許出願公開第1,420,298号に開示されている)または液体シールなどの非接触シールでよい。
[0054] 液体閉じ込め構造体12は、投影システムPLの最終エレメントと基板Wとの間の空間11内に、液体を少なくとも部分的に含む。基板Wに対する非接触シール16が、投影システムの結像フィールドのまわりに形成されてよく、その結果、液体が基板Wの面と投影システムPLの最終エレメントとの間の空間内に閉じ込められる。投影システムPLの最終エレメントの下に、これを取り囲んで配置された液体閉じ込め構造体12により、空間が少なくとも部分的に形成される。液体は、液体注入口13によって投影システムの下の液体閉じ込め構造体12内の空間に導かれる。液体は、液体排出口13によって除去することができる。液体閉じ込め構造体12は、投影システムの最終エレメントの少し上に広がってよい。液体の緩衝がもたらされるように、液位が最終エレメントの上に上昇する。一実施形態では、液体閉じ込め構造体12は内周部を有し、その頂部端は、投影システムまたはその最終エレメントの形状に精密に一致して例えば円形でよい。最下部では、内周部は、結像フィールドの形状に精密に一致して例えば長方形であるが、この通りでなくてよい。
[0055] 液体は、液体閉じ込め構造体12の最下部と基板Wの面との間に使用中形成されるガスシール16によって空間11内に含まれ得る。ガスシールは、例えば空気または合成空気であるが、一実施形態ではN2または別の不活性ガスである気体によって形成される。ガスシール内の気体は、圧力をかけられ、流入口15を通って液体閉じ込め構造体12と基板Wとの間の間隙へ供給される。気体は、流出口14を通って抽出される。液体を閉じ込める高速の気体流16が内部に存在するように、気体流入口15の超過圧力、流出口14の真空レベルおよび間隙の幾何形状が構成される。液体閉じ込め構造体12と基板Wとの間の液体に対する気体の力が、液体を空間11内に封じ込める。流入口/流出口は、空間11を取り囲む環状溝でよい。これらの環状溝は、連続していても不連続でもよい。気体16の流れは、空間11内に液体を封じ込めるのに有効である。そのようなシステムは、米国特許出願公開第2004−0207824号に開示されており、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。別の実施形態では、液体閉じ込め構造体12にガスシールがない。
[0056] 図6は、液体供給システムの一部分である液体閉じ込め構造体12を示す。液体閉じ込め構造体12は、投影システムPSの最終エレメントの周辺(例えば周囲)のまわりに広がる。
[0057] 空間11を画定する面の複数の開口20が、液体を空間11へ供給する。液体は、空間11に入る前に、側壁28、22のそれぞれの開口29、20を通過する。
[0058] 液体閉じ込め構造体12の最下部と基板Wとの間にシールが設けられる。図6で、シールデバイスは、非接触シールをもたらすように構成され、いくつかのコンポーネントで構成されている。投影システムPSの光学軸から半径方向の外側に、空間11の中へ広がる(任意選択の)流量制御プレート50が設けられる。液体閉じ込め構造体12の底面上の流量制御プレート50の半径方向の外側に、基板Wまたは基板テーブルWTと対向して開口180があってよい。開口180は、液体を基板Wの方向へ供給することができる。このことは、結像の間中、基板Wと基板テーブルWTとの間の間隙を液体で満たすことにより液浸液中の気泡形成を防ぐのに有益であり得る。
[0059] 開口180の半径方向の外側に、液体閉じ込め構造体12と基板Wおよび/または基板テーブルWTとの間から液体を抽出するための抽出器アセンブリ70があってよい。抽出器アセンブリ70は、単相または2相の抽出器として動作することができる。
[0060] 抽出器アセンブリ70の半径方向の外側に、凹部80があってよい。凹部80は、流入口82を介して大気に接続される。凹部80は、流出口84を介して低圧源に接続されてよい。凹部80の半径方向の外側に、気体ナイフ90があってよい。抽出器アセンブリ、凹部および気体ナイフの機構は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2006/0158627号に詳細に開示されている。
[0061] 抽出器アセンブリ70は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2006−0038968号に開示されているものなどの液体除去デバイスあるいは抽出器または流入口を備える。一実施形態では、液体除去デバイス70は、気体から液体を分離して単一液相の液体抽出法を可能にするのに用いられる多孔性材料110で覆われた流入口を備える。チャンバ120内の負圧は、多孔性材料110の穴の中に形成されたメニスカスが、周囲気体が液体除去デバイス70のチャンバ120内へ引き込まれるのを防止するように選択される。しかし、多孔性材料110の面が液体と接触するとき、流れを制限するメニスカスはなく、液体は、液体除去デバイス70のチャンバ120へ自由に流れ込むことができる。
