JP5050742B2 - 瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法 - Google Patents

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Description

本発明は瞬時電圧低下補償装置(以下瞬低補償装置という)の直流待機電圧補償方法に係り、特に、エネルギー貯蔵装置として電気二重層キャパシタを用いた場合の直流待機電圧補償方法に関するものである。
エネルギー貯蔵装置として電気二重層キャパシタを用いた瞬低補償装置としては、特許文献1などによって公知となっている。図3はその概略構成図を示したもので、電源系統5と負荷間に高速スイッチ3を設け、この高速スイッチ3と負荷間に電圧貯蔵装置としての電気二重層キャパシタ1、及び交直変換装置4を接続して構成される。このシステムは、平常時には、高速スイッチ3を介して負荷2に電力を供給する。系統電圧に停電を含む電圧低下が発生すると、高速スイッチ3を系統から切り離し、電気二重層キャパシタ1に蓄積された直流電圧を交直変換装置4により交流に変換し、負荷2へ無瞬断で電力を供給する。
電気二重層キャパシタに蓄積されたエネルギーEは、キャパシタの直流電圧VによりE=1/2・CV2 で計算できる。
平常時における電気二重層キャパシタへの充電のための直流電圧制御方法としては、(1)交直変換装置を停止する、(2)交直変換装置を浮動充電動作させる、の2通りがある。
(1)の方法は、キャパシタ電圧を定格電圧まで充電した後、交直変換装置4を停止させる。交直変換装置4を停止させると、漏れ電流や電気二重層キャパシタ用分圧抵抗により、キャパシタ電圧は低下する。キャパシタ電圧がある電圧値より小さくなったとき交直変換装置4を動作させ、再びキャパシタ電圧を定格電圧にまで充電する。図4はその状態を示したもので、キャパシタ電圧を定格電圧のV1まで充電した後、時刻t1で交直変換装置4を停止させる。時刻t2となり、予め設定された電圧V2にまで低下したとき、再び交直変換装置4を定格電圧V1にまで充電する。そのときの交直変換装置4における制御は電圧一定制御となっている。
(2)の方法は、図5で示すように常に交直変換装置4を動作させ、キャパシタ電圧が定格電圧V1になるよう制御される。
すなわち、(1)の方法と(2)の方法ともに電圧一定制御の指令値、及び交直変換装置4が電圧一定制御を開始する電圧は固定となっている。
特開2006−74903
(1)の方法と(2)の方法ともに電圧一定制御の指令値、及び交直変換装置4が電圧一定制御を開始する電圧は固定となっている。このため、電気二重層キャパシタに余裕があっても、寿命を延ばすことが出来ない問題を有している。
本発明が目的とするとこは、寿命延長が可能となる電気二重層キャパシタの直流待機電圧補償方法を提供することにある。
本発明の請求項1は、電力系統に交直変換装置を接続し、電力系統の電圧低下時に電気二重層キャパシタを電源とした交直変換装置を介して負荷に電力を供給する瞬時低下電圧補償装置であって、電気二重層キャパシタの瞬低待機中の直流電圧、再充電開始電圧を設定するものにおいて、
前記電気二重層キャパシタの経年変化から所定期間後における静電容量と内部抵抗を求め、この静電容量と内部抵抗を次式の放電時間算出式に代入して瞬低待機中のキャパシタ電圧とすることを特徴としたものである。
tmax=((1−Vr 2 )CVs 2 /2P)−CR[Vr 2 +(Vr 2 RP/2Vs 2 )+
2lnVs−lnVr−ln(Vs 2 +RP)]
ただし、tmax:放電時間、Vr:電圧使用率、Vs:放電開始電圧、P:キャパシタのユニット出力電力、
本発明の請求項2は、前記電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗は、前記所定期間内における予め設定した所定時間毎に求め、求めた静電容量,内部抵抗を用いて所定時間毎に瞬低待機中のキャパシタ電圧を変更することを特徴としたものである。
本発明の請求項3は、前記電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗は、瞬時低下電圧補償装置の瞬低動作補償後の充電電流とキャパシタ電圧を検出し、内部抵抗Rはキャパシタを定電力充電状態から電流ゼロとしたときの直流電圧低下分ΔVから、R=ΔV/I(ただし、Iは定電力充電前のキャパシタ充電電流)で求め、静電容量はキャパシタ電圧の充電カーブから求めることを特徴としたものである。
