JP4548550B2 - 光学素子用金型の加工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、射出成形等に用いられる光学素子用金型の加工方法に関する。
射出成形による光学素子の製造方法として、光学素子の回折構造である階段状の輪帯群に対応する輪帯と円錐面とを有する金型構造を用いるものがある。このような金型構造の加工方法として、バイトに回転駆動される金型の軸方向と径方向の動きだけでなく、その先端の加工エッジ部を中心とする金型との相対回動を与えることにより精密な成形面の加工をしているものがある(例えば、特許文献1参照)。
特開平11−10401号公報
しかしながら、上記のような金型構造では、バイトの相対回動を伴うため、直線2軸と回転軸とを備えた3軸旋盤加工機が必要となる。また、上記のような金型構造に限らず、溝等の両側面が金型の回転軸を基準に左右対称(例えば、平行)な構造の凹凸構造を有する金型構造を剣先バイト等で加工する場合にも、バイトの刃先を反転させて姿勢を調整する必要があり、3軸旋盤加工機が必要となる。このため、バイトの回転駆動を制御するために複雑な工程が必要となり、加工時間が増加するという問題がある。また、加工に伴う複雑な工程は、光学素子の精度に影響する。特に、光ピックアップ装置用の対物レンズなどの像側開口数NAが0.8以上の高NAのレンズに入射光束に光路差を付与するための光路差付与構造を光学面に設けた構造、すなわち段差構造を有するものの成形においては、段差形状を精度よく形成しないとレンズの光学性能に顕著に影響するという問題がある。また、3軸旋盤加工機は、直線2軸のみに駆動可能な2軸旋盤加工機よりも高価であり、金型の加工にコストがかかるという問題もある。
そこで、本発明は、工具の回転を不要とし、直線2軸で動作する加工機を用いた加工方法であって、工具の干渉なく容易に光学素子用金型の成形面の凹凸形状等の立体構造の両側面を左右対称に加工することができる光学素子用金型の加工方法を提供することを目的とする。
本発明に係る光学素子用金型の加工方法は、成形品の全体的な外形を形成する成形表面と、成形表面上に設けられる少なくとも凹部または凸部を有する立体構造と、を備える成形面を加工する光学素子用金型の加工方法であって、光学素子用金型を光学素子用金型の中心軸を軸として回転させると共に、中心軸に対して第1の側にバイトを配置して光学素子用金型を切削し、光学素子用金型の立体構造の中心軸側及び外周側のうち一方に対応する第1の側面を形成する第1工程と、光学素子用金型を中心軸を軸として回転させると共に、中心軸に対して第1の側と反対の第2の側にバイトを配置して光学素子用金型を切削し、光学素子用金型の立体構造の中心軸側及び外周側のうち前記第1の側面とは異なる他方に対応する第2の側面を形成する第2工程と、を備えることを特徴とする。以上において、中心軸とは、被加工体(光学素子用金型)を切削加工する際に被加工体を回転させる回転軸を意味し、加工品(光学素子用金型)によって形成される光学素子の光軸に対応する軸である。
上記光学素子用金型の加工方法では、加工精度に大きな影響を与えるバイトの刃先の向きは回転させずに加工位置を逆転させることにより、バイトと被加工体(光学素子用金型)との干渉を避けつつ、立体構造の両側面を光学素子用金型の回転軸と平行な軸を挟んで左右対称に加工することができる。
本発明の具体的な態様又は観点では、第1工程と第2工程との間において、第1の側の位置からバイトの刃先を中心軸を挟んで第2の側における反対方向の所定位置に移動させることを特徴とする。この場合、バイトの刃先を第2の側に移動させることにより、加工点に対する刃先の角度を適切に保った状態で立体構造の一方と他方の側面を形成することができる。
本発明の別の態様では、第2工程における光学素子用金型の回転方向は、第1工程における光学素子用金型の回転方向と逆であることを特徴とする。この場合、第1工程と第2工程とにおいて光学素子用金型の回転方向を反転させることにより、バイトの刃先の向きを反転させる複雑な工程を経ずに立体構造の両側面を切削することができる。