[0062] 多孔性材料110は、それぞれが5〜50μmの範囲の例えば直径などの幅の寸法を有する多くの小さな穴を有する。多孔性材料110は、液体が除去されることになっている面(例えば基板Wの面)より上の50〜300μmの範囲の高さに維持され得る。一実施形態では、多孔性材料110は少なくともわずかに親液性であり、すなわち液浸液(例えば水)に対して90°未満、望ましくは85°未満、あるいは望ましくは80°未満の動的接触角を有する。
[0063] 図6には具体的に示されていないが、液体供給システムは、液体のレベルの変動に対処する機構を有する。これは、投影システムPSと液体閉じ込め構造体12との間に蓄積する液体を扱うことができてこぼれないようにするためである。この液体を扱う1つのやり方に、疎液性(例えば疎水性)コーティングを設けることがある。コーティングは、開口を取り囲む液体閉じ込め構造体12の頂部のまわり、および/または投影システムPSの最終光学エレメントのまわりに帯を形成することができる。コーティングは、投影システムPSの光学軸の半径方向の外側にあってよい。疎液性(例えば疎水性)コーティングは、空間11内に液浸液を保つのに役立つ。
[0064] 図5および図6の実施例は、いつでも基板Wの頂面の局所的領域にのみ液体が供給される、いわゆる局所的領域の機構である。気体抵抗の原理を利用する流体ハンドリングシステムを含む、他の機構が可能である。いわゆる気体抵抗の原理は、例えば米国特許出願公開第2008−0212046号、および2008年5月8日出願の米国特許仮出願第61/071,621号に説明されている。そのシステムでは、抽出穴は、望ましくは隅部を有する形状に構成される。隅部は、ステップおよびスキャンの方向に整列されてよい。これによって、2つの流出口がスキャン方向に対して垂直に整列している場合と比較して、ステップまたはスキャンの方向における所与の速度で流体を渡す構造体の面の2つの開口間のメニスカスに対する力が低減する。本発明の一実施形態は、オールウェット液浸装置で使用される流体ハンドリング構造体に適用することができる。オールウェットの実施形態では、例えば投影システムの最終エレメントと基板との間に液体を閉じ込める閉じ込め構造体から液体が漏れるのを可能にすることにより、流体が基板テーブルの頂面の全体を覆うことが可能になる。オールウェットの実施形態向けの流体ハンドリング構造体の一実施例は、2008年9月2日出願の米国特許仮出願第61/136,380号に見いだすことができる。
[0065] 理解されるように、上記で説明された機構のあらゆるものが、任意の他の機構とともに使用することができ、それは本出願でカバーされる明確に説明された組合せのみではない。
[0066] 本発明の一実施形態は、湾曲面を利用する。面は、面上の液体の膜に対して表面張力の排流力が作用するように湾曲する。表面張力の排流力は、重力が作用する方向だけでなく、あらゆる方向(例えば重力に対抗する方向)に作用することができる。面の湾曲は、表面張力の排流力が特定方向(例えば第1の方向)に作用するように選択される。その方向は、表面張力の排流力が液体に対して所望の方向に作用するように選択される。その方向は、垂直成分および/または水平成分を有することができる。湾曲面は、面の排流を助け、すなわち面を濡れた状態に保つ(例えば特定の面上の液体の膜を維持する)のを助けるために、表面張力の排流力を生成するのに用いることができる。表面張力の排流力(drainage force)という用語は、当技術分野で用いられる用語であるが、本発明の一実施形態では、前述のように、この力は必ずしも液体を「排出する」作用をするわけではない。
[0067] 表面張力の排流力は、液体を、フィンの先端からフィンの谷間へと、重力に対して垂直な方向へ移動させるのに表面張力の排流力が用いられる凝縮器の凝縮フィンに関連して研究されている。一旦液体がフィンの谷間に達すると、次いで、重力が、液体を下方へ除去するように作用する。このようにして、フィンの先端に凝縮した液体の薄膜を、さらなる液体が膜上に凝縮するように、フィンの先端から移動することができる。例えばJohn Wiley & Sonsによって2003年7月11日に出版されたAdrian BejanおよびAlan D. Krausによる「Heat Transfer Handbook」という書籍を参照されたい。
[0068] 「Heat Transfer Handbook」の第10章に、表面張力の排流力が説明されている。要約すると、液体−蒸気の境界面が湾曲していると、境界面の機械的平衡が確立するように、境界面を横切って圧力差が必ず存在するということである。液体が大きな表面張力を有し、その表面が小さな曲率半径を有すると、液体と蒸気との間に大きな圧力差が生じる。表面張力の排流力を誘起することができる基本的湾曲形状は、その局所的曲率半径が第1の方向で縮小する湾曲である。これは、液体の膜に対して表面上で第1の方向に作用する表面張力の排流力をもたらすことになる。
