しかし、上記のようにXステージやYステージを設けた治具を有する加工機を用いた場合、ステージを用いた加工位置の調整工程で、母型やステージの重心位置が治具の回転中心から外れてしまい十分な加工精度が得られなくなる。ここで、回転軸のまわりの回転バランスを調整する機構を設けることもできるが、加工位置の調整ごとに回転バランスの調整をとり直す必要があり、迅速な加工が困難で高精度の加工も困難である。なお、上記の加工機では、加工原点調整のための基準位置の位置出しを位置決めピンで行っているため、数μm程度の精度でしか原点を合わせることができない。
そこで、本発明は、加工位置の調整工程で重心位置のずれが発生せず或いは発生しにくく、回転バランスの調整が容易であり、迅速で高精度の加工を可能にする加工装置及び加工方法を提供することを目的とする。
また、本発明は、かかる加工装置等を用いて作製される成形金型、及び、それによって得られる中間成形体及び光学素子を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る加工装置は、複数の加工予定領域が所定点を中心とする複数の同心円のそれぞれの円周上に配置されている型部材を加工するための加工装置であって、型部材を支持するとともに駆動装置に駆動されて型部材を回転させるステージ装置を備え、ステージ装置は、駆動装置の回転軸に平行な回動軸のまわりに型部材を回転調整可能にする第1調整ステージと、第1調整ステージを支持するとともに第1調整ステージの回動軸に直交する方向に移動して第1調整ステージの回動軸と駆動装置の回転軸との間隔の変更をと行う直動型の第2調整ステージと、駆動装置の回転軸を挟んで第1調整ステージの回動軸側と対向する側に配置され、第2調整ステージの移動に伴って変化する駆動装置の回転軸まわりの重量バランスを調整可能にするバランス調整装置と、を有し、第1調整ステージの回転軸を、駆動装置の回転軸とが、第2調整ステージの移動方向に平行な直線上に位置することを特徴とする。
上記加工装置では、ステージ装置が、回動軸のまわりに型部材を回転させることによって型部材の加工位置を回転調整可能にする第1調整ステージと、型部材の位置を調整するための直動型の第2調整ステージとを有するので、第1調整ステージによって同一円周上に配置される加工予定領域を順次加工することができ、第2調整ステージによって1つの円周上から別の円周上に移動することができる。これにより、複数の円周上に配置される複数の加工予定領域を順次簡易に加工することができ、所望の配列の加工面を型部材上に形成することができる。ここで、第1調整ステージの可動部及び型部材を合わせた重心が回動軸上にあれば、同一円周上に配置される加工予定領域を順次加工する際に、駆動装置の回転軸のまわりの重量バランスが保たれるので、加工領域を同心円上で変えるたびに重心を合わせ直す必要が無く、迅速で高精度の加工が可能になる。
また、ステージ装置が、少なくとも第2調整ステージを利用した型部材の位置の調整に伴って変化する重量バランスを調整可能にするバランス調整装置を有することにより、1つの円周上の加工予定領域から別の円周上の加工予定領域に移動する際に、駆動装置の回転軸のまわりの重量バランスを簡易に保つことができるようになる。
本発明の具体的な態様では、上記加工装置において、ステージ装置が、型部材の位置を第2調整ステージとは異なる方向に調整するための直動型の第3調整ステージを有する。この場合、駆動装置の回転軸とステージ装置の回動軸とを一致させること、或いはこれらを第2調整ステージの駆動方向に離間して配置することが容易になる。
また、本発明の別の態様では、第2調整ステージと第3調整ステージとは、駆動装置の回転軸に垂直であって互いに垂直な方向に、型部材の位置を調整可能である。この場合、型部材の位置や加工位置の調整作業が簡易で効率的なものとなる。
本発明のさらに別の態様では、第1調整ステージが、型部材の回転量を検出する第1センサを備え、第2調整ステージは、型部材の移動量を検出する第2センサを備える。この場合、第1調整ステージや第2調整ステージの変位を管理して再現性の高い高精度な加工を可能にする。
本発明のさらに別の態様では、型部材と切削工具とを、少なくともステージ装置の回転軸に垂直な方向に関して相対的に移動させる加工用ステージをさらに備える。この場合、型部材の適所に配置された加工予定領域において軸対称な形状を有する複数の加工面を迅速に形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、第1及び第2調整ステージを構成する少なくとも1つのテーブル部材が、線膨張係数が−2×10−6〜5×10−6〔1/K〕であるという条件と、密度が1.5〜5.0〔g/cm3〕であるという条件との少なくとも一方を満たす材料で形成される。線膨張係数が上述の範囲内にある場合、加工によって発熱して温度変動が大きくなっても型部材の配置変化を少なくできるので、加工面精度を高めることができる。また、密度が上述の範囲内にある場合、ステージ装置を軽量化できるので、重量バランスの調整も比較的容易になる。
本発明のさらに別の態様では、第1及び第2調整ステージを構成するテーブル部材は、セラミックス、チタン合金、及びインバーのうち少なくとも1つ以上の材料で形成される。ここで、セラミックスは、軽量であり、高剛性を有し、低線膨張係数を有するという特徴をもつ。また、チタン合金は、軽量であるという特徴をもつ。インバーは、低線膨張係数を有するという特徴をもつ。
さらに別の態様では、駆動装置によって型部材を回転させつつ加工予定領域に対して加工面として転写光学面を加工する。これにより、転写光学面の高精度で高速の加工が可能になる。