本発明のさらに別の態様では、第1工程において、バイトの刃先を中心側に移動させつつ切削することによって中心軸側に第1の側面を形成することを特徴とする。この場合、バイトの刃先に倣って光学素子用金型の中心軸側に立体構造の第1の側面を形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、第1工程において、光学素子用金型の立体構造を形成すると共に、光学素子用金型の成形表面の少なくとも一部を切削することを特徴とする。この場合、立体構造の第1の側面と成形表面との少なくとも一方を連続的に形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、第1工程の前に、光学素子用金型の成形表面を切削することを特徴とする。この場合、立体構造を形成する前に成形表面を形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、第2工程において、バイトの刃先は中心軸と反対側に移動させつつ切削することによって外周側に第2の側面を形成することを特徴とする。この場合、バイトの刃先に倣って光学素子用金型の外周側に立体構造の第2の側面を形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、立体構造は、複数形成されることを特徴とする。この場合、光学素子用金型に複数の輪帯構造を形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、立体構造の底面と第1の側面とで形成される角度と、立体構造の底面と第2の側面とで形成される角度とは、略等しいことを特徴とする。この場合、対称性を有する横断面の輪帯構造を形成することができる。
本発明のさらに別の態様では、立体構造の第1の側面と第2の側面とは、中心軸に平行な面であることを特徴とする。この場合、より高精度な輪帯構造を形成することができる。
第1実施形態の加工装置を説明するブロック図である。 (A)〜(C)は、図1に示す加工装置を用いたワークの加工を説明する拡大断面図である。 (A)、(B)は、図1に示す加工装置を用いたワークの加工を説明する拡大断面図である。 (A)、(B)は、図1に示す加工装置を用いて作製した成形用金型の側方断面図である。 図4の成形用金型によって形成されたレンズの側方断面図である。 図1に示すワークの加工工程を説明するフローチャートである。 図6に示す加工工程の変形例を説明するフローチャートである。 (A)、(B)は、第2実施形態のワークの加工の変形例を説明する図である。 (A)、(B)は、図2及び図3に示すワークの加工の変形例を説明する図である。 (A)、(B)は、図2及び図3に示すワークの加工の別の変形例を説明する図である。 (A)、(B)は、図8に示すワークの加工の変形例を説明する図である。
符号の説明
2A…第1金型
2B…第2金型
3a,3b…成形面
10…加工装置
20…切削ユニット
21…ツール部
23a…刃先
23…切削工具
30…NC駆動機構
31…台座
32,33…ステージ
35,36…可動部
37…チャック
40…駆動制御装置
A1…第1の側
A2…第2の側
AR1…外周部
AR2,AR3…中間部
AR4…中央部
BO…底部
BO1,BO3…内側部分
BO2…外側部分
E1…エッジ
G1,G2,G3…環状溝
G4,G5,G6…環状段差
G7…環状凸部
L…レンズ
RA…中心軸
SA…成形面
SA1…成形表面
SA2,SA3…立体構造
SL…表層
SS1,SS2,SS3,SS4,SS5,SS6,SS7,SS8…側面
TO…上側部分
W…ワーク
〔第1実施形態〕
以下、本発明の第1実施形態に係る加工装置を図面を用いて説明する。図1は、レンズ等の光学素子を成形するための光学素子用金型の転写光学面(成形面)を加工する加工装置の構造を概念的に説明するブロック図である。
図1に示すように、加工装置10は、被加工体であるワークWを切削加工するための切削ユニット20と、切削ユニット20をワークWに対して支持するNC駆動機構30と、NC駆動機構30の動作を制御する駆動制御装置40とを備える。
切削ユニット20は、Z軸方向に延びるツール部21先端に切削工具23を固定した切削工具である。切削工具23は、剣先状の外形を有するバイトであり、その先端は、例えばダイヤモンドチップの切刃になっている。切削工具23は、後述する第2ステージ33による切削ユニット20の移動に伴い、例えばX軸方向に沿って変位する。