[0069] Adamekは、(Adamek, T., 1981, "Bestimmung der Kondensationgroessen auf feingewellten Oberflaechen zur Auslegung optimaler Wandprofile," Waerme-und Stoffuebertragung, Vol. 15, pp 255-270で)表面張力の排流力が特に高い一連の湾曲を定義した。それらの湾曲は次式で表され、
ここで、κは液体−蒸気の境界面の曲率であり、θmは凝縮面が曲がる最大角であり、Smは最大の弧長であり、ζは形状係数であり、sは液体−蒸気の境界面に沿った距離である。
[0070] 液体膜排流だけが存在して、この液体膜に対する凝縮がないという簡単なケースについては、各断面を通る液体膜の流れは一定である。排流を最大化するために、液体膜の厚さは各断面で一定であり、このことは、圧力勾配が一定であることを意味する。液体膜曲率の勾配に対して、圧力勾配が線形であり、液体膜の厚さが一定であるので、一実施形態では、壁のプロファイルは、始めから終わりまで直線的に低下する曲率を有することができる。排流の間中、液体膜に対する凝縮がある場合は常に、流れが始めから終わりまで増加し、最適な排流のためにわずかに異なる壁プロファイルが必要となる。正確に壁プロファイルを求めるために詳細な計算を実行することができる。より速い流れを補償するために、端に向かって圧力勾配が増加しなければならない。
[0071] 大きな表面張力の排流力を加えることによって液体の排流を最大化し、かつ液体膜の層の厚さを最小化するのにAdamekプロファイルが特に効果的であるので、Adamekプロファイルを有する湾曲が望まれる。いわゆるAdamekプロファイルは、排流のための最適化がなされたものであり、最小厚さを意味している。
[0072] 図7で、左側のグラフは、形状係数ζが−0.5のAdamek形状を有する材料(材料は右側にある)の湾曲面を示す。この場合、材料の左側の表面に付着した液体の膜には、示されるように、表面に沿って下方へ力が加わることになる。右側のグラフは、表面上の液体の膜の液体中に存在する圧力プロファイルを示す。見ることができるように、表面の距離に沿って負圧が増加し、これは、図示のように、膜中の液体に対して下方へ作用する表面張力の排流力をもたらす。これらの力は、重力および膜に作用している可能性があるあらゆる他の力(例えば、排出されることになる膜中の粘性力による、またはそれほどではないにせよ気体の流れによる剪断力)に加えられる。凹状曲面の変化する曲率は、液体の表面張力により、半径が縮小する方向に液体膜を流れさせる。凸形状に関して同じことが生じるが、これでは流れが逆方向になるはずである。
[0073] 本発明の一実施形態は、表面張力の排流力がどちらの方向に作用するべきか、ということ次第で、正の湾曲および負の湾曲(凹面および凸面)を両方とも利用する。
[0074] 一実施形態では、第1の表面は、表面張力の排流力が、膜中の液体を第1の方向に移動させるために、膜中の液体に対して重力とともに作用する方向に作用するような幾何形状である。例えば、第1の方向は、投影システムPSの最終エレメントと基板Wとの間の液浸空間への方向であり得る。一実施形態では、第1の方向は、液体抽出用の開口へ向かうものである。
[0075] 望ましくは、表面は液浸液に対して親液性に作製される。例えば、液浸液は、第1の表面に対する静的接触角として、90°未満、望ましくは70°未満、より望ましくは50°未満、最も望ましくは30°未満を有することができる。
[0076] 親液性表面を有することの利点は、それによって液体のより薄い膜が表面上に存在するはずである、ということである。さらに、液体が小滴ではなく膜として湾曲面上にあると、表面張力の排流力だけが与えられる。表面の親液性を保証することは、湾曲面上のいかなる液体も、非親液性表面が用いられた場合より膜になりやすい(小滴になりにくい)ことを意味する。
[0077] 表面の一方の端から他方の端への曲率半径の差がより大きいと、より大きな表面張力の排流力を生成するので、より優れている。第1の表面の適切な最小曲率半径は1mm未満であり、望ましくは0.1mm未満であり、最も望ましくは0.01mm未満である。基板テーブルWTを製造するのに用いられるセラミックについては、1μmの最小半径が達成可能である。光学エレメント(例えば投影システムPSの最終エレメント)については、最小半径はさらに小さくてよく、恐らく0.1μmである。湾曲面の曲率の最大半径は、できるだけ大きくする。望ましくは1mmより大きく、より望ましくは10mmより大きく、最も望ましくは100mmより大きい。第1の表面の適切な全長は、0.05mm〜20mmの範囲、望ましくは0.05mm〜2mmの範囲、最も望ましくは0.05mm〜1mmの範囲から選択される。全長が短いほど表面張力の排流力が大きい。水の場合、3mm以内の全長の湾曲面は、重力より大きな表面張力の排流力を加えることができる。この湾曲面の上では、表面張力の排流力は、小さいが依然として役に立つことができる。局所的曲率半径が最小のところが凹面であれば、湾曲した第1の表面の端にメニスカスを保持することが可能であり得る。いくつかの実施形態では、次いで、蒸発によって表面に加えられるあらゆる熱負荷が、少なくとも熱負荷が加えられる位置では実質的に一定になるように、メニスカスがどこになるかということがより予測可能になるので、これは有利であり得る。