さらに別の態様では、型部材が、エネルギー硬化性樹脂の成形金型として加工される。エネルギー硬化性樹脂による光学面等の成形では、樹脂粘度が低く、成形面をアレイ状に並べてもどのキャビティにも均等に圧力がかかるので、極めて良好に多数個取りが実現できる。このような成形を実現する金型の成形面の加工には、アレイ状に並んだ成形面を効率よく、かつ、高精度に加工する必要があり、本発明の加工装置が好適である。本発明の加工装置を特に光学素子アレイの加工装置として活用する場合、アレイ状の光学面成形面を高精度で効率よく加工することができ、高精度の光学素子アレイを得ることができる。
本発明に係る加工方法は、複数の加工予定領域が所定点を中心とする複数の同心円のそれぞれの円周上に配置されている型部材の加工方法であって、型部材を支持するとともに駆動装置に駆動されて型部材を回転させるステージ装置のうち、駆動装置の回転軸に平行な回動軸のまわりに型部材を回転させる第1調整ステージに型部材を固定する工程と、第1調整ステージを支持するとともに第1調整ステージの回動軸に直交する方向に移動して第1調整ステージの回動軸と駆動装置の回転軸との間隔の変更を行う直動型の第2調整ステージを動作させて、第1調整ステージの回転軸と駆動装置の回転軸とを一致させた後、複数の同心円のうちのいずれか1つを駆動装置の回転軸上に移動させる工程と、ステージ装置及び型部材の重心が、駆動装置の回転軸上となるようにバランス調整を行う工程と、第1調整ステージによって、所定点のまわりの同一円周上に配置されている複数の加工予定領域のいずれかを加工位置に位置決めする工程と、加工位置に位置決めされた加工予定領域に対して加工を施す工程と、加工位置に位置決めされた加工予定領域の加工が終了した後、第1調整ステージを回転させて他の加工予定領域の中心を駆動装置の回転軸と一致させて加工を施す工程と、一つの同心円の円周上の加工予定領域のすべての加工が終了した後、第2調整ステージを一方向に直動させることによって型部材を変位させ、所定点を中心とする別の同心円を駆動装置の回転軸と一致させる工程と、第2調整ステージによって型部材を変位させた後に、ステージ装置及び型部材の重心が駆動装置の回転軸上となるようにバランス調整を行う工程と、を備える。ここで、加工位置に位置決めするとは、加工予定領域の中心が回転軸の軸上に位置するように位置決めすることを意味する。
上記加工方法では、第1調整ステージによって同一円周上に配置される加工予定領域を順次加工することができる。この際、第1調整ステージの可動部及び型部材を合わせた重心が回動軸上にあれば、駆動装置の回転軸のまわりの重量バランスが保たれ、迅速で高精度の加工が可能になる。
また、少なくとも第2調整ステージを利用した型部材の位置の調整に伴って変化する重量バランスを調整することにより、1つの円周上の加工予定領域から別の円周上の加工予定領域に移動する際に、駆動装置の回転軸のまわりの重量バランスを簡易に保つことができるようになる。
具体的な態様では、上記加工方法において、第1調整ステージの可動部及び型部材の重心は、回動軸上にあり、第1調整ステージによって型部材が回転した場合にもステージ装置の重心が回動軸上に保持される。
別の態様では、複数の加工予定領域が所定点を中心とする複数の円周上に配置されている型部材を、ステージ装置に設けた直動型の第2調整ステージによって変位させることによって、1つの円周上から別の円周上に加工位置を移動させる。この場合、複数の円周上に配置される複数の加工予定領域を順次簡易に加工することができる。
さらに別の態様では、第2調整ステージによって型部材を変位させた後に、駆動装置によって型部材が回転した場合にもステージ装置の重心が保持されるようにバランス調整を行う工程を含む。この場合、駆動装置の回転軸のまわりの重量バランスが保たれるので、迅速で高精度の加工が可能になる。
さらに別の態様では、前記型部材の加工予定領域に予め粗加工した面を設けてある。
さらに別の態様では、型部材を回転させつつ加工予定領域に対して加工面として転写光学面を加工する。
さらに別の態様では、型部材は、エネルギー硬化性樹脂の成形金型として加工される。
本発明に係る成形金型は、上述の加工装置を用いて加工創製された加工面に対応する転写光学面を有する。この場合、凹面その他の各種転写光学面を有する成形金型を、迅速に高精度で加工することができる。
光学素子は、上述の成形金型を用いて成形され転写光学面に対応する光学面を有する。この場合、高精度の光学素子を低コストで得ることができる。
本発明に係る中間成形体は、上述の加工装置を用いて加工創製された転写光学面を有する成形金型により成形された状態で、転写光学面から成形された光学面を有する一つの光学素子と、一つの光学素子に隣接する光学素子とが樹脂材により連結されている。
本発明に係る光学素子は、上述の中間成形体を切断することによって製造される。つまり、各光学素子は、同一の成形工程を経て得たものとなる。
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る加工装置を図面を用いて説明する。図1は、レンズアレイである中間成形体を成形するための成形金型の転写光学面を切削加工する加工装置の構造を概念的に説明するブロック図である。
図1に示すように、加工装置10は、ワークW及び切削工具20を支持するNC駆動機構30と、NC駆動機構30の動作を制御する駆動制御装置40と、装置全体の動作を統括的に制御する主制御装置90とを備える。