NC駆動機構30は、台座31上に第1ステージ32と第2ステージ33とを載置した構造の駆動装置である。ここで、第1ステージ32は、第1可動部35を支持しており、この第1可動部35は、チャック37を介してワークWを間接的に支持している。この第1ステージ32は、ワークWを、例えばZ軸方向に沿った所望の位置に所望の速度で移動させることができる。また、第1可動部35は、ワークWをZ軸に平行な中心軸RAのまわりに所望の速度で回転させることができる。一方、第2ステージ33は、第2可動部36を支持しており、この第2可動部36は、切削ユニット20を支持している。第2ステージ33は、第2可動部36及び切削ユニット20を支持して、これらを例えばX軸方向に沿った所望の位置に所望の速度で移動させることができる。
なお、以上のNC駆動機構30において、第1ステージ32と第1可動部35とは、ワークWを駆動する被加工体駆動部を構成し、第2ステージ33と第2可動部36とは、切削ユニット20を駆動する工具駆動部を構成する。
駆動制御装置40は、高精度の数値制御を可能にするものであり、NC駆動機構30に内蔵されたモータや位置センサ等を駆動制御装置40の制御下で駆動することによって、第1及び第2ステージ32,33や、第1及び第2可動部35,36を目的とする状態に適宜動作させる。例えば、第1及び第2ステージ32,33によって、切削ユニット20のツール部21先端に設けた切削工具23先端の加工点を低速でXZ面に平行な面内に設定した所定の軌跡に沿ってワークWに対して相対的に移動(送り動作)させつつ、第1可動部35によって、ワークWを中心軸RAのまわりに高速で回転させることができる。
以下、図1に示す加工装置10を用いたワークWの加工について説明する。ここで、説明の便宜上、ワークWを加工する切削工具23の位置は、中心軸RAを含むYZ平面を境にして−X側を第1の側A1と呼び、+X側を第2の側A2と呼ぶことにする。図2は、第1の側A1において切削加工をする第1工程を主に説明する図であり、図3は、第2の側A2において切削加工をする第2工程を説明する図である。なお、図2及び図3は、図1の加工装置10をI方向から見たものである。
切削工具23の先端部は、図1のNC駆動機構30によって、被加工体であるワークWに対し、例えばXZ面内で所定の軌跡を描いて徐々に相対的に移動する。つまり、切削工具23の送り動作が行われる。また、被加工体であるワークWは、図1のNC駆動機構30によって、Z軸に平行な中心軸RAのまわりに一定速度で回転する(図1参照)。これにより、ワークWの旋削加工が可能になり、ワークWに対し中心軸RAのまわりに回転対称な例えば成形面SA(例えば、凹凸の球面、非球面等の曲面のほか、位相素子面、段差面等の立体形状)を形成した光学素子用金型を得ることができる。
加工後のワークWは、光学素子を射出成形するための成形金型を構成する部品(光学素子用金型)である。ワークWに形成される最終的な成形面SAは、光学素子の光学面用の転写面であり、図2(A)の点線や図3(B)の実線で示すように、全体的な外形を形成する曲面状の成形表面SA1と、成形表面SA1上に設けられる輪帯状の立体構造SA2とを備える。この実施形態では、成形表面SA1として、凹の球面又は非球面が形成され、立体構造SA2として、矩形横断面を有する複数の環状溝G1,G2,G3が形成される。
まず、図2(A)に示すように、ワークWを中心軸RAのまわりに回転させながら切削工具23をXZ面内で相対的に移動させることにより、切削工具23の刃先23aでワークWの表面を旋削加工する前加工を行う。この前加工によって、成形表面SA1上の薄い表層SLを残して凹面を形成することができる。なお、切削工具23の+X側のエッジE1は、この前工程及び後述する本工程において、中心軸RAに平行に保持される。
以下、本加工方法について説明する。本加工方法では、まず第1工程で成形表面SA1と、複数の環状溝G1,G2,G3のうち中心軸RA側に対応する第1の側面SS1とを旋削によって形成し、第2工程で複数の環状溝G1,G2,G3のうち外周側に対応する第2の側面SS2を旋削によって形成する。