[0078] 第1の表面は、連続的に変化する半径で湾曲しており、この半径は表面に沿った変位とともに増加する。変位は、垂直成分および/または水平成分を有することができる。
[0079] 液体膜の流れ以外には湾曲面上の蒸発または凝縮がない場合、表面の曲率(κ=1/半径)は、望ましくはκ=As+Bという式のように長さとともに直線的に変化し、ここでAおよびBは定数である。蒸発または凝縮がある場合、表面の曲率(κ=1/半径)は、望ましくはκ=As2+Bs+Cという式のように長さとともに2次的に変化し、ここでA、BおよびCは定数である。
[0080] 本発明の一実施形態は、液浸リソグラフィ装置内の液浸液の位置を制御するために、表面上の液体の膜に対して表面張力の排流力を誘起する湾曲面を利用する。
[0081] 図6に、本発明の一実施形態の第1の表面が有利であり得る様々な位置が示されている。
[0082] 位置210は、投影システムPSの側面の表面の領域である。位置210は、液体閉じ込め構造体12と投影システムPSとの間に広がる液浸空間11からの液体のメニスカス200が投影システムPSと接触する領域にある。投影システムPSの下の基板Wおよび/または基板テーブルWTの移動が、位置210での投影システムPSの表面上のメニスカス200の位置の変化をもたらすことがある。メニスカス200の位置が、液浸空間11の方へ、例えば下方へ移動するとき、液体の膜が、投影システムPS上に、例えば少なくとも位置210の領域の一部分の上に残され得る。液体のそのような膜は蒸発することがあり、それによって投影システムPSに熱負荷を加える。望ましくは、投影システム上のメニスカス200の位置は一定である。しかし、投影システムPSの表面上のメニスカス200のいくらかの移動は不可避であり得る。このため、投影システムPS上のメニスカスの位置が安定していることが望ましい(すなわち、表面に対するメニスカスの移動ができるだけ小さいように概して同一の領域に配置される)。メニスカスの一定位置が得られないことを考慮して、表面上に残された液体のいかなる膜も、望ましくはできるだけ迅速に排出されるのが望ましい。そのため、表面張力の排流力が位置210で下方へ(液浸空間11の方向へ)作用するように湾曲する湾曲面を形成することは有利である。
[0083] 位置210は、投影システムPSの最終エレメントなどの液浸空間11を画定する投影システムPSの傾いた面の上にあってよい。位置210は、使用するとき、メニスカス200が投影システムPSから液体閉じ込め構造体12へ広がる投影システムの表面の領域にある。位置210は、液浸空間11の縁端部にある傾いた面の全長に沿った任意の位置にあってよい。
[0084] 2009年4月22日出願の米国特許仮出願第61/171,704号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)は、位置210に複数の保持機構を有するものを説明している。これらは、メニスカス200の位置の高さ変動を制限するのに役立つことができる。複数の突部211が領域210に存在する一実施例が、図8に示されている。複数の突部によって形成されたパターンが、例えば傾いた面上で光路を囲んでよい。この機構は、領域210の表面に形成された複数の凹部213でよい。凹部213は、突部211と交互に配置されてよい。複数の保持機構は、パターンを形成するように構成されてよく、均一な配置または不規則な配置でよい。それらは領域210の表面の上で繰り返す一連に配置されてよい。
[0085] 本発明の一実施形態は、図8に示されたものなど複数のメニスカス保持機構に適用することができる。これは、表面張力の排流力を生成するように湾曲した少なくとも2つの湾曲面を設けることにより達成される。
[0086] 図9の実施例では、突部211の下側面214は、液体を、突部211の間の凹部213から下方に突部211の外表面上へ排出するのを促進するように湾曲している。突部211の上部面212に鋭い隅部が存在し、それによって、その表面でのメニスカスの保持を助長する。表面212および214は、凹部213または突部211の側壁を少なくとも部分的に画定するものと見なすことができる。したがって、図9には、凹面および凸面の両方の湾曲面がある。一実施形態では、凹部213に関して、(図示のように)凸状曲面は、液浸空間11から凹状曲面より遠くにあってよく、あるいはその逆でもよい。凹状曲面および凸状曲面は、それぞれ凹部213の側壁を形成する。
[0087] 図10の実施形態では、突部211の上部面212は、図9の実施形態と同様に湾曲している。しかし、突部211の下側面214は、図9の実施形態に対して反対方向に湾曲している。したがって、各突部が隅部をもたらし、その上側のポイントおよび下側のポイントにメニスカスが保持され得る。図10実施形態では、凹状曲面だけが用いられる。他の実施形態と同様に、湾曲面の機構の1つまたは複数の利点には、蒸発が起きる液体領域が縮小され、液体の保持位置が画定され、したがって、再現可能な蒸発位置および画定された場所での液体の収集により、液位が経時的に変動するとき、ある期間にわたってより安定した蒸発負荷がもたらされることが含まれる。一実施形態では、凸状曲面だけが存在する。