NC駆動機構30は、台座31上に第1加工ステージ32と第2加工ステージ33とを載置した構造の駆動装置である。ここで、第1加工ステージ32は、第1可動部35を支持しており、この第1可動部35は、ステージ装置37を介してワークWを間接的に支持している。第1加工ステージ32は、ワークWを、例えばz軸方向に沿った所望の位置に所望の速度で移動させることができる。また、第1可動部35は、ステージ装置37を介してワークWをz軸に平行な水平回転軸RAのまわりに所望の速度で回転させることができる。一方、第2加工ステージ33は、第2可動部36を支持しており、この第2可動部36は、切削工具20を支持している。第2加工ステージ33は、第2可動部36及び切削工具20を支持して、これらを例えばx軸方向に沿った所望の位置に所望の速度で移動させることができる。また、第2可動部36は、切削工具20を支持して、これを例えばy軸方向に沿った所望の位置に所望の速度で移動させることができる。また、第2可動部36は、切削工具20を、例えばその先端点を通ってy軸に平行な鉛直旋回軸のまわりに所望の角度量だけ回転させることもできる。以上において、第1加工ステージ32と第2加工ステージ33と第2可動部36とは、切削工具20を支持して適宜移動させる加工用ステージとして機能する。
駆動制御装置40は、高精度の数値制御を可能にするものであり、NC駆動機構30に内蔵されたモータや位置センサ等を主制御装置90の制御下で駆動することによって、第1及び第2加工ステージ32,33や、第1及び第2可動部35,36を目的とする状態に適宜動作させる。例えば、第1及び第2加工ステージ32,33によって、切削工具20先端の加工点を低速でxz面に平行な面内に設定した所定の軌跡に沿ってワークWに対して相対的に移動(送り動作)させつつ、第1可動部35によって、ワークWを水平回転軸RAのまわりに高速で回転させることができる。結果的に、駆動制御装置40の制御下で、NC駆動機構30を高精度の旋盤として動作させることができる。なお、駆動制御装置40は、ステージ装置37に設けた後述する調整ステージの位置センサとしてのエンコーダ等を主制御装置90の制御下で駆動することによって、ステージ装置37の動作状態を監視することができる。
図2は、図1に示すNC駆動機構30を構成する第1可動部35等の構造を説明する斜視図である。また、図3は、図2に示す第1可動部35に設けたステージ装置37の正面図であり、図4は、図3に示すステージ装置37のXZ面に関する断面図であり、図5は、ステージ装置37のYZ面に関する断面図である。図6は、ステージ装置37の斜視図であり、図7は、ステージ装置37のθ調整ステージの構造を説明する分解斜視図であり、図8は、ステージ装置37のY調整ステージの構造を説明する分解斜視図であり、図9は、ステージ装置37のX調整ステージの構造を説明する分解斜視図である。なお、XY軸は、ステージ装置37を基準とするものであり、第1可動部35の動作に伴って水平回転軸RAのまわりに回転する。
以上の図からも明らかなように、第1可動部35に固定されたステージ装置37は、第1可動部35の回転部35a上に固定されており、回転部35a側から順に、X調整ステージ51と、Y調整ステージ53と、θ調整ステージ55とを順に積層した構造を有する。θ調整ステージ55に設けた固定板55aには、円柱状のワークWが固定されており、回動軸PAのまわりに回転可能になっている。
X調整ステージ51は、直動型の第2調整ステージであり、図8,9等に示すように、第1テーブル部材51aと、第2テーブル部材51bと、リニアガイド51cと、微動装置51dと、エンコーダ装置51eと、固定装置51fと、バランス調整部51hとを備える。第1テーブル部材51aは、ボルト等の締結具61aを利用して回転部35aに固定されている。第2テーブル部材51bは、リニアガイド51cを介して、第1テーブル部材51a上でX方向に移動可能に支持されている。この際、第2テーブル部材51bに形成された突起63aは、第1テーブル部材51aに形成された溝63bに嵌合する。リニアガイド51cは、上述の突起63a及び溝63bの他に、一対のX軸用ローラケージ63cと、アジャスタ63dとを含んで構成され、一方のX軸用ローラケージ63cは、第1テーブル部材51aの溝63bの側壁に直接取り付けられ、他方のX軸用ローラケージ63cは、アジャスタ63dを介して第1テーブル部材51aの溝63bの側壁に間接的に取り付けられる。アジャスタ63dは、楔状の固定部材63fと可動部材63gとを逆方向に組み合わせたものであり、可動部材63gのX方向の位置を調整し支持部材63hを固定することでX軸用ローラケージ63cのY方向の位置すなわちリニアガイド51cの予圧を調整することができる。微動装置51dは、第1テーブル部材51aの+X方向の端部側に固定されるホルダ65aと、駆動用のマイクロメータ65bと、第2テーブル部材51bの+X方向の端部に固定された被駆動部材65cとを備えている。マイクロメータ65bを手動で操作することにより、第1テーブル部材51aに対する第2テーブル部材51bのX方向の位置を微調整することができる。なお、マイクロメータ65bを例えば電動化することでX調整ステージ51の動作をより自動化することができる。エンコーダ装置51eは、第1テーブル部材51a側に固定された棒状のエンコーダ本体67aと、第2テーブル部材51b側に固定されたリードヘッド67bとを備える第2センサである。エンコーダ装置51eは、第2テーブル部材51b延いてはワークWを固定した固定板55aの位置(X座標)を監視することができる。固定装置51fは、第1テーブル部材51a側に固定されX方向に延びるTスロット61cと、Tスロット61c中のナット61dと、第2テーブル部材51b側からねじ込まれナット61dと螺合する固定用ネジ61eとを備える。