本発明の請求項4は、前記電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗は、定期的にキャパシタの特性診断を実行し、キャパシタを定電力放電した後に定電力充電行って求めることを特徴としたものである。
本発明の請求項5は、検出された電力系統の電圧と負荷電流をd−q変換して有効電力を求め、算出された有効電力を、前記放電時間tmaxの算出式のユニット出力電力に代入して瞬低待機中のキャパシタ電圧とすることを特徴としたものである。
本発明の請求項6は、前記請求項1乃至5の何れかによって算出された瞬低待機中のキャパシタ電圧は、平常時に交直変換装置を停止させる制御方式に適用したことを特徴としたものである。
以上のとおり、本発明によれば、瞬低待機中のキャパシタ電圧を定格値以下にすることでキャパシタの寿命を延ばすことが可能となる。また、経年劣化が遅くなることによって、装置に使用するキャパシタの個数を削減することができるものである。
本発明の実施例の説明に先立って、その基本的な考えについて説明する。
図6は電気二重層キャパシタ1の構成図を示したもので、電気二重層キャパシタユニット10をn個直列に接続し、この直列接続されたアームがm個並列に接続されて構成される。このように構成された電気二重層キャパシタ1の放電時間は以下のように計算できる。また、計算に使用するパラメータを表1に示す。
Figure 0005050742
電気二重層キャパシタに蓄積されたエネルギーEは、キャパシタの直流電圧VによりE=1/2・CV2で計算できる。電気二重層キャパシタユニット単位での放電時間の計算では、先ず、(1)式に基づいて出力電力を求める。総負荷電力及びユニット数、変換効率から
Figure 0005050742
となる。
放電開始時に、最大電圧Vmaxまで充電されているものと仮定する。図7で示すように、放電開始とともに放電電流I及び内部抵抗による電圧低下により、端子電圧は最大電圧から低下する。このときの端子電圧Vsは(2)式となる。
Figure 0005050742
また、放電中の端子電圧Vと内部抵抗V0との関係は(3)式である。
Figure 0005050742
また、キャパシタ蓄えられるエネルギーは、放電によって減少するため、(4)式となる。ここで、Aは積分定数である。t=0のとき、V=Vsであるから(5)式となる。
(数4)
dV 0 /dt=−1/C
(1−RP/V 2 )dV/dt=−P/CV
dt={(−CV/P)+(CR/V)}dV
t=(−CV 2 /2P)+CRlnV+A ……(4)
Figure 0005050742
したがって、V=Vminとなる放電時間tmaxは(6)式となる。
Figure 0005050742
ここで、Vr=Vmin/Vmaxを用いて整理すると(7)式となる。
Figure 0005050742
よって、放電時間tmaxは(7)式で計算できる。
放電時間tmaxは、装置寿命時間経過した後の静電容量・内部抵抗の値で、瞬低動作時間の仕様以上になるようにしている。これにより、初期状態ではキャパシタ電圧を定格まで上げなくとも、瞬低動作時間の使用を満たすことができる。
例として、表2の仕様において15年後の静電容量が−24%、内部抵抗が+24%になる条件で、キャパシタの容量設計をすると表3のような結果となる。なお、設計例は、キャパシタを280セル直列接続した場合である。
Figure 0005050742
Figure 0005050742
一般的に、電気二重層キャパシタの1セル当たりの印加電圧を0.3V下げると、キャパシタの劣化速度は1/2倍になると言われている。
本発明でのキャパシタの設計結果によると、表3で示すように15年後において2.5(s)瞬低補償するように設計されたキャパシタで、初期は4.3(s)の補償が可能であり、キャパシタ電圧を定格V1の640Vにまで上げなくとも、2.5(s)の瞬低補償は可能となる。本発明は(7)式をVmaxについて解き、その式を用いて瞬低待機中のキャパシタ電圧を決定する。放電時間tmaxには瞬低補償時間を代入する。