[0088] 図11は、複数のメニスカス保持機構として使用することができる階段状構造体を示す。本発明の一実施形態は、図12に示されたものなどの構造体を形成するために、そのような階段状構造体に対して適用することができる。湾曲面は互いに隣接して配置され、それによって、それらの間に隆起部215を画定または形成する。各隆起部215での曲率半径は、メニスカスが隆起部215に保持されるように、小さいものである。液体膜のメニスカスが隆起部215の間にあると、湾曲面は、メニスカスがそれに加えられた力を有するような状態にある。付与力は、液体膜、したがってメニスカスが、次の隆起部215へ向かって下へ移動するように表面張力の排流成分を有する。
[0089] 図9、図10および図12は、領域210で使用することができる複数のメニスカス保持機構の実施形態を示すが、必ずしもこの通りでなくてよい。例えば、一実施形態では、表面張力の排流力を誘起する1つの湾曲面だけが領域210に存在するのでもよい。
[0090] 液体の膜に対して表面張力の排流力を誘起する湾曲面を用いることができる位置は、位置220にある。位置220は、投影システムPSの隅部にある。位置220は、実質的に水平な面と水平面に対してある角度をなす面との間の隅部にある。液浸液が位置220に達すれば、そこに貼り付くことができる。位置220で液浸液に対して表面張力の排流力を誘起する湾曲面を、この位置220に有することは有利である。
[0091] 一実施形態では、投影システムPSの最終エレメントの傾いた面の縁端部に、あるいはこの縁端部に隣接して位置230に湾曲面があってよい。液浸液を縁端部に捕えることができ、そのために、液体の膜に対して表面張力の排流力を誘起する湾曲面をこの位置に設けることは、例えば過度の冷却を避けることによって熱的回復にかかる時間をより短くするように、装置がドライモードに転換するように設定されて最終エレメントからの液体の高速排流が望まれるとき、特に有利であり得る。それに加えて、あるいはその代わりに、投影システムPSの最終エレメントの底面(水平面)の外端上に凸湾曲が設けられてよい。これは、液体層が最終エレメントから分離するのを防止するのに役立つ。結果として、これは、空間11内のより大きな液体流量を可能にする。結果として空間11内に生じるより高い液体の再生速度によって、擾乱が起きた後に、液体の光学的性質をより高速で回復することが可能になる。擾乱は、ずれた温度を有して表面が空間11の下の通るような基板Wのスキャン移動、または投影ビームによる空間11内の液体の加熱の結果であり得る。
[0092] 投影システムPS上の位置220および230に類似の隅部または縁端部を有する他のコンポーネントがあり得る。投影システムPS以外のコンポーネントの隅部または縁端部に表面張力の排流力を誘起する湾曲面を設けることは有利であり得る。一実施形態では、表面張力の排流力を誘起する湾曲面を、液体閉じ込め構造体12の頂部の隅部である位置240に適用することができる。一実施形態では、液体閉じ込め構造体12上の位置250は、表面張力の排流力を誘起する湾曲面を設けることが有利であり得る縁端部である。
[0093] 位置250は、液体閉じ込め構造体12の縁端部にあり得る、あるいは縁端部より液浸空間11に近い液体閉じ込め構造体12の表面の領域であり得る。位置250は、液浸液のメニスカス200を配置することができる液体閉じ込め構造体12の表面の領域であり得る。位置250での液体閉じ込め構造体12の表面は、縁端部より空間11の方へより近い場合、位置210での投影システムPSの表面に類似の特徴を有してよい。この領域内の位置250は、投影システムPS上の位置210と類似のやり方で前述のように扱うことができる。それに加えて、あるいはその代わりに、位置250は、投影システムPS上の位置230と同様に縁端部として扱うことができる。
[0094] 図13および図14は、表面張力の排流力を誘起する湾曲面が、基板Wを支持するように構成された基板テーブルWTの表面の一部分である実施形態を示す。基板テーブルWTは、例えば基板Wが基板テーブルWTに支持されたとき、抽出のために基板Wの縁端部のまわりの基板テーブルWTの間隙の中へ液浸液を通す1つまたは複数の開口および/または流出口の通路を有することができる。
[0095] 他のコンポーネントも、そのような開口および/または通路を有することができる。例えば、基板交換の間に2つのテーブル間で液浸空間11を移すために用いられる架橋面は、面に形成された間隙を有することができる。一実施形態では、間隙の両側の面は、測定テーブルおよび基板テーブルWTであり得る2つのテーブルの表面から形成される。一実施形態では、架橋面は、基板交換の間中、第1の基板テーブルWTおよび第2の基板テーブルWTなどの2つのテーブルの間に配置される橋である。この橋は、架橋面とテーブルの表面との間に形成された間隙を有することができる。