具体的には、第1工程において、図2(B)及び2(C)に示すように、切削工具23を、第1の側A1において中心軸RAに関して−X方向の最大位置、すなわち−Xスタート位置に配置し、−Z方向に向いてワークWを時計方向に回転させた状態とする。この状態で、切削工具23の刃先23aをワークWに対して相対的に移動させることにより、成形表面SA1を外周側から形成しつつ、複数の環状溝G1,G2,G3のうち中心軸RA側の第1の側面SS1と底部BOの一部とを順次形成する。つまり、成形表面SA1の外周部AR1を加工し、外側の環状溝G1の第1の側面SS1と、底部BOの内側部分BO1とを加工する。次に、成形表面SA1の中間部AR2を加工し、中間の環状溝G2の第1の側面SS1と、底部BOの内側部分BO1とを加工する。次に、成形表面SA1の中間部AR3を加工し、内側の環状溝G3の第1の側面SS1と、底部BOの内側部分BO1とを加工する。最後に、成形表面SA1の中央部AR4を加工し、切削工具23の刃先23aをワークWから後退させることにより、第1工程を完了する。
次に、切削工具23を、第2の側A2において中心軸RAに関して+X方向の中間位置、すなわち+Xスタート位置に移動させる。本実施形態の場合、切削工具23を内側の環状溝G3の正面に配置し、ワークWの回転を反転させ、−Z方向に向いてワークWを反時計方向に回転させた状態とする。
次に、第2工程において、図3(A)及び3(B)に示すように、切削工具23の刃先23aをワークWに対して相対的に移動させることにより、複数の環状溝G1,G2,G3のうち外周側の第2の側面SS2と底部BOの残りとを順次形成する。つまり、内側の環状溝G3の第2の側面SS2と、底部BOの外側部分BO2とを加工する。次に、中間の環状溝G2の第2の側面SS2と、底部BOの外側部分BO2とを加工する。最後に、外側の環状溝G1の第2の側面SS2と、底部BOの外側部分BO2とを加工し、切削工具23の刃先23aをワークWから後退させることにより、第2工程を完了する。
以上の工程により、ワークWの表面上に、光学素子成形用の成形面SAとして、凹曲面の成形表面SA1と輪帯状の立体構造SA2とが一組の形状として形成される。
なお、立体構造SA2のうち1つの環状溝G1に着目すると、第1工程において、第1の側A1の適所に切削工具23を配置してワークWを切削し、環状溝G1の中心軸RA側に対応する第1の側面SS1及び内側部分BO1を形成している。その後、切削工具23を第1の側A1の環状溝G1に相当する位置から第2の側A2の環状溝G1に相当する位置、すなわち反対方向の位置に移動させる。この際、中心軸RAを挟んで切削工具23を正反対の位置に移動させるのではなく溝幅以下の適当な間隔だけ移動量を増加させて、切削部分がオーバーラップするようにする。最後に、第2工程において、第2の側A2に移動した切削工具23を適所に配置してワークWを切削し、環状溝G1の外周側に対応する第2の側面SS2及び外側部分BO2を形成している。このようにして形成された環状溝G1の側面SS1,SS2は、互いに平行で、ともに中心軸RAに沿って延びている。なお、以上は、環状溝G1に着目した加工及び形状の説明であったが、他の環状溝G2,G3も環状溝G1と同様に加工され同様の形状となる。
以下、本実施形態に係る成形金型について説明する。図4は、第1実施形態の切削ユニット20を用いて作製した成形金型(光学素子用成型金型)を説明する図である。図4(A)は、固定型、すなわち第1金型2Aの側方断面図であり、図4(B)は、可動型、すなわち第2金型2Bの側方断面図である。両金型2A,2Bの成形面3a,3bは、図1に示す加工装置10によって仕上げ加工されたものである。つまり、両金型2A,2Bの母材をワークWとしてチャック37に固定し、駆動制御装置40を適宜動作させて、切削ユニット20のツール部21先端をワークWに対して3次元的に任意に移動させる。これにより、第1金型2A,第2金型2Bの成形面3a,3bを、球面や非球面に限らず、段差面、位相構造面、回折構造面とすることができる。
図5は、図4(A)の第1金型2Aと、図4(B)の第2金型2Bとを用いてプレス成形したレンズLの断面図である。このレンズL光は、例えば光ピックアップ装置用の対物レンズとして機能する。図示していないが、第1金型2A,第2金型2Bの成形面3a,3bが段差面、位相構造面、回折構造面等の立体構造を有する場合、レンズLの成形光学面も、段差面、位相構造面、回折構造面等の立体構造を有するものとなる。さらに、レンズLの材料は、プラスチックに限らず、ガラス等とすることができる。なお、上記のレンズLの具体的適用例は、像側開口数NAが0.8以上の高NAの光ピックアップ装置用の対物レンズ(例えばBDとDVD又はCDとの互換型対物レンズ等)であり、レンズ本体の光学面上の適所に立体構造として入射光束に光路差を付与する光路差付与構造等を設けたものとなっている。