図1は、本発明の実施例に基づくキャパシタ電圧設定値の推移図である。この実施例は、常時交直変換装置を動作させる浮動充電方式に適用するもので、一定期間後のキャパシタ電圧設定値を予め計算し、当該期間経過後毎に計算されたキャパシタ電圧設定値を読み込むものである。瞬低待機中のキャパシタ電圧を決定するためには、ユニット静電容量Cとユニット内部抵抗Rは(8)式により求める。
Figure 0005050742
キャパシタの経年変化は、周囲温度が一定であれば√(時間)に比例して変化する。式(8)は、前述した例のように、キャパシタの経年変化により15年後の静電容量が−24%、内部抵抗が+24%(周囲温度25℃時)にその特性が変化するものとしてCとRを求めたものである。(8)式からCとRを求め、また、放電時間tmaxに瞬低補償時間を用いる。このC,R及びtmaxを式(7)に代入することで、瞬低待機中のキャパシタ電圧Vmaxを決定する。CとRの値は、例えば1ヶ月後ごとの値を求め、その値を用いて図1で示すように瞬低待機中のキャパシタ電圧を変更する。ここで、V1は装置の定格電圧、V2は充電開始設定電圧値である。
この実施例によれば、キャパシタの経年変化の予測式で求めたCとRから一定期間後のキャパシタ電圧設定値を求め、当該期間経過後毎に瞬低待機中のキャパシタ電圧を変更するようにしたものであるから、簡単に実施が可能となるものである。
電気二重層キャパシタの劣化特性は、周辺温度や放電により発熱するため瞬低補償動作回数により変化する。よって、この実施例2は、実施例1の演算値を補正するものである。
瞬低補償装置は、瞬低補償動作を行った後は、次の瞬低補償動作に備えるために充電を実行する。この実施例は、そのときの充電電流とキャパシタ電圧を利用して瞬低補償動作を行う度に静電容量・内部抵抗を補正し、キャパシタの劣化特性を補正するものである。
キャパシタを定電力充電している状態から充電電流をゼロにすると、キャパシタの内部抵抗の影響で直流電圧が低下する。その低下分ΔVから内部抵抗Rを
R=ΔV/Iで求めることができる。(ただし、Iは定電力充電直前のキャパシタ充電電流である。)
また、Cはキャパシタ電圧の充電カーブから求めることができる。
Figure 0005050742
求めたCとRを実施例1と同様にして(7)式に代入することで、瞬低待機中のキャパシタ電圧Vmaxを決定することができる。
なお、瞬低補償動作は定期的に行われるとは限らない。長期間において瞬低補償動作を実行しなかった場合、実際値との誤差が大きくなることが懸念される。そのような場合、定期的にキャパシタの特性診断を実施し、キャパシタを定電力放電した後に、定電力充電を行うことにより、CとRを求めるようにしてもよい。
この実施例によれば、瞬低補償動作後の回復充電時の直流電圧・充電電流と(9)式から、或いは、定期的なキャパシタの経年変化診断を行い、診断時の直流電圧・充電電流と(9)式から求めた静電容量と内部抵抗から設定電圧を求めたものであるから、実施例1よりも精度よく、キャパシタ電圧設定値を求めることができる。
実施例1及び2では、キャパシタの放電電力は一定(定格)として考えている。実際は、負荷電力は定格よりも小さいことが多い。この実施例3は、負荷電力を監視して、キャパシタの放電電力Pを変更するようにしたものである。
キャパシタは有効電力を出力するので、放電電力Pを求めるためには負荷の有効電力を求めればよい。有効電力は、d−q変換した系統電圧・負荷電流から
(10)、(11)、及び(12)式によって求めることができる。
Figure 0005050742
Figure 0005050742
Figure 0005050742
(7)式のPに上記式を利用することで、キャパシタ電圧を求めることができる。
この実施例によれば、負荷の有効電力を求め、負荷の有効電力に合わせてキャパシタの設定電圧を変更するものであるから、負荷が軽いときにはキャパシタ電圧を下げることが可能となり、上記各実施例と比較して、よりキャパシタの劣化速度を抑えることができる。
上記各実施例は、交直変換装置を常時動作させる浮動充電方式に適用するものであるが、この実施例4は、平常時、交直変換装置を停止する方式に適用するものである。図2はこの実施例に基づくキャパシタ電圧設定の状態図で、V1はキャパシタの定格電圧、V2は充電開始設定電圧値、V3は補正された充電開始設定電圧値であって、このV3は上記各実施例に基づいて算出された劣化特性補正されたキャパシタ電圧設定値である。