[0096] 間隙は、液浸液を通して抽出するための1つまたは複数の流出口を含むことができる。そのような流出口の開口および/または通路には、同様に、表面張力の排流力を誘起する湾曲面が備わっていてよい。例えば、2009年5月26日出願の米国特許仮出願第12/472,099号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)を見ると、間隙の間に流出する液浸液用の流出口の詳細を開示しており、この間隙は、液浸空間の下、例えば2つの基板テーブルの間および/または基板テーブルと別の基板テーブルへの橋との間を進む。湾曲面上の液体の膜に対して表面張力の排流力を誘起する湾曲面は、例えば米国特許仮出願第12/472,099号で説明された隅部に対して適用され得る。これらの面は、図13および図14に関して以下で説明されるものに類似でよい。これらの流出口に関して説明される湾曲面は、流出口を、液体が除去された状態に維持するのに役立つ。これは、流出口からの流体(特に気体)の安定した流れを助長するのに有利であり得る。
[0097] 図13および図14は、液浸液を通して抽出するための流出口を示す。流出口320は、基板Wの縁端部と基板Wが配置されている基板テーブルWTの凹部の縁端部との間の間隙330の間に漏れる液体を抽出するように設計されている。
[0098] 図13では、流出口320は、基板Wを支持する基板サポート300の下に設けられている。基板サポート300は、基板テーブルWTの一部分である。一実施形態では、基板サポート300は、いわゆるピンプルテーブルでよい。流出口320の通路310は、基板サポート300の下を導かれる。基板サポート300の外端の下側部に湾曲面が形成される。湾曲面により、湾曲面上にある液体の膜に対して表面張力の排流力が誘起される。これは、図13の位置260として示されている。したがって、この湾曲面は、流出口320への開口および/または流出口320の通路310に設けられる。この利点は、液体が位置260を過ぎて滑らかに流れることができることである。そうでなければ、液体が、基板サポート300の鋭い外側の下辺に貼り付くことがあり、それによって流出口320を部分的に、または完全に閉塞する。これは、流出口を通る流体の滑らかな流れを妨げる恐れがある。結果として、通路310を通る不均一な流速(すなわち時間とともに変動する流速)が生じることがある。滑らかでない流体抽出流れは、振動および/または不均一な冷却効果を有害にもたらすことがある。そのような無制御の現象は、液浸システムでは望ましくない。湾曲面の自動排出機能が、通路310内の残留液を低減または除去するという利点がある。これは、その位置における蒸発量を減少させる。その位置が基板Wに近く、局所的冷却をもたらすことがあるので、その位置での蒸発は特に望ましくない。さらに、残留液が通路310に残っていると、これが再ウェッティング、気泡発生をもたらすことがある。したがって、通路310内に液体がないときに液体閉じ込め構造体12が基板Wの縁端部を横切るのが最善である。位置260での湾曲面の使用は、この助けとなり得る。
[0099] 図14の実施形態は、流出口320の別の機構向けのものである。図14の実施形態では、流出口320は、基板テーブルWTの頂面の下に伸びることができる。流出口320の開口部に湾曲面を設けることができる。例えば、湾曲面は、基板サポート300の隅部によって形成される開口の位置270に設けることができる。その代わりに、あるいはそれに加えて、例えばポイント280で示されるような隅部で流出口の通路310に湾曲面が適用され得る。この機構は、図13に示された機構と同様に、通路の中への滑らかな流れが促進され得るので望ましい。
[0100] 上記で説明されたように、オールウェット液浸システムでは、液体は基板テーブルWTの縁端部の上を流れる。2009年5月8日出願の米国特許仮出願第61/176,802号(その全体が参照によって本明細書に組み込まれている)で説明されているように、オールウェット液浸リソグラフィ装置の基板テーブルWTの縁端部は、縁端部の上に液浸液の望ましい流れを助長するために湾曲していてよい。基板テーブルWTの縁端部の下面は、まずいことに、液浸液が縁端部から収集ドレインの中へ落下するのではなく、縁端部に付いているような状態であり得る。したがって、一実施形態では、図15に示されるように、湾曲面上の液体の膜に対して表面張力の排流力を誘起する湾曲面が、基板テーブルWTの下面の外端上の位置290に画定されてよい。位置290は、基板テーブルWTの縁端部の近くにあってよい。一実施形態では、位置290の少なくとも一部分は基板テーブルWTの下面の一部分であり、また、位置290の領域は、基板テーブルWTの縁端部によって部分的に画定され得る。一実施形態では、位置290は、湾曲面が位置220、230、270、280にあるように湾曲して形成された表面を有することができる。この表面は、1つの湾曲面、または本明細書で図12に関して説明されているような複数の湾曲面を有することができる。