固定用ネジ61eは、ステージ装置37の外部から締めたり緩めたりすることができ、微動装置51dによって第1テーブル部材51aに対する第2テーブル部材51bのX方向の位置を微調整した段階で、固定用ネジ61eの締め付けによって固定装置51fによる固定を達成することで、第1テーブル部材51aに対して第2テーブル部材51bを精密に位置決めした状態で固定することができる。バランス調整部51hは、可動部69aと、バランスウエイト69bとを備えるバランス調整装置である。このうち、可動部69aは、前述のTスロット61c中に可動に配置されるナット61jと、ナット61jと螺合する固定用ネジ61kとを備え、第2テーブル部材51bの固定後にX方向にスライド移動させることで、加工駆動用の水平回転軸RAのまわりの回転バランスを調整できるようになっている。バランスウエイト69bは、複数のネジ孔61mと複数のヘッド部収納穴61nとを一組として有しており、複数のバランスウエイト69bを交換しつつ積層して固定することができるようになっている。なお、第1テーブル部材51aの側面にも、ネジ孔61pが設けられており、水平回転軸RAのまわりの回転バランスを追加的に調整できるようになっている。
Y調整ステージ53は、直動型の第3調整ステージであり、図7,8等に示すように、第2テーブル部材51bと、第3テーブル部材53bと、リニアガイド53cと、微動装置53dと、固定装置53fとを備える。第2テーブル部材51bは、X調整ステージ51と兼用されており、X方向に摺動する。第3テーブル部材53bは、リニアガイド51cを介して、第2テーブル部材51b上でY方向に移動可能に支持されている。この際、第3テーブル部材53bに形成された突起73a(図4参照)は、第2テーブル部材51bに形成された溝73bに嵌合する。リニアガイド53cは、上述の突起73a及び溝73bの他に、一対のX軸用ローラケージ73cと、アジャスタ73dとを含んで構成され、一方のX軸用ローラケージ73cは、第2テーブル部材51bの溝73bの側壁に直接取り付けられ、他方のX軸用ローラケージ73cは、アジャスタ73dを介して第2テーブル部材51bの溝73bの側壁に間接的に取り付けられる。アジャスタ77dは、X調整ステージ51のアジャスタ67dと同様の構造を有し、固定部材73fと可動部材73gと支持部材73hとを有する。このアジャスタ77dにより、リニアガイド53cの予圧を調整することができる。微動装置53dは、第2テーブル部材51bの−Y方向の端部側に固定されるホルダ75aと、駆動用のマイクロメータ75bと、第3テーブル部材53bの−Y方向の端部に固定された被駆動部材75cとを備えている。マイクロメータ75bを手動で操作することにより、第2テーブル部材51bに対する第3テーブル部材53bのY方向の位置を微調整することができる。なお、マイクロメータ75bを例えば電動化することでY調整ステージ53の動作をより自動化することができる。第2テーブル部材51bの四隅に形成された4つのネジ孔71cと、第3テーブル部材53bに対応して形成されY方向に長い長穴71dと、第3テーブル部材53b側からねじ込まれネジ孔71cと螺合する固定用ネジ71eとを備える。固定用ネジ71eは、ステージ装置37の外部から締めたり緩めたりすることができ、微動装置53dによって第2テーブル部材51bに対する第3テーブル部材53bのY方向の位置を微調整した段階で、固定用ネジ71eの締め付けることで、第2テーブル部材51bに対して第3テーブル部材53bを精密に位置決めした状態で固定することができる。この際、第3テーブル部材53bの移動量を小さくしてあるので、長穴71d内で固定用ネジ71eのY方向の移動を許容するだけで、第2テーブル部材51bに対する第3テーブル部材53bのY方向への変位が許容される。なお、各長穴71dに隣接してより大きな長穴71hが形成されている。この長穴71hは、第3テーブル部材53b越しに固定用ネジ61eを締めたり緩めたりする際に利用される。
θ調整ステージ55は、回転型の第1調整ステージであり、図6,7等に示すように、第3テーブル部材53bと、第4テーブル部材55bと、軸受け部55cと、エンコーダ装置55eと、固定装置55fとを備える。第3テーブル部材53bは、Y調整ステージ53と兼用されており、XY面内で摺動する。第4テーブル部材55bは、軸受け部55cを介して、第3テーブル部材53b上で回動軸PAのまわりに回転可能に支持されている。この際、軸受け部55cの外筒83aは第3テーブル部材53bに固定され、内筒部材83bは第4テーブル部材55bに固定されている。さらに、軸受け部55cは、軸まわりの回転のみならず軸方向の移動を許容するものであり、第3テーブル部材53b上で回動軸PAのまわりに第4テーブル部材55bを滑らかに回転させることができるとともに、第3テーブル部材53bに対して第4テーブル部材55bを当接させたりわずかに離間させたりできるようになっている。エンコーダ装置55eは、第4テーブル部材55b側に固定用ネジ81aによって固定された環状のエンコーダ本体87aと、第3テーブル部材53b側に固定されたリードヘッド87bとを備える第1センサである。エンコーダ装置55eは、第4テーブル部材55b延いてはワークWを固定した固定板55aの回転位置(角度θ)を監視することができる。固定装置55fは、第3テーブル部材53b側に固定されX方向に延びるTスロット81cと、Tスロット81c中のリング状ナット81dと、第4テーブル部材55b側からねじ込まれリング状ナット81dと螺合する固定用ネジ81eとを備える。固定用ネジ81eは、固定板55aに設けた開口81fを介してステージ装置37の外部から締めたり緩めたりすることができ、第3テーブル部材53bに対する第4テーブル部材55bの回動軸PAのまわりの回転位置を微調整した段階で、固定用ネジ81eの締め付けによって固定装置55fによる固定を達成することで、第3テーブル部材53bに対して第4テーブル部材55bを精密に位置決めした状態で固定することができる。第4テーブル部材55bには、固定板55aが固定用ネジ81gによって固定されており、固定板55aには、加工対象であるワークWが固定用ネジ81hによって固定されている。なお、ワークWは、射出成形のための型部材である。ワークWの表面には、多数の加工面からなる加工パターンDPが形成されている。