キャパシタ1の充電開始から時刻t1で定格電圧V1になると、交直変換装置4による充電動作を停止する。キャパシタ1の電圧は時刻t1から徐々に低下して時刻t2で充電開始設定電圧値V2にまで低下すると、交直変換装置4は充電モードで動作して充電を開始し、時刻t3で定格電圧になると再度交直変換装置4は停止する。
一方、交直変換装置4の制御回路は、一定期間後(図2では時刻t2後)のキャパシタの静電容量Cと内部抵抗Rを求め、求めたCRを(7)式に代入することでキャパシタ電圧を決定する。この算出電圧がV3として設定され、時刻t4の充電開始設定電圧値となる。以下同様にして交直変換装置4の停止、運転が繰返えされる。
この実施例によれば、上記各実施例と同様にキャパシタの劣化速度を抑えることが可能となると共に、交直変換装置の停止期間が長くなるため待機時の装置損失を小さくすることが可能となる。
本発明の実施形態を示すキャパシタ電圧設定値の推移図。 本発明の他の実施形態を示すキャパシタ電圧設定値の推移図。 瞬時低下電圧補償装置の構成図。 交直変換装置を停止させる充電方式の説明図。 交直変換装置の浮動充電方式の説明図。 キャパシタの構成概念図。 放電によるキャパシタ電圧・電流の時間変化図。
符号の説明
1… 電気二重層キャパシタ
2… 負荷
3… 高速スイッチ
4… 交直変換装置
5… 系統電源
10… 電気二重層キャパシタユニット

Claims (6)

  1. 電力系統に交直変換装置を接続し、電力系統の電圧低下時に電気二重層キャパシタを電源とした交直変換装置を介して負荷に電力を供給する瞬時低下電圧補償装置であって、電気二重層キャパシタの瞬低待機中の直流電圧、再充電開始電圧を設定するものにおいて、
    前記電気二重層キャパシタの経年変化から所定期間後における静電容量と内部抵抗を求め、この静電容量と内部抵抗を次式の放電時間算出式に代入して瞬低待機中のキャパシタ電圧とすることを特徴とした瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法。
    tmax=((1−Vr 2 )CVs 2 /2P)−CR[Vr 2 +(Vr 2 RP/2Vs 2 )+
    2lnVs−lnVr−ln(Vs 2 +RP)]
    ただし、tmax:放電時間、Vr:電圧使用率、Vs:放電開始電圧、P:キャパシタのユニット出力電力、
  2. 前記電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗は、前記所定期間内における予め設定した所定時間毎に求め、求めた静電容量,内部抵抗を用いて所定時間毎に瞬低待機中のキャパシタ電圧を変更することを特徴とした請求項1記載の瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法。
  3. 前記電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗は、瞬時低下電圧補償装置の瞬低動作補償後の充電電流とキャパシタ電圧を検出し、内部抵抗Rはキャパシタを定電力充電状態から電流ゼロとしたときの直流電圧低下分ΔVから、R=ΔV/I(ただし、Iは定電力充電前のキャパシタ充電電流)で求め、静電容量はキャパシタ電圧の充電カーブから求めることを特徴とした請求項1又は2記載の瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法。
  4. 前記電気二重層キャパシタの静電容量と内部抵抗は、定期的にキャパシタの特性診断を実行し、キャパシタを定電力放電した後に定電力充電行って求めることを特徴とした請求項3記載の瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法。
  5. 検出された電力系統の電圧と負荷電流をd−q変換して有効電力を求め、算出された有効電力を、前記放電時間tmaxの算出式のユニット出力電力に代入して瞬低待機中のキャパシタ電圧とすることを特徴とした請求項1乃至4記載の何れかである瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法。
  6. 前記請求項1乃至5の何れかによって算出された瞬低待機中のキャパシタ電圧は、平常時に交直変換装置を停止させる制御方式に適用したことを特徴とした請求項1乃至5記載の何れかである瞬時低下電圧補償装置の直流待機電圧補償方法。
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