[0101] 基板テーブルWTの縁端部の上をドレイン296の中へ流れる液浸液295のいくらかは、基板テーブルWTの下面上に集まることができる。位置290の湾曲面は、下面上の液浸液に加えられた重力に対して追加の力を加えることができ、その結果、液浸液が下面を離れて移動し、例えば落下し得る。
[0102] 本文中では、IC製造時におけるリソグラフィ装置の使用を具体的に参照することがあるが、本明細書に説明されたリソグラフィ装置が、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用の誘導パターンおよび検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造など、他の用途を有し得ることを理解されたい。当業者なら、そのような代替用途の文脈では、本明細書における用語「ウェーハ」または「ダイ」のいかなる使用も、それぞれ、より一般的な用語「基板」または「ターゲット部分」と同義なものと見なしてよいことを理解するであろう。本明細書で言及する基板は、露光前または露光後に、例えばトラック(一般に基板にレジストの層を与え、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツールおよび/またはインスペクションツール内で処理されてよい。適用可能であれば、本開示は、そのようなものおよび他の基板処理ツールに適用されてよい。その上、基板は、例えば多層ICを作成するために複数回処理されてよく、そのため、本明細書に用いられる用語の基板は、既に複数の処理層を含む基板も意味してよい。
[0103] 本明細書で用いられる用語「放射」および「ビーム」は、紫外線(UV)放射(例えば365nm、248nm、193nm、157nmまたは126nmの、またはそのくらいの波長を有するもの)を含むすべてのタイプの電磁放射を包含する。用語「レンズ」は、文脈上可能であれば、屈折性光学コンポーネントおよび反射性光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントの任意のものまたはその組合せを意味してよい。
[0104] 以上、本発明の特定の実施形態について説明したが、本発明は、説明されている方法以外の方法で実践することも可能であることは理解されよう。例えば、本発明の実施形態は、上記で開示した方法を記述した機械読取可能命令の1つまたは複数のシーケンスを含んだコンピュータプログラムの形態を取ることができ、あるいはこのようなコンピュータプログラムを記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体記憶装置、磁気ディスクまたは光ディスク)の形態を取ることができる。さらに、機械読取可能命令は、複数のコンピュータプログラムで実施することができる。これら複数のコンピュータプログラムは、1つまたは複数の異なるメモリおよび/またはデータ記憶媒体上に記憶することができる。
[0105] 本明細書において説明されているコントローラの各々またはそれらの組合せは、1つまたは複数のコンピュータプログラムを、リソグラフィ装置の少なくとも1つのコンポーネントの中に配置されている1つまたは複数のコンピュータプロセッサによって読み出すことにより動作することができる。これらのコントローラの各々、あるいはそれらの組合せは、信号を受け取り、処理し、かつ、送信するのに適した任意の構成を有している。1つまたは複数のプロセッサは、これらのコントローラのうちの少なくとも1つと通信するように構成されている。例えば、コントローラの各々は、前述の方法のための機械読取可能命令を含んだコンピュータプログラムを実行するための1つまたは複数のプロセッサを含むことができる。これらのコントローラは、このようなコンピュータプログラムを記憶するためのデータ記憶媒体および/またはこのような媒体を受け入れるためのハードウェアを含むことができる。したがって、1つまたは複数のコンピュータプログラムの機械読取可能命令に従って1つまたは複数のコントローラを動作させることができる。
[0106] 本発明の1つまたは複数の実施形態は、あらゆる液浸リソグラフィ装置に適用することができ、具体的には、上記で言及したタイプ、ならびに液浸液が、槽の形式で供給されるもの、基板の局所的な表面領域上にのみ供給されるもの、または閉じ込められていないものに適用することができるが、他を除外するものではない。非閉じ込め型機構では、液浸液が、基板および/または基板テーブルの表面の上を流れることができ、その結果、基板テーブルおよび/または基板の遮蔽物がない表面の実質的に全体が濡れる。そのような非閉じ込め型液浸システムでは、液体供給システムは、液浸流体を閉じ込めなくてよく、あるいは、ある割合の液浸液を閉じ込めるが実質的に完全に閉じ込めるわけではない閉じ込めを設けてよい。