図6は、図4の第2金型2Bを構成する図1のワークWの加工工程を説明するフローチャートである。なお、本フローチャートでは、簡便のため図2(A)に示す前加工を省略している。
−X最大スタート位置に切削工具23の刃先23aを移動する(ステップS11)。次に、これからの加工部分が成形表面SA1に対応する曲面か、立体構造SA2を構成する各環状溝G1,G2,G3に対応する立体形状かを選択する(ステップS12)。曲面を切削する場合、第1の側A1に対応する第1対象加工領域において、中心軸RAに向けて刃先23aを+X方向に徐々に移動させつつZ方向に適宜前進させることにより、凹曲面を切削する(ステップS13)。これにより、例えば成形表面SA1のうち外周部AR1を形成することができる。一方、立体形状を切削する場合、同じ第1対象加工領域において、刃先23aを+X方向に適宜移動させつつZ方向に必要量進退させることにより、凹部の中心軸RA側を切削する(ステップS14)。これにより、例えば外側の環状溝G1のうち中心軸RA側の第1の側面SS1や内側部分BO1を形成することができる。曲面または立体形状を切削後(ステップS13,S14)、刃先23aが中心軸RAに到達していれば、次の加工領域はないと判断し(ステップS15)、+Xスタート位置に刃先23aを移動する(ステップS16)。一方、刃先23aがまだ中心軸RAに到達していない場合にはステップS12に戻る。なお、ステップS12に戻った場合、上記ステップS12〜S15の動作が繰り返され、例えば成形表面SA1のうち中間部AR2,AR3等を形成することができ(ステップS13)、或いは、中間の環状溝G2等のうち中心軸RA側の第1の側面SS1や内側部分BO1を形成することができる(ステップS14)。
刃先23aが中心軸RAに到達していると判断された場合、刃先23aを−Z方向に一旦後退させた後、刃先23aを+Xスタート位置に移動させる(ステップS16)。この際、ワークWの回転を逆転させる。その後、第2の側A2に対応する第2対称加工領域において、外周に向けて刃先23aを+X方向に適宜移動させつつZ方向に必要量進退させることにより、凹部の外周側を切削する(ステップS17)。これにより、例えば内側の環状溝G3のうち外周側の第2の側面SS2や外側部分BO2を形成することができる。環状溝G3の加工終了後は、次の加工領域がないか判断する(ステップS18)。加工領域が残ってなければ加工を終了する。一方、加工領域が残っていれば、ステップS17に戻る。なお、ステップS17に戻った場合、ステップS17,S18の動作が繰り返され、例えば中間の環状溝G2等のうち外周側の第2の側面SS2や外側部分BO2を形成することができる(ステップS17)。
図7は、図6に示す加工工程の変形例を説明するフローチャートである。この場合、成形表面SA1を予め一括して行うこととしている。まず、−X最大スタート位置に切削工具23の刃先23aを移動し(ステップS11)、第1の側A1に対応する第1対象加工領域において、中心軸RAに向けて刃先23aを+X方向に徐々に移動させつつZ方向に適宜前進させることにより、凹曲面を切削する(ステップS23)。これにより、成形表面SA1を形成することができる。次に、第1の側A1に対応する第1対象加工領域において、刃先23aを+X方向に適宜移動させつつZ方向に必要量進退させることにより、凹部の中心軸RA側を切削する(ステップS24)。これにより、例えば外側の環状溝G1のうち中心軸RA側の第1の側面SS1や内側部分BO1を形成することができる。その後、刃先23aが中心軸RAに最も近い凹凸最内周に到達していれば、次の加工領域はないと判断し(ステップS25)、+Xスタート位置に刃先23aを移動する(ステップS16)。一方、刃先23aがまだ凹凸最内周に到達していない場合にはステップS24に戻る。なお、ステップS24に戻った場合、ステップS24の動作が繰り返され、例えば中間の環状溝G2等のうち中心軸RA側の第1の側面SS1や内側部分BO1を形成することができる(ステップS24)。