なお、以上で説明した各調整ステージ51,53,55を構成するテーブル部材51a,51b,53b,55bには、空洞部HOが形成されており、各調整ステージ51,53,55の軽量化が図られている。
また、各調整ステージ51,53,55のうち重量的な割合が大きなテーブル部材51a,51b,53b,55bについては、インバー、チタン合金、セラミックス等の材料で形成される。これらの材料のうちインバー、セラミックス等は、線膨張係数を小さくでき(具体的には−2×10−6〜5×10−6〔1/K〕)、ワークWに対する連続的な加工によって温度上昇が生じても、温度上昇にともなう調整ステージ51,53,55の形状変化等を少なくすることができるので、加工パターンDPの加工精度を例えば0.1μm程度まで向上させることができる。また、これらの材料のうちチタン合金、セラミックス等は、密度を小さくでき(具体的には1.5〜5.0〔g/cm3〕)、調整ステージ51,53,55を軽量化でき、水平回転軸RAのまわりの重量バランスの調整も比較的容易になる。なお、セラミックスについては、特にサイアロンや窒化珪素、次に炭化珪素等の使用が、軽量化や高剛確保の観点で望ましい。
以下の表1は、テーブル部材51a,51b,53b,55bを作製するための材料の候補の物性を一覧にしたものである。なお、SUS304は通常用いられるステンレス鋼であり、比較のために掲載している。
以上の表1にあるステンレスインバーとは、50原子%以上となる主成分がFeであって、5原子%以上を含む付随的材料がCoと、Crと、Niとの少なくとも1つである合金材料全てを指す。ステンレスインバーの線膨張係数は、室温で通常−2.0×10
−6〜2.0×10
−6〔1/K〕である。このステンレスインバーにはコバールも含まれ、コバールの線膨張係数は、室温で5×10
−6〔1/K〕以下である。ステンレスインバーは、線膨張係数がステンレス鋼の12%と小さいため、温度変動が加工位置の変化に及ぼす影響が小さく、加工形状精度及び加工位置精度を向上させることができる。また、ステンレスインバーは、耐候性があり、防錆処理を施さなくてもよいという利点がある。
なお、ステンレスインバーに代えてインバーやスーパーインバーを用いることもできる。ここで、インバー材とは、Feと、Niとを含む合金であって、36原子%のNiを含む鉄合金であるが、その線膨張係数は、室温で通常1×10−6〔1/K〕以下である。また、スーパーインバー材とは、Feと、Niと、Coとを少なくとも含む合金であって、5原子%以上のNiと、5原子%以上のCoとをそれぞれ含む鉄合金であり、その線膨張係数が室温で通常0.4×10−6〔1/K〕程度と、インバーよりもさらに熱膨縮しにくい。
チタン合金は、α−β合金(Ti−6Al−4V)と、β合金(Ti−15V−3Cr−3Al−3Sn)とを含む。チタン合金の密度は、4.4〔g/cm3〕程度である。チタン合金は、密度がステンレス鋼の50%程度と小さいため、テーブル部材51a,51b,53b,55bすなわちステージ装置37を軽量化することができる。これにより、加工時にステージ装置37にかかる遠心力が低減され、ステージ装置37の回転バランスの調整が容易になる。
セラミックスの密度は、2.0〜4.0〔g/cm3〕程度である。つまり、セラミックスは、密度がステンレス鋼の40%程度と小さいため、ステージ装置37を軽量化することができる。これにより、加工時にステージ装置37にかかる遠心力が低減され、ステージ装置37の回転バランスの調整が容易になる。また、セラミックスのなかでも、窒化珪素、サイアロン等の線膨張係数は、室温で通常1.3×10−6〔1/K〕以下である。つまり、これらのセラミックスは、線膨張係数がステンレス鋼の約8%と小さいため、温度変動が加工位置の変化に及ぼす影響が小さく、加工形状精度及び加工位置精度を向上させることができる。なお、サイアロンは、窒化珪素にアルミナやシリカなどを固溶させて作るファイン・セラミックスであり、高剛性、低熱膨張、及び耐食性に優れている。
図10は、ワークWの表面の加工パターンDPとその加工手順とを説明するための図であり、図1等に示す加工装置10によって得た加工パターンDPを例示している。図示の加工パターンDPは、2次元的に配列された多数の加工面又は加工予定領域として、ワークWの中心を共通の中心とする仮想的な切替用同心円S1,S2,S3,…上に、転写光学面T11,T12,T13,…T1mと、転写光学面T21,T22,T23,…,T2mと、転写光学面T31,…とを有している。まず、図2等に示すX調整ステージ51及びY調整ステージ53の調整により、図1等に示す水平回転軸RAに対して回動軸PAが−X方向にずれて平行に配置されている場合を考える。この場合、X調整ステージ51の調整と、θ調整ステージ55の調整とにより、例えば転写光学面T11の中心を水平回転軸RA上に配置することができる。