[0107] 本明細書で企図される液体供給システムは、広義に解釈されるべきである。特定の実施形態では、この液体供給システムは、投影システムと基板および/または基板テーブルとの間の空間に液体を供給する機構または構造体の組合せであり得る。この液体供給システムは、1つまたは複数の構造体、1つまたは複数の液体開口、1つまたは複数の気体開口あるいは2相流用の1つまたは複数の開口の組合せを含む1つまたは複数の流体開口を備えることができる。開口は、それぞれが、液浸空間への流入口(もしくは流体ハンドリング構造体からの流出口)または液浸空間からの流出口(もしくは流体ハンドリング構造体への流入口)であり得る。一実施形態では、空間の表面は基板および/または基板テーブルの一部分でよく、あるいは空間の表面が完全に基板および/または基板テーブルの表面を覆ってよく、あるいは空間が基板および/または基板テーブルを包んでよい。この液体供給システムは、液体の、位置、量、質、形状、流速またはその他の特徴を制御するために、1つまたは複数のエレメントを任意選択によりさらに含むことができる。
[0108] 一実施形態では、湾曲面上の液浸液の膜に対してある方向に表面張力の排流力が作用するように湾曲した湾曲面を備える液浸リソグラフィ装置が提供される。
[0109] 表面張力の排流力は、膜中の液体に対して、液体の膜中の液体をその方向に移動させるように重力とともに作用することができる。湾曲面の幾何形状は、排流力の方向が、投影システムと基板との間で画定された液浸空間に向かうものでよい。湾曲面の幾何形状は、排流力の方向が、液体抽出用の開口に向かうものでよい。湾曲面は、液浸液が、湾曲面に対して90°未満、望ましくは70°未満、より望ましくは50°未満、あるいは最も望ましくは30°未満の静的接触角を有するものでよい。湾曲面は、液浸リソグラフィ装置のコンポーネントの隅部に、あるいは隅部に隣接して配置することができる。湾曲面の最小曲率半径は1mm未満でよく、望ましくは0.1mm未満であり、あるいは最も望ましくは0.01mm未満である。その方向における湾曲面の全長は、0.05mm〜20mmの範囲、望ましくは0.05mm〜2mmの範囲、最も望ましくは0.05mm〜1mmの範囲から選択されてよい。
[0110] 液浸リソグラフィ装置は、表面張力の排流力が追加面上の液浸液の膜に対して追加の方向に作用するように、湾曲した、追加の方向に曲率半径が縮小する追加面をさらに備えることができる。湾曲面および追加面は、複数のメニスカス保持機構を備えた保持表面の一部分でよい。湾曲面は凹面でよく、追加面は凸面である。湾曲面および追加面は隣同士でよく、それらの間に隆起部を形成する。湾曲面および追加面は、少なくとも部分的に凹部の側壁を画定することができる。
[0111] 湾曲面は、投影システムの最終エレメントの傾いた面上にあってよい。湾曲面は、実質的に水平な面と、液浸リソグラフィ装置の投影システムの水平面に対してある角度をなす面との間の隅部にあってよい。湾曲面は、投影システムの最終エレメントの傾いた面の縁端部にあってよく、あるいはこの縁端部に隣接してあってよい。湾曲面は、投影システムの最終エレメントと基板との間の液浸空間に液体を閉じ込める液体閉じ込め構造体上にあってよい。湾曲面は、投影システムの最終エレメントと基板との間に画定され、使用するとき液浸液が供給される液浸空間の縁端部にあってよく、あるいはこの縁端部に隣接してあってよい。湾曲面は、基板を支持するための基板テーブル上にあってよい。
[0112] 湾曲面は、液浸液を通して抽出するための開口および/または流出口の通路を少なくとも部分的に画定することができる。流出口は、基板の縁端部と基板を支持する基板テーブルとの間の間隙を通過する液浸液用のものでよい。流出口は、基板テーブルの縁端部と第2の基板テーブルの縁端部との間の間隙または第1の基板テーブルと第2の基板テーブルとの間の架橋面を通過する液体用の流出口でよい。
[0113] 液浸装置は、液浸液が、閉じ込められることなく、使用するとき基板テーブル上に支持された基板の頂面を実質的に覆うオールウェットの装置でよく、基板テーブルの湾曲面を備えた縁端部の下面の上を、使用するとき液浸液が流れる。湾曲面は、第1の方向に縮小する局所的曲率半径を有することができる。湾曲はAdamek湾曲でよい。
[0114] 投影システムの最終エレメントと基板テーブルおよび/または基板テーブルに支持された基板との間の液浸空間に液体を閉じ込めるように構築および構成された液体閉じ込め構造体が提供される。この液体閉じ込め構造体は、湾曲面上の液浸液の膜に対してある方向に表面張力の排流力が作用するように湾曲した湾曲面を備える。
[0115] 液浸リソグラフィ装置用の投影システムの最終エレメントが提供される。この最終エレメントは、湾曲面上の液浸液の膜に対してある方向に表面張力の排流力が作用するように湾曲した湾曲面を備える。液浸リソグラフィ装置内に基板を支持するように構成された基板テーブルが提供される。この基板テーブルは、湾曲面上の液浸液の膜に対してある方向に表面張力の排流力が作用するように湾曲した湾曲面を備える。
[0116] 以上の説明は、実例による説明を意図したものであり、本発明を限定するものではない。したがって、以下で詳述される特許請求の範囲から逸脱することなく、説明された本発明に対して修正を加えることができることは当業者には明らかであろう。