以上の説明により、本実施形態における金型の加工方法では、加工精度に大きな影響を与える切削工具23の刃先23aの向きを回転させずに加工位置を逆転させることにより、切削工具23とワークWの干渉なく立体構造SA2の両側面SS1,SS2を金型の中心軸RAを基準に左右対称に加工することができる。
また、切削工具23の刃先23aを第2の側A2に移動させることにより、加工点に対する刃先23aの角度を適切に保った状態で立体構造SA2の第1及び第2の側面SS1,SS2を形成することができる。また、第1工程と第2工程とにおいてワークWの回転方向を反転させることにより、切削工具23の刃先23aの向きを反転させる複雑な工程を経ずに立体構造SA2の両側面SS1,SS2を切削することができる。この場合、切削工具23の刃先23aに倣ってワークWの中心軸RA側に立体構造SA2の第1の側面SS1を形成することができる。また、切削工具23の刃先23aに倣ってワークWの外周側に立体構造SA2の第2の側面SS2を形成することができる。
以上のような金型加工方法を用いて作製された輪帯構造を有する精度の高い金型とすることができる。この第2金型2Bと第1金型2Aを用いて成形されることにより、輪帯構造を有する精度の高い光学素子、すなわちレンズLとなる。これにより、レンズLの回折効率を良くすることができる。
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るワークWの加工方法について説明する。なお、第2実施形態に係るワークWの加工方法は、第1実施形態を変形したものであり、特に説明しない部分については、第1実施形態と同様であるものとする。
図8は、第2実施形態のワークWに形成される立体構造SA3の拡大断面図である。
第2実施形態においてワークWに形成される最終的な成形面は、曲面上の成形表面SA1と成形表面SA1上に設けられる階段状の立体構造SA3とを備える。立体構造SA3は、環状段差G4,G5,G6を有する。この立体構造SA3は、第1工程において、成形表面SA1を外周側から形成しつつ、第1の側A1の環状段差G6の適所に切削工具23を配置してワークWを切削し、環状段差G6の中心軸RA側に対応する第1の側面SS3及び環状段差G6の内側部分BO3を形成している。その後、切削工具23を第1の側A1の環状段差G6に相当する位置から第2の側A2の環状段差G6に相当する位置、すなわち反対方向の位置に移動させる。この際、中心軸RAを挟んで切削工具23を正反対に移動させるのではなく、移動量を増加させて切削部分がオーバーラップするようにする。最後に、第2工程において、第2の側A2に移動した切削工具23を各環状段差G6,G5,G4の適所に順に配置してワークWを切削し、各環状段差G4,G5,G6の外周側に対応する第2の側面SS4,SS5,SS6及び底部BOを形成している。このようにして形成された環状段差G4,G5,G6の側面SS3,SS4,SS5,SS6は、互いに平行で、ともに中心軸RAに沿って延びている。
以上、実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば、立体構造SA2等の幅、深さ、数は実施形態で説明したものに限らず、用途に応じて自由に設計することができる。
また、上記実施形態において、ワークWは第1の側A1及び第2の側A2のどちらから加工してもよい。なお、第1の側A1の加工と第2の側A2の加工とをつなぐ位置は、切削工具23の稜線が干渉しない位置であればよい。
また、上記実施形態では、第2可動部36及び切削ユニット20をX軸方向に沿って移動させていたが、第2ステージ33にY軸方向の移動機能を持たせて直線3軸の加工装置とし、切削ユニット20等をY軸方向に沿って移動させてもよい。つまり、切削工具23をYZ面内で相対的に移動させることにより、ワークWの表面を図2、3に示す工程と同様の工程で、同様の形状に旋削加工することができる。