つまり、転写光学面T11を形成すべき加工予定領域が、水平回転軸RAを中心とする所定サイズの円筒空間内にある加工位置に位置決めされて配置される。この状態において、第1可動部35を適宜動作させることにより、ワークWを転写光学面T11の中心のまわりに回転させることができる。よって、ワークWの表面にまだ転写光学面T11が形成されていない場合、第2加工ステージ33や第2可動部36に支持された切削工具20により、ワークW表面上の加工予定領域に回転対称面である転写光学面T11を加工創製することができる。次に、θ調整ステージ55を利用してワークWを所定角だけ回転させることにより、転写光学面T11に隣接する転写光学面T12の中心を水平回転軸RA上に配置することができる。つまり、ワークWの表面にまだ転写光学面T12が形成されていない場合、ワークW表面上の加工予定領域に転写光学面T12を加工創製することができる。次に、θ調整ステージ55の調整により、上記と同様にして転写光学面T13を加工創製することができる。以上を繰り返すことにより、切替用同心円S1上に転写光学面T11,T12,T13,…T1mを順次形成することができる。つまり、1つの切替用同心円S1上の経路P1に沿って一連の加工が行われる。
その後、X調整ステージ51を調整してワークWをX方向に移動させることにより、例えば転写光学面T21の中心を水平回転軸RA上に配置することができる。この際、必要であれば、X調整ステージ51とともにθ調整ステージ55を調整に利用することができる。つまり、X調整ステージ51だけでも切替用同心円S1上にある水平回転軸RAを切替用同心円S2上に移動させることができるが、加工パターンDPによっては、水平回転軸RA上に転写光学面T21の中心が配置されない場合もあるので、θ調整ステージ55によって最終調整を行う。以上の切替用同心円S1,S2の変更動作が遷移経路P12として図示されている。そして、ワークWの表面にまだ転写光学面T21が形成されていない場合、NC駆動機構30を適宜動作させることにより、転写光学面T21を加工創製することができる。次に、θ調整ステージ55を利用してワークWを所定角だけ回転させることにより、転写光学面T21に隣接する転写光学面T22の中心を水平回転軸RA上に配置することができる。つまり、ワークWの表面にまだ転写光学面T22が形成されていない場合、転写光学面T22を加工創製することができる。以上を繰り返すことにより、切替用同心円S2上の一連の加工予定領域に転写光学面T21,T22,T23,…T2nを順次形成することができる。つまり、次の切替用同心円S2上の経路P2に沿って一連の加工が行われる。
その後、X調整ステージ51を調整してワークWをX方向に移動させることにより、遷移経路P23を経て、転写光学面T31の中心を水平回転軸RA上に配置することができる。これにより、切替用同心円S3上の経路P3に沿って転写光学面を順次形成することができる。
以上の説明では、切替用同心円S1,S2,S3,…の内側から順に転写光学面を加工したが、切替用同心円S1,S2,S3,…の外側から順に転写光学面を加工することもでき、さらに切替用同心円S1,S2,S3,…を例えばランダムな順番で変更しながら転写光学面を加工することもできる。また、以上の説明では、各切替用同心円S1,S2,S3,…において反時計回りに転写光学面を加工したが、時計回りに転写光学面を加工することもでき、さらに各切替用同心円S1,S2,S3,…において例えばランダムな順番で転写光学面を加工することもできる。
図11は、図1に示す加工装置10を用いた加工方法を説明するフローチャートである。まず、ステージ装置37に設けたθ調整ステージ55の固定板55aにワークWを固定する(ステップS11)。この際、θ調整ステージ55のθ軸すなわち回動軸PAとワークWの中心軸とを一致させる。具体的には、ワークWが偏芯しないように固定板55a上に固定し、ワークWを回動軸PAのまわりに回転させても側面位置が変化しないようにする。例えば転写光学面の加工位置精度を1μm程度としてワークWを加工する場合、ワークWの側面位置の振れも1μm程度以下とする。θ調整ステージ55は、図10の各切替用同心円S1,S2,S3,…において加工予定領域を切り替えるためのものであり、回動軸PAとワークWの中心軸とを一致させることで、ワークWの中心軸のまわりに切替用同心円S1,S2,S3,…を設定することができ、かかる切替用同心円S1,S2,S3,…上に後述する多数の転写光学面T11,T21,T31を形成することができる。なお、ワークWは、固定板55aに固定用ネジ81hによって固定されているが、この際、位置決めピン81kによって固定板55aに対する精密な位置合わせがなされていれば、特に芯出し調整は必要ない。また、ワークWの表面には、最終目的の加工パターンDPに近いが浅い粗加工パターンを予め形成しておくことができる。
次に、X調整ステージ51とY調整ステージ53とを利用してステージ装置37上でXY面に沿ってワークWを2次元的に移動させることにより、θ軸すなわち回動軸PAを加工駆動用の水平回転軸RAに一致させる(ステップS12)。最初に回動軸PAと水平回転軸RAとを一致させておけば、X調整ステージ51の駆動だけで切替用同心円S1,S2,S3,…を切り替えることができ、各切替用同心円S1,S2,S3,…の半径の選択又は設定も、エンコーダ装置51eの読み取りに基づいて正確に行うことができる。
次に、X調整ステージ51を動作させて今回の一連の加工に対応するワークW上の円周加工経路を水平回転軸RA上に移動させる(ステップS13)。具体的には、切替用同心円S1,S2,S3,…のうちのいずれか1つを予定の切替用同心円として選択して、その+X側が水平回転軸RAと交わるように固定板55aすなわちワークWを±X方向に移動させる。これにより、予定の切替用同心円の+X側端を中心にワークWを回転させることができる。つまり、転写光学面T11,T21,T31を形成すべき加工予定領域が、水平回転軸RAを中心とする所定サイズの円筒空間内にある加工位置に配置される。
次に、X調整ステージ51に設けたバランスウエイト69b等を利用して、±X方向等に関するバランスの調整を行う(ステップS14)。つまり、ステージ装置37及びワークWの重心を水平回転軸RA上に配置する。これにより、水平回転軸RAのまわりのステージ装置37の回転バランスが保たれるので、ステージ装置37を所望の速度で精密に回転させることができ、ワークWの加工精度を高めることができる。バランスウエイト69bは、一部が着脱可能になっており、かつ可動部69aによって±X方向の位置を調整できるので、ステージ装置37全体としての±X方向の重心を比較的広い範囲で調整でき、±Y方向の重心を比較的狭い範囲で調整できる。また、バランスウエイト69bの他に、ネジ孔61pを用いてこれに適当な重量のバランスウエイトを固定することにより、ステージ装置37の±X方向や±Y方向に関する重心を微調整できる。なお、初回のバランス調整時には、±Y方向のバランス調整が必須的になるが、以後は、X調整ステージ51のみの動作によって切替用同心円S1,S2,S3,…を変更するので、基本的に±X方向のバランス調整のみで足る。
次に、θ調整ステージ55を利用してワークWを回転させることによってワークWの加工部中心を水平回転軸RA上に移動させる(ステップS15)。つまり、これからワークW上に形成される転写光学面T11,T21,T31,…の中心とすべき点を水平回転軸RA上に配置する。この際、エンコーダ装置55eにより、ワークWの回転位置を監視することができ、ワークW上の加工部中心を正確に水平回転軸RA上に配置することができる。この際、バランスの再調整は不要である。既にステップS14で水平回転軸RAのまわりの回転バランスが調整されているからである。なお、ワークWに粗加工パターンを予め形成している場合、第1可動部35によって水平回転軸RAのまわりにワークWを回転させる。粗加工パターンの円を観察してこの円がワークWの回転に伴って変位する場合、θ調整ステージ55によるワークWの回転姿勢の調整が正確でないと考えられる。よって、θ調整ステージ55によりワークWの回転姿勢の微調整を行って、粗加工パターンの円がワークWの回転に伴って変位しないように調整する。
次に、ワークWの表面にいずれかの転写光学面T11,T21,T31,…を加工する(ステップS16)。つまり、第1可動部35によって水平回転軸RAのまわりにワークWを回転させつつ、第2加工ステージ33及び第2可動部36を利用して切削工具20をワークWの表面に対して進退移動等させる。これにより、ワークW上の適所に所望の転写光学面を形成することができる。
次に、現在加工中の切替用同心円S1,S2,S3,…上における全ての転写光学面の加工が完了したか否かを判断する(ステップS17)。全ての転写光学面の加工が完了していない場合、ステップS15に戻って切替用同心円上の加工位置を変更し、ステップS16でワークWの表面にいずれかの転写光学面を加工する。
ステップS17で転写光学面の加工が完了したと判断した場合、全ての切替用同心円S1,S2,S3,…での加工が完了したか否かを判断する(ステップS18)。全ての切替用同心円S1,S2,S3,…での加工が完了していない場合、ステップS15に戻って次の円周加工経路すなわち切替用同心円S1,S2,S3,…が水平回転軸RA上に配置されるようにする。以後、ステップS13〜S17の動作を繰り返す。ステップS18で全ての切替用同心円S1,S2,S3,…での加工が完了したと判断した場合、処理を終了する。
図12は、図11の加工方法の変形例を説明するフローチャートである。まず、ステージ装置37に設けたθ調整ステージ55の固定板55aにワークWを固定する(ステップS11)。この際、θ調整ステージ55のθ軸すなわち回動軸PAとワークWの中心軸とを一致させる。ただし、回動軸PAと水平回転軸RAとを一致させる必要はない。
次に、X調整ステージ51を動作させて今回の一連の加工に対応するワークW上の円周加工経路すなわち複数の切替用同心円のうちのいずれか1つを水平回転軸RA上に移動させる(ステップS13)。
次に、X調整ステージ51に設けたバランスウエイト69b等を利用して、±X方向等に関するバランスの調整を行って、ステージ装置37及びワークWの重心を水平回転軸RA上に配置する(ステップS14)。
次に、θ調整ステージ55を利用してワークWを回転させることによって、これからワークW上に形成される転写光学面の中心である加工部中心を水平回転軸RA上に移動させる(ステップS15)。なお、各切替用同心円における最初の転写光学面の形成すなわち初回の加工では、θ調整ステージ55を利用したワークWの回転を不要とすることができる。この場合、各切替用同心円における最初の転写光学面の位置がその前の切替用同心円における最後の転写光学面の位置の影響を受けることになるが、予め予想できる影響であり、用途によっては特に問題が生じない。
次に、第1可動部35によって水平回転軸RAのまわりにワークWを回転させつつ、第2加工ステージ33等を利用して切削工具20をワークWの表面に対して進退移動等させることにより、ワークWの表面に転写光学面を加工する(ステップS16)。