また、上記実施形態では、立体構造SA2を凹状の環状溝G1,G2,G3としたが、図9に示すように、凸状の環状凸部G7にしてもよい。この場合、例えば第1の側A1で環状凸部G7の外周側に対応する第2の側面SS7及び上側部分TOを形成し、第2の側A2で環状凸部G7の中心軸RA側に対応する第1の側面SS8を形成する。なお、ワークWに形成する立体構造は、例えば図2に環状溝G1として例示される凹部と、例えば図9に環状凸部G7として例示される凸部とを組み合わせた複合型の凹凸形状とすることもできる。
また、上記実施形態では、環状溝G1,G2,G3の切削は、第1の側A1から行ったが、図10に示すように、第2の側A2から行ってもよい。
また、上記実施形態では、環状段差G4,G5,G6の切削は、第1の側A1から行ったが、図11に示すように、切削工具23の刃先23aを図8の刃先23aと逆向きにして、第2の側A2から行ってもよい。
さらに、第1実施形態では、第2工程で切削工具23の刃先23aを外周側に移動させているが、逆に、切削工具23の刃先23aを中心軸RA側に移動させることもできる。この場合、環状溝G1,G2,G3の順に加工が完了する。

Claims (10)

  1. 成形品の全体的な外形を形成する成形表面と、前記成形表面上に設けられる少なくとも凹部または凸部を有する立体構造と、を備える成形面を加工する光学素子用金型の加工方法であって、
    前記光学素子用金型を前記光学素子用金型の中心軸を軸として回転させると共に、前記中心軸に対して第1の側にバイトを配置して前記光学素子用金型を切削し、前記光学素子用金型の前記立体構造の前記中心軸側及び外周側のうち一方に対応する第1の側面を形成する第1工程と、
    前記光学素子用金型を前記中心軸を軸として回転させると共に、前記中心軸に対して前記第1の側と反対の第2の側に前記バイトを配置して前記光学素子用金型を切削し、前記光学素子用金型の前記立体構造の前記中心軸側及び前記外周側のうち前記第1の側面とは異なる他方に対応する第2の側面を形成する第2工程と、
    を備えることを特徴とする光学素子用金型の加工方法。
  2. 前記第1工程と前記第2工程との間において、前記第1の側の位置から前記バイトの刃先を前記中心軸を挟んで前記第2の側における反対方向の所定位置に移動させることを特徴とする請求項1に記載の光学素子用金型の加工方法。
  3. 前記第2工程における前記光学素子用金型の回転方向は、前記第1工程における前記光学素子用金型の回転方向と逆であることを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子用金型の加工方法。
  4. 前記第1工程において、前記バイトの刃先を前記中心側に移動させつつ切削することによって前記中心軸側に前記第1の側面を形成することを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
  5. 前記第1工程において、前記光学素子用金型の前記立体構造を形成すると共に、前記光学素子用金型の前記成形表面の少なくとも一部を切削することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
  6. 前記第1工程の前に、前記光学素子用金型の前記成形表面を切削することを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
  7. 前記第2工程において、前記バイトの刃先は前記中心軸と反対側に移動させつつ切削することによって前記外周側に前記第2の側面を形成することを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
  8. 前記立体構造は、複数形成されることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
  9. 前記立体構造の底面と前記第1の側面とで形成される角度と、前記立体構造の底面と前記第2の側面とで形成される角度とは、略等しいことを特徴とする請求項1から6までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
  10. 前記立体構造の前記第1の側面と前記第2の側面とは、前記中心軸に平行な面であることを特徴とする請求項1から9までのいずれか一項に記載の光学素子用金型の加工方法。
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