次に、現在加工中の切替用同心円上における全ての転写光学面の加工が完了したか否かを判断する(ステップS17)。全ての転写光学面の加工が完了していない場合、ステップS15に戻って切替用同心円上の加工位置を変更する。
ステップS17で転写光学面の加工が完了したと判断した場合、全ての切替用同心円での加工が完了したか否かを判断する(ステップS18)。全ての切替用同心円での加工が完了していない場合、ステップS13に戻って次の円周加工経路すなわち切替用同心円が水平回転軸RA上に配置されるようにする。以後、ステップS13〜S17の動作を繰り返す。ステップS18で全ての切替用同心円での加工が完了したと判断した場合、処理を終了する。
以上の説明から明らかなように、本実施形態の加工装置10では、ステージ装置37が、回動軸PAのまわりにワークWを回転させることによってワークWの加工位置を調整可能にするθ調整ステージ55と、ワークWの加工位置を調整するための直動型のX調整ステージ51とを有するので、θ調整ステージ55によって同一円周である切替用同心円S1上に配置される転写光学面T11,T12,T13,…を順次形成することができ、X調整ステージ51によって1つの切替用同心円S1から別の切替用同心円S2に移動することができ、複数の切替用同心円S1,S2,…上に配置される複数の転写光学面T11,T21,T31,…を順次簡易に加工することができる。ここで、θ調整ステージ55の可動部及びワークWが回動軸PA上にあれば、例えば切替用同心円S1上に配置される転写光学面T11,T12,T13,…を順次加工する際に、水平回転軸RAのまわりの重量バランスが保たれるので、迅速で高精度の加工が可能になる。
なお、本実施形態では、第1可動部35によってワークWを水平回転軸RAのまわりに高速で回転させつつ、第1及び第2加工ステージ32,33によって切削工具20を移動させて旋削加工を行う。転写光学面の高精度かつ高効率の加工方法として旋削加工が極めて有効であり、本実施形態の加工装置10により、上述のような同心状に配列されたアレイ状の転写光学面を高精度に維持したまま迅速に加工することができる。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係る成形金型等について説明する。図13は、第1実施形態の加工装置10を用いてワークWに加工を施して作製した成形金型(光学素子用成型金型)を説明する図であり、図13(A)は、固定型すなわち第1金型2Aの側方断面図であり、図13(B)は、可動型すなわち第2金型2Bの側方断面図である。両金型2A,2Bの成形面3a,3bのうち、転写光学面13a,13bは、図1等に示す加工装置10によって仕上げ加工されたものである。図示の例では、金型2A,2Bの転写光学面13a,13bの形状を球面や非球面等の形状としているが、転写光学面13a,13bの形状は、これらに限らず、段差面、位相構造面、回折構造面等の形状とすることができる。
図14は、図13(A)の金型2Aと、図13(B)の金型2Bとを用いてプレス成形した中間成形体MMの断面図である。この中間成形体MMは、例えばUV硬化樹脂、熱硬化樹脂等のエネルギー硬化樹脂や、熱可塑性樹脂を構成材料としており、転写光学面13a,13bに対応する多数のマイクロレンズMLを2次元的に配列したレンズアレイである。これらマイクロレンズMLは、樹脂材からなる連結部CPを介して連結されている。中間成形体MMの材料は、エネルギー硬化樹脂に限らず、ガラス等とすることができる。なお、中間成形体MMを第1実施形態の加工装置10によって直接作製することもできる。
図15は、図14の中間成形体MMをウェハSWの主面上にアライメントして配置し接着した半製品を示す。なお、中間成形体MMを構成する各マイクロレンズMLは、ウェハSW上に形成された個々のイメージセンサに対向して配置されている。
図16は、図15の半製品を切断して得た固体撮像装置14の断面構造を説明する図である。固体撮像装置14は、中間成形体MMを切断によって分割したマイクロレンズMLと、ウェハSWを切断によって分割したイメージセンサISとを接合して一体化した構造を有する。なお、光学素子であるマイクロレンズMLの焦点位置には、イメージセンサISの投影されたイメージに対応する電気信号を生成するCCD回路部CC等が形成されている。
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、ワークWの表面に形成される加工パターンDPは、図示のものに限らず、様々な密度及び配列のものとすることができる。
また、以上の説明から明らかなように、X調整ステージ51やY調整ステージ53は、どちらか一方が存在すれば足りる。
2A,2B…金型、 3a,3b…成形面、 10…加工装置、 13a,13b…転写光学面、 14…固体撮像装置、 20…切削工具、 30…NC駆動機構、 35…第1可動部、 35a…回転部、 37…ステージ装置、 40…駆動制御装置、 51…X調整ステージ、 51a,51b,53b,55b…テーブル部材、 51c…リニアガイド、 51d…微動装置、 51e…エンコーダ装置、 51f…固定装置、 51h…バランス調整部、 53…Y調整ステージ、 53c…リニアガイド、 53d…微動装置、 53f…固定装置、 55…θ調整ステージ、 55a…固定板、 55c…軸受け部、 55e…エンコーダ装置、 55f…固定装置、 90…主制御装置、 CC…CCD回路部、 DP…加工パターン、 HO…空洞部、 IS…イメージセンサ、 ML…マイクロレンズ、 MM…中間成形体、 P1,P2,P3…経路、 PA…回動軸、 RA…水平回転軸、 S1,S2,S3…切替用同心円、 SW…ウェハ、 T11,T12,T13…転写光学面、 W…ワーク